説明

乳酸菌及びこれを含有する口腔用組成物、ならびに口腔内バイオフィルム形成抑制剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス及び/又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害剤、う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤

【課題】ショ糖非発酵性で、乳酸を発生しにくいと共に、う蝕原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌の生育やこの菌によるバイオフィルム形成を抑制し、歯周病や口臭の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム等の生育阻害作用を有し、う蝕、歯周病、口臭の口腔内の三大トラブルを同時に抑制可能である新規乳酸菌を提供する。
【解決手段】ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株、又はラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規乳酸菌及びこれを含有する口腔用組成物、ならびに口腔内バイオフィルム形成抑制剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス及び/又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害剤、う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病、口臭等の口腔内の疾患又は不快症状の主要な原因は細菌であり、その原因菌としては、う蝕ではストレプトコッカス・ミュータンスをはじめとするミュータンスレンサ球菌、歯周病や口臭ではグラム陰性嫌気性桿菌、特に歯周病では、ポルフィロモナス・ジンジバリス、口臭ではフゾバクテリウム・ヌクレアタム等が着目されている。これらの菌の生育や、バイオフィルムとして固着することを抑制することが口腔疾患予防策として有用であり、従来、その手段として殺菌剤、抗菌剤等が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平05−004927号公報
【特許文献2】特開2003−299480号公報
【特許文献3】特開2006−262893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬品等を用いず、善玉菌で悪玉菌を排除して健康を整えるプロバイオティクスの考え方は腸内で古くから用いられている。腸内プロバイオティクス技術において、善玉菌として用いられている菌は乳酸菌であり、主に乳酸を産生して他の細菌の生育を抑制するものである。このプロバイオティクスの技術が、口腔内でも試されるようになってきている。
【0005】
例えば、ストレプトコッカス・サリバリウスを用いるう蝕抑制技術(特許文献1:特開平05−004927号公報)、ラクトバチルス・ロイテリを用い、ミュータンス菌の増殖を抑制するう蝕予防技術(特許文献2:特開2003−299480号公報)、ラクトバチルスとストレプトコッカスとを併用する口腔内疾患予防/治療用発酵乳(特許文献3:特開2006−262893号公報)が提案されている。
【0006】
一方、ショ糖はヒトが最も一般的に摂取している甘味料であり、細菌による酸産生の基質となる上に虫歯原因菌であるミュータンス連鎖球菌の粘着性多糖生産の特異的な基質ともなるため、他の糖類と比較してう蝕の原因になるリスクが高いと認知されている。上記菌種をはじめ、乳酸菌の多くの菌種はショ糖発酵性を有しているため、これらの菌自体がショ糖を栄養源として乳酸を産生する性状を有する。従って、これらショ糖発酵性を有した乳酸菌のヒト口腔内への投与は、たとえ虫歯原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌を抑制したとしても、投与菌自身の産生する乳酸により歯牙を脱灰するう蝕の原因になるリスクを有する。また、乳酸菌は環境周囲を酸性とするものの、う蝕の原因であるストレプトコッカス・ミュータンスは、自身も乳酸を産生し耐酸性も比較的強い菌として知られているため、抵抗を示す傾向にある。よって、乳酸菌の投与は腸管内プロバイオティクスでは他の細菌の排除に有用となるが、口腔内ではう蝕原因菌の排除を必ずしも期待できないばかりか、う蝕リスクを増大させる可能性を持つ。
【0007】
これに対して、上記従来技術はいずれも病原菌の排除等の主効果のみに着目しており、投与した菌が産生する酸によって生ずるう蝕発生リスクについては言及されていない。本発明者らは、上記点に着目し、ショ糖発酵性が低く、乳酸を発生しにくいため、う蝕発生リスクが通常乳酸菌より低いと共に、う蝕原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌の生育やこの菌によるバイオフィルム形成を抑制し、さらに歯周病や口臭の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム等の生育阻害作用を有し、う蝕、歯周病、口臭の口腔内の三大トラブルを同時に抑制可能であるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、ショ糖非資化性で、乳酸を発生しにくいと共に、ストレプトコッカス・ミュータンスに起因するバイオフィルム形成を抑制する作用、ポルフィロモナス・ジンジバリスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム等の生育阻害作用を有する乳酸菌株の探索を行い、ヒト口腔内及び漬物よりそれら性質を持つ細菌株を単離することに成功した。
【0009】
従って、本発明は下記乳酸菌及びこれを含有する口腔用組成物を提供する。
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌。
さらに、本発明は、上記乳酸菌からなる口腔内バイオフィルム形成抑制剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス及び/又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害剤、う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤を提供するもので、上記乳酸菌の用途を限定したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳酸菌株は、ショ糖非発酵性で、乳酸を発生しにくいと共に、う蝕原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌の生育や口腔内バイオフィルムの形成を抑制し、歯周病や口臭の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム等の生育阻害作用を有し、う蝕、歯周病、口臭を予防、治療、改善する口腔用組成物に応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の乳酸菌株は下記に示すものである。
(A)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subspecies lactis) FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)
(B)ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus) FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)
(C)ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus) FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)
(D)ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus) NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)
【0012】
上記(A)〜(D)の乳酸菌株の菌学的性質を下記に示す。一般的菌学的性質を表1に、主な糖の資化性について表2に示す。菌学的性質及び分類方法はヴァージズ マニュアル オブ システマチック バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology)(1984)を参考とした。糖類資化性を指標とする乳酸菌同定キットAPI50CHL(シメックス・ビオメリュー(株))を用い、専用解析ソフトAPI WEBによって、(A)はラクトコッカス・ラクティス、(B),(C)はラクトバチルス・ラムノーサスと同定された。(D)は、16sRNAをコードするDNA配列の相同性から、ラクトバチルス・カルバタスと同定された。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
本発明の(A)〜(D)の乳酸菌株は、後述する実施例で示されたように、下記特徴的な性質(1)〜(4)を有する。このことから、新規の菌株であることが判明した。
(1)ヒトが通常摂取しておりう蝕リスクも高いとされるショ糖からの酸産生能が低く、歯の脱灰pHといわれているpH5.5未満までpHを下げない。
(2)ストレプトコッカス・ミュータンスを起因とするバイオフィルム形成を抑制する。
(3)ポルフィロモナス・ジンジバリス生育阻害作用を有する。
(4)フゾバクテリウム・ヌクレアタム生育阻害作用を有する。
なお、本発明においては、「ショ糖非発酵性」とは、後述する試験例2で培養後のpHが5.5以上を示すものをいい、「バイオフィルム形成の抑制」とは、後述する試験例1でバイオフィルム形成率を60%以下に抑制するものをいい、「ポルフィロモナス・ジンジバリス及びフゾクテリウム・ヌクレアタム生育阻害作用を有する」とは、後述する試験例3で阻止円が4mm以上のものをいう。
【0016】
本発明の(A)〜(D)の乳酸菌株は、乳酸菌の培養の常法に従って任意の条件で培養し、培養物から遠心分離等の分離手段によって集菌したものを、生理食塩水や滅菌水等で洗浄し使用することができる。う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤等の製剤化の形態についても特に制限はなく、所望により凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末、液体への懸濁等、使用目的に応じて適宜決定すればよい。
【0017】
本発明の(A)〜(D)の乳酸菌株は、口腔内への適用可能な剤型として、歯磨(練り歯磨、粉歯磨、液状歯磨)、洗口剤、口中清涼剤、義歯洗浄剤、うがい用錠剤、歯肉マッサージクリーム、トローチ、ガム、ヨーグルト、ドリンク、発酵品等の形態で口腔用組成物に配合が可能であり、組成物全量に対して、0.001〜75質量%となるように配合又は含有することにより、優れたう蝕予防、歯周病予防・治療、口臭改善・防止効果を示す。また、発酵品そのものを口腔用組成物として用いることも可能であり、この場合にはスタータとして用いることもできる。なお、口腔用組成物には、その剤型に通常配合する任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量配合することができ、通常の方法で調製することができる。
【0018】
任意成分としては、口腔用組成物の種類に応じた適宣な成分が用いられる。例えば、研磨剤、界面活性剤、粘結剤、粘稠剤、甘味料、防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、賦形剤、各種薬効成分等が挙げられる。
【0019】
本発明の乳酸菌は、ショ糖非発酵性で、乳酸を発生しにくいと共に、う蝕原因菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌の生育や口腔内バイオフィルムの形成を抑制し、歯周病や口臭の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリスやフゾバクテリウム・ヌクレアタム等の生育阻害作用を有することから、口腔内バイオフィルム形成抑制剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス及び/又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害剤として用いることができ、う蝕予防剤、歯周病予防・治療剤及び口臭改善・予防剤としても用いることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実験例、試験例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は容量%、比率は容量比を示す。
【0021】
[実験例1]
ヒト口腔からの菌株分離
7名の被験者の口腔を滅菌綿棒(日本綿棒社製)でスワブし、これらをラクトバシライMRS寒天平板(日本ベクトンディッキンソン)に塗沫し、37℃、2日間、嫌気条件(以後、嫌気条件は以下と共通;窒素:炭酸ガス:水素=80:10:10)及び好気条件で培養を行った。発生したコロニーを観察し、同一被験者の中でコロニー形態が異なるものを選定し、それぞれのコロニーを白金耳で釣菌し、再度ラクトバシライMRS平板に塗沫して分離培養を行った。これを単一コロニー形態となるまで繰り返して菌株を単離した。結果として74菌を分離した。
【0022】
[実験例2]
漬物からの菌株分離
家庭の漬物より、漬物周囲の固着物及び液体を採取し、ラクトバシライMRS寒天平板(日本ベクトンディッキンソン)に塗沫し、37℃、2日間、嫌気条件及び好気条件で培養を行った。漬物としてはいわゆる野沢菜漬け、粕漬け、沢庵を用いた。発生したコロニーを観察し、同一検体の中でコロニー形態が異なるものを選定し、それぞれのコロニーを白金耳で釣菌し、再度ラクトバシライMRS平板に塗沫して分離培養を行った。これを単一コロニー形態となるまで繰り返して菌株を単離した。結果として79菌を分離した。
【0023】
[試験例1]
バイオフィルム形成抑制効果
上記実験例1及び2で単離した153菌株を、ラクトバシライMRSブロス(日本ベクトンディッキンソン)で、ストレプトコッカス・ミュータンス ATCC25175株をトッド・ヒューイット・ブロス(日本ベクトンディッキンソン)を用いて、それぞれ一日37℃で嫌気培養した。なお、分離菌のうち好気下で分離したものも全て嫌気条件下で生育したため、全菌株を嫌気培養とした。1%のショ糖(和光純薬)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス2mLを分注した試験管に対して、乳酸菌株(菌数約109/mL)及びストレプトコッカス・ミュータンスの培養液(菌数約109/mL)を各20μL添加して、37℃・1日嫌気条件で共培養した。
培養後、試験管を生理食塩水3mLで2回、非付着物を洗浄除去してから3mLの生理食塩水を試験管に添加し、試験管に付着したバイオフィルムを超音波ホモジナイザー(ブランソン社製 D40)で分散した。得られた分散液の波長550nmの濁度により、バイオフィルム形成量を計測した。対照としてはストレプトコッカス・ミュータンス単独で培養したものを用いた。
バイオフィルム形成率(%)を、(共培養のバイオフィルム形成量)/(ストレプトコッカス・ミュータンス単独培養のバイオフィルム形成量)×100とした。単離菌の中にストレプトコッカス・ミュータンスのバイオフィルム形成量を減少させる菌株の存在が認められ、バイオフィルム形成率を60%以下に抑制する菌株は153株中27株であった。
【0024】
[試験例2]
ショ糖非発酵性(ショ糖からの酸産性能)
試験例1において、バイオフィルム形成率を60%以下に抑制した27菌株について、ショ糖を基質とした酸産生能(ショ糖資化性)を検討した。各菌株をラクトバシライMRSブロス(日本ベクトンディッキンソン)を用いて、一日37℃で嫌気培養した。培養液(菌数約109/mL)40μLを、1%のショ糖(和光純薬)を添加したハートインフュージョンブロス(日本ベクトンディッキンソン)4mLに添加して、37℃・1日嫌気条件で培養した。
培養後のpHをpHメータ(堀場製作所:型番PH F−21)で測定した。培養液のpHが5.5以上を示す菌は4株であった。
3株は主に糖類資化性を指標とする乳酸菌同定キットAPI50CHL(シメックス・ビオメリュー(株))を用い、専用解析ソフトAPI WEBによって同定し、1株がラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズラクティス、2株がラクトバチルス・ラムノーサスと同定され、(独)産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株(受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株(受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株(受託番号))、また1株は、「株式会社テクノスルガラボ」への委託分析により、16sRNAをコードするDNA配列の相同性から、ラクトバチルス・カルバタスと同定され、(独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託した(ラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株(受託番号))。
【0025】
[試験例3]
歯周病原因菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)及び口臭原因菌(フゾバクテリウム・ヌクレアタム)に対する生育阻害
試験例3で得られた4菌株の単離菌をラクトバシライMRS寒天平板(日本ベクトンディッキンソン)に穿刺し、37℃・1日嫌気条件で培養した。
別にポルフィロモナス・ジンジバリス ATCC33277株及びフゾバクテリウム・ヌクレアタム ATCC10957株を、ヘミン(和光純薬、500μg/mL)、メナジオン(和光純薬、100μg/mL)を添加したトッド・ヒューイット・ブロス(日本ベクトンディッキンソン)で培養した。
上記同様にヘミン、メナジオンを添加したトッド・ヒューイット・ブロスに0.9%の寒天(細菌培養用:和光純薬)を添加してオートクレーブ後47℃で保温したもの5mLに、上記ポルフィロモナス・ジンジバリス又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの培養液0.5mLを添加して泡立たないように速やかに攪拌して、単離菌を穿刺培養した平板に重層した。さらに37℃・嫌気条件で1日培養した後に、単離菌を穿刺した周囲の重層菌の生育阻止円の有無を観察した。その結果、4菌株ともポルフィロモナス・ジンジバリス及びフゾバクテリウム・ヌクレアタムに対して阻止円形成が認められ、歯周病や口臭菌に対する生育阻害効果を有することが確認された。
【0026】
[実施例及び比較例]
上記試験例2で得られた4菌株及びこれらの菌と同種に属する公知の菌株について、上記試験例1〜3を行った。結果を下記に基づき表3に示す。
バイオフィルム形成抑制効果については、バイオフィルム形成率が30%未満に減少したものを「◎」、30%以上60%以下を「○」、60%超80%以下を「△」、80%超を「×」とした。
ショ糖非発酵性については、培養液pH5.5未満を「×」、5.5以上6.2未満を「○」、6.2以上を「◎」とした。
ポルフィロモナス・ジンジバリス及びフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害は、明確な阻止円が認められないものを「×」、阻止円の直径が4mm未満を「△」、4mm以上7mm未満を「○」、7mm以上を「◎」とした。
【0027】
【表3】

【0028】
以上のように、ショ糖非発酵性、う蝕予防有効性の指標であるストレプトコッカス・ミュータンスを起因とするバイオフィルム形成の抑制、歯周病予防・治療の指標である、ポルフィロモナス・ジンジバリス、及び口臭改善・予防の指標である、フゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害の3項目において、本発明の4菌株は良好な結果を得たのに対し、比較例(同種に分類される公知菌)では、全項目で良好な性状を示す菌は認められなかった。なお、本実験の比較例では実施例と近縁の菌種を用いたため多くの菌のショ糖非発酵性の項が○又は◎となっているが、ラクトバチルス属又はラクトコッカス属に分類される一般的乳酸菌において、ショ糖発酵性を有する菌は少なくない。
【0029】
なお、上記乳酸菌ラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株を湿重量で2質量%配合した洗口剤(液)を調製して一日二回、1週間使用したところ、口臭の自覚症状改善が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌。
【請求項2】
請求項1記載のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株から選ばれる乳酸菌を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項3】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌からなる口腔内バイオフィルム形成抑制剤。
【請求項4】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌からなるポルフィロモナス・ジンジバリス及び/又はフゾバクテリウム・ヌクレアタムの生育阻害剤。
【請求項5】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌からなるう蝕予防剤。
【請求項6】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌からなる歯周病予防・治療剤。
【請求項7】
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス FERM P−21436株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21437株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、ラクトバチルス・ラムノーサス FERM P−21438株((独)産業技術総合研究所特許生物寄託センター 受託番号)、及びラクトバチルス・カルバタス NITE P−568株((独)製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター 受託番号)から選ばれる乳酸菌からなる口臭改善・予防剤。

【公開番号】特開2010−124772(P2010−124772A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303886(P2008−303886)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】