説明

乳酸菌含有血中ホモシステイン低減剤

【課題】乳酸菌またはビフィズス菌を、整腸作用のみならず、他の疾病の諸症状の改善に効果的に利用するための製剤を提供すること。
【解決手段】生きた乳酸菌またはビフィズス菌を含有する腸溶性製剤を用いて、所定量以上の乳酸菌またはビフィズス菌を摂取することにより、血中の動脈硬化危険因子(ホモシステイン)を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌を含有する血中ホモシステイン低減剤に関する。より詳しくは、本発明は、新規の効能・効果を有する、乳酸菌、特にビフィズス菌を含有する血中ホモシステイン低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の医学・薬学・バイオテクノロジーのめざましい進歩は、医薬品の開発あるいは食品の開発など様々な分野に影響を与えている。その一方で、医薬品や食品の服用による既知および未知の重篤・重大な副作用の発現が問題となっている。
【0003】
古来より、微生物を医薬品または食品に作用させて得られた医薬品製剤および発酵食品が服用および食されている。近年、乳酸菌などを含む医薬品および食品が改めて見直されてきている。このような医薬品として代表的な乳酸菌製剤およびビフィズス菌製剤は、通常、散剤、錠剤、またはハードカプセルのいずれかの剤型で用いられている。これらを服用することにより、腸内菌叢の異常による諸症状の改善が期待されている。代表的な発酵食品であるヨーグルトは、牛乳に乳酸菌、ビフィズス菌などを作用させて得られ、摂食された乳酸菌などが腸内に入ることによる整腸作用が期待されている。また、腎不全による血液透析患者は、腸内菌叢の異常を呈する傾向があるなど、腸内菌叢と種々の疾病との関連も指摘されている。
【0004】
長期の血液透析患者では、動脈硬化症に基づく心疾患および脳血管障害を合併する頻度が極めて高く、これらが死因の上位を占めていることが知られており、なかでも脂質代謝異常はそのリスクを上昇させると考えられている。特に、末期腎不全はリポ蛋白代謝異常に関連しており、動脈硬化症を加速度的に進行させること、血液透析患者における脂質代謝異常における主症状として、HDLコレステロールの減少や高トリグリセリド血症を伴うこと、ならびに高トリグリセリド血症が冠状動脈性心疾患のリスクファクターであることが知られている。一方、血清脂質レベルの低下に発酵乳やグローイング・ビフィドバクテリア・セルが関与していることが報告されている(非特許文献1および2)。また、ビフィズス菌増殖因子であるオリゴ糖が血中コレステロールの低下に関与していることも報告されている(非特許文献3)。
【0005】
腎不全の進行により尿毒症になり、体内に尿毒症物質が蓄積することが知られている。尿毒症期の臨床症状は、消化器系、呼吸器系、循環器系および神経系に多彩な症状が認められ、これらの症状の中には致命的なものも含まれる。尿毒症物質としては、インドキシル硫酸が著しく蓄積することが知られており、他にフェノール類、インドールなどが知られている。尿毒症患者においては、腸内環境が悪化していることも知られている。一方、乳酸菌の摂取が腸内菌叢の異常を正常状態に回復させることが報告されている(非特許文献4および5)。さらには、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ラクトバチルス・アシドフィルスおよびストレプトコッカス・フェカリスを含んだ混合カプセルを血液透析患者に投与し、血中のインドキシル硫酸の低減に効果を示したことも報告されている(非特許文献6)。
【0006】
上記のように、心血管疾患は、透析患者の死因の40%以上を占める臨床上重要な疾患である。近年、新しい心血管疾患の危険因子として高ホモシステイン血症が注目されている。血中ホモシステイン値の軽度な上昇でさえも、血栓性血管疾患の危険因子となり得る。血中ホモシステイン濃度は種々の疾患で上昇するが、主な代謝臓器が腎であることから、腎不全もしくは血液透析患者では、ほぼ普遍的に高ホモシステイン血症を伴う。ホモシステインは透析のみでは充分に除去できず、このことが腎不全患者における動脈硬化多発の原因の一つとして考えられている。血中ホモシステインを低下させるために、高用量の葉酸およびビタミンB12の投与が効果的であることが知られている。しかし、高用量の葉酸の長期投与は胃腸障害を起こし、ビタミンB12の低下を招き、末梢神経障害を惹起する可能性がある。ビタミンB12の経口投与は吸収効率が悪く、筋肉内注射では注射部位に硬結を生じ、静脈内注射では時にアナフィラキシーショックを誘発するなど問題点も多い。ところで、上記のように、血液透析患者における腸内菌叢は大腸菌のような好気性菌が増加し、ビフィズス菌のような嫌気性菌が減少し、腸内環境の異常が生じていることが知られている。さらに、ビフィズス菌がビタミンB1、B2、B6、B12、K、ニコチン酸、葉酸などを産生し(非特許文献7および8)、生体がそれらを利用できることが知られている。
【0007】
肝性脳症の誘因は、肝炎ウイルス感染、アルコール摂取、薬物服用、自己免疫疾患、循環障害、代謝異常、寄生虫感染などにより肝機能が悪化し、肝硬変となり、さらに食事蛋白・アルコールの過剰摂取、便秘、薬物 (利尿薬など) の服用、低クロル性アルカローシス、消化管出血、感染、手術などであり、結果的に高アンモニア血症を誘発して肝性脳症に進行し、意識障害、昏睡状態などの臨床症状を呈する。例えば、便秘の場合には、食事蛋白およびアミノ酸と腸内菌叢との接触時間が増加するため、アンモニアの産生が増加し、有毒性アミンの生成および吸収が増加する。腸内菌叢の異常時、腸内有害菌によってアンモニアなどの腐敗産物が生成されることも知られている。アンモニアの除去には、血液透析、腹膜灌流、交換輸血、輸液などが行われ、アンモニアの産生抑制には、低蛋白食による食事療法などが行われる。腸内菌叢を正常化するために、乳酸菌整腸薬などを投与すると腸内菌叢のバランスが改善し、腸内腐敗代謝物の産生抑制に有効であることが報告されている。
【0008】
このように、ビフィズス菌を中心としてこれらの腸内細菌が、ヒトや動物における健康増進に関与していると考えられている。しかし、乳酸菌類は胃酸などの低pHでは生存不可能であることが知られており、そのまま服用しても、そのほとんどは、強い胃酸のために、死滅している。すなわち、生菌のまま腸まで到達し得るビフィズス菌および乳酸菌は、ごく一部であり、十分な効果が得られていない。
【0009】
これらの問題を解決すべく、乳酸菌などを耐酸性カプセルに入れて、腸内まで運ぶことが検討されている(例えば、特許文献1)。生きた乳酸菌またはビフィズス菌を含有するシームレスカプセルを腸まで送達させる試みもなされている(特許文献2)。しかし、整腸作用以外の効果については実際に得られるかどうか不明である。
【特許文献1】特開平8−242763号公報
【特許文献2】国際公開第03/001927号パンフレット
【非特許文献1】Gilliland SE、FEMS Microbiology Reviews、87巻、175-188頁、1990年
【非特許文献2】K Tahriら、Letters in Applied Microbiology、21巻、149-151頁、1995年
【非特許文献3】Zakia DおよびClaude A、British Journal of Nutrition、78巻、313-324頁、1997年
【非特許文献4】Tanaka Rら、Jpn J Pediatr、33巻、2483-2492頁、1980年
【非特許文献5】Yamashita Mら、Clin Microbiol、13巻、729-738頁、1986年
【非特許文献6】Hida Mら、Nephron、74巻、349-355頁、1996年
【非特許文献7】Liebscher S、Z. Kinderheikd、85巻、265頁、1961年
【非特許文献8】Orla-Jensen SおよびOrla-Jensen D、Hyg Abt 2、104巻、202頁、1941-1942年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、乳酸菌またはビフィズス菌を、整腸作用のみならず、他の疾病の諸症状の改善に効果的に利用するための製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、動脈硬化危険因子の低減作用をもたらすために有効な量の乳酸菌を含有する、血中ホモシステイン低減剤を提供する。
【0012】
好ましい実施態様においては、上記乳酸菌はビフィズス菌である。
【0013】
より好ましい実施態様においては、上記血中ホモシステイン低減剤は、腸溶性のシームレスカプセルである。
【0014】
より好ましい実施態様においては、上記乳酸菌は、生きた乳酸菌である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乳酸菌またはビフィズス菌を、整腸作用のみならず、他の疾病の諸症状の改善に効果的に利用するための製剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の乳酸菌含有血中ホモシステイン低減剤は、製剤の内容物である乳酸菌類が胃内で放出されず、腸管を通過する際に放出されるように意図された乳酸菌含有腸溶性製剤であって、例えば、耐酸性能を有するコーティングが施されている成型製剤および耐酸性能を有するカプセル剤が挙げられる。本発明においては、乳酸菌類を生きたまま含む液状物を封入できる点で、カプセル剤が好ましく、腸溶性のシームレスカプセルが特に好ましい。このようなシームレスカプセルは、腸溶性材料を外皮材料として滴下法によって製造され得る。あるいは、滴下法によって通常のシームレスカプセルを製造した後、腸溶コーティングを施してもよい。これらの具体的な製造方法については、例えば、特許文献1および2に詳述されている。
【0017】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤に含有される乳酸菌類としては、食品の加工などに通常用いられる乳酸菌類が用いられ、特に、ヒトの腸内に棲んでいる腸内乳酸菌類が好適である。代表的には、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーべ、ビフィドバクテリウムアドレッセンテス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルスおよびストレプトコッカス・フェカリスが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
乳酸菌類は、上記のように生きたまま製剤に含有されることが好ましい。そのため、乳酸菌類は、適切な培地に懸濁した液状物として、例えば硬化油脂などと混合した固形物として、あるいは乾燥粉末として、カプセル剤に含有され得る。あるいは、乾燥粉末の乳酸菌類は、適切な賦形剤と混合されて成型製剤としてもよい。また、カプセル化した後、さらにカプセル内で増殖させたカプセル化製剤も使い得る。
【0019】
乳酸菌類は、液状物としてカプセル剤に含有される場合、どのような濃度で含まれていてもよい。液状物中の乳酸菌類は、高濃度すぎると粘度が高くなり、カプセル化しにくくなるので、カプセル化した後、さらに増殖させることが好ましい。好ましくは、約1×10cfu/gカプセル以上、より好ましくは、約1×1010〜1×1012cfu/gカプセルである。成型製剤中には、乳酸菌類は、好ましくは、約3×10〜12×10cfu/gカプセル含まれる。なお、cfuはコロニー形成単位である。
【0020】
上記乳酸菌含有腸溶性製剤を服用する場合、摂取すべき乳酸菌の用量は、約1×10cfu/日〜12×10cfu/日が好ましく、約3×10cfu/日〜12×10cfu/日がより好ましく、約6×10cfu/日がさらに好ましい。急性の軽度から中等度の症状に対する整腸作用を目的とする場合は、約1×10cfu/日程度の用量でよいことが知られているが、以下に記載の各作用を目的とする場合は、約1×10cfu/日未満であると、十分な作用が発揮されない場合がある。
【0021】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤は、上記の量を摂取することにより、血中の中性脂肪の低減作用、慢性腎不全における血中尿毒症物質の低減作用、動脈硬化危険因子の低減作用、ならびに血中アンモニア濃度の低減作用を発揮し得る。
【0022】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤は、血中の中性脂肪(例えば、トリグリセリド)を低減させることができる。その他の血清脂質およびリポ蛋白に対しても低減作用を有し、このような血清脂質としては、リン脂質、遊離脂肪酸、およびカルニチン、そしてリポ蛋白としては、VLDL、IDL、ならびに特殊なリポ蛋白であるレムナントコレステロールおよびLp(a)が挙げられる。血中の中性脂肪およびその他の血清脂質を低減させることによって、高脂血症、動脈硬化症などを改善、治療および/または予防することができる。なお、善玉コレステロールであるHDLコレステロールに対しては、増加作用を有する。
【0023】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤を、血中の尿毒症物質の低減作用を期待して用いる場合、低減され得る尿毒症物質としては、インドキシル硫酸、フェノール、インドール、スカトール、パラ−クレゾールおよびアミン類が挙げられる。血中のこれらの物質を低減させることによって、慢性腎不全による尿毒症を改善および/または治療することができる。
【0024】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤を、動脈硬化危険因子の低減作用を期待して用いる場合、その危険因子としては血中ホモシステインが挙げられる。ビフィズス菌は、血中ホモシステインを低減させるために通常用いられている葉酸、ビタミンB12およびビタミンB6を産生し得るため、特に有用である。血中のホモシステインを低減させることによって、ならびに腸内で葉酸、ビタミンB12およびビタミンB6を産生することによって、腎不全もしくは血液透析患者における高ホモシステイン血症を改善、治療および/または予防することができる。
【0025】
本発明の乳酸菌含有腸溶性製剤は、血中アンモニア濃度を低減させることができる。血中アンモニア濃度を低減させることによって、例えば、高アンモニア血症、肝性脳症、肝硬変、肝不全および劇症肝炎を改善および/または治療することができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を、実施例によってさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
参考例1:血清脂質に対するビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有しているビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル(ビフィドバクテリウム・ロンガムを含有:森下仁丹株式会社製)を、血液透析患者29名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ビフィドバクテリウム・ロンガムとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清から、通常の血液検査で行われている酵素法により血中トリグリセリド濃度を測定した。
【0028】
その結果、トリグリセリドの血中濃度は、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(124±11mg/dL)と比べ、投与後(104±11mg/dL、12週間後p<0.01)は有意に低下した。
【0029】
以上より、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルは、血液透析患者の腸内環境を正常化させ、血中トリグリセリド濃度の低下に有効である可能性が示唆された。
【0030】
参考例2:尿毒症物質に対するビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有しているビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル(ビフィドバクテリウム・ロンガムを含有:森下仁丹株式会社製)を、血液透析患者27名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ビフィドバクテリウム・ロンガムとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清からHPLC法により血中インドキシル硫酸およびフェノールの濃度を測定した。
【0031】
その結果、インドキシル硫酸の血中濃度は、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(35.1±3.5μg/mL)と比べ、投与後は減少し(32.0±2.9μg/mL、12週間後p<0.05)、そしてフェノールの血中濃度は、投与前(4.2±0.6μg/mL)と比べ、投与後は減少し(3.8±0.5μg/mL、12週間後p<0.1)、いずれも有意に低下した。
【0032】
以上より、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルは、血液透析患者の腸内環境を正常化させ、血中尿毒症物質の低減に有効である可能性が示唆された。
【0033】
実施例1:動脈硬化危険因子に対するビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有しているビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル(ビフィドバクテリウム・ロンガムを含有:森下仁丹株式会社製)を、血液透析患者29名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ビフィドバクテリウム・ロンガムとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清からHPLC法により総ホモシステイン濃度を測定した。
【0034】
その結果、ホモシステインの血中濃度は、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(39.2±3.6nmol/mL)と比べ、投与後(34.0±2.7nmol/mL,6週間後p<0.005)は有意に低下した。さらに、葉酸の血中濃度は、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(11.7±0.9ng/mL)と比べ、投与後(13.3±1.3ng/mL、6週間後p<0.05)は有意に増加した。
【0035】
以上より、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルは、血液透析患者の腸内環境を正常化させ、血中ホモシステイン濃度の低下に有効である可能性が示唆された。
【0036】
参考例3:高アンモニア血症に対するビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有しているビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル(ビフィドバクテリウム・ロンガムを含有:森下仁丹株式会社製)を、肝性脳症患者6名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ビフィドバクテリウム・ロンガムとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清から、藤井・奥田変法により血中アンモニア濃度を測定した。
【0037】
その結果、アンモニア血中濃度は、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(102±13μg/dL)と比べ、投与後(78±9μg/dL、12週間後p<0.05)は有意に低下した。
【0038】
以上より、ビフィズス菌含有腸溶性シームレスカプセルは、肝性脳症患者の腸内環境を正常化させ、血中アンモニア濃度の低減に有効である可能性が示唆された。
【0039】
参考例4:高アンモニア血症に対する乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有している乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセル(ラクトバチルス・アシドフィルスを含有:森下仁丹株式会社製)を、肝性脳症患者6名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ラクトバチルス・アシドフィルスとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清から、藤井・奥田変法により血中アンモニア濃度を測定した。
【0040】
その結果、アンモニア血中濃度は、乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(105±14μg/dL)と比べ、投与後(87±10μg/dL、12週間後p<0.05)は有意に低下した。
【0041】
以上より、乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセルは、肝性脳症患者の腸内環境を正常化させ、血中アンモニア濃度の低減に有効である可能性が示唆された。
【0042】
参考例5:血清脂質に対する乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセルの効果
耐酸性能を有している乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセル(ストレプトコッカス・フェカリスを含有:森下仁丹株式会社製)を、血液透析患者29名に1日1回1包ずつ、12週間経口投与した(ストレプトコッカス・フェカリスとして3×10〜12×10cfu/日)。採血して得られた血清から、通常の血液検査で行われている酵素法により血中トリグリセリド濃度を測定した。
【0043】
その結果、トリグリセリドの血中濃度は、乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセル投与前(130±12mg/dL)と比べ、投与後(108±11mg/dL、12週間後p<0.05)は有意に低下した。
【0044】
以上より、乳酸菌含有腸溶性シームレスカプセルは、血液透析患者の腸内環境を正常化させ、血中トリグリセリド濃度の低下に有効である可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の乳酸菌含有血中ホモシステイン低減剤は、その製剤技術により他の同様な乳酸菌等の製剤に比べて強力な整腸作用のみならず、様々な有用な作用を示す。具体的には、血中の中性脂肪の低減作用、慢性腎不全における血中尿毒症物質の低減作用、動脈硬化危険因子の低減作用、ならびに血中アンモニア濃度の低減作用を示す。さらには、他の食品や医薬品に発現する副作用がほぼ認められない。このような生体に対する有益となる作用は、生活習慣病をはじめとする種々の疾患の予防および治療に広く応用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中ホモシステインの低減作用をもたらすために有効な量の乳酸菌を含有する、血中ホモシステイン低減剤。
【請求項2】
前記乳酸菌がビフィズス菌である、請求項1に記載の血中ホモシステイン低減剤。
【請求項3】
前記血中ホモシステイン低減剤が、耐酸性能を有するカプセルである、請求項1または2に記載の血中ホモシステイン低減剤。
【請求項4】
前記血中ホモシステイン低減剤が、腸溶性のシームレスカプセルである、請求項1から3のいずれかの項に記載の血中ホモシステイン低減剤。
【請求項5】
前記乳酸菌が生きた乳酸菌である、請求項1から4のいずれかの項に記載の血中ホモシステイン低減剤。

【公開番号】特開2009−102323(P2009−102323A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302746(P2008−302746)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【分割の表示】特願2003−67844(P2003−67844)の分割
【原出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年2月28日 American Journal of Kidney Diseases発行の「American Journal of Kidney Diseases,Vol 41,No 1,Suppl 1(March) 2003 : pp S142−S145」に発表
【出願人】(000191755)森下仁丹株式会社 (30)
【出願人】(598091860)財団法人名古屋産業科学研究所 (23)
【Fターム(参考)】