説明

乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測方法

【課題】乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測精度を向上させる方法を提供する。
【解決手段】乾式二重床が設置される前のスラブのインピーダンス特性を計算して、前記スラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するとともに、壁式構造実験室に乾式二重床を設置して測定した重量床衝撃音レベルの低減量と前記壁式構造実験室のスラブの打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値とから乾式二重床設置後の床衝撃音レベルの低減量を予測する予測式を求めた後、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルと前記予測式とを用いて前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ上に配置された複数の床支持具上に複数の床板を積層して成る床材を配置した乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅等の各種建造物においては、スラブ上に床支持具を複数個配置し、これらの床支持具上に複数の床板を積層して成る乾式二重床構造が多く採用されている。この乾式二重床構造では、床材と壁面との間や床材と幅木との間とに隙間を設けて、床衝撃音等による床材の振動が壁及びスラブを介して階下に伝達されるのを防止するようにしている(例えば、特許文献1,2参照)。
ところで、集合住宅等の各種建造物を構築する際に床衝撃音レベルを予測することができれば、スラブの厚さや梁せいなどを変更したり補強部材を設けるなどして、床衝撃音レベルを低減することができる。
スラブ素面の床衝撃音レベルの予測方法としては、従来、インピーダンス法による予測方法が知られている。これは、スラブの基本インピーダンスレベルを算出した後、スラブの周辺の拘束条件によるインピーダンスレベルの上昇量とインピーダンスレベルの共振による低下量とを算出してスラブのインピーダンス特性を計算し、スラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルを予測する。具体的には、スラブ端部のインピーダンスレベルの上昇量がスラブの厚さと梁せいとの比に依存することから、スラブの厚さと梁せいとの比に応じたインピーダンスレベルの上昇量の予測式を求め、この予測式を用いてスラブ素面の床衝撃音レベルを予測する(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−104393号公報
【特許文献2】特開2003−336386号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】大脇雅直,高倉史洋,財満健史,宮崎浩司,山下恭弘;大型スラブにおけるインピーダンス法による重量床衝撃音レベル予測手法に関する実験的研究,日本建築学会計画系論文集, No,511,pp23-29,1998.9
【非特許文献2】黒木拓、大脇雅直,山下恭弘;重量床衝撃音レベルの実測値と予測値の対応に関する検討,日本音響学会春季研究発表会講演論文集, pp1187-1190,2010.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のインピーダンス法による予測方法は、スラブ素面については予測できるものの、乾式二重床が設置される建物に適用した場合には予測精度が低く、特に、スラブ素面でのインピーダンスレベルの上昇量の計算値が大きい打振点では重量床衝撃音レベルの予測値と乾式二重床設置後の測定値との差が大きくなってしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測精度を向上させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に記載の発明は、スラブ上に配置された複数の床支持具と前記床支持具上に設けられた複数の床板から成る床材とを備えた乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測する方法であって、スラブの基本インピーダンスレベルと前記乾式二重床が設置される前のスラブの周辺拘束によるインピーダンスレベルの上昇量とインピーダンスレベルの共振による低下量とを算出して前記乾式二重床が設置される前のスラブのインピーダンス特性を計算し、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するステップと、衝撃音発生源が設置された音源室と前記音源室の階下に位置し重量床衝撃音レベルを測定する測定器が設置された受音室とを備えた壁式構造実験室の前記音源室に乾式二重床を設置して重量床衝撃音レベルの低減量を測定するステップと、前記壁式構造実験室のスラブの打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値を求めるステップと、前記インピーダンスレベルの上昇量の計算値と前記重量床衝撃音レベルの低減量との関係から重量床衝撃音レベルの低減量を予測するための予測式を求めるステップと、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルと前記予測式とを用いて前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するステップと、を備えることを特徴とする。
このように、壁式構造実験室に乾式二重床を設置して測定した重量床衝撃音レベルの低減量と壁式構造実験室のスラブのインピーダンスレベルの上昇量の計算値とを用いて乾式二重床設置後の重量床衝撃音レベルの低減量を予測するための予測式を求めるとともに、この予測式と乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルとを用いて乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するようにしたので、前記重量床衝撃音レベルを精度良く予測することができる。
なお、壁式構造実験室の音源室に乾式二重床を設置して重量床衝撃音レベルの低減量を測定するステップ以外のステップにおけるインピーダンスレベルの上昇量や予測式の算出は、例えば、コンピュータのソフトウェアを用い、建物及び壁式構造実験室の設計仕様及び壁式構造実験室での測定データ等を入力データとすることで算出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測方法であって、前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するステップが、前記予測式と前記算出された乾式二重床が設置される前のスラブの周辺拘束によるインピーダンスレベルの上昇量とから前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値を算出するステップと、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルから前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値を減じて前記乾式二重床が設置される建物の打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するステップと、前記打振点毎の重量床衝撃音レベルを算術平均して前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測値を算出するステップと、を備えることを特徴とする。
このように、打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出して建物の重量床衝撃音レベルを予測したので、乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測精度を更に向上させることができる。
【0009】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る乾式二重床の重量床衝撃音レベルの予測方法を示すフローチャートである。
【図2】対象居室の一例を示す平面図である。
【図3】本実施の形態に係る二重床構造の例を示す図である。
【図4】重量床衝撃音レベルの測定方法を示す図である。
【図5】インピーダンスレベルの上昇量の計算値と重量床衝撃音レベルの低減量との相関関係を示す図である。
【図6】スラブ素面の重量床衝撃音レベルの予測値と乾式二重床設置後の実測値の5点平均の分布を示す図である。
【図7】本発明による乾式二重床を含む重量床衝撃音レベルの予測値と乾式二重床設置後の実測値の5点平均の分布を示す図である。
【図8】重量床衝撃音レベルの予測値と実測値とのレベル差の確率密度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
本発明による乾式二重床の重量床衝撃音レベルの予測方法について、図1のフローチャートに基づき説明する。
まず、重量床衝撃音レベルを予測する住戸居室(以下、対象居室)を選定する(ステップS10)。図2は対象居室10の一例を示す平面図で、同図の符号S1〜S5が重量床衝撃音レベルを測定する部屋11の打振点である。本例では、測定対象を集合住宅の一室とした。集合住宅は鉄筋コンクリート造で、対象居室10のスラブ素面は梁12により二辺もしくは三辺拘束されている。
対象居室10の部屋11に設置が予定されている乾式二重床としては、図3(a)に示すような、スラブ20上にクッション性を有する防振材21Gを備えた床支持具21を配置し、その上に、補助パーティクルボード22を介して、パーティクルボード23と下地合板24とフローリング25とで構成された床材26を配置したもの(以下、type Aという)や、図3(b)に示すような、壁27側の床支持具21をクッション材28Gを備えた防振根太28で置き換えたもの(以下、type Bという)などが挙げられる。
type Aの乾式二重床では、床材26と壁27との間に2〜3mm程度の隙間(空気連通路)を設けるとともに、壁27に沿って取付けられている幅木29と床材26の間にも2〜3mm程度の隙間を設けることで、床材26の振動が壁27及びスラブ20を介して階下に伝達されるのを防止するようにしている。一方、type Bの乾式二重床では、防振根太28と壁27との間に緩衝材28Kを配置することで、床材26の振動が壁27及びスラブ20を介して階下に伝達されるのを防止するようにしている。
type Aの乾式二重床は、乾式二重床を先に施工し、その後に室内の間仕切り壁を施工する床先行工法により施工される。一方、type Bの乾式二重床は、間仕切り壁を先に施工し、その後にする乾式二重床を施工する壁先行工法により施工される。
【0013】
次に、対象居室の設計図面に基づいて、乾式二重床を設置する前のスラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルを、スラブ素面の重量床衝撃音レベルの予測方法を用いて予測する(ステップS11)。
具体的には、拘束がない場合のスラブの基本インピーダンスレベルL0と梁等の周辺拘束があった場合のスラブのインピーダンスレベルLとを算出してスラブのインピーダンスレベルの上昇量ΔLs=L−L0を算定するとともに、共振によるインピーダンスレベルの低下量を算出してスラブの振動速度算出に必要なインピーダンス特性を算出し、この算出されたインピーダンス特性を用いて、タイヤなどの打撃装置によりスラブ素面の各打振点Sk(k=1〜5)をそれぞれ打振した時に発生する重量床衝撃音の大きさである重量床衝撃音レベルVskをそれぞれ算出する。
打振点毎の重量床衝撃音レベルVskは、階下の受音室の吸音力を設定し、受音室に伝搬されたスラブ素面からの衝撃音の大きさを算出することで求めることができる。以下、Vskをスラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルの予測値という。
【0014】
次に、スラブ素面上に設置する乾式二重床の構成を選択し(ステップS12)、この選択された乾式二重床について、壁式構造実験室にて、重量床衝撃音レベルの低減量ΔVk(k=1〜5)を測定する(ステップS13)とともに、壁式構造実験室のスラブ素面の打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0k(k=1〜5)を算出する(ステップS14)。
図4に示すように、壁式構造実験室30は、衝撃音発生源としてのバングマシーン(タイヤによる打撃装置)Hが設置された音源室31と、音源室31の階下の部屋で、マイクロフォンDが設置された受音室32とを備えたもので、バングマシーンHにより、図2に示した乾式二重床の床面の打振点Sk(k=1〜5)を打振し、マイクロフォンDにより、受音室32に伝搬される重量床衝撃音Vk(k=1〜5)を測定し、この重量床衝撃音Vkと乾式二重床を設置する前に予め測定しておいたスラブ素面における重量床衝撃音V0k(k=1〜5)とから重量床衝撃音レベルの低減量ΔVkを算出する。
なお、同図の符号PはマイクロフォンDにより検出した音圧信号を処理するコンピュータで、符号Rはレコーダーである。
また、壁式構造実験室30における重量床衝撃音の測定は、JIS−A−1440,1−2による方法で行った。
また、壁式構造実験室30のスラブ素面の打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0kは、前記ステップS11と同様の方法で算出する。
【0015】
ステップS15では、ステップS14で求めたインピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0kと重量床衝撃音レベルの低減量ΔVkとの関係から重量床衝撃音レベルの低減量を予測する予測式を求める。
図5(a),(b)は、壁式構造実験室について、インピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0kと重量床衝撃音レベルの低減量ΔVkとの関係を調べた結果を示す図で、各図に示すように、ΔL0kとΔVkとは高い相関を示すので、相関関係を示す一次回帰式を求め、下記に示すような、一次回帰式を予測式とした。
ΔVk=a・ΔL0k+b
なお、図5(a)は図3(a)に示したtype Aの乾式二重床での結果で、図5(b)は図3(b)に示したtype Bの乾式二重床での結果である。
インピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0kと重量床衝撃音レベルの低減量ΔVkとは、type AではR=0.94、type BでもR=0.91と高い相関を示すことがわかった。したがって、前記の一次回帰式を予測式とすれば、乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルと予測式とから乾式二重床を設置した後の重量床衝撃音レベルを予測することができる。
【0016】
ステップS16では、ステップS15で求めた予測式とステップS11で求めた乾式二重床が設置される前のスラブのインピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔLsとから乾式二重床の重量床衝撃音レベルの低減量ΔVk(k=1〜5)を予測する。以下、ΔVkを乾式二重床の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値という。
次に、ステップS16で求めた乾式二重床の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値ΔVkと、ステップS11で求めたスラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルの予測値Vskとから乾式二重床の打振点毎の重量床衝撃音レベルVDkを算出し(ステップS17)、この打振点毎の重量床衝撃音レベルVDkを算術平均して乾式二重床の重量床衝撃音レベルVDを算出する(ステップS18)。
【0017】
このように本実施の形態では、乾式二重床が設置される前のスラブのインピーダンス特性を計算して、前記スラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するとともに、壁式構造実験室に乾式二重床を設置して重量床衝撃音レベルの低減量と壁式構造実験室のスラブの打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値を求めてこのインピーダンスレベルの上昇量の計算値と重量床衝撃音レベルの低減量との関係から重量床衝撃音レベルの低減量を予測する予測式を求め、この予測式を用いて重量床衝撃音レベルの低減量の予測値を算出した後、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルと予測式とを用いて乾式二重床が設置されたときの重量床衝撃音レベルを予測するようにしたので、乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを精度良く予測することができる。
【0018】
なお、前記実施の形態では、ステップS11で乾式二重床を設置する前のスラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルを予測したが、スラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルの予測は、ステップS11に限定されるものではなく、ステップS16の前であれば、いつ行ってもよい。
また、前記例では、乾式二重床を設置する前のスラブ素面の打振点毎の重量床衝撃音レベルを計算によって予測したが、これらをスラブの構築後に測定によって求めてもよい。
また、前記例では、選定された一つの乾式二重床についての重量床衝撃音レベルVDを算出する場合について説明したが、異なる構成の乾式二重床についての重量床衝撃音レベルVDを算出する場合や、床支持具21の防振材21Gを構成するゴムクッションの硬度などの構造の一部を変更する場合には、ステップS12〜ステップS18の各ステップを再度行えばよい。
なお、このときには、ステップS14の壁式構造実験室のスラブ素面の打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値ΔL0k(k=1〜5)については、改めて算出する必要はなく、前の構成の乾式二重床での重量床衝撃音レベルVDを算出したときに算出した値をそのまま用いればよい。
【0019】
[実験例]
以下、本願の効果を実証した実験結果を述べる。
図6(a)は、スラブ素面の重量床衝撃音レベルの予測値と乾式二重床設置後の実測値の5点平均の分布を示す図で、図6(b)は、実測値と予測値とのレベル差の分布を示す図である。また、図7(a)は、本発明による乾式二重床を含む重量床衝撃音レベルの予測値と乾式二重床設置後の実測値の5点平均の分布を示す図で、図7(b)は、実測値と予測値とのレベル差の分布を示す図である。
図6(a)及び図7(a)において、白抜きの三角形はtype Aの乾式二重床のデータ、塗り潰した菱形はtype Bの乾式二重床のデータである。
また、図6(b)及び図7(b)において、白抜きの棒がtype Aの乾式二重床のデータ、塗り潰した棒がtype Bの乾式二重床のデータである。
また、図8は、重量床衝撃音レベルの予測値と実測値とのレベル差の確率密度分布を示す図で、実線が本発明による乾式二重床を含む重量床衝撃音レベルの予測値と実測値とのレベル差、破線がスラブ素面の予測値と実測値とのレベル差である。
【0020】
図6(a)に示すように、スラブ素面の重量床衝撃音レベルは、予測値は66dB〜77dBに分布しているが、実測値では65dB〜80dBに分布している。また、図6(b)に示すように、レベル差の平均値は、全体では2.6dB、type Aでは2.7dB、type Bでは2.3dBであり、乾式二重床設置後の実測値が予測値よりも2〜3dB大きかった。また、標準偏差は、全体では4.1、type Aでは4.1、type Bでは4.5で、乾式二重床設置後の実測値が予測値よりも大きくなる方向に広く分布する傾向にあった。
これに対して、本発明による重量床衝撃音レベルの予測値は、図7(a)に示すように、69dB〜76dBに分布している。また、図7(b)に示すように、レベル差の平均値は、全体では1.2dB、type Aでは1.3dB、type Bでは1.0dBであり、乾式二重床設置後の実測値と予測値との差が大幅に小さくなっていることが分かった。また、標準偏差も、全体もtype Aもtype Bも2.8で分布も狭くなっていることが分かった。
また、図8に示すように、本発明による予測では、重量床衝撃音レベルの予測値と実測値との差は+5dB以内に90%程度含まれており、予測値と実測値との差は従来のスラブ素面による予測値に比べて平均値も0に近づいていることから、本発明の予測方法を用いれば、乾式二重床の重量床衝撃音レベルを精度よく予測できることが確認された。
【0021】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、乾式二重床の重量床衝撃音レベルを精度よく予測できるので、遮音性能の高い乾式二重床を効率よく設計することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 対象居室、11 部屋、12 梁、
20 スラブ、21 床支持具、21G 防振材、22 補助パーティクルボード、
23 パーティクルボード、24 下地合板、25 フローリング、26 床材、
27 壁、28 防振根太、28G クッション材、28K 緩衝材、29 幅木、
30 壁式構造実験室、31 音源室、32 重音室、
H バングマシーン、D マイクロフォン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上に配置された複数の床支持具と前記床支持具上に設けられた複数の床板から成る床材とを備えた乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測する方法であって、
スラブの基本インピーダンスレベルと前記乾式二重床が設置される前のスラブの周辺拘束によるインピーダンスレベルの上昇量とインピーダンスレベルの共振による低下量とを算出して前記乾式二重床が設置される前のスラブのインピーダンス特性を計算し、前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するステップと、
衝撃音発生源が設置された音源室と前記音源室の階下に位置し重量床衝撃音レベルを測定する測定器が設置された受音室とを備えた壁式構造実験室の前記音源室に乾式二重床を設置して重量床衝撃音レベルの低減量を測定するステップと、
前記壁式構造実験室のスラブの打振点毎のインピーダンスレベルの上昇量の計算値を求めるステップと、
前記インピーダンスレベルの上昇量の計算値と前記重量床衝撃音レベルの低減量との関係から重量床衝撃音レベルの低減量を予測するための予測式を求めるステップと、
前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルと前記予測式とを用いて前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するステップと、を備えることを特徴とする乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測方法。
【請求項2】
前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルを予測するステップが、
前記予測式と前記算出された乾式二重床が設置される前のスラブの周辺拘束によるインピーダンスレベルの上昇量とから前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値を算出するステップと、
前記乾式二重床が設置される前のスラブの打振点毎の重量床衝撃音レベルから前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの低減量の予測値を減じて前記乾式二重床が設置される建物の打振点毎の重量床衝撃音レベルを算出するステップと、
前記打振点毎の重量床衝撃音レベルを算術平均して前記乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測値を算出するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の乾式二重床が設置される建物の重量床衝撃音レベルの予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36778(P2013−36778A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171123(P2011−171123)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】