説明

乾式分析要素およびその製造方法

【課題】血液中のグルコースなどの測定対象成分の濃度測定を迅速に行え、かつ製造時の取り扱いの問題を解決した乾式分析要素およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】液体試料中の測定対象成分を測定又は検出するための乾式分析要素において、測定対象成分を測定又は検出するための試薬を含む非繊維質多孔性担体からなる試薬層が、微貫通空隙構造の接着剤層を介して、光透過性・水不透過性支持体に接着して一体化されていることを特徴とする乾式分析要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の液体中に含まれるグルコースなどの測定対象成分の定量分析において、過酸化水素を生成するオキシダーゼ反応系を利用する乾式分析要素およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のグルコース濃度を試験するのに、酵素系組成物を含む乾式分析要素が診療所、医院、病院及び家庭で広く使用されている。実際に、乾式分析要素は糖尿病患者の多くにとって日常必需品となっている。糖尿病患者は血糖濃度を1日に複数回測定し、その結果に応じて、例えば食事制限及び/又はインスリン注射の実施を行わなければならず、測定の迅速化は非常に重要な課題となっている。この課題に対して、例えば、特許第2545250号、特開平9−121894号、特開平11−183474号に記載のグルコースオキシダーゼ法を用いて、グルコース濃度に依存した色変化を生ずるような試薬を含む乾式分析要素が提案されている。しかしながら、グルコースオキシダーゼが有効に働くためには、空気中の酸素の十分な供給が必要不可欠であるために、試薬の担持を強度が弱いまたは伸縮しやすい多孔質膜のみに行わなければならず、製造時の取り扱いにおいて、問題が生じる場合があり、安定した製造を実施することが困難である。 一方で、例えば特開2000−146960号に記載の支持体に多孔性素材をゼラチン等で完全に接着した多層分析要素では、製造時の取り扱いの問題が解決されているが、空気中の酸素の十分な供給ができなくなり、測定の迅速化が達成できなくなる。
【0003】
そこで、迅速な測定が可能で、かつ製造時の取り扱いの問題が解決された血液中のグルコース濃度測定用の乾式分析要素の開発が求められている。
【0004】
【特許文献1】特許第2545250号
【特許文献2】特開平9−121894号
【特許文献3】特開平11−183474号
【特許文献4】特開2000−146960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、血液中のグルコースなどの測定対象成分の濃度測定を迅速に行え、かつ製造時の取り扱いの問題を解決した乾式分析要素およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題点を解決するべく鋭意検討の結果、光透過性・水不透過性支持体に接着剤を介して、反応試薬を含有した非繊維質多孔性担体を多孔性接着することによって、酸化反応に必要な酸素の大気中からの供給を十分に保ちながら、かつ製造時の取り扱いの問題が格段に改善されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明によれば、液体試料中の測定対象成分を測定又は検出するための乾式分析要素において、測定対象成分を測定又は検出するための試薬を含む非繊維質多孔性担体からなる試薬層が、微貫通空隙構造の接着剤層を介して、光透過性・水不透過性支持体に接着して一体化されていることを特徴とする乾式分析要素が提供される。
【0008】
好ましくは、測定対象成分はグルコースである。
好ましくは、測定対象成分を測定又は検出するための試薬は、グルコースと反応して呈色する試薬である。
好ましくは、測定対象成分を測定又は検出するための試薬は、グルコースオキシターゼ、ペルオキシターゼ、及びロイコ色素である。
好ましくは、光透過性・水不透過性支持体の表面に、ホットメルト型接着剤を、グラビア印刷法によりグラビアローラーからの転写により、点状に付着させることによって、微貫通空隙構造の接着剤層が設けられている。
【0009】
本発明の別の側面によれば、光透過性・水不透過性支持体の表面に微貫通空隙構造の接着剤層を設ける工程、及び接着剤層が設けられた光透過性・水不透過性支持体の表面に、非繊維質多孔性担体からなる試薬層を設ける工程、を含む、上記した本発明の乾式分析要素の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、光透過性・水不透過性支持体に接着剤を介して、反応試薬を含有した非繊維質多孔性担体を多孔性接着することによって、酸化発色反応に必要な大気中の酸素供給を十分に行うことで迅速測定が可能になり、また製造時の取り扱いの問題が格段に改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の乾式分析要素は、液体試料中の測定対象成分を測定又は検出するための乾式分析要素であって、測定対象成分を測定又は検出するための試薬を含む非繊維質多孔性担体からなる試薬層が、微貫通空隙構造(または微貫通孔構造)の接着剤層を介して、光透過性・水不透過性支持体に実質的に密着して接着して一体化されていることを特徴とする乾式分析要素である。ここで、試薬層の、微貫通空隙構造(または微貫通孔構造)の接着剤層を介した光透過性・水不透過性支持体への接着は、多孔性接着又は微多孔性接着とも称する。
【0012】
上記の通り、本発明の乾式分析要素は、非繊維質多孔性担体からなる試薬層と、微貫通空隙構造の接着剤層と、光透過性・水不透過性支持体とから構成されるものである。
【0013】
本発明の乾式分析要素の構成を図1に示す。本発明の乾式分析要素は、図1に示すように、液体中の成分を検出するための試薬成分が担持する非繊維質多孔性担体1と光透過性・水不透過性支持体3は、微貫通空隙構造の接着剤層2により接着して一体化されている。
【0014】
本発明では、非繊維質多孔性担体として小さい孔径の開孔部を備えた平面(以下密面と呼称する)と大きい孔径の開孔部を備えた平面(以下粗面と呼称する)とを有する高度に非対称性の形状を備え、かつ両開孔部は連通しているものが利用される。このような非繊維質多孔性担体は、具体的には、例えば、ニトロセルロース、ポリビニルジフロライド、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。特に富士写真フイルム(株)社から販売されているSEシリーズフィルターは、密面における平均開孔径が0.53〜3.0μm、粗面における平均開孔径が1.0〜5.0μmと非対称性を有するポリスルホン製多孔性担体であり、本発明による乾式分析要素の好適な素材となる。
【0015】
また、上記非繊維質多孔性担体は、親水性を有する材質から構成される、または親水化剤を担持させる、もしくは親水化処理を行うことが、検体の供給、展開に要する時間を短縮することができるという理由から好ましい。上記親水化剤としては、例えば、トライトンX−100(Rohm&Haas社製)等の界面活性剤、水溶性シリコン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。また親水化処理としては、例えば、プラズマ処理、グロー放電、コロナ放電、紫外線照射等の処理方法が好適に例示される。
【0016】
光透過性・水不透過性支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ビスフェノールAのポリカルボネート、ポリスチレン、セルロースエステル(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等)等のポリマーからなる厚さ約50μmから約1mm、好ましくは約80μmから約300μmの範囲のフイルムもしくはシート状の透明支持体を挙げることができる。
【0017】
本発明における微貫通空隙構造の接着剤層としては、例えば印刷における網点と同じように円、方形、星形、不定型等のドット状の接着剤が整然と配列されたもの、平行状細線(波型または直線)形、交叉細線(波型または直線)形に配列されたもの(この場合、微貫通孔構造接着剤層になる)、スクリーンレスドット(砂目状パターン)のように微視的にはドットの形、大きさ、配列はランダムであるが巨視的には均一性が感じられるように配列されたもの等の部分的配列のいずれかになるように配置された接着剤層が用いられる。単位面積当りの接着剤のドットや線が占める総面積の比率、すなわち接着剤面積率は、印刷における網点面積率(日本印刷学会編「印刷工学便覧」1983年発行,262〜263頁)と同様の定義により、約80%以下、好ましくは約50%以下、最も好ましくは約5%から約20%の範囲である。接着剤のドット径または線の太さは、約50μmから約3mmの範囲で接着される対向2表面の間に毛細間隙ができない範囲で実験により決めることができる。
【0018】
接着剤としては液状接着剤、非ニュートン粘性の液体接着剤、ホットメルト型(熱融解型)接着剤等を用いることができる。液状接着剤としては粘度約1000cps以上で延糸性の少ない接着剤が多孔性シートの表面に局在し、多孔性シートの内部方向への侵入の少ない点で好ましい。その具体例としてポリビニルアルコール水溶液、デキストリン水溶液、カルボキシメチルセルロース水溶液がある。非ニュートン粘性の液体接着剤としては固体微粒子等を適宜混合して非ニュートン粘性を付与された液体接着剤が好ましい。その具体例として澱粉糊、メチルセルロース添加澱粉糊、酢酸ビニル−ブチルアクリレートコポリマー水性エマルジョンがある。ホットメルト型接着剤としては温度約55℃以下で固体状の接着剤が好ましい。その具体例としてエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−イソブチルアクリレートコポリマー、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーがある。ホットメルト型接着剤は糸状、細毛糸状、顆粒状、微粒子状、粉状等のものを適宜選択して用いることができる。
【0019】
接着剤の部分的存在パターンを形成する好ましい方法として印刷方式による方法がある。印刷方式として、凹版またはグラビア版により直接表面に接着剤パターンを形成する方法、オフセット印刷方式で一度ゴムローラー、離型紙等の上に接着剤パターンを移し取り、さらにこの接着剤パターンを接着する表面に移す方法、ポリエチレンテレフタレート紗スクリーンまたはメタルスクリーンを通してスクリーン印刷方式により直接またはオフセット方式で接着する表面に接着剤パターンを形成する方法等がある。ホットメルト型接着剤を用いる場合にはこれらの方法は接着剤の融解温度より高い温度で実施することができる。
【0020】
接着剤の部分的存在パターンを形成する他の方法として、仮支持体の表面に固体微粒子等を適宜混合して非ニュートン粘性を付与された液体接着剤の薄層を塗布形成し、その上に例えばメンブランフィルタまたは抄造紙を一様に重ねた後すぐにこれを剥離することによりメンブランフィルタまたは抄造紙の表面に印刷におけるスクリーンレスドット状の接着剤パターンを形成する方法がある。
【0021】
このようにして支持体表面に接着剤の部分的存在パターンが形成された支持体を非繊維質多孔性担体(表面に接着剤パターンが形成されていない)に重ねあわせ(ホットメルト型接着剤を用いる場合には接着剤の融解温度より高い温度で)実質的に一様な軽い圧力を加えることにより非繊維質多孔性担体と支持体は相互に微貫通空隙構造(または微貫通孔構造)の接着剤層により実質的に密着して接着され一体化する。
【0022】
このようにできた支持体のある非繊維質多孔性担体に、液体中の特定成分を検出するための発色試薬を塗布し、乾燥させて、多孔性乾式分析要素を形成する。この乾式分析要素は非繊維質多孔性担体が微貫通空隙構造の接着剤層により支持体と接着されているので、酸化発色反応に必要な大気中の酸素がこの微貫通空隙構造によってできた空間から十分に供給されるという特徴を有する。さらに、強度が弱い非繊維質多孔性担体が支持体と一体化されるため、塗布、加工など製造時の取り扱いの問題が大幅に改善されるというメリットもある。
【0023】
本発明における試薬成分としては、従来種々のタイプの試験片に応用された試薬系と同じものを利用し得る。具体的には、例えば、血糖値測定用の場合、グルコースオキシターゼ(GOD)と、ペルオキシターゼ(POD)と、ロイコ色素或いは、4−アミノアンチピリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンのような発色剤(発色試薬)とが挙げられる。
【0024】
また、本発明の乾式分析要素は液体中のグルコース測定に限定されるものではなく、液体中のその他の成分の測定にも利用できる。例えば、前記グルコース測定試薬の中に含まれるグルコースオキシターゼ(GOD)に代わり、コレステロールオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼからなる群より選ばれる酸化酵素を用いることで、液体中のコレステロール、乳酸、アルコール、を測定することもできる。
【0025】
グルコースオキシダーゼとしては、Aspergillus niger、Penicillium notatum等由来のものを用いることが好ましい。
【0026】
コレステロールオキシダーゼとしては、Nocardia erythroporis、Brevibacterium、Pseudomonas、Mycobacterium、スエヒロタケ等から得られたものを用いることが好ましい。
【0027】
乳酸オキシダーゼとしては、Aerococcus viridans、Pediococcus sp等から得られたものを用いることが好ましい。
【0028】
アルコールオキシダーゼとしては、Basidiomycete、H.polymorpha及びKloeckera sp.等から得られたものを用いることが好ましい。
【0029】
ペルオキシダーゼとしては、植物起源あるいは動物起源のペルオキシダーゼ、微生物起源のペルオキシダーゼを用いることができる。植物起源あるいは微生物起源の非特異的ペルオキシダーゼを用いることが好ましい。西洋わさびもしくは大根から抽出したペルオキシダーゼ、Cochliobolus属もしくはCurvularia属の微生物から抽出したペルオキシダーを用いることがさらに好ましい。
【0030】
イミダゾールロイコ色素は、過酸化水素の存在下、ペルオキシダーゼ等の酸化作用を有する物質が触媒として働くことにより呈色する発色体である。ロイコ色素としては、例えば、特開昭59−193352号公報の明細書に記載のロイコ色素を使用することができる。該公報に記載のロイコ色素は、600以上、好ましくは600〜700nmの波長の範囲に吸収ピークを有し、青色に発色する。その中でも2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−5−フェネチルイミダゾール、もしくは2−(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−5−ベンジルイミダゾールを用いることが好ましい。
【0031】
本発明の乾式分析要素に適用される液体試料の種類は特に限定されず、任意の液体試料(例えば、全血、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、髄液、膣液などの体液;あるいは飲料水、酒類、河川水、工場廃水等)中の測定対象成分を分析することができる。
【0032】
本発明の乾式分析要素は一辺約10mmから約30mmの正方形またはほぼ同サイズの円形等の小片に裁断し、特公昭57−28331(対応米国特許4,169,751)、実開昭56−142454(対応米国特許4,387,990)、特開昭57−63452、実開昭58−32350、特表昭58−501144(対応国際公開WO83/00391)等に記載のスライド枠に収めて化学分析スライドとして用いることが、製造,包装,輸送,保存,測定操作等の観点で好ましい。使用目的によっては、長いテープ状でカセットまたはマガジンに収めて用いたり、又は小片を開口のあるカードに貼付または収めて用いたり、あるいは裁断した小片をそのまま用いることなどもできる。こうして、1枚または2枚以上の小片を収めた容器は、項目名やロット番号、キャリブレーションなどの情報を有することができる。これらの情報は、例えば、IC、磁気やバーコードなどを用いることができ、ハードウェア上で簡便に読み取り、自動化に有用である。
【0033】
本発明の乾式分析要素は、例えば約0.5μL〜約30μL、好ましくは1μL〜10μLの範囲の液体試料を、試薬層に点着する。点着した乾式分析要素を約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間インキュベーションする。乾式分析要素内の発色又は変色を支持体側から反射測光し、予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により液体試料中の測定対象成分の量を求めることができる。
【0034】
測定操作は特開昭60−125543号公報、特開昭60−220862号公報、特開昭61−294367号公報、特開昭58−161867号公報(対応米国特許4,424,191)などに記載の化学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析を実施できる。なお、目的や必要精度によっては目視により発色の度合いを判定して、半定量的な測定を行ってもよい。
【0035】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:グルコース定量用乾式分析要素1の作製
(1)非繊維質多孔性担体と支持体の接着
厚さ180μmで平滑な表面の無色透明PETシート(支持体)を温度80℃に予熱した表面に、温度130℃に加熱して溶融させたスチレン−ブタジエンブロックコポリマー系ホットメルト型接着剤を、グラビア印刷法を利用してグラビアローラーからの転写により、点状に付着させた。グラビアローラーは、円型のドットの直径0.3mm、ドット中心間距離0.6mm、ドット面積率約20%のものを用いた。付着した固形成分の量は約3g/m2であった。接着剤が転写された直後の高温の支持体の表面に、粗面平均孔径1.0μm、密面平均孔径0.5μm、厚さ130μm、空隙体積約80%のポリスルホンメンブランフィルター(富士写真フイルム(株)製ミクロフィルターSE−10)の密面と向かい合わせてラミネートローラーの間を通し、両者をラミネート(接着一体化)した。
【0037】
(2)グルコース定量用乾式分析要素1の作製
こうして完成した支持体と多孔性接着したポリスルホンメンブランフィルター(SE−10)に下記の表1に記載の発色試薬組成物溶液を1m2当たりの110.3mLの割合で塗布し、乾燥させて、12×13mmの長方形チップに裁断し、特開昭57−63452号公報に記載のスライド枠に収めてグルコース定量用乾式分析要素1を作製した。
【0038】
【表1】

【0039】
比較例1:グルコース定量用乾式分析要素2の作製
比較のために、支持体を接着していない、非繊維質多孔性担体(富士写真フイルム(株)製ミクロフィルターSE−10)を実施例1と同様な発色試薬組成物溶液に30秒を含浸し、乾燥させて、グルコース定量用乾式分析要素2を作製した。
【0040】
比較例2:グルコース定量用乾式分析要素3の作製
比較のために、特開2000−146960の実施例により、全血中のグルコース量を測定することできるグルコース定量用乾式分析要素3を作製した。
【0041】
測定例1:
実施例1及び比較例1及び2で作製したグルコース定量用乾式分析要素1〜3について、全血中のグルコース量を測定する場合の反応速度について比較検討した。
【0042】
ヒト全血に、グルコースの生食水溶液を添加して、グルコース濃度がそれぞれ100、300、500mg/dLの試料を調製した。上記のグルコース定量用乾式分析要素1、2、3にそれぞれの試料3μLを点着し、点着後の経過時間に対応する乾式分析要素内の発色濃度を650nmにて瞬間光学反射測定装置MCPD3000(大塚電子株式会社製)によって測定した。測定結果をそれぞれ図2、3、及び4に示す。
【0043】
図2〜4より、支持体と展開層がゼラチンバインダーで完全に接着されているグルコース定量用乾式分析要素3を用いた場合は、上記全血試料を点着後、反応の終結までに約80秒を要するが、本発明の多孔性接着された乾式分析要素であるグルコース定量用乾式分析要素1を用いた場合には、約10秒後には反応が完結していることが分かった。さらにグルコース定量用乾式分析要素1は多孔性接着されていないグルコース定量用乾式分析要素2(非繊維質多孔性担体のみ)を用いた場合と同程度の反応性を持っていることも同時に確認された。
【0044】
以上の結果より、本発明の多孔性接着された乾式分析要素は血液中のグルコース濃度測定を迅速に行え、かつ製造時の取り扱い性を容易にできることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の乾式分析要素の断面図を示す。1は、膜(試薬層)を示し、2は接着剤層を示し、3は透明支持体を示す。
【図2】図2は、本発明の乾式分析要素を用いた場合の各グルコース濃度におけるタイムコースを示す。
【図3】図3は、支持体無し(膜のみ)の乾式分析要素を用いた場合の各グルコース濃度におけるタイムコースを示す。
【図4】図4は、支持体を有し、無孔性の乾式分析要素を用いた場合の各グルコース濃度におけるタイムコースを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の測定対象成分を測定又は検出するための乾式分析要素において、測定対象成分を測定又は検出するための試薬を含む非繊維質多孔性担体からなる試薬層が、微貫通空隙構造の接着剤層を介して、光透過性・水不透過性支持体に接着して一体化されていることを特徴とする乾式分析要素。
【請求項2】
測定対象成分がグルコースである、請求項1に記載の乾式分析要素。
【請求項3】
測定対象成分を測定又は検出するための試薬が、グルコースと反応して呈色する試薬である、請求項2に記載の乾式分析要素。
【請求項4】
測定対象成分を測定又は検出するための試薬が、グルコースオキシターゼ、ペルオキシターゼ、及びロイコ色素である、請求項2又は3に記載の乾式分析要素。
【請求項5】
光透過性・水不透過性支持体の表面に、ホットメルト型接着剤を、グラビア印刷法によりグラビアローラーからの転写により、点状に付着させることによって、微貫通空隙構造の接着剤層が設けられている、請求項1から4の何れかに記載の乾式分析要素。
【請求項6】
光透過性・水不透過性支持体の表面に微貫通空隙構造の接着剤層を設ける工程、及び接着剤層が設けられた光透過性・水不透過性支持体の表面に、非繊維質多孔性担体からなる試薬層を設ける工程、を含む、請求項1から5の何れかに記載の乾式分析要素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−148657(P2008−148657A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342099(P2006−342099)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】