説明

乾式洗浄方法及び乾式洗浄装置

【課題】乾式洗浄媒体の運動速度及び清浄度を高めることにより洗浄品質及び洗浄効率を向上することが可能であると共に、複雑な形状の部品であっても傷付きや洗浄残しを発生することなく乾式洗浄を行うことが可能な乾式洗浄方法及び乾式洗浄装置を提供する。
【解決手段】付着物4が付着した被洗浄体1に洗浄媒体2を衝突させることにより被洗浄体1から付着物4を除去する乾式洗浄方法において、洗浄媒体2として可撓性を有し気流により飛翔する薄片状のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄体に付着した塵埃や粉体等の付着物を水や溶剤を使用せず固体洗浄媒体を使用して除去する乾式洗浄方法及び乾式洗浄装置に関し、特に画像形成装置で用いられるトナーが付着した比較的複雑な形状の被洗浄体を洗浄する乾式洗浄方法及び乾式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の事務機器メーカでは、資源循環型社会実現のため使用済みの製品やユニットをユーザから回収した後に分解、清掃、再組立し、部品として再使用したり材料として再利用したりするリサイクル活動を積極的に行っている。これらの製品あるいはユニットに使用されている部品を再利用するためには、それらユニットや部品に付着している微粒子粉体であるトナーを除去し清浄化する工程が必要であり、清浄化に必要なコストや環境負荷を減らすことが大きな課題となっている。
【0003】
水や溶剤を使用した湿式の洗浄方法の場合には、トナーを含んだ廃液の処理及び洗浄後の乾燥処理のエネルギ消費や環境負荷が大きく、高コストであるという問題点がある。一方エアブローによる乾式洗浄方法の場合には、付着力の強いトナーに対しては洗浄能力が十分ではなく人手によるウェス拭き等の後工程が必要であるため、清浄化は製品のリユース及びリサイクルにおけるボトルネック工程の1つとなっている。
【0004】
この課題を解決するため、乾式洗浄媒体として電子写真プロセスに使用される現像剤(キャリア)を用い、洗浄対象物である被洗浄体に付着しているトナー粉体を洗浄媒体に吸着させて取り出すことによる乾式洗浄方法が、例えば本願出願人による「特許文献1」に開示されている。また、ガラス、ナイロン、アクリル等からなる球状あるいは円柱状の洗浄媒体を用い、被洗浄体に付着したトナーを除去するトナー容器洗浄装置が、例えば本願出願人による「特許文献2」に開示されている。さらに、被洗浄体の変形及び傷付きを防止するため、柔軟なスポンジまたはゴム等からなる中実または中空の球体からなる洗浄媒体を用いて被洗浄体である被清掃壁面に付着した汚れを清掃し、洗浄媒体に付着した汚れを洗浄手段により洗浄した後に再度被清掃壁面の清掃に供給する清掃装置が、例えば「特許文献3」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
「特許文献1」及び「特許文献2」に開示された技術では静電的吸着を利用した洗浄媒体であるため、洗浄媒体の汚れ(トナーの付着)が進むとトナー吸着力が低下したり洗浄媒体から被洗浄体にトナーが再付着し易くなったりすることから、洗浄品質を高めるために洗浄媒体の清浄度を高める必要がある。しかし、旋回気流による遠心分離作用(サイクロン方式)では分離性能が不十分であり、また洗浄品質をより高めるにはトナーを吸着した洗浄媒体を何度も入れ替える必要があることから、洗浄効率が悪く大量の洗浄媒体が必要であるという問題点がある。
【0006】
「特許文献3」に開示された技術では洗浄媒体としてスポンジやゴムを用いているので、洗浄媒体に付着した汚れを取ることが容易ではなく洗浄時間が長くなってしまうと共に、付着力が強い汚れに対しては十分な洗浄効果が得られないという問題点がある。
【0007】
本発明は上述の問題点を解決し、乾式洗浄媒体の運動速度及び清浄度を高めることにより洗浄品質及び洗浄効率を向上することが可能であると共に、複雑な形状の部品であっても傷付きや洗浄残しを発生することなく乾式洗浄を行うことが可能な乾式洗浄方法及び乾式洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、付着物が付着した被洗浄体に洗浄媒体を衝突させることにより前記被洗浄体から前記付着物を除去する乾式洗浄方法において、前記洗浄媒体として可撓性を有し気流により飛翔する薄片状のものを用いることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の乾式洗浄方法において、さらに前記洗浄媒体として複数の異なる形状のものを用いることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の乾式洗浄方法において、さらに前記洗浄媒体として複数のサイズのものを用いることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の乾式洗浄方法において、さらに前記洗浄媒体として複数の異なる材質のものが用いられることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の乾式洗浄方法により前記被洗浄体に付着した付着物を除去する乾式洗浄装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、洗浄媒体として可撓性を有し気流により飛翔する薄片状のものを用いることにより、洗浄媒体が撓むことにより被洗浄体を傷付けてしまうことを防止できると共に非弾性衝突により洗浄効率を高めることができ、洗浄媒体が薄片状であることにより高速飛翔及び複雑な運動が可能となって比較的複雑な形状の被洗浄体を洗浄する際にも高い洗浄能力及び洗浄効率を得ることができると共に、滑り接触による掻き取り作用及び摺擦作用により付着力の強い付着物の除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態を採用した乾式洗浄方法を説明する概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に用いられる洗浄媒体の挙動及び特性を説明する概略図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に示す乾式洗浄方法を実施するための乾式洗浄装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施形態に示す乾式洗浄方法を実施するための乾式洗浄装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態を採用した乾式洗浄方法を示している。同図において、符号1は付着物が付着した被洗浄体としてのワークを、符号2はワーク1より付着物を除去する洗浄媒体を、符号3は洗浄媒体2をワーク1に向けて飛翔させる送風手段をそれぞれ示している。
【0016】
ワーク1は洗浄すべき対象物のことであり、本実施形態ではトナーボトルや現像装置のケーシング等の、付着物としてトナーが付着したものを用いている。ワーク1は図示しない固定手段によって固定されている。
洗浄媒体2は、可撓性を有し気流により飛翔する薄片状のものが用いられ、ワーク1の形状や材質等の特性、ワーク1に付着している付着物の粒径や付着強さ等の特性に応じ、その材質、重さ、大きさ、形状等が決定される。
洗浄媒体2が飛翔するための気流を生成する送風手段3は、ワーク1の固定位置より所定の距離だけ離れた位置に配置されている。この送風手段3としては、ブロー手段、圧縮空気源、エアチューブ、エアブローノズル、噴霧装置等を用いることができる。送風手段3による気流の生成方法としては洗浄媒体2が飛翔可能であればどのような方法でもよく、気体と混合した状態で洗浄媒体2を吐出する構成としてもよいし、気体の吹き出し口に予め洗浄媒体2を配置する構成としてもよい。
【0017】
上述の構成により、送風手段3の作動により気流Aが生成される際に、気流Aの流路上に存在する多数の洗浄媒体2が気流Aに乗って飛翔し、飛翔した多数の洗浄媒体2の多くはワーク1に接触あるいは衝突してワーク1から付着物を掻き落とし、ワーク1の洗浄が行われる。この構成により、ブラシ、ワイヤ、スクレーパ等のように固定支持された洗浄手段とは異なり洗浄媒体2が流体として挙動するため、ワーク1の隅々まで洗浄媒体2が侵入することにより洗浄効果を向上することができる。
【0018】
この構成において、送風手段3として圧縮空気源に接続されたエアブローノズルを用いることにより気流Aとして高速の気流を生成することができ、ワーク1の洗浄能力を高めることができる。また、気流Aの速度を高めることにより洗浄媒体2がワーク1に接触する頻度が上昇するため、ワーク1の洗浄時間を短縮することができ洗浄効率を向上することができる。
【0019】
上述の構成において、洗浄媒体2が可撓性を有する、すなわちワーク1に対して接触あるいは衝突した際に撓むことが可能であることにより、ワーク1に与える衝撃を低減できると共に洗浄効率を高めることができる。洗浄媒体2が可撓性を有することにより、ワーク1に対する接触力が大きくなると洗浄媒体2が撓んで力を逃がすため、一般的なブラストショット材やバレル研磨用のメディア材のように必要以上の力でワーク1に衝突してワーク1を傷付けてしまうといった不具合の発生を防止することができる。また、ワーク1に対する接触あるいは衝突時に洗浄媒体2が撓むことで非弾性衝突となり、衝突時における洗浄媒体2の跳ね返りが生じにくくなることで洗浄媒体2がワーク1の広い面積に接触することができ、洗浄媒体2がワーク1から多くの付着物4(図2参照)を除去することにより洗浄効率を高めることができる。
【0020】
さらに上述の構成において、洗浄媒体2として薄片状のものを用いることにより、他の形状の洗浄媒体を用いた場合に比して飛躍的に洗浄性能を向上することができる。この理由としては、気流への追従性(高速飛翔と複雑な運動)及び接触あるいは衝突時の挙動(エッジ作用、滑り接触、撓み作用)が他の形状の洗浄媒体よりも優れていたためであると考えられる。先ず、気流への追従性について説明する。
【0021】
薄片状の洗浄媒体2は、投影面積が大きい方向に気流Aの力が作用した場合、空気抵抗に対する質量が非常に小さいため気流Aによって容易に加速されて高速飛翔し、また投影面積が小さい方向に気流Aの力が作用した場合、空気抵抗が小さいことから高速運動が長距離維持される。洗浄媒体2が高速であるほどその保有エネルギが大きくなり、ワーク1に接触したときに作用する力が大きくなるので洗浄品質を向上することができると共に、ワーク1に接触する頻度が増加することにより洗浄効率を向上することができる。また薄片状の洗浄媒体2は姿勢によって空気抵抗が大きく変化するため、気流Aに沿って動くだけではなく急に方向を変える等の複雑な運動が可能である。高速である気流Aの作用によってワーク1の周辺には乱気流が発生するが、質量に比して空気抵抗を受け易い薄片状の洗浄媒体2は乱気流への追従性が高く、乱気流の渦によって自転しながら回転しつつワーク1に対して繰り返しの接触が可能であるため、比較的複雑な形状のワーク1の洗浄においても高い洗浄能力及び洗浄効率を得ることができる。
【0022】
次に、接触あるいは衝突時の挙動について説明する。図2は滑り接触による付着物除去の様子を説明する模式図であり、同図において符号4は付着物を示している。
薄片状の洗浄媒体2がその端部からワーク1に衝突した場合には、衝突力がそのエッジに集中するために質量が小さいにも拘らず付着物4の除去に必要な力を得ることができる。また薄片状の洗浄媒体2の場合には衝突力が大きくなると撓んで力を逃がすため、空気から受ける粘性抵抗が大きく作用して非弾性衝突となることによりワーク1との接触時間が長くなり、洗浄能力を向上することができる。さらに薄片状の洗浄媒体2では衝突時の跳ね返りが起こりにくく、斜め衝突の場合は図2に示すようにワーク1に対して滑り接触するため、洗浄媒体2がワーク1の広い面積に接触してワーク1から多くの付着物4を除去することにより洗浄効率を高めることができる。これに対し、一般的なショット材や弾性スポンジでは衝突時に跳ね返りが生じ易く、ワーク1への衝突時における接触効率が薄片状の洗浄媒体2に比して低い。
【0023】
さらに薄片状の洗浄媒体2では、接触あるいは衝突時の滑り接触による掻き取り作用及び摺擦作用により付着物4に対して接触面に平行な力を作用させ易い。一般に、付着物4に対しては付着面に垂直な方向に力を作用させるよりも付着面に平行な方向に力を作用させる方が小さな力で付着物4を分離できることが知られている。これに対し、従来知られている粒状のスポンジや粒状の発泡体では、可撓性を有するために変形可能であって衝突時にワーク1の広い面積に接触することはできるものの、跳ね返りや転がりが生じ易いことから滑り接触による掻き取り作用及び摺擦作用を得ることはできず、付着物4をワーク1から分離するための剪断力が得られないことから、付着力の強い付着物4に対する洗浄能力が薄片状の洗浄媒体2よりも劣ることとなる。
【0024】
以上が、薄片状の洗浄媒体2が他の洗浄媒体よりも比較的複雑な形状のワーク1に対しても洗浄能力及び洗浄効率が高い理由であると考えられ、これらは従来のブラストショット材やバレル研磨用のメディア材、粒状のスポンジや粒状の発泡体にはない画期的な特徴である。この可撓性を有する薄片状の洗浄媒体2の形状としては、面積1〜1000mm、厚み1〜500μm程度、材質としては例えば樹脂フィルム片、熱可塑性エラストマフィルム片、ゴム片、布片、紙片、金属薄片等が適当であるがこの限りではなく、上述したようにワーク1の形状や材質等の特性、ワーク1に付着している付着物の粒径や付着強さ等の特性に応じて適宜決定される。
【0025】
上述より、本発明の乾式洗浄方法によれば、洗浄媒体2として可撓性を有し気流Aにより飛翔する薄片状のものを用いることにより、洗浄媒体2が撓むことによりワーク1を傷付けてしまうことを防止できると共に非弾性衝突により洗浄効率を高めることができ、洗浄媒体2が薄片状であることにより高速飛翔及び複雑な運動が可能となって比較的複雑な形状のワーク1を洗浄する際にも高い洗浄能力及び洗浄効率を得ることができると共に、滑り接触による掻き取り作用及び摺擦作用により付着力の強い付着物4の除去を行うことができる。
【0026】
第1の実施形態では、送風手段3の作動により生成した気流Aによってワーク1に対し洗浄媒体2を飛翔させ、洗浄媒体2の衝突によってワーク1より付着物4を洗浄する構成としたが、図3に示すように送風手段3に向かう気流Bを生成する送風手段5を設け、送風手段5の作動による気流Bによって洗浄媒体2を上方へと飛翔させた後、送風手段3の作動による気流Aによって洗浄媒体2をワーク1に向けて飛翔させることによりワーク1の洗浄を行う構成としてもよい。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態は第1の実施形態と比較すると、洗浄媒体2として複数の異なる形状のものを用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
洗浄媒体2としては様々な面形状のものが使用でき、第1の実施形態で示した正方形の他、長方形、三角形、星形、円形等のものを使用することが可能である。正方形や長方形の矩形状の場合、直線的なエッジを長く取ることができワーク1との接触面積を大きく取れることにより洗浄能力を向上することができると共に、製造が容易でありコストダウンを図ることができる。三角形や星形の場合、鋭角の先端部がワーク1の凹凸部に入り込むことができ、洗浄残しを少なくすることができる。円形の場合、常に同じ姿勢でワーク1に対して衝突するので、洗浄結果のばらつきが小さくなるという作用効果がある。このようにそれぞれの形状によってワーク1に対する洗浄能力が異なるため、いろいろな形状が混在した洗浄媒体2を用いることにより総合的な洗浄能力を高めることができる。
【0028】
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。この第3の実施形態は第1の実施形態と比較すると、洗浄媒体2として複数の異なるサイズのものを用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
洗浄媒体2としては、様々なサイズのものを使用することができる。洗浄媒体2が大きい場合にはワーク1との接触面積を大きく取れることにより洗浄能力を向上することができるが、大きすぎるとワーク1の細かい部分には入り込めず洗浄残しが発生する。洗浄媒体2が小さい場合にはワーク1の細部にまで入り込めるが、小さすぎるとワーク1との接触面積が小さすぎて洗浄効率が悪化すると共にワーク1内に残留した際に発見しにくい。このようにそれぞれのサイズによってワーク1に対する洗浄能力が異なるため、いろいろなサイズが混在した洗浄媒体2を用いることにより総合的な洗浄能力を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。この第4の実施形態は第1の実施形態と比較すると、洗浄媒体2として複数の異なる材質のものを用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
洗浄媒体2としては、可撓性を有するものであれば様々な材質のものを使用することができる。例えば、一般的な樹脂フィルムを用いた場合には柔軟性及び耐久性があるため、ワーク1を傷付けることなく長期間繰り返し使用することが可能となり、さらにポリエチレンであれば安価でありコストダウンを図ることができる。また、ワーク1に複数種類の付着物4が付着している場合には、複数の材質を用いることにより洗浄の役割分担を行うことができる。例えば樹脂フィルムでは油脂汚れを吸着除去することは苦手であるが、吸着物が少ないために乾式で再生を行い易い。これとは逆に布では油脂汚れを吸着除去することは得意であるが、乾式で再生しにくいために繰り返しの使用には耐えられない。特に洗浄媒体2を繰り返し使用する場合にはその機械的強度が要求されるため、紙や布は不利となり樹脂や金属は有利となる。また金属箔については、繰り返しの応力を受けると塑性変形してしまうという問題点があるため、樹脂フィルム、熱可塑性エラストマフィルム、ゴム等のミクロな高分子が絡まり合いあるいは結合した集合体のものが有利となる。特に樹脂フィルムは熱可塑性エラストマあるいはゴムに比してワーク1に非弾性衝突し易いため、洗浄効率的にも有利である。このようにそれぞれの材質によってワーク1に対する洗浄能力が異なるため、いろいろな材質が混在した洗浄媒体2を用いることにより、総合的な洗浄能力を高めることができる。
【0030】
図4は、上述の乾式洗浄方法を実施するための乾式洗浄装置の一例を示している。この乾式洗浄装置6は、ワーク1を固定する図示しない固定手段、洗浄媒体2をワーク1に向けて飛翔させるための気流Aを生成させるべく作動する送風手段7、ワーク1に衝突して洗浄を行った後の洗浄媒体2を回収する吸引口8、吸引口8から回収された洗浄媒体2を貯容する筒体9、筒体9内に配設され洗浄媒体2を搬送するスクリュ10、筒体9内から空気を吸引する吸引手段11等を有している。送風手段7としては、ブロー手段、圧縮空気源、エアチューブ、エアブローノズル、噴霧装置等を用いることができ、この送風手段7は筒体9の吐出口9aに接続され、送風手段7の作動により気流Aが生成される。筒体9の内部にはメッシュ9bが配設されており、このメッシュ9bの目の粗さは、洗浄媒体2は通過できずに洗浄媒体2に付着した付着物のみが通過できる大きさに設定されている。
【0031】
上述の構成により、送風手段の作動によって気流Aが生成され、筒体9内の洗浄媒体2が所定の飛翔速度(例えば10m/s)でワーク1に向けて飛翔する。飛翔した洗浄媒体2の多数はワーク1に衝突し、この衝突によってワーク1より付着物を叩き落とす。ワーク1に衝突しなかった洗浄媒体2は、吸引手段11の作動により吸引口8から再び筒体9内に導かれる。ワーク1より叩き落とされた付着物は、そのまま気流中に飛散するものと洗浄媒体2に付着するものとがあり、気流中に飛散したものは吸引口8から筒体9内に導かれ、メッシュ9bを通過して吸引手段11により吸引される。ワーク1に衝突した洗浄媒体2は、吸引手段11の作動により吸引口8から筒体9内に導かれる。そして洗浄媒体2に付着した付着物は、メッシュ9bを通過して吸引手段11により吸引される。筒体9内に導かれた洗浄媒体2はスクリュ10によって搬送され、再び洗浄に供されることとなる。
【0032】
この乾式洗浄装置6によれば、洗浄媒体2によってワーク1に付着した付着物を洗浄し、洗浄媒体2自体に付着した付着物もメッシュ9bによって洗浄されるので、洗浄された洗浄媒体2を繰り返しワーク1に衝突させることができ、従来の乾式洗浄装置に比して洗浄能力及び洗浄効率を大幅に向上することが可能となる。スクリュ10に代えて、1軸偏心ねじポンプあるいはエア搬送手段等を用いてもよい。
【0033】
図5は、乾式洗浄装置の他の例を示している。この乾式洗浄装置12は、図4に示した乾式洗浄装置6と比較すると、ワーク1を保持する閉空間である洗浄槽13を有する点、吸引口8が洗浄槽13に接続されている点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0034】
この乾式洗浄装置12によれば、洗浄媒体2が洗浄槽13内でのみ飛翔するため、洗浄媒体2の飛散が抑制されることによりワーク1に衝突する洗浄媒体2が増加し、洗浄能力及び洗浄効率をさらに向上することができると共に、洗浄媒体2及び付着物の飛散による周囲の汚損を防止することができ、作業効率を向上することができる。
【0035】
以下に、上述した実施形態の具体例を示す。
先ず、乾式洗浄方法によって除去対象となる付着物(トナー)の付着力による影響を観察するため、複写機のトナーカートリッジにトナーを付着させた後に所定温度で1時間加温し、付着力の異なるサンプル(付着力弱、付着力中、付着力強)を作成した。送風手段としてはSilvent社製エアノズルSL−920Aを複数配列し、圧縮空気圧は0.1MPa,0.5MPa,1MPaで一定となるように設定してそれぞれ2分間洗浄を行った。
ここで、本実施形態と同様の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体として、
(1)厚さ30μm、5mm角のポリエチレン製フィルム
(2)厚さ30μm、5mm角のPET(ポリエチレンテレフタラート)製フィルム
(3)厚さ100μm、5mm角のポリエチレン製フィルム
(4)厚さ100μm、5mm角のPET製フィルム
の4種を使用した。
また、比較例として、
(5)洗浄媒体を使用しないエアブローのみによる乾式洗浄
及び洗浄媒体として各種粒状の洗浄媒体を使用した乾式洗浄を行った。
ここで、各種粒状の洗浄媒体として
(6)2mm角立方体のナイロン
(7)直径2mmのナイロン球
(8)直径5mmのウレタンスポンジ球
(9)厚さ2mm、直径5mmのPET円板(可撓性なし)
を使用した。実験の結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果より、本発明における可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を使用した乾式洗浄方法が、従来の粒状の洗浄媒体を使用した乾式洗浄方法よりも良好な洗浄結果を得られることが判明した。
【0038】
次に、洗浄媒体を繰り返し使用して乾式洗浄を行った際の具体例を示す。
複写機のトナーカートリッジにトナーを付着させた後に所定温度で1時間加温し、付着力が中のサンプルを作成した。送風手段としてはSilvent社製エアノズルSL−920Aを複数配列し、圧縮空気圧は0.5MPaで一定となるように設定して2分間洗浄を行った。このときサンプル毎に洗浄媒体を変えることはせず、同一の洗浄媒体を使用し続けた場合のサンプル処理数の増加に伴う洗浄結果の推移を比較した。
ここで、本実施形態と同様の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体として、
(1)厚さ100μm、5mm角のポリエチレン製フィルム
(2)厚さ100μm、5mm角のPET製フィルム
(3)厚さ100μm、5mm角のナイロン布片
(4)厚さ100μm、5mm角の紙片
(5)厚さ100μm、5mm角のアルミ箔片
を使用した。実験の結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2の結果より、特に洗浄媒体の材質が樹脂である場合に、繰り返し使用においては良好な洗浄結果を得られることが判明した。
【0041】
上述の具体例では、被洗浄体からの除去対象物である付着物として複写機やレーザプリンタ等の電子写真装置に用いられる乾式トナー(平均粒径5〜10μm程度)を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されることはなく、一般的な粉体や塵埃付着物の洗浄についても応用可能である。この場合、被洗浄体及び付着物の性状に応じて洗浄媒体の種類(大きさ、形状、材質等)、気流の流速及び流量を適宜設定することとなる。
【符号の説明】
【0042】
1 被洗浄体(ワーク)
2 洗浄媒体
4 付着物
6,12 乾式洗浄装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2003−122123号公報
【特許文献2】特開2005−193958号公報
【特許文献3】特開平4−59087号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着物が付着した被洗浄体に洗浄媒体を衝突させることにより前記被洗浄体から前記付着物を除去する乾式洗浄方法において、
前記洗浄媒体として可撓性を有し気流により飛翔する薄片状のものを用いることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項2】
請求項1記載の乾式洗浄方法において、
前記洗浄媒体として複数の異なる形状のものを用いることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の乾式洗浄方法において、
前記洗浄媒体として複数のサイズのものを用いることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の乾式洗浄方法において、
前記洗浄媒体として複数の異なる材質のものが用いられることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の乾式洗浄方法により前記被洗浄体に付着した付着物を除去することを特徴とする乾式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274263(P2010−274263A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195582(P2010−195582)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【分割の表示】特願2006−74843(P2006−74843)の分割
【原出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】