説明

乾式流水検知装置

【課題】スプリンクラーヘッドの作動により開放した主弁体の開放状態を維持可能な乾式流水検知装置の提供。
【解決手段】本体1の内部が隔壁5によって一次側室6と二次側室7に分けられており、隔壁5に穿設された連通口8の上には主弁体9が着座され、主弁体9の連通口8と反対の側には制御室10が形成されており、制御室内10には流体が充填されており、制御室10から外部へ通じる配管上に設置されたアクセラレーター3の内部には排出管18につながる流路を閉止する弁体が設置されており、該弁体は二次側室7の圧力が減少することで開放され、アクセラレーター3の弁体の開放状態を維持可能なラッチ機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季に凍結のおそれのある寒冷地に設置される乾式消火設備に用いられる乾式流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乾式流水検知装置としては、リフト弁構造のバルブによって構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に示す乾式流水検知装置の本体51は内部が隔壁52によって一次側室53と二次側室54に分けられており、隔壁52に穿設された連通口55の上には主弁体56が着座している。連通口55と着座している主弁体56の反対側には制御室57が形成されており、制御室57には一次側室53の流体が連通可能となっている。常時において一次側室53および制御室57には水が充填されており、二次側室54には圧縮空気が充填されている。
【0004】
制御室57から外部へ通じる配管上にはアクセラレーター58が設置されている。アクセラレーター58内部は、上部空間58Aと下部空間58Bが形成されており、上部空間58Aはダイアフラム59により上室60Aと下室60Bに仕切られている。ダイアフラム59には小穴61が設置されており、小穴によって下室60Bと上室60Aとの流体の通過が可能である。
【0005】
ダイアフラム59にはロッド62が設置されており、ロッド62は下部空間58Aへ貫通して設置されている。ロッド62の下部空間58A側の端には弁体63が設置されている。弁体63は常時において閉止しており、制御室57と排水管64との連通を阻止しているがロッド62が下方へ移動すると開放状態となって制御室57と排水管64が連通可能となる。
【0006】
二次側室54に接続された図示しない二次側配管上のスプリンクラーヘッドが作動すると、二次側室54内の圧縮空気は作動したスプリンクラーヘッドから抜け出て二次側室54内は圧力が低下する。
【0007】
二次側室54と連通しているアクセラレーター58の下室60Bの圧力も低下する。下室60Bが圧力低下したことで上室60Aも圧力が低下するが、小穴61によって上室60Aの圧力は下室60Bの圧力低下と比較してゆっくり下がるので、上室60Aの圧力が下室60Bの圧力を上回り、ダイアフラム59およびロッド62は図中下方へ移動する。ロッド62が下方に移動したことで弁体63が開放して制御室57内の水を排出管64から放出させる。制御室57内の水が放出したことで制御室57内が減圧し、主弁体56が開放して一次側室53の水が二次側54に流入する。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−83887号公報
【特許文献2】特開2003−305137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の流水検知装置では制御室57内の水を排出させて主弁体56を開放したが、主弁体56の開放後にアクセラレーター58の下室58A内に流体が流れ込み、圧力が上昇して上室58Aと下室58Bの圧力が同圧になると主弁体56が閉じられ、それにより主弁体56が閉止してしまう可能性がある。これを防止するために二次側室54と下室60Bの間には遮断弁65が設置され、主弁体56の開放後に下室60Bへの流体の侵入を阻止可能に構成されているが、何らかの理由により遮断弁65が作動しなかった場合には主弁体56が閉止して作動したスプリンクラーヘッドへの給水が停止してしまうおそれがある。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドの作動により開放した主弁体の開放状態を維持可能な乾式流水検知装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の乾式流水検知装置を提供する。
本体内部が隔壁によって一次側室と二次側室に分けられており、隔壁に穿設された連通口の上には主弁体が着座され、主弁体の連通口と反対の側には制御室が形成されており、制御室内には流体が充填されており、制御室から外部へ通じる配管上に設置されたアクセラレーター内部には排出管につながる流路を閉止する弁体が設置されており、該弁体は二次側室の圧力が減少することで開放され、アクセラレーターの弁体の開放状態を維持可能なラッチ機構を設けたことを特徴とする乾式流水検知装置である。
これによれば、アクセラレーター内の弁体の開放状態を維持可能であり、制御室内部の流体を継続して排出管へ流し続けることができるので主弁体の開放状態を維持可能とすることができる。
【0012】
前記本発明については、アクセラレーター内の弁体の一端はアクセラレーターの外部に突出して設けられており、ラッチ機構は弁体のアクセラレーターの外部側端の近傍に設置可能である。
これによれば、ラッチによる係合状態の確認が目視により容易に可能となる。さらにラッチによる係合を解除する際においても容易に解除操作を行うことができる。

【発明の効果】
【0013】
上記の乾式流水検知装置によれば、アクセラレーターの弁体がラッチにより開放状態を維持することで主弁体の作動後に制御室内の流体を継続的に排出することが可能となり、主弁体の開放状態を維持することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の乾式流水検知装置が設置されたスプリンクラー設備の系統図
【図2】本発明の乾式流水検知装置の概要図
【図3】アクセラレーターの断面図
【図4】遮断弁の断面図
【図5】図2の作動状態図
【図6】図3の作動状態図
【図7】従来の乾式流水検知装置の概要図
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施形態(図1〜図6)
本発明の乾式流水検知装置は、本体1、圧力スイッチ2、アクセラレーター3、遮断弁4から構成される。
【0016】
本体1はリフト弁構造をしており、内部が隔壁5によって一次側室6と二次側室7に分けられている。一次側室6は一次側配管と接続されており、一次側配管Iは水源WやポンプP等の給水装置と接続している。二次側室7は二次側配管IIが接続され、二次側配管II上にはスプリンクラーヘッドSHや、二次側配管II内に圧縮空気を導入するコンプレッサーCが設置されている。
【0017】
隔壁5には一次側室6と二次側室7を連通する連通口8が穿設されており、連通口8の二次側室7には有底円筒形状の主弁体9が設置されており、主弁体9の底部9Aが連通口8の縁部に着座している。主弁体9が着座している連通口8の縁部には穴が穿設されており、該穴は隔壁5内の環状の空間である中間室8Aと連通している。中間室8Aは後述の圧力スイッチ2と連通している。
【0018】
主弁体9の内側と本体1の内壁によって制御室10が形成される。制御室10はオリフィス10Aによって一次側室6と連通しており、制御室10内には水が充填されている。主弁体9が閉止状態にあるとき制御室10内の圧力と一次側室6内の圧力は等しい。
【0019】
圧力スイッチ2は、本体1の外部に設置され、配管11Cにより前述の中間室8Aと接続されている。圧力スイッチ2は主弁体9が開放した際に中間室8Aを通じて圧力スイッチ2へ流入してきた水の圧力によって作動するスイッチである。圧力スイッチ2の信号により乾式流水検知装置が作動したことが図示しない受信盤に出力される。
【0020】
アクセラレーター3は、制御室10から外部に通じる配管11Aに設置されている。アクセラレーター3内部は、上部空間12Aと下部空間12Bが形成されており、上部空間12Aはダイアフラム13により上室14Aと下室14Bに仕切られている。上部空間の下室14Bは二次側室7と配管11Bによって接続されており配管11B上には後述する遮断弁4が設置されている。下部空間12Bには前述の配管11Aが接続されている。
【0021】
ダイアフラム13の中心部には柱部15が設置されており、柱部15には小穴15Aが穿設されている。上部空間12A内の流体は小穴15Aによって上室14Aと下室14Bとの間を通過可能であり、常時において上室14Aと下室14Bの圧力は等しい。柱部15の小穴15Aより下側は下部空間12Bへ貫通した柱部15が設置されている。
【0022】
柱部15の下端には弁体16が設置されている。弁体16は下部空間12Bの連通口17を開閉するものであり、常時において連通口17は弁体16によって閉止しており、制御室10と下部空間12Bに接続された排出管18との連通を阻止しているが、柱部15が下方へ移動すると開放状態となって制御室10と排出管18が連通可能となる。
【0023】
弁体16には、弁体16を連通口17側に付勢するバネ16Aが設置されている。また弁体16の連通口17に接する側と反対の側にはアクセラレーター3の外部に突出したロッド部16Bが形成されている。
【0024】
アクセラレーター3のロッド部16B近傍には、ラッチ19が設置されている。ラッチ19は弁体16が閉止状態のときは係止解除状態であるが、弁体16が開放してロッド部16Bが図中下方に移動した際に係止状態となる。
【0025】
ラッチ19がアクセラレーター3の外側に設置されているので、ラッチ19の係止状態を目視によって容易に確認することができる。またラッチ19による係止を解除する際にも容易に解除操作を行うことができる。
【0026】
遮断弁4は前述のように配管11B上に設置されており、主弁体9が開放した後に流路を閉じる構成となっている。遮断弁Aの具体的な構成は図4に示すように本体30内部がダイアフラム31によって上室32と下室33に分けられている。上室32は二次側室7と通じた配管11Bと接続しており、下室33はアクセラレーター3の上室12Aと連通した配管11Cに接続している。
【0027】
ダイアフラム31には弁体34が設置されている。常時において弁体34は下室33側の弁座33Aに着座している。弁体の上室32側には32Aが形成され、弁体34が上室32側に移動した際に弁座32Aへ着座する。
【0028】
続いて本発明の乾式流水検知装置の動作について説明する。
【0029】
上記の乾式流水検知装置は、一次側室6および一次側室6と連通している制御室10内には水が充填されている。二次側室7およびアクセラレーター3の上部空間12A内にはコンプレッサーCからの圧縮空気が充填されている。
【0030】
火災が発生すると、二次側配管に接続されているスプリンクラーヘッドが作動する。スプリンクラーヘッド4が作動すると、二次側配管内に充填されている圧縮空気が作動したスプリンクラーより放出され、二次側配管内の圧力は急激に降下する。
【0031】
二次側配管内部の圧力が降下したことでアクセラレーター3内の下室14Bの圧力も同様に降下する。しかしながら上室14A内の圧力は小穴15Aによって少しずつ降下するので、次第に上室14Aと下室14Bとの圧力差が大きくなり、上室14A内の圧力が下室14Bの圧力を上回るので、上室14Aの圧力によってダイアフラム13は下室14B側に変形して柱部15を下方に移動させる。
【0032】
柱部15が下方に移動したことで弁体16も下方へ移動し、連通口17が開放される。連通口17の開放によって下部空間12Bに接続されている配管11Aと排水管18が連通可能となり、制御室10内の水が配管11Aを通って排出管18から外部に放出される(図6参照)。
【0033】
その際、弁体16のロッド部16Aがラッチ19と係合して、この係合状態が維持され弁体16を開放状態に維持し、制御室10内に流入してきた水を排出管18から継続して排出することで主弁体9の開放状態を維持する。
【0034】
制御室10内の水は図2に示すように、オリフィス10Aによって一次側室6から供給されるのでオリフィス10Aにより制御室10に流入する水量よりも配管11Aから排出される水量の方が上回るので制御室10内は急速に減圧され、主弁体9は制御室10の方向へ移動して連通口8が開放する。
【0035】
連通口8の開放によって、中間室8A内に一次側室6の水が流入して圧力スイッチ2が作動するとともに、一次側室6内の水が二次側室7側に流れて二次側室7に接続された二次側配管のスプリンクラーヘッドに水が送られる。スプリンクラーヘッドから水が室内に散布され、火災の抑制・消火が行われる。

【符号の説明】
【0036】
1 本体
2 圧力スイッチ
3 アクセラレーター
4 遮断弁
6 一次側室
5 二次側室
8 連通口
8A 中間室
9 主弁体
10 制御室
11A、11B、11C 配管
13 ダイアフラム
16 弁体
18 排出管
19 ラッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内部が隔壁によって一次側室と二次側室に分けられており、隔壁に穿設された連通口の上には主弁体が着座され、主弁体の連通口と反対の側には制御室が形成されており、制御室内には流体が充填されており、制御室から外部へ通じる配管上に設置されたアクセラレーター内部には排出管につながる流路を閉止する弁体が設置されており、該弁体は二次側室の圧力が減少することで開放され、アクセラレーターの弁体の開放状態を維持可能なラッチ機構を設けたことを特徴とする乾式流水検知装置。

【請求項2】
アクセラレーター内の弁体の一端はアクセラレーターの外部に突出して設けられており、ラッチ機構は弁体のアクセラレーターの外部側端の近傍に設置可能とした請求項1記載の乾式流水検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−13478(P2013−13478A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146925(P2011−146925)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】