説明

乾燥ゲル粒子ならびにその製造方法

【課題】性能的に優れ、生産性の良い乾燥ゲル粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】アルキルセルロース誘導体と水を混合して混練物を得て、その混練物に放射線を照射し架橋してペースト状のゲルを得て、そのゲルを成形孔から押し出して粒子化し、粒子状のゲルを乾燥することを特徴とする。この乾燥ゲル粒子において、前記アルキルセルロース誘導体が、カルボキシル基の一部がアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩になっているカルボキシアルキルセルロースであることを特徴とする乾燥ゲル粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースあるいは澱粉を原料とした乾燥ゲルに係り、特に乾燥ゲル粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛、豚、鶏などの家畜から排泄される家畜排泄物の量は莫大であり、家畜の糞尿処理については野積みされているところも少なくなく、雨水などによりこれが水源、河川、海などに流れ出して公害問題を引き起こしている。
【0003】
家畜の糞尿処理の一般的な方法は、糞尿におが屑を1.5〜2倍混合した後、攪拌、発酵して肥料化する方法が多用化されているが、この方法だと体積が増えることになり、さらにおが屑は腐り難いため発酵するまでに長期間(約6ヶ月)かかり、大きな保管スペースが必要となる。また木材加工が減少し、おが屑の入手が困難になっている。排出物からの水分除去の問題は、食品残渣や焼酎、ビールなどの絞り粕の堆肥化、肥料化においても同様で深刻な課題である。
【0004】
また、紙オムツや生理用品などの吸水材として従来は各種の吸水性ポリマーが使用されているため、安全面や廃棄等の後処理に問題を抱えている。
【特許文献1】特開2001―2703号公報
【特許文献2】特開2001―329070号公報
【特許文献3】特開2005―95737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、自己架橋型アルキルセルロース誘導体およびその製造方法についての提案がある(特許文献1参照)。このアルキルセルロース誘導体は、放射線照射により自己架橋させた後、乾燥し易いようにスライスし、これを金網の棚に載せて熱風乾燥して、次に乾燥したゲルを破砕機で所定の粒径に粉砕するというプロセスを経て粒子状の乾燥ゲルを得ていた。
【0006】
このように従来の方法では、スライス工程、乾燥工程ならびに粉砕工程が必要であり、工数が多くて生産性に難点がある。また、架橋済みのゲルをスライスする際に厚すぎると、乾燥に時間がかかるばかりでなく、乾燥が不十分だとゲルの性能(例えば吸水力、保水力)がばらつき、品質上の問題がある。さらに乾燥したゲルを破砕機で粉砕する際に破砕機の種類によっては刃こぼれがあり、細かい金属の破片が乾燥ゲル粒子の中に混入するという安全面にも問題がある。
【0007】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解消し、性能的に優れ、生産性の良い乾燥ゲル粒子ならびにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の第1の手段は、架橋したアルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体からなり、表面に微細な凹凸を有し、内部に細孔をもって多孔質になっていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記アルキルセルロース誘導体が、カルボキシル基の一部がアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩になっているカルボキシアルキルセルロースであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第3の手段は、アルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体と水を所定の割合で混合して、アルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体と水が満遍なく混じり合った混練物を得る混練工程と、
前記混練物に放射線を照射してアルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体を架橋してペースト状のゲルを得る放射線照射工程と、
水分を包含した前記ゲルを成形孔から押し出して、所定の大きさに粒子化する粒子化工程と、
前記粒子状のゲルを乾燥して乾燥ゲル粒子を得る乾燥工程とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第4の手段は前記第3の手段において、前記混練物をプラスチック製の袋の中に入れて放射線を照射することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第5の手段は前記第3の手段において、前記乾燥ゲル粒子を水分透過率の低い袋体に封入することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第5の手段において、前記アルキルセルロース誘導体が、カルボキシル基の一部がアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩になっているカルボキシアルキルセルロースであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は前述のような構成になっており、吸水力、保水力に優れた乾燥ゲルを提供することができる。また本発明の製造方法によれば、乾燥前に予め成形により粒子化するため、表面積が大きくなり乾燥し易く、乾燥時間の短縮が図れ、さらに粒径のばらつきが少ないから、ゲルの性能(例えば吸水力、保水力)がほぼ一定で品質的に安定している。さらに乾燥後の粉砕工程が不要となり、破砕機の刃こぼれ、それに伴う金属破片の混入などの問題もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において原料として使用されるアルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体としては、カルボキシアルキル化合物、ヒドロキシアルキル化合物、アルキル化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0016】
アルキルセルロース誘導体についてさらに詳しく説明すると、(A)カルボキシアルキルセルロース、(B)ヒドロキシアルキルセルロース、(C)アルキルセルロースなどがある。
【0017】
(A)カルボキシアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素がカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基により置換されたものであり、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース(CEC)などが好適である。その中でもカルボキシル基の20%以上、好ましくは40%以上がアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アンモニウム塩またはアミン塩のカルボキシアルキルセルロースが好適である。
【0018】
(B)ヒドロキシアルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素に、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどを反応して得られるもので、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどが好適である。その中でもヒドロキシル基の20%以上、好ましくは40%以上がアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)のヒドロキシアルキルセルロースが好適である。
【0019】
(C)アルキルセルロースは、セルロースのヒドロキシル基の水素がメチル基、エチル基、プロピル基により一部置換されたものであり、メチルセルロースやエチルセルロースなどが好適である。アルキルセルロースのアルキルエーテル化度が66%以下、好ましくは33%以下である。ヒドロキシル基の40%以上、好ましくは50%以上がアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)のアルキルセルロースが好適である。
【0020】
前述したアルキルセルロース誘導体のアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩は、水と均一な混合物(ペースト状)を形成するため本発明の原料として特に好適である。
【0021】
カルボキシメチルセルロースの分子構造式を示せば下記の通りである。
【化1】

【0022】
アルキルセルロース誘導体の平均重合度は、50〜1000、好ましくは200〜800程度である。またアルキルセルロース誘導体の平均エーテル化度は、0.5〜3、好ましくは1.1〜3である。エーテル化度が0.5未満では十分な架橋反応が起こらない。
【0023】
アルキル澱粉誘導体は、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉などを原料とする澱粉からなり、具体的にはカルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、メチル澱粉、エチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、酸化澱粉、アセチレン澱粉、アミノアルキル澱粉、アリル澱粉などが挙げられる。特にアルキル澱粉のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)は、水と均一な混合物(ペースト状)を形成するため本発明の原料として特に好適である。
【0024】
カルボキシメチル澱粉の分子構造式を示せば下記の通りである。
【化2】

【0025】
本発明において放射線を照射する際の原料に対する水の混合比率は、原料がアルキルセルロース誘導体とアルキル澱粉誘導体とでは異なる。原料がアルキルセルロース誘導体の場合は、アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水100〜670重量部、好ましくは233〜400重量部である。アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水の量が100重量部未満では、生成したゲルの強度は増して硬いが、十分な吸水力、保水力が得られず、吸水剤、保水剤としては実用的でない。一方、アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水の量が670重量部を超すと、放射線の照射により原料の分解が優先して進行し十分な架橋反応を起こすことができず、吸水力、保水力が低下する。
【0026】
一方、原料がアルキル澱粉誘導体の場合は、アルキル澱粉誘導体100重量部に対して水67〜335重量部、好ましくは150〜233重量部である。アルキル澱粉誘導体100重量部に対して水の量が67重量部未満では、生成したゲルの強度は増して硬いが、十分な吸水力、保水力が得られず、吸水剤、保水剤としては実用的でない。一方、アルキル澱粉誘導体100重量部に対して水の量が335重量部を超すと、放射線の照射により原料の分解が優先して進行し十分な架橋反応を起こすことができず、吸水力、保水力が低下する。
【0027】
水が共存しない粉末(固体)の状態で原料(アルキルセルロース誘導体、アルキル澱粉誘導体)に直接放射線を照射すると、原料の分解が優先して進行し、架橋反応は起こっていないことが実験で確認されている。水の存在下ではヒドロキシラジカルが生成し、このヒドロキシラジカルを介して架橋剤を使用しない自己架橋反応が進行するものと考えられる。
【0028】
本発明で使用する水としては、水道水、工業用水、脱気水、脱イオン水、ろ過水、蒸留水などが用いられ、塩素やアルコールなどが含まれていない水が好適である。
【0029】
本発明で使用する放射線源としては、例えばα線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線などを使用することができ、コバルト60からのγ線、X線、電子線が好適である。
【0030】
照射する放射線量は、原料と水の混合比率によって異なる。すなわち、アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水100重量部混合した場合は放射線の照射量はγ線換算で3KGy、アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水670重量部混合した場合は放射線の照射量はγ線換算で25KGyである。従ってアルキルセルロース誘導体100重量部に対して水を100〜670重量部の範囲で混合する場合、放射線の照射量はγ線換算で3〜25KGyで、好ましくは5〜10KGyである。また、アルキル澱粉誘導体100重量部に対して水67重量部混合した場合は放射線の照射量はγ線換算で3KGy、アルキルセルロース誘導体100重量部に対して水335重量部混合した場合は放射線の照射量はγ線換算で25KGyである。従ってアルキル澱粉誘導体100重量部に対して水を67〜335重量部の範囲で混合する場合、放射線の照射量はγ線換算で3〜25KGyで、好ましくは5〜10KGyである。
【0031】
何れの原料の場合も前記放射線の照射量が3KGy未満であると架橋反応が十分に進行せず、十分な吸水力、保水力が得られない。一方、照射量が25KGyを超えると架橋反応が進み過ぎて、十分な吸水力、保水力が得られない。
【0032】
放射線照射後にゲル中に雑菌が侵入するのを防止するため、ポリエステル系樹脂などのプラスチックフィルムによって原料と水のペースト状混練物を覆った状態で放射線を照射するのが好ましい。
【0033】
図1は、本発明の実施例に係る乾燥ゲルの製造工程を示す工程図である。
同図に示すようにステップ(以下、Sと略記する)1において原料(アルキルセルロース誘導体、アルキル澱粉誘導体)と水を混合して、ペースト状(糊状)の混練物を得る。本実施例では原料としてCMC−Na粉末を使用し、原料100重量部に対して純水を400重量部(CMC−Na粉末20重量%、純水80重量%)、あるいは原料100重量部に対して純水を231重量部(CMC−Na粉末30重量%、純水70重量%)添加して、後述する混練装置によって均一かつ十分に混練する。架橋反応において原料を混ぜ合わせる水が微妙に影響することから、原料と水が満遍なく混じり合うことが肝心である。
【0034】
得られたペースト状の混練物を、放射線が内部まで十分に透過できる厚さに成形する。コバルト60からのγ線を使用する場合の成形体の厚さは5〜20cm、電子線を使用する場合の成形体の厚さは1〜3cmが適当である。この柔軟な成形体をプラスチック製の袋の中に入れる。成形体を袋の中に入れる目的は、雑菌の侵入防止と、成形体の取り扱い性を良好にするためである。
【0035】
S2では、前記混練物に対して放射線を照射する。本実施例ではコバルト60からのγ線あるいは電子線を使用しており、放射線の照射量はγ線換算で3〜25KGyである。放射線の照射量が増えると架橋反応によってできる網目構造は細かくなりゲル強度は高まるが、反面水分を蓄える網の目構造が小さくなった分だけ吸水力、保水力が落ちる。
【0036】
本実施例のようにペースト中の原料含有率が20〜30重量%の場合は、放射線の照射量がγ線換算で3〜25KGyであれば吸水力、保水力に富んだ架橋ゲルを得ることができる。本実施例ではペースト中の原料含有率が20重量%の場合は5〜25KGy、ペースト中の原料含有率が30重量%の場合は3〜10KGyとしている。ペースト中の原料含有率または放射線の照射量を減らすと、ゲル強度は低くなるが、網の目構造は大きくなり吸水力、保水力が高まることが実験で確認されている。
【0037】
S3では、放射線照射済みの水分を含んだ生の状態のゲル(弾性体)を後述する押し出し装置に投入し易い大きさに裁断する。裁断する大きさは、押し出し装置内に設置されているスクリューの送りピッチなどによって決定される。
【0038】
S4では、裁断されたゲルを押し出し装置に投入して、乾燥し易い大きさに粒子化し、引き続いて後述する乾燥装置で乾燥して乾燥ゲルを得る。本実施例では乾燥ゲルの用途に応じて、平均粒径が2mm未満の細粒、2〜4mmの中粒、4mmを超える粗粒に分けて製造される。本実施例の場合乾燥温度は40〜130℃の範囲に規制されている。
【0039】
S5では、得られた乾燥ゲルを所定量秤量しながら袋体に封入する。この包装には水分透過率の低い例えば厚手のポリエステル系樹脂フィルムなどが用いられ、保存中に乾燥ゲル粒子が水分を吸収しないように蜜封される。
【0040】
本発明に係る架橋ゲルは、乾燥粉末化しても架橋構造は崩れず、吸水、保水性能は殆ど低下しないことが実験で確認されており、乾燥粉末化することにより吸水剤や保水剤などへの利用が簡便となり、用途の拡大が図れる。
【0041】
図2は前記混練工程で用いる混練装置の縦断面図、図3はその混練装置の攪拌羽根の一部を示す部分平面図である。混練装置はこれらの図に示すように、下方に底部1を有し、上方に投入口2を有する容器本体3と、前記投入口2を開閉する蓋体4と、前記容器本体3内に平行に配置された2本のシャフト5a,5bと、シャフト5a,5bに取り付けられた攪拌羽根6a,6bとを備えている。
【0042】
前記シャフト5a,5bは、1つの駆動モータ(図示せず)によって異なる方向あるいは同じ方向に回転駆動される。前記攪拌羽根6a,6bは、図2に示すようにシャフト5a,5bの周方向に沿って等間隔に多数枚取り付けられ、しかも図3に示すようにシャフト5a側の攪拌羽根6aと攪拌羽根6aの間にシャフト5b側の攪拌羽根6bが入り込む形に配置されている。図2に示すように容器本体3の下半分の内面には、攪拌羽根6a,6bの先端の回転軌跡に沿うように2つの断面形状が円弧状の溝部が形成されている。
【0043】
原料であるアルキルセルロース誘導体あるいはアルキル澱粉誘導体と水をそれぞれ秤量して容器本体3内に投入し、攪拌羽根6a,6bで所定の時間攪拌、混合し、原料と水が満遍なく混じり合ったペースト状(糊状)の混練物7を得る。原料に対して水が満遍なく混じり合うことは、架橋反応において極めて重要なことである。底部1は容器本体3に対して開閉可能になっており、前記混練物7はこの底部1を開いて容器本体3の底から取り出す。
【0044】
図4は前記粒子化工程で用いる押し出し装置の縦断面図、図5はその押し出し装置に装着されるダイス型の正面図である。図4に示すように押し出し装置は、ホッパー8と、そのホッパー8の下端開口部に連結された円筒部材9と、その円筒部材9の内側に回転可能に配置された押し出し用のスクリュー10と、前記円筒部材9の先端部に取り付けられたダイス型11と、そのダイス型11を前記円筒部材9に取り付けるダイス押さえ部材12とを備えている。
【0045】
図4に示すように、押し出し用のスクリュー10の前半分の送りピッチP1は後半分の送りピッチP2の約半分になっており、先端部側での押し出し圧力の増大を図っている。スクリュー10の先端部とダイス型11の間には、末拡がり状になった空間部13が形成されている。ダイス型11には、粒子化のための成形孔14が多数形成されており、各成形孔14は図示していないが、スクリュー10側の後面から成形孔14の厚さ方向の中間位置までは若干先細り状のテーパ孔となっており、その中間位置からダイス型11の前面までは径が一定のストレート孔となっている。
【0046】
成形孔14の径は乾燥ゲルの用途に応じて異なっており、所望の径を有するダイス型11が押し出し装置に交換可能に装着される。
【0047】
放射線照射済み、すなわち架橋反応済みのゲルが前記袋体から取り出されて、押し出し装置に投入され易い大きさに裁断される。この裁断された裁断ゲル15を図4に示すようにホッパー8に投入すると、回転しているスクリュー10により砕かれ、練られながら円筒部材9の前方へと押しやられる。前述のようにスクリュー10の前半分の送りピッチP1は後半分の送りピッチP2の約半分になっているから、ゲルの練り物に対する押圧力は徐々に高まり、所定の押出力をもってダイス型11の各成形孔14からゲルが押し出される。この押し出しの際にゲルの水分含有率や粘弾強度などの関係で、ゲルは細長く連続するのではなく短く切れて粒子状ゲル16となって押し出され、次の乾燥装置に供給される。
【0048】
なお、ゲルを裁断したりダイス型11から押し出す際、ゲルは乾燥前で水分を含んだ柔らかい状態であるから、歯こぼれが生じたり、極端に磨耗したりすることはない。
【0049】
図6は、乾燥装置の概略構成図である。乾燥装置は、パンチングメタルからなるバスケット(図示せず)を多数一体に列設した通気性のベルトコンベア17が乾燥通路18内に架設されて、その乾燥通路18の上方には複数台の循環ファン18と、排気ダクト19が設置されている。
【0050】
各循環ファン18から放出される40〜130℃の範囲内で設定された熱風20を、案内部材(図示せず)によりベルトコンベア17の上方向から下方向、下方向から上方向へと繰り返し流通することにより、バスケット内にある粒子状ゲル16は低速で移動しながら残水分率10重量%程度まで乾燥し、乾燥ゲル21として乾燥装置から排出される。排出された乾燥ゲル21は直ちに袋体22の中に投入され、乾燥ゲル21が所定量になると袋体22を密封する。
【0051】
図7は、模式的に示した乾燥ゲル21の拡大断面図である。同図に示すように乾燥ゲル21の表面には微細な凹凸が無数に形成され、内部には微小の細孔23が多数形成されている。この多孔質構造が、乾燥ゲル21の吸水性、保水性をさらに高めている。
【0052】
図8は、架橋反応時のコバルト60γ線の照射線量とゲル分率との関係を示す特性図である。原料としてCMC−Na粉末(置換度1.36)を20重量%、水を80重量%の割合で均一に混合した。図中の丸印は純水を使用、四角印はイオン交換樹脂を通した水を使用して架橋を行ったものを示している。この図から明らかなように、コバルト60γ線の照射線量が5KGy以上になると高いゲル分率を有していることが分かる。
【0053】
図9は、架橋反応時のコバルト60γ線の照射線量と水を吸収した場合の膨潤度との関係を示す特性図である。原料としてCMC−Na粉末(置換度1.36)を20重量%、水を80重量%の割合で均一に混合した。この図から明らかなように、少量の照射線量で極めて高い膨潤度を示しており、例えばイオン交換樹脂を通した水を使用したもので(四角印)、照射線量が10KGyの場合水を吸収して約550倍に膨潤し、照射線量が40KGyの場合でも約50倍に膨潤し、優れた吸水、保水能力を有していることが分かる。
【0054】
図10ならびに図11は乾燥温度と膨潤度との関係を示す特性図であり、図10は水に対する膨潤度、図11は0.9%NaCl水溶液に対する膨潤度を示している。図中の四角印は置換度が0.88のCMC−Na粉末、丸印は置換度が0.95のCMC−Na粉末、三角印は置換度が1.36のCMC−Na粉末を使用したもので、各ゲルとも原料を20重量%、水を80重量%の割合で混合し、コバルト60γ線の照射線量を10KGyとした。これらの図からも明らかなように、水でもNaCl水溶液でも高い膨潤度を有していることが分かる。
【0055】
(テスト1)トレイ上で野菜屑200gに対して本発明の乾燥ゲル粒子(架橋CMC−Na 平均粒子径2mm)4gを混合して経時的な変化を観察し、その結果を下記にまとめた。
60分経過後・・・・・・約90〜95%を吸水。
2時間20分経過後・・・トレイを傾けても直ぐに動かないまで固化している。
10時間経過後・・・・・トレイを傾けても動かないまで固化している。
30時間経過後・・・・・野菜屑の部分は殆ど乾燥した。
【0056】
(テスト2)トレイ上で焼酎の絞り粕200gに対して本発明の乾燥ゲル粒子(架橋CMC−Na 平均粒子径2mm)4gを混合して経時的な変化を観察し、その結果を下記にまとめた。
20分経過後・・・・・・・3〜4倍程度に膨潤。
45分経過後・・・・・・・8〜10倍程度に膨潤。
2時間経過後・・・・・・・40〜50%を吸水。
15時間経過後・・・・・・ほぼ吸水しきった。
【0057】
(テスト3)牛糞尿200gに対して本発明の乾燥ゲル粒子(架橋CMC−Na 平均粒子径2mm)4gを混合して経時的な変化を観察し、その結果を下記にまとめた。
15分経過後・・・・・・・僅かに膨潤。
50分経過後・・・・・・・3倍程度に膨潤。
1時間30分経過後・・・・4〜5倍程度に膨潤。
12時間経過後・・・・・・70〜80%程度吸水している。
【0058】
本発明に係る乾燥ゲルは、例えば家畜排泄物、食品残渣、焼酎やビールなどの絞り粕の処理剤、紙オムツや生理用品の吸水材、土木建築分野での吸水材、緑化のための保水材など各種産業分野での利用が可能である。
【0059】
本発明に係る乾燥ゲルは、土中に埋めると微生物によって2週間で40%近くが炭酸ガスと水に分解される分解型で、吸水力が極めて高いため、家畜排泄物の対して僅か2〜4%添加することで攪拌、発酵作業が可能な状態に固化することが可能であり、しかも攪拌、発酵工程中に水と炭酸ガスに分解するため、有害物質を一切含まず、堆肥化までの時間が大幅に短縮される。また家畜排泄物の肥料化におが屑が使用されるが、おが屑も7分の1程度に減量可能となり、おが屑の輸送や保管スペースの効率化、短小化が図れ、コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例に係る乾燥ゲルの製造工程を示す工程図である。
【図2】本発明の混練工程で用いる混練装置の縦断面図である。
【図3】その混練装置の攪拌羽根の一部を示す部分平面図である。
【図4】本発明の粒子化工程で用いる押し出し装置の縦断面図である。
【図5】その押し出し装置に装着されるダイス型の正面図である。
【図6】本発明の乾燥工程で用いる乾燥装置の概略構成図である。
【図7】本発明の実施例に係る乾燥ゲルを模式的に示した拡大断面図である。
【図8】放射線の照射線量とゲル分率との関係を示す特性図である。
【図9】放射線の照射線量と膨潤度との関係を示す特性図である。
【図10】乾燥温度と膨潤度との関係を示す特性図である。
【図11】乾燥温度と膨潤度との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0061】
1:底部、2:投入口、3:容器本体、4:蓋体、5:シャフト、6:攪拌羽根、7:混練物、8:ホッパー、9:円筒部材、10:スクリュー、11:ダイス型、12:ダイス押さえ部材、13:空間部、14:成形孔、15:裁断ゲル、16:粒子状ゲル、17:ベルトコンベア、18:循環ファン、19:排気ダクト、20:熱風、21:乾燥ゲル、22:袋体、23:細孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋したアルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体からなり、表面に微細な凹凸を有し、内部に細孔をもって多孔質になっていることを特徴とする乾燥ゲル粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥ゲル粒子において、前記アルキルセルロース誘導体が、カルボキシル基の一部がアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩になっているカルボキシアルキルセルロースであることを特徴とする乾燥ゲル粒子。
【請求項3】
アルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体と水を所定の割合で混合して、アルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体と水が満遍なく混じり合った混練物を得る混練工程と、
前記混練物に放射線を照射してアルキルセルロース誘導体またはアルキル澱粉誘導体を架橋してペースト状のゲルを得る放射線照射工程と、
水分を包含した前記ゲルを成形孔から押し出して、所定の大きさに粒子化する粒子化工程と、
前記粒子状のゲルを乾燥して乾燥ゲル粒子を得る乾燥工程とを含むことを特徴とする乾燥ゲル粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の乾燥ゲル粒子の製造方法において、前記混練物をプラスチック製の袋の中に入れて放射線を照射することを特徴とする乾燥ゲル粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の乾燥ゲル粒子の製造方法において、前記乾燥ゲル粒子を水分透過率の低い袋体に封入することを特徴とする乾燥ゲル粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1項に記載の乾燥ゲル粒子の製造方法において、前記アルキルセルロース誘導体が、カルボキシル基の一部がアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩になっているカルボキシアルキルセルロースであることを特徴とする乾燥ゲル粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−179706(P2009−179706A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19452(P2008−19452)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(508032332)
【出願人】(508031494)
【出願人】(508031508)
【Fターム(参考)】