説明

乾燥シリンダ

本発明は、紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブの製造および/または仕上げ用機械内で紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブを乾燥するため、気体熱媒で内側から加熱され、ロールシェル(1)の内側が、内側に収集する熱媒の凝縮液(2)の外側に突出する高位部を有する、乾燥シリンダに関する。本明細書では、熱伝達は、高位部が、平均凝縮液高さよりも少なくとも1.2倍高く、および/または、高位部の断面は内側に向かって減少するという事実により改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブの製造および/または仕上げ用機械内で紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブを乾燥するため、気体状の凝縮可能な熱媒で内側から加熱され、ロールシェルの内側に、内側に収集した熱媒の凝縮液から突出する高位部を有する、乾燥シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
この型式の乾燥シリンダは、長期にわたって知られており、熱媒として主に蒸気が用いられている。
【0003】
繊維ウェブの乾燥中に熱が奪われることにより、相変化が生じ、これにより凝縮液が形成される。通常の機械速度で、遠心力により、この凝縮液が閉じた凝縮液リングとして、ロールシェルの内側に溜められる。
【0004】
この凝縮液リングには、熱的に高度の絶縁性があり、したがって、蒸気から繊維ウェブへの熱伝達を悪化させる。
【0005】
したがって、半径方向に延びる溝を有する乾燥シリンダが開発されており、そのリブが凝縮液からわずかに突出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これはもはや、改良された熱伝達、特に、凝縮液リングの厚さが変動する場合に対する要件を満たさない。さらに、凝縮液を半径方向溝から搬出することが問題である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、簡単な手段で熱伝達を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、高位部が、平均凝縮液高さの少なくとも1.2倍の高さを有し、および/または、前記高位部の断面が内側に向かって減少することにより目的が達成される。
【0009】
この場合、高位部は凝縮液膜からかなり突出しており、気体熱媒に直接接触することにより、伝熱をかなり改善する。
【0010】
高位部の断面積がロールシェルに向かって大きくなることで、熱伝導性が増大する。さらに、この結果、凝縮液量が増大しても、高位部間の自由領域が高さの増大と共に増大するため、凝縮液の厚さの増大する程度が減少することとなる。
【0011】
高位部と気体熱媒との間の適切な接触面を提供するために、高位部は平均凝縮液高さの少なくとも1.2倍、好ましくは1.5倍、特に1.8の高さである必要がある。
【0012】
しかし、この場合、高位部が平均凝縮液高さの多くとも10倍、好ましくは多くとも5倍の高さを有すれば十分である。
【0013】
多くの場合、好適な伝熱を確保するために、高位部が、平均凝縮液高さの多くとも2倍、好ましくは多くとも1.8倍の高さを有すれば十分である。
【0014】
最適な熱伝達のためには、高位部でほぼ一定の熱流密度となるように、高位部の断面の大きさが減少すると有利である。
【0015】
さらに、内側の全ての高位部の断面積は、ロールシェルの内側シェル面積のほぼ半分に相当させるべきである。
【0016】
この場合には、高位部の大きさおよび間隔は、繊維ウェブに接触するロールシェルの外側で、高位部に対向する領域と凝縮液面に対向する領域との間の温度差ができるだけ小さくなるように、選定すべきである。
【0017】
費用を最小にするために、熱媒として蒸気を使用することを推奨する。
【0018】
この場合、高位部およびロールシェルを同じ高熱伝導性材料で形成することができる。
【0019】
これは、高位部とロールシェルとを一体的に設計することを可能とする。
【0020】
例えば、高位部をロールシェルからフライス加工することができる。
【0021】
しかし、高位部が、好ましくはロールシェルよりも良好な熱伝導性を有する別の材料からなる場合も、有利であろう。
【0022】
本明細書において、高位部とロールシェルとの間の高度の熱伝導性結合が重要である。したがって、ロールシェルに対する高位部の固定は、はんだ付け、溶接または接着剤結合により行うことが好ましい。
【0023】
高位部が少なくともある程度、ピンまたはスタッドの形態を有する場合には、これらの高位部を比較的細かな間隔で分散させることができる。
【0024】
高位部が少なくともある程度、リブの形態を有する場合には、他の設計が得られる。
【0025】
これらのリブは、軸方向、半径方向または螺旋状に延びることができる。
【0026】
しかし、リブが軸方向に延びる場合には有利である。この場合に、蓄積する凝縮液を容易に排出させることができるように、少なくとも一方のシェル端部で、内側シェル面上を半径方向に延びる収集チャンネルにリブを導く。この収集チャンネルから、例えば固定サイフォンで、凝縮液を乾燥シリンダから外側に容易に導くことができる。
【0027】
以下、実施形態を使用して本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
製造機械内での繊維ウェブの乾燥は、これらの繊維ウェブを巻きつけたときに、回転する乾燥シリンダの加熱された周面と接触することにより、かなりの程度まで行われる。
【0029】
簡略化するため、この場合では、乾燥シリンダは常時高温蒸気で加熱されている。このため、高温蒸気が乾燥シリンダ内に導かれる。
【0030】
乾燥中に熱が奪われる結果、乾燥シリンダのロールシェルの1の内側に凝縮液が形成される。
【0031】
この凝縮液2は、遠心力により、閉じた熱的に絶縁する凝縮液層として内側に堆積されるため、ロールシェルを介する蒸気から繊維ウェブへの熱伝達を改善するための手段をとる必要がある。
【0032】
このため、ロールシェル1は、その内側に、周部にわたって均一に分散配置されかつ軸方向に延びる多数のリブ3を有する。
【0033】
良好な熱的接続を行うために、これらのリブ3は内側にはんだ付けされ、または、これに代えて高熱伝導態様で接続される。ロールシェル1と同様に、これらのリブも高熱伝導材料からなり、凝縮液層から突出する。
【0034】
蒸気と凝縮液2から突出するリブ3の一部との直接接触の結果、ロールシェル1に対する熱伝達がかなり改善される。
【0035】
図1に示すように、ロールシェル1の端部で、リブ3は半径方向に延びる収集チャンネル5に接続される。凝縮液のためのリブ3間に位置する溝4の基部は、収集チャンネル5の基部よりも半径方向の先にあり、したがって、凝縮液2は、溝4から収集チャンネル5内に流れる。収集チャンネル5から、凝縮液2は、例えば固定型のサイフォンを介して、乾燥シリンダの外側に問題なく導くことができる。
【0036】
図2から解るように、リブ3は台形状の断面を有し、すなわち、断面はロールシェル1の内側から始まりテーパ状となる。これは、ロールシェル1に対する熱伝導性を改善し、リブ3間の溝面積が高さの増大と共に増大するため、凝縮液量が増大しても、凝縮液の厚さの増大する程度が減少することを確実にする。これは、効果の従属性を低下させる。
【0037】
平均凝縮液高さは、一般的には2〜10mm、特に、3〜5mmの間であり、リブ3は、その1.3〜1.6倍の高さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】乾燥シリンダの一端の図式的な軸方向断面図を示す。
【図2】乾燥シリンダの図式的な半径方向断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブの製造および/または仕上げ用機械内で紙、厚紙、ティッシュまたは他の繊維ウェブを乾燥するため、気体熱媒で内側から加熱され、ロールシェル(1)の内側が、内側に収集した前記熱媒の凝縮液(2)の外側に突出する高位部を有する、乾燥シリンダであって、前記高位部は、平均凝縮液高さの少なくとも1.2倍の高さを有し、および/または、前記高位部の断面が内側に向かって減少することを特徴とする乾燥シリンダ。
【請求項2】
前記高位部は、平均凝縮液高さの多くとも10倍、好ましくは多くとも5倍の高さを有することを特徴とする請求項1に記載の乾燥シリンダ。
【請求項3】
前記高位部は、平均凝縮液高さの少なくとも1.5倍、好ましくは1.8倍の高さを有することを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥シリンダ。
【請求項4】
前記高位部は、平均凝縮液高さの多くとも2倍、好ましくは多くとも1.8倍の高さを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項5】
前記高位部でほぼ一定の熱流密度となるように、高位部の断面の大きさが減少されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項6】
前記内側の全高位部の断面積は、前記ロールシェル(1)の内側シェル面積のほぼ半分に相当することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項7】
前記熱媒として、蒸気が用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項8】
前記高位部および前記ロールシェル(1)は、同じ材料からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項9】
前記高位部および前記ロールシェル(1)は、一体的に設計されていることを特徴とする請求項8に記載の乾燥シリンダ。
【請求項10】
前記高位部は、前記ロールシェル(1)よりも良好な熱伝導性を有する別の材料からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項11】
前記高位部は、好ましくははんだ付けまたは接着剤による接着で、ロールシェル(1)に固定されることを特徴とする請求項8または10に記載の乾燥シリンダ。
【請求項12】
前記高位部は、少なくともある程度、ピンまたはスタッドの形態を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項13】
前記高位部は、少なくともある程度、リブ(3)の形態を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の乾燥シリンダ。
【請求項14】
前記リブ(3)は、半径方向または螺旋状に延びることを特徴とする請求項13に記載の乾燥シリンダ。
【請求項15】
前記リブ(3)は、軸方向に延びることを特徴とする請求項13に記載の乾燥シリンダ。
【請求項16】
前記リブ(3)は、少なくとも一方のシェル端部で、半径方向に延びる収集チャンネル(5)に接続されることを特徴とする請求項15に記載の乾燥シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−540993(P2008−540993A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510525(P2008−510525)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061052
【国際公開番号】WO2006/120059
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506294244)ボイス パテント ゲーエムベーハー (57)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】