説明

乾燥トランスグルタミナーゼ組成物

本発明は、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物に関しており、前記組成物はトランスグルタミナーゼ、塩並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択された少なくとも一つの更なる成分を含んで成る水性組成物を凍結乾燥または噴霧乾燥することによって得られ、水性組成物の塩濃度は5から100mMの範囲である。更なる態様において、本発明は、前記乾燥トランスグルタミナーゼ組成物、再構成された溶液、医薬組成物及び調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスグルタミナーゼ組成物、特に血液凝固第XIII因子の安定な凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物に関し、更には前記組成物の調整方法、再構成された溶液、医薬組成物及び治療の方法に関する。
【0002】
トランスグルタミナーゼは、タンパク質のグルタミンの側鎖γ-カルボキサミド基とリジンの側鎖ε-アミノ基との間のイソペプチド結合の形成に触媒作用を及ぼすCa2+依存性酵素である。トランスグルタミナーゼは、細胞外及び細胞内の両方に見られる。トランスグルタミナーゼの例は、第XIII因子、表皮トランスグルタミナーゼ、2型トランスグルタミナーゼ(組織型トランスグルタミナーゼ、肝臓トランスグルタミナーゼ)、及び1型トランスグルタミナーゼ(ケラチノサイト・トランスグルタミナーゼ)を含む。
【0003】
血液凝固第XIII因子(FXIII)は、「フィブリノリガーゼ」及び「フィブリン安定化因子」としても知られる血漿トランスグルタミナーゼであり、血漿中に20μg/mlの濃度で循環する。このタンパク質は、2つのAサブユニット及び2つのBサブユニットを含む四量体(A)として血漿中に存在する。各サブユニットは約80、000Daの分子量を有し、完全なタンパク質は約330、000Da分子量を有する。Aサブユニットはトランスグルタミナーゼ触媒部位を含むのに対して、Bサブユニットは触媒活性を有しないがクリアランスからAサブユニットを保護する構造タンパク質として動く。
【0004】
第XIII因子は、活性化についてトロンビン及びCa2+に依存する。トロンビンは、AサブユニットのArg37のC末端側を切断し、それにより活性化ペプチド(Aサブユニットの残基1−37)とBサブユニットを放出し、Aダイマーの活性型を残す。活性化FXIII Aサブユニット(FXIIIa)は、FXIIIの触媒活性型である。
【0005】
FXIII酵素は、凝固カスケードで作動する最後の酵素であり、α-とγ-フィブリン鎖を架橋結合させる機能を果たし、より強い凝血塊の線維素溶解に対する増大された耐性に結果としてなる。さらに、反線維素溶解性、前止血性、及び粘着性のタンパク質の多くは凝血塊に架橋結合し、それにより強いフィブリン構造に、プラスミンと他のタンパク質分解酵素による溶解に対し増大した機械的耐性が与えられる。
【0006】
市販の精製されているか又は部分的に精製されたトランスグルタミナーゼまたは第XIII因子調製物は、多くの場合、添加された安定剤(例えばヒト血清アルブミン(HSA))を含む。タンパク質安定剤の使用は問題を含む。なぜならば、それはタンパク質特異的活性を減少させるので、患者に投与される場合、タンパク質量を増大させたり、純度の評価を妨げる可能性があるためである。また、それにより、タンパク質調製物に免疫原性を生じさせる可能性がある。タンパク質安定剤のこれらの欠点は、組換えタンパク質のような高度に精製されたタンパク質にとって特に不利となる。加えて、例えばアルブミンが加えられた場合、タンパク質安定剤の使用によってウイルス抗原による混入の可能性が生じる。
【0007】
FXIII(胎盤または血漿から単離されたものか、または新鮮な冷凍血漿の形態のもの)は、第XIII因子欠乏症の治療のために長年、使用されている。しかしながら、これらの製剤は、外来タンパク質を含むことによる欠点であって、不必要な免疫原性のような外来タンパク質に付随する全ての問題を被る。
【0008】
現在では、組換えDNA技術を使用して、トランスグルタミナーゼ及び第XIII因子を調節することが可能である。本明細書で使用する場合、rFXIIIは組換え第XIII因子を指す。しかしながら、今日まで、市場に出ている市販のrFXIII製品はない。
【0009】
治療に使用されるタンパク質調製物の組成及び活性は、比較的長時間にわたって安定していなければならない。溶液において、この安定性を得る可能性はほんのわずかであり、従って、上記の生成物は乾燥状態でしばしば市場に出される。マイルドなフリーズドライ(凍結乾燥)は、上記の生成物を乾燥させるための方法の選択肢の1つである。しかしながら、この方法が用いられる場合でも、完全性と耐久性の必要条件を満たしている安定調製物を得ることは困難である。
【0010】
トランスグルタミナーゼまたは第XIII因子溶液の凍結乾燥は、例えば活性の著しい減少と純度の損失につながる可能性がある。第XIII因子の凍結乾燥のための更なる問題は、例えば、第XIII因子の分解生成物、いわゆる非タンパク質加水分解性の活性種(FXIIIa)、あるいは前活性化(pre-activated)第XIII因子と呼ばれるものが生成されることである。FXIIIaは重度の毒性リスクを有すると考えられており、これを注射することは望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。従って、非タンパク質加水分解性の活性化生成物の形成に対してトランスグルタミナーゼ又は第XIII因子製剤を安定化することが望ましい。
【0011】
さまざまな乾燥FXIII組成物が従来技術で知られている。下記は、凍結乾燥FXIII組成物の開示に関する開示例である。WO2002/36155は、1mMのEDTAと10mMのグリシンと2%のショ糖溶液に製剤されているか、又は20mMのヒスチジンと3%(wt/vol)のショ糖と2mMのグリシンと0.01%(wt/vol)のポリソルベート(pH 8.0)に製剤化されている凍結乾燥されたFXIII組成物を記載する。US6204036(アベンティス・ベーリング)は、D-及びL-アミノ酸とその塩類、誘導体、ホモログ及びダイマー、糖及び糖アルコール、表面活性成分及び還元剤のグループから選択された少なくとも一つの添加物を含んで成るグループから選択される安定な凍結乾燥トランスグルタミナーゼ製剤であって、添加物がグリシンやアルギニンでないものであり、製剤はタンパク質安定剤を含まず、非経口投与に適している水性溶媒に濁りなしに溶解する製剤に関する。
【0012】
しかしながら、上記のこれらの製剤は、高濃度の非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子の欠点であって、これらの製剤の臨床的及び商業的な実施可能性のための障害と考えられる欠点を有する可能性がある。従って、低い濃度の非タンパク質加水分解性の活性化生成物を有する安定な乾燥したトランスグルタミナーゼと第XIII因子製剤が非常に求められていることは明らかである。さらにまた、上記の製剤はタンパク質安定剤(例えばHSA)の付加を必要とするべきでない。
【0013】
(発明の開示)
本発明は、塩類、例えば一価の塩類が、乾燥トランスグルタミナーゼ(例えば第XIII因子)組成物に、純度と予め活性化されたトランスグルタミナーゼの形成に関して顕著な安定化作用を与えるという驚くべき発見に基づく。この作用は、乾燥状態に特異的に見られ、安定な製品を産生するために、特に重要性を有する。
【0014】
ある態様では、本発明は、トランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成る水性組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによって得られ、水性組成物中の塩濃度は5から100mMの範囲である、乾燥したトランスグルタミナーゼ組成物を提供する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、上記乾燥トランスグルタミナーゼ組成物を調製する方法、再構成された溶液、医薬組成物及び治療の方法を提供する。
【0016】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明確にされる。しかしながら、本発明の範囲内のさまざまな改変と変更態様がこの詳細な説明から当業者にとって明らかになり、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、詳細な説明と具体例は例示目的で記載されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ショ糖及びNaCl濃度の測定。40℃で保存された試料のAIE−HPLC純度における25mMのNaClの効果のModde解析。
【図2】NaCl及びヒスチジン濃度の完全要因解析。25℃のrFXIIIaデータのModde解析。
【図3】NaCl及びヒスチジン濃度の完全要因解析。AIE−HPLC純度データのModde解析。
【0018】
(定義)
「前活性化」又は「非タンパク質加水分解性による活性化」なる用語は、非タンパク質加水分解性の活性化により活性化されたトランスグルタミナーゼを指し、例えば、第XIII因子はトロンビンの存在なしに活性化される場合(トロンビンはタンパク質加水分解によりFXIIIを切断する能力を有する)、それは非タンパク質加水分解性により活性化されたと言われる。例えば、Polgar J., et al. Biochem J 1990; 267: 557-60. Muszbek L., et al. Thrombosis Research 94 (1999) 271-305を参照。非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子(FXIII)は、FXIIIの分解生成物であり、この分解生成物が高度の毒性リスクを有すると考えられているので、医薬FXIII組成物の可能性を脅かす。
【0019】
本明細書において使用する「生物学的に活性」なる用語は、医薬、農業又は美容上の活性のような生物における活性を意味する。
【0020】
「水性組成物」なる用語は、本発明に関して、液状の水を含んで成る組成物に関する。上記の組成物は、典型的に溶液または懸濁液である。本発明に関連して使用される「水性組成物」なる用語は、少なくとも50重量%(w/w)の水を含んで成る製剤に関する。
【0021】
本発明に関して「希釈剤」なる用語は、液体溶液または懸濁液に関する。本発明に関連して使用される「希釈剤」なる用語は、少なくとも50重量%(w/w)の水を含んで成る溶液または懸濁液に関する。本発明に関連して、希釈液は、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物の再構成に使われる。
【0022】
本明細書に引用する刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各文献が個々に且つ特定の形で参照により本明細書に包含されるとして示され、且つその内容全体が本明細書に開示されたように、参照によりその内容全体及び同じ範囲が(準拠法によって許される最大の範囲を限度として)本発明の開示に含まれる。
【0023】
全ての表題及び副題は本明細書において、説明のためにのみ便宜上使用されるのであり、決して本発明を制限するものとして捉えられるべきではない。
【0024】
本明細書で使用されたあらゆる実施例、又は例示表現(例えば「〜などの」)は、単に、本発明を理解し易く説明するために用いたのであり、特に断らない限り、本発明の技術範囲を制限するものではない。本明細書におけるいかなる表現も、特許請求されない要素を本発明の実施に必須のものとして示すものではない。本明細書における特許文献の引用及び援用は単に、本発明を理解し易くするために行なわれるのであり、決して、このような特許文献が持つ有効性、特許性、及び/又は強制力の側面を提示するためのものではない。
【0025】
本発明は、本明細書に添付する請求項において列挙される特許発明の主題の全ての変形物及び均等物を、準拠法によって許される範囲を限度として含む。
【0026】
(本発明の説明)
本発明は、トランスグルタミナーゼ組成物、特にトランスグルタミナーゼの安定凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物、例えば血液凝固第XIII因子(FXIII)を提供する。更に、本発明は、上記乾燥トランスグルタミナーゼ組成物の調整方法、再構成された溶液、医薬組成物及び治療の方法を提供する。
【0027】
本発明は、トランスグルタミナーゼ生成物の製造プロセス、貯蔵及び使用中の期間を通して許容可能なままである純度のレベルと前活性化のレベルを有する、トランスグルタミナーゼ、例えば第XIII因子を含む生成物を提供する。
【0028】
前活性化のレベル及び全体の純度に関して改善された安定性を提供する本発明の組成物は、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物を含んでなり、前記組成物はトランスグルタミナーゼ、塩並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成る水性組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥によって入手でき、水性組成物の塩濃度は、5から100mMの範囲にある。
【0029】
一実施態様において、本発明の乾燥組成物は乾燥トランスグルタミナーゼ組成物を含み、前記組成物はトランスグルタミナーゼ、塩並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択された少なくとも一つの更なる成分を含む水性組成物を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによって得られ、水性組成物の塩濃度は5から100mMの範囲にあるが、但し組成物は0.5%のNaCl及び2.25%のグリシンを含む第XIII因子溶液を凍結乾燥することによって得られた乾燥した第XIII因子組成物ではない。
【0030】
ある実施態様において、本発明の乾燥した組成物は、任意のタンパク質安定剤(例えばアルブミン)を含まない。
後述する実施態様及び実施例は、主に組換えFXIII(rFXIII)の組成物を記載して開示するが、本発明はこれらの実施態様及び実施例に限定されておらず、現在知られているか又は将来発見される任意のトランスグルタミナーゼの組成物に適用することが出来る。
【0031】
(組成物の成分)
本発明の組成物は、トランスグルタミナーゼを含む。本発明の製剤によって安定できるトランスグルタミナーゼの例は、第XIII因子、表皮トランスグルタミナーゼ、II型トランスグルタミナーゼ(組織型トランスグルタミナーゼ、肝臓トランスグルタミナーゼ)、及びI型トランスグルタミナーゼ(ケラチノサイト・トランスグルタミナーゼ)を含むが、これらに限定されない。
【0032】
(第XIII因子)
一実施形態において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定になっている組成物は、第XIII因子化合物を含む。第XIII因子化合物は、例えば天然に存在する野生型第XIII因子及び第XIII因子の対立遺伝子変異体であってもよい。これらのFXIII化合物は、例えばヒト又は他の動物の出所から起源してもよい。例えばヒトFXIII、ブタFXIII及びウシFXIIIである。ヒト第XIII因子の野生型配列は、例えばEP268772及びEP236978に提供されている。本発明の、第XIII因子化合物は、完全な第XIIIチモーゲン四量体(A)及び第XIIIa因子、加えてAサブユニット及びAニ量体を含むそれらのサブユニットを含む。
【0033】
本発明の、第XIII因子化合物は、例えば第XIII因子の生物学的に活性な断片、誘導体又は変異体であり、野生型第XIII因子の架橋結合活性の特徴の少なくとも一部分を保持するものである。この架橋結合活性は、従来技術において知られている方法で測定されることができる。
【0034】
いくつかの実施態様において、第XIII因子の生物学的に活性な断片、誘導体または変異体は、野生型第XIII因子の架橋結合活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を保持する。
第XIII因子の断片、誘導体及び変異体は、置換、挿入及び欠失の変異体を含む。挿入変異体は、単一又は多重アミノ酸残基の配列内挿入、更にアミノおよび/またはカルボキシル末端融合を含む。挿入は、例えば野生型第XIII因子タンパク質の成熟コード配列内に導入されてもよい。欠失変異体は、野生型第XIII因子タンパク質からの一つ以上のアミノ酸残基の除去によって特徴づけられる。これらの変異体は通常、タンパク質をコードしているDNAのヌクレオチドの部位特異的な突然変異生成によって調製され、それによって変異体をコードしているDNAを産生し、その後で組換え細胞培養物のDNAを発現する。しかしながら、変異体タンパク質断片は、インビトロ合成によっても調製することができる。通常、アミノ酸配列変異を導入する部位は前もって決められている一方で、突然変異そのものは前もって決める必要はない。例えば、所与の部位での突然変異のパフォーマンスを最適化するために、ランダムな突然変異生成は標的コドンまたは領域で実施されてもよく、所望の活性の最適な組合せのために発現タンパク質変異体がスクリーニングされる。公知の配列を有するDNA中の前もって決められた部位において置換突然変異をするための手段は周知であり、例えばM13プライマー突然変異生成である。置換変異体は少なくとも一つの残基配列が取り除かれ、異なる残基がその位置に挿入されたものである。アミノ酸置換は、典型的には一つの残基であり;挿入は通常、約1から10アミノ酸残基のオーダーであり;欠失は約1から30残基の範囲である。欠失又は挿入は、例えば隣接するペアで生じてもよい、すなわち2残基の欠失又は2残基の挿入である。置換、欠失、挿入またはそれらの任意の組合せは、最終的な構造物に到達するために組合わせられてもよい。明らかに、変異体タンパク質をコードするDNA内に生じる突然変異は、読み枠の外部に配列を配置してはならず、好ましくは、mRNA二次構造を産生することができる相補的領域を作成しない。第XIII因子の遺伝的に改変された変異体の例は、野生型ヒト第XIII因子のVal34Leu変異体である(すなわち、野生型ヒト第XIII因子のアミノ酸配列の位置34のVal残基がロイシン残基に置換された変異体)。
【0035】
本発明の中の、第XIII因子は、多種多様な生物物質から精製されることができ、第XIII因子を天然に生産する細胞のライセート、ホモジェナイゼート又は抽出物をふくむが、第XIII因子を生産するために遺伝的に改変された細胞のものでもよく、例えば第XIII因子をコードするDNAに変換されたイースト細胞などである。第XIII因子を精製する方法の例は、WO/2006/021584に開示されている。
【0036】
本発明の中の第XIII因子は、例えば組換えDNA技術によって調製されてもよい。組換え第XIII因子を調製する方法は、公知技術である。例えば、Davie et al., EP 268.772; Grundmann et al., AU-A-69896/87; Bishop et al., Biochemistry 1990, 29: 1861-1869; Board et al., Thromb. Haemost. 1990, 63: 235-240; Jagadeeswaran et al., Gene 1990, 86: 279-283; 及び Broker et al., FEBS Lett. 1989, 248: 105-110を参照。一実施形態では、第XIII因子Aダイマーは、米国特許出願番号第07/741263号に開示されるように、イースト酵母において細胞質から調製される。細胞は収集し溶解されて、透明なライセートが調製される。ライセートは、誘導体化されたアガロースのカラム、例えばDEAEファスト・フロー セファロース(ファルマシア)等を使用して、中性からわずかにアルカリ性pHにおいて、陰イオン交換クロマトグラフィーによって分画される。第XIII因子は、次に溶出物を濃縮すること、及び例えばアンモニウム・スクシナート・バッファーにするダイアフィルトレーションによってpHを5.2−5.5に合わせることによって、カラム溶出物から沈殿させる。次に、沈殿物は溶解され、更に従来のクロマトグラフィー手段、例えばゲルろ過及び疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して、精製される。
【0037】
本発明の一実施態様では、第XIII因子は、組換え第XIII因子である。本発明の一実施態様では、第XIII因子は、ヒト第XIII因子である。本発明の一実施態様では、第XIII因子は、組換えヒト第XIII因子である。本発明の一実施態様では、第XIII因子は、Aサブユニットの二量体である。
【0038】
凍結乾燥または噴霧乾燥される予定になっている水性組成物中の第XIII因子の濃度は、例えば広範囲で変化し、一実施態様では0.003−100mg/mlであり、更なる実施態様では1−30mg/mlであり、また更なる実施形態では2−15mg/mlである。
【0039】
(塩類)
本発明の水性組成物は塩類又は塩類の混合物を含む。塩は、前活性化に関して及び総純度に関して、乾燥組成物の安定性を改良するために用いられる。例えば、本発明の希釈液は、塩類又は塩類の混合物を含んでもよい。いくつかの実施態様において、塩は一価の塩である。使用することができる一価の塩類の例は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム及びそれら混合物を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様において塩は二価の塩である。いくつかの実施態様において塩は二価の塩であるが、但し二価の塩はCa(II)塩でない。
使用される塩(例えばNaCl)の濃度は、例えば特定の範囲で変化し、ある実施形態では5−100mMの範囲にあり、更なる実施形態では、5−99mM、7−95mM、8−90mM、10−80mM、15−70mM、25−75mM、及び20−60mMの範囲であり、また更なる実施形態では25−50mMの範囲である。
【0040】
(糖及び糖アルコール)
本発明のいくつかの実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定になっている水性組成物は、一つ以上の糖または糖アルコールを含む。乾燥組成物の再構成のために使用される希釈液は、例えば一つ以上の糖または糖アルコールを含む。糖または糖アルコールは、本発明の乾燥した組成物のタンパク質を、凍結乾燥の間に、物理的/化学的に不安定化させることによって(例えば変性)、安定させるために用いてもよい。例えば使用されてもよい糖または糖アルコールの例は、スクロース、マンニトール、トレハロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、ラフィノース、デキストリン、シクロデキストリン及び誘導体、ホモログ、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
使用される糖及び糖アルコールの濃度は、例えば広範囲で変化してもよく、ある実施形態では0.1−15%(w/w)の範囲であり、更なる実施態様では0.1−8.5%(w/w)の範囲であり、更なる実施態様では0.5−5.0%(w/w)の範囲である。
【0041】
(アミノ酸)
本発明のいくつかの実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定になっている水性組成物は、一つ以上のアミノ酸を含む。本発明のいくつかの実施態様において、乾燥組成物の再構成のために使用される希釈液は、一つ以上のアミノ酸を含むことができる。アミノ酸は、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥された組成物の安定性を改良するために用いてもよい。ある実施形態において、一つ以上のアミノ酸は、組成物の貯蔵の間、トランスグルタミナーゼ(例えばFXIII)の凝集体形成を減少させるために使用される。使用することができるアミノ酸の例は、グリシン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸、メチオニン、スレオニン、リジン、アラニン、イソロイシン及びシステイン(Gly、His、Arg、Glu、Met、Thr、Lys、Ala、Ile、及びCys)並びにその塩類、誘導体、ホモログ、二量体、オリゴマー及びその混合物を含むが、これに限定されるものではない。
適切な誘導体とホモログは周知である。適切な誘導体は、カルボキシル基のエステル、チオエステル及びアミド;ウレタン誘導体を含むアミノ基のアシル化された誘導体;及び側鎖官能基のエステル、アミド及びエステルを含むが、これらに限定されない。適切なホモログは、例えばオルニチン(リジンのホモログ)、ホモセリン及びα-アミノ酪酸を含む。また、生理的に許容可能な塩類は公知技術であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Science: Drug Receptors and Receptor Theory, (18th ed.), Mack Publishing Co., Easton Pa. (1990)に記載されている。
使用されるアミノ酸の濃度は、0.01−10%(w/w)の範囲であるか、または0.1−3%(w/w)の範囲である。
【0042】
(バッファー類)
本発明のいくつかの実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定になっている水性組成物、および/または乾燥組成物の再構成のために使用される希釈液は、バッファーを含む。バッファーは物質を含んでいる溶液であり、物質は少量の酸または塩基が加えられた溶液のpHにおける重要な変化を阻害することができ、それにより溶液の本来の酸性度または塩基性度を維持する。バッファーは、通常その塩と共に、弱い酸または弱い塩基を含む。
水性組成物のpHは、2から10まで、特に7と8との間の範囲にである。上記のアミノ酸またはバッファーは、緩衝を遂行するために使用することができる2〜10の範囲のpHを有する。例えば使用できるバッファーの例は、酢酸緩衝液、炭酸バッファー、クエン酸バッファー、グリシルグリシンバッファー、ヒスチジンバッファー、グリシンバッファー、リジンバッファー、アルギニンバッファー、リン酸バッファー(例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸三ナトリウムを含む)、TRIS[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]バッファー、ビシンバッファー、トリシンバッファー、リンゴ酸バッファー、スクシナートバッファー、マレアートバッファー、フマル酸バッファー、タータラートバッファー、アスパラギン酸バッファー及びそれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施態様において、クエン酸バッファー(ヒスチジンバッファー、リン酸ナトリウムバッファー、スクシナートバッファー及びTRISバッファー)が、使われる。ある実施形態において、ヒスチジンが使われる。
使用されるバッファーの濃度は、例えば範囲0−50mMであり、または範囲0−25mMである。
【0043】
(その他の成分)
1又は複数のその他の成分は、さらに凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物に組み込まれてもよく、および/または希釈液が乾燥組成物の再構成のために使われる。上記の追加的な成分は、非イオン性活性剤、還元剤、キレート剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、充填剤、張性調節剤(張性を調節する薬剤)、油性のベヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはその他のタンパク質)及び双性イオンの物質(例えば、ベタイン、タウリンまたはアルギニン、グリシン、リジン若しくはヒスチジンのようなアミノ酸)を含むが、これに限定されるものではない。上記の追加的な成分は、もちろん、本発明の乾燥組成物又は水性組成物の全体の安定性に悪影響を与えるべきでない。この点に関して、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照することができる。
【0044】
(非イオン性活性剤)
本発明のある実施形態において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物及び/又は乾燥組成物の再構成のために使用する希釈液は、非イオン性活性剤を含む。イオン性界面活性剤は、表面活性剤であり、臨界表面(例えば、パッケージ、固体)からタンパク質を遮蔽することによってその効果を発揮する。イオン性界面活性剤は、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥された組成物の安定性を改良するために使用されてもよい。例えば、使用することができる非イオン性活性剤の例は、Tween80、Tween20、PEG、アセチルアルコール、PVP、PVA、ラノリンアルコール、ソルビタン・モノ・オレアート、ポロキサマー類及びポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むが、これに限定されるものではない。一実施態様において、Tween20が使われる。
使用される非イオン性活性剤の濃度は、例えば0.00001−5%(w/w)の範囲、または0.0002%から0.1%(w/w)の範囲であってもよい。
【0045】
(還元剤)
本発明のある実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物、および/または乾燥組成物を再構成のために使用する希釈液は、還元剤を含む。還元剤、例えば抗酸化剤は、タンパク質を不安定にするかもしれないフリーラジカルを取り除くために使われる。例えば、使われることができる還元剤の実施例は、システイン、N-アセチル-システイン、チオグリセロール、硫化ナトリウム、トコフェロール及びグルタチオンを含むが、これに限定されるものではない。
【0046】
(キレート剤)
本発明のある実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物、および/または乾燥組成物を再構成のために使用する希釈液は、キレート剤を含む。キレート剤は、製剤から金属(鉄、銅)を除去するために使用され、通常、金属触媒反応からタンパク質を保護する傾向がある。例えば、使用することができるキレート剤の例は、EDTA、クエン酸及びアスパラギン酸の塩類、及びその混合物を含むが、これに限定されるものではない。本発明の一実施態様では、キレート剤は、0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。本発明の一実施態様では、キレート剤は、0.1mg/mlから2mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる一実施態様では、キレート剤は、2mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。
【0047】
(抗酸化剤)
本発明のある実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物、および/または乾燥組成物を再構成のために使用する希釈液は、抗酸化剤を含む。ある実施態様において、トランスグルタミナーゼ(例えばFXIII)が酸化に影響されやすい少なくとも一つのメチオニン残基を含んで成るポリペプチドである場合に、水性組成物はそれらのスルホキシド形態にメチオニン残基の酸化を阻害するためにメチオニン(または別の硫黄含有アミノ酸またはアミノ酸類似体)を含む。「酸化を阻害する」なる用語は、時間とともに酸化する(メチオニンの)種の蓄積の極小化を示すことを意図する。メチオニン酸化の阻害は、その適当な分子形態のポリペプチドのより大きな保持に結果としてなる。例えば、メチオニンの任意の立体異性体(L、DまたはDL異性体)またはそれの組合せが使われることができる。該メチオニンのスルホキシド形態の量は監督官庁に許容可能なものであり、加えられる量はメチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきである。典型的には、これは、組成物は、約10%から約30%のメチオニンスルホキシド形態だけを含むことを意味するこれは、例えば、加算メチオニンのメチオニン残基に対するモル比が約1:1から約1000:1、例えば10:1から約100:1の範囲にわたる量の加算メチオニンによって、通常は得られることができる。
【0048】
(防腐剤)
本発明のある実施態様において、凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定の水性組成物、および/または乾燥組成物を再構成のために使用される希釈液は、防腐剤を含む。防腐剤は、多重投与コンテナーに規制上の必要性のために加えられることができる。防腐剤は、バイアルから多重投与の撤回の間に、微生物汚染から保護する抗菌性薬剤として用いられる。例えば、使用することが出来る防腐剤の例は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、クロロ・クレゾール、メチル-p-ヒドロキシベンゾアート、エチル-p-ヒドロキシベンゾアート、プロピル-p-ヒドロキシベンゾアート、ブチル-p-ヒドロキシベンゾアート、2-フェノキシエタノール、2‐フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チオメロサル、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、塩化ベンゼトニウム、クロロフェネシン(3-p-クロロフェノキシプロパン-1,2-ジオール)と混合物を含むが、これに限定されるものではない。例えば、防腐剤は0.1mg/mlから20mg/mlの濃度で存在してもよい。本発明のある実施形態では、防腐剤は0.1mg/mlから5mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる実施態様において、防腐剤は5mg/mlから10mg/mlの濃度で存在する。本発明の別の実施態様において、防腐剤は10mg/mlから20mg/mlの濃度で存在する。
当業者は、本発明の、乾燥した組成物又は水性組成物に、ルーチンの実験によってのみ、1以上の追加した成分の安定性、前活性化及び純度の効果を分析するために、下記の方法を使用することが出来る。
【0049】
(乾燥組成物−粉末)
凍結乾燥または噴霧乾燥の後、本発明の組成物は乾燥形態である。本発明の乾燥組成物は、例えば固体、粉または粒状体であってもよい。ある実施形態において、本発明の乾燥組成物は粉末である。この乾燥組成物の残存水分の濃度は、貯蔵の間、乾燥トランスグルタミナーゼ(例えばFXIII)の安定性にとって重要である。本発明のある実施態様において、乾燥組成物は、3%未満の残存水分を含む。さらなる態様において、乾燥組成物は1%未満の残存水分を含む。
【0050】
(乾燥技術と再構成)
本発明の水性組成物の凍結乾燥及び噴霧乾燥は、従来技術において、よく知られている凍結乾燥及び噴霧乾燥の方法を用いて実施されてもよい:凍結乾燥については、Williams and Polli (1984), J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59. for spray-drying see, for example, Masters in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essex, U.K., 1991), pp. 491-676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;及びMumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11: 12-20を参照。また、他の乾燥技術が使用されてもよく、例えば空気乾燥である。Carpenter and Crowe (1988), Cryobiology 25:459-470;及びRoser (1991) Biopharm. 4:47-53を参照。
本発明に関して、対照標準が凍結乾燥及び噴霧乾燥に作られた場合、他の乾燥技術が使用されてもよいことが意図される。例えば、本発明に関して、「凍結乾燥又は噴霧乾燥される予定になっている水性組成物」は、「他の乾燥技術により乾燥される予定になっている水性組成物」を含むことを意味する。
ある実施態様において、本発明の乾燥組成物は凍結乾燥によって得られる。凍結乾燥プロセスは、典型的には次の工程を含む:冷凍工程、第1乾燥工程及び第2乾燥工程。冷凍工程において、水性組成物が冷却される。冷凍工程の温度及び所要期間は、組成物の成分の全てが完全に凍るように選択される。例えば、適切な凍結温度は約−40℃である。第1の乾燥工程では、凍結の間に形成される氷は、周囲温度以下で減圧下で昇華によって取り出される。例えば、昇華のために使用されるチャンバー圧は、例えば約40mTorrから400mTorrまでであってもよく、温度は例えば−30℃から−5℃であってもよい。主要な乾燥後、昇華によって取り除かれなかった水分の任意の残存量は、第2の乾燥(すなわち脱離)によって除かれる。第2の乾燥の間の温度は、周囲温度に近いか、又は超過する。
本発明のある実施態様において、アニーリング(加熱工程)は凍結乾燥の間、冷凍工程に導入される。この加熱は、製剤の凝結点以下の温度で行われる。このアニーリング(加熱工程)は、本発明の乾燥組成物を更に安定させることができる。
【0051】
(再構成)
所望の段階で、例えば、トランスグルタミナーゼ(例えばFXIII)を患者に投与する時間に、本発明の乾燥組成物は、希釈液によって再構成されることができる。完全な水分補給を確実にするために約25℃の温度で再構成は行われる。但し、他の温度は所望のものとして使用されることができる。再構成のために必要な時間は、例えば希釈液の種類、トランスグルタミナーゼ及びその他の成分の量によって決まる。
本発明のある実施態様において、希釈液は蒸留水である。例えば、蒸留水を使用することが有利である。その理由は、別個の、カスタマイズされた希釈剤を製造する必要はないためである。
本発明のある実施形態において、希釈液はエタノールである。
本発明のある実施形態において、希釈液は、塩類、糖、アミノ酸、バッファー、非イオン性活性剤、還元剤、キレート剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、充填剤、張性調節剤、油性ベヒクル、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはその他のタンパク質)と双性イオンの物質のような1又は複数の成分を含む。希釈剤に含まれるどの成分及びこれらの成分の量は、これらの成分によって得られる所望の効果によって支配される。希釈剤の例は、静菌性の注射用水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝食塩水)、無菌食塩水及びデキストロース溶液を含むが、これに限定されるものではない。
再構成された溶液のタンパク質濃度は、少なくとも5mg/mlであり、例えば約10mg/mlから約400mg/ml、約20mg/mlから約200mg/ml、または約30mg/mlから約150mg/mlである。再構成された溶液の高いタンパク濃度は、再構成された溶液の皮下送達が予定される所で、特に役立つと考慮される。しかしながら、その他の投与経路のため(例えば静脈内投与)には、再構成された溶液中のタンパク質の低い濃度(例えば、再構成された溶液中約5−50mg/ml、又は約10−40mg/mlタンパク質)が要求される。ある特定の実施形態では、再構成された溶液のタンパク質濃度は、乾燥前の製剤のそれよりも、かなり高い。例えば、再構成された溶液中のタンパク質濃度は、乾燥前の水性組成物のそれの、約2−40倍、約3−10倍及び/又は3−6倍(例えば、少なくとも3倍又は少なくとも4倍)である。
本発明のある実施形態では、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物(例えば第XIII因子を含む)は、3年以上の貯蔵のために安定しており、再構成された溶液は6週間以上の使用のために安定している。本発明のある実施形態では、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物(例えば第XIII因子を含む)は、2年以上の貯蔵のために安定しており、再構成された溶液は4週間以上の使用のために安定している。本発明のある実施形態では、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物(例えば第XIII因子を含む)は、1年以上の貯蔵のために安定しており、再構成された溶液は2週間以上の使用のために安定している。本発明のある実施形態では、再構成された第XIII因子組成物の1%未満が非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子である。本発明のある実施形態では、再構成された第XIII因子組成物の0.5%未満が非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子である。
【0052】
(例示的な変異体)
表1及び2は、本発明の例示的な変異体の非限定的リストを開示する。
表1:例示的な変異体の非限定的リスト



表2:非限定的な例示的変異体

【0053】
(医薬組成物)
本発明は、トランスグルタミナーゼ(例えば第XIII因子)を含んで成る医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、本発明の再構成された溶液又は乾燥組成物を含む。
ある実施態様において、医薬組成物は、使用の前に希釈液の付加によって、医師または患者によって再構成されることを目的とする乾燥組成物(例えば冷凍乾燥または噴霧乾燥組成物)である。
トランスグルタミナーゼ(例えば第XIII因子)を含む本発明の医薬組成物は、その治療を必要とする患者に様々な経路で、例えば局所的に(例えば、皮膚に、又は粘膜に適用することによって)、バイパス吸収によって(例えば、動脈に、静脈に、または心臓への投与のような)、吸収を含むような経路によって(例えば、皮膚に、皮下に、筋肉に、または腹部への投与によって)、投与されてもよい。
それを必要とする患者に対する本発明の医薬組成物の投与は、様々な経路で、例えば舌に、舌下に、口内に、経口で、胃または腸、鼻、肺に(例えば、細気管支か肺胞、又はその両方を介して)、表皮、真皮、経皮、膣、直腸、眼に(例えば結膜を介して)、尿道にまたは非経口的に投与されてもよい。
本発明の組成物は、様々の投与形態、例えば、溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、多相エマルション、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、コート錠剤、リンス、カプセル(例えば硬質ゼラチンカプセル及び軟質ゼラチンカプセル)、坐薬、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアゾール、吸入剤、点眼剤、眼軟膏、眼用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注射液、インサイツ形質転換溶液(例えばインサイツゲル化、インサイツ硬化、インサイツ沈殿化、インサイツ結晶化のもの)、輸液、及び移植片として投与され得る。
本発明の組成物は、トランスグルタミナーゼ(例えば、第XIII因子)の安定性をさらに高め、生物学的利用能を増加させ、溶解性を増加させ、副作用を低減させ、当業者によく知られている時間療法を達成し、そして、患者のコンプライアンスを高めるか、もしくは、それらの任意の組合せのために、例えば、共有結合性、疎水性及び静電気的相互作用を介して、薬剤担体、薬剤送達系及び先端的薬剤送達系に、さらに配合されるか、もしくは、付加され得る。担体、薬剤送達系及び高度な薬剤送達系の例には、これに限定されるものではないが、ポリマー(例えばセルロース及びその誘導体)、多糖類(例えばデキストラン及び誘導体、デンプン及びその誘導体)、ポリ(ビニルアルコール)、アクリラート及びメタクリラートポリマー類、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール類、担体タンパク質(例えばアルブミン)、ゲル(例えばサーモゲル化系、例えば当業者によく知られているブロックコポリマー系)、ミセル、リポソーム、ミクロスフィア、ナノ粒子、液晶及びそれらの分散体、脂質−水系における相挙動の分野での当業者によく知られているL2相とその分散体(dispersion)、ポリマーミセル、多相エマルション、自己乳化剤、自己マイクロ乳化剤、シクロデキストリン及びその誘導体、及び、デンドリマーが含まれる。
本発明の医薬組成物は、全ての装置が当業者によく知られたものである、例えば定量吸入器、乾燥パウダー吸入器又はネブライザーを使用し、本発明の化合物を肺に投与するための固形物、半固形物、パウダー及び溶液の製剤に有用である。
本発明の医薬組成物は、放出制御性の、徐放性の、放出持続性の、放出遅延性の及び持続放出性の、薬物送達系の配合において特に有用である。本発明の医薬組成物は、例えば、当業者によく知られている非経口用の制御放出及び徐放系(双方の系は投与数を何倍も低下させる)の製剤化において、例えば皮下投与の放出制御及び持続性系に有用である。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御放出系及び組成物の例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマーミセル、ミクロスフィア、ナノ粒子である。本発明の組成物に有用な制御放出系の製造方法には、これに限定されるものではないが、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイズ、カプセル化、スプレードライ、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフィアを製造するための溶媒蒸発、押出及び超臨界流体プロセスが含まれる。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release (Wise, D.L.編 Marcel Dekker, New York, 2000)及びDrug and the Pharmaceutical Sciences vol.99: Protein Composition and Delivery (MacNally, E.J.編 Marcel Dekker, New York, 2000)が参照される。
非経口投与は、注射器、例えばペン型装置の注射器によって、皮下に、筋肉内に、腹膜内に、静脈内注射によって実施される。あるいは、非経口投与は、例えば薬物注入ポンプによって実施することができる。溶液または懸濁液の形態の本発明の医薬組成物の投与のための更なる選択肢は、鼻又は肺スプレーとして投与される。また更なる選択肢として、本発明の医薬組成物は、経皮投与に、例えば針のない注射、パッチ(例えばイオン注入パッチ)の適用、又は経粘膜(例えば口腔投与)に適合化させることもできる。
本発明において、様々な文法の形態の「治療」なる用語は、1)疾患の有害な効果、(2)疾患進行、又は(3)疾患原因因子を予防、治療、後退、希釈、軽減、改善、阻害、最小化、抑制、又は停止させることをいう。
本発明において、医薬組成物の「有効量」は、(1)疾患の有害な効果、(2)疾患進行、又は(3)疾患原因因子を、単独で、又は他の投与される治療薬と組合わせて、予防、治療、後退、希釈、軽減、改善、阻害、最小化、抑制、又は停止させるために十分な、医薬組成物(例えば第XIII因子)の量として定義される。
第XIII因子が、先天的に第XIII因子欠損症を有する患者、加えて先天性XIII因子欠損を有しない患者において、出血症状を治療又は予防するために使用することができることが記載されていた。例えば、US 5114916、US5607917、WO2002038167、WO2002036155、WO 200267981及びWO 200267980を参照。
本発明は、出血症状を治療又は予防するための方法に関しており、該方法は、それを必要とする患者に、FXIIIを含む本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる実施態様において、本発明は患者の凝固時間を減少するための方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の投与することを含む。更なる実施態様において、本発明は哺乳類の血漿の凝血塊溶解時間を延長する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の投与することを含む。更なる実施態様において、本発明は哺乳類の血漿の凝血塊強度を増大する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は哺乳類の血漿のフィブリン凝塊形成を増強する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は早産児の脳室内出血の防止のための方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は、手術の間かその後の患者の手術関連の失血を減少させるための方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は血友病Aを治療する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は血友病Bを治療する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明は血小板疾患を治療する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。更なる態様において、本発明はフォンビルブラント病を治療する方法に関しており、該方法はそれを必要とする患者に本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む。
本発明の医薬組成物は、FXIIIを含む場合に、骨又は傷の治癒、潰瘍性大腸炎、強皮症、へノッホ・シェーンライン紫斑病、クモ膜下出血、脳室内出血及び不明の理由の出血を含む全身的又は局所的適用に更に有用である。
これらの方法の更なる実施態様において、本発明の医薬組成物は、例えば第XIII因子を含み、WO200185198に記載のように、第VIIa因子の有効量と組合わせて投与される。
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、示された治療のために、患者に投与される唯一の活性薬剤である。
ある実施態様において、治療される被験者はヒトであり;ある実施態様において、被験者はトロンビン生成不全を有し;ある実施態様において、被験者はより低い血漿フィブリノゲン濃度を有する(例えば、多回輸血患者の場合)。
本発明は、したがって一般的に記載されており、以下の実施例を参照することでより容易に理解される。それらは例証として提供されるものであり、本発明を制限することを目的としない。
【実施例】
【0054】
本発明の組成物を開発するために、さまざまな組成物が、貯蔵の間の組成物のその後の安定性に対するそれらの効果について研究された。
【0055】
実施例1(第XIII因子の凍結乾燥及び再構成)
凍結乾燥実験は、市販の凍結乾燥器で実施される。イースト細胞の発現によって調製される組換え第XIII因子の溶液は、追加の成分とともに、適切な凍結乾燥プログラムに従って乾燥された。凍結乾燥物は、次に蒸留水を使用して再構成された。
【0056】
実施例2(乾燥第XIII因子組成物の安定性)
一連の乾燥rFXIII組成物は、実施例1に従って、凍結乾燥によって調製されて、安定性研究が実施され、純度がAIE-HPLCで測定され、凝集がSEC-HPLCで測定された。この研究は、表3及び4に示すように、水性の充填溶液に含まれるNaClの3つの濃度、0mM、12.5mM及び25mMのNaClおよびショ糖の4つの濃度を調査した。

表3:NaClの存在下及び非存在下における組成物の研究

表4:ショ糖及びNaClの含有量

表5:結果の表

表5及び図1に示す結果は、40℃で貯蔵した試料のNaClとAIE-HPLC純度との間に統計学的に有意な関係があることを示す。試料の最初の純度に対しては効果がない。従って、NaClが乾燥状態(すなわち乾燥組成物)に特異的に作用すると結論され、それによって乾燥rFXIII組成物の貯蔵安定性をかなり改良する。
【0057】
実施例3:(完全要因解析)
研究の目的は、凍結乾燥におけるrFXIIIaの形成について、ヒスチジン及び塩化ナトリウムの効果を調査するために、rFXIIIの凍結乾燥された製剤の事前スクリーニング実験を実施するためのものであった。完全要因実験計画は、乾燥rFXIII組成物中のNaCl濃度の範囲0−50mMについて、及びヒスチジン濃度の範囲20−60mMを評価するために使用された。

表6:実験的要因

表7:結果の表

表7及び図2及び3に示す結果は、NaClの含有は、40℃及び25℃でそれぞれ1ヶ月間及び2ヶ月間保存した、rFXIIIaの製剤に及び純度に、有意な安定化作用を有することを示す。NaClの含有は、開始時点における試料に有意な効果を有しない。ここで研究されたNaCl及びヒスチジンの濃度は、25℃で2ヵ月後に、SE-HPLCによる凝集体濃度に有意に影響を及ぼさない。この調査は、乾燥FXIII組成物にNaClを含むことが%純度及び%rFXIIIaに関して組成物の貯蔵安定性を有意に改良することを示す。
【0058】
実施例4:再構成の研究
この実験は、NaClの安定化作用が乾燥状態(すなわち乾燥組成物)に特異的であることを確認するために行われた。この実験において、凍結乾燥されたrFXIII組成物のバイアルは水で再構成され、次に2等量に分けられ、一方にNaClが加えられた。溶液は、24時間室温で保存後、rFXIIIaについて解析された。NaClの3つの濃度が評価された。実験設計は表8に表される。

表8:実験デザイン−rFXIIIa製剤溶液におけるNaClの効果

表9:NaCl再構成研究の効力結果

表9に示す結果は、24時間後に、NaClを含有する試料が、NaClを含んでいないそれぞれの比較溶液よりわずかに高いrFXIIIa値を有することを示す。これらの結果は、濃度範囲25−75mMについては、水性組成物中のNaClはrFXIIIaの形成に関して安定化作用を有しない。凍結乾燥rFXIII組成物中のNaClの安定化作用は、上の実施例のデータによって示されるように、乾燥状態(乾燥組成物)に特異的であると結論される。この効果は、驚くべきものであり、これまで知られていなかった。
【0059】
アッセイ
アッセイ(I):FXIIIaを測定する方法
FXIIIaの量に関する凍結乾燥の効果を研究するために、精製した組換え第XIII因子は酵素のFXIII活性アッセイによって分析されてもよい。トロンビンを付加した同じ試料の別のアリコートについては、FXIIIa活性は初期トロンビン活性化なしの試料のアリコート活性を比較することで測定される。% FXIIIaは、100*[トロンビンなしの試料の活性]/[トロンビンを有する試料の活性]として計算される。

アッセイ(II):FXIII純度を測定する方法
凍結乾燥の効果を研究するために、FXIIIの純度に関して、精製された組換えFXIIIは、陰イオン交換高速液クロマトグラフィ(AIE-HPLC)によって分析されることができる。

アッセイ(III):FXIII活性を測定する方法
FXIII架橋結合活性を測定する方法は公知技術である。FXIII活性は、市販のキット(例えばBerichrom FXIIIR試験キット)を使用して測定することができる。

アッセイ(IV):湿分を測定する方法
乾燥トランスグルタミナーゼ(例えばFXIII組成物)の湿分を分析するために、カール・フィッシャー滴定を使用してもよい。
【0060】
本発明の好適な特徴:
1.トランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成る水性組成物の凍結乾燥又は噴霧乾燥によって得られる乾燥トランスグルタミナーゼ組成物であって、水性組成物中の塩濃度は5から100mMの範囲である、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物。
2.トランスグルタミナーゼが第XIII因子化合物である1項に記載の組成物。
3.第XIII因子化合物がヒト第XIII因子である、2項に記載の組成物。
4.第XIII因子化合物が組換え第XIII因子である、2−3項の何れか一つに記載の組成物。
5.第XIII因子化合物がAサブユニットのダイマーである、2−4項の何れか一つに記載の組成物。
6.第XIII因子化合物が、第XIII因子、並びに野生型第XIII因子に特有の架橋結合活性の少なくとも一部分を保持しているその生物学的に活性な断片、誘導体、及び変異体からなる群から選択される、2項に記載の組成物。
7.前記第XIII因子化合物の濃度が1から約100mg/mlの範囲においてある、1−6項の何れか一つに記載の組成物。
8.塩が一価の塩である、1−7項の何れか一つに記載の組成物。
9.一価の塩が塩化ナトリウム塩である、8項に記載の組成物。
10.水性組成物中の上記塩の濃度が10から75mMの範囲にある、1−9項の何れか一つに記載の組成物。
11.水性組成物の上記塩濃度が20から60mMまで範囲にある、10項に記載の組成物。
12.水性組成物が糖を含んでなり、上記糖がショ糖、マンニトール、トレハロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、ラフィノース、デキストリン、シクロデキストリン及び誘導体、ホモログ並びにそれらの混合物の群から選択される糖または糖アルコールである、1−11項の何れか一つに記載の組成物。
13.上記糖及び糖アルコールの濃度が0.1%と8.5%(w/w)との間である、12項に記載の組成物。
14.水性組成物がアミノ酸を含んでなり、上記アミノ酸がグリシン、ヒスチジン及びアルギニンの群から選択される、1−13項の何れか一つに記載の組成物。
15.水性組成物がバッファーを含んでなり、上記バッファーがシトレート、ヒスチジン・リン酸ナトリウム、スクシナート及びTRISの群から選択される、1−14項の何れか一つに記載の組成物。
16.水性組成物が非イオン性活性剤、還元剤、キレート剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、充填剤、張性調節剤及び双性イオン物質からなる群から選択される一つ以上の更なる成分をさらに含む、1−15項の何れか一つに記載の組成物。
17.組成物が粉末形態である、1−16項の何れか一つに記載の組成物。
18.乾燥組成物が3%未満の水分を含む、1−17項の何れか一つに記載の組成物。
19.乾燥組成物が1%未満の水分を含む、18項に記載の組成物。
20.トランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んでなる水性組成物を乾燥させることによって1−19項の何れか一つに記載の乾燥組成物を調製する方法であって、水性組成物の塩の濃度が5から100mMまで範囲にある方法。
21.水性組成物の乾燥が凍結乾燥または噴霧乾燥によって前もって行われる、20項に記載の方法。
22.方法が再構成の1%以下の非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子を含む再構成後の第XIII因子組成物を産生するために使用される、20項又は21項に記載の方法。
23.希釈剤に1−19項の何れか一つに記載の乾燥組成物を再構成することによって調製された、トランスグルタミナーゼを含んで成る再構成された溶液。
24.上記希釈剤が蒸留水である、23項に記載の溶液。
25.上記希釈剤が、塩、糖、アミノ酸、バッファー、非イオン性界面活性剤、還元剤、キレート化剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、充填剤、張性調製剤、油性のベヒクル、タンパク質及び双性イオン物質からなる群から選択される一つ以上の更なる成分を含んで成る希釈剤である、23項に記載の溶液。
26.トランスグルタミナーゼが第XIII因子化合物である、23−25項の何れか一項に記載の溶液。
27.前記第XIII因子化合物の1%以下が非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子である、26項に記載の溶液。
28.前記要因XIII化合物の0.5%以下が非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子である、27項に記載の溶液。
29.23−28項の何れか一項に記載の溶液又は1−19項の何れか一項に記載の乾燥組成物を含む、医薬組成物。
30.失血を減じるための29項に記載の医薬組成物。
31.早産児の脳室内出血の防止のための29項に記載の医薬組成物。
32.手術後及び手術中に患者の手術関連性失血を減少するための29項に記載の医薬組成物。
33.血友病Aを治療するための29項に記載の医薬組成物。
34.血友病Bを治療するための29項に記載の医薬組成物。
35.血小板疾患を治療するための29項に記載の医薬組成物。
36.フォンビルブラント病を治療するための29項に記載の医薬組成物。
37.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、出血症状を治療又は予防する方法。
38.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、患者の凝固時間を減じる方法。
39.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、患者の凝固時間を減じる方法。
40.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、凝固強度を増大させる方法。
41.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る、フィブリン凝固形成を増強する方法。
42.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、早産児の脳室内出血を予防する方法。
43.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、手術後及び手術中に患者の手術関連性失血を減じる方法。
44.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、血友病Aを治療する方法。
45.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、血友病Bを治療する方法。
46.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、血小板疾患を治療する方法。
47.それを必要とする患者に対し29項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含んで成る、フォンビルブラント病を治療する方法。
48.非タンパク質加水分解性の活性化トランスグルタミナーゼの濃度が再構成直後に測定される総トランスグルタミナーゼ内容物の1%未満で構成されるように、乾燥形態での貯蔵の間にトランスグルタミナーゼ組成物を安定化する方法であって、安定化作用はトランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成り、水性組成物の塩濃度が5から100mMの範囲である水性組成物を乾燥させることによって提供される、方法。
49.トランスグルタミナーゼ組成物が第XIII因子組成物である、48項に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成る水性組成物の凍結乾燥又は噴霧乾燥によって得られる乾燥トランスグルタミナーゼ組成物であって、水性組成物中の塩濃度は5から100mMの範囲である、乾燥トランスグルタミナーゼ組成物。
【請求項2】
第XIII因子化合物がヒト第XIII因子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
塩が一価の塩である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
一価の塩が塩化ナトリウム塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
水性組成物中の前記塩濃度が10から75mMの範囲にある、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が粉末形態である、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
トランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んでなる水性組成物を乾燥させることによって、請求項1から6の何れか一項に記載の乾燥組成物を調製する方法であって、水性組成物中の塩濃度が5から100mMまでの範囲にある、方法。
【請求項8】
再構成後に1%以下の非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子を含む第XIII因子組成物を産生するために使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が希釈剤に請求項1から6の何れか一項に記載の乾燥組成物を再構成することによって調製される、請求項1から6の何れか一項に記載の溶液。
【請求項10】
前記第XIII因子化合物の1%以下が非タンパク質加水分解性の活性化第XIII因子である、請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
請求項10又は11に記載の溶液又は請求項1から6の何れか一項に記載の乾燥組成物を含む、医薬組成物。
【請求項12】
非タンパク質加水分解性の活性化トランスグルタミナーゼの濃度が再構成直後に測定される総トランスグルタミナーゼ内容物の1%未満で構成されるように、乾燥形態での貯蔵の間にトランスグルタミナーゼ組成物を安定化する方法であって、安定化作用はトランスグルタミナーゼ、塩、並びに糖、アミノ酸及びバッファーからなる群から選択される少なくとも一つの更なる成分を含んで成り、水性組成物の塩濃度が5から100mMの範囲である水性組成物を乾燥させることによって提供される、方法。
【請求項13】
トランスグルタミナーゼ組成物が第XIII因子組成物である、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518206(P2011−518206A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505472(P2011−505472)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054657
【国際公開番号】WO2009/130181
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】