説明

乾燥柿及びその製造方法

【課題】特別な施設や手間を必要とせずに、半生状でジューシー感のある乾燥柿を、生産性を下げることなく製造する方法を提供する。
【解決手段】乾燥柿の製造方法は、(1)柿1のヘタ2を除去して皮3を剥く前処理工程と、(2)ヘタを除去して皮を剥いた柿を、その上面又は下面から縦方向に放射状に切断(d)して、三日月型切片4を形成する切断工程と、(3)三日月型切片を乾燥する乾燥工程とを含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥柿及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柿は、栄養価の高い果物として、又は貴重な甘味源として、古から好まれており、広く食用に供されてきている。柿には、甘柿と渋柿があり、甘柿は加工せずに生食できるものの、渋柿は水分を20〜30%程度まで乾燥し、干し柿として利用するのが一般的である(非特許文献1を参照。)。また、渋柿は、脱渋して生食したり、脱渋して薄くスライスしたのち、干し柿と同じように乾燥させてなる柿チップとしても利用されている(非特許文献2を参照。)。
【0003】
ただ、干し柿や柿チップは、保存食としては優れているものの、水分が少なく硬いため、食べ難く、食感があまりよくないとの問題点があった。そこで、柿の水分を40〜50%程度まで水分を減少させた乾燥柿(通称「あんぽ柿」)が種々生産されている(非特許文献3を参照。)。
【0004】
しかし、一般に「あんぽ柿」は、製造する際に渋柿を硫黄で燻蒸して乾燥させるため、硫黄による毒性や臭気を抑えるための設備や煩雑な手間が掛かるとの問題点があった。また、硫黄燻蒸を避けて自然乾燥により脱渋することもできるが、この場合には乾燥時間が長くなり、生産性が低下するとの問題点があった。さらに、「あんぽ柿」には柿を丸ごと使用するため、小粒・スリ・キズ・変形等で規格外となった柿は使用できないとの問題点もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「干し柿」、[online]、ウィキペディア、[平成23年4月6日検索]、インターネット<URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/干し柿>
【非特許文献2】「柿チップ」、[online]、ふみこ農園、[平成23年4月6日検索]、インターネット<URL:http://www.fumiko.co.jp/SHOP/kakitippu300.html>
【非特許文献3】「あんぽ柿」、[online]、ウィキペディア、[平成23年4月6日検索]、インターネット<URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/あんぽ柿>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、特別な施設や手間を必要とせずに、半生状でジューシー感のある乾燥柿を、生産性を下げることなく製造する方法を提供することを課題とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ヘタを除去して皮を剥いた柿を、その上面又は下面から縦方向に放射状に切断し三日月型切片を形成してから、乾燥することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の乾燥柿の製造法により、特別な施設や手間を必要とせずに、半生状でジューシー感のある乾燥柿を、生産性を下げることなく製造できる。また、小片に加工するため、小粒・スリ・キズ、変形等の理由から、従来では廃棄されてしまっていた柿も有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、この発明の乾燥柿の製造方法の概略を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の乾燥柿の製造方法は、(1)前処理工程、(2)切断工程、(3)乾燥工程を含む方法である。そこで、これらについて、図1に基づいて以下に詳説する。
【0011】
(1)前処理工程
前処理工程は、図1(a)、(b)、(c)に示すように、柿1のヘタ2を除去して皮3を剥く工程である。なお、図1(a)はヘタ2を除去する前の柿1を示し、図1(b)はヘタ2を包丁Kで除去した状態を示し、図1(c)は皮3を剥いだ状態を示している。
【0012】
柿1は、10月から11月ごろに収穫される一般的な柿であれば、特に限定することなく使用できる。具体的には、刀根早生(とねわせ)柿、平核無柿、西条柿、愛宕(あたご)柿、市田柿、四ツ溝(よつみぞ)柿などの渋柿、富有柿、陽豊柿、松本早生富有柿、次郎柿、太秋(たいしゅう)柿、花御所(はなごしょ)柿などの甘柿、甲州百目(こうしゅうひゃくめ)柿などの不完全渋柿、西村早生(にしむらわせ)柿、筆柿などの不完全甘柿等が例示できる。
【0013】
なかでも、この発明の乾燥柿の製造方法では「柿チップ」とは異なり、渋抜しなくても乾燥させるだけで渋を糖に変えることができ、甘くて、食感が半生状でジューシーである乾燥柿が得られるため、渋柿の使用が好ましく、生産量が多いことから平核無柿の使用がより好ましい。なお、ヘタ2の除去や皮3の剥きは、包丁Kのほか、公知の方法や道具、例えばピーラーや自動皮剥機などを使用してもよい。
【0014】
(2)切断工程
切断工程は、図1(d)、(e)に示すように、ヘタ2を除去して皮3を剥いた柿1を、その上面又は下面から縦方向に、包丁K、鋼製の刃が放射状に配置された切断器等の公知の道具や装置を使用して、放射状に切断する工程である。なお、図1(d)は切断前の状態を示しており、図1(e)は切断によって得られる三日月型切片4を示している。
【0015】
なお、切断に際しては、切断により生じる三日月型切片4の最も厚い部分の厚さが、30mmから50mm程度となるように、具体的には4等分から8等分に切断するのが好ましい。また、柿として種を有する品種を使用する場合には、手作業などによって三日月型切片4から種子を除去する。
【0016】
(3)乾燥工程
乾燥工程は、図1(f)、(g)に示すように、三日月型切片4を乾燥して乾燥柿5を製造する工程である。具体的には、三日月型切片4を金網Wの上において天日干しする方法のほか、陰干し、機械乾燥など干し柿を製造する際に使用する公知の方法であれば、特に制限なく使用することができる。
【0017】
なお、乾燥時間は、乾燥柿5の含水率が15重量%から25重量%、かつ収縮率(乾燥後の体積を乾燥前の体積に対する百分率で示した値)が60%から85%になるのであれば、乾燥方法に応じて自由に変えることができる。例えば、天日干しであれば約半月、陰干しであれば約1ヶ月、40℃の温風で機械乾燥するのであれば、2日間から3日間程度が適当である。
【0018】
また、必要であれば複数の乾燥方法を組み合わせてもよい。例えば、食感がよいことから、40℃の温風で10時間、10℃の冷風で8時間機械乾燥して、半日から1日日間日干し乾燥したのち、40℃の温風で3時間、10℃の冷風で3時間機械乾燥することが好ましい。
【0019】
以下、この発明を実施例に基づいてより詳しく説明するが、この発明の特許請求の範囲は如何なる意味においても下記の実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
(1)前処理工程と(2)切断工程
渋柿(平核無柿)のヘタを包丁で除去したのち、ピーラーで皮を剥いた。ヘタを除去して皮を剥いた渋柿200gを、その上面又は下面から縦方向に、包丁で放射状に4等分から8等分に切断して、三日月型切片を得た。なお、三日月型切片の最も厚い部分の厚さは約40mmであった。
【0021】
(3)乾燥工程
三日月型切片を金網に載せた状態で、40℃の温風で10時間、10℃の冷風で8時間機械乾燥して、半日から1日日間天日干し乾燥したのち、40℃の温風で3時間、10℃の冷風で3時間機械乾燥した。
【0022】
その結果、含水率20重量%、収縮率80%、最も厚い部分の厚さが20mmである乾燥柿40gが得られた。得られた乾燥柿を食べたところ、半生状でジューシー感があり、柿本来の甘みが口の中に広がる優れた食品であることが分かった。
【符号の説明】
【0023】
1 柿
2 ヘタ
3 皮
4 三日月型切片
5 乾燥柿
K 包丁
W 金網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)柿のヘタを除去して皮を剥く前処理工程と、
(2)ヘタを除去して皮を剥いた柿を、その上面又は下面から縦方向に放射状に切断して、三日月型切片を形成する切断工程と、
(3)三日月型切片を乾燥する乾燥工程と、
を含む乾燥柿の製造方法。
【請求項2】
柿が渋柿である請求項1に記載の乾燥柿の製造方法。
【請求項3】
切断工程において、ヘタを除去して皮を剥いた柿を縦方向に放射状に切断する際に、4等分から8等分に切断する請求項1に記載の乾燥柿の製造方法。
【請求項4】
乾燥工程において、40℃の温風で10時間、10℃の冷風で8時間機械乾燥して、半日から1日日間天日干し乾燥したのち、40℃の温風で3時間、10℃の冷風で3時間機械乾燥する請求項1に記載の乾燥柿の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の乾燥柿の製造方法により得られる乾燥柿。

【図1】
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