乾燥用物質、その調製および使用
【課題】取り扱いおよび製造が容易で、かつ費用効率の高い水パーベーパレーション特性を呈する膜および他の基材を開発する。
【解決手段】2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつこのチューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質。この流体は、水、水蒸気またはその両方を含んでいてもよい。流体(水、水蒸気またはその両方など)をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスは、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含んでいてもよい工程と、このポリマーブレンドを所望の形態に加工する工程とを含む。
【解決手段】2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつこのチューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質。この流体は、水、水蒸気またはその両方を含んでいてもよい。流体(水、水蒸気またはその両方など)をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスは、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含んでいてもよい工程と、このポリマーブレンドを所望の形態に加工する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水パーベーパレーション特性を呈する膜および他の基材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機気体などの気体からの水などの液体の分離または除去は、化学産業、石油化学産業、医療産業およびエネルギー産業の中で重要なプロセスである。水の除去は、広い範囲の有機溶媒の一次生産において、使用済みの溶媒の回収および再生利用において、ならびに好ましい生成物に向かって反応を駆動するための化学平衡反応からの水の除去において重要である。
【0003】
水などの液体を含まない、または実質的に含まない気体を必要とする別の応用例は、患者の状態に関する情報を提供するために行われる医学的な呼気分析である。しばしば行われる気体分析の例は、通常は時間依存的である呼吸による二酸化炭素(CO2)濃度のモニタリングであるカプノグラフィである。この時間依存的な呼吸によるCO2濃度は、CO2の吸入され吐き出される濃度を直接モニターするために、および患者の血液中のCO2濃度を間接的にモニターするために使用されてもよい。酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、窒素などの他の気体もまた個々にまたは組み合わせで測定されてもよい。
【0004】
呼気分析システム、例えばカプノグラフィでは、呼気ガスは本流(mainstream)または側流(sidestream)分析器などによってサンプリングすることができる。本流分析器では、サンプル室が患者の気体のストリーム内に、通常は患者の呼吸器系統の末端近くに配置される。この装置は、通常、側流システムよりも重くかつ煩わしい。
【0005】
側流分析器では、気体はチューブによって呼吸器系統から抜き取られることが多い。アダプターへと接続されてもよいこのチューブは、この気体をサンプリング場所(サンプリング室など)へと送達する。連続的で妨げのないモニタリングを許容するために、サンプリングラインは、常に流体試料の中に凝縮された液体などの液体がないことが好ましい。
【0006】
凝縮された液体は、一般に、サンプリングチューブの中で湿度(呼気の中の水蒸気)から凝縮する水を指す。凝縮された液体は、呼気分析、特に側流カプノグラフィを一般に妨げる主要な問題である。チューブの内部の湿度レベルは、とりわけ呼気採取エリアに近接するところでは高い。なぜなら、吐き出され吸入される息は湿っており、比較的暖かいからである。これは、気道加湿システムおよび患者の要求に応じて、通常は常温よりも高い温度(例えば、約34℃)で最高100%湿度を有する気体(例えば、空気)を用いて通常人工呼吸器につながれている挿管された患者の場合にも当てはまる。この湿気(水蒸気)は、温度低下が原因で(特に、チューブが呼気採取エリアから離れて延びる場合は)チューブの内側で凝縮することが多い。
【0007】
流体を脱水するために使用されてきた種々のプロセスには、パーベーパレーションおよび蒸気透過などのより新しい膜ベースの技法が含まれる。パーベーパレーションは、供給側または上流側の流体(気体および/または液体を含んでいてもよい)および透過側または下流側の蒸気と接する膜を伴うプロセスである。そのプロセスに駆動力を与えるために、通常、真空または不活性気体が膜の蒸気側に付与される。典型的には、下流圧力は透過物の飽和圧力よりも低い。蒸気透過は、液体の代わりに蒸気が膜の供給側で接することを除いて、パーベーパレーションとまったく同様である。パーベーパレーション分離に適した膜は典型的には蒸気透過分離にも適しているので、本願明細書における用語「パーベーパレーション」の使用は、「パーベーパレーション」および「蒸気透過」の両方を包含する。
【0008】
様々な異なる種類の膜が、パーベーパレーション脱水プロセスでの使用のために記載されてきた。この膜を調製するために使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、および高分子電解質などの親水性有機ポリマーが挙げられる。加えて、細孔性構造を有するモレキュラーシーブおよび鉱物性物質(例えば、アルミノシリケート鉱物性物質であるゼオライト)などの無機材料が使用されてきた。
【0009】
当初は、ポリマーベースのパーベーパレーション膜は高密度の均一膜を含んでいた。かかる膜の典型例は、Yamasakiら[非特許文献1]によって記載されている。この文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。これらの膜は、それらがかなり厚いので、低い流量(単位時間あたりに単位膜面積を通って流れる流体の量)という問題を抱えている。この膜の流量は膜の厚さを減少させることによって増加させることができるが、これは、機械的強度および堅牢さの低下につながる。
【0010】
上記の膜(これらのいくつかは均一な膜であると考えられてもよい)が遭遇する問題を克服するために、2つの経路が一般に使用されてきた。第1の経路は、高密度の表面層が同じポリマーから作製されるより多孔性の材料の上に支持されている非対称な膜の使用を含む。かかる非対称な膜の典型例は、Huangら[非特許文献2]によって開示されている。この文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0011】
第2の経路は、高密度の表面層および支持膜の化学組成が典型的には異なる、適切な支持膜の表面上に高密度の薄膜を形成することを含む。典型的には、この支持膜は、さらなる強度を提供するために組み込まれた布地を含んでいてもよい限外濾過膜である。これらの薄膜複合膜の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されている。しかしながら、これらの薄膜複合膜の1つの主要な不都合は、その脆弱性である。例えば、一般に使用される、ポリアクリロニトリル限外濾過膜支持体上に支持された架橋ポリ(ビニルアルコール)膜は、膜でのクラックの形成によって、および膜の一部分が支持体から離れたところで崩落することによって容易に損傷を受ける。それゆえ、これらの膜を取り付けて使用するときには多大な注意が払われなければならない。かかる膜が欠陥を含まないようにしてかかる膜を調製することも困難である。
【0012】
薄膜複合膜の特別の形態は、「Simplex」膜と呼ばれる。これらは、反対の電荷を帯びた高分子電解質の交互の層を使用する薄膜から構成される。この膜は、多層の複合体が形成されるように、2つの異なる高分子電解質の溶液の中で連続的に浸漬することによって作製される(例えばKrasemannら[非特許文献3];Krasemannら[非特許文献4]、およびHaackら[非特許文献5]を参照のこと)。これらの文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。高い選択性および適度な流量はSimplex膜を用いて達成することができるが、これらの膜は多数回のコーティング工程を必要とするため、それらは調製するのが複雑である。理想的な性能を得るために、最高60回の浸漬操作が必要とされる場合がある。別の重大な欠点は、これらの膜がその複数の層のいくつかの損失なしには25%を超える供給含水量に耐えられないという事実にある。
【0013】
ナフィオン(Nafion)(登録商標)膜
パーベーパレーションによる気体の脱水のために従来から使用される方法は、プロトン交換膜燃料電池で使用される膜などのプロトン伝導性膜を使用することである。これらの膜の例はデュポン(DuPont)によりナフィオン(登録商標)の商標で販売されるが、それはペルフルオロ化スルホン酸ポリマーから作製される。完全フッ素化ポリマーであるナフィオン(登録商標)膜は高い化学安定性および熱安定性を有し、約100℃までの温度で強塩基、強い酸化性および還元性の酸、H2O2、Cl、H2およびO2中での化学的攻撃に対しても安定である。ナフィオン(登録商標)は、スルホン酸基が化学的に結合されているフッ素重合体骨格からなる。しかしながら、通常十分な性能を提供するが、ナフィオン(登録商標)は高価な材料であり、このことがナフィオン(登録商標)をほとんどの用途で経済的には魅力のないものにしている。
【0014】
ナフィオン(登録商標)チューブは、上記のように実質的に液体を含まない採取された気体を必要とする呼気分析の用途(カプノグラフィなど)のために使用されてきた。ナフィオン(登録商標)チューブは、外チューブの管腔内に同軸上に嵌め込まれた内チューブを含む。ペルフルオロ化ポリマーから製作されるこの内チューブは、一呼吸ごとの応答時間と一致する所定の小さい内径を有する。この用いられるナフィオン(登録商標)プラスチックは湿気(水蒸気)に対しては高い透過性を示すが、酸素および二酸化炭素などの他の呼吸による気体を容易には通さない。
【0015】
呼気分析で使用される場合、ナフィオン(登録商標)は患者の気道および呼気採取システムの一部分であり、従って1人の患者から別の患者へと移すことはできず、そして同じ患者に対して再使用することすらできない。ナフィオン(登録商標)のこの使い捨て性は原価要素を上昇させる。比較的長いナフィオン(登録商標)チューブを必要とする用途では、コストはさらにより重大になる。例えば、(例えば、カプノグラフィでは一般的な流量である)150ml(ミリリットル)/分でサンプリングする場合、6インチ(約15cm)のナフィオン(登録商標)が必要とされる。この長さのナフィオン(登録商標)は、管路系(呼気採取システムなど)全体よりも少なくとも一桁多いコストがかかる場合がある。
【0016】
多くの用途におけるナフィオン(登録商標)管路は非常に薄い壁(典型的には0.002〜0.003インチ(約0.05〜約0.08mm))を有するため、水はすばやくそれを透過する。しかしながら、この薄い壁は、この壁の崩壊を防ぐための二次的な構造的支持体の使用をも決定付ける。これらの構造的支持体は、当該製品の製造を複雑にし、水の透過をも低下させる。
【0017】
ナフィオン(登録商標)管路は、インフレーションフィルム押出として公知のプロセスによって製作される。このプロセスは、あまりに薄すぎて自己の重量を支えることもできない壁を有する材料であるごみ袋を製造するのと同種の以下の工程を含む。典型的なごみ袋は、0.002または0.003インチ(約0.05または約0.08mm)の壁厚を有する(大きいごみ袋はもう少し厚い場合がある)。典型的なナフィオン(登録商標)医療用気体「ライン」チューブは、典型的には壁厚が0.0025インチ(約0.06mm)である。そして、ごみ入れがごみ袋を開いて保持するのとまさに同じように、メッシュ状挿入物または外側スリーブが、それぞれ内側からまたは外側から管路を開いて保持するために使用されるべきである。このメッシュは、管路の表面への気体の循環を可能にするように、十分に粗く織られてもよい。しかしながら、上述のように、チューブの内側または外側にメッシュ状挿入物が存在することは、パーベーパレーションプロセスの効率を妨げる、典型的には50%を超えて水パーベーパレーション効率を低下させる可能性がある。ナフィオン(登録商標)の別の不都合は、その調製のために使用される原料の化学的に攻撃的な(aggressive)性質およびこれらの材料の加工の困難さである。ナフィオン(登録商標)の加工を可能にするためには、例えば、特別の押出手段が必要とされる。さらに、ナフィオン(登録商標)を管路系(呼気採取システムなど)に一体化することは、複雑であり特別の手段を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,755,299号明細書
【特許文献2】米国特許第5,334,314号明細書
【特許文献3】米国特許第4,802,988号明細書
【特許文献4】欧州特許第0,381,477号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Yamasakiら、J.Appl.Polym.Sci. 1996年、第60巻、743−48頁
【非特許文献2】Huangら、Sep.Sci.Tech. 1993年、第28巻、2035−48頁
【非特許文献3】Krasemannら、J.Membr.Sci. 1998年、第150巻、23−30頁
【非特許文献4】Krasemannら、J.Membr.Sci. 2001年、第181巻、221−8頁
【非特許文献5】Haackら、J.Membr.Sci. 2001年、第184巻、233−43頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、効果的で、取り扱いおよび製造が容易で、かつ費用効率の高い水パーベーパレーション特性を呈する膜および他の基材についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下の実施形態およびその態様は、システム、ツールおよび方法に関連して説明および図示される。それらのシステム、ツールおよび方法は、例示および例証のためのものであることが意図されており、範囲を限定するものであるとは意図されていない。種々の実施形態では、上記の問題点の1以上が軽減または解消され、他の実施形態は他の利点または改善に関する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、パーベーパレーションプロセスによる空気およびCO2などのより極性の低い気体からの水などの極性流体の選択的な除去のために設計された堅牢な、高性能物質(膜またはチューブなど)を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、乾燥用ポリマー物質であって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつこの物質は流体をパーベーパレーションするように適合された、乾燥用ポリマー物質が提供される。この流体は水、水蒸気またはその両方を含んでもよい。この物質は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)など(これらに限定されない)などの相溶化剤をさらに含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、呼気採取システムであって、乾燥用ポリマーチューブであって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化された基を含み、かつこのチューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマーチューブと、この乾燥用ポリマーチューブを呼気採取チューブに接続するように適合されたコネクタ、および強化要素のうちの少なくとも1つと、を含む呼気採取システムが提供される。このコネクタ、強化要素、またはその両方は、当該乾燥用ポリマーチューブとともに成形されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、上記不均一相ポリマー組成物は、実質的に共連続相構造を有する。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、上記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含んでもよい。このフッ素重合体はポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含んでもよい。このスルホン酸基を含むポリマーは、スルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含んでもよい。このスチレン共重合体は熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、このPVDFなどのフッ素重合体またはその誘導体はスルホン酸基を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含んでもよいし、そのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含んでもよく、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は膜を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該チューブは、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該チューブは、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有してもよい。
【0031】
当該乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面を有してもよい。当該乾燥用チューブは、実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有してもよい。当該乾燥用チューブは、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよく、この乾燥用チューブは内側導管を含んでもよく、この内側導管の少なくとも一部分の内側断面は実質的に非円形であり、かつこの内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って当該乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている。この内側導管の断面は実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。この内側導管の断面は実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、流体(水、水蒸気またはその両方など)をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスが提供され、このプロセスは、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含んでいてもよい工程と、このポリマーブレンドを、例えば成形または押出によって所望の形態に加工する工程とを含む。この不均一相ポリマー組成物は、実質的に共連続相構造を有してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、混合する工程は相容化剤を用いて混合することを含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、当該プロセスは、スルホン化できる1以上の基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合された乾燥用チューブを得る工程をさらに含んでもよい。当該乾燥用ポリマー物質のスルホン化の割合(%)は40〜100%の範囲にあってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、上記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含んでもよい。このフッ素重合体はポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含んでもよい。このスルホン酸基を含むポリマーは、スルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含んでもよい。このスチレン共重合体は熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含んでもよいし、そのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含んでもよく、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該乾燥用ポリマー物質は、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該乾燥用ポリマー物質は、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、上記所望の形態は膜を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、この所望の形態はチューブを含んでもよく、この得られた乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよい。
【0040】
当該乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面を有してもよい。この乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有してもよい。この乾燥用チューブは非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有してもよい。
【0041】
この乾燥用チューブは、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有していてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよく、この乾燥用チューブは内側導管を含んでもよく、この内側導管の少なくとも一部分の内側断面は実質的に非円形であり、かつこの内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って当該乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている。この内側導管の断面は実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。この内側導管の断面は実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、水パーベーパレーションに適合された管路系の調製方法が提供され、この方法は、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、少なくとも1つのコネクタ、少なくとも1つの強化要素またはこれらの組み合わせを有するチューブの形態に、この不均一相ポリマー組成物を成形する工程と、を含む。この方法は、スルホン化されるように適合された基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合されたチューブと、1以上のさらなるチューブに接続するように適合された少なくとも1つのコネクタおよび/または少なくとも1つの強化要素とを含む管路系を得る工程をさらに含んでもよい。
【0044】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図面を参照することによって、および以下の詳細な説明を検討することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図2】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造のプロセス手順についての流れを示す。
【図3】いくつかの実施形態に係る、グラフト化度(%DOG)に対する温度および結晶化度(%結晶性)の影響のグラフを示す。
【図4】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図5】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図6】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造のプロセス手順についての流れを示す。
【図7A】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7B】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7C】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7D】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7E】いくつかの実施形態に係る非対称の多孔性乾燥用チューブを示す。
【図8A】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【図8B】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【図8C】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の説明では、本発明の種々の態様が説明されるであろう。本発明の完全な理解を提供するために、説明の目的のために、特定の構成および細部が示される。しかしながら、本発明は本願明細書に提示されている特定の細部がなくとも実施することができるということも当業者には明らかであろう。さらに、周知の特徴は、本発明を曖昧にしないようにするために、省略または単純化される場合がある。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、気体(空気、酸素(O2)、酸素富化した空気(oxygenated air)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素、(CO2)またはいずれかの他の気体など)を極性の流体、例えば、水および/または水蒸気などの流体から乾燥するように適合されている膜またはチューブ(マイクロチューブなど)などの(これらに限定されない)ポリマー物質が提供される。このポリマー物質は、他の気体成分(二酸化炭素、CO2、酸素、窒素またはいずれかの他の気体など)の濃度を実質的に維持しつつ、(その膜に沿ってまたはチューブを通って)その気体を流すことができるようにさらに適合されていてもよい。
【0048】
このポリマー物質は、呼気試験分析システムなどのサンプリングおよび/または分析システムに組み込まれるように適合されていてもよい。呼気試験分析では(特に側流呼気試験分析では)、吐き出された呼気は、被験者からサンプリングされて当該気体試料の組成ならびに/または気体成分のいずれか(例えばCO2)の特性および/もしくは挙動に関する情報を提供する分析器まで、管路系を通される。吐き出された気体の正確な分析を得るために、呼気試料は、特定の成分の最初の組成および特徴を維持するべきであるが、実質的に水を含まないものでもあるべきである。本発明のいくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その分析にとって必須である他の成分の組成および特性を実質的に維持しつつ、サンプリングされた気体を水分子から乾燥するように適合されている。いくつかの実施形態によれば、ポリマー物質は気体を湿らせるようにも適合されていてもよい。例えば、チューブまたは膜の場合は、そのチューブまたは膜の一方の側で気体が乾燥され、他の側でその気体は湿らされる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、極性が増加するにつれて透過性が増加する、流体の極性に依存する、流体についての透過性を示してもよい。例えば、このポリマー物質は、CO2(これは実質的に非極性の化合物である)に対してよりも水(これは極性の化合物である)に対してより良好な透過性を示してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、用語「透過性」は、材料(ポリマー物質など、例えば、膜またはチューブ)の、流体(水および/または水蒸気など)を送る(透過させる)能力を指してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、用語「極性」は、ある分子の正に帯電した(小さい正電荷でさえも)末端と別の分子または同じ分子の負の(小さい負電荷でさえも)末端との間の双極子−双極子分子間力を指してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、このポリマー物質は、パーベーパレーション能(水のパーベーパレーションおよび/または水蒸気のパーベーパレーションなど)を呈してもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、用語「パーベーパレーション」は、膜(乾燥用ポリマーチューブの壁など)を通る流体の移動を含むプロセスであって、その流体は蒸気または液体として非多孔性または多孔性膜に入り、そして蒸気としてその膜を透過するプロセスを指してもよい。この流体は、水、湿度、水蒸気または他の流体(メタノールまたはいずれかの他の流体など)を含んでいてもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、このポリマー物質はナフィオン(登録商標)の代わりに使用されてもよく、またナフィオン(登録商標)より良好な(または実質的に類似の)水パーベーパレーション性能を呈してもよい。より良好な水パーベーパレーションは、選択された操作パラメータにおけるその材料を通る水のより速い移動を含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、気体の乾燥(または湿潤化)目的で使用される(乾燥用)ポリマー物質は、流体(水および/または水蒸気など)のパーベーパレーションを可能にするように適合されているだけではなく、許容できる機械的特性(強度および柔軟性など)を実質的に維持するようにも適合されているべきである。いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その最初の寸法(例えば、パーベーパレーションで使用する前のその寸法)の1以上を実質的に維持するように適合されていてもよい。他の実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その最初の寸法の1以上を変化させるように適合されていてもよい。例えば、ポリマー物質の寸法の1以上が、流体のパーベーパレーションで使用する最中または使用した後に変化(例えば、増大)してもよい。例えば、膜および/またはチューブの厚さおよび/または長さは、流体が通されるときに、増大してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、患者が薬剤または他の活性物質を吐き出すまたは吸入するときに通してもよい作動環境中(呼気採取チューブの中など)で堅牢であるように適合されていてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、3つの主要経路、「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」および「多孔性経路」によって調製されるポリマー物質の膜またはチューブなどのポリマー物質の3つの主要な種類が提供される。いくつかの実施形態によれば、本願明細書に提示されるポリマー物質は、容易に製造されかつ取り扱われ、耐性があり、構造的に安定であり、かつ/または膜系または管路系などの所望の系の中へ容易に組み込まれるように適合されている。
【0058】
A)乾燥用ポリマー物質 − 「グラフト化(高密度)経路」
いくつかの実施形態によれば、膜またはチューブなど(これらに限定されない)の乾燥用ポリマー物質であって、芳香族基(例えば、フェニル基)などの基を有する化合物でグラフト化されたポリマーを含み、この基はスルホン化することができる乾燥用ポリマー物質が提供される。かかる基の例としては、スチレンまたはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質はまた、選択的な水(蒸気または液体)輸送を生成するように適合されているいずれかの材料、特にスルホン酸基タイプの基(またはそのいずれかの誘導体もしくは塩)(これらに限定されない)も含んでいてよい。かかる乾燥用ポリマー物質の例はポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)共重合体である。
【0059】
用語「芳香族基」には、いくつかの実施形態によれば、共役のみの安定化によって期待されるであろう安定化よりも強固な安定化を示す不飽和結合、孤立電子対、および/または空の軌道の共役環を含めてもよい。
【0060】
用語「スルホン酸基」には、いくつかの実施形態によれば、スルホン酸残基(−S(=O)2−OH)またはそのいずれかの塩(R−S(=O)2−ONaなど)または誘導体を有するいずれかの基、化合物(アニオンなど)を含めてもよい。
【0061】
用語「フェニル基」(フェニル環または−Phと呼ばれることもある)は、いくつかの実施形態によれば、式−C6H5またはそれらのいずれかの誘導体を有するいずれかの原子の群を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、用語「フェニル基」には非置換または置換フェニル基を含めてもよい。
【0062】
用語「スチレン」(ビニルベンゼン、シンナメン(cinnamene)、スチロール、エテニルベンゼン、フェネチレン(phenethylene)、フェニルエテン、および他の名称で呼ばれることもある)は化学式C6H5CH=CH2の有機化合物である。
【0063】
用語「ポリマー」は、いくつかの実施形態によれば、典型的には共有化学結合によって互いに連結される繰り返し構造単位から構成されるいずれかの分子を含んでよい。用語「ポリマー」は、いくつかの実施形態によれば、単独重合体(これは1つの単量体種から誘導されるポリマーである)、共重合体(これは2つ(以上)の単量体種から誘導されるポリマーである)またはこれらの組み合わせを含んでもよい。本願明細書で呼ぶところのポリマーは、ポリマーの混合物を含んでいてもよい。本願明細書で呼ぶところのポリマーは、直鎖状ポリマーおよび/1以上のポリマー側鎖を有する単一の主鎖からなる分枝状ポリマーを含んでいてもよい。
【0064】
用語「グラフト化された」または「グラフト化」は、いくつかの実施形態によれば、結合された化合物を含むポリマーまたは共重合体(グラフト化されたポリマー)を生成するために、ポリマーまたは共重合体へと化合物(単量体化合物など)を結合すること(例えば共有結合すること)を含んでもよい。グラフト化されたポリマーの例としては、そのポリマーの主鎖とは異なる組成または配置を有する側鎖でグラフト化されたポリマーを挙げることができる。グラフト化のより具体的な例としては、スチレン単量体がポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)に導入および結合されて、ポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリスチレン(PVDF−g−PS)共重合体が生成されるプロセスを挙げることができる。
【0065】
本願明細書で呼ぶところの共重合体は、交互共重合体、周期共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはいずれかのこれらの組み合わせを含んでよい。
【0066】
用語「乾燥用ポリマー物質」は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーを含むいずれかの物質(チューブまたは膜を含むが、これらに限定されない)であって、当該物質はパーベーパレーションを実施するように適合されている、物質を含んでよい。
【0067】
ポリマーの例には、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンおよびその共重合体など)および/またはフッ素重合体、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはhttp://solutions.3m.com/wps/portal/3M/en_US/dyneon_fluoropolymers/Home/Products_and_Solutions/Products/Fluoroplastics/PVDF(これは参照により本願明細書に援用したものとする)に見出されうるフッ素重合体などのいずれかの他のフッ素重合体を含めてよい。
【0068】
PVDFにはPVDF(単独重合体)およびPVDF(共重合体)を含めてよい。PVDF(単独重合体)は1,1−フルオロ−エテンのポリ(フッ化ビニリデン)を含んでもよい。PVDF(単独重合体)の化学構造は−[CF2−CH2]n−(式中、nは1より大きい整数である)である。
【0069】
PVDF(共重合体)は、_[CF2−CH2]x_[CF2−CF(CF3)]y_(式中、xおよびyは独立に整数である)の化学構造を有するHFP(ヘキサフルオロプロピレン)−PVDF共重合体を含んでもよい。
【0070】
グラフト化されるポリマー(PVDFなど)の性質および特性は、乾燥用ポリマー物質の性能および特徴に影響を及ぼす。例えば、ポリマー(スチレン関連化合物、またはいずれかの他の適切な化合物を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)のグラフト化の割合(%)は、そのポリマーの結晶化度によって影響を受ける可能性がある。例えば、より低い結晶化度を有するポリマー(PVDF共重合体など)については、グラフト化は、より高い結晶化度を有するポリマー(PVDF単独重合体など)に比べて、容易に行われる可能性がある。ポリマーのグラフト化(スチレン化とも呼ばれることがあるスチレングラフト化など)の程度は、グラフト化されたポリマーに結合されうるスルホン酸基(またはそのいずれかの誘導体または塩)の量に関連する。そのポリマー中にスチレン化合物が多いほど、より多くのスルホン酸基が結合される可能性がある。本願明細書中で上記したように、このスルホン酸基は、水に対して高い親和性を有し、従って当該乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション特性を決定する(当然、他の因子もまた同様に当該乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション特性に影響を及ぼしうる)。いくつかの実施形態によれば、用語「結晶性の」は、構造的秩序を有する固体、例えばポリマーを指してもよい。構造的秩序は、規則正しい、周期的な様式で配列された分子を含んでよい。結晶性、固体における構造的秩序、は例えば回折手法によって検出されてもよい。材料(ポリマーなど)は、結晶領域および非晶領域(原子/分子の位置の長距離にわたる秩序を示さない固体)を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、用語「結晶化度」は、ポリマー試料中の結晶性の(体積によるかまたは質量による)分率量を指してもよい。「結晶性ポリマー」には、少なくともその一部の領域で結晶性を示すポリマーを含めてもよい。
【0071】
当該乾燥用ポリマー物質の結晶化度およびひいてはグラフト化度、スルホン化およびパーベーパレーション性能を最適化するために、異なる配合物(例えば異なる比の単独重合体/共重合体)が使用されてもよい。単独重合体/共重合体の比はまた、機械的特性および/または押出を受ける能力にも影響を及ぼす場合がある。例えば、約25%単独重合体と75%共重合体とを含む混合物を使用して生成されたポリマー物質は、例えば100%共重合体に比べて、より剛直な構造を有して中程度のグラフト化度能を呈するであろう。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、グラフト化(スチレン化など)温度およびスチレン化継続時間もまた当該乾燥用ポリマー物質の性能および特徴に影響を及ぼす。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、グラフト化(例えばスチレン化)の割合(%)は20〜50%(重量)、例えば、25〜40%(重量)の範囲、より具体的には33%(重量)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、スチレン化(グラフト化)温度は、20℃〜70℃、より具体的には、25℃〜60℃の範囲、例えば25℃、40℃または55℃であってもよい。いくつかの実施形態によれば、スチレン化は、50%〜100%スチレン(例えばメチルベンゼンの中の80%スチレン)への浸漬を含む。
【0074】
ポリマーをグラフト化した後、スルホン化は、そのポリマー物質のパーベーパレーション特性を創出するために行われることになる。
【0075】
この乾燥用ポリマー物質は、「γ」照射などの照射、続くそのPVDF基礎構造の化学処理によるポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)(例えばPVDF単独重合体、共重合体またはその両方)の改質、スチレンのグラフトの組み込み、次いでポリスチレン基のスルホン化を実施するためのスルホン酸基の導入によって製造されてもよい。かかるプロセスの生成物は、ポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)共重合体である。
【0076】
ここで、乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図100を図示する図1を参照する。工程110は、(例えば、粉末、微粒子またはペレットなどの固体形態にある)ポリマーまたはポリマー混合物/配合物、例えば、PVDF単独重合体、共重合体またはこれらの組み合わせ)を入手することを含む。工程120は、ポリマー物質130の所望の構造(例えば、ポリマーチューブまたは膜)を製造するために、例えば押出または成形(射出成形など)によりそのポリマーを加工することを含む。このポリマー配合物およびこのポリマーの加工は、最終的にはポリマー物質130の結晶性のレベルを決定する。工程140は、以下の工程でのグラフト化を容易にするポリマー物質130の活性化を含む。その物質のバルクに影響を及ぼす活性化は、ポリマー物質130(例えば、チューブまたは膜)の照射、または例えば過酸化物を使用する化学的活性化によって行われてもよい。この照射、典型的にはγ線は、次の工程でスチレン基が結合されることになる末端(水素原子の除去によって形成される炭素ラジカル)を形成する。工程150は、スルホン化されるように適合されている基を有する化合物のグラフト化を含む。かかる化合物はスチレンを含む単量体であってもよく、この場合、このスチレンがスルホン化されるように適合されている。当該ポリマーへのスチレン単量体のグラフト化を含むこのプロセスは、スチレン化とも呼ばれてもよい。このスチレン単量体は、工程140で形成された末端に結合する。このスチレン化工程などのグラフト化工程(工程140)は、ポリマー物質130の結晶性のレベルとともにスチレン化のレベルを決定する所定の温度または温度勾配で、および所定の継続時間の間、実施される。この工程はまた、スルホン化されるように適合されている化合物(スチレン単量体など)を重合してポリマー(ポリスチレンなど)を形成することも含む。工程160は、スルホン化されるように適合されている化合物(スチレン基など)をスルホン化して乾燥用ポリマー物質170を生成することを含む。流れ図100は、乾燥用チューブまたは膜を含んでいてもよい乾燥用ポリマー物質170を生成するためのプロセスを示す。流れ図100で分かるように、(例えば押出または成形によって)ポリマーを加工することを含む工程120は、照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程の前に行われる。驚くべきことに、ポリマーを加工する(工程120)前に照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程を実施することは、そのポリマーに付加することができるスチレンおよびスルホン酸基の量を制限することが見出された。換言すれば、スチレン化およびスルホン化が特定のレベルを超えると、加工(例えば、押出)は非常に厄介なものとなり不可能であることも多い。本発明のいくつかの実施形態によれば、(例えば、押出または成形による)ポリマーの加工は、照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程の前に行われる。この順序は、ポリマー中のスチレン/スルホン酸の割合(%)を増加させ、従ってこの乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能を上昇させる可能性がある。ナフィオン(登録商標)などの公知の乾燥用物質は、スチレンスルホン酸がすでに(ペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの共重合体として)テフロン(登録商標)中に存在している後に押出される。これは、(より多くのペルフルオロビニルエーテルスルホネート基が付加するにつれて、ナフィオン(登録商標)は加工するのがより困難になるため)ナフィオン(登録商標)の中に存在することができたはずのスチレン/スルホン酸の量を制限し、従ってそのパーベーパレーション性能を制限する。加えて、ナフィオン(登録商標)の場合には、スチレンスルホン酸が共重合体の中にすでに存在している後に押出を実施すると、より複雑な押出プロセスを生じる。例えば、加工温度は高く(典型的には300℃)、「攻撃的な」ナフィオン(登録商標)化学物質によって引き起こされる損傷を回避するために特別の設備が必要とされる。本願明細書に開示されるポリマー(PVDFなど)の加工は、いくつかの実施形態によれば、容易であり、ナフィオン(登録商標)の加工におけるような特別の条件を必要とはしないことに留意されたい。加えて、PVDFのようなポリマーは、ナフィオン(登録商標)材料とは異なって、基本的なものであり、高価ではない。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマーが加工されて当該ポリマー物質の所望の構造(チューブなど)が成形によって製造されるとき、いくつかの利点が達成されることがある。この成形プロセスは、所望のシステム内での当該乾燥用ポリマー物質の一体化を改善する場合があり、および同時にこの物質の機械的特性をも改善する場合がある。例えば、1つまたは2つのコネクタ、構造支持体および/または強化要素(リブなど)またはいずれかの他の特徴は、乾燥用チューブとともに成形することができる。加えて、成形のプロセスによって、いずれの形状も、例えば呼気採取用のカニューレもこのポリマー化合物から形成することができる。
【0078】
ここで、「グラフト化(高密度)経路」と呼ばれてもよいプロセスにおける乾燥用チューブの製造のプロセス手順(グラフト化手順を含む)の例を説明するスキームを図示する図2を参照する。工程1は、原料としてのPVDFを入手して230℃で、制御されたドローダウン比で押出手順を実施し、PVDFチューブを生成する工程を説明する(当然、例えば膜などのチューブ以外の他の物質も同様にして製造することができる)。工程2では、このPVDFチューブは、不活性雰囲気中で(窒素またはヘリウム下で、など)密閉されて2.5Mrad線量で、低温でγ線によって照射され照射されたPVDF(i−PVDF)チューブが生成される。工程3は、i−PVDFチューブおけるポリスチレンのグラフトの組み込みを記載する。このi−PVDFチューブはスチレン(100%)中、55℃で24時間還流され、トルエン中で8時間ソックスレー(Soxhlet)によって洗浄され、次いで室温(RT)(これはほぼ25℃である)でエタノール中で洗浄され、PVDF−グラフト−ポリスチレン(PVDF−g−PS)チューブが生成される。工程4は、PVDF−g−PSチューブ上でのポリスチレン基のスルホン化を記載する。このPVDF−g−PSチューブは、ジクロロエタン中0.5モル濃度(M)のクロロスルホン酸に、室温で24時間浸漬され、次いで生成物はジクロロエタンおよび蒸留水で2時間洗浄される。この工程は、中和されていないポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)チューブをもたらし、次いでこれは工程5で、0.5M KOH中、室温で16時間の加水分解によって中和される。
【0079】
このPVDF−g−PSSAチューブの性能を評価し、それをおよびナフィオン(登録商標)チューブの性能と比較するために、比較検討が行われた。この検討の結果は下記の表1にまとめられている。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明で試験されたチューブについては、内径:1.0±0.1ミリメートル(mm);外径:1.24±0.02mm;長さ50mmであった。
【0082】
表1に示されるように、各種のチューブ(PVDF−g−PSSA、中和された(Naなど)PVDF−g−PSSAおよびナフィオン(登録商標))について以下の5つの因子が評価された:
1)水吸収[%]、
2)漏出[マイクロリットル/分]、
3)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
4)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
5)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0083】
これらの5つの因子は、特定の温度[℃]および相対的な周囲湿度(RH)[%]で試験された。
【0084】
水吸収測定は、チューブを室温の蒸留水中に24時間(または沸騰水中に2時間)浸漬して重量増加[%]をチェックすることにより行われた。その増加が大きいほど、そのチューブはより多くの水を吸収できる。
【0085】
漏出測定は、チューブを差圧計に接続し、そのチューブの中に真空を創出し、経時的に圧力変化をモニターすることにより行われた。結果はマイクロリットル/分に書き換えられ、それは、気体(空気など)がチューブに入るまたはそのチューブから出るのを遮断するチューブの性能を示す。本願明細書で触れたとおり、良好な気体遮断特性を有するチューブは測定のあいだ気体成分の濃度を一定に維持するので、そのようなチューブは好ましい。
【0086】
ΔCO2測定は、膜(チューブ状の膜など)を備える測定装置および備えない測定装置に既知濃度(例えば5%)のCO2を流してその測定におけるCO2濃度を比較することによって行われた。2つのCO2濃度の読取値間(膜ありと膜なしとの間)の差は、そのシステムから漏出または「脱出」したCO2の量を示す。
【0087】
水エバポレーション測定は、閉じたチューブの中に水を閉じ込めて特定の期間の後にそのチューブの重量測定をすることにより行われた。重量の減少は、そのチューブからの水エバポレーションを示す。
【0088】
水蒸気浸透測定は、湿った気体を35℃でチューブに流して(残っている場合は)残存する凝縮された水をトラップに閉じ込めることにより行われた。このトラップの中の水の量は、そのチューブが吸収/パーベーパレーションしなかった水蒸気の量を示す。換言すれば、このトラップの中の水が多いほど、より多くの水蒸気をそのチューブが吸収/パーベーパレーションしなかった。
【0089】
驚くべきことに、(表1にまとめられたとおり)以下のことが見出された。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりも有意に良好な(より高い)水吸収を示す。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりも良好な(高い)水エバポレーション速度を示す。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブと比べてより良好な水蒸気浸透性能を示す(ナフィオン(登録商標)チューブの151[マイクロリットル/時間]とは異なり水蒸気浸透の痕跡はゼロ)。
− 同時に、PVDF−g−PSSAチューブはCO2バリア特性の減退を示さないことが見出された。換言すれば、使用中のチューブからのCO2の喪失は実質的にないことは明らかであり、それゆえ当該PVDF−g−PSSAチューブは、例えば呼気検査におけるCO2分析のために使用することができる。
【0090】
上記の表1から分かるように、(中和型および非中和型の2つの種類の)当該PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりもより良好な水パーベーパレーション結果を実証する。さらに、漏出試験が、蒸気浸透試験と同時に、連続して1時間ごとに実施された。PVDF−g−PSSAチューブの漏出は、8時間の蒸気試験後でさえもほとんどゼロに留まることが見出された。換言すれば、当該PVDF−g−PSSAチューブは、他の気体成分(CO2など)を同時に維持しながら水パーベーパレーションを促進し、それゆえ信頼性の高い気体(呼気など)分析を可能にする。
【0091】
中和されている(例えば、SO3Naの使用によるなど、Naで中和されている)PVDF−g−PSSAチューブは中和されていないPVDF−g−PSSAチューブよりも良好な水透過性を示すが、これら2つともに気体(例えば、呼気)乾燥用チューブ用途用の十分な性能を示す。他方で、中和されていないPVDF−g−PSSAチューブは、NaPVDF−g−PSSAチューブよりも良好な機械的挙動を呈する。
【0092】
さらに、湿度条件下で、このPVDF−g−PSSAチューブは特定量の水を吸収し、これは、さらにその機械的挙動を改善した(例えば、柔軟性の増加)。より優れた機械的挙動、および両方の種類が蒸気浸透試験において同様の性能を示すという事実を考慮すれば、いくつかの実施形態によれば、中和されていない膜がより好ましいと判明する場合がある。
【0093】
グラフト化度を制御する鍵となるパラメータのうちの1つは結晶化度である。PVDF共重合体がより結晶性であるほど、グラフト化プロセスに関与するスチレン単量体を吸収するその能力は小さい。結晶性の制御は、結晶化感度に関して材料の配合、例えば、単独重合体もしくは共重合体またはそれらの混合物を変えながら、および異なる冷媒、例えば、水、空気、油および媒体温度を用いて冷却速度を変えながら、行うことができる。下記の表2は、共重合体、単独重合体またはそれらの混合物から作製されたPVDF−g−PSSAチューブについての結果(化学反応中およびパーベーパレーション作用の間の寸法安定性を含む)を示す。このスチレン化反応は、55℃でおよび室温(25℃)でも行われた。
【0094】
【表2】
【0095】
表3は、ポリ塩化ビニル(PVC)チューブおよび6種のPVDF−g−PSSAチューブについての実験結果をまとめる:
1)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、
2)スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、
3)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体、
4)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体、
5)スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体、および
6)ナフィオン(登録商標)。
【0096】
以下の10個の因子が評価された:
1)グラフト化度[%]、
2)水吸収[%]、
3)漏出[マイクロリットル/分]、
4)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
5)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、
6)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]およびPVC測定値からのΔ(差)、
7)化学反応(スチレン化およびスルホン化)に起因する厚さの変化[%]、
8)化学反応(スチレン化およびスルホン化)に起因する直径の変化[%]、
9)パーベーパレーション作用に起因するチューブ厚さの変化[%]、および
10)パーベーパレーション作用に起因するチューブ直径の変化[%]。
【0097】
これらのパラメータは、23℃の温度および50%の相対周囲湿度(RH)で測定された。
【0098】
驚くべきことに、以下のことが見出された:
以下のチューブの水吸収は、ナフィオン(登録商標)の水吸収と同程度であるかまたはナフィオン(登録商標)の水吸収よりも高かった:
スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体ならびにスチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体。
【0099】
以下のチューブの水エバポレーションは、ナフィオン(登録商標)の水エバポレーションと同程度であるかまたはナフィオン(登録商標)の水エバポレーションよりも高かった:
スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体ならびにスチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体。
【0100】
より低いグラフト化温度(例えば25℃)では、55℃で成し遂げられたグラフト化度に比べて、グラフト化度はより低いレベルに到達した(これはより低い量のスルホン酸基をも生じる可能性がある)。なお、より低いグラフト化温度(例えば25℃)でさえも、チューブの性能は水パーベーパレーション目的には許容できるものであり、いくつかの場合の(PVDF−g−PSSA)チューブ(25℃の共重合体)では、性能はナフィオンの性能よりもはるかに良好であった。
【0101】
本発明のさらなる/代替の実施形態によれば、ポリスチレンのグラフト化度をモニターおよび/または制御する方法が本願明細書に提示される。これは、例えば、共重合体と単独重合体との間でPVDF材料の組み合わせを調整し、ポリスチレン前処理(anticipating)およびグラフト化プロセスの継続期間を変更すること(例えば、短くすること)および/または押出(例えば、図2の工程1)におけるチューブ製造の際の冷却手順を変更/最適化することによって達成されてもよい。ここで、反応の温度および結晶化度(%結晶性)がどのようにグラフト化度(%DOG)を制御しうるかを説明するスキームを示す図3を参照する。グラフト化度(%DOG)は、結晶化度(%結晶性)の減少に伴い増加する。温度を上げると、所与の結晶化度(%結晶性)についてはグラフト化度(%DOG)が上昇する。
【0102】
場合および目的に応じて、特定の乾燥用ポリマー物質および製造条件が選択されてよい。本発明のさらなる/代替の実施形態によれば、チューブの長さを決定することにより、PVDF−g−PSSAチューブの性能(例えば、水吸収、水蒸気浸透またはいずれかの他の種類の性能)を制御する方法が本願明細書に提示される。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、このグラフト化は当該ポリマー物質の特定の領域で行われてもよく、その一方で他の領域は(例えば、グラフト化が所望されないポリマー物質の領域(arrear)をブロックすることによるが、これに限定されない)グラフトされないまま留まってもよい。従って、本発明のいくつかの実施形態の範囲のもとに包含されるポリマー物質は、グラフトされた領域(例えば、PSSAでグラフトされ、およびグラフトされていない領域)を備えるポリマー物質を含んでもよい。これは、例えば乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能の制御を可能にする場合があるが、いずれかの他の応用例に使用されてもよい。
【0104】
気体乾燥用チューブの機械的特性
下記の表3は、ナフィオン(登録商標)チューブの機械的特性と比べたPVDF−g−PSSAチューブの機械的特性を示す。
【0105】
下記の表に詳細が示される機械的特性は、25mm/分の引張速度でASTM D638に従ってインストロン(Instron)万能試験機を用いて、チューブ試料に対して実施した引張試験の出力から得た。表の中のすべての値は、比較の目的のために正規化されている。
【0106】
【表3】
【0107】
用語「極限引張強さ」は、いくつかの実施形態によれば、材料が破断または永久的に変形する際の応力(単位面積あたりに与えられる力の平均量)を指してもよい。引張強さはバルク特性であり、従って試験片(チューブなど)のサイズ(長さまたは幅など)には依存しない。この極限引張強さは壁厚に対して正規化されている。
【0108】
用語「ヤング率」は、いくつかの実施形態によれば、弾性(例えば等方性)材料の剛性(加えられた力による変形に対する弾性体の抵抗性)の尺度を指してもよい。このヤング率は壁厚に対して正規化されている。
【0109】
用語「伸び」は、いくつかの実施形態によれば、破断までの歪みの割合(%)を指してもよい。
【0110】
PVDF−g−PSSAチューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べてより靭性があり、剛性がありかつより脆性が低いことが表3から分かる。
【0111】
B)気体乾燥用膜 − 「ブレンド(高密度)経路」
いくつかの実施形態によれば、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含む乾燥用ポリマー物質であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがスルホン酸基を含み、この物質は流体の極性に依存する流体の透過性を有し、この透過性は極性の増加に伴って増加する乾燥用ポリマー物質が提供される。例えば、このポリマー物質は、CO2(これは実質的に非極性の化合物である)に対してよりも水(これは極性の化合物である)に対して良好な透過性を呈してもよい。
【0112】
用語「不均一相ポリマー」または「不均一相ポリマー組成物」は、連続相またはマトリクス相、およびこのマトリクス相内に分布した分散相である別の相の少なくとも2相の存在を指してもよい。この分散相は、不連続(分散した島など)であってもよいし、または共連続相(分散した島がより大きい島へと合体する場合など)であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、用語「共連続相(co−continuous phase)」構造は、両方の相がその材料の少なくとも一部分にわたって実質的に連続的なまま留まるように絡み合う2以上の相を指してもよい。このモルホロジーは、スポンジおよび水の両方が連続系を形成する水に漬けたスポンジのモルホロジーと類似していてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、実質的に不均一相構造(例えば、共連続相構造)を有する2以上のポリマーを含む膜またはチューブなど(これらに限定されない)の乾燥用ポリマー物質であって、この2つ以上のポリマーのうちの少なくとも1つはフェニル基(1つまたは複数個)などの基(1つまたは複数個)を含み、この基(1つまたは複数個)はスルホン化することができる乾燥用ポリマー物質が提供される。かかる基の例としては、スチレンまたはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。かかるポリマーとしては、例えば、ポリスチレン(PS)および/もしくはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体、またはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質はまた、選択的な水(蒸気または液体)輸送をもたらすように適合されているいずれかの物質、特にスルホン酸タイプの物質(これに限定されない)をも含む。かかる乾燥用ポリマー物質の例は、ポリ(フッ化ビニリデン)/ポリスチレンスルホン酸(PVDF/PSSA)およびポリ(フッ化ビニリデン)/スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンスルホン酸(PVDF/SEBS−SA)である。このPVDFの代わりにまたはこのPVDF加えて使用されてもよい他のポリマーとしては、ポリプロピレン−単独重合体(PP−homo)、ポリプロピレン−ランダム共重合体(PP−raco)、中密度ポリエチレン(MDPE)またはいずれかの他の適切なポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、不均一相構造を形成するポリマーのうちの少なくとも1つ(PVDFなど)は作り出す。
【0116】
2つのポリマー間の記号「/」(フォワードスラッシュ)は、その2つのポリマーが不均一相の相構造(共連続相構造など)を形成するように適合されているか、または実質的に不均一相の相構造(共連続相構造など)を形成しているということを示すことに留意されたい。それは、2つのポリマー間の記号「g」(グラフト)とは区別される。記号「g」(グラフト)は、それらのポリマーのうちの一方が他方のポリマーにグラフトされていることを示す。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質は、2以上のポリマーおよび/または共重合体を(例えばPVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と)相溶化剤を用いて物理的にブレンドし、次いで(例えば押出により、または射出成形などの成形により)所望の形態(チューブまたは膜など)を形成し、次いで当該乾燥用ポリマー物質を生成するためにスルホン化することによって生成されてもよい。このプロセスは、本願明細書において「ブレンド(高密度)経路」と呼ばれることがある。例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)/ポリスチレンスルホン酸(PVDF/PSSA)チューブは、例えば、
i)独特の相溶化剤を加えて、PVDFをポリスチレン(PS)(またはスチレン共重合体)とともに、実質的に均一なブレンド化合物へと物理的にブレンドすること、
ii)押出によってチューブを生成すること、およ
iii)スルホン化プロセスを適用してPVDF/PSSA乾燥用チューブを生成すること
によって生成されてもよい。
【0118】
次いで、この生成物は洗浄されて、例えば1日乾燥されてもよい。
【0119】
PVDFおよびPSは基本的に非混和性の物質(混合しても均一な溶液を形成しない物質)である。PVDFおよびPSの化合物をスルホン化する試みは失敗であったが、それは恐らくはこの欠点に起因する。驚くべきことに、適切な相溶化剤(ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)など)を加えると、PS共連続相が形成され、スルホン化プロセスが可能になることが見出された。
【0120】
一般に、「ブレンド(高密度)経路」手順は3つの主要工程を含む:
i)相溶化剤を用いて2以上のポリマーおよび/または共重合体を(例えば、PVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と)実質的に均一なブレンド化合物へと混合する工程、
ii)(例えば押出により、または射出成形などの成形により)このポリマー混合物を加工してチューブなどの所望の形態を生成する工程、および
iii)スルホン化プロセスを適用して乾燥用チューブを生成する工程。
【0121】
ここで、乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図400を図示する図4を参照する。工程410は、相溶化剤を用いて2以上のポリマーおよび/または共重合体を混合することであって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化できる基(1つまたは複数個)を含むこと(例えば、PVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と混合すること)を含む。この混合物は実質的にヘテロ相ポリマー組成物(共連続相構造組成物など)の形態になってもよい。工程420は、例えば押出によりまたは成形(射出成形など)によりこのポリマーを加工して、ポリマー物質430の所望の構造(例えば、ポリマーチューブまたは膜)を生成することを含む。工程460は、スチレン基などのスルホン化できる基をスルホン化して、乾燥用ポリマー物質470を生成することを含む。流れ図400は、乾燥用チューブまたは膜を含めてもよい乾燥用ポリマー物質470を生成するためのプロセスを示す。
【0122】
2種類の化合物が開発された:
(i)PVDF/PS/PMMA−70/20/10(70%PVDF/20%PS/10%PMMA)、
(ii)PVDF/SEBS(KRATON)/MBS(PARALOID相溶化剤)−49/49/2(49%PVDF/49%SEBS/2%MBS)。
【0123】
この2つの化合物(aおよびb)は、本願明細書で言及されるPVDF−g−PSSA共重合体と類似のプロトン交換機能をもたらす、共連続なPS相を有する一部混和性のブレンドとして振舞うことが見出された。これらの化合物は、水蒸気パーベーパレーション特性を成し遂げるために容易にスルホン化される。このスルホン化は、例えば、ジクロロエタン中の0.5Mのクロロスルホン酸によってわずか1時間で行うことができる。
【0124】
化合物aおよびbから作製された膜に対して実施された結果は下記の表4に提示され、(パーベーパレーションチューブの形態へと変換される前の)PVDFおよびPVDF−g−PSSA膜と比較される。PVDF−g−PSSA、70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSの水蒸気透過は、PVDFの水蒸気透過よりも著しく良好である。
【0125】
【表4】
【0126】
上記ブレンドの膜(membrane)(膜(film))の実行可能性が証明された後、70%PVDF/20%PS/10%PMMAブレンドおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSブレンドからチューブが生成された。両方のブレンドは、純粋な共重合体のチューブと同じ条件下で押出機で加工された。
【0127】
下記の表5は、PVDF−g−PSSA、ナフィオン(登録商標)およびPVCチューブの性能と比較した、ブレンドされたチューブ、70%PVDF/20%PS/10%PMMA、49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの性能を示す。
【0128】
【表5】
【0129】
表5に示されるように、各種のチューブ(PVDF−g−PSSA、PVDF/PS/PMMA、PVDF/SEBS/MBS、ナフィオン(登録商標)およびPVCチューブ)について以下の5つの因子を評価した(方法は本願明細書で上述される):
1)水吸収[%]、
2)漏出[マイクロリットル/分]、
3)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
4)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
5)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0130】
これらのパラメータは、23℃の温度および50%の相対的な周囲湿度(RH)で測定された。
【0131】
表5に詳述される結果から、70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの両方の水エバポレーション性能はナフィオン(登録商標)の水エバポレーション性能よりも良好であったことが分かる。70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの蒸気浸透、およびΔCO2性能はナフィオン(登録商標)チューブの蒸気浸透、およびΔCO2性能に近かった。
【0132】
ナフィオン(登録商標)の場合、例えば、(テフロン(登録商標)とペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの)共重合体の粘度および加工温度は高い(加工温度は約300℃)ことに留意されたい。これは、当該共重合体に付加することができる官能基(スルホン酸基など)の量を制限する(より多くのスルホン酸基は粘度および加工温度をさらに上昇させるであろう)。本発明のいくつかの実施形態によれば、(図1の工程120および図4の工程420などにおける)加工温度は300℃より著しく低くてもよく、例えば180℃〜230℃の範囲であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、スルホン化(例えば、工程160および図4の工程460)は加工(例えば、図1の工程120および図4の工程420)後に行われており、従ってスルホン化の量は制限されず、およそ100%に到達できる。
【0133】
ナフィオン(登録商標)の調製に使用される(テフロン(登録商標)とペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの)共重合体は、中和されている場合であってさえも、加工設備と(特に金属と)非常に反応性である(攻撃的でさえある)ことにも留意されたい。対照的に、本発明の実施形態に係る乾燥用ポリマー物質を生成するために使用されるポリマーは、加工設備とは実質的に非反応性である。
【0134】
気体乾燥用チューブの機械的特性
下記の表6は、ナフィオン(登録商標)チューブの機械的特性と比較した、PVDF/SEBS/MBSチューブの機械的特性を示す。
【0135】
下記の表に詳細が示される機械的特性は、25mm/分の引張速度でASTM D638に従ってインストロン(Instron)万能試験機を用いて、チューブ試料に対して実施した引張試験の出力から得た。表の中のすべての値は、比較の目的のために正規化されている。
【0136】
【表6】
【0137】
「高密度−ブレンド」チューブの機械的特性はナフィオン(登録商標)のチューブの機械的特性と同じ程度であることが表6から分かる。本願明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、当該チューブの機械的特性は、例えば支持領域、および/または強化要素(リブなど)をチューブと一緒に成形することにより、改善することができる。この支持領域は、チューブを構造的に支持してもよい。
【0138】
C)乾燥用ポリマー物質 − 「多孔性経路」
いくつかの実施形態によれば、本発明は、パーベーパレーションプロセスによる空気およびCO2などのより極性が低い気体からの水などの極性の流体の選択的な除去のために設計された堅牢な、高性能物質(膜またはチューブなど)を提供する。いくつかの実施形態によれば、かかる物質(これらは本願明細書において脱水物質または乾燥用物質と呼ぶことができる)は、所望の選択性および流量を与えるために制御された比で正および負に帯電した官能性の両方を有する架橋共重合体が組み込まれている支持部材、一般に支持体ポリマー部材(支持膜または支持チューブなど)を含む複合膜を備えていてもよい。この電荷を帯びた基の比およびこの支持部材に組み込まれた共重合体の量を変えることによって、流量および選択性は、特定の用途での使用のために制御することができる。
【0139】
用語「膜」および「チューブ」は、交換可能に使用されてもよいことに留意されたい。用語「脱水」および「乾燥する/乾燥用」は交換可能に使用されてもよいことにも留意されたい。
【0140】
用語「架橋」または「架橋された」は、いくつかの実施形態によれば、別個の鎖が発散する点となる分岐点を含んでもよい。
【0141】
気体(空気など)脱水物質を生成するために使用することができる(支持部材としての)支持体ポリマーとして好ましい材料には、ポリスルホン(PSU)およびポリエーテルスルホン(PES)が含まれる。
【0142】
1つの態様では、本発明は、
(a)支持部材であって、この支持部材を通って延在する複数の細孔(またはマイクロチャネル)を有する支持部材と、
(b)(i)カチオン性単量体およびアニオン性単量体ならびに/または(ii)双性イオン単量体を含む架橋共重合体であって、この架橋共重合体は上記支持部材の細孔を充填し、かつ流体の極性に依存する流体の透過性を有し、この透過性は極性の増加に伴って増加する、架橋共重合体と
を備える複合膜を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、用語「アニオン」または「アニオン性」は負に帯電したイオンを指してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、用語「カチオン」または「カチオン性」は正に帯電したイオンを指してもよい。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、用語「双性イオン」または「双性イオンの」は正電荷および負電荷の両方を同時に有することができる化合物を指してもよい。その化合物の全体の正味の電荷はゼロ(電気的に中性)であってもよい。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態に係る複合膜において、この架橋共重合体は支持部材の細孔を横方向に、すなわち複合膜を通る流れの方向に対して実質的に直交して充填する。「充填する」とは、使用時に、その複合膜を通る実質的にすべての流体がこの架橋共重合体を通らなければならないことを意味する。この条件が満足されるような量の架橋共重合体を細孔が含む支持部材は充填されたと見なされる。その流体がこの架橋共重合体を通過するという条件が満たされるのであれば、この支持部材の空隙容量がその架橋共重合体によって完全に占有されている必要はない。
【0147】
1つの好ましい実施形態では、当該空気脱水膜は、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート(AMPS)でコーティングされたポリスルホンの中空繊維膜、またはポリビニルアルコールでコーティングされたポリスルホン膜、またはポリビニルアルコールでコーティングされたポリエーテルスルホン(PES)膜であってもよい。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態に従って使用される空気脱水膜は、供給ストリームで見出される酸素および窒素の相対的濃度を著しくは変えないまま、水蒸気の選択的な除去を成し遂げる。
【0149】
当該架橋共重合体は、パーベーパレーション分離におけるこの複合膜の分離機能を提供し、この架橋共重合体は典型的には水などの極性の溶媒の存在下で膨潤する。いくつかの実施形態では、この架橋共重合体はヒドロゲルである。上記支持部材はこの架橋共重合体に機械的強度をもたらし、そしてそれは、この架橋共重合体が膨潤可能であるときにその架橋共重合体の膨潤を遅らせる。
【0150】
好ましくは、当該架橋共重合体は、この支持部材内に繋ぎ止められている。用語「繋ぎ止められた(anchored)」は、この架橋共重合体が支持部材の細孔内に保持されることを意味することが意図されているが、この用語は、当該架橋共重合体が支持部材の細孔に化学的に結合されていることを意味することに必ずしも限定されない。この架橋共重合体は、支持部材に実際に化学的にグラフトされなくとも、その支持部材の構造的要素との網目状の絡み合い(enmeshing)および絡み合い(interwining)により架橋共重合体に課される物理的拘束によって保持されることが可能であるが、いくつかの実施形態では、当該架橋共重合体は上記支持部材の細孔の表面にグラフトされてもよい。
【0151】
用語「カチオン性/アニオン性共重合体」は、本願明細書で使用する場合、カチオン性およびアニオン性単量体を用いて調製される共重合体を指す。カチオン性単量体とは、正電荷またはイオン化されて正電荷を形成することができる基を有する単量体を意味する。同様に、アニオン性単量体とは、負に帯電したかまたはイオン化されて負電荷を形成することができる基を有する単量体を意味する。当該複合膜の性能は、主に、支持部材の細孔内に繋ぎ止められた共重合体の特性によって決定される。共重合体中のアニオン性部位およびカチオン性部位の両方の存在は、その共重合体内の分子内相互作用の増加につながり、その共重合体が極性の流体の存在下で膨潤するとき、よりこじんまりした共重合体構造につながる。このこじんまりした性質は、複合膜の選択性を高めるのに役立つ。なぜなら、それは、流体が通らなければならないより高密度の共重合体構造をもたらすからである。この複合膜の選択性はまた、支持部材の存在によって増強される。なぜなら、機械的強度をもたらす以外に、この支持部材はまた繋ぎ止められた共重合体の膨潤を制限し、これが共重合体の密度を再び高めるからである。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態に従って使用されるアニオン性単量体は好ましくは水溶性であるが、水に対してわずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さないアニオン性単量体を使用することはできる。好ましいアニオン性単量体は、不飽和カルボン酸またはその塩もしくは無水物、および不飽和スルホン酸またはその塩もしくは無水物を含む。不飽和アニオン性単量体は1つ、または複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0153】
適切なアニオン性単量体の例としては、スルホン酸またはその塩などのスルホン酸基を含むアニオン、例えば2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−プロペン−1−スルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸を挙げることができる。(スルホン酸基を含むアニオンと一緒に使用されてもよいし、使用されなくてもよい)アニオン性単量体の他の例としては、アクリル酸、2−アセトアミドアクリル酸、trans−3−ベンゾイルアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、3−クロロアクリル酸、trans−3−(4−クロロベンゾイル)アクリル酸、2,3−ジクロロアクリル酸、3,3−ジクロロアクリル酸、3,3−ジメチルアクリル酸、フリルアクリル酸、メタクリル酸、2−フェニルアクリル酸、trans−3−(3−ピリジル)アクリル酸、トリクロロアクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸、プロピン酸(プロピオール酸)、フェニルプロピン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3−ブロモ−2−ブテン酸、2−クロロ−2−ブテン酸、3−クロロ−2−ブテン酸、2,3−ジブロモ−4−オキソ−2−ブテン酸、2,3−ジクロロ−4−オキソ−2−ブテン酸、2,3−ジメチル−2−ブテン酸、2−エチル−2−ブテン酸、trans−2−メチル−2−ブテン酸(チグリン酸)、cis−2−メチル−2−ブテン酸(アンゲリカ酸)、4−オキソ−4−フェニル−2−ブテン酸、2−フェニル−2−ブテン酸、4,4,4−トリフルオロ−3−メチル−2−ブテン酸、3−ブテン酸、2−ヒドロキシ−4−フェニル−3−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−ブチン酸(テトロル酸)、2−ペンテン酸、4−ヒドロキシ−2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸(trans)、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、3−メチル−4−ペンテン酸、2,4−ペンタジエン酸、2−ペンチン酸、4−ペンチン酸、2−ヘキセン酸、2−エチル−2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、2−アセチル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−4−ヘキセン酸(デヒドロ酢酸)、5−ヘキセン酸、2,4−ヘキサジエン酸(ソルビン酸)、1−ヘキセン−1−イルボロン酸、5−ヘキシン酸、シキミ酸、6−ヘプテン酸、2,6−ヘプタジエン酸、6−ヘプチン酸、2−オクテン酸、trans−1−オクテン−1−イルボロン酸、フマル酸、ブロモ−フマル酸、クロロ−フマル酸、ジヒドロキシフマル酸、ジメチルフマル酸(dimethylfumic acid)、フマル酸モノエチルエステル、メサコン酸、マレイン酸、ブロモマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、ジブロモマレイン酸、マレアミド酸、シトラコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン二酸、イタコン酸、ムコン酸、ムコブロム酸、ムコクロロ酸、アセチレンジカルボン酸、スチリル酢酸、3−ブテン−1,1−ジカルボン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、2−アクリルアミドグルコール酸、メタクリル酸2−スルホエチル、アクリル酸3−スルホプロピル、メタクリル酸3−スルホプロピル、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、tran−2−(4−クロロフェニル)ビニルボロン酸、tran−2−(4−フルオロフェニル)ビニルボロン酸、tran−2−(4−メチルフェニル)ビニルボロン酸、2−ビニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、ケイ皮酸、α−アセトアミドケイ皮酸、α−ブロモケイ皮酸、2−ブロモケイ皮酸、3−ブロモケイ皮酸、4−ブロモケイ皮酸、3−ブロモ−4−フルオロケイ皮酸、4−ブロモ−2−フルオロケイ皮酸、5−ブロモ−2−フルオロケイ皮酸、2−カルボキシケイ皮酸、2−クロロケイ皮酸、3−クロロケイ皮酸(cis)、4−クロロケイ皮酸(trans)、4−クロロ−2−フルオロケイ皮酸、trans−2−クロロ−6−フルオロケイ皮酸、trans−2,4−ジクロロケイ皮酸、3,4−ジクロロケイ皮酸、trans−2,4−ジフルオロケイ皮酸、trans−2,5−ジフルオロケイ皮酸、trans−2,6−ジフルオロケイ皮酸、trans−3,4−ジフルオロケイ皮酸、trans−3,5−ジフルオロケイ皮酸、2,3−ジメトキシケイ皮酸、2,4−ジメトキシケイ皮酸、2,5−ジメトキシケイ皮酸、3,4−ジメトキシケイ皮酸、3,5−ジメトキシケイ皮酸(trans)、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、4,5−ジメトキシ−2−ニトロケイ皮酸、α−エチル−cis−ケイ皮酸、α−フルオロケイ皮酸、2−フルオロケイ皮酸、trans−3−フルオロケイ皮酸、4−フルオロケイ皮酸、4−ホルミルケイ皮酸、2−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシケイ皮酸、4−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ−trans−ケイ皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ−trans−ケイ皮酸、4−イソプロピル−trans−ケイ皮酸、2−メトキシケイ皮酸、3−メトキシケイ皮酸(trans)、4−メトキシケイ皮酸(trans)、α−メチルケイ皮酸、3,4−(メチレンジオキシ)ケイ皮酸、4−メチル−3−ニトロケイ皮酸、α−メチル−3−ニトロケイ皮酸、α−メチル−4−ニトロケイ皮酸、2−ニトロケイ皮酸、3−ニトロケイ皮酸(trans)、4−ニトロケイ皮酸(trans)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロケイ皮酸、2−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、3−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、trans−4−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、2,3,4−トリフルオロケイ皮酸、3,4,5−トリフルオロケイ皮酸、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trans)、2,4,6−トリメチルケイ皮酸(cis)、およびそれらの対応する無水物または塩を挙げることができる。
【0154】
カチオン性単量体もまた、好ましくは水溶性であるが、わずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さないカチオン性単量体を使用することもできる。カチオン性単量体は、正に帯電していてもよいし、またはそれらは水の中で一部プロトン化されてアンモニウム基を形成する基(アミンなど)を有することができる。好ましいカチオン性単量体としては、不飽和アミンおよび不飽和アンモニウム塩が挙げられる。不飽和カチオン性単量体は1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0155】
適切なカチオン性単量体の例としては、アンモニウム基(NH4+)を有するカチオン(またはその塩もしくは誘導体)、例えば4−ビニルアニリン、3−(アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、(2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩、[3−(メタクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、塩化プロパルギルアミン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩を挙げることができる。カチオン性単量体(アンモニウム基を有するカチオンと一緒に使用されてもよいし、使用されなくてもよい)の他の例としては、アリルアミン、N−アリルアニリン、アリルシクロヘキシルアミン、アリルシクロペンチルアミン、アリルメチルアミン、N−アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−tert−アミル−1,1−ジメチルアリルアミン、N−tert−アミル−1,1−ジメチルプロパルギルアミン、ジアリルアミン、3,3’−ジアリル−オキシ−ジイソプロパノールアミン、1,1−ジエチルプロパルギルアミン、N−エチル−2−メチルアリルアミン、3−エチニルアニリン、4−エチルアニリン、1−エチニルシクロヘキシルアミン、ゲラニルアミン、N−メチルアリルアミン、プロパルギルアミン(propargyamine)、ビニルアミン、(2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、メタクリル酸2−アミノエチル塩酸塩、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルジメチル塩、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチル塩、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルジメチル塩、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチル塩、エチル−3−アミノ−3−エトキシアクリレート塩酸塩、4−エチニルピリジン塩酸塩、およびN−2−ビニル−ピロリジノンを挙げることができる。
【0156】
架橋共重合体中のカチオン性単量体に対するアニオン性単量体のモル比は、好ましくは95:5〜5:95の範囲、より好ましくは1:9〜1:1の範囲にあり、カチオン性単量体に対するアニオン性単量体の比は1:9〜1:3の範囲が特に好ましい。カチオン性単量体に対するアニオン性単量体のモル比を変えることによって、この複合膜の性能を変えることができる。
【0157】
この共重合体のアニオン性/カチオン性はまた、架橋共重合体を形成するための双性イオン単量体を使用することによっても得ることができる。この双性イオン単量体は、アニオン性およびカチオン性基の両方を有することができ、またはそれらはイオン化して負電荷および正電荷を形成することができる基を有することができる。好ましい双性イオン単量体としては、不飽和双性イオンまたは双性イオンへと容易に変換することができるその前駆体が挙げられる。不飽和双性イオン単量体は、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0158】
適切な双性イオン単量体の例としては、4−イミダゾールアクリル酸、4−アミノケイ皮酸塩酸塩、4−(ジメチルアミノ)ケイ皮酸、水酸化1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウム分子内塩、3−スルホプロピルジメチル−3−メタクリルアミドプロピルアンモニウム分子内塩、および5−アミノ−1,3−シクロヘキサジエン−1−カルボン酸塩酸塩が挙げられる。双性イオン単量体はまた、アニオン性単量体と一緒に、カチオン性単量体と一緒に、または両方と一緒に使用することもできる。
【0159】
電荷を帯びた架橋共重合体の導入を容易にするために、および極性の流体の通過を容易にするために支持部材は親水性であることが好ましいが、疎水性の支持部材もまた、界面活性剤、または水および支持部材を濡らす有機溶媒を含む混合溶媒が利用される場合など、特定の状況において利用することができる。親水性支持部材を生成するためのさらなる親水性化に適した材料としては、例えば、酢酸セルロース(CA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ナイロン6、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)およびポリ(アクリロニトリル)(PAN)が挙げられる。疎水性の支持部材を作製するのに適した材料としては、例えばポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)およびポリ(塩化ビニル)(PVC)が挙げられる。
【0160】
この支持部材の平均細孔径は、広い範囲で変わることができる。いくつかの実施形態によれば、平均細孔径は、約0.001〜約20ミクロン、例えば、約0.002〜約5ミクロンおよび特に約0.005〜約1ミクロンの範囲であってもよい。支持部材の多孔性は細孔容積(空隙容量とも呼ばれる)の尺度であるが、この支持部材の多孔性は、いくつかの実施形態によれば、約25〜約95%、例えば、約45〜約85%、特に約0.60〜約80%の範囲であってもよい。25%未満の多孔性を有する支持部材を用いて調製された複合膜は低流量を有する場合があり、他方、95%よりも高い多孔性を有する支持部材は、通常、共重合体を繋ぎとめるための十分な機械的強度を与えない。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、使用される支持部材は、対称性の多孔性膜または非対称の多孔性膜のいずれかであってもよい。精密濾過膜は非対称の多孔性膜として適しており、それらは好ましくは約10〜300ミクロン、より好ましくは約20〜150ミクロン、特に50〜120ミクロンの厚さを有する。支持部材がより薄いほど、流量はより高い。
【0162】
この非対称の支持部材は、通常は、より小さい細孔を有する高密度の層がより大きい細孔を有する裏打ち層上に支持された多層性を有する。限外濾過膜は非対称の支持部材として使用するのに適している。これらの支持部材は「層」を有するとして記載されているが、それらは、単一のポリマーの単一の連続相のみを含む。これらの層は、異なる物理特性を有するが同じ化学的特徴を有する領域を表す。この非対称の膜は、機械的強化材料として作用する不織材料(例えばポリエステル)をも含むことができる。非対称の支持部材については、十分な機械的な剛性(rigidity)が保持される限り、各層の厚さは重要でない場合がある。それゆえ、非対称の複合膜では、この支持部材の空隙容量は、架橋共重合体によって完全に占有されていなくてもよい。本発明のいくつかの実施形態に係る複合膜が非対称の支持部材を用いて調製される場合、高密度層の厚さがその膜の流量を決定する。支持部材として限外濾過膜を使用して得られる複合膜などの非対称的に充填された複合膜は、より高い流量を有するパーベーパレーション膜を導くことが観察されている。
【0163】
非対称の複合膜は、支持部材の細孔を架橋共重合体で非対称的に充填することによって、非対称の支持部材を用いても調製することができる。かかる非対称の複合膜は、支持部材の1つの側で架橋反応を開始し、これにより支持部材の厚さにわたって架橋共重合体の不均一な分布を得ることによって調製することができる。
【0164】
支持部材内での架橋共重合体の生成
支持部材(複合膜)内での架橋共重合体の生成は、本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の工程を含んでもよい:
i)多孔性支持部材の調製、
ii)表面活性化、
iii)多孔性支持部材への単量体溶液の含浸、
iv)この単量体のグラフト共重合、および
v)架橋。
【0165】
a)多孔性支持部材の調製
高分子支持部材は、当該技術分野で公知のいずれの方法によって生成されてもよい。この高分子支持部材の細孔に存在する水溶性のポリマーを抽出(除去)するためにおよび所望の多孔性支持部材を生成するために、得られた高分子支持部材を水または水溶液で洗浄することが行われる。従って、この洗浄または抽出工程は、細孔を望ましくない不純物(単独重合体など)から清浄にする。
【0166】
界面活性剤型の化学物質(いずれかの商業的に知られた化学界面活性剤、例えば、トリトン(Triton)、テトロニック(Tetronic)、プルロニック(Pluronic)、およびソフタノール(Softanol))もまた、より良好に細孔を清浄にするために使用されてもよい。他の界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)などの低分子量界面活性剤が使用されてもよい。他の従来から使用される処理材料もまた、より効率よく細孔を清浄化するために使用されてもよく、かかる材料には、イソプロパノール(IPA)およびエタノールなどの低分子量アルコール、およびフレオン(Freon)(塩素化炭化水素)などの溶媒を含めてもよい。いくつかの実施形態によれば、この多孔性支持部材は、当該目的のために製造されてもよいし、または市販のものであってもよい。
【0167】
b)表面活性化
多孔性支持部材を生成した後、表面活性化の工程が必要とされる場合がある。この表面活性化工程は、支持部材の表面および/または多孔性支持部材の細孔の表面に影響を及ぼす。この表面活性化は、多孔性支持部材の細孔(より正確に言えば、細孔の表面)への極性の単量体(後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体/双性イオンなど)の付着(adhesion)を容易にするように適合されている。この工程は、多孔性支持部材が疎水性の場合(PESなど)は、特に必要とされる。いくつかの実施形態によれば、この表面活性化工程は酸化を含み、(上記単量体に結合することができる)カルボニル基をそのポリマー多孔性支持部材に導入するように適合されている。
【0168】
疎水性の多孔性支持部材(PESなど)が使用される場合、この表面活性化工程は、極性の単量体の付着を増加させるための、多孔性支持部材の親水性化(または「湿潤化(wetting)」)と呼ばれることがある。親水性化は、酸化によって行われてもよい。酸化は、過硫酸アンモニウム、またはいずれかの他の酸化剤などのいずれかの適切な試薬によって成し遂げられてもよい。他の酸化方法としては、オゾン処理、紫外光照射、コロナ放電、高電圧放電、プラズマ処理またはいずれかの他の方法を挙げることができる。
【0169】
界面活性剤(本願明細書で言及される界面活性剤など)も、結果を改善するために親水性化工程で使用されてもよい。
【0170】
c)多孔性支持部材への単量体溶液の含浸
多孔性支持部材を表面活性化した後、多孔性支持部材への単量体溶液の含浸の工程が行われる。この工程は、この多孔性支持部材に、後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体を含む溶液/双性イオン溶液を物理的に導入することを含む。この溶液は、予め重合された(pre−polymerized)ポリマー前駆体溶液と呼ばれることがある。この溶液はまた、電解質ポリマー、重合開始剤、架橋剤またはいずれかの他の適切な添加剤を含んでいてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態によれば、含浸を容易にするために超音波エネルギーが印加されてもよい。
【0172】
温度および/または時間などの含浸工程のための条件は、処理しようとする多孔性支持部材の形態または形状を考慮して選択される。
【0173】
多孔性支持部材がチューブ(中空繊維)である場合には、蠕動ポンプなどのポンプを使用してチューブの中へおよび細孔の中へと当該溶液を「押し込む」ことによって、この含浸工程が成し遂げられてもよい。細孔への含浸剤の浸透を容易にする別の方法は、含浸を行う前にチューブを数センチメートルの長さに切断することである。
【0174】
d)単量体のグラフト共重合
カチオンおよびアニオン単量体/双性イオン(およびいずれかの他の必要とされる添加剤)を含む溶液が多孔性支持部材に物理的に導入されると、グラフト共重合の工程が行われる。この工程は、多孔性支持部材へのその単量体の化学結合の形成、およびその単量体を共重合して共重合体を生成することを含む。この共重合体は支持膜の細孔内の適所に化学結合され繋ぎ止められる。
【0175】
例えば、PES多孔性部材の化学的グラフト化は、PES多孔性部材を表面活性化すること、単量体を反応性部位に付着させて(attaching)次いで(または同時に)重合させることからなるプロセスとして記載することができ、これによりポリマーの枝が形成されてそれらが主鎖のPESポリマーに結合されるようになる。化学的グラフト化は、PESのヒドロキシル基からの水素原子の引き抜きによって行われてもよい。PESは、グラフト開始剤の存在下で表面活性化されてフリーラジカルを生成することができる活性のある不安定な水素原子を有する。このようにしてこのプロセスで生成されるフリーラジカルはグラフト共重合を開始する。多孔性部材のグラフト共重合に関与する一連の反応工程は、以下のとおりであってもよい:グラフト開始剤イオンが作用を開始し、全プロセスは自己触媒プロセスのように振舞う。それゆえ、少量のグラフト開始剤イオン(10〜100ppmなど)が、グラフト共重合のプロセスを実施するのに十分である場合がある。上記の反応は過酸化物の存在下で行われてもよい。この過酸化物は、同時にグラフト開始剤を再生しフリーラジカルを生成する。
【0176】
このグラフト開始剤は、Fe3+、Fe2+、Ag+、Co2+またはCu2+などの金属イオン系からなっていてもよい。上記過酸化物は、過酸化水素、過酸化尿素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの水溶性の触媒から選択されてもよい。この単量体およびプレポリマーは側鎖官能基を有し、この側鎖官能基はそれらどうしでおよび当該配合物に含まれるさらなるプレポリマーと反応して、グラフト共重合体を形成してもよい。
【0177】
共重合の開始は、エマルション重合にとって慣用的な水溶性のレドックス開始剤の組み合わせを用いて行われてもよい。
【0178】
レドックス開始剤は、上記の過酸化物と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、および/またはアスコルビン酸などの還元剤との組み合わせによって形成されてもよい。例えば、重合は、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸アンモニウム/亜硫酸ナトリウムレドックス開始を使用して水系エマルション中で行われてもよい。
【0179】
熱またはUVベースの重合系、「リビング」または制御重合(controlled polymerization)、段階成長重合(step growth polymerization)、連鎖成長重合(chain−growth polymerization)またはいずれかのこれらの組み合わせ、またはいずれかの他の重合系などの、他のまたはさらなる重合系が適用されてもよい。
【0180】
一般的に知られた共重合のための調整剤(regulator)、例えばアミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミンまたはトリブチルアミン)、ハロゲン化合物(例えば、クロロホルム、四塩化炭素または四臭化炭素)、メルカプタン(例えば、1−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ドデカンチオール、エチルジスルフィド、フェニルジスルフィドまたはブチルジスルフィド)、アルコール(例えば、エタノール、n−/iso−プロパノールまたはn−/iso−/tert−ブタノール)、メルカプトシランまたは硫黄シラン)を使用することも可能である。
【0181】
粘度を低下させるために、例えば芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなど)、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブなど)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなど)などの溶媒を使用することが可能である。この溶媒は、ラジカル重合の過程の中で加えることができる。分枝状のアルコールラジカルを有するエステルは、低下した溶液粘度を有するポリマーを与える。
【0182】
e)架橋
架橋の機能は架橋共重合体の柔軟性を制御および調節することである。いくつかの実施形態によれば、共重合体の架橋はその共重合体を固くし(例えば、共重合体を液体からゲル形態に変換する)、共重合体が細孔から外へ漏出するのを防ぐ。支持部材内での共重合体の架橋は、共重合の後または共重合の間に行われてもよい。使用される架橋剤は、非常に反応性であり、低い揮発性を有しかつカチオン性/アニオン性共重合体との三次元的な架橋構造を形成するための少なくとも2つの不飽和基を有してもよい。
【0183】
水溶性の架橋剤が好ましいが、水に対してわずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さない架橋剤も使用することができる。適切な架橋剤の例としては、メタクリル酸3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル、アリルジグリコールカーボネート、リン酸ビス(2−メタクリルオキシエチル)、2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、メタクリル酸シンナミル、アクリル酸2−シンナモイルオキシエチル、trans−1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、N,N’−ジアリルアクリルアミド、ジアリルカーボネート、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、ピロ炭酸ジアリル、コハク酸ジアリル、1,3−ジアリル尿素、1,4−ジアクリロイルピペラジン、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、2,2−ジメチルプロパンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジビニルグリコール、セバシン酸ジビニル、ジビニルベンゼン、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−フェニレンジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、シアヌル酸トリアリル、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパンジアリルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、および1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
【0184】
架橋剤の量は、単量体の総モル量基準で、0.1%〜25%、例えば、0.5%〜20%、特に1.0%〜15%であってもよい。
【0185】
ここで、いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスをまとめる流れ図500を示す図5を参照する。工程510は、多孔性ポリマー物質(多孔性支持部材)、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)多孔性チューブを入手することを含む。高分子支持部材は、当該技術分野で公知のいずれの方法によって製造されてもよい。この工程は、この高分子支持部材の細孔に存在する水溶性のポリマーを抽出(除去)するためにおよび所望の多孔性支持部材を生成するために行われる、得られた高分子支持部材を水または水溶液で洗浄することを含んでいてもよい。工程520は、支持部材および/または多孔性支持部材の細孔の表面の表面活性化を含む。この表面活性化は、多孔性支持部材の細孔(より正確に言えば、細孔の表面)への極性の単量体(後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体/双性イオンなど)の付着(adhesion)を容易にするように適合されている。工程530は、(i)カチオン性単量体およびアニオン性単量体、(ii)双性イオン単量体、または(i)および(ii)の組み合わせを含む溶液の、多孔性支持部材への含浸(導入)を含む。この工程はまた、例えば、コーティング方法論および/または含浸手法によって行われてもよい。工程540は、上記アニオン性単量体およびカチオン性単量体ならびに/または双性イオン単量体のグラフト共重合を含む。工程550は、支持部材の細孔を少なくとも部分的に充填する架橋共重合体を形成するために架橋して、水パーベーパレーション特性を呈するように適合されている最終の乾燥用ポリマー物質560(複合膜/タブ)を生成することを含む。
【実施例】
【0186】
本発明を例証するために、以下の実施例を提供する。しかしながら、各実施例で与えられる特定の細部は、例証の目的で選択されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないということを理解されたい。一般に、実験は、特記しない限り同様の条件下で行った。
【0187】
以下の特定の実施例では、支持部材は、ハイドラノーティクス社(Hydranautics Corporation)から入手した。
【0188】
この中空繊維(支持部材)は市販されており、HYDRACAPの商標で販売されている。
【0189】
この中空繊維は、水精製プロセス用に使用されており、ハイドラノーティクス社のUF(限外濾過)膜として分類される。この繊維は、ポリエーテルスルホン(PES)、名目MWCO、150,000ダルトンから作られている。この中空繊維は1.2mmの外径を有する。これらの実施例で使用する中空繊維は多孔性かつ疎水性であり、実質的に酸素と窒素との間の選択性は有しない。
【0190】
(グラフト共重合のために使用する材料)
スルホン酸部位を含むアニオン性単量体:
【表7】
【0191】
共重合のためのアンモニウム部位を含むカチオン性単量体:
【表8】
【0192】
多価不飽和の架橋性単量体
【表9】
【0193】
フリーラジカル開始剤(過酸化物)としては、無機過硫酸塩、過酸化物、およびレドックス(APS+NaBS)が挙げられる。
【表10】
【0194】
フリーラジカル開始剤としては、有機ヒドロペルオキシドおよび過酸化物;アゾが挙げられる。
【表11】
【0195】
触媒−界面活性剤SO3H部分:
【表12】
【0196】
モノ不飽和シラン
【表13】
【0197】
ポリ官能性架橋性シラン
【表14】
【0198】
(実施例1)
PES繊維の表面を、溶液中の5%エタノールを使用して、室温で30分間洗浄した。
【0199】
この多孔性支持部材の親水性化(活性化)を、過硫酸アンモニウム0.1%を使用して行った。
【0200】
上記の処理を経た後、得られた膜を常温まで冷却し、酸化剤の残留物を除去するために水で約10〜約20分間洗浄し、次いで約70℃で約40分間乾燥した。
【0201】
カチオン性単量体から調製した含浸工程用の溶液は塩化[2−(メタクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(MAETAC)であり、アニオン性単量体は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)であった。これらのモル比は1000:800:75であった。
【0202】
過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウムをレドックス開始剤として使用し、Luperox Pをラジカル共重合開始剤として使用し、そのモル比は単量体の総量基準で0.75:0.04:7.5であった。
【0203】
上記の化学物質を混合し、それらを50%単量体濃度まで希釈し、この混合物を、すべての固体が水に溶解するまで0.5〜2時間撹拌した。この単量体混合物は、一回に少しずつまたは連続的に加えることができる。これにより、熱の発生を制御することができる。
【0204】
濾過してあらゆる溶解しなかった固体を濾紙により除去した後、この混合物は膜を調製する準備が整った。この溶液中の単量体の濃度は60重量%であった。
【0205】
上記多孔性膜は、このあと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ラジカル重合開始剤、イソプロピルアルコールおよび水を含むポリマー前駆体溶液に浸漬し(含浸し)、このようにしてこの膜に当該溶液を充填した(含浸させた)。
【0206】
このあと、この多孔性基材をその溶液から引き上げた。中空繊維の浸漬および過剰の溶液の除去後、この膜を、共重合反応が終わるまで80℃のオーブンの中に0.5〜1時間入れた(グラフト共重合)。90〜110℃で架橋を行った。
【0207】
(実施例2)
実施例2は、管路の表面活性化のための方法を例証する。適切な液体を用いてPES繊維の表面を洗浄して、いくらかの不純物を除去した。
【0208】
疎水性のPES膜には、含浸工程として水/アルコール溶液を10分間置くことによって作製した持続的な親水性表面が提供される。5%エタノール溶液を使用して、この膜を室温で30分間洗浄した。
【0209】
この多孔性の疎水性PES膜を入手すると、これを、以下のようにして親水性化した。
【0210】
疎水性のPES膜の試料(約6cm長さ)をイソプロピルアルコール(IPA)で予め湿らせ、脱イオン水で洗浄した。
【0211】
膜を酸化剤(過硫酸アンモニウム)の水溶液の中に浸漬した。過硫酸アンモニウム(APS)の濃度は約0.1〜3%であった。この溶液を常温から約90〜95℃まで約15分間加熱した。上記の処理を経た後、得られた膜を常温まで冷却し、酸化剤の残留物を除去するために水で約10〜約20分間洗浄し、次いで約70℃で約40分間乾燥した。含浸溶液を実施例1のように調製し、含浸、グラフト共重合および架橋の工程も実施例1のように行った。
【0212】
(実施例3)
ここで、いくつかの実施形態に係る乾燥用チューブの製造のプロセス手順の一例を説明するスキームを示す図6を参照する。工程1は、ポリマー多孔性チューブ、この場合はPES多孔性チューブを入手して、それを、スルホン酸部分を有する化合物を多孔性ポリマーチューブの基礎構造へと導入するために別の物質でコーティングすることを含む。この場合、コーティングは、PES多孔性チューブをアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート(AMPS)の溶液の中に10分間浸漬し、AMPSでコーティングおよび充填されたPESチューブを生成することによって行われる。工程2では、過硫酸カリウムまたは過酸化物を50℃で1時間使用することによって、AMPSでコーティングおよび充填されたPESチューブを表面活性化し、重合したAMPSを有するPESチューブを生成する。工程3では、重合したAMPSを有するPESチューブを80℃で1時間架橋し、洗浄し、乾燥してPES−g−AMPS架橋膜チューブを得る。
【0213】
(実施例4)
下記の表7は、ナフィオン(登録商標)チューブの性能と比較して、本発明のいくつかの実施形態に係る多孔性経路チューブの性能を示す。第1の例は、表面活性化用アルコール溶液中の0.1重量%の過硫酸アンモニウム酸化剤で前処理したPES多孔性中空繊維チューブを指し、第2の例は、表面活性化用アルコール溶液の1.0重量%の過硫酸アンモニウム酸化剤で前処理したPES多孔性中空繊維チューブを指す。
【0214】
【表15】
【0215】
蒸気浸透試験では、漏出試験を1時間ごとに行った。新しいPES膜は、4時間の試験手順の間、安定した空気漏出挙動を示した。
【0216】
表8に示すように、第1および第2の例の多孔性経路チューブの各々について以下の4つの因子を評価し、ナフィオン(登録商標)チューブと比較した:
1)漏出[マイクロリットル/分]、
2)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
3)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
4)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0217】
これらの4つの因子を、特定の温度[℃]および相対的な周囲湿度(RH)[%]で試験した。
【0218】
驚くべきことに、第1および第2の例の多孔性経路チューブの水エバポレーション性能は、ナフィオン(登録商標)の水エバポレーション性能よりも高いことが見出された。
【0219】
以下は、本発明で使用した脱水膜の作用の根底にあると考えられる物理的メカニズムの考察である。しかしながら、本発明が以下の説明によって限定されるとは見なされるべきではない。
【0220】
空気および水蒸気は、3つの異なる手段によって、いくつかの実施形態に係る本発明で使用した脱水膜を通過すると考えられる。
【0221】
水蒸気浸透について、関連するメカニズムは、
1)高密度のポリマーを通る透過、
2)細孔を通る粘性の高い流れ、および
3)非常に微細な細孔を通るクヌーセン流れ、
であるかも知れない。
【0222】
高密度のポリマーを通る透過は、水蒸気浸透についての支配的因子であると考えられる。
【0223】
いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質(チューブなど)は、多孔性ポリマーチューブを入手し、所望の長さ(例えば、50mm)を有するチューブへと切断し、そしてこの切断した多孔性ポリマーチューブに、スルホン酸部分を有する化合物を導入することによって(工程520においてなど)調製されてもよい。このあとに、重合(工程520においてなど)および架橋(工程520においてなど)が続いてもよい。
【0224】
乾燥用ポリマー物質(チューブなど)は、代替のまたはさらなる実施形態によれば、多孔性ポリマーチューブを入手し、そのチューブにスルホン酸部分を有する化合物を導入し(工程520においてなど)、重合し(工程520においてなど)および架橋する(工程520においてなど)ことによって調製されてもよい。次いでこのチューブは、所望の長さ(例えば、50mm)を有するチューブへと切断されてもよい。この行為の順序は比較的長いチューブの処理を伴うため、チューブへの溶液(および/または例えばそれらを除去するための空気)の浸透を容易にし、従って作り上げられた内部コーティングの均一性を改善するために、ポンプ(蠕動ポンプなど)を使用する必要がある場合がある。
【0225】
いくつかの実施形態によれば、上記処理の一部(例えば、スルホン酸部分を有する化合物の導入)は、予備切断されたチューブに対して行われてもよく、上記処理の別の部分(例えば、重合および架橋)は切断されたチューブに対して行われてもよい。
【0226】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、この物質の機械的特性をも改良しつつ、パーベーパレーションを改良することを可能にするようにして形成されてもよい。改良されたポリマー物質およびその製造方法の例は、以下の段落に記載される。
【0227】
いくつかの実施形態によれば、当該多孔性チューブのコーティングおよび/または含浸および/またはグラフト化は、そのチューブの特定の領域で行われてもよく、同時に他の領域は(例えば、グラフト化/コーティング/含浸が所望されない多孔性チューブの領域をブロックすることによって(これらに限定されない))グラフトされない/コーティングされない/含浸されないまま留まってもよい。従って、本発明のいくつかの実施形態の範囲の下に包含されるポリマー物質(チューブなど)は、含浸した領域(例えばAMPSによって、および含浸されていない領域)を含むポリマー物質を含んでもよい。これは、例えば乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能の制御を可能にする場合があるが、いずれかの他の用途のために使用されてもよい。
【0228】
いくつかの実施形態によれば、多孔性ポリマー物質(チューブまたは膜など)の基本構造は非対称であってもよく、例えば、細孔は、多孔性ポリマー物質の1つの表面で(例えば、チューブの外側表面上で)より大きく、かつその多孔性ポリマー物質の他の表面上(例えば、そのチューブの内側)でより高密度であっても(および/またはより小さくても)よい。従って、多孔性ポリマー物質の基本構造は、1つの表面上でコーティング、グラフトまたは含浸され、他の表面上ではコーティング、グラフトまたは含浸されなくても(または、より少なくても)よい。かかる構造は、他方で、良好かつ高速のパーベーパレーション特性(薄いスルホン化壁だけを通過すればよい)をもたらすことができるが、はるかに良好な機械的強度をもたらすことができる(より大きい細孔を有する領域は、チューブの機械的強度にのみ影響を及ぼすがパーベーパレーションには影響を及ぼさない)。
【0229】
いくつかの実施形態によれば、非対称の多孔性ポリマー物質の別の例は、チューブの1つまたは2つの末端により大きい細孔を有し、チューブの内側部分により高密度の細孔を有する多孔性ポリマーチューブであってもよい。従って、この多孔性チューブは、内側部分でコーティング/グラフトまたは含浸され、かつ末端ではコーティング/グラフトまたは含浸されなくとも(または、より少なくても)よい。かかる構造は、そのチューブの内側部分でパーベーパレーション特性を提供することができるが、チューブの末端(エバポレーション機能性が必要とされない部分)は管路系(例えば、呼気採取システム)の他の部分へ接続するために使用されてもよい。
【0230】
いくつかの実施形態によれば、(「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」、「多孔性経路」または本願明細書に開示されるいずれかの他の方法によって製造される)乾燥用ポリマーチューブの壁の厚さは、130マイクロメートル超、例えば150マイクロメートル超、130〜200マイクロメートルの範囲、150〜300マイクロメートルの範囲、200〜400マイクロメートルの範囲または400マイクロメートル超であってもよい。
【0231】
(実施例5)
気体乾燥用チューブの機械的特性
当該「多孔性コーティング」チューブは、ナフィオン(登録商標)チューブと直接比較することはできない。なぜなら、その基本となるマトリクスは、ナフィオン(登録商標)およびブレンドおよびグラフト化された種類のチューブにおけるような連続的なモルホロジーではないからである。
【0232】
この「多孔性コーティング」チューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べて、より柔軟性があり、ねじれおよび/または崩壊の傾向が少ないことがはっきりした。
【0233】
いくつかの実施形態によれば、この多孔性タイプのチューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べて、(細孔がパーベーパレーション材料で完全に満たされるにつれて)より厚くできる。加えて、細孔のサイズおよび密度は、チューブの製造の際に制御することができ、それゆえ、機械的特性およびパーベーパレーション性能を最適化することができる。
【0234】
乾燥用ポリマーチューブの例示的な実装
いくつかの実施形態によれば、(「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」および「多孔性経路」によるなど(これらに限定されない)のいずれかのプロセスで製造された)乾燥用ポリマーチューブは種々の形態および形状にあってもよい。特定の形状は、そのチューブの機械的特性(強度、ねじれまたはいずれかの他の特性など)およびそのパーベーパレーション能力に影響を及ぼすために選択されてもよい。
【0235】
ここで、いくつかの実施形態に係る異なる形状を有する例示的なチューブを示す図7a〜dを参照する。
【0236】
図7aは、3つの領域、末端領域702および704および中央領域706を有する乾燥用チューブ700を示す。末端領域702および704の外径はd1であり、中央領域706の外径はd2である。この場合、d1はd2よりも大きい。乾燥用チューブ700のすべての領域の内径d3は同じである。かかるチューブは、例えば中央領域706での所望のパーベーパレーション性能および末端領域702および704での(パーベーパレーション性能ありまたはなしの)構造的強度を可能にするために、使用されてもよい。
【0237】
図7bは、いくつかの実施形態に係る、チューブの長さに沿って実質的に一定の内径d4および2つの外径、より低い領域712における外径d5、およびより高い領域714における外径d6を有するリブのある乾燥用チューブ710を示す。上記チューブの長さに沿って延在するより高い領域714は、乾燥用チューブ710の強度を高める可能性がある「リブ」と呼ばれてもよい。他の種類または形態のリブも形成または使用されてよい。かかるリブには、らせん状のリブ(図示せず)、同心性のリブ(図示せず)、またはいずれかの種類のパターンを有する他のリブを含めてもよい。チューブ710は、気体の流れを可能にするように適合されている内側導管715を有する。このチューブの内側断面は、d4の直径を有する円形であると示されているが、しかしながら、いくつかの実施形態によれば、チューブの内側断面は、例えば内側断面および外側断面が星型形状を有する図7c(本願明細書中下記で詳述されることになっている)に示すようにそのチューブの外側断面(これは非円形であってもよい)と合致することもできる。より低い領域712およびより高い領域714は、同様または異なるパーベーパレーション性能を有してもよい。これらの特徴は、例えばチューブの射出成形によって成し遂げることができる。これは、ナフィオン(登録商標)では成し遂げることができない。ナフィオン(登録商標)は、射出成形に伴う温度および応力ではその機能性および特徴を維持しないであろう。
【0238】
図7cは、いくつかの実施形態に係る、チューブの長さに沿って、より低い領域722およびより高く先が尖った領域724を有する星型の乾燥用チューブ720を示す。上記チューブの長さに沿って延在するより高い領域724は、乾燥用チューブ720の強度を高める可能性がある。乾燥用チューブ720の内側断面726は、乾燥用チューブ720の外側断面728と合致する。より低い領域722およびより高く先が尖った領域724は、同様または異なるパーベーパレーション性能を有してもよい。非円形の内側断面(乾燥用チューブ720の星型の内側断面726、長方形、正方形、先が尖った、花型またはいずれかの他の非円形の内側断面など)は表面積を増大させ、管路のラインを遮断することなく角/導管(チューブの内側に形成される)で液体を捕捉する能力を増大させ、そしてさらにより良好な親水性を作り出し、流体(水など)が容易に吸収されてパーベーパレーションされうるように流体(水など)をチューブの壁に沿って広げる。
【0239】
いずれの乾燥用チューブの内側断面および/または外側断面も、いくつかの実施形態によれば、円形のまたは非円形の断面(例えば、星型、長方形、正方形、先が尖った、花型またはいずれかの他の非円形の断面が挙げられるがこれらに限定されない)を有してもよい。
【0240】
いくつかの実施形態によれば、いずれの乾燥用チューブの内側断面および/または外側断面も、同じであってもよいし、または上記チューブの長さに沿って変化してもよい。
【0241】
図7dは、いくつかの実施形態に係る、中央領域732および2つの末端領域734および736を有する乾燥用チューブ730を示す。2つの末端領域734および736の間に延在する中央領域732は、水などの流体をパーベーパレーションするように適合されている。いくつかの実施形態によれば、末端領域734および/または736は、別々に形成されて中央領域732とともに組立てられてもよい。いくつかの実施形態によれば、末端領域734および/または736は、中央領域732と一体成形されてもよい。領域734および/または736が中央領域732と一体成形される場合は、乾燥用チューブ730は、いずれかの方法に従って、特に成形によって製造されてもよい。さらなるまたは代替の実施形態によれば、乾燥用チューブ730(または本発明の実施形態に係るいずれかの他の乾燥用チューブ)は、流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥ゾーン738、740a、bおよびcなどの明確な乾燥ゾーン(または「ウィンドウ」)のみを有する中央領域(中央領域732など)を含んでもよく、中央領域(中央領域732など)の残部は流体をパーベーパレーションするように適合されておらず、むしろこの乾燥ゾーンを強化または「保持」するように適合されていてもよい。乾燥ゾーン(乾燥ゾーン738、740a、bおよびcなど)は、中央領域(中央領域732など)のある領域を切断して、それを乾燥用物質(膜など)で置き換えることによって形成されてもよい。この乾燥ゾーンは、中央領域の特定のゾーンを流体乾燥ゾーンへと変換するために、中央領域の特定のゾーンを活性化すること/化学的に処理すること/グラフトすること/スルホン化すること、および/またはいずれかの他のプロセスを適用することによって形成されてもよい。
【0242】
いくつかの実施形態によれば、乾燥用チューブのいずれかにおいて(図7a〜dのチューブ700、710、720および730など)、グラフト化、含浸、活性化、表面活性化および/またはいずれかの他のプロセスなどの本願明細書に開示されるいずれかのプロセスを、チューブ全体またはチューブの1以上の領域(中央領域など)のみで行うことができる。この領域選択的なプロセスは、高いパーベーパレーション性能を有する領域およびより低いパーベーパレーション性能を有するがより良好な機械的特性を有する領域を有するチューブを生じる場合がある。
【0243】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る非対称の多孔性乾燥用チューブを示す図7eを参照する。多孔性乾燥用チューブ750(これは、本発明の実施形態に従って充填/コーティング/グラフト/含浸されてもよい細孔を有する多孔性支持部材として記載されてもよい)は、外側表面752および内側表面758(多孔性乾燥用チューブ750の長さに沿って延在する内側導管759を画定し、かつ流体の流れのために適合されている)を含む。乾燥用チューブ750はまた、2つの区画、高密度でない区画754および高密度区画760を含む。高密度でない区画754は外側表面752の領域に位置し、大きい細孔756を含む。高密度区画760は内側表面758の領域に位置し、小さい細孔762を含む。流体が内側導管759を矢印の方向に流れる場合、水および/または水蒸気は、架橋共重合体で充填されるように適合されている小さい細孔762を通ってパーベーパレーションすることができる。ひとたび水および/または水蒸気が小さい細孔762を通ると、それらは、実質的に中断することなく、充填されていない大きい細孔756を通り、多孔性乾燥用チューブ750を出る。従って、一方で効率的なパーベーパレーションを促進する比較的薄い高密度区画760、および他方でパーベーパレーション性能に影響を及ぼすことなくチューブを強化する高密度でない区画754を有する多孔性乾燥用チューブ(多孔性乾燥用チューブ750など)を得ることが可能である。
【0244】
ここで、いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブを示す図8a〜図8cを参照する。
【0245】
図8aは、第1の端部803で第1のチューブ804に接続されかつその対向する端部805で第2のチューブ806に接続された乾燥用チューブ802を含む管路系800を示す。チューブ804は、例えば患者から乾燥用チューブ802に呼気を採取するために使用されてもよく、チューブ806は、例えば乾燥された呼気を乾燥用チューブ802から、カプノグラフまたは患者の呼気に関する情報を提供するように適合されているいずれかの他の分析器などの分析器へと通すために使用されてもよい。矢印は、管路系800の中の流れの方向を示す。乾燥用チューブ802の外径は、第1のチューブ804および第2のチューブ806の内径よりも小さい。従って、乾燥用チューブ802の第1の端部803および対向する端部805は、それぞれチューブ804およびチューブ806の中へと挿入することができる。乾燥用チューブ802の第1の端部803および対向する端部805は、それぞれリング808および810によってチューブ804およびチューブ806に固定することができる。
【0246】
図8bは、第1の端部823で第1のチューブ824に接続されかつその対向する端部825で第2のチューブ826に接続された乾燥用チューブ822を含む管路系820を示す。乾燥用チューブ822、チューブ824およびチューブ826は、例えば図8aに記載するように使用されてもよい。乾燥用チューブ822の外径は、第1のチューブ824および第2のチューブ826の内径よりも小さい。従って、乾燥用チューブ822の第1の端部823および対向する端部825は、それぞれチューブ824およびチューブ826の中へと挿入することができる。乾燥用チューブ822の第1の端部823および対向する端部825は、(図8aにそれぞれ808および810として示されるような)リングによってチューブ824およびチューブ826に固定することができる。管路系820はまた、乾燥用チューブ822の外側表面領域を部分的に覆うメッシュ830をも含む。メッシュ830はまた、チューブ824の端部領域832の外側表面領域およびチューブ826の端部領域833の外側表面領域を部分的に覆う。メッシュ830は、例えば、必要な場合に乾燥用チューブ822の機械的強度を高めるために、乾燥用チューブ822に対する保護層として機能してもよい。
【0247】
図8cは、接続スリーブ843によってチューブ844接続される乾燥用チューブ842を備える管路系840を示す。接続スリーブ843の外径は、乾燥用チューブ842およびチューブ844の内径よりも小さい。乾燥用チューブ842およびチューブ844は、例えば、接着剤により、接続スリーブ843(特に、それが金属(1種または複数種)から作られている場合)を加熱しこのようにして乾燥用チューブ842および/またはチューブ844を融解および/または溶接することにより、または図8aに示すような外部リング(またはクリップ)により、接続スリーブ843に固定されていてもよい。接続スリーブはまた、乾燥用チューブおよび別のチューブの外径よりも大きい内径を有してもよく、それらを、チューブにその外側表面から取り付けることにより接続してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水パーベーパレーション特性を呈する膜および他の基材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
有機気体などの気体からの水などの液体の分離または除去は、化学産業、石油化学産業、医療産業およびエネルギー産業の中で重要なプロセスである。水の除去は、広い範囲の有機溶媒の一次生産において、使用済みの溶媒の回収および再生利用において、ならびに好ましい生成物に向かって反応を駆動するための化学平衡反応からの水の除去において重要である。
【0003】
水などの液体を含まない、または実質的に含まない気体を必要とする別の応用例は、患者の状態に関する情報を提供するために行われる医学的な呼気分析である。しばしば行われる気体分析の例は、通常は時間依存的である呼吸による二酸化炭素(CO2)濃度のモニタリングであるカプノグラフィである。この時間依存的な呼吸によるCO2濃度は、CO2の吸入され吐き出される濃度を直接モニターするために、および患者の血液中のCO2濃度を間接的にモニターするために使用されてもよい。酸素(O2)、一酸化炭素(CO)、窒素などの他の気体もまた個々にまたは組み合わせで測定されてもよい。
【0004】
呼気分析システム、例えばカプノグラフィでは、呼気ガスは本流(mainstream)または側流(sidestream)分析器などによってサンプリングすることができる。本流分析器では、サンプル室が患者の気体のストリーム内に、通常は患者の呼吸器系統の末端近くに配置される。この装置は、通常、側流システムよりも重くかつ煩わしい。
【0005】
側流分析器では、気体はチューブによって呼吸器系統から抜き取られることが多い。アダプターへと接続されてもよいこのチューブは、この気体をサンプリング場所(サンプリング室など)へと送達する。連続的で妨げのないモニタリングを許容するために、サンプリングラインは、常に流体試料の中に凝縮された液体などの液体がないことが好ましい。
【0006】
凝縮された液体は、一般に、サンプリングチューブの中で湿度(呼気の中の水蒸気)から凝縮する水を指す。凝縮された液体は、呼気分析、特に側流カプノグラフィを一般に妨げる主要な問題である。チューブの内部の湿度レベルは、とりわけ呼気採取エリアに近接するところでは高い。なぜなら、吐き出され吸入される息は湿っており、比較的暖かいからである。これは、気道加湿システムおよび患者の要求に応じて、通常は常温よりも高い温度(例えば、約34℃)で最高100%湿度を有する気体(例えば、空気)を用いて通常人工呼吸器につながれている挿管された患者の場合にも当てはまる。この湿気(水蒸気)は、温度低下が原因で(特に、チューブが呼気採取エリアから離れて延びる場合は)チューブの内側で凝縮することが多い。
【0007】
流体を脱水するために使用されてきた種々のプロセスには、パーベーパレーションおよび蒸気透過などのより新しい膜ベースの技法が含まれる。パーベーパレーションは、供給側または上流側の流体(気体および/または液体を含んでいてもよい)および透過側または下流側の蒸気と接する膜を伴うプロセスである。そのプロセスに駆動力を与えるために、通常、真空または不活性気体が膜の蒸気側に付与される。典型的には、下流圧力は透過物の飽和圧力よりも低い。蒸気透過は、液体の代わりに蒸気が膜の供給側で接することを除いて、パーベーパレーションとまったく同様である。パーベーパレーション分離に適した膜は典型的には蒸気透過分離にも適しているので、本願明細書における用語「パーベーパレーション」の使用は、「パーベーパレーション」および「蒸気透過」の両方を包含する。
【0008】
様々な異なる種類の膜が、パーベーパレーション脱水プロセスでの使用のために記載されてきた。この膜を調製するために使用される材料としては、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、および高分子電解質などの親水性有機ポリマーが挙げられる。加えて、細孔性構造を有するモレキュラーシーブおよび鉱物性物質(例えば、アルミノシリケート鉱物性物質であるゼオライト)などの無機材料が使用されてきた。
【0009】
当初は、ポリマーベースのパーベーパレーション膜は高密度の均一膜を含んでいた。かかる膜の典型例は、Yamasakiら[非特許文献1]によって記載されている。この文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。これらの膜は、それらがかなり厚いので、低い流量(単位時間あたりに単位膜面積を通って流れる流体の量)という問題を抱えている。この膜の流量は膜の厚さを減少させることによって増加させることができるが、これは、機械的強度および堅牢さの低下につながる。
【0010】
上記の膜(これらのいくつかは均一な膜であると考えられてもよい)が遭遇する問題を克服するために、2つの経路が一般に使用されてきた。第1の経路は、高密度の表面層が同じポリマーから作製されるより多孔性の材料の上に支持されている非対称な膜の使用を含む。かかる非対称な膜の典型例は、Huangら[非特許文献2]によって開示されている。この文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0011】
第2の経路は、高密度の表面層および支持膜の化学組成が典型的には異なる、適切な支持膜の表面上に高密度の薄膜を形成することを含む。典型的には、この支持膜は、さらなる強度を提供するために組み込まれた布地を含んでいてもよい限外濾過膜である。これらの薄膜複合膜の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されている。しかしながら、これらの薄膜複合膜の1つの主要な不都合は、その脆弱性である。例えば、一般に使用される、ポリアクリロニトリル限外濾過膜支持体上に支持された架橋ポリ(ビニルアルコール)膜は、膜でのクラックの形成によって、および膜の一部分が支持体から離れたところで崩落することによって容易に損傷を受ける。それゆえ、これらの膜を取り付けて使用するときには多大な注意が払われなければならない。かかる膜が欠陥を含まないようにしてかかる膜を調製することも困難である。
【0012】
薄膜複合膜の特別の形態は、「Simplex」膜と呼ばれる。これらは、反対の電荷を帯びた高分子電解質の交互の層を使用する薄膜から構成される。この膜は、多層の複合体が形成されるように、2つの異なる高分子電解質の溶液の中で連続的に浸漬することによって作製される(例えばKrasemannら[非特許文献3];Krasemannら[非特許文献4]、およびHaackら[非特許文献5]を参照のこと)。これらの文献は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。高い選択性および適度な流量はSimplex膜を用いて達成することができるが、これらの膜は多数回のコーティング工程を必要とするため、それらは調製するのが複雑である。理想的な性能を得るために、最高60回の浸漬操作が必要とされる場合がある。別の重大な欠点は、これらの膜がその複数の層のいくつかの損失なしには25%を超える供給含水量に耐えられないという事実にある。
【0013】
ナフィオン(Nafion)(登録商標)膜
パーベーパレーションによる気体の脱水のために従来から使用される方法は、プロトン交換膜燃料電池で使用される膜などのプロトン伝導性膜を使用することである。これらの膜の例はデュポン(DuPont)によりナフィオン(登録商標)の商標で販売されるが、それはペルフルオロ化スルホン酸ポリマーから作製される。完全フッ素化ポリマーであるナフィオン(登録商標)膜は高い化学安定性および熱安定性を有し、約100℃までの温度で強塩基、強い酸化性および還元性の酸、H2O2、Cl、H2およびO2中での化学的攻撃に対しても安定である。ナフィオン(登録商標)は、スルホン酸基が化学的に結合されているフッ素重合体骨格からなる。しかしながら、通常十分な性能を提供するが、ナフィオン(登録商標)は高価な材料であり、このことがナフィオン(登録商標)をほとんどの用途で経済的には魅力のないものにしている。
【0014】
ナフィオン(登録商標)チューブは、上記のように実質的に液体を含まない採取された気体を必要とする呼気分析の用途(カプノグラフィなど)のために使用されてきた。ナフィオン(登録商標)チューブは、外チューブの管腔内に同軸上に嵌め込まれた内チューブを含む。ペルフルオロ化ポリマーから製作されるこの内チューブは、一呼吸ごとの応答時間と一致する所定の小さい内径を有する。この用いられるナフィオン(登録商標)プラスチックは湿気(水蒸気)に対しては高い透過性を示すが、酸素および二酸化炭素などの他の呼吸による気体を容易には通さない。
【0015】
呼気分析で使用される場合、ナフィオン(登録商標)は患者の気道および呼気採取システムの一部分であり、従って1人の患者から別の患者へと移すことはできず、そして同じ患者に対して再使用することすらできない。ナフィオン(登録商標)のこの使い捨て性は原価要素を上昇させる。比較的長いナフィオン(登録商標)チューブを必要とする用途では、コストはさらにより重大になる。例えば、(例えば、カプノグラフィでは一般的な流量である)150ml(ミリリットル)/分でサンプリングする場合、6インチ(約15cm)のナフィオン(登録商標)が必要とされる。この長さのナフィオン(登録商標)は、管路系(呼気採取システムなど)全体よりも少なくとも一桁多いコストがかかる場合がある。
【0016】
多くの用途におけるナフィオン(登録商標)管路は非常に薄い壁(典型的には0.002〜0.003インチ(約0.05〜約0.08mm))を有するため、水はすばやくそれを透過する。しかしながら、この薄い壁は、この壁の崩壊を防ぐための二次的な構造的支持体の使用をも決定付ける。これらの構造的支持体は、当該製品の製造を複雑にし、水の透過をも低下させる。
【0017】
ナフィオン(登録商標)管路は、インフレーションフィルム押出として公知のプロセスによって製作される。このプロセスは、あまりに薄すぎて自己の重量を支えることもできない壁を有する材料であるごみ袋を製造するのと同種の以下の工程を含む。典型的なごみ袋は、0.002または0.003インチ(約0.05または約0.08mm)の壁厚を有する(大きいごみ袋はもう少し厚い場合がある)。典型的なナフィオン(登録商標)医療用気体「ライン」チューブは、典型的には壁厚が0.0025インチ(約0.06mm)である。そして、ごみ入れがごみ袋を開いて保持するのとまさに同じように、メッシュ状挿入物または外側スリーブが、それぞれ内側からまたは外側から管路を開いて保持するために使用されるべきである。このメッシュは、管路の表面への気体の循環を可能にするように、十分に粗く織られてもよい。しかしながら、上述のように、チューブの内側または外側にメッシュ状挿入物が存在することは、パーベーパレーションプロセスの効率を妨げる、典型的には50%を超えて水パーベーパレーション効率を低下させる可能性がある。ナフィオン(登録商標)の別の不都合は、その調製のために使用される原料の化学的に攻撃的な(aggressive)性質およびこれらの材料の加工の困難さである。ナフィオン(登録商標)の加工を可能にするためには、例えば、特別の押出手段が必要とされる。さらに、ナフィオン(登録商標)を管路系(呼気採取システムなど)に一体化することは、複雑であり特別の手段を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,755,299号明細書
【特許文献2】米国特許第5,334,314号明細書
【特許文献3】米国特許第4,802,988号明細書
【特許文献4】欧州特許第0,381,477号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Yamasakiら、J.Appl.Polym.Sci. 1996年、第60巻、743−48頁
【非特許文献2】Huangら、Sep.Sci.Tech. 1993年、第28巻、2035−48頁
【非特許文献3】Krasemannら、J.Membr.Sci. 1998年、第150巻、23−30頁
【非特許文献4】Krasemannら、J.Membr.Sci. 2001年、第181巻、221−8頁
【非特許文献5】Haackら、J.Membr.Sci. 2001年、第184巻、233−43頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、効果的で、取り扱いおよび製造が容易で、かつ費用効率の高い水パーベーパレーション特性を呈する膜および他の基材についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下の実施形態およびその態様は、システム、ツールおよび方法に関連して説明および図示される。それらのシステム、ツールおよび方法は、例示および例証のためのものであることが意図されており、範囲を限定するものであるとは意図されていない。種々の実施形態では、上記の問題点の1以上が軽減または解消され、他の実施形態は他の利点または改善に関する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、パーベーパレーションプロセスによる空気およびCO2などのより極性の低い気体からの水などの極性流体の選択的な除去のために設計された堅牢な、高性能物質(膜またはチューブなど)を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、乾燥用ポリマー物質であって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつこの物質は流体をパーベーパレーションするように適合された、乾燥用ポリマー物質が提供される。この流体は水、水蒸気またはその両方を含んでもよい。この物質は、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)など(これらに限定されない)などの相溶化剤をさらに含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、呼気採取システムであって、乾燥用ポリマーチューブであって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化された基を含み、かつこのチューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマーチューブと、この乾燥用ポリマーチューブを呼気採取チューブに接続するように適合されたコネクタ、および強化要素のうちの少なくとも1つと、を含む呼気採取システムが提供される。このコネクタ、強化要素、またはその両方は、当該乾燥用ポリマーチューブとともに成形されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、上記不均一相ポリマー組成物は、実質的に共連続相構造を有する。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、上記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含んでもよい。このフッ素重合体はポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含んでもよい。このスルホン酸基を含むポリマーは、スルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含んでもよい。このスチレン共重合体は熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、このPVDFなどのフッ素重合体またはその誘導体はスルホン酸基を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含んでもよいし、そのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含んでもよく、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は膜を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該チューブは、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該チューブは、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有してもよい。
【0031】
当該乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面を有してもよい。当該乾燥用チューブは、実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有してもよい。当該乾燥用チューブは、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよく、この乾燥用チューブは内側導管を含んでもよく、この内側導管の少なくとも一部分の内側断面は実質的に非円形であり、かつこの内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って当該乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている。この内側導管の断面は実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。この内側導管の断面は実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、流体(水、水蒸気またはその両方など)をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスが提供され、このプロセスは、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含んでいてもよい工程と、このポリマーブレンドを、例えば成形または押出によって所望の形態に加工する工程とを含む。この不均一相ポリマー組成物は、実質的に共連続相構造を有してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、混合する工程は相容化剤を用いて混合することを含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、当該プロセスは、スルホン化できる1以上の基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合された乾燥用チューブを得る工程をさらに含んでもよい。当該乾燥用ポリマー物質のスルホン化の割合(%)は40〜100%の範囲にあってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、上記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含んでもよい。このフッ素重合体はポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含んでもよい。このスルホン酸基を含むポリマーは、スルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含んでもよい。このスチレン共重合体は熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含んでもよいし、そのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含んでもよく、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該乾燥用ポリマー物質は、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、当該チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、当該チューブの外径が1.24±0.02mmであり、当該チューブの長さが50mmである場合に、当該乾燥用ポリマー物質は、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、上記所望の形態は膜を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、この所望の形態はチューブを含んでもよく、この得られた乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよい。
【0040】
当該乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面を有してもよい。この乾燥用チューブは実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有してもよい。この乾燥用チューブは非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有してもよい。
【0041】
この乾燥用チューブは、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有していてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、当該乾燥用ポリマー物質は乾燥用チューブを含んでもよく、この乾燥用チューブは内側導管を含んでもよく、この内側導管の少なくとも一部分の内側断面は実質的に非円形であり、かつこの内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って当該乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている。この内側導管の断面は実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。この内側導管の断面は実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似していてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、水パーベーパレーションに適合された管路系の調製方法が提供され、この方法は、不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、少なくとも1つのコネクタ、少なくとも1つの強化要素またはこれらの組み合わせを有するチューブの形態に、この不均一相ポリマー組成物を成形する工程と、を含む。この方法は、スルホン化されるように適合された基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合されたチューブと、1以上のさらなるチューブに接続するように適合された少なくとも1つのコネクタおよび/または少なくとも1つの強化要素とを含む管路系を得る工程をさらに含んでもよい。
【0044】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図面を参照することによって、および以下の詳細な説明を検討することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図2】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造のプロセス手順についての流れを示す。
【図3】いくつかの実施形態に係る、グラフト化度(%DOG)に対する温度および結晶化度(%結晶性)の影響のグラフを示す。
【図4】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図5】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図を示す。
【図6】いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造のプロセス手順についての流れを示す。
【図7A】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7B】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7C】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7D】いくつかの実施形態に係る例示的な乾燥用チューブを示す。
【図7E】いくつかの実施形態に係る非対称の多孔性乾燥用チューブを示す。
【図8A】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【図8B】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【図8C】いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブの長手方向の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の説明では、本発明の種々の態様が説明されるであろう。本発明の完全な理解を提供するために、説明の目的のために、特定の構成および細部が示される。しかしながら、本発明は本願明細書に提示されている特定の細部がなくとも実施することができるということも当業者には明らかであろう。さらに、周知の特徴は、本発明を曖昧にしないようにするために、省略または単純化される場合がある。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、気体(空気、酸素(O2)、酸素富化した空気(oxygenated air)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素、(CO2)またはいずれかの他の気体など)を極性の流体、例えば、水および/または水蒸気などの流体から乾燥するように適合されている膜またはチューブ(マイクロチューブなど)などの(これらに限定されない)ポリマー物質が提供される。このポリマー物質は、他の気体成分(二酸化炭素、CO2、酸素、窒素またはいずれかの他の気体など)の濃度を実質的に維持しつつ、(その膜に沿ってまたはチューブを通って)その気体を流すことができるようにさらに適合されていてもよい。
【0048】
このポリマー物質は、呼気試験分析システムなどのサンプリングおよび/または分析システムに組み込まれるように適合されていてもよい。呼気試験分析では(特に側流呼気試験分析では)、吐き出された呼気は、被験者からサンプリングされて当該気体試料の組成ならびに/または気体成分のいずれか(例えばCO2)の特性および/もしくは挙動に関する情報を提供する分析器まで、管路系を通される。吐き出された気体の正確な分析を得るために、呼気試料は、特定の成分の最初の組成および特徴を維持するべきであるが、実質的に水を含まないものでもあるべきである。本発明のいくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その分析にとって必須である他の成分の組成および特性を実質的に維持しつつ、サンプリングされた気体を水分子から乾燥するように適合されている。いくつかの実施形態によれば、ポリマー物質は気体を湿らせるようにも適合されていてもよい。例えば、チューブまたは膜の場合は、そのチューブまたは膜の一方の側で気体が乾燥され、他の側でその気体は湿らされる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、極性が増加するにつれて透過性が増加する、流体の極性に依存する、流体についての透過性を示してもよい。例えば、このポリマー物質は、CO2(これは実質的に非極性の化合物である)に対してよりも水(これは極性の化合物である)に対してより良好な透過性を示してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、用語「透過性」は、材料(ポリマー物質など、例えば、膜またはチューブ)の、流体(水および/または水蒸気など)を送る(透過させる)能力を指してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、用語「極性」は、ある分子の正に帯電した(小さい正電荷でさえも)末端と別の分子または同じ分子の負の(小さい負電荷でさえも)末端との間の双極子−双極子分子間力を指してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、このポリマー物質は、パーベーパレーション能(水のパーベーパレーションおよび/または水蒸気のパーベーパレーションなど)を呈してもよい。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、用語「パーベーパレーション」は、膜(乾燥用ポリマーチューブの壁など)を通る流体の移動を含むプロセスであって、その流体は蒸気または液体として非多孔性または多孔性膜に入り、そして蒸気としてその膜を透過するプロセスを指してもよい。この流体は、水、湿度、水蒸気または他の流体(メタノールまたはいずれかの他の流体など)を含んでいてもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、このポリマー物質はナフィオン(登録商標)の代わりに使用されてもよく、またナフィオン(登録商標)より良好な(または実質的に類似の)水パーベーパレーション性能を呈してもよい。より良好な水パーベーパレーションは、選択された操作パラメータにおけるその材料を通る水のより速い移動を含んでもよい。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、気体の乾燥(または湿潤化)目的で使用される(乾燥用)ポリマー物質は、流体(水および/または水蒸気など)のパーベーパレーションを可能にするように適合されているだけではなく、許容できる機械的特性(強度および柔軟性など)を実質的に維持するようにも適合されているべきである。いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その最初の寸法(例えば、パーベーパレーションで使用する前のその寸法)の1以上を実質的に維持するように適合されていてもよい。他の実施形態によれば、当該ポリマー物質は、その最初の寸法の1以上を変化させるように適合されていてもよい。例えば、ポリマー物質の寸法の1以上が、流体のパーベーパレーションで使用する最中または使用した後に変化(例えば、増大)してもよい。例えば、膜および/またはチューブの厚さおよび/または長さは、流体が通されるときに、増大してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、患者が薬剤または他の活性物質を吐き出すまたは吸入するときに通してもよい作動環境中(呼気採取チューブの中など)で堅牢であるように適合されていてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、3つの主要経路、「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」および「多孔性経路」によって調製されるポリマー物質の膜またはチューブなどのポリマー物質の3つの主要な種類が提供される。いくつかの実施形態によれば、本願明細書に提示されるポリマー物質は、容易に製造されかつ取り扱われ、耐性があり、構造的に安定であり、かつ/または膜系または管路系などの所望の系の中へ容易に組み込まれるように適合されている。
【0058】
A)乾燥用ポリマー物質 − 「グラフト化(高密度)経路」
いくつかの実施形態によれば、膜またはチューブなど(これらに限定されない)の乾燥用ポリマー物質であって、芳香族基(例えば、フェニル基)などの基を有する化合物でグラフト化されたポリマーを含み、この基はスルホン化することができる乾燥用ポリマー物質が提供される。かかる基の例としては、スチレンまたはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質はまた、選択的な水(蒸気または液体)輸送を生成するように適合されているいずれかの材料、特にスルホン酸基タイプの基(またはそのいずれかの誘導体もしくは塩)(これらに限定されない)も含んでいてよい。かかる乾燥用ポリマー物質の例はポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)共重合体である。
【0059】
用語「芳香族基」には、いくつかの実施形態によれば、共役のみの安定化によって期待されるであろう安定化よりも強固な安定化を示す不飽和結合、孤立電子対、および/または空の軌道の共役環を含めてもよい。
【0060】
用語「スルホン酸基」には、いくつかの実施形態によれば、スルホン酸残基(−S(=O)2−OH)またはそのいずれかの塩(R−S(=O)2−ONaなど)または誘導体を有するいずれかの基、化合物(アニオンなど)を含めてもよい。
【0061】
用語「フェニル基」(フェニル環または−Phと呼ばれることもある)は、いくつかの実施形態によれば、式−C6H5またはそれらのいずれかの誘導体を有するいずれかの原子の群を含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、用語「フェニル基」には非置換または置換フェニル基を含めてもよい。
【0062】
用語「スチレン」(ビニルベンゼン、シンナメン(cinnamene)、スチロール、エテニルベンゼン、フェネチレン(phenethylene)、フェニルエテン、および他の名称で呼ばれることもある)は化学式C6H5CH=CH2の有機化合物である。
【0063】
用語「ポリマー」は、いくつかの実施形態によれば、典型的には共有化学結合によって互いに連結される繰り返し構造単位から構成されるいずれかの分子を含んでよい。用語「ポリマー」は、いくつかの実施形態によれば、単独重合体(これは1つの単量体種から誘導されるポリマーである)、共重合体(これは2つ(以上)の単量体種から誘導されるポリマーである)またはこれらの組み合わせを含んでもよい。本願明細書で呼ぶところのポリマーは、ポリマーの混合物を含んでいてもよい。本願明細書で呼ぶところのポリマーは、直鎖状ポリマーおよび/1以上のポリマー側鎖を有する単一の主鎖からなる分枝状ポリマーを含んでいてもよい。
【0064】
用語「グラフト化された」または「グラフト化」は、いくつかの実施形態によれば、結合された化合物を含むポリマーまたは共重合体(グラフト化されたポリマー)を生成するために、ポリマーまたは共重合体へと化合物(単量体化合物など)を結合すること(例えば共有結合すること)を含んでもよい。グラフト化されたポリマーの例としては、そのポリマーの主鎖とは異なる組成または配置を有する側鎖でグラフト化されたポリマーを挙げることができる。グラフト化のより具体的な例としては、スチレン単量体がポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)に導入および結合されて、ポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリスチレン(PVDF−g−PS)共重合体が生成されるプロセスを挙げることができる。
【0065】
本願明細書で呼ぶところの共重合体は、交互共重合体、周期共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはいずれかのこれらの組み合わせを含んでよい。
【0066】
用語「乾燥用ポリマー物質」は、いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーを含むいずれかの物質(チューブまたは膜を含むが、これらに限定されない)であって、当該物質はパーベーパレーションを実施するように適合されている、物質を含んでよい。
【0067】
ポリマーの例には、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンおよびその共重合体など)および/またはフッ素重合体、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはhttp://solutions.3m.com/wps/portal/3M/en_US/dyneon_fluoropolymers/Home/Products_and_Solutions/Products/Fluoroplastics/PVDF(これは参照により本願明細書に援用したものとする)に見出されうるフッ素重合体などのいずれかの他のフッ素重合体を含めてよい。
【0068】
PVDFにはPVDF(単独重合体)およびPVDF(共重合体)を含めてよい。PVDF(単独重合体)は1,1−フルオロ−エテンのポリ(フッ化ビニリデン)を含んでもよい。PVDF(単独重合体)の化学構造は−[CF2−CH2]n−(式中、nは1より大きい整数である)である。
【0069】
PVDF(共重合体)は、_[CF2−CH2]x_[CF2−CF(CF3)]y_(式中、xおよびyは独立に整数である)の化学構造を有するHFP(ヘキサフルオロプロピレン)−PVDF共重合体を含んでもよい。
【0070】
グラフト化されるポリマー(PVDFなど)の性質および特性は、乾燥用ポリマー物質の性能および特徴に影響を及ぼす。例えば、ポリマー(スチレン関連化合物、またはいずれかの他の適切な化合物を有するポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)のグラフト化の割合(%)は、そのポリマーの結晶化度によって影響を受ける可能性がある。例えば、より低い結晶化度を有するポリマー(PVDF共重合体など)については、グラフト化は、より高い結晶化度を有するポリマー(PVDF単独重合体など)に比べて、容易に行われる可能性がある。ポリマーのグラフト化(スチレン化とも呼ばれることがあるスチレングラフト化など)の程度は、グラフト化されたポリマーに結合されうるスルホン酸基(またはそのいずれかの誘導体または塩)の量に関連する。そのポリマー中にスチレン化合物が多いほど、より多くのスルホン酸基が結合される可能性がある。本願明細書中で上記したように、このスルホン酸基は、水に対して高い親和性を有し、従って当該乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション特性を決定する(当然、他の因子もまた同様に当該乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション特性に影響を及ぼしうる)。いくつかの実施形態によれば、用語「結晶性の」は、構造的秩序を有する固体、例えばポリマーを指してもよい。構造的秩序は、規則正しい、周期的な様式で配列された分子を含んでよい。結晶性、固体における構造的秩序、は例えば回折手法によって検出されてもよい。材料(ポリマーなど)は、結晶領域および非晶領域(原子/分子の位置の長距離にわたる秩序を示さない固体)を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、用語「結晶化度」は、ポリマー試料中の結晶性の(体積によるかまたは質量による)分率量を指してもよい。「結晶性ポリマー」には、少なくともその一部の領域で結晶性を示すポリマーを含めてもよい。
【0071】
当該乾燥用ポリマー物質の結晶化度およびひいてはグラフト化度、スルホン化およびパーベーパレーション性能を最適化するために、異なる配合物(例えば異なる比の単独重合体/共重合体)が使用されてもよい。単独重合体/共重合体の比はまた、機械的特性および/または押出を受ける能力にも影響を及ぼす場合がある。例えば、約25%単独重合体と75%共重合体とを含む混合物を使用して生成されたポリマー物質は、例えば100%共重合体に比べて、より剛直な構造を有して中程度のグラフト化度能を呈するであろう。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、グラフト化(スチレン化など)温度およびスチレン化継続時間もまた当該乾燥用ポリマー物質の性能および特徴に影響を及ぼす。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、グラフト化(例えばスチレン化)の割合(%)は20〜50%(重量)、例えば、25〜40%(重量)の範囲、より具体的には33%(重量)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、スチレン化(グラフト化)温度は、20℃〜70℃、より具体的には、25℃〜60℃の範囲、例えば25℃、40℃または55℃であってもよい。いくつかの実施形態によれば、スチレン化は、50%〜100%スチレン(例えばメチルベンゼンの中の80%スチレン)への浸漬を含む。
【0074】
ポリマーをグラフト化した後、スルホン化は、そのポリマー物質のパーベーパレーション特性を創出するために行われることになる。
【0075】
この乾燥用ポリマー物質は、「γ」照射などの照射、続くそのPVDF基礎構造の化学処理によるポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)(例えばPVDF単独重合体、共重合体またはその両方)の改質、スチレンのグラフトの組み込み、次いでポリスチレン基のスルホン化を実施するためのスルホン酸基の導入によって製造されてもよい。かかるプロセスの生成物は、ポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)共重合体である。
【0076】
ここで、乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図100を図示する図1を参照する。工程110は、(例えば、粉末、微粒子またはペレットなどの固体形態にある)ポリマーまたはポリマー混合物/配合物、例えば、PVDF単独重合体、共重合体またはこれらの組み合わせ)を入手することを含む。工程120は、ポリマー物質130の所望の構造(例えば、ポリマーチューブまたは膜)を製造するために、例えば押出または成形(射出成形など)によりそのポリマーを加工することを含む。このポリマー配合物およびこのポリマーの加工は、最終的にはポリマー物質130の結晶性のレベルを決定する。工程140は、以下の工程でのグラフト化を容易にするポリマー物質130の活性化を含む。その物質のバルクに影響を及ぼす活性化は、ポリマー物質130(例えば、チューブまたは膜)の照射、または例えば過酸化物を使用する化学的活性化によって行われてもよい。この照射、典型的にはγ線は、次の工程でスチレン基が結合されることになる末端(水素原子の除去によって形成される炭素ラジカル)を形成する。工程150は、スルホン化されるように適合されている基を有する化合物のグラフト化を含む。かかる化合物はスチレンを含む単量体であってもよく、この場合、このスチレンがスルホン化されるように適合されている。当該ポリマーへのスチレン単量体のグラフト化を含むこのプロセスは、スチレン化とも呼ばれてもよい。このスチレン単量体は、工程140で形成された末端に結合する。このスチレン化工程などのグラフト化工程(工程140)は、ポリマー物質130の結晶性のレベルとともにスチレン化のレベルを決定する所定の温度または温度勾配で、および所定の継続時間の間、実施される。この工程はまた、スルホン化されるように適合されている化合物(スチレン単量体など)を重合してポリマー(ポリスチレンなど)を形成することも含む。工程160は、スルホン化されるように適合されている化合物(スチレン基など)をスルホン化して乾燥用ポリマー物質170を生成することを含む。流れ図100は、乾燥用チューブまたは膜を含んでいてもよい乾燥用ポリマー物質170を生成するためのプロセスを示す。流れ図100で分かるように、(例えば押出または成形によって)ポリマーを加工することを含む工程120は、照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程の前に行われる。驚くべきことに、ポリマーを加工する(工程120)前に照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程を実施することは、そのポリマーに付加することができるスチレンおよびスルホン酸基の量を制限することが見出された。換言すれば、スチレン化およびスルホン化が特定のレベルを超えると、加工(例えば、押出)は非常に厄介なものとなり不可能であることも多い。本発明のいくつかの実施形態によれば、(例えば、押出または成形による)ポリマーの加工は、照射(工程140)、スチレン化(工程150)およびスルホン化(工程160)の工程の前に行われる。この順序は、ポリマー中のスチレン/スルホン酸の割合(%)を増加させ、従ってこの乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能を上昇させる可能性がある。ナフィオン(登録商標)などの公知の乾燥用物質は、スチレンスルホン酸がすでに(ペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの共重合体として)テフロン(登録商標)中に存在している後に押出される。これは、(より多くのペルフルオロビニルエーテルスルホネート基が付加するにつれて、ナフィオン(登録商標)は加工するのがより困難になるため)ナフィオン(登録商標)の中に存在することができたはずのスチレン/スルホン酸の量を制限し、従ってそのパーベーパレーション性能を制限する。加えて、ナフィオン(登録商標)の場合には、スチレンスルホン酸が共重合体の中にすでに存在している後に押出を実施すると、より複雑な押出プロセスを生じる。例えば、加工温度は高く(典型的には300℃)、「攻撃的な」ナフィオン(登録商標)化学物質によって引き起こされる損傷を回避するために特別の設備が必要とされる。本願明細書に開示されるポリマー(PVDFなど)の加工は、いくつかの実施形態によれば、容易であり、ナフィオン(登録商標)の加工におけるような特別の条件を必要とはしないことに留意されたい。加えて、PVDFのようなポリマーは、ナフィオン(登録商標)材料とは異なって、基本的なものであり、高価ではない。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマーが加工されて当該ポリマー物質の所望の構造(チューブなど)が成形によって製造されるとき、いくつかの利点が達成されることがある。この成形プロセスは、所望のシステム内での当該乾燥用ポリマー物質の一体化を改善する場合があり、および同時にこの物質の機械的特性をも改善する場合がある。例えば、1つまたは2つのコネクタ、構造支持体および/または強化要素(リブなど)またはいずれかの他の特徴は、乾燥用チューブとともに成形することができる。加えて、成形のプロセスによって、いずれの形状も、例えば呼気採取用のカニューレもこのポリマー化合物から形成することができる。
【0078】
ここで、「グラフト化(高密度)経路」と呼ばれてもよいプロセスにおける乾燥用チューブの製造のプロセス手順(グラフト化手順を含む)の例を説明するスキームを図示する図2を参照する。工程1は、原料としてのPVDFを入手して230℃で、制御されたドローダウン比で押出手順を実施し、PVDFチューブを生成する工程を説明する(当然、例えば膜などのチューブ以外の他の物質も同様にして製造することができる)。工程2では、このPVDFチューブは、不活性雰囲気中で(窒素またはヘリウム下で、など)密閉されて2.5Mrad線量で、低温でγ線によって照射され照射されたPVDF(i−PVDF)チューブが生成される。工程3は、i−PVDFチューブおけるポリスチレンのグラフトの組み込みを記載する。このi−PVDFチューブはスチレン(100%)中、55℃で24時間還流され、トルエン中で8時間ソックスレー(Soxhlet)によって洗浄され、次いで室温(RT)(これはほぼ25℃である)でエタノール中で洗浄され、PVDF−グラフト−ポリスチレン(PVDF−g−PS)チューブが生成される。工程4は、PVDF−g−PSチューブ上でのポリスチレン基のスルホン化を記載する。このPVDF−g−PSチューブは、ジクロロエタン中0.5モル濃度(M)のクロロスルホン酸に、室温で24時間浸漬され、次いで生成物はジクロロエタンおよび蒸留水で2時間洗浄される。この工程は、中和されていないポリ(フッ化ビニリデン)−グラフト−ポリ(スチレンスルホン酸)(PVDF−g−PSSA)チューブをもたらし、次いでこれは工程5で、0.5M KOH中、室温で16時間の加水分解によって中和される。
【0079】
このPVDF−g−PSSAチューブの性能を評価し、それをおよびナフィオン(登録商標)チューブの性能と比較するために、比較検討が行われた。この検討の結果は下記の表1にまとめられている。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明で試験されたチューブについては、内径:1.0±0.1ミリメートル(mm);外径:1.24±0.02mm;長さ50mmであった。
【0082】
表1に示されるように、各種のチューブ(PVDF−g−PSSA、中和された(Naなど)PVDF−g−PSSAおよびナフィオン(登録商標))について以下の5つの因子が評価された:
1)水吸収[%]、
2)漏出[マイクロリットル/分]、
3)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
4)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
5)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0083】
これらの5つの因子は、特定の温度[℃]および相対的な周囲湿度(RH)[%]で試験された。
【0084】
水吸収測定は、チューブを室温の蒸留水中に24時間(または沸騰水中に2時間)浸漬して重量増加[%]をチェックすることにより行われた。その増加が大きいほど、そのチューブはより多くの水を吸収できる。
【0085】
漏出測定は、チューブを差圧計に接続し、そのチューブの中に真空を創出し、経時的に圧力変化をモニターすることにより行われた。結果はマイクロリットル/分に書き換えられ、それは、気体(空気など)がチューブに入るまたはそのチューブから出るのを遮断するチューブの性能を示す。本願明細書で触れたとおり、良好な気体遮断特性を有するチューブは測定のあいだ気体成分の濃度を一定に維持するので、そのようなチューブは好ましい。
【0086】
ΔCO2測定は、膜(チューブ状の膜など)を備える測定装置および備えない測定装置に既知濃度(例えば5%)のCO2を流してその測定におけるCO2濃度を比較することによって行われた。2つのCO2濃度の読取値間(膜ありと膜なしとの間)の差は、そのシステムから漏出または「脱出」したCO2の量を示す。
【0087】
水エバポレーション測定は、閉じたチューブの中に水を閉じ込めて特定の期間の後にそのチューブの重量測定をすることにより行われた。重量の減少は、そのチューブからの水エバポレーションを示す。
【0088】
水蒸気浸透測定は、湿った気体を35℃でチューブに流して(残っている場合は)残存する凝縮された水をトラップに閉じ込めることにより行われた。このトラップの中の水の量は、そのチューブが吸収/パーベーパレーションしなかった水蒸気の量を示す。換言すれば、このトラップの中の水が多いほど、より多くの水蒸気をそのチューブが吸収/パーベーパレーションしなかった。
【0089】
驚くべきことに、(表1にまとめられたとおり)以下のことが見出された。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりも有意に良好な(より高い)水吸収を示す。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりも良好な(高い)水エバポレーション速度を示す。
− PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブと比べてより良好な水蒸気浸透性能を示す(ナフィオン(登録商標)チューブの151[マイクロリットル/時間]とは異なり水蒸気浸透の痕跡はゼロ)。
− 同時に、PVDF−g−PSSAチューブはCO2バリア特性の減退を示さないことが見出された。換言すれば、使用中のチューブからのCO2の喪失は実質的にないことは明らかであり、それゆえ当該PVDF−g−PSSAチューブは、例えば呼気検査におけるCO2分析のために使用することができる。
【0090】
上記の表1から分かるように、(中和型および非中和型の2つの種類の)当該PVDF−g−PSSAチューブはナフィオン(登録商標)チューブよりもより良好な水パーベーパレーション結果を実証する。さらに、漏出試験が、蒸気浸透試験と同時に、連続して1時間ごとに実施された。PVDF−g−PSSAチューブの漏出は、8時間の蒸気試験後でさえもほとんどゼロに留まることが見出された。換言すれば、当該PVDF−g−PSSAチューブは、他の気体成分(CO2など)を同時に維持しながら水パーベーパレーションを促進し、それゆえ信頼性の高い気体(呼気など)分析を可能にする。
【0091】
中和されている(例えば、SO3Naの使用によるなど、Naで中和されている)PVDF−g−PSSAチューブは中和されていないPVDF−g−PSSAチューブよりも良好な水透過性を示すが、これら2つともに気体(例えば、呼気)乾燥用チューブ用途用の十分な性能を示す。他方で、中和されていないPVDF−g−PSSAチューブは、NaPVDF−g−PSSAチューブよりも良好な機械的挙動を呈する。
【0092】
さらに、湿度条件下で、このPVDF−g−PSSAチューブは特定量の水を吸収し、これは、さらにその機械的挙動を改善した(例えば、柔軟性の増加)。より優れた機械的挙動、および両方の種類が蒸気浸透試験において同様の性能を示すという事実を考慮すれば、いくつかの実施形態によれば、中和されていない膜がより好ましいと判明する場合がある。
【0093】
グラフト化度を制御する鍵となるパラメータのうちの1つは結晶化度である。PVDF共重合体がより結晶性であるほど、グラフト化プロセスに関与するスチレン単量体を吸収するその能力は小さい。結晶性の制御は、結晶化感度に関して材料の配合、例えば、単独重合体もしくは共重合体またはそれらの混合物を変えながら、および異なる冷媒、例えば、水、空気、油および媒体温度を用いて冷却速度を変えながら、行うことができる。下記の表2は、共重合体、単独重合体またはそれらの混合物から作製されたPVDF−g−PSSAチューブについての結果(化学反応中およびパーベーパレーション作用の間の寸法安定性を含む)を示す。このスチレン化反応は、55℃でおよび室温(25℃)でも行われた。
【0094】
【表2】
【0095】
表3は、ポリ塩化ビニル(PVC)チューブおよび6種のPVDF−g−PSSAチューブについての実験結果をまとめる:
1)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、
2)スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、
3)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体、
4)スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体、
5)スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体、および
6)ナフィオン(登録商標)。
【0096】
以下の10個の因子が評価された:
1)グラフト化度[%]、
2)水吸収[%]、
3)漏出[マイクロリットル/分]、
4)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
5)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、
6)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]およびPVC測定値からのΔ(差)、
7)化学反応(スチレン化およびスルホン化)に起因する厚さの変化[%]、
8)化学反応(スチレン化およびスルホン化)に起因する直径の変化[%]、
9)パーベーパレーション作用に起因するチューブ厚さの変化[%]、および
10)パーベーパレーション作用に起因するチューブ直径の変化[%]。
【0097】
これらのパラメータは、23℃の温度および50%の相対周囲湿度(RH)で測定された。
【0098】
驚くべきことに、以下のことが見出された:
以下のチューブの水吸収は、ナフィオン(登録商標)の水吸収と同程度であるかまたはナフィオン(登録商標)の水吸収よりも高かった:
スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体ならびにスチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体。
【0099】
以下のチューブの水エバポレーションは、ナフィオン(登録商標)の水エバポレーションと同程度であるかまたはナフィオン(登録商標)の水エバポレーションよりも高かった:
スチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体、スチレン化が25℃で行われたPVDF−g−PSSA共重合体ならびにスチレン化が55℃で行われたPVDF−g−PSSA単独重合体および共重合体。
【0100】
より低いグラフト化温度(例えば25℃)では、55℃で成し遂げられたグラフト化度に比べて、グラフト化度はより低いレベルに到達した(これはより低い量のスルホン酸基をも生じる可能性がある)。なお、より低いグラフト化温度(例えば25℃)でさえも、チューブの性能は水パーベーパレーション目的には許容できるものであり、いくつかの場合の(PVDF−g−PSSA)チューブ(25℃の共重合体)では、性能はナフィオンの性能よりもはるかに良好であった。
【0101】
本発明のさらなる/代替の実施形態によれば、ポリスチレンのグラフト化度をモニターおよび/または制御する方法が本願明細書に提示される。これは、例えば、共重合体と単独重合体との間でPVDF材料の組み合わせを調整し、ポリスチレン前処理(anticipating)およびグラフト化プロセスの継続期間を変更すること(例えば、短くすること)および/または押出(例えば、図2の工程1)におけるチューブ製造の際の冷却手順を変更/最適化することによって達成されてもよい。ここで、反応の温度および結晶化度(%結晶性)がどのようにグラフト化度(%DOG)を制御しうるかを説明するスキームを示す図3を参照する。グラフト化度(%DOG)は、結晶化度(%結晶性)の減少に伴い増加する。温度を上げると、所与の結晶化度(%結晶性)についてはグラフト化度(%DOG)が上昇する。
【0102】
場合および目的に応じて、特定の乾燥用ポリマー物質および製造条件が選択されてよい。本発明のさらなる/代替の実施形態によれば、チューブの長さを決定することにより、PVDF−g−PSSAチューブの性能(例えば、水吸収、水蒸気浸透またはいずれかの他の種類の性能)を制御する方法が本願明細書に提示される。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、このグラフト化は当該ポリマー物質の特定の領域で行われてもよく、その一方で他の領域は(例えば、グラフト化が所望されないポリマー物質の領域(arrear)をブロックすることによるが、これに限定されない)グラフトされないまま留まってもよい。従って、本発明のいくつかの実施形態の範囲のもとに包含されるポリマー物質は、グラフトされた領域(例えば、PSSAでグラフトされ、およびグラフトされていない領域)を備えるポリマー物質を含んでもよい。これは、例えば乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能の制御を可能にする場合があるが、いずれかの他の応用例に使用されてもよい。
【0104】
気体乾燥用チューブの機械的特性
下記の表3は、ナフィオン(登録商標)チューブの機械的特性と比べたPVDF−g−PSSAチューブの機械的特性を示す。
【0105】
下記の表に詳細が示される機械的特性は、25mm/分の引張速度でASTM D638に従ってインストロン(Instron)万能試験機を用いて、チューブ試料に対して実施した引張試験の出力から得た。表の中のすべての値は、比較の目的のために正規化されている。
【0106】
【表3】
【0107】
用語「極限引張強さ」は、いくつかの実施形態によれば、材料が破断または永久的に変形する際の応力(単位面積あたりに与えられる力の平均量)を指してもよい。引張強さはバルク特性であり、従って試験片(チューブなど)のサイズ(長さまたは幅など)には依存しない。この極限引張強さは壁厚に対して正規化されている。
【0108】
用語「ヤング率」は、いくつかの実施形態によれば、弾性(例えば等方性)材料の剛性(加えられた力による変形に対する弾性体の抵抗性)の尺度を指してもよい。このヤング率は壁厚に対して正規化されている。
【0109】
用語「伸び」は、いくつかの実施形態によれば、破断までの歪みの割合(%)を指してもよい。
【0110】
PVDF−g−PSSAチューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べてより靭性があり、剛性がありかつより脆性が低いことが表3から分かる。
【0111】
B)気体乾燥用膜 − 「ブレンド(高密度)経路」
いくつかの実施形態によれば、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含む乾燥用ポリマー物質であって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがスルホン酸基を含み、この物質は流体の極性に依存する流体の透過性を有し、この透過性は極性の増加に伴って増加する乾燥用ポリマー物質が提供される。例えば、このポリマー物質は、CO2(これは実質的に非極性の化合物である)に対してよりも水(これは極性の化合物である)に対して良好な透過性を呈してもよい。
【0112】
用語「不均一相ポリマー」または「不均一相ポリマー組成物」は、連続相またはマトリクス相、およびこのマトリクス相内に分布した分散相である別の相の少なくとも2相の存在を指してもよい。この分散相は、不連続(分散した島など)であってもよいし、または共連続相(分散した島がより大きい島へと合体する場合など)であってもよい。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、用語「共連続相(co−continuous phase)」構造は、両方の相がその材料の少なくとも一部分にわたって実質的に連続的なまま留まるように絡み合う2以上の相を指してもよい。このモルホロジーは、スポンジおよび水の両方が連続系を形成する水に漬けたスポンジのモルホロジーと類似していてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、実質的に不均一相構造(例えば、共連続相構造)を有する2以上のポリマーを含む膜またはチューブなど(これらに限定されない)の乾燥用ポリマー物質であって、この2つ以上のポリマーのうちの少なくとも1つはフェニル基(1つまたは複数個)などの基(1つまたは複数個)を含み、この基(1つまたは複数個)はスルホン化することができる乾燥用ポリマー物質が提供される。かかる基の例としては、スチレンまたはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。かかるポリマーとしては、例えば、ポリスチレン(PS)および/もしくはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体、またはそれらのいずれかの誘導体を挙げることができる。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質はまた、選択的な水(蒸気または液体)輸送をもたらすように適合されているいずれかの物質、特にスルホン酸タイプの物質(これに限定されない)をも含む。かかる乾燥用ポリマー物質の例は、ポリ(フッ化ビニリデン)/ポリスチレンスルホン酸(PVDF/PSSA)およびポリ(フッ化ビニリデン)/スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンスルホン酸(PVDF/SEBS−SA)である。このPVDFの代わりにまたはこのPVDF加えて使用されてもよい他のポリマーとしては、ポリプロピレン−単独重合体(PP−homo)、ポリプロピレン−ランダム共重合体(PP−raco)、中密度ポリエチレン(MDPE)またはいずれかの他の適切なポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、不均一相構造を形成するポリマーのうちの少なくとも1つ(PVDFなど)は作り出す。
【0116】
2つのポリマー間の記号「/」(フォワードスラッシュ)は、その2つのポリマーが不均一相の相構造(共連続相構造など)を形成するように適合されているか、または実質的に不均一相の相構造(共連続相構造など)を形成しているということを示すことに留意されたい。それは、2つのポリマー間の記号「g」(グラフト)とは区別される。記号「g」(グラフト)は、それらのポリマーのうちの一方が他方のポリマーにグラフトされていることを示す。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥用ポリマー物質は、2以上のポリマーおよび/または共重合体を(例えばPVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と)相溶化剤を用いて物理的にブレンドし、次いで(例えば押出により、または射出成形などの成形により)所望の形態(チューブまたは膜など)を形成し、次いで当該乾燥用ポリマー物質を生成するためにスルホン化することによって生成されてもよい。このプロセスは、本願明細書において「ブレンド(高密度)経路」と呼ばれることがある。例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)/ポリスチレンスルホン酸(PVDF/PSSA)チューブは、例えば、
i)独特の相溶化剤を加えて、PVDFをポリスチレン(PS)(またはスチレン共重合体)とともに、実質的に均一なブレンド化合物へと物理的にブレンドすること、
ii)押出によってチューブを生成すること、およ
iii)スルホン化プロセスを適用してPVDF/PSSA乾燥用チューブを生成すること
によって生成されてもよい。
【0118】
次いで、この生成物は洗浄されて、例えば1日乾燥されてもよい。
【0119】
PVDFおよびPSは基本的に非混和性の物質(混合しても均一な溶液を形成しない物質)である。PVDFおよびPSの化合物をスルホン化する試みは失敗であったが、それは恐らくはこの欠点に起因する。驚くべきことに、適切な相溶化剤(ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)など)を加えると、PS共連続相が形成され、スルホン化プロセスが可能になることが見出された。
【0120】
一般に、「ブレンド(高密度)経路」手順は3つの主要工程を含む:
i)相溶化剤を用いて2以上のポリマーおよび/または共重合体を(例えば、PVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と)実質的に均一なブレンド化合物へと混合する工程、
ii)(例えば押出により、または射出成形などの成形により)このポリマー混合物を加工してチューブなどの所望の形態を生成する工程、および
iii)スルホン化プロセスを適用して乾燥用チューブを生成する工程。
【0121】
ここで、乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスを説明する流れ図400を図示する図4を参照する。工程410は、相溶化剤を用いて2以上のポリマーおよび/または共重合体を混合することであって、この2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化できる基(1つまたは複数個)を含むこと(例えば、PVDFをポリスチレン(PS)および/またはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのスチレン共重合体と混合すること)を含む。この混合物は実質的にヘテロ相ポリマー組成物(共連続相構造組成物など)の形態になってもよい。工程420は、例えば押出によりまたは成形(射出成形など)によりこのポリマーを加工して、ポリマー物質430の所望の構造(例えば、ポリマーチューブまたは膜)を生成することを含む。工程460は、スチレン基などのスルホン化できる基をスルホン化して、乾燥用ポリマー物質470を生成することを含む。流れ図400は、乾燥用チューブまたは膜を含めてもよい乾燥用ポリマー物質470を生成するためのプロセスを示す。
【0122】
2種類の化合物が開発された:
(i)PVDF/PS/PMMA−70/20/10(70%PVDF/20%PS/10%PMMA)、
(ii)PVDF/SEBS(KRATON)/MBS(PARALOID相溶化剤)−49/49/2(49%PVDF/49%SEBS/2%MBS)。
【0123】
この2つの化合物(aおよびb)は、本願明細書で言及されるPVDF−g−PSSA共重合体と類似のプロトン交換機能をもたらす、共連続なPS相を有する一部混和性のブレンドとして振舞うことが見出された。これらの化合物は、水蒸気パーベーパレーション特性を成し遂げるために容易にスルホン化される。このスルホン化は、例えば、ジクロロエタン中の0.5Mのクロロスルホン酸によってわずか1時間で行うことができる。
【0124】
化合物aおよびbから作製された膜に対して実施された結果は下記の表4に提示され、(パーベーパレーションチューブの形態へと変換される前の)PVDFおよびPVDF−g−PSSA膜と比較される。PVDF−g−PSSA、70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSの水蒸気透過は、PVDFの水蒸気透過よりも著しく良好である。
【0125】
【表4】
【0126】
上記ブレンドの膜(membrane)(膜(film))の実行可能性が証明された後、70%PVDF/20%PS/10%PMMAブレンドおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSブレンドからチューブが生成された。両方のブレンドは、純粋な共重合体のチューブと同じ条件下で押出機で加工された。
【0127】
下記の表5は、PVDF−g−PSSA、ナフィオン(登録商標)およびPVCチューブの性能と比較した、ブレンドされたチューブ、70%PVDF/20%PS/10%PMMA、49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの性能を示す。
【0128】
【表5】
【0129】
表5に示されるように、各種のチューブ(PVDF−g−PSSA、PVDF/PS/PMMA、PVDF/SEBS/MBS、ナフィオン(登録商標)およびPVCチューブ)について以下の5つの因子を評価した(方法は本願明細書で上述される):
1)水吸収[%]、
2)漏出[マイクロリットル/分]、
3)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
4)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
5)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0130】
これらのパラメータは、23℃の温度および50%の相対的な周囲湿度(RH)で測定された。
【0131】
表5に詳述される結果から、70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの両方の水エバポレーション性能はナフィオン(登録商標)の水エバポレーション性能よりも良好であったことが分かる。70%PVDF/20%PS/10%PMMAおよび49%PVDF/49%SEBS/2%MBSチューブの蒸気浸透、およびΔCO2性能はナフィオン(登録商標)チューブの蒸気浸透、およびΔCO2性能に近かった。
【0132】
ナフィオン(登録商標)の場合、例えば、(テフロン(登録商標)とペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの)共重合体の粘度および加工温度は高い(加工温度は約300℃)ことに留意されたい。これは、当該共重合体に付加することができる官能基(スルホン酸基など)の量を制限する(より多くのスルホン酸基は粘度および加工温度をさらに上昇させるであろう)。本発明のいくつかの実施形態によれば、(図1の工程120および図4の工程420などにおける)加工温度は300℃より著しく低くてもよく、例えば180℃〜230℃の範囲であってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、スルホン化(例えば、工程160および図4の工程460)は加工(例えば、図1の工程120および図4の工程420)後に行われており、従ってスルホン化の量は制限されず、およそ100%に到達できる。
【0133】
ナフィオン(登録商標)の調製に使用される(テフロン(登録商標)とペルフルオロビニルエーテルスルホネートとの)共重合体は、中和されている場合であってさえも、加工設備と(特に金属と)非常に反応性である(攻撃的でさえある)ことにも留意されたい。対照的に、本発明の実施形態に係る乾燥用ポリマー物質を生成するために使用されるポリマーは、加工設備とは実質的に非反応性である。
【0134】
気体乾燥用チューブの機械的特性
下記の表6は、ナフィオン(登録商標)チューブの機械的特性と比較した、PVDF/SEBS/MBSチューブの機械的特性を示す。
【0135】
下記の表に詳細が示される機械的特性は、25mm/分の引張速度でASTM D638に従ってインストロン(Instron)万能試験機を用いて、チューブ試料に対して実施した引張試験の出力から得た。表の中のすべての値は、比較の目的のために正規化されている。
【0136】
【表6】
【0137】
「高密度−ブレンド」チューブの機械的特性はナフィオン(登録商標)のチューブの機械的特性と同じ程度であることが表6から分かる。本願明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、当該チューブの機械的特性は、例えば支持領域、および/または強化要素(リブなど)をチューブと一緒に成形することにより、改善することができる。この支持領域は、チューブを構造的に支持してもよい。
【0138】
C)乾燥用ポリマー物質 − 「多孔性経路」
いくつかの実施形態によれば、本発明は、パーベーパレーションプロセスによる空気およびCO2などのより極性が低い気体からの水などの極性の流体の選択的な除去のために設計された堅牢な、高性能物質(膜またはチューブなど)を提供する。いくつかの実施形態によれば、かかる物質(これらは本願明細書において脱水物質または乾燥用物質と呼ぶことができる)は、所望の選択性および流量を与えるために制御された比で正および負に帯電した官能性の両方を有する架橋共重合体が組み込まれている支持部材、一般に支持体ポリマー部材(支持膜または支持チューブなど)を含む複合膜を備えていてもよい。この電荷を帯びた基の比およびこの支持部材に組み込まれた共重合体の量を変えることによって、流量および選択性は、特定の用途での使用のために制御することができる。
【0139】
用語「膜」および「チューブ」は、交換可能に使用されてもよいことに留意されたい。用語「脱水」および「乾燥する/乾燥用」は交換可能に使用されてもよいことにも留意されたい。
【0140】
用語「架橋」または「架橋された」は、いくつかの実施形態によれば、別個の鎖が発散する点となる分岐点を含んでもよい。
【0141】
気体(空気など)脱水物質を生成するために使用することができる(支持部材としての)支持体ポリマーとして好ましい材料には、ポリスルホン(PSU)およびポリエーテルスルホン(PES)が含まれる。
【0142】
1つの態様では、本発明は、
(a)支持部材であって、この支持部材を通って延在する複数の細孔(またはマイクロチャネル)を有する支持部材と、
(b)(i)カチオン性単量体およびアニオン性単量体ならびに/または(ii)双性イオン単量体を含む架橋共重合体であって、この架橋共重合体は上記支持部材の細孔を充填し、かつ流体の極性に依存する流体の透過性を有し、この透過性は極性の増加に伴って増加する、架橋共重合体と
を備える複合膜を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、用語「アニオン」または「アニオン性」は負に帯電したイオンを指してもよい。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、用語「カチオン」または「カチオン性」は正に帯電したイオンを指してもよい。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、用語「双性イオン」または「双性イオンの」は正電荷および負電荷の両方を同時に有することができる化合物を指してもよい。その化合物の全体の正味の電荷はゼロ(電気的に中性)であってもよい。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態に係る複合膜において、この架橋共重合体は支持部材の細孔を横方向に、すなわち複合膜を通る流れの方向に対して実質的に直交して充填する。「充填する」とは、使用時に、その複合膜を通る実質的にすべての流体がこの架橋共重合体を通らなければならないことを意味する。この条件が満足されるような量の架橋共重合体を細孔が含む支持部材は充填されたと見なされる。その流体がこの架橋共重合体を通過するという条件が満たされるのであれば、この支持部材の空隙容量がその架橋共重合体によって完全に占有されている必要はない。
【0147】
1つの好ましい実施形態では、当該空気脱水膜は、アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート(AMPS)でコーティングされたポリスルホンの中空繊維膜、またはポリビニルアルコールでコーティングされたポリスルホン膜、またはポリビニルアルコールでコーティングされたポリエーテルスルホン(PES)膜であってもよい。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態に従って使用される空気脱水膜は、供給ストリームで見出される酸素および窒素の相対的濃度を著しくは変えないまま、水蒸気の選択的な除去を成し遂げる。
【0149】
当該架橋共重合体は、パーベーパレーション分離におけるこの複合膜の分離機能を提供し、この架橋共重合体は典型的には水などの極性の溶媒の存在下で膨潤する。いくつかの実施形態では、この架橋共重合体はヒドロゲルである。上記支持部材はこの架橋共重合体に機械的強度をもたらし、そしてそれは、この架橋共重合体が膨潤可能であるときにその架橋共重合体の膨潤を遅らせる。
【0150】
好ましくは、当該架橋共重合体は、この支持部材内に繋ぎ止められている。用語「繋ぎ止められた(anchored)」は、この架橋共重合体が支持部材の細孔内に保持されることを意味することが意図されているが、この用語は、当該架橋共重合体が支持部材の細孔に化学的に結合されていることを意味することに必ずしも限定されない。この架橋共重合体は、支持部材に実際に化学的にグラフトされなくとも、その支持部材の構造的要素との網目状の絡み合い(enmeshing)および絡み合い(interwining)により架橋共重合体に課される物理的拘束によって保持されることが可能であるが、いくつかの実施形態では、当該架橋共重合体は上記支持部材の細孔の表面にグラフトされてもよい。
【0151】
用語「カチオン性/アニオン性共重合体」は、本願明細書で使用する場合、カチオン性およびアニオン性単量体を用いて調製される共重合体を指す。カチオン性単量体とは、正電荷またはイオン化されて正電荷を形成することができる基を有する単量体を意味する。同様に、アニオン性単量体とは、負に帯電したかまたはイオン化されて負電荷を形成することができる基を有する単量体を意味する。当該複合膜の性能は、主に、支持部材の細孔内に繋ぎ止められた共重合体の特性によって決定される。共重合体中のアニオン性部位およびカチオン性部位の両方の存在は、その共重合体内の分子内相互作用の増加につながり、その共重合体が極性の流体の存在下で膨潤するとき、よりこじんまりした共重合体構造につながる。このこじんまりした性質は、複合膜の選択性を高めるのに役立つ。なぜなら、それは、流体が通らなければならないより高密度の共重合体構造をもたらすからである。この複合膜の選択性はまた、支持部材の存在によって増強される。なぜなら、機械的強度をもたらす以外に、この支持部材はまた繋ぎ止められた共重合体の膨潤を制限し、これが共重合体の密度を再び高めるからである。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態に従って使用されるアニオン性単量体は好ましくは水溶性であるが、水に対してわずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さないアニオン性単量体を使用することはできる。好ましいアニオン性単量体は、不飽和カルボン酸またはその塩もしくは無水物、および不飽和スルホン酸またはその塩もしくは無水物を含む。不飽和アニオン性単量体は1つ、または複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0153】
適切なアニオン性単量体の例としては、スルホン酸またはその塩などのスルホン酸基を含むアニオン、例えば2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−プロペン−1−スルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸を挙げることができる。(スルホン酸基を含むアニオンと一緒に使用されてもよいし、使用されなくてもよい)アニオン性単量体の他の例としては、アクリル酸、2−アセトアミドアクリル酸、trans−3−ベンゾイルアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、3−クロロアクリル酸、trans−3−(4−クロロベンゾイル)アクリル酸、2,3−ジクロロアクリル酸、3,3−ジクロロアクリル酸、3,3−ジメチルアクリル酸、フリルアクリル酸、メタクリル酸、2−フェニルアクリル酸、trans−3−(3−ピリジル)アクリル酸、トリクロロアクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸、プロピン酸(プロピオール酸)、フェニルプロピン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3−ブロモ−2−ブテン酸、2−クロロ−2−ブテン酸、3−クロロ−2−ブテン酸、2,3−ジブロモ−4−オキソ−2−ブテン酸、2,3−ジクロロ−4−オキソ−2−ブテン酸、2,3−ジメチル−2−ブテン酸、2−エチル−2−ブテン酸、trans−2−メチル−2−ブテン酸(チグリン酸)、cis−2−メチル−2−ブテン酸(アンゲリカ酸)、4−オキソ−4−フェニル−2−ブテン酸、2−フェニル−2−ブテン酸、4,4,4−トリフルオロ−3−メチル−2−ブテン酸、3−ブテン酸、2−ヒドロキシ−4−フェニル−3−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−ブチン酸(テトロル酸)、2−ペンテン酸、4−ヒドロキシ−2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸(trans)、4−ヒドロキシ−3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2,2−ジメチル−4−ペンテン酸、3−メチル−4−ペンテン酸、2,4−ペンタジエン酸、2−ペンチン酸、4−ペンチン酸、2−ヘキセン酸、2−エチル−2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、2−アセチル−5−ヒドロキシ−3−オキソ−4−ヘキセン酸(デヒドロ酢酸)、5−ヘキセン酸、2,4−ヘキサジエン酸(ソルビン酸)、1−ヘキセン−1−イルボロン酸、5−ヘキシン酸、シキミ酸、6−ヘプテン酸、2,6−ヘプタジエン酸、6−ヘプチン酸、2−オクテン酸、trans−1−オクテン−1−イルボロン酸、フマル酸、ブロモ−フマル酸、クロロ−フマル酸、ジヒドロキシフマル酸、ジメチルフマル酸(dimethylfumic acid)、フマル酸モノエチルエステル、メサコン酸、マレイン酸、ブロモマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、ジブロモマレイン酸、マレアミド酸、シトラコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン二酸、イタコン酸、ムコン酸、ムコブロム酸、ムコクロロ酸、アセチレンジカルボン酸、スチリル酢酸、3−ブテン−1,1−ジカルボン酸、アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、2−アクリルアミドグルコール酸、メタクリル酸2−スルホエチル、アクリル酸3−スルホプロピル、メタクリル酸3−スルホプロピル、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、tran−2−(4−クロロフェニル)ビニルボロン酸、tran−2−(4−フルオロフェニル)ビニルボロン酸、tran−2−(4−メチルフェニル)ビニルボロン酸、2−ビニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、ケイ皮酸、α−アセトアミドケイ皮酸、α−ブロモケイ皮酸、2−ブロモケイ皮酸、3−ブロモケイ皮酸、4−ブロモケイ皮酸、3−ブロモ−4−フルオロケイ皮酸、4−ブロモ−2−フルオロケイ皮酸、5−ブロモ−2−フルオロケイ皮酸、2−カルボキシケイ皮酸、2−クロロケイ皮酸、3−クロロケイ皮酸(cis)、4−クロロケイ皮酸(trans)、4−クロロ−2−フルオロケイ皮酸、trans−2−クロロ−6−フルオロケイ皮酸、trans−2,4−ジクロロケイ皮酸、3,4−ジクロロケイ皮酸、trans−2,4−ジフルオロケイ皮酸、trans−2,5−ジフルオロケイ皮酸、trans−2,6−ジフルオロケイ皮酸、trans−3,4−ジフルオロケイ皮酸、trans−3,5−ジフルオロケイ皮酸、2,3−ジメトキシケイ皮酸、2,4−ジメトキシケイ皮酸、2,5−ジメトキシケイ皮酸、3,4−ジメトキシケイ皮酸、3,5−ジメトキシケイ皮酸(trans)、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシケイ皮酸、4,5−ジメトキシ−2−ニトロケイ皮酸、α−エチル−cis−ケイ皮酸、α−フルオロケイ皮酸、2−フルオロケイ皮酸、trans−3−フルオロケイ皮酸、4−フルオロケイ皮酸、4−ホルミルケイ皮酸、2−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシケイ皮酸、4−ヒドロキシケイ皮酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ−trans−ケイ皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ−trans−ケイ皮酸、4−イソプロピル−trans−ケイ皮酸、2−メトキシケイ皮酸、3−メトキシケイ皮酸(trans)、4−メトキシケイ皮酸(trans)、α−メチルケイ皮酸、3,4−(メチレンジオキシ)ケイ皮酸、4−メチル−3−ニトロケイ皮酸、α−メチル−3−ニトロケイ皮酸、α−メチル−4−ニトロケイ皮酸、2−ニトロケイ皮酸、3−ニトロケイ皮酸(trans)、4−ニトロケイ皮酸(trans)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロケイ皮酸、2−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、3−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、trans−4−(トリフルオロメチル)ケイ皮酸、2,3,4−トリフルオロケイ皮酸、3,4,5−トリフルオロケイ皮酸、3,4,5−トリメトキシケイ皮酸(trans)、2,4,6−トリメチルケイ皮酸(cis)、およびそれらの対応する無水物または塩を挙げることができる。
【0154】
カチオン性単量体もまた、好ましくは水溶性であるが、わずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さないカチオン性単量体を使用することもできる。カチオン性単量体は、正に帯電していてもよいし、またはそれらは水の中で一部プロトン化されてアンモニウム基を形成する基(アミンなど)を有することができる。好ましいカチオン性単量体としては、不飽和アミンおよび不飽和アンモニウム塩が挙げられる。不飽和カチオン性単量体は1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0155】
適切なカチオン性単量体の例としては、アンモニウム基(NH4+)を有するカチオン(またはその塩もしくは誘導体)、例えば4−ビニルアニリン、3−(アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、(2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩、[3−(メタクリルアミド)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、塩化プロパルギルアミン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩を挙げることができる。カチオン性単量体(アンモニウム基を有するカチオンと一緒に使用されてもよいし、使用されなくてもよい)の他の例としては、アリルアミン、N−アリルアニリン、アリルシクロヘキシルアミン、アリルシクロペンチルアミン、アリルメチルアミン、N−アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−tert−アミル−1,1−ジメチルアリルアミン、N−tert−アミル−1,1−ジメチルプロパルギルアミン、ジアリルアミン、3,3’−ジアリル−オキシ−ジイソプロパノールアミン、1,1−ジエチルプロパルギルアミン、N−エチル−2−メチルアリルアミン、3−エチニルアニリン、4−エチルアニリン、1−エチニルシクロヘキシルアミン、ゲラニルアミン、N−メチルアリルアミン、プロパルギルアミン(propargyamine)、ビニルアミン、(2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム塩、メタクリル酸2−アミノエチル塩酸塩、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルジメチル塩、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチル塩、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルジメチル塩、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチル塩、エチル−3−アミノ−3−エトキシアクリレート塩酸塩、4−エチニルピリジン塩酸塩、およびN−2−ビニル−ピロリジノンを挙げることができる。
【0156】
架橋共重合体中のカチオン性単量体に対するアニオン性単量体のモル比は、好ましくは95:5〜5:95の範囲、より好ましくは1:9〜1:1の範囲にあり、カチオン性単量体に対するアニオン性単量体の比は1:9〜1:3の範囲が特に好ましい。カチオン性単量体に対するアニオン性単量体のモル比を変えることによって、この複合膜の性能を変えることができる。
【0157】
この共重合体のアニオン性/カチオン性はまた、架橋共重合体を形成するための双性イオン単量体を使用することによっても得ることができる。この双性イオン単量体は、アニオン性およびカチオン性基の両方を有することができ、またはそれらはイオン化して負電荷および正電荷を形成することができる基を有することができる。好ましい双性イオン単量体としては、不飽和双性イオンまたは双性イオンへと容易に変換することができるその前駆体が挙げられる。不飽和双性イオン単量体は、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含んでいてもよい。
【0158】
適切な双性イオン単量体の例としては、4−イミダゾールアクリル酸、4−アミノケイ皮酸塩酸塩、4−(ジメチルアミノ)ケイ皮酸、水酸化1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウム分子内塩、3−スルホプロピルジメチル−3−メタクリルアミドプロピルアンモニウム分子内塩、および5−アミノ−1,3−シクロヘキサジエン−1−カルボン酸塩酸塩が挙げられる。双性イオン単量体はまた、アニオン性単量体と一緒に、カチオン性単量体と一緒に、または両方と一緒に使用することもできる。
【0159】
電荷を帯びた架橋共重合体の導入を容易にするために、および極性の流体の通過を容易にするために支持部材は親水性であることが好ましいが、疎水性の支持部材もまた、界面活性剤、または水および支持部材を濡らす有機溶媒を含む混合溶媒が利用される場合など、特定の状況において利用することができる。親水性支持部材を生成するためのさらなる親水性化に適した材料としては、例えば、酢酸セルロース(CA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ナイロン6、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL)およびポリ(アクリロニトリル)(PAN)が挙げられる。疎水性の支持部材を作製するのに適した材料としては、例えばポリプロピレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)およびポリ(塩化ビニル)(PVC)が挙げられる。
【0160】
この支持部材の平均細孔径は、広い範囲で変わることができる。いくつかの実施形態によれば、平均細孔径は、約0.001〜約20ミクロン、例えば、約0.002〜約5ミクロンおよび特に約0.005〜約1ミクロンの範囲であってもよい。支持部材の多孔性は細孔容積(空隙容量とも呼ばれる)の尺度であるが、この支持部材の多孔性は、いくつかの実施形態によれば、約25〜約95%、例えば、約45〜約85%、特に約0.60〜約80%の範囲であってもよい。25%未満の多孔性を有する支持部材を用いて調製された複合膜は低流量を有する場合があり、他方、95%よりも高い多孔性を有する支持部材は、通常、共重合体を繋ぎとめるための十分な機械的強度を与えない。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、使用される支持部材は、対称性の多孔性膜または非対称の多孔性膜のいずれかであってもよい。精密濾過膜は非対称の多孔性膜として適しており、それらは好ましくは約10〜300ミクロン、より好ましくは約20〜150ミクロン、特に50〜120ミクロンの厚さを有する。支持部材がより薄いほど、流量はより高い。
【0162】
この非対称の支持部材は、通常は、より小さい細孔を有する高密度の層がより大きい細孔を有する裏打ち層上に支持された多層性を有する。限外濾過膜は非対称の支持部材として使用するのに適している。これらの支持部材は「層」を有するとして記載されているが、それらは、単一のポリマーの単一の連続相のみを含む。これらの層は、異なる物理特性を有するが同じ化学的特徴を有する領域を表す。この非対称の膜は、機械的強化材料として作用する不織材料(例えばポリエステル)をも含むことができる。非対称の支持部材については、十分な機械的な剛性(rigidity)が保持される限り、各層の厚さは重要でない場合がある。それゆえ、非対称の複合膜では、この支持部材の空隙容量は、架橋共重合体によって完全に占有されていなくてもよい。本発明のいくつかの実施形態に係る複合膜が非対称の支持部材を用いて調製される場合、高密度層の厚さがその膜の流量を決定する。支持部材として限外濾過膜を使用して得られる複合膜などの非対称的に充填された複合膜は、より高い流量を有するパーベーパレーション膜を導くことが観察されている。
【0163】
非対称の複合膜は、支持部材の細孔を架橋共重合体で非対称的に充填することによって、非対称の支持部材を用いても調製することができる。かかる非対称の複合膜は、支持部材の1つの側で架橋反応を開始し、これにより支持部材の厚さにわたって架橋共重合体の不均一な分布を得ることによって調製することができる。
【0164】
支持部材内での架橋共重合体の生成
支持部材(複合膜)内での架橋共重合体の生成は、本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の工程を含んでもよい:
i)多孔性支持部材の調製、
ii)表面活性化、
iii)多孔性支持部材への単量体溶液の含浸、
iv)この単量体のグラフト共重合、および
v)架橋。
【0165】
a)多孔性支持部材の調製
高分子支持部材は、当該技術分野で公知のいずれの方法によって生成されてもよい。この高分子支持部材の細孔に存在する水溶性のポリマーを抽出(除去)するためにおよび所望の多孔性支持部材を生成するために、得られた高分子支持部材を水または水溶液で洗浄することが行われる。従って、この洗浄または抽出工程は、細孔を望ましくない不純物(単独重合体など)から清浄にする。
【0166】
界面活性剤型の化学物質(いずれかの商業的に知られた化学界面活性剤、例えば、トリトン(Triton)、テトロニック(Tetronic)、プルロニック(Pluronic)、およびソフタノール(Softanol))もまた、より良好に細孔を清浄にするために使用されてもよい。他の界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)などの低分子量界面活性剤が使用されてもよい。他の従来から使用される処理材料もまた、より効率よく細孔を清浄化するために使用されてもよく、かかる材料には、イソプロパノール(IPA)およびエタノールなどの低分子量アルコール、およびフレオン(Freon)(塩素化炭化水素)などの溶媒を含めてもよい。いくつかの実施形態によれば、この多孔性支持部材は、当該目的のために製造されてもよいし、または市販のものであってもよい。
【0167】
b)表面活性化
多孔性支持部材を生成した後、表面活性化の工程が必要とされる場合がある。この表面活性化工程は、支持部材の表面および/または多孔性支持部材の細孔の表面に影響を及ぼす。この表面活性化は、多孔性支持部材の細孔(より正確に言えば、細孔の表面)への極性の単量体(後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体/双性イオンなど)の付着(adhesion)を容易にするように適合されている。この工程は、多孔性支持部材が疎水性の場合(PESなど)は、特に必要とされる。いくつかの実施形態によれば、この表面活性化工程は酸化を含み、(上記単量体に結合することができる)カルボニル基をそのポリマー多孔性支持部材に導入するように適合されている。
【0168】
疎水性の多孔性支持部材(PESなど)が使用される場合、この表面活性化工程は、極性の単量体の付着を増加させるための、多孔性支持部材の親水性化(または「湿潤化(wetting)」)と呼ばれることがある。親水性化は、酸化によって行われてもよい。酸化は、過硫酸アンモニウム、またはいずれかの他の酸化剤などのいずれかの適切な試薬によって成し遂げられてもよい。他の酸化方法としては、オゾン処理、紫外光照射、コロナ放電、高電圧放電、プラズマ処理またはいずれかの他の方法を挙げることができる。
【0169】
界面活性剤(本願明細書で言及される界面活性剤など)も、結果を改善するために親水性化工程で使用されてもよい。
【0170】
c)多孔性支持部材への単量体溶液の含浸
多孔性支持部材を表面活性化した後、多孔性支持部材への単量体溶液の含浸の工程が行われる。この工程は、この多孔性支持部材に、後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体を含む溶液/双性イオン溶液を物理的に導入することを含む。この溶液は、予め重合された(pre−polymerized)ポリマー前駆体溶液と呼ばれることがある。この溶液はまた、電解質ポリマー、重合開始剤、架橋剤またはいずれかの他の適切な添加剤を含んでいてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態によれば、含浸を容易にするために超音波エネルギーが印加されてもよい。
【0172】
温度および/または時間などの含浸工程のための条件は、処理しようとする多孔性支持部材の形態または形状を考慮して選択される。
【0173】
多孔性支持部材がチューブ(中空繊維)である場合には、蠕動ポンプなどのポンプを使用してチューブの中へおよび細孔の中へと当該溶液を「押し込む」ことによって、この含浸工程が成し遂げられてもよい。細孔への含浸剤の浸透を容易にする別の方法は、含浸を行う前にチューブを数センチメートルの長さに切断することである。
【0174】
d)単量体のグラフト共重合
カチオンおよびアニオン単量体/双性イオン(およびいずれかの他の必要とされる添加剤)を含む溶液が多孔性支持部材に物理的に導入されると、グラフト共重合の工程が行われる。この工程は、多孔性支持部材へのその単量体の化学結合の形成、およびその単量体を共重合して共重合体を生成することを含む。この共重合体は支持膜の細孔内の適所に化学結合され繋ぎ止められる。
【0175】
例えば、PES多孔性部材の化学的グラフト化は、PES多孔性部材を表面活性化すること、単量体を反応性部位に付着させて(attaching)次いで(または同時に)重合させることからなるプロセスとして記載することができ、これによりポリマーの枝が形成されてそれらが主鎖のPESポリマーに結合されるようになる。化学的グラフト化は、PESのヒドロキシル基からの水素原子の引き抜きによって行われてもよい。PESは、グラフト開始剤の存在下で表面活性化されてフリーラジカルを生成することができる活性のある不安定な水素原子を有する。このようにしてこのプロセスで生成されるフリーラジカルはグラフト共重合を開始する。多孔性部材のグラフト共重合に関与する一連の反応工程は、以下のとおりであってもよい:グラフト開始剤イオンが作用を開始し、全プロセスは自己触媒プロセスのように振舞う。それゆえ、少量のグラフト開始剤イオン(10〜100ppmなど)が、グラフト共重合のプロセスを実施するのに十分である場合がある。上記の反応は過酸化物の存在下で行われてもよい。この過酸化物は、同時にグラフト開始剤を再生しフリーラジカルを生成する。
【0176】
このグラフト開始剤は、Fe3+、Fe2+、Ag+、Co2+またはCu2+などの金属イオン系からなっていてもよい。上記過酸化物は、過酸化水素、過酸化尿素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの水溶性の触媒から選択されてもよい。この単量体およびプレポリマーは側鎖官能基を有し、この側鎖官能基はそれらどうしでおよび当該配合物に含まれるさらなるプレポリマーと反応して、グラフト共重合体を形成してもよい。
【0177】
共重合の開始は、エマルション重合にとって慣用的な水溶性のレドックス開始剤の組み合わせを用いて行われてもよい。
【0178】
レドックス開始剤は、上記の過酸化物と、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、および/またはアスコルビン酸などの還元剤との組み合わせによって形成されてもよい。例えば、重合は、過硫酸アンモニウムまたは過硫酸アンモニウム/亜硫酸ナトリウムレドックス開始を使用して水系エマルション中で行われてもよい。
【0179】
熱またはUVベースの重合系、「リビング」または制御重合(controlled polymerization)、段階成長重合(step growth polymerization)、連鎖成長重合(chain−growth polymerization)またはいずれかのこれらの組み合わせ、またはいずれかの他の重合系などの、他のまたはさらなる重合系が適用されてもよい。
【0180】
一般的に知られた共重合のための調整剤(regulator)、例えばアミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミンまたはトリブチルアミン)、ハロゲン化合物(例えば、クロロホルム、四塩化炭素または四臭化炭素)、メルカプタン(例えば、1−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ドデカンチオール、エチルジスルフィド、フェニルジスルフィドまたはブチルジスルフィド)、アルコール(例えば、エタノール、n−/iso−プロパノールまたはn−/iso−/tert−ブタノール)、メルカプトシランまたは硫黄シラン)を使用することも可能である。
【0181】
粘度を低下させるために、例えば芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなど)、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブなど)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなど)などの溶媒を使用することが可能である。この溶媒は、ラジカル重合の過程の中で加えることができる。分枝状のアルコールラジカルを有するエステルは、低下した溶液粘度を有するポリマーを与える。
【0182】
e)架橋
架橋の機能は架橋共重合体の柔軟性を制御および調節することである。いくつかの実施形態によれば、共重合体の架橋はその共重合体を固くし(例えば、共重合体を液体からゲル形態に変換する)、共重合体が細孔から外へ漏出するのを防ぐ。支持部材内での共重合体の架橋は、共重合の後または共重合の間に行われてもよい。使用される架橋剤は、非常に反応性であり、低い揮発性を有しかつカチオン性/アニオン性共重合体との三次元的な架橋構造を形成するための少なくとも2つの不飽和基を有してもよい。
【0183】
水溶性の架橋剤が好ましいが、水に対してわずかな溶解性を示すかまたは溶解性を示さない架橋剤も使用することができる。適切な架橋剤の例としては、メタクリル酸3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル、アリルジグリコールカーボネート、リン酸ビス(2−メタクリルオキシエチル)、2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、メタクリル酸シンナミル、アクリル酸2−シンナモイルオキシエチル、trans−1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、N,N’−ジアリルアクリルアミド、ジアリルカーボネート、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、ピロ炭酸ジアリル、コハク酸ジアリル、1,3−ジアリル尿素、1,4−ジアクリロイルピペラジン、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、2,2−ジメチルプロパンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジビニルグリコール、セバシン酸ジビニル、ジビニルベンゼン、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−フェニレンジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、シアヌル酸トリアリル、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパンジアリルエーテル、1,1,1−トリメチロールプロパントリアクリレート、および1,1,1−トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
【0184】
架橋剤の量は、単量体の総モル量基準で、0.1%〜25%、例えば、0.5%〜20%、特に1.0%〜15%であってもよい。
【0185】
ここで、いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質の製造の一般的プロセスをまとめる流れ図500を示す図5を参照する。工程510は、多孔性ポリマー物質(多孔性支持部材)、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)多孔性チューブを入手することを含む。高分子支持部材は、当該技術分野で公知のいずれの方法によって製造されてもよい。この工程は、この高分子支持部材の細孔に存在する水溶性のポリマーを抽出(除去)するためにおよび所望の多孔性支持部材を生成するために行われる、得られた高分子支持部材を水または水溶液で洗浄することを含んでいてもよい。工程520は、支持部材および/または多孔性支持部材の細孔の表面の表面活性化を含む。この表面活性化は、多孔性支持部材の細孔(より正確に言えば、細孔の表面)への極性の単量体(後で重合および架橋されて共重合体細孔「充填剤」を形成するカチオンおよびアニオン単量体/双性イオンなど)の付着(adhesion)を容易にするように適合されている。工程530は、(i)カチオン性単量体およびアニオン性単量体、(ii)双性イオン単量体、または(i)および(ii)の組み合わせを含む溶液の、多孔性支持部材への含浸(導入)を含む。この工程はまた、例えば、コーティング方法論および/または含浸手法によって行われてもよい。工程540は、上記アニオン性単量体およびカチオン性単量体ならびに/または双性イオン単量体のグラフト共重合を含む。工程550は、支持部材の細孔を少なくとも部分的に充填する架橋共重合体を形成するために架橋して、水パーベーパレーション特性を呈するように適合されている最終の乾燥用ポリマー物質560(複合膜/タブ)を生成することを含む。
【実施例】
【0186】
本発明を例証するために、以下の実施例を提供する。しかしながら、各実施例で与えられる特定の細部は、例証の目的で選択されており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないということを理解されたい。一般に、実験は、特記しない限り同様の条件下で行った。
【0187】
以下の特定の実施例では、支持部材は、ハイドラノーティクス社(Hydranautics Corporation)から入手した。
【0188】
この中空繊維(支持部材)は市販されており、HYDRACAPの商標で販売されている。
【0189】
この中空繊維は、水精製プロセス用に使用されており、ハイドラノーティクス社のUF(限外濾過)膜として分類される。この繊維は、ポリエーテルスルホン(PES)、名目MWCO、150,000ダルトンから作られている。この中空繊維は1.2mmの外径を有する。これらの実施例で使用する中空繊維は多孔性かつ疎水性であり、実質的に酸素と窒素との間の選択性は有しない。
【0190】
(グラフト共重合のために使用する材料)
スルホン酸部位を含むアニオン性単量体:
【表7】
【0191】
共重合のためのアンモニウム部位を含むカチオン性単量体:
【表8】
【0192】
多価不飽和の架橋性単量体
【表9】
【0193】
フリーラジカル開始剤(過酸化物)としては、無機過硫酸塩、過酸化物、およびレドックス(APS+NaBS)が挙げられる。
【表10】
【0194】
フリーラジカル開始剤としては、有機ヒドロペルオキシドおよび過酸化物;アゾが挙げられる。
【表11】
【0195】
触媒−界面活性剤SO3H部分:
【表12】
【0196】
モノ不飽和シラン
【表13】
【0197】
ポリ官能性架橋性シラン
【表14】
【0198】
(実施例1)
PES繊維の表面を、溶液中の5%エタノールを使用して、室温で30分間洗浄した。
【0199】
この多孔性支持部材の親水性化(活性化)を、過硫酸アンモニウム0.1%を使用して行った。
【0200】
上記の処理を経た後、得られた膜を常温まで冷却し、酸化剤の残留物を除去するために水で約10〜約20分間洗浄し、次いで約70℃で約40分間乾燥した。
【0201】
カチオン性単量体から調製した含浸工程用の溶液は塩化[2−(メタクリルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(MAETAC)であり、アニオン性単量体は2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のナトリウム塩、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)であった。これらのモル比は1000:800:75であった。
【0202】
過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウムをレドックス開始剤として使用し、Luperox Pをラジカル共重合開始剤として使用し、そのモル比は単量体の総量基準で0.75:0.04:7.5であった。
【0203】
上記の化学物質を混合し、それらを50%単量体濃度まで希釈し、この混合物を、すべての固体が水に溶解するまで0.5〜2時間撹拌した。この単量体混合物は、一回に少しずつまたは連続的に加えることができる。これにより、熱の発生を制御することができる。
【0204】
濾過してあらゆる溶解しなかった固体を濾紙により除去した後、この混合物は膜を調製する準備が整った。この溶液中の単量体の濃度は60重量%であった。
【0205】
上記多孔性膜は、このあと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ラジカル重合開始剤、イソプロピルアルコールおよび水を含むポリマー前駆体溶液に浸漬し(含浸し)、このようにしてこの膜に当該溶液を充填した(含浸させた)。
【0206】
このあと、この多孔性基材をその溶液から引き上げた。中空繊維の浸漬および過剰の溶液の除去後、この膜を、共重合反応が終わるまで80℃のオーブンの中に0.5〜1時間入れた(グラフト共重合)。90〜110℃で架橋を行った。
【0207】
(実施例2)
実施例2は、管路の表面活性化のための方法を例証する。適切な液体を用いてPES繊維の表面を洗浄して、いくらかの不純物を除去した。
【0208】
疎水性のPES膜には、含浸工程として水/アルコール溶液を10分間置くことによって作製した持続的な親水性表面が提供される。5%エタノール溶液を使用して、この膜を室温で30分間洗浄した。
【0209】
この多孔性の疎水性PES膜を入手すると、これを、以下のようにして親水性化した。
【0210】
疎水性のPES膜の試料(約6cm長さ)をイソプロピルアルコール(IPA)で予め湿らせ、脱イオン水で洗浄した。
【0211】
膜を酸化剤(過硫酸アンモニウム)の水溶液の中に浸漬した。過硫酸アンモニウム(APS)の濃度は約0.1〜3%であった。この溶液を常温から約90〜95℃まで約15分間加熱した。上記の処理を経た後、得られた膜を常温まで冷却し、酸化剤の残留物を除去するために水で約10〜約20分間洗浄し、次いで約70℃で約40分間乾燥した。含浸溶液を実施例1のように調製し、含浸、グラフト共重合および架橋の工程も実施例1のように行った。
【0212】
(実施例3)
ここで、いくつかの実施形態に係る乾燥用チューブの製造のプロセス手順の一例を説明するスキームを示す図6を参照する。工程1は、ポリマー多孔性チューブ、この場合はPES多孔性チューブを入手して、それを、スルホン酸部分を有する化合物を多孔性ポリマーチューブの基礎構造へと導入するために別の物質でコーティングすることを含む。この場合、コーティングは、PES多孔性チューブをアクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート(AMPS)の溶液の中に10分間浸漬し、AMPSでコーティングおよび充填されたPESチューブを生成することによって行われる。工程2では、過硫酸カリウムまたは過酸化物を50℃で1時間使用することによって、AMPSでコーティングおよび充填されたPESチューブを表面活性化し、重合したAMPSを有するPESチューブを生成する。工程3では、重合したAMPSを有するPESチューブを80℃で1時間架橋し、洗浄し、乾燥してPES−g−AMPS架橋膜チューブを得る。
【0213】
(実施例4)
下記の表7は、ナフィオン(登録商標)チューブの性能と比較して、本発明のいくつかの実施形態に係る多孔性経路チューブの性能を示す。第1の例は、表面活性化用アルコール溶液中の0.1重量%の過硫酸アンモニウム酸化剤で前処理したPES多孔性中空繊維チューブを指し、第2の例は、表面活性化用アルコール溶液の1.0重量%の過硫酸アンモニウム酸化剤で前処理したPES多孔性中空繊維チューブを指す。
【0214】
【表15】
【0215】
蒸気浸透試験では、漏出試験を1時間ごとに行った。新しいPES膜は、4時間の試験手順の間、安定した空気漏出挙動を示した。
【0216】
表8に示すように、第1および第2の例の多孔性経路チューブの各々について以下の4つの因子を評価し、ナフィオン(登録商標)チューブと比較した:
1)漏出[マイクロリットル/分]、
2)ΔCO2(二酸化炭素の変化)、
3)水エバポレーション[マイクロリットル/時間]、および
4)水蒸気浸透[マイクロリットル/時間]。
【0217】
これらの4つの因子を、特定の温度[℃]および相対的な周囲湿度(RH)[%]で試験した。
【0218】
驚くべきことに、第1および第2の例の多孔性経路チューブの水エバポレーション性能は、ナフィオン(登録商標)の水エバポレーション性能よりも高いことが見出された。
【0219】
以下は、本発明で使用した脱水膜の作用の根底にあると考えられる物理的メカニズムの考察である。しかしながら、本発明が以下の説明によって限定されるとは見なされるべきではない。
【0220】
空気および水蒸気は、3つの異なる手段によって、いくつかの実施形態に係る本発明で使用した脱水膜を通過すると考えられる。
【0221】
水蒸気浸透について、関連するメカニズムは、
1)高密度のポリマーを通る透過、
2)細孔を通る粘性の高い流れ、および
3)非常に微細な細孔を通るクヌーセン流れ、
であるかも知れない。
【0222】
高密度のポリマーを通る透過は、水蒸気浸透についての支配的因子であると考えられる。
【0223】
いくつかの実施形態に係る乾燥用ポリマー物質(チューブなど)は、多孔性ポリマーチューブを入手し、所望の長さ(例えば、50mm)を有するチューブへと切断し、そしてこの切断した多孔性ポリマーチューブに、スルホン酸部分を有する化合物を導入することによって(工程520においてなど)調製されてもよい。このあとに、重合(工程520においてなど)および架橋(工程520においてなど)が続いてもよい。
【0224】
乾燥用ポリマー物質(チューブなど)は、代替のまたはさらなる実施形態によれば、多孔性ポリマーチューブを入手し、そのチューブにスルホン酸部分を有する化合物を導入し(工程520においてなど)、重合し(工程520においてなど)および架橋する(工程520においてなど)ことによって調製されてもよい。次いでこのチューブは、所望の長さ(例えば、50mm)を有するチューブへと切断されてもよい。この行為の順序は比較的長いチューブの処理を伴うため、チューブへの溶液(および/または例えばそれらを除去するための空気)の浸透を容易にし、従って作り上げられた内部コーティングの均一性を改善するために、ポンプ(蠕動ポンプなど)を使用する必要がある場合がある。
【0225】
いくつかの実施形態によれば、上記処理の一部(例えば、スルホン酸部分を有する化合物の導入)は、予備切断されたチューブに対して行われてもよく、上記処理の別の部分(例えば、重合および架橋)は切断されたチューブに対して行われてもよい。
【0226】
いくつかの実施形態によれば、当該ポリマー物質は、この物質の機械的特性をも改良しつつ、パーベーパレーションを改良することを可能にするようにして形成されてもよい。改良されたポリマー物質およびその製造方法の例は、以下の段落に記載される。
【0227】
いくつかの実施形態によれば、当該多孔性チューブのコーティングおよび/または含浸および/またはグラフト化は、そのチューブの特定の領域で行われてもよく、同時に他の領域は(例えば、グラフト化/コーティング/含浸が所望されない多孔性チューブの領域をブロックすることによって(これらに限定されない))グラフトされない/コーティングされない/含浸されないまま留まってもよい。従って、本発明のいくつかの実施形態の範囲の下に包含されるポリマー物質(チューブなど)は、含浸した領域(例えばAMPSによって、および含浸されていない領域)を含むポリマー物質を含んでもよい。これは、例えば乾燥用ポリマー物質のパーベーパレーション性能の制御を可能にする場合があるが、いずれかの他の用途のために使用されてもよい。
【0228】
いくつかの実施形態によれば、多孔性ポリマー物質(チューブまたは膜など)の基本構造は非対称であってもよく、例えば、細孔は、多孔性ポリマー物質の1つの表面で(例えば、チューブの外側表面上で)より大きく、かつその多孔性ポリマー物質の他の表面上(例えば、そのチューブの内側)でより高密度であっても(および/またはより小さくても)よい。従って、多孔性ポリマー物質の基本構造は、1つの表面上でコーティング、グラフトまたは含浸され、他の表面上ではコーティング、グラフトまたは含浸されなくても(または、より少なくても)よい。かかる構造は、他方で、良好かつ高速のパーベーパレーション特性(薄いスルホン化壁だけを通過すればよい)をもたらすことができるが、はるかに良好な機械的強度をもたらすことができる(より大きい細孔を有する領域は、チューブの機械的強度にのみ影響を及ぼすがパーベーパレーションには影響を及ぼさない)。
【0229】
いくつかの実施形態によれば、非対称の多孔性ポリマー物質の別の例は、チューブの1つまたは2つの末端により大きい細孔を有し、チューブの内側部分により高密度の細孔を有する多孔性ポリマーチューブであってもよい。従って、この多孔性チューブは、内側部分でコーティング/グラフトまたは含浸され、かつ末端ではコーティング/グラフトまたは含浸されなくとも(または、より少なくても)よい。かかる構造は、そのチューブの内側部分でパーベーパレーション特性を提供することができるが、チューブの末端(エバポレーション機能性が必要とされない部分)は管路系(例えば、呼気採取システム)の他の部分へ接続するために使用されてもよい。
【0230】
いくつかの実施形態によれば、(「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」、「多孔性経路」または本願明細書に開示されるいずれかの他の方法によって製造される)乾燥用ポリマーチューブの壁の厚さは、130マイクロメートル超、例えば150マイクロメートル超、130〜200マイクロメートルの範囲、150〜300マイクロメートルの範囲、200〜400マイクロメートルの範囲または400マイクロメートル超であってもよい。
【0231】
(実施例5)
気体乾燥用チューブの機械的特性
当該「多孔性コーティング」チューブは、ナフィオン(登録商標)チューブと直接比較することはできない。なぜなら、その基本となるマトリクスは、ナフィオン(登録商標)およびブレンドおよびグラフト化された種類のチューブにおけるような連続的なモルホロジーではないからである。
【0232】
この「多孔性コーティング」チューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べて、より柔軟性があり、ねじれおよび/または崩壊の傾向が少ないことがはっきりした。
【0233】
いくつかの実施形態によれば、この多孔性タイプのチューブは、ナフィオン(登録商標)チューブに比べて、(細孔がパーベーパレーション材料で完全に満たされるにつれて)より厚くできる。加えて、細孔のサイズおよび密度は、チューブの製造の際に制御することができ、それゆえ、機械的特性およびパーベーパレーション性能を最適化することができる。
【0234】
乾燥用ポリマーチューブの例示的な実装
いくつかの実施形態によれば、(「グラフト化(高密度)経路」、「ブレンド(高密度)経路」および「多孔性経路」によるなど(これらに限定されない)のいずれかのプロセスで製造された)乾燥用ポリマーチューブは種々の形態および形状にあってもよい。特定の形状は、そのチューブの機械的特性(強度、ねじれまたはいずれかの他の特性など)およびそのパーベーパレーション能力に影響を及ぼすために選択されてもよい。
【0235】
ここで、いくつかの実施形態に係る異なる形状を有する例示的なチューブを示す図7a〜dを参照する。
【0236】
図7aは、3つの領域、末端領域702および704および中央領域706を有する乾燥用チューブ700を示す。末端領域702および704の外径はd1であり、中央領域706の外径はd2である。この場合、d1はd2よりも大きい。乾燥用チューブ700のすべての領域の内径d3は同じである。かかるチューブは、例えば中央領域706での所望のパーベーパレーション性能および末端領域702および704での(パーベーパレーション性能ありまたはなしの)構造的強度を可能にするために、使用されてもよい。
【0237】
図7bは、いくつかの実施形態に係る、チューブの長さに沿って実質的に一定の内径d4および2つの外径、より低い領域712における外径d5、およびより高い領域714における外径d6を有するリブのある乾燥用チューブ710を示す。上記チューブの長さに沿って延在するより高い領域714は、乾燥用チューブ710の強度を高める可能性がある「リブ」と呼ばれてもよい。他の種類または形態のリブも形成または使用されてよい。かかるリブには、らせん状のリブ(図示せず)、同心性のリブ(図示せず)、またはいずれかの種類のパターンを有する他のリブを含めてもよい。チューブ710は、気体の流れを可能にするように適合されている内側導管715を有する。このチューブの内側断面は、d4の直径を有する円形であると示されているが、しかしながら、いくつかの実施形態によれば、チューブの内側断面は、例えば内側断面および外側断面が星型形状を有する図7c(本願明細書中下記で詳述されることになっている)に示すようにそのチューブの外側断面(これは非円形であってもよい)と合致することもできる。より低い領域712およびより高い領域714は、同様または異なるパーベーパレーション性能を有してもよい。これらの特徴は、例えばチューブの射出成形によって成し遂げることができる。これは、ナフィオン(登録商標)では成し遂げることができない。ナフィオン(登録商標)は、射出成形に伴う温度および応力ではその機能性および特徴を維持しないであろう。
【0238】
図7cは、いくつかの実施形態に係る、チューブの長さに沿って、より低い領域722およびより高く先が尖った領域724を有する星型の乾燥用チューブ720を示す。上記チューブの長さに沿って延在するより高い領域724は、乾燥用チューブ720の強度を高める可能性がある。乾燥用チューブ720の内側断面726は、乾燥用チューブ720の外側断面728と合致する。より低い領域722およびより高く先が尖った領域724は、同様または異なるパーベーパレーション性能を有してもよい。非円形の内側断面(乾燥用チューブ720の星型の内側断面726、長方形、正方形、先が尖った、花型またはいずれかの他の非円形の内側断面など)は表面積を増大させ、管路のラインを遮断することなく角/導管(チューブの内側に形成される)で液体を捕捉する能力を増大させ、そしてさらにより良好な親水性を作り出し、流体(水など)が容易に吸収されてパーベーパレーションされうるように流体(水など)をチューブの壁に沿って広げる。
【0239】
いずれの乾燥用チューブの内側断面および/または外側断面も、いくつかの実施形態によれば、円形のまたは非円形の断面(例えば、星型、長方形、正方形、先が尖った、花型またはいずれかの他の非円形の断面が挙げられるがこれらに限定されない)を有してもよい。
【0240】
いくつかの実施形態によれば、いずれの乾燥用チューブの内側断面および/または外側断面も、同じであってもよいし、または上記チューブの長さに沿って変化してもよい。
【0241】
図7dは、いくつかの実施形態に係る、中央領域732および2つの末端領域734および736を有する乾燥用チューブ730を示す。2つの末端領域734および736の間に延在する中央領域732は、水などの流体をパーベーパレーションするように適合されている。いくつかの実施形態によれば、末端領域734および/または736は、別々に形成されて中央領域732とともに組立てられてもよい。いくつかの実施形態によれば、末端領域734および/または736は、中央領域732と一体成形されてもよい。領域734および/または736が中央領域732と一体成形される場合は、乾燥用チューブ730は、いずれかの方法に従って、特に成形によって製造されてもよい。さらなるまたは代替の実施形態によれば、乾燥用チューブ730(または本発明の実施形態に係るいずれかの他の乾燥用チューブ)は、流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥ゾーン738、740a、bおよびcなどの明確な乾燥ゾーン(または「ウィンドウ」)のみを有する中央領域(中央領域732など)を含んでもよく、中央領域(中央領域732など)の残部は流体をパーベーパレーションするように適合されておらず、むしろこの乾燥ゾーンを強化または「保持」するように適合されていてもよい。乾燥ゾーン(乾燥ゾーン738、740a、bおよびcなど)は、中央領域(中央領域732など)のある領域を切断して、それを乾燥用物質(膜など)で置き換えることによって形成されてもよい。この乾燥ゾーンは、中央領域の特定のゾーンを流体乾燥ゾーンへと変換するために、中央領域の特定のゾーンを活性化すること/化学的に処理すること/グラフトすること/スルホン化すること、および/またはいずれかの他のプロセスを適用することによって形成されてもよい。
【0242】
いくつかの実施形態によれば、乾燥用チューブのいずれかにおいて(図7a〜dのチューブ700、710、720および730など)、グラフト化、含浸、活性化、表面活性化および/またはいずれかの他のプロセスなどの本願明細書に開示されるいずれかのプロセスを、チューブ全体またはチューブの1以上の領域(中央領域など)のみで行うことができる。この領域選択的なプロセスは、高いパーベーパレーション性能を有する領域およびより低いパーベーパレーション性能を有するがより良好な機械的特性を有する領域を有するチューブを生じる場合がある。
【0243】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る非対称の多孔性乾燥用チューブを示す図7eを参照する。多孔性乾燥用チューブ750(これは、本発明の実施形態に従って充填/コーティング/グラフト/含浸されてもよい細孔を有する多孔性支持部材として記載されてもよい)は、外側表面752および内側表面758(多孔性乾燥用チューブ750の長さに沿って延在する内側導管759を画定し、かつ流体の流れのために適合されている)を含む。乾燥用チューブ750はまた、2つの区画、高密度でない区画754および高密度区画760を含む。高密度でない区画754は外側表面752の領域に位置し、大きい細孔756を含む。高密度区画760は内側表面758の領域に位置し、小さい細孔762を含む。流体が内側導管759を矢印の方向に流れる場合、水および/または水蒸気は、架橋共重合体で充填されるように適合されている小さい細孔762を通ってパーベーパレーションすることができる。ひとたび水および/または水蒸気が小さい細孔762を通ると、それらは、実質的に中断することなく、充填されていない大きい細孔756を通り、多孔性乾燥用チューブ750を出る。従って、一方で効率的なパーベーパレーションを促進する比較的薄い高密度区画760、および他方でパーベーパレーション性能に影響を及ぼすことなくチューブを強化する高密度でない区画754を有する多孔性乾燥用チューブ(多孔性乾燥用チューブ750など)を得ることが可能である。
【0244】
ここで、いくつかの実施形態に係る管路系に接続された乾燥用チューブを示す図8a〜図8cを参照する。
【0245】
図8aは、第1の端部803で第1のチューブ804に接続されかつその対向する端部805で第2のチューブ806に接続された乾燥用チューブ802を含む管路系800を示す。チューブ804は、例えば患者から乾燥用チューブ802に呼気を採取するために使用されてもよく、チューブ806は、例えば乾燥された呼気を乾燥用チューブ802から、カプノグラフまたは患者の呼気に関する情報を提供するように適合されているいずれかの他の分析器などの分析器へと通すために使用されてもよい。矢印は、管路系800の中の流れの方向を示す。乾燥用チューブ802の外径は、第1のチューブ804および第2のチューブ806の内径よりも小さい。従って、乾燥用チューブ802の第1の端部803および対向する端部805は、それぞれチューブ804およびチューブ806の中へと挿入することができる。乾燥用チューブ802の第1の端部803および対向する端部805は、それぞれリング808および810によってチューブ804およびチューブ806に固定することができる。
【0246】
図8bは、第1の端部823で第1のチューブ824に接続されかつその対向する端部825で第2のチューブ826に接続された乾燥用チューブ822を含む管路系820を示す。乾燥用チューブ822、チューブ824およびチューブ826は、例えば図8aに記載するように使用されてもよい。乾燥用チューブ822の外径は、第1のチューブ824および第2のチューブ826の内径よりも小さい。従って、乾燥用チューブ822の第1の端部823および対向する端部825は、それぞれチューブ824およびチューブ826の中へと挿入することができる。乾燥用チューブ822の第1の端部823および対向する端部825は、(図8aにそれぞれ808および810として示されるような)リングによってチューブ824およびチューブ826に固定することができる。管路系820はまた、乾燥用チューブ822の外側表面領域を部分的に覆うメッシュ830をも含む。メッシュ830はまた、チューブ824の端部領域832の外側表面領域およびチューブ826の端部領域833の外側表面領域を部分的に覆う。メッシュ830は、例えば、必要な場合に乾燥用チューブ822の機械的強度を高めるために、乾燥用チューブ822に対する保護層として機能してもよい。
【0247】
図8cは、接続スリーブ843によってチューブ844接続される乾燥用チューブ842を備える管路系840を示す。接続スリーブ843の外径は、乾燥用チューブ842およびチューブ844の内径よりも小さい。乾燥用チューブ842およびチューブ844は、例えば、接着剤により、接続スリーブ843(特に、それが金属(1種または複数種)から作られている場合)を加熱しこのようにして乾燥用チューブ842および/またはチューブ844を融解および/または溶接することにより、または図8aに示すような外部リング(またはクリップ)により、接続スリーブ843に固定されていてもよい。接続スリーブはまた、乾燥用チューブおよび別のチューブの外径よりも大きい内径を有してもよく、それらを、チューブにその外側表面から取り付けることにより接続してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥用ポリマー物質であって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつ前記物質は流体をパーベーパレーションするように適合された、乾燥用ポリマー物質。
【請求項2】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項3】
前記物質が相溶化剤をさらに含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項4】
前記不均一相ポリマー組成物が、実質的に共連続相構造を有する、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項5】
前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項6】
前記フッ素重合体がポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含む、請求項5に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項7】
前記スルホン酸基を含むポリマーがスルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項8】
前記スチレン共重合体が熱可塑性エラストマー(TPE)である、請求項7に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項9】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項10】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項11】
前記乾燥用ポリマー物質が膜を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項12】
前記乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項13】
前記チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、前記チューブの外径が1.24±0.02mmであり、前記チューブの長さが50mmである場合に、前記チューブが、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項14】
前記チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、前記チューブの外径が1.24±0.02mmであり、前記チューブの長さが50mmである場合に、前記チューブが、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項15】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項16】
前記乾燥用チューブが、実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項17】
前記乾燥用チューブが、非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項18】
前記乾燥用チューブが、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項19】
前記乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含み、前記乾燥用チューブが内側導管を含み、前記内側導管の少なくとも一部分の内側断面が実質的に非円形であり、かつ前記内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って前記乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項20】
前記内側導管の前記断面が実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似している、請求項19に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項21】
前記内側導管の前記断面が実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似している、請求項19に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項22】
流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスであって、
不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、
前記ポリマーブレンドを所望の形態に加工する工程と
を含むプロセス。
【請求項23】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記不均一相ポリマー組成物が、実質的に共連続相構造を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記混合する工程が、相溶化剤を用いて混合することを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項26】
スルホン化できる1以上の基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合された乾燥用チューブを得る工程をさらに含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項27】
前記乾燥用ポリマー物質のスルホン化の割合(%)が40〜100%の範囲にある、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項29】
前記フッ素重合体がポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
スルホン化できる基を含む前記ポリマーがポリスチレン、スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項31】
前記スチレン共重合体が熱可塑性エラストマー(TPE)である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記乾燥用ポリマー物質が、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
前記乾燥用ポリマー物質が、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項34】
前記所望の形態がチューブを含み、前記得られた乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項35】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記乾燥用チューブが非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
前記乾燥用チューブが非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項39】
前記乾燥用チューブが内側導管を含み、前記内側導管の少なくとも一部分の内側断面が実質的に非円形であり、かつ前記内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って前記乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
呼気採取システムであって、
乾燥用ポリマーチューブであって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化された基を含み、かつ前記チューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマーチューブと、
前記乾燥用ポリマーチューブを呼気採取チューブに接続するように適合されたコネクタ、および強化要素のうちの少なくとも1つと
を含む呼気採取システム。
【請求項41】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記コネクタ、前記強化要素、またはその両方が、前記乾燥用ポリマーチューブとともに成形されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
水パーベーパレーションに適合された管路系の調製方法であって、
不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、
少なくとも1つのコネクタ、少なくとも1つの強化要素またはこれらの組み合わせを有するチューブの形態に、前記不均一相ポリマー組成物を成形する工程と
を含む方法。
【請求項44】
前記スルホン化されるように適合された基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合されたチューブと、1以上のさらなるチューブに接続するように適合された少なくとも1つのコネクタおよび/または少なくとも1つの強化要素とを含む管路系を得る工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
乾燥用ポリマー物質であって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン酸基を含み、かつ前記物質は流体をパーベーパレーションするように適合された、乾燥用ポリマー物質。
【請求項2】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項3】
前記物質が相溶化剤をさらに含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項4】
前記不均一相ポリマー組成物が、実質的に共連続相構造を有する、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項5】
前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項6】
前記フッ素重合体がポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含む、請求項5に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項7】
前記スルホン酸基を含むポリマーがスルホン化ポリスチレン、スルホン化スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項8】
前記スチレン共重合体が熱可塑性エラストマー(TPE)である、請求項7に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項9】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項10】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項11】
前記乾燥用ポリマー物質が膜を含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項12】
前記乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含む、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項13】
前記チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、前記チューブの外径が1.24±0.02mmであり、前記チューブの長さが50mmである場合に、前記チューブが、22℃の温度および湿度34%で100%を超える水吸収を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項14】
前記チューブの内径が1.0±0.1ミリメートル(mm)であり、前記チューブの外径が1.24±0.02mmであり、前記チューブの長さが50mmである場合に、前記チューブが、22℃の温度および湿度34%で150マイクロリットル/時間を超える水エバポレーション速度を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項15】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項16】
前記乾燥用チューブが、実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項17】
前記乾燥用チューブが、非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項18】
前記乾燥用チューブが、非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有する、請求項12に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項19】
前記乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含み、前記乾燥用チューブが内側導管を含み、前記内側導管の少なくとも一部分の内側断面が実質的に非円形であり、かつ前記内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って前記乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている、請求項1に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項20】
前記内側導管の前記断面が実質的にn個の突起の星型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似している、請求項19に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項21】
前記内側導管の前記断面が実質的にn枚の花びらの花型(nは2〜10の値を有する整数である)に類似している、請求項19に記載の乾燥用ポリマー物質。
【請求項22】
流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマー物質の調製のためのプロセスであって、
不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、
前記ポリマーブレンドを所望の形態に加工する工程と
を含むプロセス。
【請求項23】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記不均一相ポリマー組成物が、実質的に共連続相構造を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記混合する工程が、相溶化剤を用いて混合することを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項26】
スルホン化できる1以上の基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合された乾燥用チューブを得る工程をさらに含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項27】
前記乾燥用ポリマー物質のスルホン化の割合(%)が40〜100%の範囲にある、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つがポリオレフィン、フッ素重合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項29】
前記フッ素重合体がポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)またはそのいずれかの誘導体を含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
スルホン化できる基を含む前記ポリマーがポリスチレン、スチレン共重合体またはそれらのいずれかの混合物もしくは誘導体を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項31】
前記スチレン共重合体が熱可塑性エラストマー(TPE)である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記乾燥用ポリマー物質が、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、ポリスチレン(PS)およびポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)を、それぞれ約70/20/10の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
前記乾燥用ポリマー物質が、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)およびメタクリル酸メチルブタジエンスチレン(MBS)を、それぞれ約49/49/2の比で含むか、またはそのいずれかの塩もしくは誘導体である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項34】
前記所望の形態がチューブを含み、前記得られた乾燥用ポリマー物質が乾燥用チューブを含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項35】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記乾燥用チューブが実質的に円形の内側断面および非円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記乾燥用チューブが非円形の内側断面および実質的に円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項38】
前記乾燥用チューブが非円形の内側断面および合致する非円形の外側断面を有する、請求項34に記載のプロセス。
【請求項39】
前記乾燥用チューブが内側導管を含み、前記内側導管の少なくとも一部分の内側断面が実質的に非円形であり、かつ前記内側導管の内壁に近接して液体を集めるように適合され、従って前記乾燥用チューブの中には実質的に液体の流れを有しないようにできるように適合されている、請求項34に記載のプロセス。
【請求項40】
呼気採取システムであって、
乾燥用ポリマーチューブであって、2以上のポリマーを含む不均一相ポリマー組成物を含み、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化された基を含み、かつ前記チューブは流体をパーベーパレーションするように適合された乾燥用ポリマーチューブと、
前記乾燥用ポリマーチューブを呼気採取チューブに接続するように適合されたコネクタ、および強化要素のうちの少なくとも1つと
を含む呼気採取システム。
【請求項41】
前記流体が水、水蒸気またはその両方を含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記コネクタ、前記強化要素、またはその両方が、前記乾燥用ポリマーチューブとともに成形されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
水パーベーパレーションに適合された管路系の調製方法であって、
不均一相ポリマー組成物を生成するために2以上のポリマーを混合する工程であって、前記2以上のポリマーのうちの少なくとも1つはスルホン化されるように適合された基を含む工程と、
少なくとも1つのコネクタ、少なくとも1つの強化要素またはこれらの組み合わせを有するチューブの形態に、前記不均一相ポリマー組成物を成形する工程と
を含む方法。
【請求項44】
前記スルホン化されるように適合された基をスルホン化して、これにより水をパーベーパレーションするように適合されたチューブと、1以上のさらなるチューブに接続するように適合された少なくとも1つのコネクタおよび/または少なくとも1つの強化要素とを含む管路系を得る工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2010−209329(P2010−209329A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−44626(P2010−44626)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(510056375)オリディオン メディカル 1987 リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44626(P2010−44626)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(510056375)オリディオン メディカル 1987 リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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