説明

事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器

【課題】例えば、交差点左折時の通行者の巻き込み事故等にも対応し、また、過去の通行者及び車両の通行経路履歴を考慮し事故の発生し得るエリアを予測する事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器を提供することを目的とする。
【解決手段】交差点への進入車両が指定ポイントA1に到達したとき、前記進入車両の指定ポイントA1到達時の交差点付近の通行者情報、信号機5の信号灯情報及び記憶部37に記憶された学習エリアマップに基づいて事故発生予測エリアを予測し、車載器61に事故発生予測エリアマップとして送信する。車載器61は受信した事故発生予測エリアマップを車載器61の有する液晶表示パネルなどに表示することにより車載器61を搭載する車両6に対して通知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両事故防止装置、車両事故防止システム及び車載装置は、道路の交差点上流側の第1の地点を走行する車両の速度に基づいて、この車両が交差点に進入する危険車両であるか否かを判定し、更に第1の地点より下流側の第2の地点と前記交差点との間を走行する車両の速度および位置に基づいて車両が危険車両であるか否かを判定する。これらの判定結果に基づき交差側の道路を走行する車両に警告を報知することによって交差点における出会い頭の衝突事故を防止することができることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−128182号公報(第16頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両事故防止装置、車両事故防止システム及び車載装置では、交差点に進入する車両が危険車両であるか否かを判定し、その判定結果を交差側の走行車両に通知し出会い頭の衝突事故を防止するのみであり、例えば交差点左折時の通行者(歩行者及び自転車)を巻き込む事故等には対応していない。また、過去の通行者及び車両の通行経路履歴を考慮し事故発生の起こり得るエリアを予測しその事故発生予測エリアの情報を走行する車両に通知することは行われていない。
【0005】
更に、判定結果を走行車両に通知する際に通信エラーが起こった場合には事故を防止することは出来ず、利便性の良いものとは言えない。
【0006】
そこで、本発明は利便性の良い事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の事故予測通知装置は、交差点付近における過去の車両及び過去の通行者の通行経路履歴を前記交差点に設置された信号機の信号灯情報と関連付けて記憶する第1の記憶手段と、前記交差点への進入車両が、前記交差点から所定距離離れた第1のポイントに到達したか否かを判定する到達判定手段と、前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際に、前記交差点付近を通行する当該通行者の少なくとも位置、通行速度及び通行方向を含む通行者情報を取得する通行者情報取得手段と、前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際の前記信号機の信号灯情報を取得する信号灯情報取得手段と、前記到達判定手段によって前記進入車両が前記第1のポイントに到達したと判定されたとき、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の通行者の通行経路履歴、前記通行者情報取得手段によって取得された通行者情報、及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて、前記進入車両が前記第1のポイントに到達してからの所定時間内における前記当該通行者の通行経路を予測する通行者通行経路予測手段と、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の車両の通行経路履歴及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて前記進入車両の通行経路を予測する車両通行経路予測手段と、前記通行者通行経路予測手段によって予測された前記当該通行者の通行経路及び前記車両通行経路予測手段によって予測された前記進入車両の通行経路に基づいて、前記進入車両と当該通行者との間で事故が起こり得る事故発生位置を予測する事故発生位置予測手段と、前記事故発生位置予測手段によって予測された事故発生位置の情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信して通知する事故発生位置通知手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の事故予測通知システムは、交差点への進入車両と交差点を通行する当該通行者との間で事故が起こり得る事故発生位置を予測した前記事故発生位置の予測情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信する事故予測通知装置を有する事故予測通知システムにおいて、前記事故予測通知装置は、前記交差点付近における過去の車両及び過去の通行者の通行経路履歴を前記交差点に設置された信号機の信号灯情報と関連付けて記憶する第1の記憶手段と、前記交差点への進入車両が、前記交差点から所定距離離れた第1のポイントに到達したか否かを判定する到達判定手段と、前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際に、前記交差点付近を通行する前記当該通行者の少なくとも位置、通行速度及び通行方向を含む通行者情報を取得する通行者情報取得手段と、前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際の前記信号機の信号灯情報を取得する信号灯情報取得手段と、前記到達判定手段によって前記進入車両が前記第1のポイントに到達したと判定されたとき、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の通行者の通行経路履歴、前記通行者情報取得手段によって取得された通行者情報、及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて、前記進入車両が前記第1のポイントに到達してからの所定時間内における前記当該通行者の通行経路を予測する通行者通行経路予測手段と、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の車両の通行経路履歴及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて前記進入車両の通行経路を予測する車両通行経路予測手段と、前記通行者通行経路予測手段によって予測された前記当該通行者の通行経路及び前記車両通行経路予測手段によって予測された前記進入車両の通行経路に基づいて前記事故発生位置を予測する事故発生位置予測手段と、前記事故発生位置予測手段によって予測された事故発生位置の情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信して通知する事故発生位置通知手段と、を有し、前記車載器は、前記事故発生位置通知手段によって送信された事故発生位置の情報を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信した事故発生位置の情報を表示して前記車載器を搭載する前記進入車両の搭乗者に通知する表示通知手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
更に、請求項3記載の車載器は、事故予測通知装置から送信される通行者情報及び車両情報を交差点からの所定の距離離れた第1の地点を含む通信範囲内において常時受信する常時受信手段と、前記交差点への進入車両が前記第1の地点に到達した際に前記事故予測通知装置から送信される事故発生位置の情報を受信する受信手段と、前記常時受信手段によって受信した通行者情報及び車両情報を記憶する第2の記憶手段と、前記受信手段によって前記事故発生位置の情報を受信出来なかった場合に、当該受信不可時間を計測する受信不可時間計測手段と、前記受信不可時間計測手段によって計測された受信不可時間と、前記第2の記憶手段によって記憶された通行者情報及び車両情報に基づいて前記交差点への進入車両と前記交差点点付近を通行する通行者との間で事故が起こり得る危険位置が存在するか否かを判定する危険位置判定手段と、前記危険位置判定手段によって危険位置が存在すると判定されたとき、前記進入車両の搭乗者に対して警告を発する警告手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利便性の良い事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態である交差点における事故予測通知システム100の概要を示す模式図。
【図2】車両6の学習エリアマップを示す概念図。
【図3】車両6の学習エリアマップを示す概念図。
【図4】車両6の学習エリアマップを示す概念図。
【図5】車両6の学習エリアマップを示す概念図。
【図6】通行者の学習エリアマップを示す概念図。
【図7】通行者の学習エリアマップを示す概念図。
【図8】通行者の学習エリアマップを示す概念図。
【図9】通行者の学習エリアマップを示す概念図。
【図10】事故予測通知装置3の構成を示すブロック図。
【図11】通行者の通行予測エリアマップを示す概念図。
【図12】通行者の通行予測エリアマップを示す概念図。
【図13】通行者の通行予測エリアマップを示す概念図。
【図14】通行者の通行予測エリアマップを示す概念図。
【図15】事故発生予測エリアマップを示す概念図。
【図16】事故発生予測エリアマップを示す概念図。
【図17】事故発生予測エリアマップを示す概念図。
【図18】事故発生予測エリアマップを示す概念図。
【図19】車載器61の構成を示すブロック図。
【図20】事故予測通知装置3の行う処理のフローチャート。
【図21】車載器61の行う処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態である交差点Cにおける事故予測通知システム100の概要を示す模式図である。本発明に係る事故予測通知システム100は、感知器1、ビデオカメラ2及び事故予測通知装置3などを備える。
【0014】
感知器1は、道路Aの交差点Cに対する通行方向上流側に設置され、交差点Cから通行方向上流側に距離L離間した地点(この地点を指定ポイントA1とする、請求項中の第1のポイントを指す)を到達する車両を検知し(到達判定手段)、検知結果を事故予測通知装置3へ出力する。また、感知器1は、速度を感知することができる超音波式感知器、ループコイル式感知器、遠赤外線式感知器、画像式感知器などであってもよい。
【0015】
ビデオカメラ2は、指定ポイントA1を含む交差点全体を見渡せる位置に必要に応じて複数台設置され、交差点全体を撮像し、撮像した画像を常時、事故予測通知装置3へ出力する。図示した例は、道路A及び信号機5(c)、5(d)は撮像可能な位置にビデオカメラ2を設置した場合を示す。
【0016】
事故予測通知装置3は、ビデオカメラ2により撮像された撮像画像を解析処理することにより信号機5(以下、特に区別して説明する必要がない場合は信号機5(a)、(b)、(c)及び(d)を総称して信号機5とする)の信号灯情報(車両6の対面に設置された信号機5の赤色、黄色、青色及び右矢印信号、左矢印信号等の信号灯に関する情報)、通行者の位置、通行速度、通行方向などの情報(以下、総称して通行者情報とする)、及び車両の位置、通行速度、通行方向などの情報(以下、総称して車両情報とする)を取得する(信号灯情報取得手段)(通行者情報取得手段)。
【0017】
事故予測通知装置3は、取得した情報を後述の処理を行い、車両6が交差点Cに進入して通過する際に通行者との間で事故となり得るエリア(以下、事故発生予測エリアとする)(請求項中の事故発生位置)を車両6に搭載される車載器61に事故発生予測エリアマップとして送信する。
【0018】
また、事故予測通知装置3は、過去の通行者及び車両の通行履歴及び信号灯情報に基づき作成された学習エリアマップを記憶部37(図10参照)記憶している。ここで、学習エリアマップとは、過去の通行者及び車両の通行履歴の中で所定の頻度以上の通行履歴(請求項中の過去の車両及び過去の通行者の通行経路履歴に該当する)が存在し、かつ信号灯情報を鑑みて作成されたものである。なお、学習エリアマップは交差点に向かう道路毎に学習エリアマップが作成され記憶される。図2乃至図5は、その中の車両6に対する学習エリアマップであり、図4乃至図9は、通行者の学習エリアマップである。
【0019】
図2乃至図5において斜線部分が過去に車両6の所定頻度以上の通行履歴が存在し、かつ信号灯情報を鑑みて作成された位置を示しており、また、図4乃至図9において斜線部分が過去に通行者の所定頻度以上の通行履歴が存在し、かつ信号灯情報を鑑みて作成された位置を示している(この斜線部分を学習エリアとする)。
【0020】
図2は、車両6に対する信号機5(a)の信号灯情報が赤色の場合の車両6の学習エリアマップを示している。つまり、車両6に対する信号機5(a)の信号灯情報が赤色である場合には、交差点Cの停止線位置で車両6は通常停止するため、車両6の学習エリアマップは図2のように表現される。また、図3、図4は、信号機5(a)の信号灯情報が赤色であっても車両に対して左折矢印信号が点灯している場合、或いは右折矢印信号が点灯している場合を示している。
【0021】
つまり、信号機5(a)の信号灯情報が赤色である場合でも左折矢印信号が点灯している場合は、車両6は通常左折するめ車両6の学習エリアマップは図3のようになり、同様に、信号機5(a)の信号灯情報が赤色である場合でも右折矢印信号が点灯している場合は、車両6は通常右折するため車両6の学習エリアマップは図4のようになる。図5は、信号機5(a)の信号灯情報が青色である場合を示している。つまり、信号機5(a)の信号灯情報が青色である場合には車両6は通常直進、左折、右折といったようにすべての通行経路を通行するため、車両6の学習エリアマップは図5のようになる。
【0022】
通行者の学習エリアマップは、車両の学習エリアマップと同様に、図6は、信号機5(a)の信号灯情報が赤色の場合(信号機5(c)の信号灯情報が赤色、信号機5(b)及び信号機5(d)の信号灯情報が青色)の通行者の学習エリアマップを示している。つまり、信号機5(a)の信号灯情報が赤色の場合、道路Bを横断する横断歩道には通行者は進入しないと考えられる。そのため、図6のように通行者の学習エリアマップは表現される。
【0023】
図7は、信号機5(a)の信号灯情報が赤色、かつ、左折矢印信号が点灯している場合(信号機5(b)、信号機5(c)及び信号機5(d)の信号灯情報が赤色)の通行者の学習エリアマップを示している。つまり、信号機5(a)の信号灯情報が赤色、かつ、左折矢印信号が点灯しているため、道路Bを横断する横断歩道及び道路Aの車両6の通行方向上流側の横断歩道には通行者は進入しないと考えられる。そのため、図7のように通行者の学習エリアマップは表現される。
【0024】
図8は、信号機5(a)の信号灯情報が赤色、かつ、右折矢印信号が点灯している場合(信号機5(b)、信号機5(c)及び信号機5(d)の信号灯情報が赤色)の通行者の学習エリアマップを示している。つまり、信号機5(a)の信号灯情報が赤色、かつ、右折矢印信号が点灯しているため、道路Bを横断する横断歩道及び道路Aの車両6の通行方向上流側の横断歩道には通行者は進入しないと考えられる。そのため、図8のように通行者の学習エリアマップは表現される。
【0025】
図9は、信号機5(a)の信号灯情報が青色の場合(信号機5(c)の信号灯情報が青色、信号機5(b)及び信号機5(d)の信号灯情報が赤色)の通行者の学習エリアマップを示している。つまり、信号機5(b)及び信号機5(d)の信号灯情報が赤色のため、道路Aを横断する横断歩道には通行者は進入しないと考えられるため図9のように表現される。
【0026】
図10は、事故予測通知装置3の構成を示すブロック図である。事故予測通知装置3は、各種の演算処理を行うCPUからなる制御部31を備える。制御部31には、内部バスを介してインタフェース部32、画像メモリ33、ROM34、RAM35、画像処理部36、記憶部37、無線部39、車両通行予測部40、通行者通行予測部41及び判定部42などが接続されている。
【0027】
また、インタフェース部32を介して、感知器1及びビデオカメラ2が接続されている。制御部31は、これらのハードウエア各部の動作を制御する。インタフェース部32は、感知器1、及びビデオカメラ2に対する指令の転送、感知器1及びビデオカメラ2で撮像して得られた撮像画像の取得などを行う。インタフェース部32は、ビデオカメラ2から入力された撮像画像をビデオカメラ2のフレームレートと同期して、1フレーム単位で画像メモリ33に記憶する。
【0028】
ROM34は、制御部31の制御手順を示す制御プログラムを予め記憶している。制御部31のCPUがROM34に記憶されている制御プログラムをRAM35にロードすることにより、制御部31は制御プログラムで示されて制御手順に従って事故予測通知装置3の動作を制御する。
【0029】
記憶部37(第1の記憶手段)は、画像処理部36により解析処理された過去の車両及び通行者の通行履歴、信号灯情報から作成された学習エリアマップなど(図2乃至図9参照)を記憶する。
【0030】
画像処理部36は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途集積回路)などにより構成され、画像メモリ33から1フレーム単位の撮像画像を読み出し、読み出した撮像画像の画像処理に基づいて、通行者及び車両を特定し、特定した通行者及び車両の撮像画像上の位置変化、座標に基づいて、通行者及び車両の速度、通行方向及び位置を計測し通行者情報及び車両情報を取得する。画像処理部36は、取得した通行者情報及び車両情報を制御部31へ出力する。
【0031】
無線部39は、指定ポイントA1を含む所定の範囲(例えば交差点C付近)を走行する車両との間で無線通信を行うために変調及び復調などの処理を行う。無線部39は、制御部31の制御のもと、通行者情報及び車両情報を所定の範囲内にある車両6の搭載する車載器61(図1参照)に常時送信するとともに、上述の事故発生予測エリアマップを車載器61に送信する(事故発生位置通知手段)。
【0032】
車両通行予測部40は、図2乃至図5に示す車両6の学習エリアマップ及び信号機5の信号灯情報に基づいて車両6の通行予測エリアマップを決定する。通行予測エリマップは車両6の指定ポイントA1到達時の信号機5(a)の信号灯情報に基づいて決定される。具体的には、車両6が指定ポイントA1に到達した時点における信号機5(a)の信号灯情報が赤色の場合には、学習エリアマップ図2を選択し、この学習エリアマップ図2を通行予測エリアマップとして決定する。同様に、信号機5(a)の信号灯情報が赤色であっても左折矢印信号が点灯している場合には、学習エリアマップ図3を選択し、この学習エリアマップ図3を通行予測エリアマップとして決定する。信号機5(a)の信号灯情報が赤色であっても右折矢印信号が点灯している場合には、学習エリアマップ図4を選択し、この学習エリアマップ図4を通行予測エリアマップとして決定する。信号機5(a)の信号灯情報が青色である場合には、学習エリアマップ図5を選択し、この学習エリアマップ図5を通行予測エリアマップとして決定する。(車両通行経路予測手段)。信号灯情報ではなく車両6のウインカ情報を画像処理部36から取得して用いても良い。また、この車両の通行予測エリアマップ上の斜線部分を車両の通行予測エリアと呼ぶ。
【0033】
通行者通行予測部41は、図6乃至図9に示す記憶部37に記憶された通行者の学習エリアマップ、画像処理部36から取得された通行者情報及び信号灯情報に基づいて、車両6の指定ポイントA1の到達後所定時間内(ここで所定時間とは、感知器1により計測された指定ポイントA1における車両の速度と指定ポイントAから交差点Cまでの距離Lとから、指定ポイントA1に到達した車両6が交差点Cに到達するまでの時間に設定してもよい)における通行者の通行経路の予測を示す通行予測エリアマップ(図11乃至図14参照)を作成する(通行者通行経路予測手段)。この通行者の通行予測エリアマップ上の斜線部分を通行者の通行予測エリアと呼ぶ。
【0034】
図11乃至図14は、通行者の通行予測エリアマップの一例を示す図である。図11乃至図14において例えば図示矢印X1は通行者の通行方向、円弧Y1は所定時間内における通行者の通行可能な最大範囲(以下、通行可能エリアとする)を示す。ここで通行者を区別して説明する必要が有る場合には、通行者(A)、通行者(B)、通行者(C)、通行者(D)及び通行者(E)とする。
【0035】
通行者の通行予測エリアマップは、図6乃至図9に示す通行者の学習エリアマップ上の斜線部分、通行可能エリア及び信号灯情報に基づいて通行者通行予測部41によって作成される。通行予測エリマップは車両6の指定ポイントA1到達時の信号機5(a)の信号灯情報に基づいて決定される。具体的には、車両6が指定ポイントA1に到達した時点における信号機5(a)の信号灯情報が赤色の場合には、学習エリアマップ図6を選択し、この学習エリアマップ図6上の斜線部分と通行可能エリアとから通行者の通行予測エリアマップを作成する(図11)。
【0036】
同様に、信号機5(a)の信号灯情報が赤色であっても左折矢印信号が点灯している場合には、学習エリアマップ図7を選択し、図7上の斜線部分と通行可能エリアとから通行者の通行予測エリアマップを作成し(図12)、信号機5(a)の信号灯情報が赤色であっても右折矢印信号が点灯している場合には、学習エリアマップ図8を選択し、図8上の斜線部分と通行可能エリアとから通行者の通行予測エリアマップを作成する(図13)。また、信号機5(a)の信号灯情報が青色である場合には、学習エリアマップ図9を選択し、図9上の斜線部分と通行可能エリアとから通行者の通行予測エリアマップを作成する(図14)(車両通行経路予測手段)。
【0037】
図11は、信号機5(a)及び信号機5(c)の信号灯情報が赤色の場合を示している。つまり、通行者(A)及び通行者(C)は通行可能エリアから判断すると横断歩道まで通行が可能であるが、信号機5(c)の信号灯情報が赤色であるため、通行者(A)及び通行者(C)は横断歩道内に進入することなく横断歩道手前で立ち止まると予測される。それに対して通行者(B)及び通行者(D)は信号機5(b)及び信号機5(d)が青色であるため横断歩道内に進入すると予測されるため、通行者の通行予測エリマップは図11のようになる。以下、同様の説明となるため説明は省略するが、図12、図13は信号機5(a)乃至信号機5(d)の信号灯情報が赤色、かつ信号機5(a)の左折矢印信号が点灯している場合(図12)、信号機5(a)の右折矢印信号が点灯している場合(図13)を示している。また、図14は信号機5(a)及び信号機5(c)の信号灯情報が青色の場合を示している。
【0038】
つまり、通行者は車両6の指定ポイントAの到達後所定時間内に、この通行者予測エリアマップ上の斜線部分に存在すると予測される。
【0039】
判定部42は、車両通行予測部40により作成された車両6の予測される通行経路を示す車両の通行予測エリアと通行者通行予測部41により作成された車両6の指定ポイントAの到達後所定時間内において通行者が存在すると予測される通行者の通行予測エリアとの重複するエリア(事故発生予測エリア)に基づいて事故発生予測エリアマップ(図15乃至図18参照)を作成する。また、事故発生予測エリア(図15乃至図18中の斜線部分)が存在するか否かの判定を行う(事故発生位置予測手段)。
【0040】
図15乃至図18は、事故発生予測エリアマップの一例を示す図である。図15は、図2と図11の斜線部分の重複エリアから作成された事故発生予測エリアマップ、図16は、図3と図12の斜線部分の重複エリアから作成された事故発生予測エリアマップ、図17は、図4と図13の斜線部分の重複エリアから作成された事故発生予測エリアマップ、図18は、図5と図14の斜線部分の重複エリアから作成された事故発生予測エリアマップである。
【0041】
図19は、車載器61の構成を示すブロック図である。車載器61は車両6に搭載され、各種の演算処理を行うCPUからなる制御部62を備える。制御部62には、内部バスを介して記憶部63、ROM64、RAM65、無線部66、危険予測部67、警告部68などが接続されている。記憶部63(第2の記憶手段)は、事故予測通知装置3より送信された通行者情報及び車両情報を記憶する。
【0042】
ROM34は、制御部31の制御手順を示す制御プログラムを予め記憶している。制御部31のCPUがROM34に記憶されている制御プログラムをRAM35にロードすることにより、制御部31は制御プログラムで示されて制御手順に従って車載器61の動作を制御する。
【0043】
無線部66は、事故予測通知装置3から送信された事故発生予測エリアマップ及び事故予測通知装置3から所定の範囲内にある車両6の搭載する車載器61に対して常時送信される通行者情報、車両情報を受信する(受信手段)(常時受信手段)。
【0044】
危険予測部41は、通信エラー等で事故予測通知装置3との無線通信が途切れた場合に記憶部63に記憶された通行者情報及び車両情報に基づいて車両と通行者との間における事故の危険性を予測する。具体的には、通信が途切れた時間を計測し(以下、通信エラー時間とする)、記憶部63に記憶された通信エラー直前の通行者情報、車両情報とこの通信エラー時間とに基づいて、通信が途切れた時間に通行者及び車両が移動可能な範囲を予測し、車両と通行者との間の距離が一定距離(例えば10m以内)以上か否かにより事故となり得る位置(請求項中の危険位置)が存在するか否かを判定する(受信不可時間計測手段)(危険位置判定手段)。
【0045】
警告部68は、危険予測部41により危険予測位置が存在すると判定されたとき、例えばスピーカなどにより警告を発するものである(警告手段)。また、表示部69は、液晶ディスプレイなどであって、上述の事故発生予測エリアマップを車両6の搭乗者に対して表示して通知するものである(表示通知手段)。
【0046】
図20は、事故予測通知装置3の行う処理のフローチャートである。ビデオカメラ2によって撮像された画像から画像処理部36は、車両情報、通行者情報及び信号灯情報を取得する(S1)(通行者情報取得手段)(信号灯情報取得手段)。続いて、感知器1によって指定ポイントA1に車両6が到達したことが検出される(S2)(到達判定手段)。S2において車両6が指定ポイントA1に到達したことが検出されると、S2において取得した信号灯情報及び記憶部37によって記憶された車両の学習エリアマップに基づいて車両の通行予測部40は、車両の通行予測エリアマップを決定する(S3)(車両通行経路予測手段)。
【0047】
S3の後、S1で画像処理部36によって取得された通行者情報、信号灯情報及び記憶部37によって記憶された通行者の学習エリアマップに基づいて通行者通行予測部41は、通行者の通行予測エリアマップを作成する(S4)(通行者通行経路予測手段)。S3において作成された車両の通行予測エリアマップ及びS4において作成された通行者の通行予測エリアマップに基づいて判定部42は事故発生予測エリアマップを作成する(S5)(事故発生位置予測手段)。
【0048】
また、S5において作成された事故発生予測エリアマップ上に事故発生予測エリアが存在するか否かが判定部42によって判定される(S6)(事故発生位置予測手段)。S6において事故発生予測エリアが存在すると判定されたとき(S6のYes)、事故発生予測エリアマップを車載器61へ送信する(S7)(事故発生位置通知手段)。
【0049】
一方、S6における判定の結果、事故発生予測エリアが存在しないと判定されたとき(S6のNo)、処理を終了する。
【0050】
図21は、車載器61の行う処理のフローチャートである。車載器61は、事故予測通知装置3から所定の範囲内にある車両6に対して常時送信される通行者情報及び車両情報を記憶部63に記憶する(S8)(第2の記憶手段)。
【0051】
また、事故予測通知装置3から送信された事故発生予測エリアマップを正常に受信したか否かが判定される(S9)。S9における判定の結果、事故発生予測エリアマップを正常に受信したと判定されなかったとき(S9のYes)、通信エラー時間を計測する(S10)(受信不可時間計測手段)。S10において通信エラー時間を計測したのち、記憶部63に記憶された通信エラー直前の通行者情報及び車両情報と計測した通信エラー時間に基づいて危険予測位置が存在するか否かが判定される(S11)(危険位置判定手段)。
【0052】
S11の判定の結果、危険予測位置が存在すると判定されたとき(S11のYes)、警告部68によって車両6の搭乗者に対して警告を発する(S11)(警告手段)。一方、S11の判定の結果、危険予測位置が存在しないと判定されたとき(S11のNo)、処理を終える。また、事故発生予測エリアマップを正常に受信したと判定されたとき(S9のYes)、事故発生予測エリアマップを表示部69に表示する(S13)(表示通知手段)。
【0053】
以上のように、事故予測通知装置3は、記憶部37に記憶された通行者及び車両の学習エリアマップ、画像処理部36によって取得した信号機5の信号灯情報及び交差点付近の通行者情報に基づいて判定部42は事故発生予測エリアマップを作成し、作成した事故発生予測エリアマップを車載器61に無線部39により送信する。車載器61は無線部66によって受信した事故発生予測エリアマップを表示部69である液晶表示パネルなどに表示することにより搭乗者に対して通知を行う。
【0054】
また、事故予測通知装置3から送信される事故発生予測エリアマップを車載器61が通信エラーにより受信できなかった場合には、車載器61は記憶部63によって記憶された通信エラー直前の車両情報及び通行者情報と危険予測部67によって計測された通信エラー時間とに基づいて危険予測位置が存在するか否かが判定される。この判定の結果、危険位置が存在すると判定されたとき車載器61は搭乗者に対して警告部68により警告を行う。
【0055】
車載器61を搭載している車両6の搭乗者は受信した事故発生予測エリアマップにより事故発生予測エリアを知る事ができる。また、通信エラーにより事故発生予測エリアマップを受信できない場合においても、危険予測部67によって危険予測位置の存在の有無を判定し、危険予測位置が存在するとき搭乗者に対して警告を発することができる。
【0056】
また、上述の実施の形態は交差点おける事故発生を予測する事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器として表現されているが、本発明は車両及び通行者の通行履歴を記憶し、その記憶された通行履歴、取得された通行者情報及び信号灯情報に基づいて事故発生予測エリアを車両の搭乗者に対して通知する事故予測通知装置、事故予測通知システム及び車載器一般に適用できるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 感知器
2 ビデオカメラ
3 事故予測通知装置
5 信号機
6 車両
31 制御部
32 インタフェース部
33 画像メモリ
34 ROM
35 RAM
36 画像処理部
37 記憶部
39 無線部
61 車載器
62 制御部
63 記憶部
64 ROM
65 RAM
66 無線部
67 危険予測部
68 警告部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点付近における過去の車両及び過去の通行者の通行経路履歴を前記交差点に設置された信号機の信号灯情報と関連付けて記憶する第1の記憶手段と、
前記交差点への進入車両が、前記交差点から所定距離離れた第1のポイントに到達したか否かを判定する到達判定手段と、
前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際に、前記交差点付近を通行する当該通行者の少なくとも位置、通行速度及び通行方向を含む通行者情報を取得する通行者情報取得手段と、
前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際の前記信号機の信号灯情報を取得する信号灯情報取得手段と、
前記到達判定手段によって前記進入車両が前記第1のポイントに到達したと判定されたとき、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の通行者の通行経路履歴、前記通行者情報取得手段によって取得された通行者情報、及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて、前記進入車両が前記第1のポイントに到達してからの所定時間内における前記当該通行者の通行経路を予測する通行者通行経路予測手段と、
前記第1の記憶手段によって記憶された過去の車両の通行経路履歴及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて前記進入車両の通行経路を予測する車両通行経路予測手段と、
前記通行者通行経路予測手段によって予測された前記当該通行者の通行経路及び前記車両通行経路予測手段によって予測された前記進入車両の通行経路に基づいて、前記進入車両と当該通行者との間で事故が起こり得る事故発生位置を予測する事故発生位置予測手段と、
前記事故発生位置予測手段によって予測された事故発生位置の情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信して通知する事故発生位置通知手段と、
を有することを特徴とする事故予測通知装置。
【請求項2】
交差点への進入車両と交差点を通行する当該通行者との間で事故が起こり得る事故発生位置を予測した前記事故発生位置の予測情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信する事故予測通知装置を有する事故予測通知システムにおいて、
前記事故予測通知装置は、
前記交差点付近における過去の車両及び過去の通行者の通行経路履歴を前記交差点に設置された信号機の信号灯情報と関連付けて記憶する第1の記憶手段と、
前記交差点への進入車両が、前記交差点から所定距離離れた第1のポイントに到達したか否かを判定する到達判定手段と、
前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際に、前記交差点付近を通行する前記当該通行者の少なくとも位置、通行速度及び通行方向を含む通行者情報を取得する通行者情報取得手段と、
前記進入車両が前記第1のポイントに到達した際の前記信号機の信号灯情報を取得する信号灯情報取得手段と、
前記到達判定手段によって前記進入車両が前記第1のポイントに到達したと判定されたとき、前記第1の記憶手段によって記憶された過去の通行者の通行経路履歴、前記通行者情報取得手段によって取得された通行者情報、及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて、前記進入車両が前記第1のポイントに到達してからの所定時間内における前記当該通行者の通行経路を予測する通行者通行経路予測手段と、
前記第1の記憶手段によって記憶された過去の車両の通行経路履歴及び前記信号灯情報取得手段によって取得された信号灯情報に基づいて前記進入車両の通行経路を予測する車両通行経路予測手段と、
前記通行者通行経路予測手段によって予測された前記当該通行者の通行経路及び前記車両通行経路予測手段によって予測された前記進入車両の通行経路に基づいて前記事故発生位置を予測する事故発生位置予測手段と、
前記事故発生位置予測手段によって予測された事故発生位置の情報を前記進入車両に搭載された車載器に送信して通知する事故発生位置通知手段と、を有し、
前記車載器は、
前記事故発生位置通知手段によって送信された事故発生位置の情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した事故発生位置の情報を表示して前記車載器を搭載する前記進入車両の搭乗者に通知する表示通知手段と、
を有することを特徴とする事故予測通知システム。
【請求項3】
事故予測通知装置から送信される通行者情報及び車両情報を交差点からの所定の距離離れた第1の地点を含む通信範囲内において常時受信する常時受信手段と、
前記交差点への進入車両が前記第1の地点に到達した際に前記事故予測通知装置から送信される事故発生位置の情報を受信する受信手段と、
前記常時受信手段によって受信した通行者情報及び車両情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記受信手段によって前記事故発生位置の情報を受信出来なかった場合に、当該受信不可時間を計測する受信不可時間計測手段と、
前記受信不可時間計測手段によって計測された受信不可時間と、前記第2の記憶手段によって記憶された通行者情報及び車両情報に基づいて前記交差点への進入車両と前記交差点点付近を通行する通行者との間で事故が起こり得る危険位置が存在するか否かを判定する危険位置判定手段と、
前記危険位置判定手段によって危険位置が存在すると判定されたとき、前記進入車両の搭乗者に対して警告を発する警告手段と、
を有することを特徴とする車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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