事故点標定装置および事故点標定方法
【課題】ガス圧力センサからの圧力信号のみで、ガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる事故点標定装置および事故点標定方法を得ること。
【解決手段】金属容器1内に課電導体4を配置し絶縁ガス5が充填されたガス絶縁開閉装置10内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、金属容器1内に画成される複数のガス区画のそれぞれに設置されたガス圧力センサ11と、ガス圧力センサ11からのガス圧力信号16に基づきガス区画内の圧力を計測するガス圧力計測部13と、ガス圧力計測部13で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定処理部14と、を有する信号処理部15と、を備える。
【解決手段】金属容器1内に課電導体4を配置し絶縁ガス5が充填されたガス絶縁開閉装置10内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、金属容器1内に画成される複数のガス区画のそれぞれに設置されたガス圧力センサ11と、ガス圧力センサ11からのガス圧力信号16に基づきガス区画内の圧力を計測するガス圧力計測部13と、ガス圧力計測部13で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定処理部14と、を有する信号処理部15と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置で発生した閃絡事故の部位を標定する事故点標定装置および事故点標定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遮断器などの変電機器を密閉容器内に収納し絶縁性ガスを用いて据え付け体積を小型化したガス絶縁開閉装置が広く普及している。このガス絶縁開閉装置は、接地電位にある筒状の金属容器の内部に、中心導体である高電圧の課電導体が1相分または3相分収納され、金属容器と課電導体との間の空間に絶縁ガスが封入されている。そして、課電導体は、金属容器内を複数に仕切る絶縁スペーサによって支持される形で金属容器内に収納されているので、金属容器内には、絶縁スペーサで仕切られた複数のガス区画が画成されている。
【0003】
ところで、ガス絶縁開閉装置では、運用時に絶縁ガスの絶縁性能が低下すると、局部的な絶縁破壊によって部分放電(いわゆるアーク)が発生することがある。このアークが発生すると、1相分の課電導体を収納するガス絶縁開閉装置では、課電導体の金属容器への地絡事故が発生することになる。また3相分の課電導体を収納するガス絶縁開閉装置では、課電導体の金属容器への地絡事故の他に、異相の課電導体間での短絡事故も発生することになる。なお、本明細書中においては、ガス区画内で発生した地絡事故および短絡事故をガス区画内事故と称する。
【0004】
このガス区画内事故が発生した事故部位は、遮断器内のガス圧力を検出してそのガス圧力が上昇したか否かによって特定できるようにも思われるが、ガス圧力の上昇は、ガス区画内事故で発生した事故アークに起因する他に、系統で事故が発生して遮断器が事故電流を遮断した際に発生した遮断アークにも起因する。そのため、ガス圧力の上昇を単に検出するだけでは、ガス区画内の事故であるかガス区画外の事故であるかを判定することが困難である。
【0005】
このような課題を解決する手段として、下記特許文献1に開示される事故点標定装置は、遮断電流センサおよび補助接点からの信号に基づいて遮断電流を計測する遮断電流計測部と、ガス圧力センサからの圧力信号を入力としてガス圧力を計測するガス圧力計測部とを有し、遮断器内でのガス圧力上昇が、ガス区画内事故で発生した事故アークに起因するものか、遮断器が事故電流を遮断した際に発生した遮断アークに起因するものかを判定することできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしならが、上記特許文献1に開示される故障点標定システムは、ガス圧力センサ、遮断電流センサ、および補助接点などの多くのセンサを必要とするため、装置全体の構成が大掛かりになるという問題があった。また、検出した遮断電流によりガス圧力上昇分を計算したり、ガス圧力計測部で検出した圧力信号と比較したりする必要があるため、高価格な装置となってしまうという問題があった。また、既設のガス絶縁開閉装置に事故点標定装置を取付ける場合、遮断電流センサや補助接点を設置するために停電が必要となる場合がある問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガス圧力センサからの圧力信号のみで、ガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる事故点標定装置および事故点標定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号に基づいて、前記ガス区画内の圧力を計測する圧力計測部と、前記圧力計測部で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定部と、を備え、前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号として出力するガス圧力センサと、事故アーク時間と遮断アーク時間との時間差に基づく適切な整定値が設定され、ガス圧力センサからのガス圧力信号に基づいてガス区画内事故の有無を判定する判定処理部を有する信号処理部と、を備えるようにしたので、ガス圧力センサからの圧力信号のみでガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる事故点標定装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、ガス圧力計測部で計測されたガス圧力の推移と、判定処理部で演算されたガス圧力上昇値との関係を示す図である。
【図3】図3は、判定処理部で実施される判定動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる事故点標定装置および事故点標定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる事故点標定装置の構成を示す図である。筒状の金属容器1は、ガス絶縁開閉装置10のいわゆる筐体であって、接地電位にある外部導体として機能する。この金属容器1には、金属容器1と課電導体4とを絶縁するための絶縁ガス5が封入されると共に、例えば、計器用変成器、変流器などの各種の電気機器が収納されている。図1では、一例として、金属容器1内に配置される中心導体である高電圧の課電導体4と、課電導体4に流れる電流を遮断する遮断器3とが示されている。
【0014】
課電導体4は、金属容器1の長手方向に所定間隔で設置されガス空間を区分する絶縁スペーサ2に支持されている。金属容器1には、絶縁スペーサ2で画設された複数のガス区画が設けられている。なお、課電導体4は、1相分設けられる場合と3相分の設けられる場合とがあるが、図1には、便宜上1相分の課電導体4が示されている。また、図1では、遮断器3を収納したガス区画が1箇所のみ示されているが、他のガス区画にも遮断器3が設置されているものとする。
【0015】
さらに図1には、ガス区画内で発生した事故アーク6と、遮断器3の遮断動作時に発生した遮断アーク7と、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号16として出力するガス圧力センサ(圧力検出器)11と、信号処理部15とが示されている。
【0016】
本実施の形態にかかる事故点標定装置は、このガス圧力センサ11と信号処理部15で構成され、信号処理部15は、主たる構成として、1または複数のガス圧力センサ11からのガス圧力信号16を集約しアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器12と、A/D変換器12でデジタル信号に変換されたガス圧力信号に基づき各ガス区画のガス圧力値を計測するガス圧力計測部13と、ガス圧力計測部13からのガス圧力値に基づいてガス区画内における事故の有無を判定する判定処理部(判定部)14と、を有して構成されている。
【0017】
次に、図2および図3を用いて、ガス圧力計測部13で計測されるガス圧力値と、判定処理部14の判定動作を詳細に説明する。
【0018】
図2は、ガス圧力計測部13で計測されたガス圧力の推移と、判定処理部14で演算されたガス圧力上昇値との関係を示す図である。図3は、判定処理部14で実施される判定動作を説明するための図であり、図3(a)には事故電流IGと遮断電流ISとガス圧力上昇値ΔPとの関係が示され、図3(b)にはガス圧力上昇値の具体例が示されている。
【0019】
以下の説明では、図2を用いて判定処理部14で算出されるガス圧力上昇値ΔPを説明した上で、図3を用いてガス区画内事故に起因する第1のガス圧力上昇値ΔP1と遮断動作に起因する第2のガス圧力上昇値ΔP2とを説明する。
【0020】
図2には、ガス圧力計測部13で連続的に計測されたガス圧力値が示され、一方のガス圧力値は、事故が発生したガス区画のガス圧力、すなわちガス区画内事故に起因するガス圧力の推移である。他方のガス圧力値は、事故が発生していない区画のガス圧力、すなわち遮断器3が設置されていないガス区画内のガス圧力の推移である。
【0021】
さらに、図2には、判定処理部14におけるガス圧力値算出インターバルとガス圧力値計測タイミングとが示されている。判定処理部14は、一定の時間インターバルでガス圧力値をサンプリングしており、そのインターバルは例えば1秒間隔である。図2には、そのインターバルで計測されたガス圧力値が8つ示されている。なお、本実施の形態では、判定処理部14の圧力値算出インターバルを1秒としているが、これに限定されるものではない。
【0022】
以下、事故が発生した区画のガス圧力の推移と、判定処理部14によって求められるガス圧力上昇値ΔPを説明する。まず、事故発生前は、ガス圧力計測部13では一定のガス圧力値が計測される。これは、ガス区画内に絶縁ガス5が充填されているためである。次に、事故が発生した場合、ガス圧力計測部13では事故に起因して上昇するガス圧力値が計測される。このときのガス圧力上昇値ΔPは、事故アーク6に起因するものであり、判定処理部14によって求められ、以下の計算式で表すことができる。
ガス圧力上昇値ΔP=Pk−Pm
ただし、Pkはガス区画内事故発生後のガス圧力を示し、Pmはガス区画内事故発生前のガス圧力を示す。なお、図2では、ガス圧力Pkとガス圧力Pmとの時間差を例えば約7秒としている。
【0023】
ここで、ガス区画内で発生するアークは、上述したように事故アーク6と遮断アーク7とに分類することができる。
【0024】
事故アーク6の熱に起因するガス圧力上昇値をΔPGと定義すると、一般に、ガス圧力上昇値ΔPGは、(1)式で表される。
ΔPG=C・Varc・IG・tG/V×0.098・・・(1)
ΔPG:圧力上昇値(kPa)
C:係数(=0.6)
Varc:アーク電圧(V)
IG:事故電流(A)
tG:事故アーク時間(sec)
V:タンク容量(リットル)
アーク電圧Varcは、事故アーク6の地絡電圧である。
事故電流IGは、ガス絶縁開閉装置が設置される変電所の電力系統上の位置により、ほぼ決定され、非有効接地系の一線地絡事故の場合、その最小値はIG=数百A程度である。
【0025】
事故アーク時間tGは、保護リレーの動作時間と遮断器3の電流遮断時間とにより、ほぼ決定される。具体的に説明すると、例えば、ガス絶縁開閉装置が運用中にガス区画内事故が発生した場合、図1に示すような事故アーク6が発生する。このときの課電導体4に流れる電流は変流器でモニタされ、その電流値が所定の値を超えたとき図示しない保護リレーが動作する。そして、保護リレーから遮断器3に対してCB動作指令が出力され、遮断器3はCB動作指令によって開放され、事故アーク6が消弧される。なお、保護リレーが動作してからCB動作指令が出力されるまでの時間は、数百ms程度であり、CB動作指令が出力されてから事故アーク6が消弧されるまでの時間は、数十ms程度である。従って、事故アーク時間tGは、保護リレーが動作してから事故アーク6が消弧されるまでの時間(数百ms)となる。
【0026】
このため、各ガス区画のタンク容量Vが決まれば、ガス圧力上昇値ΔPGを求めることができる。非有効接地系の一線地絡事故の場合、例えば、IG=数百A、tG=数百ms、Varc=数千V(距離d=数cm、電界強度E=数百V/cm)と設定することができる。
【0027】
遮断アーク7の熱に起因するガス圧力上昇値をΔPARCと定義すると、ガス圧力上昇値 ΔPARCは、(2)式で表される。
ΔPARC=C・Varc・IS・tS/V×0.098・・・(2)
C:係数(=0.6)
Varc:アーク電圧(V)
IS:遮断電流(A)
tS:遮断アーク時間(sec)
V:タンク容量(リットル)
アーク電圧Varcは、遮断器3の遮断動作時の電圧である。
遮断電流ISは、遮断器3が遮断動作をする際に課電導体4に流れる電流である。
遮断アーク時間tSは、CB動作指令が出力されてから遮断アーク7が消えるまでの時間(数十ms)である。
【0028】
このため、各ガス区画のタンク容量Vが決まれば、ガス圧力上昇値をΔPGと同様に、ガス圧力上昇値ΔPARCを求めることができる。非有効接地系の一線地絡事故の場合、例えば、IS=0〜数千A、tS=数十ms、Varc=数百V(距離d=数cm、電界強度E=数十V/cm)と設定することができる。
【0029】
ここで、ガス区画内事故が発生した場合、ガス圧力センサ11によって検出されるガス圧力は、事故アーク6に起因するガス圧力だけでなく、遮断器3の遮断動作によって発生する遮断アーク7に起因するガス圧力も含まれる。この遮断器3の遮断動作は、事故アーク6の発生に伴うものである。すなわち、ガス区画内事故が発生した場合、ガス圧力計測部13では、P事故アーク6に起因するガス圧力上昇値ΔPGだけでなく、遮断アーク7に起因するガス圧力上昇値ΔPARCも計測される。
【0030】
以下、このことを図3と関連付けて説明する。
まず、ガス区画内事故が発生した場合、そのガス区画の第1のガス圧力上昇値ΔP1は、(3)式で表される。
ΔP1=ΔPG+ΔPARC・・・(3)
一方、ガス区画外で事故が発生した場合、遮断アーク7が発生したガス区画の第2のガス圧力上昇値ΔP2は、(4)式で表される。
ΔP2=ΔPARC・・・(4)
【0031】
(3)式に含まれるガス圧力上昇値ΔPGは、前述した(1)式によって得られる値であり、(3)式および(4)式に含まれるガス圧力上昇値ΔPARCは、(2)式によって得られる値である。ただし、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値は、図3(a)に示すようにガス圧力上昇値ΔPGの下限値よりも低い値となる傾向がある。これは、事故アーク時間tGと遮断アーク時間tsとの差が約20倍であることによる。すなわち、ガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGを求める各パラメータの中で、アーク時間(tG、ts)の差分が他のパラメータ差分よりも支配的となるためである。
【0032】
なお、図3(a)に示すガス圧力上昇値ΔPGの下限値は、非有効接地系の一線地絡事故の場合において、各パラメータを例えばtG=数百ms、Varc=数千Vとしたときのガス圧力上昇値を、概念的に表したものであり、事故電流IGが例えばX(A)からY(A)まで増加したときの値となる。また、図3(a)に示すガス圧力上昇値ΔPARCの上限値は、上述同様に、各パラメータを例えばtS=数十ms、Varc=数百Vとしたときのガス圧力上昇値を、概念的に表したものであり、遮断電流Isが例えば0から数千(A)まで増加したときの値となる。ただし、これらの数値は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0033】
次に、図3(a)の上側に示される斜線部分は、(3)式で得られる第1のガス圧力上昇値ΔP1の値である。ガス圧力上昇値ΔPGの下限値より上側全体が斜線で示されている理由は以下の通りである。すなわち、(3)式で得られる第1のガス圧力上昇値ΔP1は、ガス圧力上昇値ΔPGおよびガス圧力上昇値ΔPARCが上述した各パラメータにより変わりうるため、必ずしも一意に決まるものではないからである。
【0034】
また、図3(a)の下側に示される斜線部分は、(4)式で得られる第2のガス圧力上昇値ΔP2の値である。ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より下側全体が斜線で示されている理由は以下の通りである。遮断器3の遮断タイミングは、課電導体4に流れる交流電流の零点周期に応じて変動するため、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値が、例えば遮断アーク時間tS=数十msのときの値である場合、遮断アーク時間tS=数msのときのガス圧力上昇値ΔPARCは、図3(a)に示されるガス圧力上昇値ΔPARCの上限値よりも低い値となる。
【0035】
図3(b)は、図3(a)に示されるガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGとの関係を具体的に説明するための図である。2点鎖線は、遮断アーク時間tS=数十msのときのガス圧力上昇値ΔPARCを示し、実線は、事故アーク時間tG=数百msのときのガス圧力上昇値ΔPGを示す。1点鎖線は、これらのガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGとを加算した値であり、ガス圧力上昇値ΔPARCをガス圧力上昇値ΔPGに上乗したような値となる。
【0036】
このように、ガス圧力上昇値ΔPGの下限値は、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値よりも高くなる傾向があるため、ガス圧力上昇値ΔPGの下限値とガス圧力上昇値ΔPARCの上限値との間には、図3(a)に示すように、何れの領域(斜線部分)に属さない領域が存在し、その領域のガス圧力上昇値ΔPは一意に決まる値となることがわかる。
【0037】
換言すれば、その領域のガス圧力上昇値ΔPは、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間(事故アーク時間tG)と、閃絡事故発生時に通電導体に印加されるアーク電圧Varcと、閃絡事故発生時に通電導体に流れる事故電流IGとに基づいて算出される圧力上昇値ΔPGの下限値より小さく、かつ、ガス区画に設置された遮断器3に対する動作開始指令が出力されてから遮断器3の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間(遮断アーク時間ts)と、遮断器3の遮断動作時のアーク電圧Varcと、遮断器3が遮断動作をする際の遮断電流(アーク電流)Isとに基づいて算出されるガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より大きい値となる。
【0038】
本実施の形態にかかる事故点標定装置は、この圧力上昇値ΔPGの下限値より小さく、かつ、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より大きいガス圧力上昇値ΔP(整定値ΔP0)を用いて、ガス区画内事故であるかガス区画外事故であるかを判定するように構成されている。例えば、判定処理部14には、図3に示すように適切な整定値ΔP0が設定される。
【0039】
遮断電流ISが所定の電流値I0(例えば数千A)以下の場合、この整定値ΔP0と第1のガス圧力上昇値ΔP1と第2のガス圧力上昇値ΔP2との間には、以下の関係が成り立つ。
ΔP1>ΔP0>ΔP2
従って、判定処理部14は、整定値ΔP0よりも高いガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生した、と判定することが可能である。
【0040】
なお、一般的に、非有効接地系(系統の中性点を、抵抗器等を通して接地する方式で事故電流を抑制)の低い電圧階級(例えば定格電圧22kV〜154kV)のガス絶縁開閉装置の場合、遮断電流ISが所定の電流値I0(例えば数千A)以上になることはほとんどないものの、遮断電流ISが所定の電流値I0以上となった場合には、整定値ΔP0と第2のガス圧力上昇値ΔP2との間には、以下の関係が成り立つ。
ΔP2>ΔP0
このように、極まれにガス圧力上昇値ΔP2が整定値ΔP0を上回ることがある。従って、判定処理部14は、ガス区画内事故が発生していない正常な区画を含む複数の区画でガス区画内事故が発生した、と判定する蓋然性はある。ただし、判定処理部14がこのように判定した場合でも、このように判定される区画数は、全体の区画数と比較して十分小数であるので、ガス区画内事故が発生した区画を絞り込むことは容易であり、このような判定が迅速な事故復旧の妨げとなることはない。
【0041】
次に動作を説明する。
ガス圧力センサ11は、スペーサ2で区切られた各ガス区画内のガス圧力をモニタしており、ガス圧力センサ11によって検出されたガス圧力は、ガス圧力信号16(アナログ)としてA/D変換器12に取り込まれる。A/D変換器12に取り込まれたガス圧力信号16は、A/D変換器12によってデジタル信号に変換されガス圧力計測部13に出力される。ガス圧力計測部13は、A/D変換器12からのガス圧力信号に基づいて、各ガス区画のガス圧力値を常時計測しており、ガス圧力計測部13で計測されたガス圧力値は、判定処理部14に取り込まれる。判定処理部14では、図2に示す通り、ある一定の時間インターバルで圧力のサンプリングを行い、ある時刻で計測された圧力Pkと圧力Pkのm秒前に計測された圧力Pmとに基づいてガス圧力上昇値ΔPを算出する。
【0042】
ここで、ガス区画内事故が発生したガス区画では、事故アーク6のエネルギーによって、図2に示すようにガス圧力が上昇するため、判定処理部14では(1)式のガス圧力上昇値ΔPGに相当するガス圧力上昇値ΔPが算出される。この算出されたガス圧力上昇値ΔPは、図3で説明したように整定値ΔP0より高い値となるので、判定処理部14は、このガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生した、と判定することができる。
【0043】
他方、ガス区画外で事故が発生した場合、遮断アーク7が発生したガス区画では、遮断アーク7のエネルギーによりガス圧力が上昇する。判定処理部14では(2)式のガス圧力上昇値ΔPARCに相当するガス圧力上昇値ΔPが算出される。このガス圧力上昇値ΔPは、図3で説明したように整定値ΔP0より低い値となるので、判定処理部14は、このガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生していない、と判定することができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる事故点標定装置は、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号16として出力するガス圧力センサ11と、事故アーク時間tGと遮断アーク時間tSとの時間差に基づく適切な整定値ΔP0が設定されガス圧力センサ11からのガス圧力信号16に基づいてガス区画内事故の有無を判定する判定処理部14を有する信号処理部15とを備えるようにしたので、電流センサなどの複数種類のセンサを用いることなく、ガス圧力センサ11のみでガス区画内の事故であるかガス区画外の事故であるかを判定することが可能となる。従来の技術では、複数種類のセンサの設置および改修に伴うコストが必要となるだけでなく、センサの種類が多いためガス圧力を適切に計測するためにはソフトウェアの改修が大がかりになるという問題があった。本実施の形態にかかる事故点標定装置によれば、ガス圧力センサ11のみ用いればよいため、センサの設置が容易でありソフトウェアの改修規模が最小限で済むため、ガス区画内事故の有無を簡易な装置構成で判定する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明は、ガス絶縁開閉装置で発生した閃絡事故の事故部位を特定する事故点標定装置および事故点標定方法に適用可能であり、特に、ガス圧力センサからの圧力信号のみでガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる発明として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 金属容器
2 絶縁スペーサ
3 遮断器
4 課電導体
5 絶縁ガス
6 事故アーク
7 遮断アーク
10 ガス絶縁開閉装置
11 ガス圧力センサ(圧力検出器)
12 A/D変換器
13 ガス圧力計測部
14 判定処理部(判定部)
15 信号処理部
16 ガス圧力信号
IG 事故電流
IS 遮断電流
ΔP ガス圧力上昇値
ΔP0 整定値
ΔP1 第1のガス圧力上昇値
ΔP2 第2のガス圧力上昇値
Pk ガス区画内事故発生後のガス圧力
Pm ガス区画内事故発生前のガス圧力
ΔPARC 遮断アークのエネルギーによるガス圧力上昇値
ΔPG 事故アークのエネルギーによるガス圧力上昇値
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置で発生した閃絡事故の部位を標定する事故点標定装置および事故点標定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、遮断器などの変電機器を密閉容器内に収納し絶縁性ガスを用いて据え付け体積を小型化したガス絶縁開閉装置が広く普及している。このガス絶縁開閉装置は、接地電位にある筒状の金属容器の内部に、中心導体である高電圧の課電導体が1相分または3相分収納され、金属容器と課電導体との間の空間に絶縁ガスが封入されている。そして、課電導体は、金属容器内を複数に仕切る絶縁スペーサによって支持される形で金属容器内に収納されているので、金属容器内には、絶縁スペーサで仕切られた複数のガス区画が画成されている。
【0003】
ところで、ガス絶縁開閉装置では、運用時に絶縁ガスの絶縁性能が低下すると、局部的な絶縁破壊によって部分放電(いわゆるアーク)が発生することがある。このアークが発生すると、1相分の課電導体を収納するガス絶縁開閉装置では、課電導体の金属容器への地絡事故が発生することになる。また3相分の課電導体を収納するガス絶縁開閉装置では、課電導体の金属容器への地絡事故の他に、異相の課電導体間での短絡事故も発生することになる。なお、本明細書中においては、ガス区画内で発生した地絡事故および短絡事故をガス区画内事故と称する。
【0004】
このガス区画内事故が発生した事故部位は、遮断器内のガス圧力を検出してそのガス圧力が上昇したか否かによって特定できるようにも思われるが、ガス圧力の上昇は、ガス区画内事故で発生した事故アークに起因する他に、系統で事故が発生して遮断器が事故電流を遮断した際に発生した遮断アークにも起因する。そのため、ガス圧力の上昇を単に検出するだけでは、ガス区画内の事故であるかガス区画外の事故であるかを判定することが困難である。
【0005】
このような課題を解決する手段として、下記特許文献1に開示される事故点標定装置は、遮断電流センサおよび補助接点からの信号に基づいて遮断電流を計測する遮断電流計測部と、ガス圧力センサからの圧力信号を入力としてガス圧力を計測するガス圧力計測部とを有し、遮断器内でのガス圧力上昇が、ガス区画内事故で発生した事故アークに起因するものか、遮断器が事故電流を遮断した際に発生した遮断アークに起因するものかを判定することできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしならが、上記特許文献1に開示される故障点標定システムは、ガス圧力センサ、遮断電流センサ、および補助接点などの多くのセンサを必要とするため、装置全体の構成が大掛かりになるという問題があった。また、検出した遮断電流によりガス圧力上昇分を計算したり、ガス圧力計測部で検出した圧力信号と比較したりする必要があるため、高価格な装置となってしまうという問題があった。また、既設のガス絶縁開閉装置に事故点標定装置を取付ける場合、遮断電流センサや補助接点を設置するために停電が必要となる場合がある問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガス圧力センサからの圧力信号のみで、ガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる事故点標定装置および事故点標定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号に基づいて、前記ガス区画内の圧力を計測する圧力計測部と、前記圧力計測部で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定部と、を備え、前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号として出力するガス圧力センサと、事故アーク時間と遮断アーク時間との時間差に基づく適切な整定値が設定され、ガス圧力センサからのガス圧力信号に基づいてガス区画内事故の有無を判定する判定処理部を有する信号処理部と、を備えるようにしたので、ガス圧力センサからの圧力信号のみでガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる事故点標定装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、ガス圧力計測部で計測されたガス圧力の推移と、判定処理部で演算されたガス圧力上昇値との関係を示す図である。
【図3】図3は、判定処理部で実施される判定動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる事故点標定装置および事故点標定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる事故点標定装置の構成を示す図である。筒状の金属容器1は、ガス絶縁開閉装置10のいわゆる筐体であって、接地電位にある外部導体として機能する。この金属容器1には、金属容器1と課電導体4とを絶縁するための絶縁ガス5が封入されると共に、例えば、計器用変成器、変流器などの各種の電気機器が収納されている。図1では、一例として、金属容器1内に配置される中心導体である高電圧の課電導体4と、課電導体4に流れる電流を遮断する遮断器3とが示されている。
【0014】
課電導体4は、金属容器1の長手方向に所定間隔で設置されガス空間を区分する絶縁スペーサ2に支持されている。金属容器1には、絶縁スペーサ2で画設された複数のガス区画が設けられている。なお、課電導体4は、1相分設けられる場合と3相分の設けられる場合とがあるが、図1には、便宜上1相分の課電導体4が示されている。また、図1では、遮断器3を収納したガス区画が1箇所のみ示されているが、他のガス区画にも遮断器3が設置されているものとする。
【0015】
さらに図1には、ガス区画内で発生した事故アーク6と、遮断器3の遮断動作時に発生した遮断アーク7と、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号16として出力するガス圧力センサ(圧力検出器)11と、信号処理部15とが示されている。
【0016】
本実施の形態にかかる事故点標定装置は、このガス圧力センサ11と信号処理部15で構成され、信号処理部15は、主たる構成として、1または複数のガス圧力センサ11からのガス圧力信号16を集約しアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器12と、A/D変換器12でデジタル信号に変換されたガス圧力信号に基づき各ガス区画のガス圧力値を計測するガス圧力計測部13と、ガス圧力計測部13からのガス圧力値に基づいてガス区画内における事故の有無を判定する判定処理部(判定部)14と、を有して構成されている。
【0017】
次に、図2および図3を用いて、ガス圧力計測部13で計測されるガス圧力値と、判定処理部14の判定動作を詳細に説明する。
【0018】
図2は、ガス圧力計測部13で計測されたガス圧力の推移と、判定処理部14で演算されたガス圧力上昇値との関係を示す図である。図3は、判定処理部14で実施される判定動作を説明するための図であり、図3(a)には事故電流IGと遮断電流ISとガス圧力上昇値ΔPとの関係が示され、図3(b)にはガス圧力上昇値の具体例が示されている。
【0019】
以下の説明では、図2を用いて判定処理部14で算出されるガス圧力上昇値ΔPを説明した上で、図3を用いてガス区画内事故に起因する第1のガス圧力上昇値ΔP1と遮断動作に起因する第2のガス圧力上昇値ΔP2とを説明する。
【0020】
図2には、ガス圧力計測部13で連続的に計測されたガス圧力値が示され、一方のガス圧力値は、事故が発生したガス区画のガス圧力、すなわちガス区画内事故に起因するガス圧力の推移である。他方のガス圧力値は、事故が発生していない区画のガス圧力、すなわち遮断器3が設置されていないガス区画内のガス圧力の推移である。
【0021】
さらに、図2には、判定処理部14におけるガス圧力値算出インターバルとガス圧力値計測タイミングとが示されている。判定処理部14は、一定の時間インターバルでガス圧力値をサンプリングしており、そのインターバルは例えば1秒間隔である。図2には、そのインターバルで計測されたガス圧力値が8つ示されている。なお、本実施の形態では、判定処理部14の圧力値算出インターバルを1秒としているが、これに限定されるものではない。
【0022】
以下、事故が発生した区画のガス圧力の推移と、判定処理部14によって求められるガス圧力上昇値ΔPを説明する。まず、事故発生前は、ガス圧力計測部13では一定のガス圧力値が計測される。これは、ガス区画内に絶縁ガス5が充填されているためである。次に、事故が発生した場合、ガス圧力計測部13では事故に起因して上昇するガス圧力値が計測される。このときのガス圧力上昇値ΔPは、事故アーク6に起因するものであり、判定処理部14によって求められ、以下の計算式で表すことができる。
ガス圧力上昇値ΔP=Pk−Pm
ただし、Pkはガス区画内事故発生後のガス圧力を示し、Pmはガス区画内事故発生前のガス圧力を示す。なお、図2では、ガス圧力Pkとガス圧力Pmとの時間差を例えば約7秒としている。
【0023】
ここで、ガス区画内で発生するアークは、上述したように事故アーク6と遮断アーク7とに分類することができる。
【0024】
事故アーク6の熱に起因するガス圧力上昇値をΔPGと定義すると、一般に、ガス圧力上昇値ΔPGは、(1)式で表される。
ΔPG=C・Varc・IG・tG/V×0.098・・・(1)
ΔPG:圧力上昇値(kPa)
C:係数(=0.6)
Varc:アーク電圧(V)
IG:事故電流(A)
tG:事故アーク時間(sec)
V:タンク容量(リットル)
アーク電圧Varcは、事故アーク6の地絡電圧である。
事故電流IGは、ガス絶縁開閉装置が設置される変電所の電力系統上の位置により、ほぼ決定され、非有効接地系の一線地絡事故の場合、その最小値はIG=数百A程度である。
【0025】
事故アーク時間tGは、保護リレーの動作時間と遮断器3の電流遮断時間とにより、ほぼ決定される。具体的に説明すると、例えば、ガス絶縁開閉装置が運用中にガス区画内事故が発生した場合、図1に示すような事故アーク6が発生する。このときの課電導体4に流れる電流は変流器でモニタされ、その電流値が所定の値を超えたとき図示しない保護リレーが動作する。そして、保護リレーから遮断器3に対してCB動作指令が出力され、遮断器3はCB動作指令によって開放され、事故アーク6が消弧される。なお、保護リレーが動作してからCB動作指令が出力されるまでの時間は、数百ms程度であり、CB動作指令が出力されてから事故アーク6が消弧されるまでの時間は、数十ms程度である。従って、事故アーク時間tGは、保護リレーが動作してから事故アーク6が消弧されるまでの時間(数百ms)となる。
【0026】
このため、各ガス区画のタンク容量Vが決まれば、ガス圧力上昇値ΔPGを求めることができる。非有効接地系の一線地絡事故の場合、例えば、IG=数百A、tG=数百ms、Varc=数千V(距離d=数cm、電界強度E=数百V/cm)と設定することができる。
【0027】
遮断アーク7の熱に起因するガス圧力上昇値をΔPARCと定義すると、ガス圧力上昇値 ΔPARCは、(2)式で表される。
ΔPARC=C・Varc・IS・tS/V×0.098・・・(2)
C:係数(=0.6)
Varc:アーク電圧(V)
IS:遮断電流(A)
tS:遮断アーク時間(sec)
V:タンク容量(リットル)
アーク電圧Varcは、遮断器3の遮断動作時の電圧である。
遮断電流ISは、遮断器3が遮断動作をする際に課電導体4に流れる電流である。
遮断アーク時間tSは、CB動作指令が出力されてから遮断アーク7が消えるまでの時間(数十ms)である。
【0028】
このため、各ガス区画のタンク容量Vが決まれば、ガス圧力上昇値をΔPGと同様に、ガス圧力上昇値ΔPARCを求めることができる。非有効接地系の一線地絡事故の場合、例えば、IS=0〜数千A、tS=数十ms、Varc=数百V(距離d=数cm、電界強度E=数十V/cm)と設定することができる。
【0029】
ここで、ガス区画内事故が発生した場合、ガス圧力センサ11によって検出されるガス圧力は、事故アーク6に起因するガス圧力だけでなく、遮断器3の遮断動作によって発生する遮断アーク7に起因するガス圧力も含まれる。この遮断器3の遮断動作は、事故アーク6の発生に伴うものである。すなわち、ガス区画内事故が発生した場合、ガス圧力計測部13では、P事故アーク6に起因するガス圧力上昇値ΔPGだけでなく、遮断アーク7に起因するガス圧力上昇値ΔPARCも計測される。
【0030】
以下、このことを図3と関連付けて説明する。
まず、ガス区画内事故が発生した場合、そのガス区画の第1のガス圧力上昇値ΔP1は、(3)式で表される。
ΔP1=ΔPG+ΔPARC・・・(3)
一方、ガス区画外で事故が発生した場合、遮断アーク7が発生したガス区画の第2のガス圧力上昇値ΔP2は、(4)式で表される。
ΔP2=ΔPARC・・・(4)
【0031】
(3)式に含まれるガス圧力上昇値ΔPGは、前述した(1)式によって得られる値であり、(3)式および(4)式に含まれるガス圧力上昇値ΔPARCは、(2)式によって得られる値である。ただし、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値は、図3(a)に示すようにガス圧力上昇値ΔPGの下限値よりも低い値となる傾向がある。これは、事故アーク時間tGと遮断アーク時間tsとの差が約20倍であることによる。すなわち、ガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGを求める各パラメータの中で、アーク時間(tG、ts)の差分が他のパラメータ差分よりも支配的となるためである。
【0032】
なお、図3(a)に示すガス圧力上昇値ΔPGの下限値は、非有効接地系の一線地絡事故の場合において、各パラメータを例えばtG=数百ms、Varc=数千Vとしたときのガス圧力上昇値を、概念的に表したものであり、事故電流IGが例えばX(A)からY(A)まで増加したときの値となる。また、図3(a)に示すガス圧力上昇値ΔPARCの上限値は、上述同様に、各パラメータを例えばtS=数十ms、Varc=数百Vとしたときのガス圧力上昇値を、概念的に表したものであり、遮断電流Isが例えば0から数千(A)まで増加したときの値となる。ただし、これらの数値は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0033】
次に、図3(a)の上側に示される斜線部分は、(3)式で得られる第1のガス圧力上昇値ΔP1の値である。ガス圧力上昇値ΔPGの下限値より上側全体が斜線で示されている理由は以下の通りである。すなわち、(3)式で得られる第1のガス圧力上昇値ΔP1は、ガス圧力上昇値ΔPGおよびガス圧力上昇値ΔPARCが上述した各パラメータにより変わりうるため、必ずしも一意に決まるものではないからである。
【0034】
また、図3(a)の下側に示される斜線部分は、(4)式で得られる第2のガス圧力上昇値ΔP2の値である。ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より下側全体が斜線で示されている理由は以下の通りである。遮断器3の遮断タイミングは、課電導体4に流れる交流電流の零点周期に応じて変動するため、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値が、例えば遮断アーク時間tS=数十msのときの値である場合、遮断アーク時間tS=数msのときのガス圧力上昇値ΔPARCは、図3(a)に示されるガス圧力上昇値ΔPARCの上限値よりも低い値となる。
【0035】
図3(b)は、図3(a)に示されるガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGとの関係を具体的に説明するための図である。2点鎖線は、遮断アーク時間tS=数十msのときのガス圧力上昇値ΔPARCを示し、実線は、事故アーク時間tG=数百msのときのガス圧力上昇値ΔPGを示す。1点鎖線は、これらのガス圧力上昇値ΔPARCとガス圧力上昇値ΔPGとを加算した値であり、ガス圧力上昇値ΔPARCをガス圧力上昇値ΔPGに上乗したような値となる。
【0036】
このように、ガス圧力上昇値ΔPGの下限値は、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値よりも高くなる傾向があるため、ガス圧力上昇値ΔPGの下限値とガス圧力上昇値ΔPARCの上限値との間には、図3(a)に示すように、何れの領域(斜線部分)に属さない領域が存在し、その領域のガス圧力上昇値ΔPは一意に決まる値となることがわかる。
【0037】
換言すれば、その領域のガス圧力上昇値ΔPは、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間(事故アーク時間tG)と、閃絡事故発生時に通電導体に印加されるアーク電圧Varcと、閃絡事故発生時に通電導体に流れる事故電流IGとに基づいて算出される圧力上昇値ΔPGの下限値より小さく、かつ、ガス区画に設置された遮断器3に対する動作開始指令が出力されてから遮断器3の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間(遮断アーク時間ts)と、遮断器3の遮断動作時のアーク電圧Varcと、遮断器3が遮断動作をする際の遮断電流(アーク電流)Isとに基づいて算出されるガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より大きい値となる。
【0038】
本実施の形態にかかる事故点標定装置は、この圧力上昇値ΔPGの下限値より小さく、かつ、ガス圧力上昇値ΔPARCの上限値より大きいガス圧力上昇値ΔP(整定値ΔP0)を用いて、ガス区画内事故であるかガス区画外事故であるかを判定するように構成されている。例えば、判定処理部14には、図3に示すように適切な整定値ΔP0が設定される。
【0039】
遮断電流ISが所定の電流値I0(例えば数千A)以下の場合、この整定値ΔP0と第1のガス圧力上昇値ΔP1と第2のガス圧力上昇値ΔP2との間には、以下の関係が成り立つ。
ΔP1>ΔP0>ΔP2
従って、判定処理部14は、整定値ΔP0よりも高いガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生した、と判定することが可能である。
【0040】
なお、一般的に、非有効接地系(系統の中性点を、抵抗器等を通して接地する方式で事故電流を抑制)の低い電圧階級(例えば定格電圧22kV〜154kV)のガス絶縁開閉装置の場合、遮断電流ISが所定の電流値I0(例えば数千A)以上になることはほとんどないものの、遮断電流ISが所定の電流値I0以上となった場合には、整定値ΔP0と第2のガス圧力上昇値ΔP2との間には、以下の関係が成り立つ。
ΔP2>ΔP0
このように、極まれにガス圧力上昇値ΔP2が整定値ΔP0を上回ることがある。従って、判定処理部14は、ガス区画内事故が発生していない正常な区画を含む複数の区画でガス区画内事故が発生した、と判定する蓋然性はある。ただし、判定処理部14がこのように判定した場合でも、このように判定される区画数は、全体の区画数と比較して十分小数であるので、ガス区画内事故が発生した区画を絞り込むことは容易であり、このような判定が迅速な事故復旧の妨げとなることはない。
【0041】
次に動作を説明する。
ガス圧力センサ11は、スペーサ2で区切られた各ガス区画内のガス圧力をモニタしており、ガス圧力センサ11によって検出されたガス圧力は、ガス圧力信号16(アナログ)としてA/D変換器12に取り込まれる。A/D変換器12に取り込まれたガス圧力信号16は、A/D変換器12によってデジタル信号に変換されガス圧力計測部13に出力される。ガス圧力計測部13は、A/D変換器12からのガス圧力信号に基づいて、各ガス区画のガス圧力値を常時計測しており、ガス圧力計測部13で計測されたガス圧力値は、判定処理部14に取り込まれる。判定処理部14では、図2に示す通り、ある一定の時間インターバルで圧力のサンプリングを行い、ある時刻で計測された圧力Pkと圧力Pkのm秒前に計測された圧力Pmとに基づいてガス圧力上昇値ΔPを算出する。
【0042】
ここで、ガス区画内事故が発生したガス区画では、事故アーク6のエネルギーによって、図2に示すようにガス圧力が上昇するため、判定処理部14では(1)式のガス圧力上昇値ΔPGに相当するガス圧力上昇値ΔPが算出される。この算出されたガス圧力上昇値ΔPは、図3で説明したように整定値ΔP0より高い値となるので、判定処理部14は、このガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生した、と判定することができる。
【0043】
他方、ガス区画外で事故が発生した場合、遮断アーク7が発生したガス区画では、遮断アーク7のエネルギーによりガス圧力が上昇する。判定処理部14では(2)式のガス圧力上昇値ΔPARCに相当するガス圧力上昇値ΔPが算出される。このガス圧力上昇値ΔPは、図3で説明したように整定値ΔP0より低い値となるので、判定処理部14は、このガス圧力上昇値ΔPが検出されたガス区画ではガス区画内事故が発生していない、と判定することができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる事故点標定装置は、各ガス区画内で発生したアークに起因するガス圧力を検出してガス圧力信号16として出力するガス圧力センサ11と、事故アーク時間tGと遮断アーク時間tSとの時間差に基づく適切な整定値ΔP0が設定されガス圧力センサ11からのガス圧力信号16に基づいてガス区画内事故の有無を判定する判定処理部14を有する信号処理部15とを備えるようにしたので、電流センサなどの複数種類のセンサを用いることなく、ガス圧力センサ11のみでガス区画内の事故であるかガス区画外の事故であるかを判定することが可能となる。従来の技術では、複数種類のセンサの設置および改修に伴うコストが必要となるだけでなく、センサの種類が多いためガス圧力を適切に計測するためにはソフトウェアの改修が大がかりになるという問題があった。本実施の形態にかかる事故点標定装置によれば、ガス圧力センサ11のみ用いればよいため、センサの設置が容易でありソフトウェアの改修規模が最小限で済むため、ガス区画内事故の有無を簡易な装置構成で判定する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明は、ガス絶縁開閉装置で発生した閃絡事故の事故部位を特定する事故点標定装置および事故点標定方法に適用可能であり、特に、ガス圧力センサからの圧力信号のみでガス区画内の事故であるか系統内の事故であるかを判定することができる発明として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 金属容器
2 絶縁スペーサ
3 遮断器
4 課電導体
5 絶縁ガス
6 事故アーク
7 遮断アーク
10 ガス絶縁開閉装置
11 ガス圧力センサ(圧力検出器)
12 A/D変換器
13 ガス圧力計測部
14 判定処理部(判定部)
15 信号処理部
16 ガス圧力信号
IG 事故電流
IS 遮断電流
ΔP ガス圧力上昇値
ΔP0 整定値
ΔP1 第1のガス圧力上昇値
ΔP2 第2のガス圧力上昇値
Pk ガス区画内事故発生後のガス圧力
Pm ガス区画内事故発生前のガス圧力
ΔPARC 遮断アークのエネルギーによるガス圧力上昇値
ΔPG 事故アークのエネルギーによるガス圧力上昇値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号に基づいて、前記ガス区画内の圧力を計測する圧力計測部と、
前記圧力計測部で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定部と、
を備え、
前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする事故点標定装置。
【請求項2】
前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間と、閃絡事故発生時に通電導体に印加される電圧と、閃絡事故発生時に通電導体に流れる電流とに基づいて算出される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間と、遮断動作時のアーク電圧と、遮断動作時のアーク電流とに基づいて算出される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする請求項1に記載の事故点標定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記圧力上昇値が前記整定値より小さいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生していないと判定すること、を特徴とする請求項1または2に記載の事故点標定装置。
【請求項4】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置に適用可能な事故点標定方法であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号を受信する圧力信号受信ステップと、
前記圧力信号に基づき、ガス区画内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記圧力計測ステップにて計測された圧力の圧力値を所定のタイミングで算出する圧力値算出ステップと、
前記圧力値算出ステップにて算出された圧力値に基づいて圧力上昇値を演算する圧力上昇値演算ステップと、
閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい整定値と、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値と、を比較する比較ステップと、
を含むことを特徴とする事故点標定方法。
【請求項5】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置に適用可能な事故点標定方法であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号を受信する圧力信号受信ステップと、
前記圧力信号に基づき、ガス区画内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記圧力計測ステップにて計測された圧力の圧力値を所定のタイミングで算出する圧力値算出ステップと、
前記圧力値算出ステップにて算出された圧力値に基づいて圧力上昇値を演算する圧力上昇値演算ステップと、
閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間と、閃絡事故発生時に通電導体に印加される電圧と、閃絡事故発生時に通電導体に流れる電流とに基づいて算出される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間と、遮断動作時のアーク電圧と、遮断動作時のアーク電流とに基づいて算出される圧力上昇値の上限値より大きい整定値と、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値と、を比較する比較ステップと、
を含むことを特徴とする事故点標定方法。
【請求項6】
前記比較ステップは、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値が前記整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定し、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値が前記整定値より小さいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生していないと判定する判定ステップを含むこと、を特徴とする請求項4または5に記載の事故点標定方法。
【請求項1】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号に基づいて、前記ガス区画内の圧力を計測する圧力計測部と、
前記圧力計測部で計測された圧力の圧力上昇値が所定の整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定する判定部と、
を備え、
前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする事故点標定装置。
【請求項2】
前記整定値は、閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間と、閃絡事故発生時に通電導体に印加される電圧と、閃絡事故発生時に通電導体に流れる電流とに基づいて算出される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間と、遮断動作時のアーク電圧と、遮断動作時のアーク電流とに基づいて算出される圧力上昇値の上限値より大きい値に設定されていること、を特徴とする請求項1に記載の事故点標定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記圧力上昇値が前記整定値より小さいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生していないと判定すること、を特徴とする請求項1または2に記載の事故点標定装置。
【請求項4】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置に適用可能な事故点標定方法であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号を受信する圧力信号受信ステップと、
前記圧力信号に基づき、ガス区画内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記圧力計測ステップにて計測された圧力の圧力値を所定のタイミングで算出する圧力値算出ステップと、
前記圧力値算出ステップにて算出された圧力値に基づいて圧力上昇値を演算する圧力上昇値演算ステップと、
閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間において想定される圧力上昇値の上限値より大きい整定値と、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値と、を比較する比較ステップと、
を含むことを特徴とする事故点標定方法。
【請求項5】
筒状の金属容器内に通電導体を配置し絶縁ガスを充填したガス絶縁開閉装置内で発生した閃絡事故の事故点を標定する事故点標定装置に適用可能な事故点標定方法であって、
前記金属容器内に画成されるガス区画に設置された圧力検出器からの圧力信号を受信する圧力信号受信ステップと、
前記圧力信号に基づき、ガス区画内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記圧力計測ステップにて計測された圧力の圧力値を所定のタイミングで算出する圧力値算出ステップと、
前記圧力値算出ステップにて算出された圧力値に基づいて圧力上昇値を演算する圧力上昇値演算ステップと、
閃絡事故発生時点から閃絡事故発生に伴うアークが消弧するまでの期間と、閃絡事故発生時に通電導体に印加される電圧と、閃絡事故発生時に通電導体に流れる電流とに基づいて算出される圧力上昇値の下限値より小さく、かつ、前記ガス区画に設置された遮断器に対する動作開始指令が出力されてから前記遮断器の遮断動作に伴うアークが消弧するまでの期間と、遮断動作時のアーク電圧と、遮断動作時のアーク電流とに基づいて算出される圧力上昇値の上限値より大きい整定値と、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値と、を比較する比較ステップと、
を含むことを特徴とする事故点標定方法。
【請求項6】
前記比較ステップは、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値が前記整定値より大きいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生したと判定し、前記圧力上昇値演算ステップにて演算された圧力上昇値が前記整定値より小さいとき圧力信号が検出されたガス区画で閃絡事故が発生していないと判定する判定ステップを含むこと、を特徴とする請求項4または5に記載の事故点標定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2011−244567(P2011−244567A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113306(P2010−113306)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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