事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法
【課題】提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる事故要因領域特定装置を提供すること。
【解決手段】事故要因領域特定装置100は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する装置であって、ヒヤリハットが発生した車両の運転者の、ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部151と、ヒヤリハットの対象物が視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部152とを有する。
【解決手段】事故要因領域特定装置100は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する装置であって、ヒヤリハットが発生した車両の運転者の、ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部151と、ヒヤリハットの対象物が視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部152とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者による車両事故の要因となる可能性が高い領域である事故要因領域を、特定する事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故予測情報や事故統計・分析情報は、車両事故の防止のために有用である。このような情報は、例えば、車両の運転者、道路の安全設計や改善策検討を行う道路管理者、交通事故の実況見分や交通安全運動を行う警察、および事故分析を行う事故鑑定者や保険事業者等に対して提供される。
【0003】
交通事故の約4割は、回避行動がなく、危険に関する認知遅れや判断ミスによるものと言われている。そこで、単路における追従走行に関しては、運転者の前方不注意に対応するための各種の安全運転支援技術が開発されている。
【0004】
例えば、自動車に搭載されるアクティブセーフティシステムは、そのような技術の1つである。このシステムは、ミリ波レーダやレーザレーダを用いて、前方走行車両や前方歩行者との間の距離を測定する。そして、このシステムは、測定した距離に基づいて、走行速度に応じて安全な距離を保っているか否かを常時監視し、危険と思われる距離まで近づいたとき、運転者に対して警告を行う。
【0005】
ところが、交通が集中する交差点において、運転者は、広い範囲に視覚的な注意を分散させる必要がある。したがって、上述のような前方のみを監視するシステムでは、安全運転を十分に支援することができない。交通事故のうちの多くは交差点で起こっている。例えば、日本国内の交通事故のうち、約60%(大都市部では約70%)が、交差点内および交差点付近で発生している。したがって、交差点における走行に関しても、安全運転を支援する技術が望まれる。
【0006】
そこで、各車両の軌道を推定し、軌道が交差することが予測される領域を、危険領域として地図データに重畳して表示する危険箇所表示システムが、例えば特許文献1に記載されている。
【0007】
また、交差点を右折する右折車両の死角に位置する対向車両が存在するときに、その旨を右折車両の運転者に対して報知する報知システムが、例えば特許文献2に記載されている。
【0008】
これらの従来技術は、交差点において、事故および事故の一歩手前の状態(以下「ヒヤリハット」(incident)と総称する)の要因となる可能性が高い領域(以下「事故要因領域」という)を特定し、これを提示している。すなわち、従来技術は、交差点における安全運転を支援することができる。また、従来技術は、実際にヒヤリハットが発生した場合には、死角が発生した位置や時刻の記録を用いて、その後の警察等による原因究明の作業を支援することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−165555号公報
【特許文献2】特開2008−41058号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】大阪交通科学研究会、「交通安全学−新しい交通安全の理論と実践 第2章 運転時の注意特性と安全性」、企業開発センター交通問題研究室、2000年2月、p.231−241
【非特許文献2】沢 喜司郎、「交通安全論概説 改訂版 第2章 速度と人間の身体的限界 第5節 スピードと視認の限界」、成山堂書店、2002年1月、p.60−65
【非特許文献3】石松一真、三浦利章、「有効視野における加齢の影響:交通安全性を中心として 第2章 有効視野とは」、大阪大学大学院人間科学研究科紀要、第28巻、2002年3月、p.17−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来技術は、ほとんどの運転者が元々注意を向けるような、実際にはヒヤリハットの要因とはならない事故要因領域まで提示するため、運転者等の情報利用者に対して煩わしさを与えるという課題を有する。提示の必要性の度合いに関係なく事故要因領域が提示されると、運転者の事故要因領域に対する注意はかえって希薄になり、原因が複合化されるため、原因究明作業がかえって煩雑となる。したがって、実際にヒヤリハットの要因である可能性が高い事故要因領域、つまり、提示の必要性が高い事故要因領域を特定できることが望ましい。
【0012】
本発明の目的は、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の事故要因領域特定装置は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定装置であって、ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部と、前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部とを有する。
【0014】
本発明の事故要因領域特定方法は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定方法であって、ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定するステップと、前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とするステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本実施の形態1における視野領域および非注目領域を説明するための第1の模式図
【図3】本実施の形態1における視野領域および非注目領域を説明するための第2の模式図
【図4】本実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図5】本実施の形態1におけるヒヤリハット判定処理の一例を示すフローチャート
【図6】本実施の形態1における非注目領域特定処理の一例を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図8】本実施の形態2における過注目領域を説明するための第1の模式図
【図9】本実施の形態2における過注目領域を説明するための第2の模式図
【図10】本実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図11】本実施の形態2における過注目領域特定処理の一例を示すフローチャート
【図12】本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図13】本実施の形態3における事故要因死角領域を説明するための第1の模式図
【図14】本実施の形態3における事故要因死角領域を説明するための第2の模式図
【図15】本実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図16】本実施の形態3における事故要因死角領域特定処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1において、事故要因領域特定装置100は、時系列データ格納部110、ヒヤリハット判定部120、交差点データ格納部130、地図データ格納部140、事故要因領域特定部150、事故要因領域提示部160を有する。
【0020】
時系列データ格納部110は、複数の車両の走行状況を記録した時系列データを格納する。走行状況とは、例えば、所定の期間(過去1年等)における、各交差点に進入してから退出するまでの各車両の位置および向き(または速度ベクトル)を少なくとも含む。すなわち、時系列データからは、交差点に進入した各車両の、速度、加速度、および軌道が、時刻毎に特定可能となっている。時系列データは、例えば、車両に搭載されたドライブレコーダの情報、交差点において走行車両のスマートナンバープレートから収集された情報等を解析して得られたものである。時系列データは、予め時系列データ格納部110に格納されているものとする。
【0021】
ヒヤリハット判定部120は、時系列データ格納部110に格納された時系列データに基づいて、いずれかの車両にヒヤリハットが発生したか否かを判定し、ヒヤリハットの発生場所、発生時刻、およびヒヤリハットの対象物を特定する。ここで、ヒヤリハットの対象物とは、基本的には、自車両がヒヤリハットを起こす原因となった相手の車両や自動二輪車、自転車、歩行者のいずれか、または任意の組み合わせを指し、場合によっては落下物や工事領域、縁石や看板などを指す場合もある。
【0022】
本実施の形態では、説明を簡略するために、車両のみをヒヤリハットの対象物として取り扱う。事故要因領域の特定の基準となる車両は、「第1の車両」といい、第1の車両との間でヒヤリハットが発生し得る他の車両は、「第2の車両」という。また、第2の車両のうち、第1の車両との間で実際にヒヤリハットが発生した車両は、「ヒヤリハット対象」という。
【0023】
交差点データ格納部130は、各交差点の交差点データを格納する。交差点データとは、交差点の幾何形状、付帯設備、周囲の建造物の位置と大きさ等、交差点の構造を記述する情報である。交差点データは、例えば、インターネットを介して情報サーバから取得されたものであり、予め交差点データ格納部130に格納されているものとする。
【0024】
地図データ格納部140は、各交差点の地図データを格納する。地図データは、例えば、インターネットを介して情報サーバから取得されたものであり、予め地図データ格納部140に格納されているものとする。
【0025】
事故要因領域特定部150は、第1の車両に発生したヒヤリハットのその発生要因である可能性が高く、提示の必要性が高い事故要因領域(以下「提示すべき事故要因領域」という)を特定する。事故要因領域特定部150は、視野領域特定部151および非注目領域特定部152を有する。
【0026】
視野領域特定部151は、ヒヤリハットの発生時刻の直前の所定期間について、第1の車両の運転者の視野に対応していた視野領域(以下単に「視野領域」という)を、時刻単位で特定する。この特定は、第1の車両が交差点に進入する直前からヒヤリハットが発生する時点までの各時刻における位置および向きに基づいて行われる。
【0027】
非注目領域特定部152は、第1の車両が交差点に進入する直前からヒヤリハットが発生する時点までにおいて、第1の車両の視野領域に第2の車両が位置していたとき、第2の車両をヒヤリハット対象と判定する。なお、視野領域のうち、第1の車両から視認できる第2の車両の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、第1の車両の運転者が注目していなかった「非注目領域」とする。すなわち、非注目領域は、運転者が注意することができた視界の領域の中であったが、実際には注意していなかった領域である。
【0028】
事故要因領域提示部160は、地図データ格納部140から、ヒヤリハットの発生場所の地図データを取得する。そして、事故要因領域提示部160は、非注目領域を、より注意を向けるべき事故要因領域として、その地図データ上に重畳して表示する。
【0029】
なお、事故要因領域特定装置100は、図示しないが、例えば、CPU(central processing unit)、RAM(random access memory)等の記憶媒体、複数のキースイッチ等から成る操作部、液晶ディスプレイ等から成る表示部を有する。この場合、上述の各機能部は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0030】
以上のように構成された事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハット対象物の位置と運転者の視野領域との関係から、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる。すなわち、事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの発生直前にヒヤリハット対象が運転者の視野領域に存在した場合に、その位置に対応する領域を、運転者から見えていたにもかかわらず実際には運転者が見ていなかった領域、つまり、事故要因領域の1つである非注目領域とすることができる。
【0031】
ここで、本実施の形態における視野領域および非注目領域について説明する。
【0032】
図2および図3は、視野領域および非注目領域を説明するための模式図である。図2は、第1の車両と第2の車両との間でヒヤリハットが発生した時刻tの様子を示す。図3は、ヒヤリハットが発生する直前の時刻t−Δtの、各車両の視野領域および非注目領域を示す図である。
【0033】
図2に示す例では、ある交差点210において、第1の車両211と第2の車両212との間で、衝突しそうになるヒヤリハットが発生したとする。すなわち、第2の車両212は、ヒヤリハット対象である。なお、ここでは、上述の通り、第1の車両211を事故要因領域の特定の基準となる車両としているが、逆に、第2の車両212を事故要因領域の特定の基準となる車両とした場合には、第1の車両211が第2の車両212にとってヒヤリハット対象になり得る。
【0034】
第1の車両211の運転者の有効視野に対応する第1の視野領域213は、第1の車両211の進行方向に広がっている。また、第2の車両212の運転者の有効視野に対応する視野領域214は、第2の車両212の進行方向に広がっている。非特許文献3によると、有効視野は、与えられた課題において、知覚者が情報を検索、弁別、処理、ないしは貯蔵しうる注視点の周辺領域と定義されている。本実施の形態では、有効視野を、注意を向けていれば車両の存在に気付くことができる領域とする。
【0035】
図2に示すように、第1の視野領域213には、第2の車両212が位置している。したがって、第1の車両211の運転者が、ヒヤリハットの直前のできるだけ早いタイミングで第2の車両212の存在に気付いていれば、ヒヤリハットを防ぐことができた可能性が高い。逆に言うと、第1の視野領域213に第2の車両212が位置していたにもかかわらず、第1の車両211の運転者がこれに注目していなかった可能性が高い。
【0036】
そこで、図3に示すように、事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213に第2の車両212が位置していた場合、その位置に対応する領域を非注目領域215とする。そして、事故要因領域特定装置100は、この非注目領域215を、ヒヤリハットの要因である可能性が高い事故要因領域として提示する。
【0037】
次に、事故要因領域特定装置100の動作について説明する。
【0038】
図4は、事故要因領域特定装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、ステップS1000において、ヒヤリハット判定部120は、事故要因領域の特定のための解析を行う範囲を選択する。例えば、ヒヤリハット判定部120は、特定の交差点、日にち、および時間帯がオペレータ操作等によって指定されると、指定対象に対応する時系列データを、解析対象として選択する。なお、事故要因領域特定装置100は、以下に説明するステップS2000〜5000の処理を、指定された第1の車両についてのみ実行しても良い。また、事故要因領域特定装置100は、解析対象の交差点に解析対象の時間帯に進入した全ての車両を第1の車両として扱い、ステップS2000〜5000の処理を、第1の車両毎に実行しても良い。
【0040】
そして、ステップS2000において、ヒヤリハット判定部120は、選択対象に対してヒヤリハットの発生の有無を判定するヒヤリハット判定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0041】
そして、ステップS3000において、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットが発生したか否かを判断する。事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットが発生した場合には(S3000:YES)、ステップS4000へ進む。
【0042】
ステップS4000において、事故要因領域特定部150は、非注目領域を特定する非注目領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0043】
そして、ステップS5000において、事故要因領域提示部160は、事故要因領域に基づき、ヒヤリハットが発生した交差点の地図データを地図データ格納部140から取得する。そして、事故要因領域提示部160は、取得した地図データの上に、事故要因領域を重畳して表示する。表示画面の状態は、例えば、図3のようになる。
【0044】
図5は、ヒヤリハット判定処理(ステップS2000)の一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ヒヤリハット判定部120は、解析対象の時系列データから、解析対象の時間帯の時刻を1つ選択し、その時刻における第1の車両の位置を取得する(S2001)。そして、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻において、第2の車両が存在するか否かを判定する(S2002)。
【0046】
ここで、ヒヤリハット判定部120は、いずれかの交差点およびいずれかの時刻において第1の車両と居合わせた車両を、第2の車両として扱うものとする。また、ヒヤリハット判定部120は、異なる第1の車両が交差点への進入する毎に、各々の第1の車両と居合わせた車両を、第2の車両として扱うものとする。同じ車両が異なる第1の車両に対する第2の車両となることもあってよい。また、ここでは、説明の簡便化のため、解析対象において、第2の車両が最大で1台しか存在しないものとして説明する。なお、同時刻に第2の車両が2台以上存在する場合には、ヒヤリハット判定部120は、以下に説明するステップS2002〜S2012の処理を、検出された第2の車両毎に実行すれば良い。
【0047】
ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻に第2の車両が存在する場合には(S2002:YES)、解析対象の時系列データから、選択中の時刻における第2の車両の位置を取得する(S2003)。そして、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻における、第1の車両と第2の車両との間の距離を算出する(S2004)。
【0048】
ヒヤリハット判定部120は、算出した距離が、予め定められた距離閾値より短いか否かを判定する(S2005)。ヒヤリハット判定部120は、算出した距離が距離閾値より短い場合には(S2005:YES)、解析対象の時系列データから、選択中の時刻の前後の所定の時間範囲における、第1の車両の各時刻の速度を取得する(S2006)。そして、ヒヤリハット判定部120は、取得した時系列の速度から、選択中の時刻における第1の車両の加速度を算出する(S2007)。
【0049】
そして、ヒヤリハット判定部120は、算出した加速度が予め定められた加速度閾値以下か否かを判定する(S2008)。ヒヤリハット判定部120は、算出した加速度が加速度閾値以下の場合には(S2008:NO)、ステップS2009へ進む。そして、ヒヤリハット判定部120は、解析対象の時系列データから、選択中の時刻の前後の所定の時間範囲における、第1の車両の各時刻の進行方向(向き)を取得する(S2009)。そして、ヒヤリハット判定部120は、取得した時系列の進行方向から、進行方向の変化が予め定められた方向変化閾値より大きいか否かを判定する(S2010)。
【0050】
ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値よりも大きい場合には(S2008:YES)、ステップS2011へ進む。また、ヒヤリハット判定部120は、進行方向変化が方向変化閾値より大きいという条件が満たされる場合には(S2010:YES)、ステップS2011へ進む。そして、ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値よりも大きいという条件、または、進行方向変化が方向変化閾値より大きいという条件の少なくとも1つが満たされる場合には、ヒヤリハットが発生したと判定する(S2011)。そして、ヒヤリハット判定部120は、第1の車両を事故要因領域の特定の対象として識別し、第2の車両をヒヤリハット対象として識別する。また、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻をヒヤリハット発生時刻として識別し、選択中の時刻に第1の車両が位置する交差点をヒヤリハット発生場所として識別する(S2012)。そして、ヒヤリハット判定部120は、識別結果を、事故要因領域特定部150へ出力して、図4の処理へ戻る。
【0051】
ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻において、算出した距離が距離閾値より短い場合には(S2005:NO)、ステップS2001へ戻る。また、ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値以下であり、かつ、進行方向変化が方向変化閾値以下であるという条件が満たされる場合には(S2008:NO、S2010:NO)、ステップS2001へ戻る。そして、ヒヤリハット判定部120は、解析対象から次の時刻を指定して処理を繰り返す。ヒヤリハット判定部120は、解析対象に第2の車両が存在しない場合には(S2002:NO)、そのまま図4の処理へ戻る。
【0052】
図6は、非注目領域特定処理(ステップS4000)の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットの発生時刻tから一定の時間間隔ずつ時間を遡る形で、時刻を選択する(S4001)。そして、事故要因領域特定部150は、選択中の時刻において、第1の車両とヒヤリハット対象の両方が、ヒヤリハット発生場所である交差点に存在するか否かを判断する(S4002)。事故要因領域特定部150は、第1の車両およびヒヤリハット対象の両方がヒヤリハット発生場所である交差点に存在する間は(S4002:YES)、以下のステップS4003〜S4009の処理を繰り返す。つまり、ステップS4003〜S4009の処理は、第1の車両およびヒヤリハット対象の少なくとも一方が交差点に存在しなくなるまで繰り返される。
【0054】
ステップS4003において、事故要因領域特定部150は、時系列データから、選択中の時刻における第1の車両の位置、進行方向(向き)、および速度を取得する(S4003)。また、事故要因領域特定部150は、交差点データ格納部130に格納された交差点データから、ヒヤリハット発生場所である交差点の、交差点形状情報を取得する(S4004)。
【0055】
そして、事故要因領域特定部150は、検索した第1の車両の位置、進行方向、および速度から、選択中の時刻の第1の視野領域(第1の車両の運転者の有効視野に対応する領域)を設定する(S4005)。このとき、事故要因領域特定部150は、交差点の幾何形状、付帯設備、建造物の位置および大きさ等に基づいて、第1の視野領域から、第1の車両の運転者からは見通すことができない死角領域を除外することが望ましい。
【0056】
なお、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域の設定を、人間の視覚特性に沿って行うものとする。
【0057】
例えば、非特許文献1に記載されているように、人間の網膜の感受性は中心部だけが高い。より具体的には、解像度が高く、視力検査で測定する視力に近い解像度で見ることができる範囲は、注視点の周り2°(10m先で注視点の周り35cmの範囲)であり、中心から10°離れると中心の20%に低下する。また、有効視野は、中心視の周りを見る周辺視野のうち通常は約4°〜20°の範囲であるが、心理的な要因によって変化する。
【0058】
また、例えば、非特許文献2に記載されているように、人間の移動動体視力は、年齢が高くなるほど低下が著しく、人間の動く速度あるいは対象の動く速度が高くなればなるほど低下する。ここで、移動動体視力とは、人間が動いている状態で動いている対象を見るときの視力である。また、動体視野は、動体視力と同様に、人間の動く速度が高くなればなるほど狭くなる。ここで、動体視野とは、人間が動いている状態で目の位置を変えずに見渡せる範囲である。
【0059】
これらの視覚特性に基づき、事故要因領域特定部150は、例えば、第1の車両の位置を中心として第1の車両の速度ベクトルの方向に所定の角度θで開く扇形の領域(死角領域を除いても良い)を、第1の視野領域に設定する。事故要因領域特定部150は、例えば、扇形の角度θを、有効視野の最大値20°と、第1の車両の速度vとを用いて、以下の式(1)のように定義する。
θ(v)=−1e−5×v3−0.0007×v2+0.0008×v+20
・・・(1)
【0060】
次に、事故要因領域特定部150は、時系列データから、選択中の時刻におけるヒヤリハット対象の位置を取得し(S4006)、設定した第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在するか否かを判定する(S4007)。事故要因領域特定部150は、第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在しない場合には(S4007:NO)、ステップS4001へ戻り、次の時刻を指定して処理を繰り返す。
【0061】
第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在する場合は(S4007:YES)、処理はステップS4008へ進む。そして、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハット対象の、第1の車両から視認できる第2の車両の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、非注目領域に設定する(S4008)。このとき、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域のうち、第1の車両の位置からヒヤリハット対象が位置する方向の全ての領域を非注目領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、第1の車両の位置からヒヤリハット対象が位置する方向のうち、ヒヤリハット対象が位置する領域までの領域のみを、非注目領域としても良い。
【0062】
そして、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域から非注目領域を除いた領域を、注目領域として特定する(S4009)。その後、事故要因領域特定部150は、ステップS4001へ戻り、次の時刻を指定して処理を繰り返す。なお、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域から非注目領域および過注目領域を除いた領域を、注目領域として特定するようにしても良い。
【0063】
事故要因領域特定部150は、第1の車両およびヒヤリハット対象のいずれかがヒヤリハット発生場所である交差点に存在しなくなると(S4002:NO)、設定した非注目領域に基づいて事故要因領域を特定する。
【0064】
事故要因領域特定部150は、時刻毎の非注目領域を、その時刻における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、連続する時間帯における各時刻の非注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、事故要因領域特定部150は、離散的な時刻または時間帯(例えば異なる日の同じ時刻または時間帯)における各時刻の非注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、連続する時間帯または離散的な時刻もしくは時間帯において、非注目領域となっている時間の時間積分が一定値以上となる領域を、事故要因領域として良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、いずれかの時刻における非注目領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0065】
事故要因領域特定部150は、特定した事故要因領域を、事故要因領域提示部160へ出力して、図4の処理へ戻る。このとき、事故要因領域特定部150は、併せて、ヒヤリハットの発生時刻と、各時刻における第1の車両およびヒヤリハット対象の位置、向きと、注目領域とを、事故要因領域提示部160へ出力する。この結果は、事故要因領域提示部160により、ヒヤリハットが発生した交差点の地図データの上に、事故要因領域が重畳して表示される。なお、事故要因領域提示部160は、交差点の構造データを参照して、道路領域と重なる部分のみを事故要因領域として表示しても良い。更に、事故要因領域提示部160は、交差点周辺の建造物データを参照して、建物領域や歩道橋などの付帯設備と重ならない部分のみを事故要因領域として表示しても良い。
【0066】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの直前に、車両の運転者の視野領域にヒヤリハット対象が位置していた場合、その位置に対応する非注目領域を、事故要因領域として提示する。これにより、ヒヤリハットの要因である可能性が高く、提示の必要性が高い事故要因領域を特定し、このような領域に提示対象を絞ることができる。すなわち、事故要因領域特定装置100は、有効視野の中にヒヤリハット対象が存在するにも関わらず注意を向けていないことに起因するヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。したがって、ヒヤリハットの要因である可能性が低い領域まで提示してしまうことを防ぐことができ、運転者等の情報利用者に対する煩わしさを低減することができる。
【0067】
(実施の形態2)
ヒヤリハットの要因である可能性が高い領域には、実施の形態1で挙げた非注目領域だけでなく、「必要以上に注目していた領域」も含まれる。例えば、右方向から来たヒヤリハット対象である第2の車両により強く注目すべきであったところ、左方向から来た別の第3の車両に気を取られすぎていた場合、左方向は、必要以上に注目が向けられていた領域である。すなわち、左方向の領域は、ヒヤリハットの要因となった領域である。
【0068】
そこで、本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置は、必要以上に注目していた領域を、「過注目領域」に設定し、非注目領域と過注目領域とを、事故要因領域として提示する。
【0069】
図7は、本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0070】
図7において、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aの事故要因領域特定部150aは、過注目領域特定部153aを新たに有する。
【0071】
過注目領域特定部153aは、ヒヤリハット対象とは別に、第1の車両の運転者が注目していた可能性が高い他の対象物が第1の視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、過注目領域とする。そして、過注目領域特定部153aは、過注目領域を、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0072】
図8および図9は、過注目領域を説明するための模式図であり、実施の形態1の図2および図3に対応するものである。図2および図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0073】
図8および図9に示すように、第3の車両221の運転者の有効視野に対応する視野領域222は、第1の車両211の進行方向に広がっている。そして、第1の車両211と第2の車両212とのヒヤリハットが発生した時刻tの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213の非注目領域215とは別の方向に、第3の車両221が位置している。したがって、第1の車両211の運転者が、第2の車両212とのヒヤリハットの直前に第3の車両221に注目し過ぎていたために、第2の車両212の存在に気付かなかった可能性が高い。
【0074】
そこで、本実施の形態では、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213にヒヤリハット対象ではない車両(以下「過注目対象」という)である第3の車両221が、位置する場合を想定する。過注目領域特定部153aは、その位置に対応する領域を、過注目領域223とする。そして、事故要因領域提示部160は、この過注目領域223をも、事故要因領域として提示する。
【0075】
図10は、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aの動作の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図4に対応するものである。図4と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0076】
過注目領域特定部153aは、ステップS4000において非注目領域が特定されると、ステップS4100aにおいて、過注目領域を特定する過注目領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0077】
なお、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、異なる色が付される等、非注目領域であるか過注目領域であるかの区別が付く態様で、非注目領域および過注目領域を、事故要因領域として提示する。すなわち、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、事故要因領域を、要因別に、交差点の地図データの上に重畳して表示する。
【0078】
図11は、過注目領域特定処理(ステップ4100a)の一例を示すフローチャートである。過注目領域特定処理は、実施の形態1の図6で説明した非注目領域特定処理と一部の処理が同一内容である。したがって、図6と同一部分には同一ステップ番号を付し、これについての説明を適宜省略する。
【0079】
まず、過注目領域特定部153aは、時刻を選択し(S4001)、第1の車両およびヒヤリハット対象と、第3の車両とが、交差点に存在する場合には(S4002a:YES)、ステップS4003へ進む。そして、過注目領域特定部153aは、ステップS4003〜S4005の処理を実行して、第1の視野領域を設定する。
【0080】
ここで、過注目領域特定部153aは、いずれかの交差点およびいずれかの時刻において第1の車両およびヒヤリハット対象と居合わせた車両を、第3の車両として扱うものとする。また、ここでは、説明の簡便化のため、解析対象において、第3の車両が最大で1台しか存在しないものとして説明する。
【0081】
そして、過注目領域特定部153aは、時系列データから、選択中の時刻における第3の車両の位置を取得し(S4006a)、設定した第1の視野領域内に第3の車両が存在するか否かを判定する(S4007a)。過注目領域特定部153aは、第1の視野領域内に第3の車両が存在しない場合には(S4007a:NO)、ステップS4001へ戻る。
【0082】
第1の視野領域内に第3の車両が存在する場合は(S4007a:YES)、処理はステップS4008aへ進む。そして、過注目領域特定部153aは、第1の視野領域のうち、第1の車両から視認できる第3の車両(過注目対象)の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、過注目領域に設定する(S4008a)。このとき過注目領域特定部153aは、第1の視野領域のうち、第1の車両の位置から第3の車両が位置する方向の全ての領域を過注目領域としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、第1の車両の位置から第3の車両が位置する方向のうち、第3の車両が位置する領域までの領域のみを過注目領域としても良い。
【0083】
そして、過注目領域特定部153aは、第1の視野領域から非注目領域を除いた領域を、注目領域として特定する(S4009a)。その後、過注目領域特定部153aは、ステップS4001へ戻る。
【0084】
過注目領域特定部153aは、第1の車両、ヒヤリハット対象、および第3の車両のいずれかがヒヤリハット発生場所である交差点に存在しなくなると(S4002a:NO
)、設定した注目領域に基づいて、事故要因領域を特定する。
【0085】
過注目領域特定部153aは、時刻毎の過注目領域を、その時刻における事故要因領域(つまり注目し過ぎている領域)としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、連続する時間帯における各時刻の過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、過注目領域特定部153aは、離散的な時刻または時間帯(例えば異なる日の同じ時刻または時間帯)における各時刻の過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、過注目領域特定部153aは、時系列で得られた全ての過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、連続する時間帯または離散的な時刻もしくは時間帯において、過注目領域となっている時間の時間積分が一定値以上の領域を、事故要因領域として良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、いずれかの時刻における過注目領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0086】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aは、ヒヤリハットの直前に、第1の視野領域にヒヤリハット対象とは別の第3の車両が存在するとき、その位置に対応する領域を過注目領域に設定する。そして、事故要因領域特定装置100aは、非注目領域と過注目領域とを、区別し得る態様で、それぞれ事故要因領域として提示する。これにより、事故要因領域特定装置100aは、必要以上に注目が向けられていた他の領域に起因して起こるヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。
【0087】
なお、事故要因領域特定装置100aは、複数の第3の車両を検出し、複数の過注目領域の候補を設定し、その中から、1つまたは複数の過注目領域を特定しても良い。この場合には、例えば、過注目領域特定部153aは、まず、それぞれの過注目領域の大きさを過注目度として設定し、過注目領域を、過注目度が高い順に並べる。そして、過注目領域特定部153aは、車両の速度に応じて認識できる過注目領域の数を、過注目度を用いて制御し、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0088】
(実施の形態3)
ヒヤリハットの要因である可能性が高い領域には、第1の車両の死角となる死角領域のうち、ヒヤリハット対象が存在していた領域(以下「事故要因死角領域」という)も含まれる。そこで、本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置は、非注目領域と事故要因死角領域とを、事故要因領域として提示する。
【0089】
図12は、本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0090】
図12において、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100bの事故要因領域特定部150bは、事故要因死角領域特定部154bを新たに有する。
【0091】
事故要因死角領域特定部154bは、第1の車両の運転者からみて、周囲の建造物等により死角となる死角領域にヒヤリハット対象が位置していたとき、その死角に対応する領域を、事故要因死角領域として特定する。そして、事故要因死角領域特定部154bは、事故要因死角領域を、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0092】
図13および図14は、事故要因死角領域を説明するための模式図であり、実施の形態1の図2および図3に対応するものである。図2および図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。但し、第1の車両および第2の車両の位置および向きは、図2および図3とは異なっている。
【0093】
図13は、時刻t=1において、ヒヤリハットが発生した場合の様子を示す。また、図14は、直前の時刻t=t−Δtにおいて、第1の視野領域213が、建造物231により、死角領域232が存在していた場面を示す。そして、死角領域232には、ヒヤリハット対象である第2の車両212が位置していたとする。この場合、第1の車両211の運転者が、死角領域232に第2の車両212が存在する可能性に気付いていれば、ヒヤリハットを防ぐことができた可能性が高い。
【0094】
そこで、事故要因領域特定装置100bは、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213に存在する死角領域232に第2の車両212が位置していた場合、その死角領域232を、事故要因死角領域とする。そして、事故要因領域特定装置100bは、この事故要因死角領域を、事故要因領域として提示する。
【0095】
図15は、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図4に対応するものである。図4と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0096】
事故要因死角領域特定部154bは、ステップS4000において非注目領域が特定されると、ステップS4200bにおいて、事故要因死角領域を特定する事故要因死角領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0097】
なお、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、異なる色が付される等、非注目領域であるか事故要因死角領域であるかの区別が付く態様で、非注目領域および事故要因死角領域を、事故要因領域として提示する。すなわち、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、事故要因領域を、要因別に、交差点の地図データの上に重畳して表示する。
【0098】
図16は、事故要因死角領域特定処理(ステップS4200b)の一例を示すフローチャートである。事故要因死角領域特定処理は、実施の形態1の図6で説明した非注目領域特定処理と一部の処理が同一内容である。したがって、図6と同一部分には同一ステップ番号を付し、これについての説明を適宜省略する。
【0099】
まず、事故要因死角領域特定部154bは、第1の車両およびヒヤリハット対象が交差点に存在する全ての時刻について、ステップS4003〜S4005の処理を実行して第1の視野領域を設定する。
【0100】
そして、事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在するか否かを判断する。
【0101】
この死角領域の有無の判断は、例えば、以下のようにして行われる。まず、事故要因死角領域特定部154bは、交差点データから、第1の車両とヒヤリハット対象との間に位置する付帯設備や建造物を検索し、それらの位置および領域の情報を取得する。そして、事故要因死角領域特定部154bは、第1の視野領域のうち、第1の車両から見て建造物等の向こう側の領域を、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域とする。
【0102】
事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在しない場合には(S4007b:NO)、ステップS4001へ戻る。一方、事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在する場合には(S4007b:YES)、その死角領域を、事故要因死角領域に設定して(S4008b)、ステップS4001へ戻る。
【0103】
事故要因死角領域特定部154bは、時刻毎の事故要因死角領域を、その時刻における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、時系列で得られた全ての事故要因死角領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、事故要因死角領域となっている時間の時間積分が一定値以上の領域を、事故要因領域として良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、いずれかの時刻における事故要因死角領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0104】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100bは、ヒヤリハットの直前に、第1の車両の死角領域にヒヤリハット対象が存在するとき、その死角領域を、事故要因死角領域として特定する。そして、事故要因領域特定装置100bは、非注目領域と事故要因死角領域とを、区別し得る態様で、それぞれ事故要因領域として提示する。これにより、事故要因領域特定装置100bは、事故要因死角領域に注意を向けていないことに起因するヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。なお、事故要因領域特定装置100bは、実施の形態2の過注目領域特定部153aを更に備え、過注目領域についても、事故要因領域として提示しても良い。
【0105】
なお、第1の視野領域の特定の手法は、上述の各実施の形態で説明した手法(形状、算出式、および設定のパラメータ)に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、運転者の年齢に応じて視野領域を変化させたり、視野領域に関するパラメータを個別に設定したり、運転者の視覚や頭部の位置、動作などに関する測定値からパラメータをフィードバックしても良い。また、事故要因領域特定装置は、ウィンカの情報や車両の挙動から、運転者が向かおうとしている方向を予め取得し、取得した方向に応じて、視野領域の形状を変化させても良い。この場合、例えば、事故要因領域特定装置は、車両の速度ベクトルを中心とした形状ではなく、運転者が向かおうとする方向を中心とした形状にしても良い。
【0106】
また、ヒヤリハットの発生の手法は、上述の手法に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、例えば、信号無視、一時停止違反などの交通法規違反、急加速、接触、および事故の発生を、ヒヤリハットの発生と判定してもよい。
【0107】
また、過注目領域の判定の手法は、上述の手法に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、複数の過注目領域の候補を設定したとき、過注目領域の大きさ以外の属性を、過注目度として採用しても良い。このような属性は、例えば、非注目領域からの距離、過注目領域内の車両の数、過注目領域内の移動している車両の数、過注目領域内の停止している車両の数、視野領域内の移動している車両の数、視野領域内の停止している車両の数である。
【0108】
また、事故要因領域特定装置は、時系列データ格納部、交差点データ格納部、地図データ格納部、および事故要因領域提示部については、必ずしも有しなくても良い。この場合、事故要因領域特定装置は、例えば、通信ネットワークを介して、外部の情報サーバからデータを取得したり、外部の表示装置に事故要因領域の情報を出力する。また、事故要因領域特定装置は、ヒヤリハットの発生場所および発生時刻が明らかである場合には、ヒヤリハット判定部を有しなくても良い。
【0109】
また、ヒヤリハットの要因となり得る対象は、車両に限定されない。例えば、注目すべき対象は、歩行者、信号機、標識等も含む。例えば、視認し辛い位置に信号機が配置されている場合、視野領域に存在するにもかかわらず信号が赤になっているのを見落とし、ヒヤリハットが発生し得る。このような場合に、本発明を適用することにより、信号機の位置に対応する領域が事故要因領域(非注目領域)であることが分かる。
【0110】
以上説明した各実施の形態に係る事故要因領域特定装置は、運転者、道路の安全設計や改善を行う道路管理者、交通事故の実況見分や交通安全運動を行う警察、事故分析を行う事故鑑定者、および事故分析を行う保険事業者等に対して、事故予測情報、事故統計情報、および事故分析情報として、事故要因領域を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法は、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法として有用である。すなわち、本発明は、予防安全システム、運転支援システム、特に交差点に対する交通事故防止システム、交通事故要因分析システム、および交通事故予測システムに好適である。
【符号の説明】
【0112】
100、100a、100b 事故要因領域特定装置
110 時系列データ格納部
120 ヒヤリハット判定部
130 交差点データ格納部
140 地図データ格納部
150、150a、150b 事故要因領域特定部
151 視野領域特定部
152 非注目領域特定部
153a 過注目領域特定部
154b 事故要因死角領域特定部
160 事故要因領域提示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者による車両事故の要因となる可能性が高い領域である事故要因領域を、特定する事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故予測情報や事故統計・分析情報は、車両事故の防止のために有用である。このような情報は、例えば、車両の運転者、道路の安全設計や改善策検討を行う道路管理者、交通事故の実況見分や交通安全運動を行う警察、および事故分析を行う事故鑑定者や保険事業者等に対して提供される。
【0003】
交通事故の約4割は、回避行動がなく、危険に関する認知遅れや判断ミスによるものと言われている。そこで、単路における追従走行に関しては、運転者の前方不注意に対応するための各種の安全運転支援技術が開発されている。
【0004】
例えば、自動車に搭載されるアクティブセーフティシステムは、そのような技術の1つである。このシステムは、ミリ波レーダやレーザレーダを用いて、前方走行車両や前方歩行者との間の距離を測定する。そして、このシステムは、測定した距離に基づいて、走行速度に応じて安全な距離を保っているか否かを常時監視し、危険と思われる距離まで近づいたとき、運転者に対して警告を行う。
【0005】
ところが、交通が集中する交差点において、運転者は、広い範囲に視覚的な注意を分散させる必要がある。したがって、上述のような前方のみを監視するシステムでは、安全運転を十分に支援することができない。交通事故のうちの多くは交差点で起こっている。例えば、日本国内の交通事故のうち、約60%(大都市部では約70%)が、交差点内および交差点付近で発生している。したがって、交差点における走行に関しても、安全運転を支援する技術が望まれる。
【0006】
そこで、各車両の軌道を推定し、軌道が交差することが予測される領域を、危険領域として地図データに重畳して表示する危険箇所表示システムが、例えば特許文献1に記載されている。
【0007】
また、交差点を右折する右折車両の死角に位置する対向車両が存在するときに、その旨を右折車両の運転者に対して報知する報知システムが、例えば特許文献2に記載されている。
【0008】
これらの従来技術は、交差点において、事故および事故の一歩手前の状態(以下「ヒヤリハット」(incident)と総称する)の要因となる可能性が高い領域(以下「事故要因領域」という)を特定し、これを提示している。すなわち、従来技術は、交差点における安全運転を支援することができる。また、従来技術は、実際にヒヤリハットが発生した場合には、死角が発生した位置や時刻の記録を用いて、その後の警察等による原因究明の作業を支援することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−165555号公報
【特許文献2】特開2008−41058号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】大阪交通科学研究会、「交通安全学−新しい交通安全の理論と実践 第2章 運転時の注意特性と安全性」、企業開発センター交通問題研究室、2000年2月、p.231−241
【非特許文献2】沢 喜司郎、「交通安全論概説 改訂版 第2章 速度と人間の身体的限界 第5節 スピードと視認の限界」、成山堂書店、2002年1月、p.60−65
【非特許文献3】石松一真、三浦利章、「有効視野における加齢の影響:交通安全性を中心として 第2章 有効視野とは」、大阪大学大学院人間科学研究科紀要、第28巻、2002年3月、p.17−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来技術は、ほとんどの運転者が元々注意を向けるような、実際にはヒヤリハットの要因とはならない事故要因領域まで提示するため、運転者等の情報利用者に対して煩わしさを与えるという課題を有する。提示の必要性の度合いに関係なく事故要因領域が提示されると、運転者の事故要因領域に対する注意はかえって希薄になり、原因が複合化されるため、原因究明作業がかえって煩雑となる。したがって、実際にヒヤリハットの要因である可能性が高い事故要因領域、つまり、提示の必要性が高い事故要因領域を特定できることが望ましい。
【0012】
本発明の目的は、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の事故要因領域特定装置は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定装置であって、ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部と、前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部とを有する。
【0014】
本発明の事故要因領域特定方法は、車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定方法であって、ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定するステップと、前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とするステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本実施の形態1における視野領域および非注目領域を説明するための第1の模式図
【図3】本実施の形態1における視野領域および非注目領域を説明するための第2の模式図
【図4】本実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図5】本実施の形態1におけるヒヤリハット判定処理の一例を示すフローチャート
【図6】本実施の形態1における非注目領域特定処理の一例を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図8】本実施の形態2における過注目領域を説明するための第1の模式図
【図9】本実施の形態2における過注目領域を説明するための第2の模式図
【図10】本実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図11】本実施の形態2における過注目領域特定処理の一例を示すフローチャート
【図12】本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図
【図13】本実施の形態3における事故要因死角領域を説明するための第1の模式図
【図14】本実施の形態3における事故要因死角領域を説明するための第2の模式図
【図15】本実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャート
【図16】本実施の形態3における事故要因死角領域特定処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1において、事故要因領域特定装置100は、時系列データ格納部110、ヒヤリハット判定部120、交差点データ格納部130、地図データ格納部140、事故要因領域特定部150、事故要因領域提示部160を有する。
【0020】
時系列データ格納部110は、複数の車両の走行状況を記録した時系列データを格納する。走行状況とは、例えば、所定の期間(過去1年等)における、各交差点に進入してから退出するまでの各車両の位置および向き(または速度ベクトル)を少なくとも含む。すなわち、時系列データからは、交差点に進入した各車両の、速度、加速度、および軌道が、時刻毎に特定可能となっている。時系列データは、例えば、車両に搭載されたドライブレコーダの情報、交差点において走行車両のスマートナンバープレートから収集された情報等を解析して得られたものである。時系列データは、予め時系列データ格納部110に格納されているものとする。
【0021】
ヒヤリハット判定部120は、時系列データ格納部110に格納された時系列データに基づいて、いずれかの車両にヒヤリハットが発生したか否かを判定し、ヒヤリハットの発生場所、発生時刻、およびヒヤリハットの対象物を特定する。ここで、ヒヤリハットの対象物とは、基本的には、自車両がヒヤリハットを起こす原因となった相手の車両や自動二輪車、自転車、歩行者のいずれか、または任意の組み合わせを指し、場合によっては落下物や工事領域、縁石や看板などを指す場合もある。
【0022】
本実施の形態では、説明を簡略するために、車両のみをヒヤリハットの対象物として取り扱う。事故要因領域の特定の基準となる車両は、「第1の車両」といい、第1の車両との間でヒヤリハットが発生し得る他の車両は、「第2の車両」という。また、第2の車両のうち、第1の車両との間で実際にヒヤリハットが発生した車両は、「ヒヤリハット対象」という。
【0023】
交差点データ格納部130は、各交差点の交差点データを格納する。交差点データとは、交差点の幾何形状、付帯設備、周囲の建造物の位置と大きさ等、交差点の構造を記述する情報である。交差点データは、例えば、インターネットを介して情報サーバから取得されたものであり、予め交差点データ格納部130に格納されているものとする。
【0024】
地図データ格納部140は、各交差点の地図データを格納する。地図データは、例えば、インターネットを介して情報サーバから取得されたものであり、予め地図データ格納部140に格納されているものとする。
【0025】
事故要因領域特定部150は、第1の車両に発生したヒヤリハットのその発生要因である可能性が高く、提示の必要性が高い事故要因領域(以下「提示すべき事故要因領域」という)を特定する。事故要因領域特定部150は、視野領域特定部151および非注目領域特定部152を有する。
【0026】
視野領域特定部151は、ヒヤリハットの発生時刻の直前の所定期間について、第1の車両の運転者の視野に対応していた視野領域(以下単に「視野領域」という)を、時刻単位で特定する。この特定は、第1の車両が交差点に進入する直前からヒヤリハットが発生する時点までの各時刻における位置および向きに基づいて行われる。
【0027】
非注目領域特定部152は、第1の車両が交差点に進入する直前からヒヤリハットが発生する時点までにおいて、第1の車両の視野領域に第2の車両が位置していたとき、第2の車両をヒヤリハット対象と判定する。なお、視野領域のうち、第1の車両から視認できる第2の車両の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、第1の車両の運転者が注目していなかった「非注目領域」とする。すなわち、非注目領域は、運転者が注意することができた視界の領域の中であったが、実際には注意していなかった領域である。
【0028】
事故要因領域提示部160は、地図データ格納部140から、ヒヤリハットの発生場所の地図データを取得する。そして、事故要因領域提示部160は、非注目領域を、より注意を向けるべき事故要因領域として、その地図データ上に重畳して表示する。
【0029】
なお、事故要因領域特定装置100は、図示しないが、例えば、CPU(central processing unit)、RAM(random access memory)等の記憶媒体、複数のキースイッチ等から成る操作部、液晶ディスプレイ等から成る表示部を有する。この場合、上述の各機能部は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。
【0030】
以上のように構成された事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハット対象物の位置と運転者の視野領域との関係から、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる。すなわち、事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの発生直前にヒヤリハット対象が運転者の視野領域に存在した場合に、その位置に対応する領域を、運転者から見えていたにもかかわらず実際には運転者が見ていなかった領域、つまり、事故要因領域の1つである非注目領域とすることができる。
【0031】
ここで、本実施の形態における視野領域および非注目領域について説明する。
【0032】
図2および図3は、視野領域および非注目領域を説明するための模式図である。図2は、第1の車両と第2の車両との間でヒヤリハットが発生した時刻tの様子を示す。図3は、ヒヤリハットが発生する直前の時刻t−Δtの、各車両の視野領域および非注目領域を示す図である。
【0033】
図2に示す例では、ある交差点210において、第1の車両211と第2の車両212との間で、衝突しそうになるヒヤリハットが発生したとする。すなわち、第2の車両212は、ヒヤリハット対象である。なお、ここでは、上述の通り、第1の車両211を事故要因領域の特定の基準となる車両としているが、逆に、第2の車両212を事故要因領域の特定の基準となる車両とした場合には、第1の車両211が第2の車両212にとってヒヤリハット対象になり得る。
【0034】
第1の車両211の運転者の有効視野に対応する第1の視野領域213は、第1の車両211の進行方向に広がっている。また、第2の車両212の運転者の有効視野に対応する視野領域214は、第2の車両212の進行方向に広がっている。非特許文献3によると、有効視野は、与えられた課題において、知覚者が情報を検索、弁別、処理、ないしは貯蔵しうる注視点の周辺領域と定義されている。本実施の形態では、有効視野を、注意を向けていれば車両の存在に気付くことができる領域とする。
【0035】
図2に示すように、第1の視野領域213には、第2の車両212が位置している。したがって、第1の車両211の運転者が、ヒヤリハットの直前のできるだけ早いタイミングで第2の車両212の存在に気付いていれば、ヒヤリハットを防ぐことができた可能性が高い。逆に言うと、第1の視野領域213に第2の車両212が位置していたにもかかわらず、第1の車両211の運転者がこれに注目していなかった可能性が高い。
【0036】
そこで、図3に示すように、事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213に第2の車両212が位置していた場合、その位置に対応する領域を非注目領域215とする。そして、事故要因領域特定装置100は、この非注目領域215を、ヒヤリハットの要因である可能性が高い事故要因領域として提示する。
【0037】
次に、事故要因領域特定装置100の動作について説明する。
【0038】
図4は、事故要因領域特定装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0039】
まず、ステップS1000において、ヒヤリハット判定部120は、事故要因領域の特定のための解析を行う範囲を選択する。例えば、ヒヤリハット判定部120は、特定の交差点、日にち、および時間帯がオペレータ操作等によって指定されると、指定対象に対応する時系列データを、解析対象として選択する。なお、事故要因領域特定装置100は、以下に説明するステップS2000〜5000の処理を、指定された第1の車両についてのみ実行しても良い。また、事故要因領域特定装置100は、解析対象の交差点に解析対象の時間帯に進入した全ての車両を第1の車両として扱い、ステップS2000〜5000の処理を、第1の車両毎に実行しても良い。
【0040】
そして、ステップS2000において、ヒヤリハット判定部120は、選択対象に対してヒヤリハットの発生の有無を判定するヒヤリハット判定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0041】
そして、ステップS3000において、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットが発生したか否かを判断する。事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットが発生した場合には(S3000:YES)、ステップS4000へ進む。
【0042】
ステップS4000において、事故要因領域特定部150は、非注目領域を特定する非注目領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0043】
そして、ステップS5000において、事故要因領域提示部160は、事故要因領域に基づき、ヒヤリハットが発生した交差点の地図データを地図データ格納部140から取得する。そして、事故要因領域提示部160は、取得した地図データの上に、事故要因領域を重畳して表示する。表示画面の状態は、例えば、図3のようになる。
【0044】
図5は、ヒヤリハット判定処理(ステップS2000)の一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、ヒヤリハット判定部120は、解析対象の時系列データから、解析対象の時間帯の時刻を1つ選択し、その時刻における第1の車両の位置を取得する(S2001)。そして、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻において、第2の車両が存在するか否かを判定する(S2002)。
【0046】
ここで、ヒヤリハット判定部120は、いずれかの交差点およびいずれかの時刻において第1の車両と居合わせた車両を、第2の車両として扱うものとする。また、ヒヤリハット判定部120は、異なる第1の車両が交差点への進入する毎に、各々の第1の車両と居合わせた車両を、第2の車両として扱うものとする。同じ車両が異なる第1の車両に対する第2の車両となることもあってよい。また、ここでは、説明の簡便化のため、解析対象において、第2の車両が最大で1台しか存在しないものとして説明する。なお、同時刻に第2の車両が2台以上存在する場合には、ヒヤリハット判定部120は、以下に説明するステップS2002〜S2012の処理を、検出された第2の車両毎に実行すれば良い。
【0047】
ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻に第2の車両が存在する場合には(S2002:YES)、解析対象の時系列データから、選択中の時刻における第2の車両の位置を取得する(S2003)。そして、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻における、第1の車両と第2の車両との間の距離を算出する(S2004)。
【0048】
ヒヤリハット判定部120は、算出した距離が、予め定められた距離閾値より短いか否かを判定する(S2005)。ヒヤリハット判定部120は、算出した距離が距離閾値より短い場合には(S2005:YES)、解析対象の時系列データから、選択中の時刻の前後の所定の時間範囲における、第1の車両の各時刻の速度を取得する(S2006)。そして、ヒヤリハット判定部120は、取得した時系列の速度から、選択中の時刻における第1の車両の加速度を算出する(S2007)。
【0049】
そして、ヒヤリハット判定部120は、算出した加速度が予め定められた加速度閾値以下か否かを判定する(S2008)。ヒヤリハット判定部120は、算出した加速度が加速度閾値以下の場合には(S2008:NO)、ステップS2009へ進む。そして、ヒヤリハット判定部120は、解析対象の時系列データから、選択中の時刻の前後の所定の時間範囲における、第1の車両の各時刻の進行方向(向き)を取得する(S2009)。そして、ヒヤリハット判定部120は、取得した時系列の進行方向から、進行方向の変化が予め定められた方向変化閾値より大きいか否かを判定する(S2010)。
【0050】
ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値よりも大きい場合には(S2008:YES)、ステップS2011へ進む。また、ヒヤリハット判定部120は、進行方向変化が方向変化閾値より大きいという条件が満たされる場合には(S2010:YES)、ステップS2011へ進む。そして、ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値よりも大きいという条件、または、進行方向変化が方向変化閾値より大きいという条件の少なくとも1つが満たされる場合には、ヒヤリハットが発生したと判定する(S2011)。そして、ヒヤリハット判定部120は、第1の車両を事故要因領域の特定の対象として識別し、第2の車両をヒヤリハット対象として識別する。また、ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻をヒヤリハット発生時刻として識別し、選択中の時刻に第1の車両が位置する交差点をヒヤリハット発生場所として識別する(S2012)。そして、ヒヤリハット判定部120は、識別結果を、事故要因領域特定部150へ出力して、図4の処理へ戻る。
【0051】
ヒヤリハット判定部120は、選択中の時刻において、算出した距離が距離閾値より短い場合には(S2005:NO)、ステップS2001へ戻る。また、ヒヤリハット判定部120は、加速度が加速度閾値以下であり、かつ、進行方向変化が方向変化閾値以下であるという条件が満たされる場合には(S2008:NO、S2010:NO)、ステップS2001へ戻る。そして、ヒヤリハット判定部120は、解析対象から次の時刻を指定して処理を繰り返す。ヒヤリハット判定部120は、解析対象に第2の車両が存在しない場合には(S2002:NO)、そのまま図4の処理へ戻る。
【0052】
図6は、非注目領域特定処理(ステップS4000)の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハットの発生時刻tから一定の時間間隔ずつ時間を遡る形で、時刻を選択する(S4001)。そして、事故要因領域特定部150は、選択中の時刻において、第1の車両とヒヤリハット対象の両方が、ヒヤリハット発生場所である交差点に存在するか否かを判断する(S4002)。事故要因領域特定部150は、第1の車両およびヒヤリハット対象の両方がヒヤリハット発生場所である交差点に存在する間は(S4002:YES)、以下のステップS4003〜S4009の処理を繰り返す。つまり、ステップS4003〜S4009の処理は、第1の車両およびヒヤリハット対象の少なくとも一方が交差点に存在しなくなるまで繰り返される。
【0054】
ステップS4003において、事故要因領域特定部150は、時系列データから、選択中の時刻における第1の車両の位置、進行方向(向き)、および速度を取得する(S4003)。また、事故要因領域特定部150は、交差点データ格納部130に格納された交差点データから、ヒヤリハット発生場所である交差点の、交差点形状情報を取得する(S4004)。
【0055】
そして、事故要因領域特定部150は、検索した第1の車両の位置、進行方向、および速度から、選択中の時刻の第1の視野領域(第1の車両の運転者の有効視野に対応する領域)を設定する(S4005)。このとき、事故要因領域特定部150は、交差点の幾何形状、付帯設備、建造物の位置および大きさ等に基づいて、第1の視野領域から、第1の車両の運転者からは見通すことができない死角領域を除外することが望ましい。
【0056】
なお、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域の設定を、人間の視覚特性に沿って行うものとする。
【0057】
例えば、非特許文献1に記載されているように、人間の網膜の感受性は中心部だけが高い。より具体的には、解像度が高く、視力検査で測定する視力に近い解像度で見ることができる範囲は、注視点の周り2°(10m先で注視点の周り35cmの範囲)であり、中心から10°離れると中心の20%に低下する。また、有効視野は、中心視の周りを見る周辺視野のうち通常は約4°〜20°の範囲であるが、心理的な要因によって変化する。
【0058】
また、例えば、非特許文献2に記載されているように、人間の移動動体視力は、年齢が高くなるほど低下が著しく、人間の動く速度あるいは対象の動く速度が高くなればなるほど低下する。ここで、移動動体視力とは、人間が動いている状態で動いている対象を見るときの視力である。また、動体視野は、動体視力と同様に、人間の動く速度が高くなればなるほど狭くなる。ここで、動体視野とは、人間が動いている状態で目の位置を変えずに見渡せる範囲である。
【0059】
これらの視覚特性に基づき、事故要因領域特定部150は、例えば、第1の車両の位置を中心として第1の車両の速度ベクトルの方向に所定の角度θで開く扇形の領域(死角領域を除いても良い)を、第1の視野領域に設定する。事故要因領域特定部150は、例えば、扇形の角度θを、有効視野の最大値20°と、第1の車両の速度vとを用いて、以下の式(1)のように定義する。
θ(v)=−1e−5×v3−0.0007×v2+0.0008×v+20
・・・(1)
【0060】
次に、事故要因領域特定部150は、時系列データから、選択中の時刻におけるヒヤリハット対象の位置を取得し(S4006)、設定した第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在するか否かを判定する(S4007)。事故要因領域特定部150は、第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在しない場合には(S4007:NO)、ステップS4001へ戻り、次の時刻を指定して処理を繰り返す。
【0061】
第1の視野領域内にヒヤリハット対象が存在する場合は(S4007:YES)、処理はステップS4008へ進む。そして、事故要因領域特定部150は、ヒヤリハット対象の、第1の車両から視認できる第2の車両の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、非注目領域に設定する(S4008)。このとき、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域のうち、第1の車両の位置からヒヤリハット対象が位置する方向の全ての領域を非注目領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、第1の車両の位置からヒヤリハット対象が位置する方向のうち、ヒヤリハット対象が位置する領域までの領域のみを、非注目領域としても良い。
【0062】
そして、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域から非注目領域を除いた領域を、注目領域として特定する(S4009)。その後、事故要因領域特定部150は、ステップS4001へ戻り、次の時刻を指定して処理を繰り返す。なお、事故要因領域特定部150は、第1の視野領域から非注目領域および過注目領域を除いた領域を、注目領域として特定するようにしても良い。
【0063】
事故要因領域特定部150は、第1の車両およびヒヤリハット対象のいずれかがヒヤリハット発生場所である交差点に存在しなくなると(S4002:NO)、設定した非注目領域に基づいて事故要因領域を特定する。
【0064】
事故要因領域特定部150は、時刻毎の非注目領域を、その時刻における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、連続する時間帯における各時刻の非注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、事故要因領域特定部150は、離散的な時刻または時間帯(例えば異なる日の同じ時刻または時間帯)における各時刻の非注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、連続する時間帯または離散的な時刻もしくは時間帯において、非注目領域となっている時間の時間積分が一定値以上となる領域を、事故要因領域として良い。あるいは、事故要因領域特定部150は、いずれかの時刻における非注目領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0065】
事故要因領域特定部150は、特定した事故要因領域を、事故要因領域提示部160へ出力して、図4の処理へ戻る。このとき、事故要因領域特定部150は、併せて、ヒヤリハットの発生時刻と、各時刻における第1の車両およびヒヤリハット対象の位置、向きと、注目領域とを、事故要因領域提示部160へ出力する。この結果は、事故要因領域提示部160により、ヒヤリハットが発生した交差点の地図データの上に、事故要因領域が重畳して表示される。なお、事故要因領域提示部160は、交差点の構造データを参照して、道路領域と重なる部分のみを事故要因領域として表示しても良い。更に、事故要因領域提示部160は、交差点周辺の建造物データを参照して、建物領域や歩道橋などの付帯設備と重ならない部分のみを事故要因領域として表示しても良い。
【0066】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100は、ヒヤリハットの直前に、車両の運転者の視野領域にヒヤリハット対象が位置していた場合、その位置に対応する非注目領域を、事故要因領域として提示する。これにより、ヒヤリハットの要因である可能性が高く、提示の必要性が高い事故要因領域を特定し、このような領域に提示対象を絞ることができる。すなわち、事故要因領域特定装置100は、有効視野の中にヒヤリハット対象が存在するにも関わらず注意を向けていないことに起因するヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。したがって、ヒヤリハットの要因である可能性が低い領域まで提示してしまうことを防ぐことができ、運転者等の情報利用者に対する煩わしさを低減することができる。
【0067】
(実施の形態2)
ヒヤリハットの要因である可能性が高い領域には、実施の形態1で挙げた非注目領域だけでなく、「必要以上に注目していた領域」も含まれる。例えば、右方向から来たヒヤリハット対象である第2の車両により強く注目すべきであったところ、左方向から来た別の第3の車両に気を取られすぎていた場合、左方向は、必要以上に注目が向けられていた領域である。すなわち、左方向の領域は、ヒヤリハットの要因となった領域である。
【0068】
そこで、本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置は、必要以上に注目していた領域を、「過注目領域」に設定し、非注目領域と過注目領域とを、事故要因領域として提示する。
【0069】
図7は、本発明の実施の形態2に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0070】
図7において、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aの事故要因領域特定部150aは、過注目領域特定部153aを新たに有する。
【0071】
過注目領域特定部153aは、ヒヤリハット対象とは別に、第1の車両の運転者が注目していた可能性が高い他の対象物が第1の視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、過注目領域とする。そして、過注目領域特定部153aは、過注目領域を、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0072】
図8および図9は、過注目領域を説明するための模式図であり、実施の形態1の図2および図3に対応するものである。図2および図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0073】
図8および図9に示すように、第3の車両221の運転者の有効視野に対応する視野領域222は、第1の車両211の進行方向に広がっている。そして、第1の車両211と第2の車両212とのヒヤリハットが発生した時刻tの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213の非注目領域215とは別の方向に、第3の車両221が位置している。したがって、第1の車両211の運転者が、第2の車両212とのヒヤリハットの直前に第3の車両221に注目し過ぎていたために、第2の車両212の存在に気付かなかった可能性が高い。
【0074】
そこで、本実施の形態では、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213にヒヤリハット対象ではない車両(以下「過注目対象」という)である第3の車両221が、位置する場合を想定する。過注目領域特定部153aは、その位置に対応する領域を、過注目領域223とする。そして、事故要因領域提示部160は、この過注目領域223をも、事故要因領域として提示する。
【0075】
図10は、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aの動作の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図4に対応するものである。図4と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0076】
過注目領域特定部153aは、ステップS4000において非注目領域が特定されると、ステップS4100aにおいて、過注目領域を特定する過注目領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0077】
なお、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、異なる色が付される等、非注目領域であるか過注目領域であるかの区別が付く態様で、非注目領域および過注目領域を、事故要因領域として提示する。すなわち、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、事故要因領域を、要因別に、交差点の地図データの上に重畳して表示する。
【0078】
図11は、過注目領域特定処理(ステップ4100a)の一例を示すフローチャートである。過注目領域特定処理は、実施の形態1の図6で説明した非注目領域特定処理と一部の処理が同一内容である。したがって、図6と同一部分には同一ステップ番号を付し、これについての説明を適宜省略する。
【0079】
まず、過注目領域特定部153aは、時刻を選択し(S4001)、第1の車両およびヒヤリハット対象と、第3の車両とが、交差点に存在する場合には(S4002a:YES)、ステップS4003へ進む。そして、過注目領域特定部153aは、ステップS4003〜S4005の処理を実行して、第1の視野領域を設定する。
【0080】
ここで、過注目領域特定部153aは、いずれかの交差点およびいずれかの時刻において第1の車両およびヒヤリハット対象と居合わせた車両を、第3の車両として扱うものとする。また、ここでは、説明の簡便化のため、解析対象において、第3の車両が最大で1台しか存在しないものとして説明する。
【0081】
そして、過注目領域特定部153aは、時系列データから、選択中の時刻における第3の車両の位置を取得し(S4006a)、設定した第1の視野領域内に第3の車両が存在するか否かを判定する(S4007a)。過注目領域特定部153aは、第1の視野領域内に第3の車両が存在しない場合には(S4007a:NO)、ステップS4001へ戻る。
【0082】
第1の視野領域内に第3の車両が存在する場合は(S4007a:YES)、処理はステップS4008aへ進む。そして、過注目領域特定部153aは、第1の視野領域のうち、第1の車両から視認できる第3の車両(過注目対象)の両端の位置と第1の車両の位置とを結ぶ線分の内側の領域を、過注目領域に設定する(S4008a)。このとき過注目領域特定部153aは、第1の視野領域のうち、第1の車両の位置から第3の車両が位置する方向の全ての領域を過注目領域としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、第1の車両の位置から第3の車両が位置する方向のうち、第3の車両が位置する領域までの領域のみを過注目領域としても良い。
【0083】
そして、過注目領域特定部153aは、第1の視野領域から非注目領域を除いた領域を、注目領域として特定する(S4009a)。その後、過注目領域特定部153aは、ステップS4001へ戻る。
【0084】
過注目領域特定部153aは、第1の車両、ヒヤリハット対象、および第3の車両のいずれかがヒヤリハット発生場所である交差点に存在しなくなると(S4002a:NO
)、設定した注目領域に基づいて、事故要因領域を特定する。
【0085】
過注目領域特定部153aは、時刻毎の過注目領域を、その時刻における事故要因領域(つまり注目し過ぎている領域)としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、連続する時間帯における各時刻の過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、過注目領域特定部153aは、離散的な時刻または時間帯(例えば異なる日の同じ時刻または時間帯)における各時刻の過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。また、過注目領域特定部153aは、時系列で得られた全ての過注目領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、連続する時間帯または離散的な時刻もしくは時間帯において、過注目領域となっている時間の時間積分が一定値以上の領域を、事故要因領域として良い。あるいは、過注目領域特定部153aは、いずれかの時刻における過注目領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0086】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100aは、ヒヤリハットの直前に、第1の視野領域にヒヤリハット対象とは別の第3の車両が存在するとき、その位置に対応する領域を過注目領域に設定する。そして、事故要因領域特定装置100aは、非注目領域と過注目領域とを、区別し得る態様で、それぞれ事故要因領域として提示する。これにより、事故要因領域特定装置100aは、必要以上に注目が向けられていた他の領域に起因して起こるヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。
【0087】
なお、事故要因領域特定装置100aは、複数の第3の車両を検出し、複数の過注目領域の候補を設定し、その中から、1つまたは複数の過注目領域を特定しても良い。この場合には、例えば、過注目領域特定部153aは、まず、それぞれの過注目領域の大きさを過注目度として設定し、過注目領域を、過注目度が高い順に並べる。そして、過注目領域特定部153aは、車両の速度に応じて認識できる過注目領域の数を、過注目度を用いて制御し、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0088】
(実施の形態3)
ヒヤリハットの要因である可能性が高い領域には、第1の車両の死角となる死角領域のうち、ヒヤリハット対象が存在していた領域(以下「事故要因死角領域」という)も含まれる。そこで、本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置は、非注目領域と事故要因死角領域とを、事故要因領域として提示する。
【0089】
図12は、本発明の実施の形態3に係る事故要因領域特定装置の構成の一例を示すブロック図であり、実施の形態1の図1に対応するものである。図1と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0090】
図12において、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100bの事故要因領域特定部150bは、事故要因死角領域特定部154bを新たに有する。
【0091】
事故要因死角領域特定部154bは、第1の車両の運転者からみて、周囲の建造物等により死角となる死角領域にヒヤリハット対象が位置していたとき、その死角に対応する領域を、事故要因死角領域として特定する。そして、事故要因死角領域特定部154bは、事故要因死角領域を、事故要因領域として、事故要因領域提示部160へ出力する。
【0092】
図13および図14は、事故要因死角領域を説明するための模式図であり、実施の形態1の図2および図3に対応するものである。図2および図3と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。但し、第1の車両および第2の車両の位置および向きは、図2および図3とは異なっている。
【0093】
図13は、時刻t=1において、ヒヤリハットが発生した場合の様子を示す。また、図14は、直前の時刻t=t−Δtにおいて、第1の視野領域213が、建造物231により、死角領域232が存在していた場面を示す。そして、死角領域232には、ヒヤリハット対象である第2の車両212が位置していたとする。この場合、第1の車両211の運転者が、死角領域232に第2の車両212が存在する可能性に気付いていれば、ヒヤリハットを防ぐことができた可能性が高い。
【0094】
そこで、事故要因領域特定装置100bは、ヒヤリハットの直前の時刻t−Δtに、第1の視野領域213に存在する死角領域232に第2の車両212が位置していた場合、その死角領域232を、事故要因死角領域とする。そして、事故要因領域特定装置100bは、この事故要因死角領域を、事故要因領域として提示する。
【0095】
図15は、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置の動作の一例を示すフローチャートであり、実施の形態1の図4に対応するものである。図4と同一部分には同一符号を付し、これについての説明を省略する。
【0096】
事故要因死角領域特定部154bは、ステップS4000において非注目領域が特定されると、ステップS4200bにおいて、事故要因死角領域を特定する事故要因死角領域特定処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0097】
なお、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、異なる色が付される等、非注目領域であるか事故要因死角領域であるかの区別が付く態様で、非注目領域および事故要因死角領域を、事故要因領域として提示する。すなわち、本実施の形態では、事故要因領域提示部160は、事故要因領域を、要因別に、交差点の地図データの上に重畳して表示する。
【0098】
図16は、事故要因死角領域特定処理(ステップS4200b)の一例を示すフローチャートである。事故要因死角領域特定処理は、実施の形態1の図6で説明した非注目領域特定処理と一部の処理が同一内容である。したがって、図6と同一部分には同一ステップ番号を付し、これについての説明を適宜省略する。
【0099】
まず、事故要因死角領域特定部154bは、第1の車両およびヒヤリハット対象が交差点に存在する全ての時刻について、ステップS4003〜S4005の処理を実行して第1の視野領域を設定する。
【0100】
そして、事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在するか否かを判断する。
【0101】
この死角領域の有無の判断は、例えば、以下のようにして行われる。まず、事故要因死角領域特定部154bは、交差点データから、第1の車両とヒヤリハット対象との間に位置する付帯設備や建造物を検索し、それらの位置および領域の情報を取得する。そして、事故要因死角領域特定部154bは、第1の視野領域のうち、第1の車両から見て建造物等の向こう側の領域を、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域とする。
【0102】
事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在しない場合には(S4007b:NO)、ステップS4001へ戻る。一方、事故要因死角領域特定部154bは、ヒヤリハット対象が隠されている死角領域が存在する場合には(S4007b:YES)、その死角領域を、事故要因死角領域に設定して(S4008b)、ステップS4001へ戻る。
【0103】
事故要因死角領域特定部154bは、時刻毎の事故要因死角領域を、その時刻における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、時系列で得られた全ての事故要因死角領域の論理和の領域を、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、事故要因死角領域となっている時間の時間積分が一定値以上の領域を、事故要因領域として良い。あるいは、事故要因死角領域特定部154bは、いずれかの時刻における事故要因死角領域のみを、ヒヤリハットの直前の時間帯における事故要因領域としても良い。
【0104】
以上のように、本実施の形態に係る事故要因領域特定装置100bは、ヒヤリハットの直前に、第1の車両の死角領域にヒヤリハット対象が存在するとき、その死角領域を、事故要因死角領域として特定する。そして、事故要因領域特定装置100bは、非注目領域と事故要因死角領域とを、区別し得る態様で、それぞれ事故要因領域として提示する。これにより、事故要因領域特定装置100bは、事故要因死角領域に注意を向けていないことに起因するヒヤリハットに関して、注意喚起や潜在的危険領域の提示を行うことができる。なお、事故要因領域特定装置100bは、実施の形態2の過注目領域特定部153aを更に備え、過注目領域についても、事故要因領域として提示しても良い。
【0105】
なお、第1の視野領域の特定の手法は、上述の各実施の形態で説明した手法(形状、算出式、および設定のパラメータ)に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、運転者の年齢に応じて視野領域を変化させたり、視野領域に関するパラメータを個別に設定したり、運転者の視覚や頭部の位置、動作などに関する測定値からパラメータをフィードバックしても良い。また、事故要因領域特定装置は、ウィンカの情報や車両の挙動から、運転者が向かおうとしている方向を予め取得し、取得した方向に応じて、視野領域の形状を変化させても良い。この場合、例えば、事故要因領域特定装置は、車両の速度ベクトルを中心とした形状ではなく、運転者が向かおうとする方向を中心とした形状にしても良い。
【0106】
また、ヒヤリハットの発生の手法は、上述の手法に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、例えば、信号無視、一時停止違反などの交通法規違反、急加速、接触、および事故の発生を、ヒヤリハットの発生と判定してもよい。
【0107】
また、過注目領域の判定の手法は、上述の手法に限定されない。例えば、事故要因領域特定装置は、複数の過注目領域の候補を設定したとき、過注目領域の大きさ以外の属性を、過注目度として採用しても良い。このような属性は、例えば、非注目領域からの距離、過注目領域内の車両の数、過注目領域内の移動している車両の数、過注目領域内の停止している車両の数、視野領域内の移動している車両の数、視野領域内の停止している車両の数である。
【0108】
また、事故要因領域特定装置は、時系列データ格納部、交差点データ格納部、地図データ格納部、および事故要因領域提示部については、必ずしも有しなくても良い。この場合、事故要因領域特定装置は、例えば、通信ネットワークを介して、外部の情報サーバからデータを取得したり、外部の表示装置に事故要因領域の情報を出力する。また、事故要因領域特定装置は、ヒヤリハットの発生場所および発生時刻が明らかである場合には、ヒヤリハット判定部を有しなくても良い。
【0109】
また、ヒヤリハットの要因となり得る対象は、車両に限定されない。例えば、注目すべき対象は、歩行者、信号機、標識等も含む。例えば、視認し辛い位置に信号機が配置されている場合、視野領域に存在するにもかかわらず信号が赤になっているのを見落とし、ヒヤリハットが発生し得る。このような場合に、本発明を適用することにより、信号機の位置に対応する領域が事故要因領域(非注目領域)であることが分かる。
【0110】
以上説明した各実施の形態に係る事故要因領域特定装置は、運転者、道路の安全設計や改善を行う道路管理者、交通事故の実況見分や交通安全運動を行う警察、事故分析を行う事故鑑定者、および事故分析を行う保険事業者等に対して、事故予測情報、事故統計情報、および事故分析情報として、事故要因領域を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法は、提示の必要性が高い事故要因領域を特定することができる事故要因領域特定装置および事故要因領域特定方法として有用である。すなわち、本発明は、予防安全システム、運転支援システム、特に交差点に対する交通事故防止システム、交通事故要因分析システム、および交通事故予測システムに好適である。
【符号の説明】
【0112】
100、100a、100b 事故要因領域特定装置
110 時系列データ格納部
120 ヒヤリハット判定部
130 交差点データ格納部
140 地図データ格納部
150、150a、150b 事故要因領域特定部
151 視野領域特定部
152 非注目領域特定部
153a 過注目領域特定部
154b 事故要因死角領域特定部
160 事故要因領域提示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定装置であって、
ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部と、
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部と、を有する、
事故要因領域特定装置。
【請求項2】
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置し、かつ、前記運転手が注目していた可能性が高い他の対象物が前記視野領域に位置していたとき、前記他の対象物の位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである過注目領域とする過注目領域特定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項3】
前記事故要因領域を、地図データ上に重畳して表示する事故要因領域提示部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項4】
前記視野領域特定部は、
前記車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記視野領域を特定する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項5】
前記車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記車両のヒヤリハットの発生の有無を判定し、前記ヒヤリハットの発生時刻および対象物を特定するヒヤリハット判定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項6】
前記ヒヤリハット判定部は、
他の車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記車両のヒヤリハットの対象物を特定する、
請求項5記載の事故要因領域特定装置。
【請求項7】
前記ヒヤリハット判定部は、
前記車両の加速度および軌跡の少なくとも1つが急激に変化した時刻に、前記車両のヒヤリハットが発生したと判定する、
請求項5記載の事故要因領域特定装置。
【請求項8】
前記車両のヒヤリハットの対象物が、過去に、前記視野領域に位置し、かつ、前記運転手の死角に位置していたとき、前記死角に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである事故要因死角領域とする事故要因死角領域特定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項9】
前記視野領域特定部は、時刻単位で、前記視野領域を特定し、
前記非注目領域特定部は、時刻単位で、前記非注目領域を特定する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項10】
車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定方法であって、
ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定するステップと、
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とするステップと、を有する、
事故要因領域特定方法。
【請求項1】
車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定装置であって、
ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定する視野領域特定部と、
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とする非注目領域特定部と、を有する、
事故要因領域特定装置。
【請求項2】
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置し、かつ、前記運転手が注目していた可能性が高い他の対象物が前記視野領域に位置していたとき、前記他の対象物の位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである過注目領域とする過注目領域特定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項3】
前記事故要因領域を、地図データ上に重畳して表示する事故要因領域提示部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項4】
前記視野領域特定部は、
前記車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記視野領域を特定する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項5】
前記車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記車両のヒヤリハットの発生の有無を判定し、前記ヒヤリハットの発生時刻および対象物を特定するヒヤリハット判定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項6】
前記ヒヤリハット判定部は、
他の車両の走行状況を記録した時系列データに基づいて、前記車両のヒヤリハットの対象物を特定する、
請求項5記載の事故要因領域特定装置。
【請求項7】
前記ヒヤリハット判定部は、
前記車両の加速度および軌跡の少なくとも1つが急激に変化した時刻に、前記車両のヒヤリハットが発生したと判定する、
請求項5記載の事故要因領域特定装置。
【請求項8】
前記車両のヒヤリハットの対象物が、過去に、前記視野領域に位置し、かつ、前記運転手の死角に位置していたとき、前記死角に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである事故要因死角領域とする事故要因死角領域特定部、を更に有する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項9】
前記視野領域特定部は、時刻単位で、前記視野領域を特定し、
前記非注目領域特定部は、時刻単位で、前記非注目領域を特定する、
請求項1記載の事故要因領域特定装置。
【請求項10】
車両の運転者が事故を防ぐために意識すべき事故要因領域を特定する事故要因領域特定方法であって、
ヒヤリハットが発生した前記車両の運転者の、前記ヒヤリハットの発生直前の視野領域を特定するステップと、
前記ヒヤリハットの対象物が前記視野領域に位置していたとき、その位置に対応する領域を、前記事故要因領域の1つである非注目領域とするステップと、を有する、
事故要因領域特定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−79105(P2012−79105A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223889(P2010−223889)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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