説明

事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置と方法

【課題】複数の発電所の使用電力状況を監視して、電力の受電、送電を相互にインタラクティブとし、各発電所周辺地域に対して排熱を最大限に利用できる制御を行なう。
【解決手段】熱主電従型発電機と、複数の電主熱従型発電機と、バックアップボイラーと、制御部を有する複数の発電所は、中央制御部500により管理される。各発電所は、排熱を100%利用する発電機の制御を行い、過不足電力は、中央制御部により管理され、各発電所に対する送電。受電コントロールが行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド型発電所設備を利用する事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置と方法に関するものであり、排熱を利用する複数の発電所間で、電力を相互利用できる仕組みを構築し、エネルギー利用効率を格段に向上できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、エネルギー利用効率を向上するため、あるいは排出CO2の削減を得るために、複数の発電所の状況をネットワークで相互に監視し、売電、買電を行なうシステムが考えられている。ネットワークを利用する技術としては、特許文献1、2、及び3のような技術がある。
【特許文献1】特開2002−300723公報
【特許文献2】特開2003−52127公報
【特許文献3】特開平6−113458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、発電所により生成した電力を利用する他に、発電機の排熱を発電所周囲の施設で利用する方法も実現されている。このような発電所管轄地域において、発電所で生成した電力が100%使用され、かつ、発電所で得られた排熱も発電所周辺地域で100%使用されるならば、エネルギー利用効率が最もよく、また排出CO2の最小化が得られることが期待できる。
【0004】
しかし、上記の条件、つまり1つの発電所の電力及び排熱を100%効率よくを利用するような発電所管轄地域と発電所周辺地域が一体となった地域は存在しない。
【0005】
そこでこの発明は、電力に関しては、複数の発電所の使用電力状況を相互に監視して、電力の受電、送電をインタラクティブとした上で、それぞれの発電所周辺地域の排熱を最大限に利用できる制御を行なうようにした事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置と方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためにこの発明の一面では、熱主電従型発電機と、複数の電主熱従型発電機と、バックアップボイラーと、前記熱主電従型発電機と前記複数の電主熱従型発電機の発電電力を電力系統に導く電力ラインと、前記熱主電従型発電機の排ガスボイラーと前記複数の電主熱従型発電機の排ガスボイラーと前記バックアップボイラーとの蒸気を客先設備に送気するパイプと、前記パイプに流れる蒸気を監視し、前記客先設備の蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置と、前記客先設備の蒸気使用量に応じて、前記熱主電従型発電機とバックアップボイラーとを停止も含めた制御を行ない、客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持させる蒸気制御及び運転プログラム装置と、ネットワークを通じて複数の発電所を管理する中央制御部との通信を行い、前記中央制御部からの指令に応じて、少なくとも前記複数の電主熱従型発電機の発電量を増又は減制御し、これに伴い、前記熱主電従型発電機を制御し前記客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持せしめる制御手段を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記した手段により、電力に関しては、複数の発電所を相互に監視して、電力の受電、送電をインタラクティブとした上で、それぞれの発電所周辺地域の排熱を最大限に利用する制御が行われ、エネルギー利用効率がよく、排出CO2の削減化が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施形態では、熱主電従型発電機と、複数の電主熱従型発電機と、バックアップボイラーと、制御部を有する複数の発電所100,200,300は、中央制御部500により管理される。各発電所100,200,300は、排熱を100%利用する発電機の制御を行い、過不足電力は、中央制御部500により管理され、各発電所に対する送電。受電コントロールが行なわれる。
【0009】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、この発明の一実施の形態を示している。図1において100,200,300はそれぞれ発電所であり、それぞれの発電所100,200,300は、発電所管轄地域の電力を発電している。発電所管轄地域の電力使用者は、オンサイト客先と称される。図では発電所100,200,300のオンサイト客先(ここでは客先設備と称することにする)は、A,B,Cとして示されている。
【0010】
このシステムでは、それぞれの発電所100,200,300は、対応するオンサイト客先設備A,B,Cに対して、排熱を利用して得られた蒸気を供給する。ここで、排熱(蒸気)は、それぞれの管轄地域にてほぼ100%利用されるように、発電所の発電機が制御される。
【0011】
発電所100,200,300は、それぞれ、ガスタービンエンジン発電機GT1,GT2,GT3を有する。また発電所100,200,300は、それぞれ、ディーゼルエンジン発電機DE1,DE4,DE7を有する。
【0012】
ガスタービンエンジン発電機GT1,GT2,GT3は、燃料にする電気発生率に比べて熱発生率が高く、熱主電従型発電機と称される。これに対して、ディーゼルエンジン発電機DE1,DE4,DE7は、燃料にする熱発生率に比べて電気発生率が高く、電主熱従型発電機と称される。発電所100,200,300には、それぞれ予備機としてディーゼルエンジン発電機DE2,3,DE5,6、DE8,9が設備されていてもよい。
【0013】
また発電所100,200,300には、それぞれ蒸気の効率的な使用を行なうために、バックアップボイラー101、201、301が設備されている。
【0014】
発電所100,200,300には、それぞれ制御部(後述する)が設けられている。各制御部は、発電電力、オンサイト客先設備の電力使用状況、蒸気使用状況などを監視している。また制御部の監視情報は、通信ネットワーク400を介して、中央制御部500に送信される。
【0015】
各発電所100,200,300における電力ライン102、202、302は、電力系統600に接続されている。この接続により、発電所100,200,300の発電電力の過不足が、中央制御部500で監視及び制御される。そして各発電所間で発電電力の過不足が生じた場合、送電、受電を行われ、電力の効率的な利用が行なわれる。また電力系統600は、発電所に密着したオンサイト客先設備だけでなく、他の客先設備D,E,F,G、卸電力取引所にも送電を行なっている。
【0016】
図2には、発電所200とオンサイト客先設備の関係を代表例として示している。なお発電所200の予備のディーゼルエンジン発電機DE6は記載を省略している。オンサイト客先設備の負荷に対しては、電力ライン202を通じて電力が供給されている。オンサイト客先設備の電力使用量は、電力使用量計測装置B11により検出され、発電所200の制御部211に伝送されている。
【0017】
さらにオンサイト客先設備では、暖房、給湯、加熱などのために蒸気が使用されている。この蒸気は、たとえばボイラーB21の蒸気がヘッダーB30を介して利用されている。ここで、オンサイト客先設備Bにおいて、蒸気の不足が生じると、排ガスボイラー221、222、223、バックアップボイラー201の排出蒸気が利用される。オンサイト客先設備Bにおける蒸気使用量は、蒸気使用量計測装置B31により計測され、計測値は、蒸気制御及び運転プログラム装置225に入力されている。また排ガスボイラー221、222、223、バックアップボイラー201からの排出蒸気が共通に通過するパイプには、蒸気圧力流量計測装置226が設けられ、その計測情報も蒸気制御及び運転プログラム装置225に入力されている。蒸気使用量計測装置B31、蒸気圧力流量計測装置226は、原理は同じであり、パイプ内の圧力と、流量と、時間を計測して、時間当たりの蒸気の使用量を計算している。この外に、ボイラーに対する給水量を監視しても蒸気使用量を計算することが可能である。
【0018】
蒸気制御及び運転プログラム装置225は、オンサイト客先設備Bにおける蒸気の使用状況に応じて、ガスタービンエンジン発電機GT2、バックアップボイラー201の運転状態を制御する。この動作例については、さらに後で詳しく説明する。
【0019】
ガスタービンエンジン発電機GT2、ディーゼルエンジン発電機DE4,DE5の発電電力は、スイッチSW1、SW2,SW3を介して母線231に接続され、さらにこの母線231は、スイッチSW0を介して電力系統に接続されている。
【0020】
制御部211は、ガスタービンエンジン発電機GT2、ディーゼルエンジン発電機DE4,DE5のそれぞれのガバナを介して制御し、起動状態、停止状態、出力パワーの制御を行うことができる。各発電機GT2,DE4,DE5の出力は、発電電力計測装置232により計測され、計測情報が制御部211に帰還されている。またガスタービンエンジン発電機GT2は、蒸気制御及び運転プログラム装置225からの制御信号により、その運転状態がコントロール可能である。
【0021】
制御部211は、送信部212、受信部213を介して通信ネットワーク400に接続されており、図1で示した中央制御部500との間で情報の送受信を行なうことができる。また、制御部211には、ディスプレイ215、プリンタ216、マウス217などが接続されている。
【0022】
図2には、客先設備Eにおける構成ブロックも示している。この客先設備Eは、発電所200に対しては、電力をカバーしなければならない所定の設備である。電力系統600からの電力は、客先設備Eの各負荷に供給される。ここで使用される電力は、電力使用量計測装置E11において計測され、送信部E12を介して通信ネットワーク400に送出される。E13は、検針装置である。この客先設備Eは、図1に示した中央制御部500に契約登録されているものとする。
【0023】
<上記したシステムの基本動作説明>
(1)オンサイト客先設備Bに設置している電力使用計測装置B11から発電所200の制御部211へ電力使用量が入力されている、
(2)また客先設備Eの電力使用量計測装置E11からも、発電所200の制御部211へ電力使用量が入力されている。
【0024】
(3)制御部211は、客先設備BとEの電力使用量を合計した発電用制御信号を生成し、ディーゼルエンジン発電機DE4のガバナ及びAVRへ出力し、ディーゼルエンジン発電機DE4の運転を制御する、
(4)ディーゼルエンジン発電機DE4は、客先設備BとEへの電力を100%供給しているものとする、
(5)オンサイト客先設備Bに設置した蒸気使用量計測装置B31から、発電所200の蒸気制御及び運転プログラム装置225へ客先設備Bの蒸気使用量が入力されている。
【0025】
(6)今、客先設備Bの蒸気使用量が3分間以上、ガスタービンエンジン発電機GT2の定格容量の50%を超えた場合、制御部211は、ガスタービンエンジン発電機GT2に対して起動信号をあたえる、
(7)これによりガスタービンエンジン発電機GT2が起動し、ガバナ、AVRを作動させ、系統へ同期投入、連系運転される、
(8)ガスタービンエンジン発電機GT2は、出力を上げていき、客先設備Bの必要蒸気量を発生する、この蒸気は排ガスボイラー221から送気される、
(9)ガスタービンエンジン発電機GT2の発電電力量は、発電電力計測装置232を介して制御部211に入力される、
(10)ここで、制御部211は、ディーゼルエンジン発電機DE4の発電量が低下するように、ガバナ、AVRを通じてディーゼルエンジン発電機DE4を制御する。ディーゼルエンジン発電機DE4の発電量の低下分は、ガスタービンエンジン発電機GT2の発電分と同じ量である、
(11)ガスタービンエンジン発電機GT2は、客先設備Bの蒸気デマンドに合わせて出力を制御され、つねに客先設備Bの蒸気デマンドが満足される。ディーゼルエンジン発電機DE4は、客先設備Bと客先設備Eとの合計電力使用量から、ガスタービンエンジン発電機GT2の発電量を差し引いた値の電力を発電するように制御される。
【0026】
<ガスタービンエンジン発電機GT2の発電出力がディーゼルエンジン発電機DE4を停止しても余る場合の例>
(1)客先設備Bの蒸気デマンドが大きく、ガスタービンエンジン発電機GT2とディーゼルエンジン発電機DE4の合計発電出力が、客先設備Bと客先設備Eの合計電力使用量よりも大きい場合、この場合は、ディーゼルエンジン発電機DE4を運転停止、つまり解列する。
【0027】
(2)ディーゼルエンジン発電機DE4を停止したとしても、ガスタービンエンジン発電機GT2が大きく、電力が余る場合は以下のようになる、
(3)発電所100,200,300の電力受給状況、及び運転状況が中央制御部500で監視されている、
(4)今、発電所200において余剰電力があるものとする。このとき中央制御部500は、発電所100と300の発電コストを比較する。100と300間で、使用する発電機が同じで、発電量も同じであれば、発電所100と300の発電コストは同じである。しかし、今、例えば、発電所100と300と比較した結果、発電所100の発電量が大きいとすると、発電所100のディーゼルエンジン発電機の発電量を低下させる。低下させる程度は、発電所200の余剰電力分である。このための制御信号は、中央制御部500からネットワーク400を通じて、発電所100の制御部に送られる、
(5)これにより発電所100の制御部は、例えばディーゼルエンジン発電機DE1を制御し、出力を低下または停止させる。これにより電力系統における過不足はバランスされる、
(6)図1の例であると、発電所100は、例えば卸電力取引所、客先設備Dに電力を供給している。上記の(4)の制御が行なわれた場合は、発電所100からの送電と発電所200からの送電の合計電力が、卸電力取引所、客先設備Dに供給されることになる。
【0028】
<発電所200において、ガスタービンエンジン発電機GT2とディーゼルエンジン発電機DE4の発電出力を合計しても、客先設備BとEへの電力供給に不足が生じる場合>
(1)予備発電機を作動させても不足する場合、以下のような処理が行われる、
(2)発電所100,200,300の電力受給状況、及び運転状況が中央制御部500で監視されている、
(3)中央制御部500における電力相互補完制御装置は、発電所200の電力不足分を補うために、発電所100または発電所300のディーゼルエンジン発電機DE1,またはDE7の発電出力を上げるように制御する、
(4)ディーゼルエンジン発電機DE1,またはDE7のいずれを選択するかは、発電コストの安いほうが選択される、発電コストを比べるためには、情報として、各地域における燃料費用が参照され、また同時にディーゼルエンジン発電機の効率情報が用いられる。効率情報は、例えば燃料1リットル当たりの発電出力、或いは発電出力1kWh当たりの燃料費で計算され、蓄積されている。これらの情報は、中央制御部500の各発電所のデータベースとして構築されている、
(5)今、ディーゼルエンジン発電機DE7の発電コストが安いことがわかると、中央制御部500の電力相互補完制御装置は、発電所300の制御部に、DE7の発電出力を上げるための制御信号を送信する、
(6)これにより、客先設備BとEへの電力供給は、発電所200からと発電所300からの電力供給が実現されることになる。このとき、発電所300のオンサイト客先設備Aに対しては、蒸気の供給が多くなる事が考えられるが、ディーゼルエンジン発電機DE7の排熱による蒸気は、ガスタービンエンジン発電機に比較して小さいので、大きな影響は無い。仮に排熱が大きな影響を与え、蒸気が過剰となるようであれば、ガスタービンエンジン発電機GT3の出力が制御される。
【0029】
<発電所100、又は200又は300が定期点検又は事故のために停止した場合>
(1)各発電所100、200、300には、それぞれ予備のディーゼルエンジン発電機DE2,DE3,DE5,DE6、DE8,DE9が設置されている、
(2)ここで各発電所100、200、300の予備機の合算発電量は、当該発電所の2分の一の発電容量分に相当するように設計されている、
(3)中央制御部500における電力相互補完制御装置は、発電所100,200,300の電力受給状況、及び運転状況を監視している、
(4)例えば発電所100の送電が停止した場合、発電所100の電力不足信号が通信ネットワーク400を通じて電力相互補完制御装置へ伝達される、
(5)電力相互補完制御装置は、発電所200及び300の予備機であるディーゼルエンジン発電機DE5,DE6、DE8,DE9を起動すべき起動信号を送信する、
(6)これに伴い、発電所200及び300の制御部は、それぞれディーゼルエンジン発電機DE5,DE6、DE8,DE9を起動し、同期投入、連系送電を行なう、
(7)これにより、本来は発電所100の管轄である卸電力取引所及び客先設備Dには、電力系統600を介して発電所200と300からの送電電力が供給される、
(8)ここで発電所100が復旧したとすると、発電所100の送電電力の上昇に伴い、発電所200と300のディーゼルエンジン発電機DE5,DE6、DE8,DE9の出力を低下させる制御が行なわれる、
(9)そして、発電所100の出力が安定した時点で、発電所200及び300の予備機が解列されて停止される。
【0030】
<ボイラー動作について>
(1)例えば発電所200の場合について説明すると以下のようになる。ガスタービンエンジン発電機GT2は、客先設備Bの蒸気使用量に合わせて運転が制御されている、
(2)蒸気使用量が低下し、3分間以上ガスタービンエンジン発電機GT2の定格の35%になった時点で、このことが制御部211により認識され、バックアップボイラー201が点火され運転状態となる、
(3)バックアップボイラー201が安定運転状態になったらガスタービンエンジン発電機GT2が解列、停止される、
(4)以後は、バックアップボイラー201からの蒸気が、ガスタービンエンジン発電機GT2の排ガスボイラーからの蒸気に変わって、客先設備Bにおいて使用される、
(5)ガスタービンエンジン発電機GT2は、熱主電従で動作するが、この発電機GT2が解列、停止すると発電量が低下する。そこで、この低下分は、ディーゼルエンジン発電機DE4の発電量がアップされることにより補われる、
(6)次に、客先設備Bの蒸気使用量が増大し、3分間以上ガスタービンエンジン発電機GT2の定格容量の50%以上になったら、このことが制御部211により認識され、ガスタービンエンジン発電機GT2が起動される。これにより、ガスタービンエンジン発電機GT2の排ガスボイラー221からの蒸気が、客先設備Bへ送気される。また、発電電力も連系送電される、
(7)次にバックアップボイラー201は出力を低下するように制御される、
(8)また、ディーゼルエンジン発電機DE4は、発電出力をガスタービンエンジン発電機GT2の出力増加に応じて、低下させるように制御される。
【0031】
図3には、中央制御部500の形態を示している。中央制御部500は、受信部501、送信部502を介して外部の各発電所及び客先設備とのコミュニケーションを行なうことができる。そして、各発電所のデータベースを構築している。データベースとしては、ガスタービンエンジン発電機の運転状況と、出力パワー制御状態、及びディーゼルエンジン発電機の運転状況と出力パワー制御状態が管理されている。さらに各発電所の現在の発電量と、各発電所の最大発電能力のデータが記録されている。現在の発電量は、時時刻々と変化するので、例えば30秒毎に更新される。これにより、各発電所の電力の過不足情報が随時更新される。また各発電所の地域における、燃料単価もデータとして保存されている。これにより、例えば、不足分の電力をディーゼルエンジン発電機で補おうとする場合、最もコストの安い地域の発電所の発電機を起動するように制御することが可能である。
【0032】
上記したようにこの発明では、発電所においては、熱主電従型発電機と、複数の電主熱従型発電機と、バックアップボイラーと、前記熱主電従型発電機と前記複数の電主熱従型発電機の発電電力を電力系統に導く電力ラインと、前記熱主電従型発電機の排ガスボイラーと前記複数の電主熱従型発電機の排ガスボイラーと前記バックアップボイラーとの蒸気を客先設備に送気するパイプと、前記パイプに流れる蒸気を監視し、前記客先設備の蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置と、前記客先設備の蒸気使用量に応じて、前記熱主電従型発電機とバックアップボイラーとを停止も含めた制御を行ない、客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持させる蒸気制御及び運転プログラム装置とが設けられる。そして、制御手段(制御部211)が、ネットワークを通じて複数の発電所を管理する中央制御部500との通信を行い、前記中央制御部からの指令に応じて、少なくとも前記複数の電主熱従型発電機の発電量を増又は減制御し、これに伴い、前記熱主電従型発電機を制御し前記客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持させる。
【0033】
また、制御手段は、熱主電従型発電機の出力が増加され、要求されている発電量が過剰となった場合、当該過剰分を前記複数の電主熱従型発電機のいずれかの発電量を減制御することができる。
【0034】
また制御手段は、熱主電従型発電機の出力が増加され、要求されている発電量が過剰となり、前記複数の電主熱従型発電機を停止させても過剰である場合は、前記中央制御部は、他の発電所の発電量を前記過剰分だけ低下させる制御を行なうことができる。
【0035】
さらにまた制御手段は、熱主電従型発電機及び前記複数の電主熱従型発電機の全発電量では、前記所定の設備及び前記客先設備への電力供給が不足である場合は、前記中央制御部は、他の発電所の発電量を増大させる制御を行うことができる。
【0036】
この発明の全体的な発電所コントロール方法では、以下のような構成が行なわれている。複数の発電所では、それぞれ熱主電従型発電機と複数の電主熱従型発電機を設置し、また前記複数の発電所では、それぞれ発電所の発電電力を計測する発電電力計測装置を有し、また前記複数の発電所では、それぞれ受け持ちの所定の客先設備に対して前記熱主電従型発電機の排熱を供給するパイプ設備を有し、さらにまた前記複数の発電所では、それぞれの発電所の動作を統括する制御部を有し、これらの制御部は、通信ネットワークを介して中央制御部に接続されている。
【0037】
さらに複数の発電所では、前記制御部が、それぞれ前記所定の客先設備の要求情報に応じて前記熱主電従型発電機を自動運転制御して、前記熱主電従型発電機の排熱を最大限に利用している。また中央制御部では、各発電所の発電電力の過不足状態を管理し、全体で余剰の発電電力がある場合は、任意の発電所の電主熱従型発電機を停止または発電低下せしめ、全体で不足電力がある場合は、任意の発電所の電主熱従型発電機を起動又は発電上昇せしめる制御信号を出力する。
【0038】
これにより、電力に関しては、複数の発電所を相互に監視して、電力の受電、送電をインタラクティブとした上で、それぞれの発電所周辺地域の排熱を最大限に利用する制御が行われ、エネルギー利用効率がよく、排出CO2の削減化が得られる。
【0039】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施の形態において複数の発電所間の相互の関連を示す図である。
【図2】図1に示した発電所200とオンサイト客先Bの関係を具体的に示すブロック図である。
【図3】中央制御部500におけるデータベースの説明図である。
【符号の説明】
【0041】
100,200,300…発電所、101,201,301…バックアップボイラー、400…通信ネットワーク、500…中央制御装置、600…電力系統、A−G…客先設備、GT1,GT2,GT3…ガスタービンエンジン発電機、DE1−DE9…ディーゼルエンジン発電機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱主電従型発電機と、
複数の電主熱従型発電機と、
バックアップボイラーと、
前記熱主電従型発電機と前記複数の電主熱従型発電機の発電電力を電力系統に導く電力ラインと、
前記熱主電従型発電機の排ガスボイラーと前記複数の電主熱従型発電機の排ガスボイラーと前記バックアップボイラーとの蒸気を客先設備に送気するパイプと、
前記パイプに流れる蒸気を監視し、前記客先設備の蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置と、
前記客先設備の蒸気使用量に応じて、前記熱主電従型発電機とバックアップボイラーとを停止も含めた制御を行ない、客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持させる蒸気制御及び運転プログラム装置と、
ネットワークを通じて複数の発電所を管理する中央制御部との通信を行い、前記中央制御部からの指令に応じて、少なくとも前記複数の電主熱従型発電機の発電量を増又は減制御し、これに伴い、前記熱主電従型発電機を制御し前記客先蒸気デマンドに応じた蒸気供給を維持せしめる制御手段を
有したことを特徴とする事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記熱主電従型発電機の出力が増加され、要求されている発電量が過剰となった場合、当該過剰分を前記複数の電主熱従型発電機のいずれかの発電量を減制御することを特徴とする請求項1記載の事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記熱主電従型発電機の出力が増加され、要求されている発電量が過剰となり、前記複数の電主熱従型発電機を停止させても過剰である場合は、前記中央制御部は、他の発電所の発電量を前記過剰分だけ低下させる制御を行なう
ことを特徴とする請求項1記載の事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記熱主電従型発電機及び前記複数の電主熱従型発電機の全発電量では、前記所定の設備及び前記客先設備への電力供給が不足である場合は、前記中央制御部は、他の発電所の発電量を増大させる制御を行う
ことを特徴とする請求項1記載の事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御装置。
【請求項5】
複数の発電所では、それぞれ熱主電従型発電機と複数の電主熱従型発電機を設置し、また前記複数の発電所では、それぞれ発電所の発電電力を計測する発電電力計測装置を有し、また前記複数の発電所では、それぞれ受け持ちの所定の客先設備に対して前記熱主電従型発電機の排熱を供給するパイプ設備を有し、さらにまた前記複数の発電所では、それぞれの発電所の動作を統括する制御部を有し、これらの制御部は、通信ネットワークを介して中央制御部に接続され、
前記複数の発電所では、前記制御部が、それぞれ前記所定の客先設備の要求情報に応じて前記熱主電従型発電機を自動運転制御して、前記熱主電従型発電機の排熱を最大限に利用し、
前記中央制御部では、各発電所の発電電力の過不足状態を管理し、全体で余剰の発電電力がある場合は、任意の発電所の電主熱従型発電機を停止または発電低下せしめ、全体で不足電力がある場合は、任意の発電所の電主熱従型発電機を起動又は発電上昇せしめる制御信号を出力する、
ことを特徴とする事業用分散型熱電併給発電所間における電力相互補完制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−318940(P2007−318940A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146952(P2006−146952)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(501344614)株式会社日本ギャラクシーエンジニアリング (6)
【Fターム(参考)】