説明

二値の掛け算を用いたゲームまたは学習教材

【課題】 小学校の算数教育の重点の1つに掛け算九九と割り算がある。
子供の学習において、掛け算九九を覚える方法は「暗唱による記憶」が一般的であるが、その学習方法を補完するものとして、自発的に楽しく学び、掛け算九九の暗唱順とは異なった順番で感覚的に答えを考え、或いは、掛け算の答えからそれに該当する掛け算九九を考える必要性から逆算(割り算)の思考も同時に養える、これまでにない適切な学習具を提供することを課題とする。
【解決の手段】1から9までの数字を書いたピース(掛け算の問題にあたる)と枠(掛け算の答えにあたる)の組み合わせからなっており、ピース2枚の数字を掛け算した答えを表示した枠にピース2枚ずつを過不足なく嵌め込んでいくことにより、掛け算の九九を活用しながら遊べるゲーム又は学習教材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、九九の掛け算を使って、数字を表示したピース2個ずつを、掛け算の答えを表示した枠に嵌めるゲーム又は学習教材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、小学校の算数教育用学習具は種々のものがある。例えば、九九の表を基本とした教材、円板の回転による掛け算九九を行なうもの(特許文献1)、積み木を積み重ねて数の和、面積などを表現する積み木遊技具(特許文献2)、対数を利用した掛け算九九学習用積み木(特許文献3)等々がある。
【特許文献1】特開2003−066827号公報
【特許文献2】実開平7−37296号公報
【特許文献3】特開2005−305002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
小学校の算数教育の重点の1つに掛け算九九と割り算がある。また一般生活においても掛け算と割り算は重要な算数である。
子供の学習において、掛け算九九を覚える方法は「暗唱による記憶」が一般的であるが、その学習方法を補完するものとして、自発的に楽しく学び、掛け算九九の暗唱順とは異なった順番で感覚的に答えを考え、或いは、掛け算の答えからそれに該当する掛け算九九を考える必要性から逆算(割り算)の思考も同時に養える、これまでにない適切な学習具を提供することを課題とする。
更に、一般生活においても、特に高齢者等の思考能力低下の防止等、思考能力をトレーニングできる一助として適切な遊具として提供することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0004】
1から9までの数字を書いたピース(掛け算の問題にあたる)と枠(掛け算の答えにあたる)の組み合わせからなっており、ピース2個の数字を掛け算した答えを表示した枠にピース2個ずつを過不足なく嵌め込んでいくことにより、掛け算の九九を活用しながら遊べるゲーム又は学習教材である。
【0005】
具体的には、1から9までの数字を、幅と長さを持つ図形や立体(以下ピースと称す)に対応させ、かつ各ピースに対応させた数字を表示し、1から9までのそれぞれの数字に対応して前記ピースの長さはそれぞれ異なり、1から9までの数字の任意の2つを掛けて同じ答えになる組み合わせに対しては2つの数字に対応させた前記ピースの長さの和がそれぞれの組み合わせで等しくなるように長さを決め、前記2つの数字の掛け算の答えになる数値を表示しかつ前記2つの数字に対応したピースの合計面積にほぼ等しい枠を複数個用意し、少なくとも2組の1から9までの数字に対応したピースを使用者に与え、任意の2個のピースを組み合わせて前記枠に合致するように嵌めていき、すべてのピースが用意された枠内に過不足なく嵌れば完成、すなわち正解とする。
【0006】
前記ピース及び枠は実体のあるものに限らず、コンピュータによって表示された画像でも良く、ピースの個数及び枠の形状によって難易度を設定し、かつ開始してから正解するまでに要する時間を計測して表示し、場合によっては時間をポイントに換算した値、又は難易度と時間を基にポイントに換算した値を表示することによってゲーム性を高めることができる。

【発明の効果】
【0007】
本発明はふたつのピースを複数の枠にはめ合わせる簡単な作業により、掛け算を具体的に利用して感覚的に楽しく掛け算九九を学習、復習できる。
【0008】
掛けて同じになる数字の組み合わせに対しては、長さの和が等しくなるように設定したので、このような数字の組み合わせに対して用意された枠には、どちらの数字の組み合わせでも嵌めることができるが、正解は一種類しかない点が面白い要素になる。
【0009】
対数を長さに採用すれば、掛け算を足し算に変換できるが、Log1=0なので、1の位の掛け算が表現できないことが問題であった。
本発明によれば1の掛け算も長さの和で表現できる。
【0010】
本発明によれば、枠に明記してある答えの数を見て、それに一致する九九を頭の中で捜すことになり、いわば逆算の発想が必要であり、単に九九を暗記するのでなく応用する力を養うことになる。
【0011】
老齢者にとっては、頭を使って正解を考える訓練に加えて、手先を使ってピースをそろえて枠内に入れる訓練になり、脳を活性化する効果が期待できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
九九の表を表1に示す。この表の中で、同じ答えになる組み合わせは(1)〜(9)で示した9組である。
この9組の1〜9の数字の組み合わせに対して、各数字に対応させるピースの長さの和が等しくなる条件を求める。
【0013】
【表1】

【0014】
1〜9に該当する各ピースの長さをA1、A2、・・・、A8、A9で表すと、表1内の(1)〜(9)に対応する条件は以下の式で表すことができる。
(1)2×A2=A1+A4
(2)A2+A3=A1+A6
(3)A2+A4=A1+A8
(4)2×A3=A1+A9
(5)A2+A6=A3+A4
(6)A2+A8=2×A4
(7)A2+A9=A3+A6
(8)A3+A8=A4+A6
(9)A4+A9=2×A6
【0015】
上記9個の連立方程式を整理すると、以下の4式になる。
A2=(A1+A4)/2
A3=(A1+A9)/2
A6=(A4+A9)/2
A8=(3×A4−A1)/2
上記4式を満たし、かつそれぞれ同じ長さにならないように長さを決める。
A5とA7は上記関係式に含まれないので、任意に決めることができるが、やはり他のピースと同じ長さにならないように決める。
【0016】
以上の方法によって決める長さの組み合わせは無数にあるが、表2に長さと幅の組み合わせの例を3通り示した(長さと幅の単位はmm)。
【0017】
【表2】

【0018】
例1は、5と7以外の長さを数字の順番に大きくなるように決めた例であり、かつ、5と7については、他のピースより幅を大きくして、分かりやすくした例である。
例2は例1に対し、全体的にややピースを長くし、5と7の長さの順番を逆にしたものである。
例3は、5と7以外の長さも数字の順番に並んでおらず、かつ5と7のピース幅を他の数字と同じにしたものであり、ゲームとしての難度が高い例である。
【0019】
次に、答えとなる枠の決め方と組み合わせについて説明する。
表3は、1〜9までのピース2組(18個)に対応した、枠の組み合わせを説明したものである。
1〜9までの数字がそれぞれ2枚あるので、各数字の縦列と横行に合わせて2回ずつ現れるように組み合わせを決めていく。
例えば、(A)の組み合わせの中で、3は、3列の2行と5列と3行が選ばれている。
このようにして、枠の組み合わせは(A)〜(E)まで5組できることになる。
この場合、例えば(A)のボードに9種類の枠を作っておくことにより、ピース2組(18個)を過不足なく嵌めることができ、この状態が正解となる。
【0020】
【表3】

【0021】
(A)〜(E)までに対応する5枚のボードを1セットとすれば、ピース2組を順次ボードに嵌めていき、5枚1セットのボード全てで正解が得られれば、45通りの九九の組み合わせを全て使用したことになる。
【0022】
具体的な構成を図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本発明による二値の掛け算を用いた学習教材(ボードA)に2組のピースを過不足なく嵌めた状態、すなわち正解の状態の平面図である。
尚、ピースの長さと幅は表2の例1に対応している。
平板状のボード1には、3mm程度の深さの枠2が9個形成されており、それぞれ枠には掛け算の答えである数字が表示されている。枠2の面積と形は正解となる1組のピース3が丁度嵌るように決められている。これらの枠とピースの組み合わせは、表3の(A)の組み合わせに一致している。
【0023】
同様にして表3の(B)〜(E)の組み合わせに対応するボードB〜Eの平面図を図3〜図6に示した。A〜Eまで合計5枚のボードで45通りの九九の組み合わせを全て各1回ずつ使うことになる。ピースは最低2組(18枚)あれば遊ぶことができるが、全てのボードを正解の状態で保ちたい場合は10組(90枚)のピースが必要になる。
【0024】
尚、各枠に表示する掛け算の答えとなる数字は、枠外に表示しても良いし枠内に表示しても良い。枠内に表示した場合は、ピースを嵌めると答えが隠れるので、正解の状態が完成した後に、ピースを外しながらもう一度九九の確認をすることができる。
【0025】
図7は、ボードAの別の実施例であり、ピースの長さと幅を表2の例3の値を採用した場合を示している。図1に比べて枠の形が単調になり、ピースの大きさが数字の順番になっていないのでより難易度が高くなっている。
【0026】
上記説明では、1桁の掛け算すなわち九九を前提に説明したが、少なくとも九九の範囲では本発明のルールを守りながら、2桁の掛け算まで拡張することも可能である。
例えば、12×12まで拡張する場合、2つの組み合わせで同じ答えになる場合が12組、3つの組み合わせで同じ答えになる場合が3組存在し、同じ答えになる場合は同じ長さになるようにピース長さを決めることは困難になってくる。しかし2桁の数字に対応するピースには上記原則を適用しないことにすれば、10、11、12のピースを他のピースと同じ長さにならないように決めさえすれば、問題(ピース)と答え(枠)を作ることは可能である。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による二値の掛け算を用いた学習教材(ボードA)に2組のピースを嵌めた状態の平面図(正解の状態)
【図2】図1におけるA−A断面図
【図3】ボードBに2組のピースを嵌めた状態の平面図(正解の状態)
【図4】ボードCに2組のピースを嵌めた状態の平面図(正解の状態)
【図5】ボードDに2組のピースを嵌めた状態の平面図(正解の状態)
【図6】ボードEに2組のピースを嵌めた状態の平面図(正解の状態)
【図7】ボードAの別の実施例(表2の例3の長さと幅を採用した場合)
【符号の説明】
【0028】
1 枠2を設けたボード
2 ピースを嵌めるための枠
3 数字に対応したピース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1から9までの数字を幅と長さを持つ図形又は立体(以下ピースと称す)に対応させ、かつ各ピースに対応させた数字を表示し、
1から9までのそれぞれの数字に対応して前記ピースの長さはそれぞれ異なり、
1から9までの数字の任意の2つを掛けて同じ答えになる組み合わせに対しては2つの数字に対応させた前記ピースの長さの和がそれぞれの組み合わせで等しくなるように長さを決め、
前記2つの数字の掛け算の答えになる数値を表示しかつ前記2つの数字に対応したピース2個の面積にほぼ等しい枠を複数個用意し、
少なくとも2組の1から9までの数字に対応したピースを与え、任意の2個のピースを組み合わせて前記枠に合致するように嵌めていき、すべてのピースが用意された枠内に過不足なく嵌れば正解とすることを特徴とする二値のかけ算を用いたゲームまたは学習教材。

【請求項2】
前記ピース及び枠がコンピュータによって表示された画像であり、ピースの個数及び枠の形状によって難易度が設定され、かつ開始してから正解するまでに要する時間を計測し、計測した時間、又は時間をポイントに換算した値を表示することを特徴とする請求項1に記載したゲーム又は学習教材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294503(P2009−294503A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149098(P2008−149098)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(597006366)
【出願人】(308009451)
【Fターム(参考)】