説明

二剤式浴用剤

【課題】汎用の原料を使用し、微細な泡を十分量発生する新たな浴用剤を提供する。
【解決手段】(A)酸を含有する浴用剤組成物と、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が炭酸塩中の75〜100質量%である炭酸塩を含有する浴用剤組成物とからなり、(A)、次いで(B)の順に浴水に投入する二剤式の浴用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な泡を発生する二剤式浴用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
浴水中に溶解した炭酸ガスには優れた血行促進作用があることから、炭酸ガスを発生する浴用剤が開発され、広く使用されている。このような発泡性浴用剤に関する泡の性状についても検討されており、炭酸ジアルカリ塩とリンゴ酸を含有する粒状浴用剤が、微細な泡を長時間発生することが報告されている(特許文献1)。
【0003】
一方、酸とアルカリを分離状態を保って収納され、浴水により混合し発泡反応を生じる発泡性粉末浴剤(特許文献2)や、炭酸水素ナトリウムおよび死海塩を配合した第1剤のアルカリ性入浴剤と、ビタミン類、死海塩、界面活性剤および有機酸を配合した第2剤の酸性入浴剤からなることを特徴とする2剤式の混合タイプ入浴剤(特許文献3)や、アルカリ炭酸塩を浴湯に完全溶解させた状態で、酸成分(有機酸又は無機酸)を液状態(水溶液)として浴湯に添加する人工炭酸泉の調製方法(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−149532号公報
【特許文献2】登録実用新案第3036443号公報
【特許文献3】特開2006−022021号公報
【特許文献4】特開2000−229841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の2剤式の入浴剤は、酸とアルカリの投入順にこだわらないものや、実質的に酸とアルカリが同時に浴水に投入されるものが一般的であった。一方、アルカリ炭酸塩を溶解させた状態で、酸成分を浴湯に添加する技術は知られているものの、投入順と泡の大きさの関係については、何ら検討が成されていなかった。
また、前記の炭酸ジアルカリ塩とリンゴ酸を含有する粒状浴用剤においては、微細な泡を長時間発生させる点から酸としては比較的価格の高い有機酸であるリンゴ酸を使用する必要があった。
従って、本発明の課題は、汎用の原料を広く使用可能であり、長期間安定で、かつ微細な泡を十分量発生する新たな浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討したところ、(A)酸を含有する組成物と、(B)炭酸ジアルカリを含有する組成物とを別途調製しておき、全く意外なことに、(A)次いで(B)の順で浴水中に投入すると、極めて微細な泡が効率良く発生し、長期保存上も問題のない、優れた浴用効果を奏する浴用剤が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、(A)酸を含有する浴用剤組成物と、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が炭酸塩中の75〜100質量%である炭酸塩を含有する浴用剤組成物とからなり、(A)、次いで(B)の順に浴水に投入する二剤式の浴用剤を提供するものである。
【0008】
また本発明は、(A)酸を含有する浴用剤組成物を浴水に投入後に、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が75〜100質量%の炭酸塩を含有する浴用剤組成物を投入する浴水調製方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二剤式浴用剤を用いれば、極めて微細な泡が効率良くかつ大量に発生し、その泡が長時間持続するため、外観上も良好である。また、本発明の浴用剤においては、リンゴ酸に限定されず、広くどのような酸でも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の二剤式浴用剤は、(A)酸を含有する浴用剤組成物[組成物(A)]と、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が75〜100質量%の炭酸塩を含有する浴用剤組成物[組成物(B)]とからなる。これらの組成物(A)及び(B)にそれぞれ含まれる酸及び炭酸塩は、(A)次いで(B)の順で浴水中に投入されることにより炭酸ガスの微細な泡を発生させるものである。
【0011】
《組成物(A)について》
組成物(A)の形態は、固形状であっても液体状であっても良い。輸送性等の点では、組成物(A)は粉末、顆粒、ブリケット錠、錠剤等の固体とすることが好ましく、特に固形状、例えばブリケット錠、又は錠剤とするのが好ましいが、浴水への溶解性・拡散性を向上させる点では、組成物(A)は水溶液状の形態であっても良い。すなわち、組成物(A)の水分含有量は好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは1〜20質量%であって良い。
【0012】
組成物(A)に用いられる酸としては、有機酸及び無機酸の何れでも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましく、この中でも、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、フタル酸、乳酸などの有機酸が特に好ましい。無機酸としてはホウ酸、リン酸、メタケイ酸、無水ケイ酸、塩酸等が挙げられる。
【0013】
これらの酸の平均粒子径は、溶解速度の点から、100〜1000μm、さらに120〜800μm、特に150〜700μmが好ましい。なお平均粒子径は、後述の炭酸ジアルカリ塩と同様にして測定される。
【0014】
組成物(A)中の酸の含有量は、特に制限されず、50〜100質量%、さらに80〜100質量%が発泡効率、発泡強度の点で好ましい。また、組成物(A)を投入後、且つ組成物(B)を投入する前の浴水のpHを2〜7、特に3〜6にする量であることが、炭酸ガスの発生及び微細な泡の発生の点から好ましい。
【0015】
《組成物(B)について》
組成物(B)の形態は、固形状であっても液体状であっても良いが、特に炭酸ガスの微細な泡を発生させる点では、粉末、顆粒、ブリケット錠、錠剤等の固体とすることが、好ましく、特に固形状、例えばブリケット錠、又は錠剤とするのが好ましい。すなわち、組成物(B)の水分含有量は好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%であると良い。
【0016】
組成物(B)においては、微細な泡を発生させる点で、炭酸塩中の炭酸ジアルカリ金属塩含有量が75〜100質量%である。さらにその含有量は80〜100質量%、特に85〜100質量%であることが好ましい。なお、炭酸ジアルカリ金属塩とは、炭酸塩のうちアルカリ金属を2個有する炭酸塩であり、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられるが、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が特に好ましい。組成物(B)は、炭酸ジアルカリ金属塩以外の炭酸塩を含有しても良い。炭酸ジアルカリ金属塩以外の炭酸塩としては、具体的には、炭酸水素塩、二価の金属の炭酸塩等が挙げられるが、炭酸水素ナトリウムが好ましい。特に、炭酸塩中の炭酸水素塩量が多くなると、大きな泡になってしまう傾向がある。このため、炭酸ガスの大きな泡の発生を抑制し、白濁状を呈するような微細な泡とするため、炭酸塩全量中の炭酸水素ナトリウム量は、10質量%未満、さらに5質量%未満、特に炭酸水素ナトリウムを実質的に含まないことが好ましい。
【0017】
組成物(B)に含まれる炭酸ジアルカリ金属塩の平均粒子径は、泡の微細化、泡の持続時間、沈降性等の点から、100〜750μm、さらに200〜600μm、特に250〜500μmであるのが好ましい。平均粒子径は、以下のように測定される。
篩:JIS 標準篩 φ200mm
目開き:上段より、それぞれ2000μm、1400μm、1000μm、710μm、500μm、355μm、250μm、180μm、125μm、90μm、63μm及び45μmの目開きを有する篩の下に受器を有する。
振盪機:篩振盪機Ro−TAP SHAKER DB型(HEIKO SEISAKUSHO)
方法:試料50gを2000μm篩上に載せ、篩振盪機にて5分間分級する。それぞれの篩及び受器上に残留した粒子の質量を測定し、各篩上の該粒子の質量割合(%)を算出する。受器から順に目開きの小さな篩上の該粒子の質量割合を積算していき合計が50%となる粒子径を平均粒子径とする。
【0018】
組成物(B)中の炭酸塩の含有量は、30〜100質量%、さらに50〜100質量%が、発泡効率、発泡強度の点で好ましい。組成物(B)を溶解し終えた時点での浴水のpHは4〜7、特に5〜6が好ましい。
【0019】
本発明の組成物(A)及び(B)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常浴用剤に用いられている成分を配合することができる。例えば、硫酸マグネシウム等の無機塩類、酸化マグネシウム等の酸化物類、ビタミンA等のビタミン類、ペプシン等の蛋白分解酵素、油性成分、水溶性高分子、着色料、香料等が挙げられる。
【0020】
本発明の浴用剤は、前記組成物(A)及び(B)からなる二剤式浴用剤であり、(A)次いで(B)の順に浴水に投入可能なように、これら組成物(A)及び(B)は別個に包装して供給するのが好ましい。ただし錠剤同士のように別個に製剤化されていれば(A)次いで(B)の順に浴水に投入可能な場合には、これらの組成物(A)及び(B)は一つの容器中に入れられていてもよい。なお、組成物(A)及び(B)は常法に従って製造することができる。
【0021】
組成物(A)と組成物(B)の質量比は、微細な泡の発生効率、発泡強度の点から、酸(a)と炭酸ジアルカリ金属塩(b)の質量比((a)/(b))として、0.5〜1.5、さらに0.8〜1.2、特に0.9〜1.1が好ましい。
【0022】
本発明の二剤式浴用剤は、(A)次いで(B)の順で浴水に投入されるものである。かかる順で投入することにより、微細な泡が長時間発生する。(B)次いで(A)の順で投入した場合には、微細な泡は発生しない。ここで、「(A)次いで(B)の順で浴水に投入」とは、組成物(A)中の酸の浴水中への溶解が開始した後に、組成物(B)を投入することを意味するが、特に、組成物(A)を投入後、組成物(A)中の酸が浴水中に目視で確認されない程度に溶解した時点で組成物(B)を投入するのが泡の粒度分布の均一化の点から好ましく、殊更に、組成物(A)を投入後、組成物(A)中の酸が浴水全体に均一に溶解した時点で組成物(B)を投入するのが浴水全体に粒度分布の均一な泡が拡散する点から好ましい。
【0023】
本発明の二剤式浴用剤は風呂等の全身浴はもちろん、足浴、腕浴等の部分浴としても使用できる。
【0024】
本発明の二剤式浴用剤は、微細な泡が大量に発生し、かつその泡が持続する。微細な泡の発生は、浴水150リットル中に組成物(A)及び(B)の合計で40〜60gの浴用剤を溶解した際に、発生した泡により浴水が白濁状を呈することから確認できる。
また、ここで発生する泡の粒子径は、泡が動くので正確な測定は困難であるが、ビデオ撮影により解析したところ概ね20〜100μmであった。泡の大きさは、発生した泡を含む溶液を、対流のない大きさのガラスセル(1mm×5mm×10mm)に閉じ込め、目盛りの付いたスライドガラスと共にビデオ顕微鏡を用いて撮影を行い、得られた画像から測定できる。
【実施例】
【0025】
試験例1
次表の処方に従い、二剤型浴用剤を製造した。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す配合にて各成分を混合し、表2、表3に示す酸と炭酸塩の組合せの組成物(A)と(B)からなる二剤式浴用剤を製造した。得られた二剤式浴用剤について、浴水に溶解した際の泡状態を下記の評価方法にて評価した。
【0028】
〔評価方法〕
直径150mm、高さ500mmのアクリル製円筒に40℃2Lの湯を入れ、組成物(A)又は(B)0.24gを投入し、直径65mmの攪拌羽根をシャフトにつけた攪拌機によって均一に溶解するまで毎分20回転で攪拌した後、他の組成物(B)又は(A)0.24gを投入し、発泡挙動を円筒から30cm離れた位置から目視にて観察した。また、泡の大きさは、他の組成物(B)又は(A)を投入してから1分後の溶液を、対流のない大きさのガラスセル(1mm×5mm×10mm)に閉じ込め、目盛りの付いたスライドガラスと共にビデオ顕微鏡を用いて撮影を行い、以下の基準で評価した。
【0029】
○:粒子径100μm以下の微細な泡が多量に発生している。
×:粒子径1mm以上の大きい泡が発生している。
×弱い:粒子径1mm以上の大きい泡が弱々しく少量発生している。
○弱い:粒子径100μm以下の微細な泡が弱々しく少量発生している。
その結果を表2及び表3に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
表2及び表3より、組成物(A)→組成物(B)の順で浴水に投入した場合には微細な泡が発生したが、組成物(B)→組成物(A)の順で投入した場合には微細な泡は発生しないことがわかる。
【0033】
次表4の処方に従い、二剤型浴用剤を製造した。
【0034】
【表4】

【0035】
表4に記載の本発明の二剤型浴用剤を、組成物(A)→組成物(B)の順で浴水に投入したところ、非常に微細な泡が大量に長時間発生するため、外観上良好な浴水が調製可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸を含有する浴用剤組成物と、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が炭酸塩中の75〜100質量%である炭酸塩を含有する浴用剤組成物とからなり、(A)、次いで(B)の順に浴水に投入する二剤式の浴用剤。
【請求項2】
組成物(A)中の酸の質量が、組成物(A)を投入後、且つ組成物(B)を投入する前の浴水のpHを2〜7にする量である請求項1記載の二剤式の浴用剤。
【請求項3】
組成物(A)中の酸と組成物(B)中の炭酸ジアルカリ金属塩との質量比(a)/(b)が0.5〜1.5である請求項1又は2記載の二剤式の浴用剤。
【請求項4】
(A)酸を含有する浴用剤組成物を浴水に投入した後に、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が75〜100質量%の炭酸塩を含有する浴用剤組成物を投入する浴水調製方法。
【請求項5】
(A)酸を含有する浴用剤組成物を浴水に溶解させた後に、(B)炭酸ジアルカリ金属塩含有量が75〜100質量%の炭酸塩を含有する浴用剤組成物を投入する請求項4記載の浴水調製方法。

【公開番号】特開2012−6847(P2012−6847A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142265(P2010−142265)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】