説明

二変色モノグラムを有する偽造防止フィルム及びその製造方法

本発明は、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルム及びその製造方法を提供する。前記製造方法は、(1)キラル構造を含む重合可能な液晶材料と感光開始剤とを混合し、基材フィルム上にブレードコーティングした後、乾燥させる工程と、(2)その後、工程(1)の生成物を紫外線ランプで位置決め局部露光した後、乾燥し、再び紫外線により露光し、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムを得る工程とを含む。本発明の製造方法で得られたフィルムは二変色モノグラムを有し、比較的典型的なモノグラムは垂直観察時に赤緑画像を呈し、一定角度傾斜させると、元の赤色が緑色に変わり、緑色が青色に変わり、変色が明らかで、容易に識別でき、実用的で、広く応用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止フィルム及びその製造方法に関し、具体的には、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商品経済の発展に伴い、各分野における有名企業ブランドの偽物や模倣が多く出現しており、大きな経済損失と社会損害を与えている。これにより偽造防止技術は普遍的に重視されている。光角変色効果を実現できる材料は大衆に識別されやすいために急速に発展しており、反偽造及び装飾材料の分野で広く応用されている。
【0003】
材料の光角変色効果は形成材料の間欠的層状構造によって得られ、交互の金属及びセラミック片を共押出して得られる薄層がこの種の効果を有する(Dobrowolski, J.A.; Ho, F.C. and Waldorf. A., Applied Optics,1989,28,P14)。しかしこの種の材料はコストが高く、実用的ではない。
【0004】
この他、光の選択反射性を有するコレステリック液晶は例えばGB 1387398に開示されている技術のように、これまで光学密閉手段として考えられていたが、小分子のコレステリック液晶は応用上、一定の限度がある。小分子コレステリック液晶は流動し易く、応用する上で必ずこれらを封装し、ガラスケースに挟んだり、又はマイクロカプセルや別の構造に作製したりしなければならない。また、US6410130には、重合可能なコレステリック液晶溶液を転送ローラで基材フィルムに塗布し、トンネルオーブンを通して溶剤を除去してから、UV硬化して光角変色を有するフィルムを形成する、又はそれを粉砕して顔料に作製することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この技術には、光角変色モノグラムは該特許で得られる変色顔料を展色剤(又は樹脂)に添加して印刷インクを作成して印刷して得られるものであるため、展色剤の存在により変色顔料の濃度が低下し、変色効果の顕著性、色の鮮やかさが充分ではないという問題が存在する。
【0006】
本発明は従来技術に存在する上記問題を克服するような、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムの製造方法は以下の工程を含む:
(1)キラル構造を含む重合可能な液晶材料と感光開始剤とを混合し、80〜120℃に加熱し、基材フィルム上にブレードコーティングし、コーティング膜の厚さを2〜15μmに制御し、その後、乾燥し、80〜120℃で0.5〜2.5分放置することができる。このとき、垂直観察すると、特定の色、例えば赤色を呈し、一定角度傾斜させると緑色に変化する。
(2)その後、工程(1)の生成物を紫外線ランプで位置決め局部露光する。露光時間は5〜30秒、照度は1.5〜15mw/cm2である。紫外線露光した部位の液晶材料を重合し、構造を固定し、その後、乾燥し、80〜120℃の温度下で0.5〜2.5分放置することができる。紫外線露光していない液晶材料は元の色と異なる色、例えば緑色を呈し、一定角度傾斜させると青色に変化する。再び紫外線により露光する。露光時間は5〜30秒、照度は1.5〜15mw/cm2である。この色を固定して、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムが得られる。
【0008】
前記キラル構造を含む重合可能な液晶材料はコレステリック相シロキサン液晶であり、その一般化学構造式は以下のとおり:
[RY1pY2qSiO]m
但し、RはC1-C10のアルキル基であり、Y1はメソゲン単位を有するアルキル基又はアルケニル基であり、Y2は少なくとも1つの重合可能な基団及び少なくとも1つの二価環基を含む有機基団であり、p及びqは0より大きく、1より小さい正数であり、p+q=1;mは3〜10の整数である。
キラル構造を含む重合可能な液晶材料は市販の製品、例えばワッカーケミカル社の番号CC3767又はCC3939を使用でき、CC3767番又はCC3939番はいずれもコレステリック相シロキサン液晶であり、その違いは両者のメソゲン単位の材料に占める割合が異なる、即ち両者のp値が異なることにある。
【0009】
前記感光開始剤はベンゾフェノン、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2-メチル-1- (4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンから選ばれる1種以上であり、使用量は重量でキラル構造を含む重合可能な液晶材料の2〜10%である。
【0010】
前記基材フィルムはポリカーボネート、ポリエステル及びポリプロピレンから選ばれ、好ましくはポリエステル膜、若しくはポリイミド類液晶配向剤を塗布した又はポリビニルアルコール等で処理した基材フィルムである。
【0011】
紫外線光源は好ましくは300〜2000Wの水銀キセノンランプを用い、280nm〜350nmにおける強度は1.5〜15mw/cm2である。
【0012】
キラル構造を含む重合可能な液晶材料は配列配向した後、独特な超螺旋構造を有し、円偏光に似た選択反射性を体現でき、特定波長の光を選択的に反射でき、光角変色効果をマクロに表現する。つまり、観察角度を変えると、一つの色相から別の色相へと変換される。
【0013】
本発明の製造方法で得られたフィルムは二変色モノグラムを有する。比較的典型的なモノグラムは垂直観察時に赤緑画像を呈し、一定角度傾斜させると、元の赤色が緑色に変わり、緑色が青色に変わる。変色が明らかで、容易に識別でき、実用的で、広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は石英ガラスマスク構造である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は石英ガラスマスク構造の概略図である。前記紫外線ランプによる位置決め局部露光は以下のように実現される。紫外線ランプの外面に石英ガラスマスクを有し、該石英ガラスマスクの一部分にアルミニウムめっき層を設けて非光透過領域1とし、他の部分を非アルミニウムめっき光透過領域2とする。光透過領域2は特定のモノグラムに設計でき、図1に図示されるように、基材フィルムは重合可能な液晶材料を塗布した後、該石英ガラスマスクを介して位置決め局部露光が施される。又は、遮蔽層モノグラムを印刷した複合膜を、液晶材料を塗布した基材フィルムと合わせ、複合膜の一方よりUV露光を行う。すると光透過部位はUV硬化され、遮蔽層モノグラムを有する部位は露光されず、位置決め局部露光が施される。
【0016】
(実施例1)
キラル構造を含む重合可能な液晶材料はコレステリック相シロキサン液晶であり、ワッカーケミカル社のCC3767番及びCC3939番を使用できる。
【0017】
7.0グラムのCC3767、3.0グラムのCC3939及び0.4グラムの2-メチル-1- (4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンを均一に混合し、85℃に加熱し、ブレードコーティングでPETポリエステル膜に塗布する。コーティング膜厚は5μmである。赤外線トンネルオーブンを通し、トンネルオーブンの温度は85℃に設定し、トンネルオーブン内に60秒停留させる。800Wの水銀キセノンランプを用い、図1に図示されるような局部的に光透過される石英ガラスマスクを外に被せ、光透過部位を文字「TECHSUN」に設定して、位置決め局部露光を10秒行う。照度は3mw/cm2である。再び設定温度105℃のトンネルオーブンに入れて60秒停留させ、再び800Wの水銀キセノンランプで全体露光を10秒行う。こうして二変色効果のモノグラムを得る(文字「TECHSUN」を垂直観察すると赤色であり、45°傾斜して観察すると緑色であり、残りの部分を垂直観察すると緑色であり、45°傾斜して観察すると青色である)。
【0018】
光透過スペクトルで測定した結果は以下のとおりである:
【表1】

【0019】
(実施例2)
7.0グラムのCC3767、3.0グラムのCC3939及び1.0グラムの2-メチル-1- (4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンを均一に混合し、85℃に加熱し、ブレードコーティングでPETポリエステル膜に塗布する。コーティング膜厚は12μmである。赤外線トンネルオーブンを通し、トンネルオーブンの温度は85℃に設定し、トンネルオーブン内に60秒停留させる。黒色の「TECHSUN」を印刷したPET複合膜と合わせ、PET複合膜の一方から800Wの水銀キセノンランプで10秒露光する。照度は3mw/cm2である。PET複合膜を剥がし、再び設定温度105℃のトンネルオーブンに入れて60秒停留させ、再び800Wの水銀キセノンランプで全体露光を10秒行う。こうして二変色効果のモノグラムを得る(文字「TECHSUN」を垂直観察すると緑色であり、45°傾斜して観察すると青色であり、残りの部分を垂直観察すると赤色であり、45°傾斜して観察すると緑色である)。
【0020】
【表2】

【0021】
(実施例3)
10.0グラムのCC3767及び0.2グラムの2-メチル-1- (4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンを均一に混合し、85℃に加熱し、ブレードコーティングでPETポリエステル膜に塗布する。コーティング膜厚は8μmである。赤外線トンネルオーブンを通し、トンネルオーブンの温度は105℃に設定し、トンネルオーブン内に60秒停留させる。黒色の「TECHSUN」を印刷したPET複合膜と合わせ、PET複合膜の一方から800Wの水銀キセノンランプで10秒露光する。照度は3mw/cm2である。PET複合膜を剥がし、再び設定温度120℃のトンネルオーブンに入れて60秒停留させ、再び800Wの水銀キセノンランプで全体露光を10秒行う。こうして二変色効果のモノグラムを得る(文字「TECHSUN」の垂直観察は緑色であり、45°傾斜して観察すると青色であり、残りの部分を垂直観察すると赤色であり、45°傾斜して観察すると緑色である)。
【0022】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)キラル構造を含む重合可能な液晶材料と感光開始剤とを混合し、基材フィルム上にブレードコーティングした後、乾燥させる工程と、
(2)その後、工程(1)の生成物を紫外線ランプで位置決め局部露光した後、乾燥し、再び紫外線により露光し、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムを得る工程とを含み、
前記キラル構造を含む重合可能な液晶材料がコレステリック相シロキサン液晶であることを特徴とする二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記感光開始剤がベンゾフェノン、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2-メチル-1- (4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記感光開始剤の使用量が重量でキラル構造を含む重合可能な液晶材料の2〜10%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材フィルムがポリカーボネート、ポリエステル及びポリプロピレンから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材フィルムがポリイミド液晶配向剤を塗布した又はポリビニルアルコールで処理した基材フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
キラル構造を含む重合可能な液晶材料と感光開始剤とを混合し、80〜120℃に加熱し、基材フィルム上にブレードコーティングすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
コーティング膜の厚さを2〜15μmに制御することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)の生成物を紫外線ランプで位置決め局部露光し、露光時間は5〜30秒、照度は1.5〜15mw/cm2とし、その後、80〜120℃で0.5〜2.5分放置し、再び紫外線により露光し、露光時間は5〜30秒、照度は1.5〜15mw/cm2とし、二変色モノグラムを有する偽造防止フィルムを得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で製造された二変色モノグラムを有する偽造防止フィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2012−506563(P2012−506563A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532477(P2011−532477)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072189
【国際公開番号】WO2010/045797
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511102723)上海フク旦天臣新技朮有限公司 (2)
【Fターム(参考)】