説明

二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線

【課題】安価なポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁層を二重に被覆し紫外線劣化を防止する。
【解決手段】導体1の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁層を被覆した被覆電線を三本撚り合わせてなる絶縁電線において、被覆電線の一本は黒色に着色した絶縁層2aを外側に配置した黒色電線2とし、他の二本の被覆電線は内部にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層3a,4aを有し、最外層にポリ塩化ビニル系樹脂からなる色彩の異なる着色絶縁層3b,4bを有する着色電線3,4で形成してなる二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の導体とこの表面をポリ塩化ビニル系樹脂で被覆した低圧引込用ビニル絶縁電線に係り、特に、最外層を識別可能に着色し、内部に耐紫外線層を有する二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来低圧引込線は導体の表面に黒色絶縁層、青色絶縁層緑色絶縁層を被覆したもの三本を撚り合わせたものが使用されている。このような構成では着色絶縁層、特に、青色、緑色に着色した絶縁層は長期間の使用により紫外線劣化を生じて絶縁層の表面に亀裂を生じ、相間短絡などにより絶縁破壊が起きていた。
【0003】
このような紫外線劣化を防止した耐候性、施工性の低圧引込電線が開発されている。例えば、特開2002−32443号公報(特許文献1)には導体の表面にカーボンを配合した絶縁層を被覆した第1の電線と導体の表面に電線識別手段を備えた絶縁層を被覆した第2の電線とを撚り合わせた絶縁電線が記載されている。また、特開2003−132742号公報(特許文献2)には、導体の表面をオレフィン系樹脂からなる耐候性の絶縁層を被覆し、その外側にオレフィン系樹脂からなる着色スキン層を被覆した絶縁電線が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−324443号公報第1頁
【特許文献2】特開2003−132742号公報図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の被覆電線は、導体にカーボンを配合した第1の電線と導体に着色絶縁層を施した第2の電線とを撚り合わせたものであり、また、この特許文献1の図2に第2の電線の識別手段を備えた絶縁層を二層にし、内側の着色層の外側最外層をカーボン含有の黒色層に形成させることが記載されているが、これでは第1の電線と第2の電線とが何れも最外層が黒色を呈するので区別がつかない問題点があった。そのために切断した端末の着色によって識別しなければならなかった。この第2の電線の表面に凹凸を形成する必要があった。
【0006】
特許文献2の絶縁電線は、オレフィン系樹脂の絶縁層を二重にし、導体の表面に形成するものであるが、引込用絶縁電線としてオレフィン系樹脂の使用は、電気安全法上適切でない。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決すべく発明されたものであり、低廉であり、耐久性に優れ、識別能力の低下しない絶縁電線を提供することである。
本発明の課題は、安価なポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁層を被覆した二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の課題を達成するために、請求項1の発明は、導体の表面をポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層で被覆すると共にその最外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる識別用の着色絶縁層を形成してなる二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の構成である。
【0009】
本発明の課題は、導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁層を被覆した被覆電線を三本撚り合わせてなる絶縁電線において、被覆電線の一本は黒色に着色した絶縁層を外側に配置した黒色電線とし、他の二本の被覆電線は内部にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を有し、最外層にポリ塩化ビニル系樹脂からなる色彩の異なる着色絶縁層を有する着色電線で形成してなる二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の構成によって達成できる。
【0010】
本発明の前記課題は、導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆した第1の電線、導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆すると共にその外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる青色絶縁層を被覆してなる第2の電線、及び導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆すると共にその外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる緑色絶縁層を被覆してなる第3の電線との三本の被覆電線を撚り合せて形成した二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の構成によって達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線は、簡易な構造であり、ポリ塩化ビニル系樹脂を導体の表面に被覆するから安価に製造することができる。また、その外側を着色絶縁層で被覆し、その内部に耐候性に優れる黒色絶縁層を有する二層構造であるため、紫外線による劣化を防止できる絶縁電線である。
更に、黒色、青色及び緑色の三色の被覆電線を撚り合わせた場合にも、外側が着色絶縁層であるから施工時の識別視認性が容易である。また、経時的に外層の色が退色しても、撚り内部で識別可能となる。しかも、絶縁層が二層に形成され、内部を黒色にしてあるから耐候性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の実施例に基づいて図面を参照して詳述する。
図1は本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線に使用する着色電線の実施形態の断面図である。図2は本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の一実施形態を示す断面図である。図3及び図4は本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線と従来品との比較グラフである。
本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線は、導体1を着色絶縁層で被覆した黒色電線2、青色電線3及び緑色電線4を撚り合せて製造する。
【0013】
黒色電線2は導体1の表面にカーボンを含有する黒色のポリ塩化ビニル樹脂(以下PVCと称する)層2aで被覆してある。青色電線3は、導体1の表面に黒色のPVC絶縁層3aを被覆し、その外側に厚さ0.2mmの青色PVC絶縁層3bからなる二重の絶縁層を備えたものである。緑色電線4は、導体1の表面に黒色のPVC絶縁層4aを被覆し、その外側に厚さ0.2mmの緑色PVC絶縁層4bからなる二重の絶縁層を備えたものである。
【0014】
黒色電線2は一般的な従来から知られるカーボンを含有するPVCによって構成されている。青色電線3に使用する内部の黒色絶縁層3aは一般的な従来から知られるカーボンを含有するPVCによって構成され、最外側の青色絶縁槽3bは、PVCに通常知られる青色顔料、染料を添加したものである。また、緑色電線4に使用する内部の黒色絶縁層4aは一般的な従来から知られるカーボンを含有するPVCによって構成され、最外側の緑色絶縁層4bはPVCに通常知られる緑色顔料、緑色染料を添加したものである。これら着色絶縁層は厚み0.2mmが好ましい。
【実施例】
【0015】
本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の図面に示す実施形態に基づいた試料を日本工業規格JISC3005における絶縁体及びシースの引張りの項の試験条件に基づき絶縁体の引張強さ及び伸びの残率を評価した。比較試料として従来の一層式ポリ塩化ビニル樹脂被覆着色電線を使用した。なお、試料は、日本工業規格JISK7350-4における実験室光源による暴露試験に供したものである。
試料は、管状試験片であり、所定の引張速さ(200mm/min)で引張り、試験片の切断時の引張強さ及び伸びを測定し、次式により残率をもとめた。
残率=(暴露後の平均値)/(暴露前の平均値)×100
ただし、断面積は、暴露前に算出し、標線は、暴露後につけた。
本発明の試料は長時間暴露しても引張強さ及び伸びの変動はなかった。
この実験例にあるように従来品に比較して耐候性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線は、簡易な構造であり、ポリ塩化ビニル系樹脂を導体の表面に被覆するから製造コストが安く、市場に廉価に提供することができ、しかもその外側を着色絶縁層で被覆し、その内部に耐候性に優れる黒色絶縁層を有する二層構造であるため、紫外線による劣化を防止できるから長期間にわたって補修のいらない絶縁電線である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線に使用する着色電線の実施形態の断面図である。
【図2】本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線の1実施形態の断面図である。
【図3】本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線と従来品との引張り強さの比較グラフである。
【図4】本発明二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線と従来品との引張伸びの比較グラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 導体
2 黒色電線
3 青色電線
4 緑色電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の表面をポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層で被覆すると共にその最外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる識別用の着色絶縁層を形成してなることを特徴とする二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線。
【請求項2】
導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる絶縁層を被覆した被覆電線を三本撚り合わせてなる絶縁電線において、
被覆電線の一本は黒色に着色した絶縁層を導体の外側に配置した黒色電線とし、他の二本の被覆電線が導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を有し、最外層にポリ塩化ビニル系樹脂からなる色彩の異なる着色絶縁層を有する着色電線で形成してなることを特徴とする二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線。
【請求項3】
導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆した第1の電線、導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆すると共にその外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる青色絶縁層を被覆してなる第2の電線、及び導体の表面にポリ塩化ビニル系樹脂からなる黒色絶縁層を被覆すると共にその外側にポリ塩化ビニル系樹脂からなる緑色絶縁層を被覆してなる第3の電線との三本の被覆電線を撚り合せて形成したことを特徴とする二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線。
【請求項4】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂がビニル混合物又は耐熱性ビニル混合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のいずれか1つの二層絶縁被覆形引込用ビニル絶縁電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54056(P2006−54056A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232553(P2004−232553)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】