説明

二次電池およびその製造方法

【課題】電極層と固体電解質層の特性の劣化を抑制すること。
【解決手段】正極層12および負極層16と、前記正極層と前記負極層との間に設けられ結晶化した第1固体電解質層14と、前記第1固体電解質層と前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方との間に設けられた非晶質な第2固体電解質層18と、を具備する二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池およびその製造方法に関し、例えば、正極層または負極層と結晶化された固体電解質層との間に非晶質な固体電解質層が設けられた二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを蓄電し、供給可能である。このため、二次電池はハイブリット車や電気自動車などに応用されている。二次電池として、リチウム二次電池が注目されている。安全性および小型化の観点から、全てが固体の薄膜二次電池を形成するため固体電解質を用いた二次電池が開発されている。
【0003】
電極層と固体電解質層との間に、電極の活物質と固体電解質の混合粉体を低融点ガラスで結着した混合層を設ける技術が知られている(例えば特許文献1)。電極層と固体電解質層との間に、O、PまたはFの各成分の少なくとも1種類以上を含む化合物を設ける技術が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−126758号公報
【特許文献2】特開2009−181920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体電解質としては結晶化した固体電解質層または非晶質の固体電解質が用いられている。電池特性を向上させるためには、結晶化した固体電解質層を用いることが好ましい。しかしながら、固体電解質を結晶化するためには、熱処理を行なう。熱処理の際、負極または正極である電極層と固体電解質とが接していると、電極層と固体電解質とが反応し、電極層および固体電解質層の特性が劣化し、所望の特性が得られないことがある。
【0006】
本二次電池およびその製造方法は、電極層と固体電解質層の特性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、正極層および負極層と、前記正極層と前記負極層との間に設けられ結晶化した第1固体電解質層と、前記第1固体電解質層と前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方との間に設けられた非晶質な第2固体電解質層と、具備することを特徴とする二次電池を用いる。
【0008】
例えば、正極層と負極層との間に形成されるように、熱処理することにより結晶化した第1固体電解質層を形成し、前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方と前記第1固体電解質層とを形成した後に、前記第1固体電解質層と、前記正極層および前記負極層のうち前記少なくとも一方と、の間に、前記第1固体電解質層を形成する温度より低い温度において非晶質な第2固体電解質層を形成することを特徴とする二次電池の製造方法を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本二次電池およびその製造方法によれば、電極層と固体電解質層の特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、比較例に係る二次電池を示す断面図である。
【図2】図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る二次電池を示す断面図である。
【図3】図3(a)および図3(b)は、実施例2に係る二次電池のそれぞれ上面図および断面図である。
【図4】図4は、実施例2の変形例に係る二次電池の上面図である。
【図5】図5(a)から図5(d)は、実施例に係る二次電池の製造方法を示す図(その1)である。
【図6】図6(a)から図6(d)は、実施例2に係る二次電池の製造方法を示す図(その2)である。
【図7】図7(a)から図7(c)は、実施例2に係る二次電池の製造方法を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、比較例に係る二次電池について説明する。図1は、比較例に係る二次電池を示す断面図である。図1に示すように、基板10上に正極層12が形成されている。基板10は、例えばシリコンまたは金属を含む導電性基板である。正極層12は、例えばLiCoOを含む。正極層12上に固体電解質層14が形成されている。固体電解質層14は、例えばLi0.5Al1.5Ge1.5(POを含む。固体電解質層14上に負極層16が形成されている。負極層16は、例えばLiを含む。
【0012】
固体電解質層14に用いる材料としては、非晶質のLiPONも考えられる。しかしながら、LiPONは、Liイオンによる導電率が2〜3×10−6S/cmと低い。導電率が高い材料として酸化物系固体電解質または硫化物系固体電解質がある。これらの物質において、高伝導率を得るためには、固体電解質を結晶化することが好ましい。しかしながら、固体電解質の結晶化には、数100度の熱処理を行うことになる。この熱処理の際、正極層12と固体電解質層14とで反応が発生する。これにより、正極層12および固体電解質層14が所望の特性を得られなくなる。このように、正極層12と固体電解質層14とが反応するのは、熱処理の際に、正極層12と固体電解質層14とが接しているためである。一方、電池として機能するためには、正極と固体電解質とは接することが好ましい。以下、上記問題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0013】
図2(a)および図2(b)は、実施例1に係る二次電池の断面図である。図2(a)に示すように、正極層12と負極層16との間に結晶化した第1固体電解質層14が設けられている。第1固体電解質層14と正極層12との間に非晶質な第2固体電解質層18が設けられている。実施例1によれば、正極層12と第1固体電解質層14とが接していないため、正極層12と第1固体電解質層14との反応を抑制することができる。さらに、第2固体電解質層18は非晶質なため比較的低温において形成することができる。よって、第2固体電解質層18を正極層12と第1固体電解質層14との間に接して設けることができる。これにより、固体電解質の一部を導電性の高い結晶化された第1固体電解質層14を用い形成できる。よって、二次電池の性能を向上させることができる。
【0014】
図2(b)に示すように、負極層16と第1固体電解質層14との間に非晶質な第2固体電解質層18を設けることもできる。これにより、負極層16と第1固体電解質層14との反応を抑制することができる。また、正極層12と第1固体電解質層14との間、および負極層16と第1固体電解質層14との間の両方に第2固体電解質層18を設けることもできる。正極層12と第1固体電解質層14との反応、および負極層16と第1固体電解質層14との反応を抑制することができる。このように、第2固体電解質層18は、第1固体電解質層14と負極層16および正極層12との間の少なくとも一方との間に設けられていればよい。
【実施例2】
【0015】
図3(a)および図3(b)は、実施例2に係る二次電池の上面図および断面図である。二次電池は、複数のユニット20を含んでいる。各ユニット20は、正極層12、第1固体電解質層14、第2固体電解質層18および負極層16を備えている。基板10上に正極層12、第1固体電解質層14、第2固体電解質層18および負極層16が面方向に配列して設けられている。第1固体電解質層14は結晶化しており、正極層12と負極層16との間に挟まれている。第2固体電解質層18は、非晶質であり、正極層12と第1固体電解質層14との間に設けられている。
【0016】
基板10は、例えばシリコン基板である。正極層12と負極層16との間の短絡を抑制するため、基板10の少なくとも上面は絶縁性であることが好ましい。正極層12は、例えば幅w1が5μmであり、結晶化したLiCoOである。正極層12としては、LiMnO、LiNiOまたはLiFePO等を用いることもできる。第2固体電解質層18は、例えば幅w2が0.5μmであり、非晶質のLiPONである。第1固体電解質層14は、例えば幅w3が3μmであり、結晶化したLi0.5Al1.5Ge1.5(POである。第1固体電解質層14としては、結晶化したLiPO、La1/3−XLi3XTaO等を用いることもできる。負極層16は、例えば幅w4が5μmであり、金属Liである。負極層16としては、Al、Ir、Al合金、Ir合金、LiTi12等を用いることもできる。正極層12、第1固体電解質層14、第2固体電解質層18および負極層16の高さHは例えば10μmである。
【0017】
ユニット20のピッチPは、例えば25μmである。ユニット20の正極層12は基板10上に形成された配線22により並列に接続され、正端子26に接続されている。負極層16は基板10上に形成された配線24により並列に接続され、負端子28に接続されている。このように、複数のユニット20は電気的に並列に接続されていてもよい。
【0018】
図4は、実施例2の変形例に係る二次電池の上面図である。図4に示すように、ユニット20は配線25により直列に正端子26および負端子28の間に接続されていてもよい。
【0019】
図5(a)から図7(c)は、実施例2に係る二次電池の製造方法を示す図である。図5(a)に示すように、基板10上に開口52を備えるマスク50を配置する。マスク50は例えばステンレス等のメタルマスクである。以下のマスク54、58および62についても同様である。図5(b)に示すように、例えばスパッタ法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法を用い、第1固体電解質層14を形成する。図5(c)に示すように、マスク50を除去する。例えば400℃から600℃の温度で熱処理する。これにより、第1固体電解質層14が結晶化する。なお、結晶化のための熱処理は、第1固体電解質層14の成膜と同時に行われてもよい。すなわち、第1固体電解質層14を成膜する際の温度で、第1固体電解質層14を結晶化させてもよい。図5(d)に示すように、基板10上に開口56を備えるマスク54を配置する。
【0020】
図6(a)に示すように、例えばスパッタ法またはPLD法用い、正極層12を形成する。図6(b)に示すように、マスク54を除去する。例えば400℃から600℃の温度で熱処理する。これにより、正極層12が結晶化する。なお、正極層12を成膜する際の温度で、正極層12を結晶化させてもよい。図6(c)に示すように、基板10上に開口60を備えるマスク58を配置する。図6(d)に示すように、例えばスパッタ法またはPLD法用い、非晶質の第2固体電解質層18を形成する。
【0021】
図7(a)に示すように、マスク58を除去した後、基板10上に開口64を備えるマスク62を配置する。図7(b)に示すように、例えば蒸着法を用い負極層16を形成する。図7(c)に示すように、マスク62を除去し二次電池が完成する。配線22および24は、図5(a)の前に基板10上に形成しておいてもよい。また、図7(c)の後に形成してもよい。
【0022】
実施例2において、正極層12として結晶化したLiCoO、第1固体電解質層14として結晶化したLi0.5Al1.5Ge1.5(PO、第2固体電解質層18として非晶質のLiPON、負極層16として金属Liを用いる。この場合、例示した寸法を用い作製したリチウム二次電池の電池容量は、130μA/cmである。
【0023】
図5(a)から図7(c)においては、第1固体電解質層14を形成した後に正極層12を形成しているが、正極層12を形成した後に第1固体電解質層14を形成してもよい。
【0024】
実施例2によれば、図6(b)のように、正極層12を形成する。図5(c)のように、熱処理することにより結晶化した第1固体電解質層14を形成する。図6(d)のように、正極層12と第1固体電解質層14との間に、第1固体電解質層14を形成する温度より低い温度において非晶質な第2固体電解質層18を形成する。このように、正極層12と第1固体電解質層14とが接していない状態で、正極層12を形成する際の熱処理または第1固体電解質層14を形成する際の熱処理が行われる。これにより、正極層12と第1固体電解質層14との反応を抑制することができる。第2固体電解質層18は非晶質なため比較的低温(例えば室温)において形成することができる。そこで、正極層12と第1固体電解質層14とを形成した後に、第2固体電解質層18を正極層12または第1固体電解質層14と反応しないような温度で設けることができる。
【0025】
また、正極層12、負極層16、第1固体電解質層14および第2固体電解質層18は、基板10の面方向に配列している。これにより、図1の比較例のように、正極層12、第1固体電解質層14および負極層16の順に各層を形成しなくてもよい。よって、例えば形成温度の高い層から順に形成することもできる。これにより、各層間の反応を抑制できる。
【0026】
第2個体電解質層18は非晶質であり、結晶化した第1個体電解質層14に比べ導電性特性が悪い。よって、第2固体電解質層18は第1固体電解質層14より薄いことが好ましい。第2固体電解質層18の膜厚は第1固体電解質層14の膜厚の1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。
【0027】
また、図6(b)のように、正極層12を熱処理することにより結晶化する場合、第2固体電解質層18は正極層12と第1固体電解質層14との間に設けられていることが好ましい。また、第2固体電解質層18は正極層12を結晶化するための熱処理の温度より低い温度で形成されることが好ましい。正極層12は結晶化することにより導電率を低減できる。また、正極層12と第1固体電解質層14との反応をより抑制できる。
【0028】
第1固体電解質層14は、酸化物系固体電解質を含むことが好ましい。結晶化した酸化物系固体電解質は、導電性が高く固体電解質として好ましい。しかしながら、結晶化のための熱処理を行なうため、第1固体電解質層14が正極層12と反応する。そこで、実施例2のように、第2固体電解質層18を設けることが好ましい。
【0029】
実施例2において、第1固体電解質層14と負極層16との間に非晶質な第2固体電解質層18を形成してもよい。また、正極層12と第1固体電解質層14との間、および負極層16と第1固体電解質層14との間の両方に第2固体電解質層18を形成してもよい。これらの場合、負極層16および正極層12のうち、第1固体電解質層14との間に第2固体電解質層18が設けられた少なくとも一方は、結晶化していることが好ましい。例えば、正極層12または負極層16が酸化物の場合、結晶化することにより正極層12または負極層16の導電率を高くすることができる。さらに、第2固体電解質層18は、負極層16および正極層12のうち、第1固体電解質層14との間に第2固体電解質層18が設けられた少なくとも一方を結晶化するための熱処理の温度より低い温度で形成されることが好ましい。
【0030】
実施例1および実施例2においては、リチウム二次電池の例を説明したが、他の二次電池でもよい。
【0031】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0032】
実施例1から2を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
付記1:
正極層および負極層と、前記正極層と前記負極層との間に設けられ結晶化した第1固体電解質層と、前記第1固体電解質層と前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方との間に設けられた非晶質な第2固体電解質層と、を具備することを特徴とする二次電池。
付記2:
基板を具備し、前記正極層、前記負極層、前記第1固体電解質層および前記第2固体電解質層は、前記基板の面方向に配列していることを特徴とする付記1記載の二次電池。
付記3:
前記第2固体電解質層は前記第1固体電解質層より薄いことを特徴とする付記1または2記載の二次電池。
付記4:
前記正極層と前記負極層との前記少なくとも一方は結晶化していることを特徴とする付記1から3のいずれか一項記載の二次電池。
付記5:
前記正極層は結晶化しており、前記第2固体電解質層は前記正極層と前記第1固体電解質層との間に設けられていることを特徴とする付記1から3のいずれか一項記載の二次電池。
付記6:
前記第1固体電解質層は、酸化物系固体電解質を含むことを特徴とする付記1から5のいずれか一項記載の二次電池。
付記7:
前記二次電池はリチウム二次電池であることを特徴とする付記1から6のいずれか一項記載の二次電池。
付記8
正極層と負極層との間に形成されるように、熱処理することにより結晶化した第1固体電解質層を形成し、前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方と前記第1固体電解質層とを形成した後に、前記第1固体電解質層と、前記正極層および前記負極層のうち前記少なくとも一方と、の間に、前記第1固体電解質層を形成する温度より低い温度において非晶質な第2固体電解質層を形成することを特徴とする二次電池の製造方法。
付記9:
前記正極層および前記負極層のうち前記少なくとも一方は、熱処理することにより結晶化しており、前記第2固体電解質層は前記正極層および前記負極層のうち前記少なくとも一方を結晶化する熱処理の温度より低い温度において形成されることを特徴とする付記8記載の二次電池の製造方法。
【符号の説明】
【0033】
10 基板
12 正極層
14 第1固体電解質層
16 負極層
18 第2固体電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層および負極層と、
前記正極層と前記負極層との間に設けられ結晶化した第1固体電解質層と、
前記第1固体電解質層と前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方との間に設けられた非晶質な第2固体電解質層と、
を具備することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
基板を具備し、
前記正極層、前記負極層、前記第1固体電解質層および前記第2固体電解質層は、前記基板の面方向に配列していることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2固体電解質層は前記第1固体電解質層より薄いことを特徴とする請求項1または2記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極層と前記負極層との前記少なくとも一方は結晶化していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の二次電池。
【請求項5】
正極層と負極層との間に形成されるように、熱処理することにより結晶化した第1固体電解質層を形成し、
前記正極層および前記負極層のうち少なくとも一方と前記第1固体電解質層とを形成した後に、前記第1固体電解質層と、前記正極層および前記負極層のうち前記少なくとも一方と、の間に、前記第1固体電解質層を形成する温度より低い温度において非晶質な第2固体電解質層を形成することを特徴とする二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109840(P2013−109840A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251608(P2011−251608)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】