説明

二次電池の単電池状態検出方法

【課題】電位の異なる複数の二次電池の単電池電圧測定方法において、単電池数の増加に伴い長い検出信号線の本数が増加し、大きな配線工数が必要となるという課題を有していた。
【解決手段】複数の単電池状態検出部と一つの状態測定部が離れて設置され、単電池状態検出部は、検出動作後次の単電池状態検出に使用する検出タイミング信号を生成し、単電池状態検出動作を実施する次の単電池状態検出部へ前記検出タイミング信号を出力することにより、長い信号配線の本数が激減し、配線工数を削減できる。
また、前記単電池状態検出部のセンサーと電圧−パルス信号絶縁変換回路により、物理量をパルス信号に変換することが可能であるため、単電池電圧に加え、単電池電流、単電池温度、単電池圧力などの二次電池の状態を表す物理量を検出することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池の単電池状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源装置、特に停電時、主要負荷に一定時間の給電が可能な停電補償機能を有する装置に使用される二次電池は、通常高い電圧を必要とするため多数の単電池を直列に接続して、使用される。又、二次電池の寿命、故障等の判定のため、単電池電圧の測定が有効であるが、その測定は、単電池間で高電位差が存在する状態における低電圧の測定という困難さを伴っている。この問題を解決するために従来より単電池電圧検出方法として、フライングキャパシタ方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。図5は、前記特許文献1に記載された従来の単電池電圧検出方法を示すものである。
【0003】
図5において、測定対象101に接続された単電池選択スイッチ111、112は、測定時にのみ閉じ、測定対象101の電圧を電圧保持用コンデンサ4に充電し、電圧保持用コンデンサ4が充電後開とし、電圧保持用コンデンサ4の電位を測定対象101の電位から切り離す構造となっている。又、電圧保持用コンデンサ4は、電圧測定部1と測定スイッチ2、3を通して接続されており、単電池選択スイッチ111、112が閉の時には開となっている。電圧保持用コンデンサ4は、単電池選択スイッチ111、112により測定対象101より切り離された後、測定スイッチ2、3が閉となり電圧測定部1に接続される。同様の操作を順次、測定対象102〜105に対して実施することにより、電位の異なる測定対象の電圧を時分割に測定可能となる。
【特許文献1】特開平11−248755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、単電池選択スイッチが二次電池から離れた場所に電圧測定部と一体で設置される場合、単電池ごとに接続された多数の長い検出ケーブルを単電池選択スイッチまで配線しなければならなかった。この配線は、単電池数に応じた本数が必要であり、例えば、単電池が100個直列に接続されたような場合には、200本必要となる。又、単電池選択スイッチが二次電池近傍に設置される場合も同様に、電圧測定部から単電池選択スイッチの数に応じた本数の長い単電池選択制御信号線61〜66を配線する必要があり、いずれにしても配線工数が大きいという課題を有していた。
【0005】
前記特許文献1の課題を解決するため、配線を簡略化し、配線工数の少ない単電池電圧検出方法を提供する特許を既に出願しているが、本発明は、前記特許で提供している単電池電圧の測定に加え、その他の二次電池の状態を表す物理量も測定可能とし、より自由度の高い単電池状態検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明では、単電池状態検出部は、検出動作後次の単電池状態検出に使用する検出タイミング信号を生成し、次の単電池状態の検出動作を実施する単電池状態検出部へ前記検出タイミング信号を出力する構成により単電池状態を検出している。
【0007】
本発明によって、単電池状態検出部は対象単電池の近傍に設置可能であることから、単電池に接続された検出ケーブルを短くすることができ、検出タイミング信号も隣接する単電池状態検出部までへの配線となり、離れた状態測定部までの配線が不要となる。このた
め、配線工数を少なくすることができる。加えて、二次電池の状態を表す物理量をパルス信号に変換し、絶縁手段を介して出力することが可能なため、単電池状態検出部は、単電池電圧に加え、単電池電流、単電池温度などの二次電池の状態を表す物理量を電位に関わらず、配線工数の増加を抑えながら検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の単電池状態検出方法によれば、単電池状態検出部を対象単電池の近傍に設置し、単電池に接続された検出ケーブルを短くすることができ、検出タイミング信号も単電池状態検出部間の配線となるため、離れた状態測定部までの配線が不要となる。このため、配線工数を少なくすることができる。加えて、単電池電圧に加え、単電池電流、単電池温度などの二次電池の状態を表す物理量を電位に関わらず、配線工数の増加を抑えながら検出することが可能になるため、二次電池の寿命、故障等の判定のために重要なパラメータを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における単電池状態検出方法のブロック図の一例である。図1において、図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0010】
図1において電圧−パルス信号絶縁変換回路131〜135には、測定対象101〜105の各単電池電圧及び各単電池状態を表す物理量に応じてセンサー41〜45で変換された電圧が入力され、その電圧値に応じたパルス信号に変換し、絶縁して出力する。電圧−パルス信号絶縁変換回路131〜135の出力は、オア接続で単電池状態検出出力線30を通して一括で状態測定部6に出力する構成としている。又、検出タイミング信号発生回路141〜145は、電圧−パルス信号絶縁変換回路131〜135へ検出タイミング信号を出力し、電圧−パルス信号絶縁変換回路131〜135の動作を制御する。さらに検出タイミング信号発生回路141〜144は、電圧−パルス信号絶縁変換回路131〜134の動作が終了してから一定期間の経過後、次に検出動作をする検出タイミング信号を生成し、隣接する検出タイミング信号発生回路142〜145へ検出タイミング信号線21〜24を通して検出タイミング信号を出力する構成として単電池の状態検出をしている。
【0011】
かかる構成における単電池状態検出動作を以下に説明する。
【0012】
各単電池状態検出部11〜15は、検出動作を実施していないときは、単電池状態検出出力信号線30に対して信号出力をしない状態で待機している。まず、センサー41を介して測定対象101に接続された第1の単電池状態検出部11が一定期間検出動作を実施し、その検出信号を一定期間単電池状態検出出力線30を通して状態測定部6へ出力する。この時、他の単電池状態検出部12〜15は、検出動作を実施しておらず、単電池状態検出出力信号線30には、単電池状態検出部12〜15からの検出信号は現れない。状態測定部6は、単電池状態検出出力線30からの入力を監視し、第1の単電池状態検出部11からの検出信号を入力した場合、測定対象101の測定信号として測定処理を実施する。第1の単電池状態検出部11は、検出動作が終了してから一定期間の経過後、次の測定対象102の測定を実施するための検出タイミング信号を生成し、検出タイミング信号線21を通して第2の単電池状態検出部12へ出力する。検出タイミング信号を入力した単電池状態検出部12は、単電池状態検出部11と同様に一定期間検出動作を実施し、その検出信号を一定期間単電池状態検出出力線30を通して状態測定部6へ出力する。さらに単電池状態検出部12は、第3の単電池状態検出部13へ検出タイミング信号を出力する。同様にして単電池状態検出部13〜15まで検出動作を順に実施する。
【0013】
このように本発明によれば、検出タイミング信号のやり取りを隣接する単電池状態検出部と実施するだけでよく、状態測定部6より単電池状態検出部の全数に対して検出タイミング信号線を接続する必要がないため、配線工数を削減することができ、かつ単電池状態検出部の出力を容易にオア接続可能で、1系統の単電池状態検出出力線30の配線のみでよく、配線工数を削減することができる。
【0014】
また、センサーと電圧−パルス信号絶縁変換回路により、物理量をパルス信号に変換することが可能であるため、単電池電圧に加え、単電池電流、単電池温度などの二次電池の状態を表す物理量を検出することができ、二次電池の寿命、故障等の判定に役立てることができる。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における単電池状態検出方法のブロック図の一例である。図2において、図1及び図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0015】
図2において単電池状態検出部11の検出タイミング信号は、状態測定部6より検出タイミング信号線20を通して入力する構成とし単電池の状態検出をしている。
【0016】
かかる構成によれば、状態測定部6が単電池状態検出出力線30より入力する時分割の検出信号の内、第1の単電池状態検出部11の検出信号が、明示的に判断可能となり、状態検出部6の処理が簡略化可能となる。
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における単電池状態検出方法のブロック図の一例である。図3において、図1、図2及び図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0017】
図3において最終の単電池状態検出部15の検出タイミング信号線25は、状態測定部6に接続される構成とし単電池の状態検出をしている。
【0018】
かかる構成によれば、状態測定部6は、検出タイミング信号線25の信号を検出することにより、単電池状態検出部11から単電池状態検出部15まで単電池状態検出動作が終了したことが容易に判断可能となり、状態測定部6の測定処理が簡略化可能となる。
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態5における単電池状態検出方法のブロック図の一例である。図4において、図1〜図3及び図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0019】
図4において単電池状態検出部15の検出タイミング信号出力は、検出タイミング信号線26を通して単電池状態検出部11に接続される構成とし単電池の状態検出をしている。
【0020】
かかる構成によれば、第1の単電池状態検出部11は、検出サイクル毎に検出タイミング信号を生成する機能が不要で、検出タイミング信号線26の信号を検出することにより、単電池状態検出を開始すればよく、処理の簡略化が可能となる。
【0021】
所定の単電池状態検出が終了した場合は、第1の単電池状態検出部11は、単電池状態検出出力線30を介して状態測定部6に測定が終了したことを伝達する。
【0022】
なお、前記実施の形態1から4において、測定対象を101〜105の5個としたが、
基本的には測定対象の数の制限はなく、同様の構成が可能である。又、二次電池の状態を表す物理量とは、電圧、電流、温度、圧力などが該当し、1つ単電池に対して電圧、電流、温度、圧力などの測定を時分割で行うことにより、1つの単電池の複数の物理量を1つの状態検出部にて測定することも可能である。また、状態測定部6に集められたデータは、既知のモデム等の伝達手段でサーバー等に集めデータ処理することにより活用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の単電池状態検出方法は、信号線の配線工数を削減することが可能であり、かつ、単電池電圧に加え、単電池電流、単電池温度、単電池圧力などの二次電池の状態を表す物理量を電位に関わらず、配線工数の増加を抑えながら検出することが可能になるため、複数の二次電池の単電池状態検出方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態2における構成の一例を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態3における構成の一例を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態4における構成の一例を示すブロック図
【図5】従来の単電池電圧検出方法における構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0025】
1 電圧測定部
2、3 測定スイッチ
4 電圧保持用コンデンサ
5 測定スイッチ制御信号
6 状態測定部
11〜15 単電池状態検出部
20〜26 検出タイミング信号線
30 単電池状態検出出力線
30a、30b 単電池電圧検出出力線
41〜45 センサー
61〜66 単電池選択制御信号線
101〜105 測定対象
111〜116 単電池選択スイッチ
141〜145 検出タイミング信号発生回路
131〜135 電圧−パルス信号絶縁変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池の単電池電圧測定に加え、前記二次電池の状態を表す物理量を時分割で測定する二次電池の単電池状態検出方法であって、
複数の単電池状態検出部と一つの状態測定部が別個に設置され、第1の単電池状態検出部は、検出動作後、第2の単電池状態検出部が単電池状態検出に使用する検出タイミング信号を生成・出力し、前記検出タイミング信号を入力した第2の単電池状態検出部は、前記検出タイミング信号がアクティブである間のみ前記二次電池の単電池電圧及び前記二次電池の状態を表す物理量に応じたパルス信号電圧に変換して出力し、前記パルス信号電圧に変換した出力は他の単電池状態検出部とオア接続で前記状態測定部に入力されることを特徴とした二次電池の単電池状態検出方法。
【請求項2】
複数の単電池状態検出部全てがそれぞれ順に1回づつ検出を行う動作を検出サイクルとし、検出サイクル毎の最初の検出タイミング信号は、状態測定部が出力し、最初の検出を実施する第1の単電池状態検出部が入力する構成とした請求項1に記載の二次電池の単電池状態検出方法。
【請求項3】
前記検出サイクル毎の最後に検出を実施する単電池状態検出部の検出タイミング信号出力は状態測定部に入力され、前記状態測定部は1回の検出サイクルの終了を判断することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池の単電池状態検出方法。
【請求項4】
前記検出サイクル毎の最後に検出を実施する単電池状態検出部は検出タイミング信号出力を第1の単電池状態検出部に入力し、前記検出タイミング信号出力に基づき前記第1の単電池状態検出部は次の検出サイクルを開始することを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池の単電池状態検出方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−232565(P2007−232565A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54545(P2006−54545)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】