説明

二次電池の製造方法

【課題】
本発明は、複雑な工程を導入することなく、採算を取りやすい二次電池のリサイクル方法を提供し、資源の有効利用や廃棄物削減を図ることを目的とする。
【解決手段】
二次電池の製造方法であって、充放電した二次電池から、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群を取り出す工程、取り出した電極群を再生処理する工程、再生処理した電極群を容器に収容する工程を有する。再生処理は、電極群を水洗すること、薬剤を含む溶液に電極群を浸漬すること、または電極群を超音波洗浄することにより行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群が外装缶に収容された二次電池の製造方法に係り、特に二次電池のリサイクル(再利用)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や廃棄物削減の観点から、使用済みとなった二次電池についても、リサイクルすることが求められている。
一般に、二次電池のリサイクルは、使用済みの電池を回収し、電池に含まれる活物質等の一部の有価元素が分離抽出するという流れで行われている。
例えば、特開平9−157769号公報は、ニッケル水素蓄電池の負極に含まれる水素吸蔵合金中の一部の有価元素を分離して、再利用するリサイクル手法を示している。
具体的には、ニッケル水素蓄電池から水素吸蔵合金を分離し、分離した水素吸蔵合金を水やアルコールなどで洗浄、精製し、この精製した水素吸蔵合金を単独あるいは別途製造した新しい水素吸蔵合金と混合して再利用するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−157769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら有価元素を分離して再利用する方法は、工程が複雑で、採算を取り難いという課題がある。
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、複雑な工程を導入することなく、採算を取りやすい二次電池のリサイクル方法を提供し、資源の有効利用や廃棄物削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の二次電池の製造方法は、充放電した二次電池から、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群を取り出す工程と、取り出した電極群を再生処理する工程と、再生処理した電極群を容器に収容する工程とを有することを特徴とする。
【0006】
前記再生処理は、電極群を水洗すること、薬剤を含む溶液に電極群を浸漬すること、または電極群を超音波洗浄することにより行うことが好ましい。
【0007】
また、上記二次電池の製造方法は、アルカリ蓄電池の製造に適しており、特に、ニッケルカドミウム電池の製造に適している。
【発明の効果】
【0008】
一般に、二次電池を繰り返し充放電すると、電極材料等から電解液に溶出した化学元素が再析出したり、または電極材料等自体が化学変化する等して、電極群内に電池性能を低下させる化合物(不活性物質)が生じる場合がある。この場合、本発明の二次電池の製造方法によると、電極群を分解しなくても、不活性物質を除去することができる。これにより、不活性物質により失われていた電極群の機能が回復するので、充放電した二次電池から取り出した電極群を分解することなくそのまま用いて新たな電池を製造することが可能となる。このため、本発明、二次電池の製造方法によると複雑な工程を導入することなく二次電池のリサイクルを行うことができる。
【0009】
また、本発明の製造方法によると、再生処理した電極群をそのまま用いて新たな電池を製造することが可能となるため、新たに電極材料やセパレータ等を使用することなく二次電池を製造することができるため、二次電池のコストダウンを図ることができる。以上より、本発明の二次電池の製造方法は、リサイクルの採算が取りやすくなる。
【0010】
再生処理は、電極群を水洗することにより行うのが好ましい。水洗であれば、電極群を分解することなく、電極群内に存在する不活性物質を除去することができる。
【0011】
また、再生処理は、薬剤を含む溶液に電極群を浸漬することにより行うのが好ましい。薬剤を含む溶液への浸漬であれば、水洗では除去が困難な不活性物質であっても、不活性物質を溶解させることによって除去することができる。
【0012】
さらに、再生処理は、電極群を超音波洗浄することにより行うのが好ましい。超音波洗浄であれば、水や薬剤を含む溶液が届きにくい電極群の中心部や細孔部に存在する不活性物質を除去することができる。
【0013】
上記本発明の二次電池の製造方法は、アルカリ蓄電池の製造に適している。即ち、アルカリ蓄電池においては、充放電を繰り返すうちに正極または負極から活物質の構成元素が電解液中に溶出し、電極表面等に再析出して不活性物質を生成する。この不活性物質がアルカリ蓄電池の機能を低下させる大きな要因となるが、アルカリ蓄電池は、再生処理によって不活性物質が除去されると、機能が大きく回復する傾向にあるからである。
【0014】
特に、上記本発明の二次電池の製造方法は、ニッケルカドミウム電池の製造に適している。即ち、ニッケルカドミウム電池においては、充放電を繰り返すうちに、負極活物質の構成元素であるカドミウムが電解液中に溶出してセパレータの細孔内に再析出し、これが正極と負極間に微小短絡を生じさせる不活性物質となり、アルカリ蓄電池の機能を著しく低下させる。しかし、セパレータは、水や溶液が浸透しやすく、細孔に詰まった付着物が超音波を付加することにより容易に除去されるという特性を有しているため、上記本発明の二次電池の製造方法をニッケルカドミウム電池に適用すると、再生処理による不活性物質の除去が特に効果的に行えるので、電極群の機能の回復の効果が特に大きくなる。
【0015】
上記本発明の二次電池の製造方法をニッケルカドミウム電池に適用する場合、薬剤として、酢酸アンモニウムとアンモニアの混合液、又は塩化アンモニウムとアンモニアの混合溶液を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明及び比較例の二次電池を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の製造方法によって製造される二次電池の形態を図1に基づいて説明する。この場合、二次電池としてニッケルカドミウム電池を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0018】
1.カドミウム負極
カドミウム負極は、パンチングメタルよりなる導電性基板(電極基板)の両面に活物質ペーストが塗着されて形成されている。この場合、活物質ペーストは、主活物質である酸化カドミウム80質量部に、予備充電活物質である金属カドミウム20質量部と有機高分子糊剤1質量部とナイロン繊維1質量部と水30質量部からなるカドミウム糊料を添加、混練して調製されたものである。そして、このように調製された活物質ペーストをパンチングメタルよりなる導電性基板(電極基板)の両面に塗布し、乾燥させた後、所定の厚みになるまで圧延して活物質ペースト塗着極板を作製した。これを所定の寸法に切断して、カドミウム負極11とした。
【0019】
2.ニッケル正極
一方、ニッケル焼結基板(電極基板、多孔度が80%のもの)を硝酸ニッケルを主成分とする含浸液に浸漬し、乾燥した後、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して水和後、水洗して、硝酸ニッケルを水酸化ニッケルに活物質化させる。このような化学含浸法を所定回数(例えば8回)繰り返して、ニッケル焼結基板の空孔内に所定量のニッケル活物質(水酸化ニッケルを主体とする正極活物質)が充填された極板とし、これを所定の寸法に切断して、ニッケル正極12とした。
【0020】
3.ニッケル−カドミウム電池
ついで、上述のようにして作製されたカドミウム負極11およびニッケル正極12とを用いて、図1に示されるように、ポリオレフィン製の繊維からなる不織布状のセパレータ13を介してカドミウム負極11とニッケル正極12とが対向するように渦巻状に巻回して渦巻状電極群をそれぞれ作製した。ついで、渦巻状電極群の下部に延出する負極基板に負極集電体11aを抵抗溶接するとともに、渦巻状電極群の上部に延出する正極基板に正極集電体12aを抵抗溶接して渦巻状電極体をそれぞれ作製した。
【0021】
ついで、鉄にニッケルメッキを施した有底円筒形の金属外装缶15内に渦巻状電極群を挿入した後、負極集電体11aと金属外装缶15の底部をスポット溶接した。一方、正極キャップ17bと蓋体17aとからなる封口体17を用意し、正極集電体12aに設けられたリード部12bを蓋体底部17cに接触させて、蓋体底部17cとリード部12bとを溶接した。
【0022】
この後、渦巻状電極群の上端面に防振リング14を挿入し、外装缶15の上部外周面に溝入れ加工を施して、防振リング14の上端部に環状溝部15aを形成した。この後、金属製外装缶15内に電解液(濃度が30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液)を注液し、封口体17を封口ガスケット16を介して外装缶15の環状溝部15aに載置するとともに、外装缶15の先端部を封口体側にカシメて封口して、SCサイズのニッケルカドミウム電池10を作製した。
【0023】
4.ニッケル−カドミウム電池の再生処理
<実施例1〉
上記のようにして作製したニッケルカドミウム電池10に対して充放電を繰り返し、開路電圧が0Vとなり充放電が不可能となったニッケルカドミウム電池10から電極群を取り出した。次いで取り出した電極群を水洗、乾燥して、新しい外装缶15に挿入した後、上記「3.ニッケル−カドミウム電池」に示した手順でSCサイズのニッケルカドミウム電池10を作製した。このようにして得られた再生ニッケル−カドミウム電池10を電池Aとする。
【0024】
<実施例2〉
取り出した電極群を1mol/lの酢酸アンモニウムと5mol/lアンモニアを含む水溶液に6時間浸漬した以外、実施例1と同様にして、SCサイズのニッケルカドミウム電池10を作製した。このようにして得られた再生ニッケル−カドミウム電池10を電池Bとする。

【0025】
<実施例3〉
取り出した電極群を純水を満たした超音波洗浄装置に投入して2時間洗浄した以外、実施例1と同様にして、SCサイズのニッケルカドミウム電池10を作製した。このようにして得られた再生ニッケル−カドミウム電池10を電池Cとする。
【0026】
5.ニッケル−カドミウム電池の特性試験
・ 電池容量試験
上述のようにして作製した電池A〜Cに対し電池容量及び作動電圧の測定を行った。電池容量の測定条件は、以下の通りとした。
1)充電
2.5Aの電流で、電池電圧がピーク電圧に到達した後、10mV降下するまで充電を行った。充電は、室温下で行った。
2)休止
充電終了後、室温下で10分間休止した。
3)放電
休止後、10A電流で電池電圧が0.8Vに至るまで放電を行った。放電は、室温下で行った。
以上の条件の下、放電時の容量及び作動電圧を求めた。結果を表1に示す。
【0027】
・ 充放電サイクル特性試験
上述のようにして作製した電池A〜Cに対し充放電サイクル特性の測定を行った。充放電サイクル特性の測定条件は、以下の通りとした。
1)充電
2.5Aの電流で、電池電圧がピーク電圧に到達した後、10mV降下するまで充電を行った。充電は、室温下で行った。
2)休止
充電終了後、室温下で10分間休止した。
3)放電
休止後、10A電流で電池電圧が0.8Vに至るまで放電を行った。放電は、室温下で行った。
4)休止
放電終了後、室温下で60分間休止した。
以上の条件の下、1)〜4)を70サイクル繰り返し、70サイクル目の放電容量を求めた。結果を表1に示す。
【0028】
・ 放置特性試験
上述のようにして作製し、「(2)充放電サイクル特性試験」で示した充放電サイクルを70サイクル実施した電池A〜Cに対し、放置特性の測定を行った。放置特性の測定条件は、以下の通りとした。
1)充電
2.5Aの電流で、電池電圧がピーク電圧に到達した後、10mV降下するまで充電を行った。充電は、室温下で行った。
2)休止
充電終了後、室温下で24時間休止した。
3)放電
休止後、10A電流で電池電圧が0.8Vに至るまで放電を行った。
以上の条件の下、放電時の容量を求めた。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1より、電池A〜Cの電池容量と作動電圧は、いずれも回復していることが分かる。これは、ニッケル−カドミウム電池10を繰り返し充放電する過程で負極活物質の構成元素であるカドミウムが電解液中に溶出してセパレータの細孔内に再析出してできた(カドミウムを含有する化合物)不活性物質が、再生処理によって除去されたためであると考える。
【0031】
このことからすると、本発明の製造方法によると、電極群を分解することなくそのまま用いて新たな電池を製造することが可能であり、複雑な工程を導入することなく二次電池のリサイクルを行うことができるといえる。また、再生処理した電極群をそのまま用いて新たな電池を製造することが可能となるため、新たに電極材料やセパレータ等を使用することなく二次電池を製造することができるため、二次電池のコストダウンを図ることができるといえる。
【0032】
一方、充放電サイクル特性及び放置特性については、電池B及びCは、電池Aにくらべて良好な特性を示している。これは、電池Aは、カドミウムが電解液中に溶出してセパレータの細孔内に再析出してできた不活性物質が、水洗処理によってセパレータの細孔内から一旦除去されるものの、一部が電極群内に滞留し、充放電又は放置の過程で、再度セパレータの細孔内に再析出したためであると考えられる。
【0033】
一方、電池B及びCは、カドミウムが電解液中に溶出してセパレータの細孔内に再析出してできた不活性物質の大半が、薬剤による溶解又は超音波洗浄によって電極群から除去され、充放電又は放置の過程で、再度セパレータの細孔内に再析出する不活性物質の量が少なかったためであると考える。このことからすると、再生処理は、薬剤を含む溶液に電極群を浸漬する方法または電極群を超音波洗浄することにより行うのが好ましいといえる。
【0034】
また、電池Cは、充放電サイクル特性及び放置特性が電池Bにくらべて良好であることが分かる。これは、電池Cは、超音波洗浄により再生処理を行っているので、水や薬剤を含む溶液が届きにくい電極群の中心部や細孔部に存在する不活性物質についても除去されるとともに、除去された不活性物質が電極群の外に効率的に排出されるので、電極群内に滞留する不活性物質の量が非常に小さいかったためであると考える。このことからすると、再生処理としては、電極群を超音波洗浄することにより行うのが特に好ましいといえる。
【0035】
尚、上記実施例においては、ニッケルカドミウム電池を使用した例のみ示したが、本発明の製造方法は、繰り返し電池を充放電した際に電極群内に不活性物質が生じる二次電池に対して適用することができる。ただし、不活性物質が電池の機能を低下させる大きな要因となるアルカリ蓄電池に対して本発明の製造方法を適用すると、再生処理によって電池の機能が大きく回復する傾向にあるので、好ましいといえる。
【0036】
また、水や溶液が浸透しやすく、細孔に詰まった付着物を超音波を付加することにより容易に除去することができるセパレータに不活性物質が生成しやすいニッケルカドミウム電池に対して本発明の製造方法を適用すると、再生処理による機能の回復の効果がより大きくなるので、特に好ましいといえる。また、上記実施例においては、再生処理に使用する薬剤として、酢酸モニウムとアンモニアの混合液を使用したが、塩化アンモニウムとアンモニアの混合溶液を使用した場合でも、同等の効果を得ることができる。
【0037】
また、上記実施例においては、充放電を繰り返し、開路電圧が0Vとなり充放電が不可能となったニッケルカドミウム電池10から電極群を取り出して再生処理を行ったが、開路電圧が0Vに至らなくても、開路電圧がある程度低くなるまで劣化が進んだ二次電池に対しても、本発明の製造方法を適用すれば、本発明の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
10…アルカリ二次電池、12…ニッケル正極、12a…正極集電体、12b…リード部、11…カドミウム負極、11a…負極集電体、13…セパレータ、14…防振リング、15…金属製外装缶、15a…環状溝部、16…封口ガスケット、17…封口体、17a…蓋体、17b…正極キャップ、17c…蓋体底部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電した二次電池から、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群を取り出す工程と、
取り出した電極群を再生処理する工程と、
再生処理した電極群を容器に収容する工程と
を有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記再生処理は、電極群を水洗することにより行うことを特徴とする請求項1の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記再生処理は、薬剤を含む溶液に電極群を浸漬することにより行うことを特徴とする請求項1の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記再生処理は、電極群を超音波洗浄することにより行うことを特徴とする請求項1の二次電池の製造方法。
【請求項5】
充放電したアルカリ蓄電池から、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群を取り出す工程と、
取り出した電極群を再生処理する工程と、
再生処理した電極群を容器に収容する工程と
を有することを特徴とするアルカリ蓄電池の製造方法。
【請求項6】
充放電したニッケルカドミウム電池から、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極群を取り出す工程と、
取り出した電極群を再生処理する工程と、
再生処理した電極群を容器に収容する工程と
を有することを特徴とするニッケルカドミウム電池の製造方法。
【請求項7】
前記薬剤は、酢酸アモニウムとアンモニアの混合液、又は塩化アンモニウムとアンモニアの混合溶液に電極群を浸漬することにより行うことを特徴とする請求項6に記載のニッケルカドミウム電池の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2013−45760(P2013−45760A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185220(P2011−185220)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】