説明

二次電池の製造方法

【課題】電極体内への電解液の含浸状態が許容程度に達したか否かの判断を容易に行うことができ,高寿命で高性能な二次電池を製造することのできる二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の二次電池の製造方法では,電池ケースとして導電性を有するものを用い,正負の端子部材を接続した電極体を電池ケースに挿入して,正負の端子部材の一部が電池ケースの外部に突出するとともに,正負の端子部材の少なくとも一方が電池ケースと直接には導通していない状態とし,電池ケースに電解液を注入し,電池ケースと直接には導通していない端子部材のうち外部に突出している部分と電池ケースとの間の抵抗値を取得し,取得した抵抗値が電解液の注入直後の値に対して予め決めた上昇傾向を示したら,次工程に進む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電池ケースに電極体と電解液とを封入してなる二次電池の製造方法に関する。さらに詳細には,注液後における,電池ケース内での電解液の電極体への含浸完了を判定して,電池を適切に完成させることのできる電解液二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池を製造する工程には,製造した電極体を電池ケース内に挿入した後,その電池ケース内に電解液を注液する工程が含まれている。このとき,電解液が電極体の間に適切に浸透することが求められる。しかし,電解液や電極体は電池ケースに封入されているため,注液の状態を電池ケースの外から目視で確認することはできない。
【0003】
それに対し,特許文献1には,電解液の注液の状況を,この電池の正極端子と負極端子との間のインピーダンスを測定することにより見極める技術が開示されている。本文献には,このインピーダンスは注液の進行に従って低下するので,インピーダンスを測定しながら注液および加圧・減圧による脱泡を繰り返すことにより,注液の状況をモニタできると記載されている。そして,得られたインピーダンスが基準値まで低下したときには,良好な電池特性を得られる電池となっているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−311343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の製造方法において測定しているインピーダンス値は,この文献の図5にも示されているように,注液開始直後に大きく低下し,その後の低下の程度は緩やかなものとなる。そして,注液終了のタイミングとされている基準値は,低下が緩やかとなってからやや時間が経過した位置とされている。つまり,基準値に達したかどうかの判断を変化量の小さい範囲内で行わなければならないので,判定が困難であるという問題点があった。
【0006】
さらに,この文献では,注液の終了までの判断のみが行われているが,例えば自動車等に搭載される大型の二次電池では,注液後,電解液が電極体内に適切に含浸されるまで待つ必要がある。電極体の幅が大きく,電極体の中心部まで電解液が含浸するのに時間がかかるからである。電解液の含浸が充分でない状態で初期充電を行うと,電極反応が不均一に進み,電極のSOCムラや被膜ムラ等が発生して,電気の内部抵抗が局所的にばらつくおそれがある。このようになった二次電池は,寿命の短いものとなるという問題点があった。
【0007】
この含浸の程度についても,上記の特許文献1に記載されている方法と同様の方法で判定することが考えられる。すなわち,電解液を注液した後の電池の内部抵抗を測定して,その変化に基づいて含浸の程度を判断するのである。含浸が進行することによって,電池の内部抵抗は低下していくからである。しかしながら,含浸状態が飽和してくると電池の内部抵抗の変化量がきわめて小さくなり,精密な判定は困難であった。
【0008】
本発明は,前記した従来の二次電池の製造方法が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,電極体内への電解液の含浸状態が許容程度に達したか否かの判断を容易に行うことができ,高寿命で高性能な二次電池を製造することのできる二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の二次電池の製造方法は,電極体と電解液とを電池ケースに封入してなる二次電池の製造方法であって,電池ケースとして導電性を有するものを用い,正負の端子部材を接続した電極体を電池ケースに挿入して,正負の端子部材の一部が電池ケースの外部に突出するとともに,正負の端子部材の少なくとも一方が電池ケースと直接には導通していない状態とし,電池ケースに電解液を注入し,電池ケースと直接には導通していない端子部材のうち外部に突出している部分と電池ケースとの間の抵抗値を取得し,取得した抵抗値が電解液の注入直後の値に対して予め決めた上昇傾向を示したら,次工程に進むものである。
【0010】
本発明の二次電池の製造方法によれば,電池ケースに電極体を入れて組み立てると,電極体に接続された正負の端子部材の一部が電池ケースの外部に突出した状態となる。この電池ケースに電解液を注入した直後は,電極体の周りに液状の電解液が溜まった状態となる。電池ケースが導電性を有するものであれば,端子部材は,電極体と電解液とを介して,電池ケースと導通した状態となる。この端子部材と電池ケースとの間に導電体のみを介した導通経路が存在しないものであれば,端子部材と電池ケースとの間の抵抗値は,電極体の周辺に液状で残留する電解液の量に対応するものとなる。従って,端子部材と電池ケースとの間の抵抗値を電池ケースの外から測定することで,電解液の含浸状況を把握できる。特に,電極体に直接接触する電解液の有無によって,この抵抗値が大きく変化するので,判定は容易である。これにより,電極体内への電解液の含浸状態が許容程度に達したか否かの判断を容易に行うことができ,高寿命で高性能な二次電池を製造することのできる二次電池の製造方法となっている。
【0011】
さらに本発明では,電池ケースが扁平角形のものであるとともに,正負の端子部材の少なくとも一方が,電池ケースの上面の長手方向の一端から1/3以内の範囲内の位置に突出し,かつ,電池ケースと直接には導通しないように設けられている扁平型二次電池を対象とし,抵抗値の取得を,一方の端子部材が電池ケースの上面の長手方向の他端より上になるように電池ケースを傾斜させた状態で,一方の端子部材と電池ケースとの間で行うことが望ましい。
このようにすれば,電池ケース内で電極体外に液状で残存することが許容される電解液の液面が電極体の底面より上方であるものについても,本発明を適用することができる。傾斜させることによって,上になった端子部材には電解液が直接接触しないようにすることができるからである。傾斜させる角度は,残存が許容される最大量の電解液が,上になった端子部材に直接接触しない角度とすればよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二次電池の製造方法によれば,電極体内への電解液の含浸状態が許容程度に達したか否かの判断を容易に行うことができ,高寿命で高性能な二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本形態に係る二次電池を示す概略構成図である。
【図2】含浸が完了していない二次電池を示す概略構成図である。
【図3】含浸時間と端子ケース間抵抗との関係を示すグラフ図である。
【図4】含浸時間と電池抵抗との関係を示すグラフ図である。
【図5】クリアランスを設けた二次電池を示す説明図である。
【図6】二次電池を傾けて判定を行う様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明を具体化した形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,リチウムイオン二次電池等の二次電池を製造する製造方法に,本発明を適用したものである。
【0015】
本形態に係る二次電池10は,図1に示すように,電池ケース11の内部に,電極体20が電解液13とともに封入されてなるものである。電池ケース11は,一面が開放された箱形部材11aと,その開放された一面を封じる蓋材11bとを有している。本形態では,電池ケース11は,この図の奥行き方向に扁平な扁平角形のものである。電極体20も,同様に扁平に形成されているものである。
【0016】
蓋材11bには,電池ケース11の組立て後,電解液13を注液するための注液口15が設けられている。なお,この注液口15は,電解液13の注液が終了した後,封止されている。本形態の電池ケース11は,例えば金属などの導電性を有する材質で形成されている。また,電解液13は,リチウムイオン二次電池に一般的に用いられるものであり,例えば,リチウム塩を含む非水電解液またはイオン伝導ポリマー等が好適である。
【0017】
本形態の電極体20は,例えば,特開2007−053055号公報の図2に示されているように,正極板と負極板とが重ねて捲回されてなるものである。また,正極板と負極板との間には,両者の絶縁をとるためのセパレータが配置されている。正極板,負極板,セパレータは,いずれも従来より用いられている一般的なものとすればよい。
【0018】
正極板は,例えば,アルミ箔の両面に正極活物質層を形成したものである。正極活物質層としては,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質による正極合剤を含むものであり,例えば,リチウム含有金属酸化物に結着剤と分散溶媒等を混練したものが好適である。負極板は,例えば,銅箔の両面に負極活物質層を形成したものである。負極活物質層としては,リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質による負極合剤を含むものであり,例えば,炭素材等を含んでいるものが好適である。
【0019】
本形態の電極体20には,図1に示すように,正極端子21と負極端子22とが接続されている。正極端子21は,電池ケース11の内部で正極集電板24(正極板のうちアルミ箔の露出している部分)に接続されるとともに,一部分が電池ケース11の外部に出て配置されている。負極端子22は,電池ケース11の内部で負極集電板25(負極板のうち銅箔の露出している部分)に接続されるとともに,一部分が電池ケース11の外部に出て配置されている。
【0020】
本形態の二次電池10は通常,蓋材11bを上にして配置されるものである。そして,電極体20は,その水平方向の両端側にそれぞれ,正極集電板24と負極集電板25とが露出するように捲回されている。正極端子21と負極端子22とはそれぞれ,その露出した箇所に接続され,蓋材11bから上向きに突出して配置されている。
【0021】
なお,正極端子21も負極端子22も,それぞれ蓋材11bとの間は絶縁された状態とされており,電池ケース11のいずれの箇所とも接触あるいは導通している箇所はない。また,電極体20自体もその最外周はセパレータで覆われており,電池ケース11と直接には導通していない。ここで,直接には導通していないとは,直接接触したり,導電性の構造物を介して接続されたりはしていないということである。電解液を介しての導通までも除外するものではない。
【0022】
なお,図1に示したのは,電解液13が電極体20に適切に含浸され,完成した状態の二次電池10である。つまり,電解液13は電極体20の極板間に浸入して,さらに,電極活物質などにしみこんでおり,液状で電池ケース11内かつ電極体20外に残存する量はごく僅かである。そして,電解液13の液面L1は,電極体20の最下部とほぼ同等の高さにある。
【0023】
一方,図2に示すのは,電解液13の注液は終了しているが,含浸が終了していない二次電池10であり,電解液13の液面L2は,電極体20の最下部よりかなり高い位置にある。すなわち,図2の二次電池10は,電池ケース11の内部で,正極端子21と負極端子22とが液状の電解液13に漬かった状態となっている。
【0024】
本発明者は,この図1と図2との二次電池10の状態の違いを,電極端子(正極端子21または負極端子22)と電池ケース11との間の電解液13を介した抵抗値の違いとして把握できることを見出した。以下では,この電極端子と電池ケース11との間の電解液13を介した抵抗値を,端子ケース間抵抗と呼ぶ。
【0025】
つまり,電極端子(またはそれに接続されている電極集電板)と電解液13との接触面積,特に,これらが直接接触しているかどうかによって,電極端子と電池ケース11との間の抵抗値が大きく異なっていたのである。例えば,図2に示すように,抵抗測定部30を使用して,電極端子と電池ケース11との間の抵抗値を測定することにより,取得した抵抗値が予め決めた上昇傾向を示したら含浸が完了したと判断することができることが分かった。
【0026】
本形態の抵抗測定部30は,電源と電流計とを含むものであり,両端部に電圧を印加して,流れた電流の電流値と電圧値との関係から抵抗値を得るものである。この抵抗値の推移は,例えば図3に示すようなものである。この例では,注液終了直後から抵抗値が0.1kΩ以下の状態が続き,注液後1000分前後を経過した頃から抵抗値は急速に上昇した。なお,この図の横軸における含浸時間0分は,規定量の電解液13を電池ケース11内に注液し終わった直後の時点を示している。
【0027】
つまり,図2に示したように電極体20が電解液13に漬かっている状態では,電極端子とそれに接触している電解液13と間で電子のやりとりが行われ,比較的自由に電流を流すことができる。従って,端子ケース間抵抗は小さい。一方,含浸されていない液状の電解液13が減少すると,電極端子に直接接触している電解液13が減少するため,電子のやりとりを行うことが難しくなる。そのため,端子ケース間抵抗は次第に大きくなる。
【0028】
そして,図1のように含浸されていない液状の電解液13がごく少なくなり,特に,電極体20が電解液13に漬かっていない状態となると,電極端子に直接接触している電解液13が無く,電子のやりとりを直接行うことはできなくなる。そのため,端子ケース間抵抗は急激に大きくなる。つまり,この図3の結果で,時刻A〜Cは,まだ含浸が完了していない状態(図2の状態)であり,時刻D,Eは,含浸が完了した状態(図1の状態)に対応している。なお,いずれの状態でも,電解液13と電池ケース11とは底面において広く接触しており,この間の抵抗は小さい。
【0029】
この図3の結果は,図1と図2とに示すように,二次電池10を蓋材11bを上にして立てた状態で測定したものである。本形態の二次電池10は,この配置では,含浸が完了すると電解液13の液面は,電極体20の最下面と同等程度の高さとなる。この配置で測定した場合には,図2に示したように負極端子22と電池ケース11との間に抵抗測定部30を配置して測定しても,あるいは,正極端子21と電池ケース11との間に抵抗測定部30を配置して測定しても結果はほぼ同じであった。
【0030】
この二次電池10の製造方法は以下の通りである。まず,前述のような電極体20,電解液13,電池ケース11等をそれぞれ用意する。そして,電池ケース11に電極体20を封入して二次電池を組立て,電解液13を注液する。さらに,図2に示した抵抗測定部30を使用して,端子ケース間抵抗を測定する。この測定値が予め決めた上昇傾向を示したか否かに基づいて,含浸が完了したか否かを判定する。例えば,端子ケース間抵抗の値が,予め決めた値を上回ったら,含浸が完了したと判定する。閾値は実験によって取得しておけばよい。
【0031】
あるいは,端子ケース間抵抗の値はある時点から急激に上昇するものであるので,前回との差または上昇率等に閾値を設けておいて,それを超えたか否かによって判定することもできる。またあるいは,初期抵抗値(例えば,時刻Cくらいまでの平均でもよい)の何倍になったらという判定の仕方でも良い。このような初期抵抗値に依存する判定であっても,「予め決めた」に含まれる。すなわち,判定の基準は,測定開始以前に決定しておくものに限らず,測定開始後であっても判定までに決定されているものであればよい。そして,含浸が完了したと判定されたら,次工程に進む。次工程には,その二次電池の初期充電工程も含まれるが,含浸が完了した後に即,初期充電を行うとは限らない。そして,二次電池10が完成する。
【0032】
本発明者は,実験によって本発明の効果を確認した。この実験では,以下の条件で,初期容量が30Ahの電池を製造して行った。正極材料としてはNi/Mn/Coの三元系を使用した。負極材料としては黒鉛を使用した。セパレータとしては,PP/PE/PPの3層セパレータを使用した。これらを捲回して電極体20を形成し,電池ケース11に封入して,電解液13を注液した。
【0033】
本実験では,同じ構成の二次電池を5個用意し,注液までは同様に製造した。その後,含浸のために放置する時間(含浸時間)をそれぞれ異なるものとし,それぞれの含浸時間の終了後直ちに初期充電を行った。初期充電が終了したら二次電池として完成である。この後,後述するようにサイクル試験を行って,各二次電池の性能を比較した。なお,含浸時間は,図3中にA〜Eで示した5時点とした。以下では,電池A,電池Bのように,初期充電を開始した時刻の符号でその二次電池を表記する。
【0034】
なお,この実験では二次電池として,端子ケース間抵抗が1.0kΩを超えたら含浸が完了したと判定できるものを用いた。すなわち,電池Dと電池Eでは,本形態で含浸が完了したと判定された後,初期充電を行ったものである。一方,電池A,電池B,電池Cは含浸が完了したとは判定されていないうちに初期充電を行ったものである。初期充電は,いずれも同様に,4.1Vcccv(定電流定電圧)15A(0.5Cに相当)で電流値が0.1Aになるまでの充電とした。その後,60℃の環境下で24時間放置し,エージングを行った。これで5種類の二次電池が完成した。
【0035】
なお,同様の条件で製造した二次電池を,従来の判定方法である電池抵抗によって判定すると,図4に示すような結果が得られた。電池抵抗とは,正極端子21と負極端子22との間の電気的抵抗値である。従来の判定方法では,この電池抵抗があらかじめ定めた値を下回ったら含浸が完了したと判定していた。例えば,図4で電池抵抗が0.73mΩを下回ったら含浸が完了したと判定していた。従って,従来の判定方法では,電池Aは含浸が完了したとは判定されていなかったものであるが,電池B〜電池Eは含浸完了と判断されていたものである。なお,図4中のA〜Eは,図3中のA〜Eと同じ含浸時間に対応している。
【0036】
そして,電池A〜電池Eのサイクル試験を行い,電池特性を容量維持率で評価した。評価の手順は以下の通りである。
まず,4.1Vcccv15Aで0.1Aになるまでの充電と,cc(定電流)15Aで3.0Vとなるまでの放電とを行い,この放電による放電容量をその電池の初期容量とした。
続いて,0℃の環境下で,4.1Vcccv30A(1C)で1.5時間の充電と,cc30Aで2.5Vに下がるまでの放電とを1サイクルとして,1000サイクル繰り返した。
その後,初期容量を求めたときと同条件で容量確認を行った。この結果得られた電池容量の初期容量に対する割合を容量維持率とした。
【0037】
【表1】

【0038】
実験の結果を上の表1に示す。このサイクル試験では,電池A〜電池Cは容量維持率が充分とは言えなかった。電池D,電池Eは適切な容量維持率を有していた。つまり,電池D,電池Eは良好な二次電池であったが,電池A〜電池Cは良好とは言えなかった。
【0039】
この結果は,電池A〜電池Cは含浸が未完了であると判定した,本形態の判定と合致していた。これに対して,比較例の判定では,電池A以外は完了と判定されており,容量維持率の結果とは合致しなかった。従って,本形態の判定方法での判定結果が妥当なものであることが確認できた。
【0040】
なお,端子ケース間抵抗の測定方法を図5,図6に示すようにすれば,端子ケース間抵抗の値の変化をより明確に取得できる。図5に示すのは,電極体20と電池ケース11との間にクリアランスhを設けた例である。電解液13の含浸が進めば,電解液13の液面位置が下がって,このクリアランスhの範囲内に入る。つまり,このようになるように電池ケース11と電極体20との大きさの関係,あるいは電解液13の注液量等を設定しておけばよい。このようにすれば,含浸が完了したときにおける,電解液13の液状部分と電極端子(正極端子21または負極端子22)との接触面積は,図1の例よりもさらに小さい。従って,含浸の完了を明確に判定することができる。
【0041】
あるいは,図6に示すように,二次電池10を傾けて端子ケース間抵抗の測定を行うこととしても良い。すなわち,蓋材11bの長手方向の一端側を持ち上げ,蓋材11bが水平面に対して傾斜角θをなすように電池ケース11を傾ける。このようにすれば,電池ケース11内かつ電極体20外に液状で残存する電解液13は,図示のように,蓋材11bの長手方向について,他端側の底に集まる。
【0042】
本形態の二次電池10は,扁平角形で略長方形の蓋材11bの両端近くにそれぞれ正極端子21と負極端子22とが突出しているものである。そして,図1に示すように端子を上に向けて電池ケース11を立てると,両極の端子とそれに接続される電極集電板とは,電池ケース11内の両脇にそれぞれ配置されている。そのため,前述のように傾けることにより,持ち上げた側の電極端子および電極集電板(図6では正極端子21と正極集電板24)を,電解液13に接触していない状態とすることができる。
【0043】
そこで,抵抗測定部30によって,持ち上げた側の電極端子と電池ケース11との間の抵抗値を測定すれば,含浸の完了を明確に判定することができる。この方法は,正極端子21と負極端子22との少なくとも一方が,蓋材11bの長手方向の一端から1/3以内の範囲内の位置に突出し,かつ,電池ケース11と直接には導通しないように設けられているものについて特に有効である。
【0044】
なお,図6に示す傾斜角θは,含浸完了後も電池ケース11内かつ電極体20外に液状での残存が許容される電解液13の量に応じて決定される。この方法であれば,電極体20と電池ケース11との間にクリアランスhを設ける必要はない。なお,この方法の場合は,判定のために端子ケース間抵抗を測定する間だけ傾けるようにすることが望ましい。
【0045】
以上詳細に説明したように本形態の判定方法によれば,電解液13の電極体20への含浸が完了したか否かを容易にかつ明確に判定することができる。従って,本判定方法で含浸の完了が確認できた後に初期充電を行うようにすることで,その後の性能の良好な二次電池とすることができる。これにより,電極体内への電解液の含浸状態が許容程度に達したか否かの判断を容易に行うことができ,高寿命で高性能な二次電池を製造することができる製造方法となっている。
【0046】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 二次電池
11 電池ケース
13 電解液
20 電極体
21 正極端子
22 負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と電解液とを電池ケースに封入してなる二次電池の製造方法において,
前記電池ケースとして導電性を有するものを用い,
正負の端子部材を接続した前記電極体を前記電池ケースに挿入して,前記正負の端子部材の一部が前記電池ケースの外部に突出するとともに,前記正負の端子部材の少なくとも一方が前記電池ケースと直接には導通していない状態とし,
前記電池ケースに電解液を注入し,
前記電池ケースと直接には導通していない前記端子部材のうち外部に突出している部分と前記電池ケースとの間の抵抗値を取得し,
前記取得した抵抗値が電解液の注入直後の値に対して予め決めた上昇傾向を示したら,次工程に進むことを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池の製造方法において,
前記電池ケースが扁平角形のものであるとともに,前記正負の端子部材の少なくとも一方が,前記電池ケースの上面の長手方向の一端から1/3以内の範囲内の位置に突出し,かつ,前記電池ケースと直接には導通しないように設けられている扁平型二次電池を対象とし,
前記抵抗値の取得を,
前記一方の端子部材が前記電池ケースの上面の長手方向の他端より上になるように前記電池ケースを傾斜させた状態で,
前記一方の端子部材と前記電池ケースとの間で行うことを特徴とする二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80652(P2013−80652A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220812(P2011−220812)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】