説明

二次電池及び二次電池の再利用方法

【課題】二次電池の内圧上昇を簡易に検出する。
【解決手段】二次電池10の蓋部14に、複数の薄肉部16a、16b、16cを設ける。それぞれの薄肉部16a、16b、16cは、初期状態では凹状態であり、二次電池10の内圧上昇に伴ってそれぞれ異なるしきい値で凹状態から凸状態に変化する。いずれの薄肉部16a、16b、16cが凸状態にあるかで、二次電池10を分解することなく内圧を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池及び二次電池の再利用方法に関し、特に二次電池の内圧検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池の内圧(電池のケース内部の気体による単位面積当たりの圧力)の上昇を検出する技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、正極板、負極板、セパレータ及び電解質からなる発電要素を収納した電池外装缶と、外装缶を封口した蓋とを備えた二次電池において、外装缶の側面に凹凸を形成するとともに、少なくとも凹部の一部に電池内圧の上昇により電池外装缶の体積変化を検出する歪みセンサを装着することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ダイヤフラム部とリードとを介して電池蓋と電池内部の発熱素子との間に導電路を形成し、電池ケースの内圧が所定値以上に上昇するとダイヤフラム部が変位し、このダイヤフラム部の変位でダイヤフラム部とリードとが離されて導電路が遮断されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−173676号公報
【特許文献2】特開2000−90960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、二次電池の内圧がしきい値以上に上昇したか否かを検出する、いわば2値的な検出にとどまり、二次電池の内圧の連続的は変化を視覚的に容易に把握することができない問題がある。
【0007】
特に、近年ではハイブリッド自動車や電気自動車に代表されるように、移動体に駆動用電力として二次電池で構成される組電池を搭載することが多くなっており、その結果としてユーザから回収した組電池を再利用可能な性能を有する組電池に再構成(リビルト)することに対する需要も高まっている。リビルトを効率的に行うためには、リビルトすべき二次電池の特性、劣化状況を確実に把握することが不可欠であり、二次電池の内圧履歴を把握しておくことは極めて重要である。
【0008】
本発明の目的は、二次電池を分解することなく、外形上の視認により容易に二次電池の内圧履歴を把握することができる技術、及びこれを用いた再利用技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、極板及び電解液を収容するケースと、前記ケースに形成され、それぞれが二次電池の内圧に対する異なる変形の度合いを示す少なくとも第1及び第2の変形部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記第1及び第2の変形部は、初期状態ではともに前記二次電池の内側方向に向かって凹状態をなし、前記二次電池の内圧の上昇に伴って前記凹状態から前記二次電池の外側方向に向かって凸状態をなすように変形し、かつ、前記第1及び第2の変形部は、前記凹状態から前記凸状態に変化するときの内圧しきい値が異なる。
【0011】
また、本発明は、二次電池の再利用方法であって、前記二次電池は、極板及び電解液を収容するケースと、前記ケースに形成され、それぞれが二次電池の内圧に対する異なる変形の度合いを示す少なくとも第1及び第2の変形部とを備えるものであり、少なくとも前記第1及び第2の変形部の変形の度合いに応じて二次電池をランク分けするステップと、前記ランク分けに応じて二次電池を再利用するステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二次電池を分解することなく、外見の視認のみで内圧を評価することができる。また、内圧を評価してランク分けすることで、二次電池の再利用が容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の二次電池の外観斜視図である。
【図2】実施形態の二次電池の平面図である。
【図3】実施形態の二次電池の蓋部の断面図である。
【図4】薄肉部の内圧と変形の度合いを示すグラフ図である。
【図5】内圧の上昇に伴う薄肉部の変形を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1に、本実施形態における二次電池10の外観斜視図を示す。また、図2に、二次電池10の平面図を示す。
【0016】
二次電池10は、極板群、電解液を収容し樹脂で一体成形された直方体形状の一体電槽12と、一体電槽12の開口を封止する樹脂性の蓋部14から構成される。極板群は、正極板、負極板、及びセパレータを積層した積層体から構成される。極板群は、正極集電板及び負極集電板に接合された状態で一体電槽12に収容される。図示していないが、一体電槽12の一端には正極外部端子が設けられ、他端に負極外部端子が設けられる。正極外部端子は、貫通孔を介して正極集電板に接続され、負極外部端子は、同様に貫通孔を介して負極集電板に接続される。本実施形態における一体電槽12と蓋部14とを併せてケースが構成される。
【0017】
二次電池10の蓋部14には、少なくとも2個以上の変形部としての薄肉部16が、二次電池10の長手方向に沿って略等間隔に形成される。薄肉部16は、蓋部16の厚さが他の部分よりも薄い部分であり、図2の平面図に示すように、その平面形状は円形状に形成される。薄肉部16は、図では二次電池10の長手方向に薄肉部16a、16b、16cの3個形成されており、初期状態ではこれらの薄肉部16a、16b、16cは、蓋部14の内側に陥没した凹状態をなす。
【0018】
図3に、蓋部14の断面図を示す。図から分かるように、薄肉部16a、16b、16cは、他の部分に比べて相対的に薄く、二次電池10の内側に向けて凹状態となっている。但し、薄肉部16a、16b、16cは同一ではなく、その厚さ、あるいはその大きさ、形状が互いに異なっている。すなわち、薄肉部16a、16b、16cは、いずれも二次電池の内側に向けて凹状態となっており、二次電池10の内圧が直接印加される状態にあるため、内圧の上昇に伴って薄肉部16a、16b、16cもそれぞれ内圧の影響を受けて変形するが、内圧に対する変形の度合いが異なり、より詳しくは変形する際の内圧のしきい値が互いに異なっている。
【0019】
図4に、本実施形態における二次電池10の内圧と薄肉部16の変形の関係を示す。図において、横軸は二次電池10の内圧Pである。また、縦軸は変形の状態を示し、マイナスは二次電池10の内側に向けて凹状態となっていることを示し、プラスは二次電池10の外側に向けて凸状態となっていることを示す。薄肉部16は、初期状態では変形状態はマイナス、すなわち凹状態であるが、内圧が上昇するに従って二次電池10の外部に向けて変形し、やがて凹状態から平坦状態を経て凸状態に至る。なお、一度凹状態から反転して凸状態となれば、一定以上の圧力がかからない限り、通常は凹状態に戻らない。
【0020】
薄肉部16aは、二次電池10の内圧が初期状態から上昇してPaとなった時点で凹状態から平坦状態となり、さらに内圧がPaを超えるとプラス、すなわち凸状態となって外見上、蓋部14の面から突出するようになる。
【0021】
薄肉部16bは、二次電池10の内圧が初期状態から上昇してPb(但し、Pb>Pa)となった時点で凹状態か平坦状態となり、さらに内圧がPbを超えるとプラス、すなわち凸状態となって外見上、蓋部14の面から突出するようになる。
【0022】
薄肉部16cは、二次電池10の内圧が初期状態から上昇してPc(但し、Pc>Pb)となった時点で凹状態から平坦となり、さらに内圧がPcを超えるとプラス、すなわち凸状態となって外見上、蓋部14の面から突出するようになる。
【0023】
このように、薄肉部16a、16b、16cは、凹状態から凸状態に遷移する内圧のしきい値がPa,Pb,Pcと互いに異なる。本実施形態の薄肉部10は、一旦凸状態となれば通常は凹状態に戻らないため、薄肉部16a、16b、16cの状態を視認することで、内圧が最も上昇したときの値(内圧履歴)を容易に把握することができる。
【0024】
すなわち、薄肉部16a、16b、16cのいずれも凹状態のままである場合、二次電池10の内圧はPa未満までしか達していないことになる。
【0025】
また、薄肉部16aのみが平坦で、薄肉部16b、16cが凹状態のままである場合、二次電池10の内圧はPaに達したことになる。
【0026】
また、薄肉部16aのみが凸状態で、薄肉部16b、16cが凹状態のままである場合、二次電池10の内圧は、Pa以上Pb未満に達したことになる。
【0027】
また、薄肉部16aが凸状態、薄肉部16bが平坦状態、薄肉部16cが凹状態である場合、二次電池10の内圧はPbに達したことになる。
【0028】
また、薄肉部16a、16bが凸状態、薄肉部16cが凹状態である場合、二次電池10の内圧はPb以上Pc未満に達したことになる。
【0029】
また、薄肉部16a、16bが凸状態、薄肉部16cが平坦状態である場合、二次電池10の内圧はPcに達したことになる。
【0030】
さらに、薄肉部16a、16b、16cのいずれも凸状態である場合、二次電池10の内圧はPcを超えたことになる。
【0031】
薄肉部16a、16b、16cの変形が凹状態から凸状態に遷移する内圧しきい値を変化させるためには、例えば薄肉部16a、16b、16cの厚さをそれぞれ変化させればよく、薄肉部16a、16b、16cの厚さをそれぞれta、tb、tcとすると、ta<tb<tcとする等である。但し、薄肉部16a、16b、16cは蓋部14に形成されるものであるから、蓋部14として機能し得る程度の厚さ及び強度を有する必要があることは言うまでもない。
【0032】
もちろん、薄肉部16の機械的強度にも限界があるから、二次電池10の内圧がある値を超えて上昇すると薄肉部16が破壊される事態も想定される。この場合においても、薄肉部16a、16b、16cの限界強度には相違があるから、薄肉部16a、16b、16cのうちいずれが破壊されたかを視認することで、二次電池10の内圧履歴を把握することができる。例えば、薄肉部16a、16b、16cのうち、薄肉部16aが破壊されている場合には、二次電池10の内圧が薄肉部16aの臨界内圧以上であって薄肉部16bの臨界内圧未満まで上昇したことを把握できる。なお、薄肉部16a、16b、16cの臨界内圧の中で一番小さい値は、内圧の上昇により一体電槽12の過度の膨張や破壊を防ぐため、過度の膨張や破壊が起きない範囲で設定することが望ましい。
【0033】
図5に、本実施形態における蓋部14に形成された薄肉部16a、16b、16cの状態と内圧との関係を模式的に示す。図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)の順に二次電池10の内圧が上昇することを示す。
【0034】
図5(a)は、二次電池10の内圧が最も低い状態であり、薄肉部16a、16b、16cのいずれも凹状態である。Pa=0.15(パスカル)、Pb=0.30(パスカル)、Pc=0.45(パスカル)であるとすると、二次電池10の内圧Pが、
P<0.15
まで達したことを意味する。
【0035】
図5(b)は、二次電池10の内圧が上昇した状態であり、薄肉部16aが凸状態となり、薄肉部16b、16cは凹状態のままである。二次電池10の内圧Pが、
0.15≦P<0.30
まで達したことを意味する。
【0036】
図5(c)は、二次電池10の内圧がさらに上昇した状態であり、薄肉部16a、16bが凸状態となり、薄肉部16cが凹状態のままである。二次電池10の内圧Pが、
0.30≦P<0.45
まで達したことを意味する。
【0037】
図5(d)は、二次電池10の内圧がさらに上昇した状態であり、薄肉部16a、16b、16cが全て凸状態となっている。二次電池10の内圧Pが、
0.45<P
まで達したことを意味する。
【0038】
図5(e)は、二次電池10の内圧がさらに上昇して、薄肉部16aが破断している状態である。薄肉部16aの臨界内圧、すなわち破断に至る内圧を0.5(パスカル)とすると、二次電池10の内圧Pが、
P>0.50
まで達したことを意味する。
【0039】
以上のように、薄肉部16a、16b、16cの外形状態を視認することで、二次電池10を分解することなく、二次電池10の内圧履歴を把握することができる。二次電池10の内圧は、種々の要因で上昇することが知られており、具体的には、
(1)二次電池10の充電状態(SOC)が高い場合
(2)車両に搭載した場合の回生電流が相対的に大きい場合
(3)周囲の気圧が小さい場合
(4)過放電の場合
等に内圧が上昇する。従って、内圧履歴が上昇している場合には、二次電池10はこれらのいずれかの履歴を有していると判断することができる。また、二次電池10の内圧は二次電池10の寿命とも密接に関係し、二次電池10の内圧履歴と寿命との間には負の相関がある、つまり、内圧が高いほど寿命が短いことが知られている。例えば、より過充電された二次電池の方が、過充電の程度が少ない二次電池より内圧が上昇し、寿命が短くなることが知られている。
【0040】
従って、本実施形態によって二次電池10の内圧を把握した後、当該二次電池10を再利用する際には、把握した内圧に応じてその二次電池10の寿命を評価することができる。
【0041】
例えば、一度利用した二次電池を用い、新たに複数の二次電池10からなる組電池を構成する場合において、二次電池10の寿命に応じてランクA〜ランクEの5段階にランク分けするとき、具体的には図5(a)の状態にある二次電池10は最も内圧が低く寿命も長いとしてランクA、図5(b)の状態にある二次電池10はその次に内圧が低く寿命も相対的に長いとしてランクBとし、図5(e)の状態にある二次電池10は最も寿命が短いとしてランクEにランク分けする。なお、図5(e)の状態は、薄肉部16aが破断しているため再利用を行わない。
【0042】
以上のようにしてランク分けした後、ランクAとランクされた二次電池10のみを集めて新たな組電池を構成する、あるいはランクAとランクBを同数ずつ集めて新たな組電池を構成する。
【0043】
本実施形態によれば、マーケットから回収した二次電池10を分解することなく、外見上の検査のみで、二次電池10の寿命に応じたランク分け、及びランク分けに応じた組電池の再構成が可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0045】
例えば、本実施形態では、3個の薄肉部16を設けているが、これに限定されるものではなく複数個の薄肉部16を設けることができる。また、その平面形状も円形に限らず、楕円、矩形等任意でよい。また、薄肉部の内圧に対する変形の度合いを調整するために、薄肉部に切れ込みをいれてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、基本的に一体電槽12内に1個の単電池(セル)が収容される場合を例示したが、一体電槽12内に複数の単電池が互いに隔壁を介して収容され、貫通孔を介して電気的に接続された電池モジュールにも同様に適用してもよい。この場合、複数の単電池毎にそれぞれ薄肉部16を設けることができる。例えば、6個の単電池を収容する電池モジュールの場合、6個の単電池のそれぞれに対応するように蓋部14に薄肉部16を合計6個形成する。なお、隣接する単電池間は、隔壁によりガスの移動が遮断されていてもよいし、連通孔等で連通していてもよい。隔壁によりガスの移動が遮断されている場合、それぞれの単電池は同じような使用状況にあるため内圧も略同等であると仮定して二次電池の内圧を推測してもよい。また、1つの単電池に対して複数の薄肉部を設けてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、蓋部14に薄肉部を設けたが、蓋部14以外に薄肉部を設けてもよい。また、上記実施形態では、変形部として薄肉部を用いているが、内圧により変形するものであれば薄肉部に限らない。例えば、変形し易い素材を用いることで変形するようにしてもよい。
【0048】
さらに、本実施形態では、二次電池10の内圧に応じてその状態が変化する部材として薄肉部16を設けているが、必ずしも薄肉に限定されるものではなく、蓋部14の樹脂と強度的に異なる樹脂で形成してもよい。また、上記実施形態では、薄肉部を一旦変形(凸状態となった)後に元(凹状態)に戻らないものとしているが、電池内圧が上がった後に下がった場合には、薄肉部が元に戻るようにしてもよい。これにより、二次電池の現状の内圧を知ることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 二次電池、12 一体電槽、14 蓋部、16 薄肉部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板及び電解液を収容するケースと、
前記ケースに形成され、それぞれが二次電池の内圧に対する異なる変形の度合いを示す少なくとも第1及び第2の変形部と、
を備えることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1記載の二次電池であって、
前記第1及び第2の変形部は、初期状態ではともに前記二次電池の内側方向に向かって凹状態をなし、前記二次電池の内圧の上昇に伴って前記凹状態から前記二次電池の外側方向に向かって凸状態をなすように変形し、かつ、
前記第1及び第2の変形部は、前記凹状態から前記凸状態に変化するときの内圧しきい値が異なる
ことを特徴とする二次電池。
【請求項3】
二次電池の再利用方法であって、
前記二次電池は、
極板及び電解液を収容するケースと、
前記ケースに形成され、それぞれが二次電池の内圧に対する異なる変形の度合いを示す少なくとも第1及び第2の変形部と、
を備えるものであり、
少なくとも前記第1及び第2の変形部の変形の度合いに応じて二次電池をランク分けするステップと、
前記ランク分けに応じて二次電池を再利用するステップと、
を備えることを特徴とする二次電池の再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−138295(P2012−138295A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290935(P2010−290935)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】