説明

二次電池用保護装置、二次電池装置、および二次電池

【課題】異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることが可能な組電池に適した二次電池用保護装置、二次電池装置、及び二次電池を提供する。
【解決手段】組電池1の単電池2毎に、単電池2が異常な状態となると溶断する遮断部12a・12bが設けられている。また、単電池2毎に、検査用スイッチング素子13と、放電回路16と単電池2との接続を可能とする放電用スイッチング素子14a・14bも設けられている。モニタリング装置15は、検査用スイッチング素子13を介して各単電池2を監視して、遮断部12a・12bが溶断した異常単電池を検出する。放電回路側スイッチングドライバ17は、異常単電池に接続された放電用スイッチング素子14a・14bをオンさせ、異常単電池と放電回路16とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を複数個組み合わせることで構成される組電池の保護に適した二次電池用保護装置、二次電池装置、および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池は、放電状態の電池を充電することにより繰り返し使用のできる電池であり、ノート型パソコンをはじめとするモバイル機器、ビデオカメラ等の電源として広く用いられている。
【0003】
このような二次電池は、機器に必要な電圧、パワーを取出すために、複数個が直列または並列に組み合わせて組電池として使用される場合が多い。以下、本明細書においては、二次電池1個のみを、組電池に対して単電池と称する。
【0004】
特許文献1には、単電池を並列に複数個接続した並列接続組であって、単電池の直列接続部分を含まない並列接続組を、直列に複数個接続して構成された組電池が記載されている。
【0005】
このような特許文献1の組電池では、単電池のうちの1個が異常単電池であっても、並列接続組内で正常単電池と並列接続されているので、並列接続組内の全単電池の開路電圧、内部抵抗、および放電容量などの電気特性はお互いに平均されて均一化されることとなり、電圧差および放電容量差は、充放電サイクルを開始する前も、充放電サイクル進行中も常にゼロとなる。そして、平均されたことで、この並列接続組は正常単電池のみから成る他の並列接続組よりも放電容量は低下するものの、この低下分は、異常単電池を含む単電池を直列に複数個接続した直列接続組の中で異常単電池の正常単電池に対する低下分よりも、異常単電池の過放電と過充電の深度を従来よりも浅くすることができる。放電容量の低下は、並列接続組内の並列に接続される単電池が多いほど少なくなる。
【0006】
その結果、異常単電池を含む並列接続組の充放電サイクル寿命を、従来の、複数の単電池が直列接続されてなる直列接続組において異常単電池を含む場合よりも著しく延ばすことができる。また。異常単電池が混在した場合でも、従来よりも組電池全体の充放電サイクル寿命を延ばすことができ、正常単電池のみで構成されている組電池の充放電サイクル寿命に接近させることができる。
【0007】
一方、従来、単電池、組電池を構成する二次電池用保護装置が種々提案されている。例えば、特許文献2には、複数個の単電池を直列あるいは並列に接続した組電池に、一つの電流ヒューズを直列接続し、この組電池と電流ヒューズとからなる直列回路に通電開閉部を並列に接続し、この通電開閉部を、電圧感応スイッチにて組電池の全体電圧Veが基準電圧以上の場合に閉じることで組電池から放電される短絡電流にて電流ヒューズを溶断させて組電池を充放電の通電回路から遮断し、組電池の再使用を不可能にする二次電池用保護装置が記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、複数個の単電池を直列接続した組電池の充放電経路に直列に介装された、その作動によって上記充放電経路を物理的に遮断する非復帰スイッチと、該非復帰スイッチの作動により充放電経路が遮断された組電池に並列接続されて該組電池の放電路を形成する放電用抵抗とを備え、組電池全体の端子間電圧が、所定電圧に達したときに非復帰スイッチを作動さて充放電経路を物理的に遮断すると共に、放電用抵抗を介する組電池の放電路を形成する二次電池用保護装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−241705号公報(1996年9月17日公開)
【特許文献2】特開2001−352666号公報(2001年12月21日公開)
【特許文献3】特開2001−126772号公報(2001年5月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された組電池、つまり、単電池を並列に複数個接続した並列接続組であって、単電池の直列接続部分を含まない並列接続組を、直列に複数個接続して構成された組電池は、異常単電池が含まれていても、それを含む並列接続組の充放電サイクル寿命を延ばすことができ、また。異常単電池が混在した場合でも、組電池全体の充放電サイクル寿命を延ばして、正常単電池のみで構成されている組電池の充放電サイクル寿命に接近させることができる。
【0011】
しかしながら、異常単電池は充放電経路に接続されたままであるので、この異常単電池が熱暴走などで異常発熱を起こした際、回りの正常単電池にも熱が伝わって、正常単電池までもが熱的に不安定となって熱暴走を引き起こす恐れがある。異常単電池が混在された状態でも安全に使い続けるには、異常単電池を充放電経路より電気的に切り離すと共に、異常単電池に蓄電されている不要な容量を除去することが望ましい。
【0012】
そこで、このような熱暴走の発生を防止して安全に使用するために、上記組電池に、特許文献2,3に記載されているような二次電池用保護装置を設けることが考えられる。
【0013】
しかしながら、特許文献2,3に記載されている二次電池用保護装置は、単電池の1つが異常になった場合に、組電池全体をその充放電経路より物理的に遮断するものであり、そもそも、異常単電池のみを充放電経路より断つ(電気的に切り離す)といった技術思想を有するものでさえない。
【0014】
そのため、異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることができる上記組電池に利用できるものではない。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることができる組電池に適した二次電池用保護装置、および該二次電池用保護装置と組電池とからなる二次電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の二次電池用保護装置は、上記の課題を解決するために、二次電池の単品である単電池を複数個並列に接続した並列接続組1つで構成される組電池、あるいは上記並列接続組を複数個直列に接続して構成される組電池の二次電池用保護装置であって、単電池毎に設けられた、単電池が異常な状態となると当該異常単電池における電気エネルギーを蓄積した電極板部と充放電経路との接続を電極板部の両極側において非復帰に遮断する遮断部と、各単電池の電極板部の両極と接続可能であり、接続された電極板部の放電路を形成する放電回路と、各単電池を監視して、上記遮断部にて電極板部と充放電経路との接続が遮断された異常単電池を検出する監視部と、上記監視部にて検出された異常単電池の電極板部の両極を上記放電回路と接続させる放電回路接続部とを備えることを特徴としている。
【0017】
上記構成において、上記遮断部は単電池外部に設けられていても、上記遮断部、及び上記電極板部に上記放電回路接続部を接続する接続部が、単電池内部に設けられていてもよい。
【0018】
上記構成では、監視部は、組電池の各単電池を常時監視している。このような中、ある単電池が異常な状態となって温度が上昇すると、単電池毎に設けられた、遮断部が、異常となった単電池の電極板部の両極側において、充放電経路との接続を非復帰に遮断する。監視部は、常時監視していることで、このような遮断部にて充放電経路より遮断された異常単電池を即刻検出することができる。放電回路接続部は、監視部が検出した異常単電池の電極板部を放電回路と接続させて、異常単電池の電極板部に蓄積されている不要な容量(不要な電気エネルギー)を除去する。
【0019】
これにより、組電池の中の異常な状態となった異常単電池のみを充放電経路より電気的に切り離し、かつ、この異常単電池に蓄積されている不要な容量を速やかに除去することができる。
【0020】
このような異常単電池への対処手法によれば、組電池の残りの正常な単電池は、充放電経路に接続されたままであり、かつ、異常単電池が異常発熱することもないので熱的にも安定しており、組電池は残りの正常単電池で使い続けることが可能となる。
【0021】
つまり、本発明の二次電池用保護装置は、異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることができる組電池に適用可能な構成である。
【0022】
これにより、本発明の二次電池用保護装置を用いることで、異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることができる組電池を、熱暴走などの危険を伴うことなく、安全に使い続けることが可能となる。
【0023】
本発明の二次電池用保護装置において、上記遮断部は、単電池の電極板部の両極に配された、単電池が異常な状態となって温度が上昇すると溶断するPTC素子とすることができる。
【0024】
設定温度で溶断するPTC素子を用いることで、上記遮断部を容易に実現することができる。
【0025】
本発明の二次電池用保護装置において、上記監視部は、単電池毎に設けられた、各単電池より充放電経路に流れる信号を検出する検査用スイッチング素子と、上記各検査用スイッチング素子を駆動し、各検査用スイッチング素子にて検出された信号が入力される監視回路とを有しており、上記検査用スイッチング素子は、電極板部から見て上記遮断部よりも遠い側に接続され、上記監視回路は、各検査用スイッチング素子から入力される信号に基づいて異常単電池を検出する構成とすることができる。
【0026】
単電池毎に設けられた、各単電池より充放電経路に流れる信号を検出する検査用スイッチング素子は、電極板部から見て上記遮断部よりも遠い側に接続されている。したがって、遮断部にて電極板部と充放電経路とが遮断されて、充放電経路に電流が流れなくなった場合、充放電経路に流れる信号よりこれを検出できる。監視回路は、各検査用スイッチング素子を駆動して充放電経路に流れる信号を順次サンプリングし、サンプリングした信号を基に、異常単電池を検出する。このような構成とすることで、上記した各単電池を常時監視する監視部を容易に実現することができる。
【0027】
本発明の二次電池用保護装置において、上記放電回路接続部は、単電池毎に設けられた、電極板部の両極を上記遮断部よりも電極板部に近い側で上記放電回路と選択的に接続させる放電用スイッチング素子と、上記各放電用スイッチング素子を駆動するドライバであって、監視部にて検出された異常単電池に接続された上記放電用スイッチング素子を駆動して当該異常単電池の電極板部と上記放電回路とを接続させるドライバ回路とを有している構成とすることができる。
【0028】
単電池毎に設けられた、放電用スイッチング素子は、電極板部の両極を上記遮断部よりも電極板部に近い側で上記放電回路と選択的に接続させるものである。つまり、遮断部にて充放電経路より遮断された電極板部を放電回路と接続することができる。放電用スイッチング素子を駆動するドライバ回路は、監視部にて検出された異常単電池に接続された上記放電用スイッチング素子を駆動して当該異常単電池の電極板部と放電回路とを接続させる。これにより、異常単電池の電極板部に残留する不要な容量が除去される。このような構成とすることで、上記した異常単電池を放電回路に接続する放電回路接続部を容易に実現することができる。
【0029】
本発明の二次電池装置は、上記した本発明の二次電池用保護装置と、二次電池の単品である単電池を複数個並列に接続した並列接続組1つで構成される組電池、あるいは上記並列接続組を複数個直列に接続して構成される組電池とを備えることを特徴としている。
【0030】
既に、二次電池用保護装置の説明として記載したように、本発明の二次電池装置は、異常単電池を保有しながらも、熱暴走などの危険を伴うことなく、安全に、正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることが可能となる。
【0031】
本発明の二次電池は、電極ケース内に、電気エネルギーを蓄積した電極板部を有し、上記電極板部の正極及び負極と接続された、上記電極板部を充放電経路と接続するための外部端子が電池ケースに設けられている二次電池において、電池ケース内に、当該二次電池が異常な状態となると、上記電極板部と上記外部端子との接続を、上記電極板部の両極側において非復帰に遮断する遮断部が設けられ、かつ、電池ケースに、上記電極板部の正極及び負極と接続された第2の外部端子を有することを特徴としている。
【0032】
上述したように、本発明の二次電池用保護装置においては、遮断部は、二次電池単体である単電池の外部に設けられていても、電池内部に設けられていてもよい。遮断部が単電池内部に設けられた場合は、電極板部を放電回路接続部に接続する接続部も、単電池内部に設けられることとなる。
【0033】
本発明の二次電池は、電池ケース内に遮断部が設けられている構成において、電池ケースに、電極板部の正極及び負極と接続された第2の外部端子が設けられている構成であるので、この第2の外部端子を使って、電極板部を放電回路接続部と接続することが可能となり、本発明の二次電池用保護装置を適用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の二次電池用保護装置は、異常単電池を保有しながらも正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることができる組電池を、熱暴走などの危険を伴うことなく、安全に使い続けることを可能とし、このような二次電池用保護装置を備えた本発明の二次電池装置は、異常単電池を保有しながらも、熱暴走などの危険を伴うことなく、安全に、正常単電池のみで構成されている組電池に近接した性能で使い続けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の一形態である二次電池用保護装置、二次電池装置の回路ブロック図である。
【図2】上記二次電池用保護装置が保護し、上記二次電池装置が備える組電池の例を示す説明図である。
【図3】上記二次電池用保護装置が保護し、上記二次電池装置が備える組電池の別の例を示す説明図である。
【図4】上記二次電池用保護装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】上記実施形態の変形例を示すもの、上記二次電池用保護装置が、複数の並列ユニットにおいて、モニタリング装置、放電回路側スイッチングドライバ、放電回路を共用して構成されている二次電池用保護装置、二次電池装置の回路ブロック図である。
【図6】上記二次電池用保護装置を備えた二次電池装置において、単電池1つが異常となった場合の損失容量を説明する図面である。
【図7】参考例の二次電池用保護装置を備えた二次電池装置において、単電池1つが異常となった場合の損失容量を説明する図面である。
【図8】上記二次電池用保護装置における単電池と放電回路との接続例を示す模式図である。
【図9】本発明の他の実施の形態である二次電池用保護装置における単電池と放電回路との接続例を示す模式図である。
【図10】本発明の実施のその他の形態である二次電池用保護装置、二次電池装置の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の一形態について、図1〜図7を用いて、以下詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態である二次電池用保護装置10、二次電池装置100の回路ブロック図である。二次電池用保護装置10は、二次電池の単品である単電池2を複数個並列に接続した並列ユニット(並列接続組)3を複数個、直列に接続して構成される組電池1に適した二次電池用保護装置である。
【0038】
図1は、組電池1を構成する1つの並列ユニット3に設けられた二次電池用保護装置10について記載している。実際には、組電池1は、例えば図2に示すように、並列ユニット3が複数個直接に接続されていたり、図3に示すように、並列ユニット3が複数個直接に接続されてなる並列ユニット直列体4が、複数個並列接続されていたりする。
【0039】
組電池1においては、並列ユニット3内の並列接続される単電池2の数、直列接続される並列ユニット3の数、および並列接続される並列ユニット直列体4の数は何れも任意であり、搭載される機器に応じて、組電池1に必要とされる電圧、パワーを基に決まる。なお、組電池1は、並列ユニット3を1つのみ備える構成であってもよい。
【0040】
二次電池用保護装置20は、このような組電池1を構成する各並列ユニット3に対してそれぞれ設けられる。また、本実施形態に二次電池装置100は、二次電池用保護装置10と上記組電池1とを備えた構成である。
【0041】
再び図1に戻り、二次電池用保護装置10の構成について説明する。図1に示すように、二次電池用保護装置10は、遮断部12a・12bと、検査用スイッチング素子13と、モニタリング装置(監視回路)15と、放電用スイッチング素子14a・14bと、放電回路16と、放電回路側スイッチングドライバ17とを備えている。
【0042】
これらのうち、遮断部12a・12bと、検査用スイッチング素子13と、放電用スイッチング素子14a・14bとは、並列ユニット3内に含まれる単電池2毎に設けられている。
【0043】
各単電池2に設けられた一対の遮断部12a・12bは、それぞれの単電池2が異常な状態となると、当該単電池2と充放電経路11(図中、太線にて記載)との接続を当該単電池2の両極側において非復帰に遮断するものである。
【0044】
遮断部12a・12bは、例えば、単電池2の正極側、負極側にそれぞれ配置されたPTC素子にて構成することができる。単電池2を挟んで対をなすPTC素子は、当該単電池2に異常が発生し、当該単電池の温度が異常に上昇すると溶断する。PTC素子は、温度が上昇すると抵抗値が増して電流が流れにくくなる素子であり、ここでは、融点の低い素子が用いられており、融点を超えると溶断して非導通となる。
【0045】
なお、遮断部12a・12bは、正常時の充放電経路11への通電に影響がなく、単電池2の異常時に、充放電経路11と異常な単電池2との電気的な接続を非復帰に遮断できるものであればよい。
【0046】
また、本実施形態では、遮断部部12a・12bは、単電池2の外部に設けられている構成としているが、後述するように、単電池2の内部、つまり、単電池2の電池ケース内部に設けることもできる。要するに、遮断部部12a・12bは、異常な状態となった単電池2の電気エネルギーを蓄積した電極板部と充放電経路11との接続を遮断するものである。
【0047】
各単電池2の充放電経路11に接続された検査用スイッチング素子13は、各単電池2より充放電経路11に流れる信号を検出するものである。各検査用スイッチング素子13のベース(ゲート)は、独立してモニタリング装置15に接続されており、各単電池2を選択的にモニタリング装置15に接続することを可能とするものである。
【0048】
このような検査用スイッチング素子13は、単電池2からみて、上記遮断部12aよりも遠い側に配されている。検査用スイッチング素子13としては、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等、種々のスイッチング素子を利用できる。
【0049】
モニタリング装置15は、各検査用スイッチング素子13をそれぞれ独立して駆動し、各検査用スイッチング素子13にて検出された信号に基づいて異常単電池を検出するものである。モニタリング装置15は、各検査用スイッチング素子13をマトリクスにオン・オフを繰り返し、オン時に入力される各検査用スイッチング素子13からの信号に基づいて、異常な状態となった単電池2を検出する。
【0050】
異常な状態となった単電池2(詳細にはその電極板部)は、遮断部12a・12bにて充放電経路11より遮断されるので、このような遮断された単電池2に対応する検査用スイッチング素子13からの出力信号は、充放電経路11と接続されている他の正常な単電池2とは異なる。このような違いを、モニタリング装置15は検出する。モニタリング装置15にて検出された異常な状態となった単電池2の情報は、後述する放電回路側スイッチングドライバ17へと出力される。
【0051】
各単電池に設けられた検査用スイッチング素子13と、モニタリング装置15とで、各単電池2を監視して、遮断部12a・12bにて充放電経路11が遮断された異常な状態となった単電池を検出する監視部が構成される。監視部は、各単電池2を常時監視する。なお、図1においては、検査用スイッチング素子13は、遮断部12aを介して単電池2の正極側に配置されているが、遮断部12bを介して検査用スイッチング素子13を単電池2の負極側に設けることもできる。
【0052】
各単電池2に設けられた、一対の放電用スイッチング素子14a・14bは、各対毎にベース(ゲート)が独立して放電用回路側スイッチングドライバ17に接続されており、単電池2を選択的に放電回路16に接続することを可能とするものである。放電用回路側スイッチングドライバ17によって、異常となった単電池2の両局側に設けられた放電用スイッチング素子14a・14bがオンされることで、異常となった単電池2(詳細にはその電極板部)が放電回路16に接続される。
【0053】
このような放電用スイッチング素子14a・14bは、単電池2の正極側、負極側であって、かつ、上記遮断部12a・12bよりも単電池2に近い側に接続されている。放電用スイッチング素子14a・14bの接続位置を、遮断部12a・12bよりも単電池2に近い側とすることで、遮断部12a・12bにて充放電経路11が遮断された単電池2を放電回路16と接続できる。
【0054】
なお、上述したように、遮断部12a・12bは、単電池2の内部に設けることができるので、このような場合は、放電用スイッチング素子14a・14bは、遮断部12a・12bよりも電極板部に近い側に接続されることとなる。
【0055】
放電用スイッチング素子14a・14bとしては、検査用スイッチング素子13と同様に、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等、種々のスイッチング素子を利用できる。
【0056】
このような各単電池2に設けられた放電用スイッチング素子14a・14bのオン/オフ駆動は、放電回路側スイッチングドライバ(ドライバ回路)17にて行われる。放電回路側スイッチングドライバ17には、上述したように、モニタリング装置15にて検出された異常な状態となった単電池2の情報が入力されている。放電回路側スイッチングドライバ17は、モニタリング装置15から通知された情報を基に、異常な状態となった単電池2に接続されている放電用スイッチング素子14a・14bをオン駆動する。これにより、異常な状態となった単電池2が放電回路16と接続される。
【0057】
各単電池に設けられた一対の放電用スイッチング素子14a・14bと、放電回路側スイッチングドライバ17とで、上記監視部にて検出された異常な状態となった単電池2を放電回路16に接続させる放電回路接続部が構成される。
【0058】
放電回路16は、各単電池2と選択的に接続され、接続された単電池2の放電路を形成するものであり、放電用抵抗等からなり、アース電位に接続されている。
【0059】
次に、上記二次電池用保護装置20にける動作を、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
二次電池用保護装置20におけるモニタリング装置15は、当該組電池1の充電中も放電中も、各単電池2に設けられた検査用スイッチング素子13からの出力信号をモニタリングすることで、常時、各単電池2の状態を監視している(S1)。
【0061】
このような監視の中、複数ある単電池2のうちの1つ(複数の場合もある)の単電池2が異常な状態となってその温度が上昇し(S2)、その単電池2の両極に配置された遮断部12a・12bが溶断されると、モニタリング装置15は、検査用スイッチング素子13からの出力信号より溶断を検知する(S3、S4)。
【0062】
モニタリング装置15は、溶断を検知した、異常な状態となった単電池2の情報(位置情報)を、放電回路側スイッチングドライバ17に通知する(S5)。放電回路側スイッチングドライバ17は、モニタリング装置15からの通知を受け、異常な状態となった単電池2に接続されている放電用スイッチング素子14a・14bをオン駆動して開放する(S6)。
【0063】
放電用スイッチング素子14a・14bが開放され、異常な状態となった単電池2が放電回路16と接続されることで、異常な状態となった単電池2よりそれに蓄電されていた不要な容量が、放電回路16を介して放電され除去される(S7)。これにより、異常な状態となった単電池2は熱的に安定化される(S8)。
【0064】
このように、二次電池用保護装置10においては、組電池1を構成する複数の単電池のなかで、温度が上昇し出した異常な単電池2があると、遮断部12a・12bの溶断温度を超えた時点で充放電経路11より切り離し、かつ、この切り離しをモニタリング装置15がすばやく検知して、放電回路側スイッチングドライバ17に通知し、放電回路16と接続させて放電させる。
【0065】
このような異常な単電池2への対処手法によれば、組電池1の残りの正常な単電池2は、充放電経路11に接続されたままであり、かつ、異常な単電池2が異常発熱することもないので熱的にも安定しており、組電池1は残りの正常な単電池2で使い続けることが可能となる。
【0066】
なお、このような二次電池用保護装置10は、図1に示すような並列ユニット3毎に設けられる構成に限らず、例えば図5のように、複数の並列ユニット3において、モニタリング装置15’、放電回路側スイッチングドライバ17’、放電回路16’を共用して構成することもできる。
【0067】
次いで、図6、図7を用いて、本実施形態の二次電池用保護装置10の優位性について説明する。図6は、単電池2を5個並列に接続した並列ユニット3を3個直列に接続して構成される組電池1の各並列ユニット3に、上記二次電池用保護装置10を設けた、実施例の二次電池装置101において、単電池1つが異常となった場合の損失容量を説明する図面である。
【0068】
一方、図7は、同じく、単電池2を5個並列に接続した並列ユニット3を3個直列に接続して構成される組電池1の各並列ユニット3に、従来の特許文献2,3よりヒントを得た参考例の二次電池用保護装置300を設けた、参考例の二次電池装置301において、単電池1つが異常となった場合の損失容量を説明する図面である。参考例の二次電池用保護装置300は、単電池2が異常な状態となると、その単電池2Aを含む並列ユニット3を、ユニット単位で遮断するものである。
【0069】
なお、図6,7においては、便宜上、1段目の並列ユニット3にのみ二次電池用保護装置10あるいは二次電池用保護装置300を設けているように記載しているが、二次電池用保護装置10あるいは二次電池用保護装置300は、各並列ユニット3に設けられている。
【0070】
単電池2の1時間あたりの電流量は1Ahとすると、2つの二次電池装置101、二次電池装置301も、すべての単電池2が正常に機能している場合のトータル容量は、1Ah×15個分の15Ahとなる。
【0071】
このような2つの二次電池装置101、二次電池装置301において、1つの単電池2に異常が発生した場合の容量ロスを算出すると以下のとおりとなる。
【0072】
実施例の二次電池装置101では、3つの並列ユニット3における1つの並列ユニット3に含まれる1つの単電池2Aのみが切り離されるので、パワーの損失は単電池1個分のみの1Ahとなる。つまり、単電池2が1つ異常となった後も、14Ahで正常に使用できる。
【0073】
これに対し、参考例の二次電池装置301では、異常な単電池2Aを含む並列ユニット3が切り離されるので、残る並列ユニット3は2つとなる。パワーの損失も、並列ユニット1個分、つまり、単電池5個分の5Ahとなる。したがって、単電池2が1つ異常となっただけで、パワーは10Ahまで低下してしまう。
【0074】
15Ahで駆動する機器において、14Ahであれば支障なく駆動するが、10Ahまで定価すると駆動できなくなることが容易に想定できる。
【0075】
以上のように、二次電池用保護装置10によれば、組電池1の中の異常な状態となった単電池2のみを充放電経路11より電気的に切り離し、かつ、この異常な単電池2に蓄積されている不要な容量を速やかに除去することができる。このような異常な単電池2への対処手法によれば、組電池1の残りの正常な単電池2は、充放電経路11に接続されたままであり、かつ、異常な単電池2が異常発熱することもないので熱的にも安定しており、組電池1は残りの正常な単電池2で、熱暴走などの危険を伴うことなく、安全に使い続けることが可能となる。
〔実施の形態2〕
以下、本発明の実施のその他の形態について、図8〜10を用いて、以下詳細に説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
上述したように、二次電池用保護装置10において、遮断部12a・12bは、単電池2の内部、つまり、単電池2の電池ケース内部に設けることもできる。本実施形態では、遮断部12a・12bが電池内部に設けられている構成について説明する。
【0077】
図8は、実施の形態1で説明した、遮断部12a・12bが電池外部にある場合の、単電池2と放電回路16との接続例を示す模式図である。単電池2は、電池ケース21内部に電気エネルギーを蓄積した電極板部22を有しており、その正極および負極が、導電体からなる引出タブ23・23を介して、電池ケース21に設けられた、正極および負極の各外部端子(第1の外部端子)24a・24bに接続されている。
【0078】
遮断部12a・12bは、単電池2の外部に設けられており、遮断部12a・12bと単電池2の正極、負極の外部端子24a・24bとの間に、放電用スイッチング素子14a・14bが接続されている。
【0079】
これにおいて、単電池2が異常な温度となって、遮断部12a・12bが溶断されると、放電用スイッチング素子14a・14bがオンされて、単電池2の正極および負極の各外部端子24a・24bと放電回路16とが接続される。
【0080】
一方、図9に、遮断部12a・12bが電池内部にある場合の、単電池20と放電回路16との接続例を示す。単電池20においては、電池ケース21内部に遮断部12a・12bが設けられている。詳細には、電極板部22の正極および負極に接続された引出タブ23・23と、電池ケース21に設けられた正極および負極の各外部端子24a・24bとの間に、遮断部12a・12bが設けられている。
【0081】
そして、電池ケース21には、充放電経路11(図10参照)に接続される正極および負極の各外部端子24a・24bとは別に、引出タブ23・23と接続された、正極および負極の各第2の外部端子25a・25bが設けられている。放電用スイッチング素子14a・14bは、正極および負極の各第2の外部端子25a・25bに接続されている。
【0082】
これにおいて、単電池20が異常な温度となって、遮断部12a・12bが溶断されると、放電用スイッチング素子14a・14bがオンされて、電極板部22と放電回路16とが接続される。
【0083】
なお、図8、図9においては、正極および負極の各外部端子(第1の外部端子)24a・24b、正極および負極の各第2の外部端子25a・25b、及び電池ケース22との間に設けられる絶縁体等の構成は省略している。
【0084】
また、図9において、正極および負極の各第2の外部端子25a・25bは、電池の周面(側面)に設けられているように記載しているが、図9はあくまで模式図であり、形成位置を特定するものではない。実際には、正極および負極の各外部端子(第1の外部端子)24a・24bが設けられている面と同じ面に設けることが好ましい。
【0085】
図10は、単電池2に代えて、このような遮断部12a・12bを電池内部に有し、第2の外部端子25a・25bが設けられた単電池20を備えた構成の二次電池装置200の回路ブロック図である。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 組電池
2 単電池(二次電池)
3 並列ユニット(並列接続組)
4 並列ユニット直列体
10 二次電池用保護装置
11 充放電経路
12a・12b 遮断部
13 検査用スイッチング素子
14a・14b 放電用スイッチング素子
15・15’ モニタリング装置(監視回路)
16・16’ 放電回路
17・17’ 放電回路側スイッチングドライバ(ドライバ回路)
20 単電池(二次電池)
21 電池ケース
22 電極板部
24 a・24b 外部端子(第1の外部端子)
25 a・25b 第2の外部端子
100 二次電池装置
101 二次電池装置
200 二次電池装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の単品である単電池を複数個並列に接続した並列接続組1つで構成される組電池、あるいは上記並列接続組を複数個直列に接続して構成される組電池の二次電池用保護装置であって、
単電池毎に設けられた、単電池が異常な状態となると当該異常単電池における電気エネルギーを蓄積した電極板部と充放電経路との接続を電極板部の両極側において非復帰に遮断する遮断部と、
各単電池の電極板部の両極と接続可能であり、接続された電極板部の放電路を形成する放電回路と、
各単電池を監視して、上記遮断部にて電極板部と充放電経路との接続が遮断された異常単電池を検出する監視部と、
上記監視部にて検出された異常単電池の電極板部の両極を上記放電回路と接続させる放電回路接続部とを備えることを特徴とする二次電池用保護装置。
【請求項2】
上記遮断部は、単電池の電極板部の両極に配された、単電池が異常な状態となって温度が上昇すると溶断するPTC素子であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用保護装置。
【請求項3】
上記監視部は、
単電池毎に設けられた、各単電池より充放電経路に流れる信号を検出する検査用スイッチング素子と、
上記各検査用スイッチング素子を駆動し、各検査用スイッチング素子にて検出された信号が入力される監視回路とを有しており、
上記検査用スイッチング素子は、電極板部から見て上記遮断部よりも遠い側に接続されており、
上記監視回路は、各検査用スイッチング素子から入力される信号に基づいて異常単電池を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池用保護装置。
【請求項4】
上記放電回路接続部は、
単電池毎に設けられた、電極板部の両極を上記遮断部よりも電極板部に近い側で上記放電回路と選択的に接続させる放電用スイッチング素子と、
上記各放電用スイッチング素子を駆動するドライバであって、監視部にて検出された異常単電池に接続された上記放電用スイッチング素子を駆動して当該異常単電池の電極板部と上記放電回路とを接続させるドライバ回路とを有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の二次電池用保護装置。
【請求項5】
上記遮断部は単電池外部に設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池用保護装置。
【請求項6】
上記遮断部、及び上記電極板部に上記放電回路接続部を接続する接続部が、単電池内部に設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池用保護装置。
【請求項7】
二次電池の単品である単電池を複数個並列に接続した並列接続組1つで構成される組電池、あるいは上記並列接続組を複数個直列に接続して構成される組電池と、
上記請求項1〜6の何れか1項に記載の二次電池用保護装置とを備えたことを特徴とする二次電池装置。
【請求項8】
電極ケース内に、電気エネルギーを蓄積した電極板部を有し、上記電極板部の正極及び負極と接続された、上記電極板部を充放電経路と接続するための第1の外部端子が電池ケースに設けられている二次電池において、
電池ケース内に、当該二次電池が異常な状態となると、上記電極板部と上記外部端子との接続を、上記電極板部の両極側において非復帰に遮断する遮断部が設けられ、
かつ、電池ケースに、上記電極板部の正極及び負極と接続された第2の外部端子を有することを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−182890(P2012−182890A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43129(P2011−43129)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】