説明

二次電池用正極活物質、この製造方法、およびこれを含むリチウム二次電池

【課題】本発明の一実施形態は、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有する炭素シート、および前記炭素シートの表面に位置したオリビン系化合物粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【解決手段】前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層される。前記オリビン系化合物粒子は、LiPOで表示される化合物を含む。前記LiPOにおいて、0<x≦2、0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質とその製造方法、および前記リチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、先端電子産業の発達によって電子装備の少量化および軽量化が可能になることに伴い、携帯用電子機器の使用が増大している。このような携帯用電子機器の電源として高いエネルギー密度を有する電池の必要性が増大し、リチウム二次電池の研究が活発に行われている。
【0003】
リチウム二次電池は、可逆的にリチウムイオンの挿入および脱離が可能な物質を正極および負極として用い、前記正極と負極の間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造し、リチウムイオンが正極および負極から挿入/脱離するときの酸化還元反応によって電気エネルギーを生成する。
【0004】
リチウム二次電池の負極活物質としてはリチウム金属を用いていたが、リチウム金属を用いる場合には、デンドライト(dendrite)の形成による電池短絡によって爆発の危険性があるため、リチウム金属の代わりに非晶質炭素または結晶質炭素などの炭素系物質に代替される趨勢にある。特に、最近では、炭素系物質の容量を増加させるために、炭素系物質にホウ素を添加してボロンコーティングされたグラファイト(BOC)を製造している。
【0005】
正極活物質としてはカルコゲナイド(chalcogenide)化合物が用いられているが、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi1−xCo(0<x<1)、LiMnOなどの複合金属酸化物が研究されている。前記正極活物質のうちでLiMn、LiMnOなどのMn系の正極活物質は、合成が容易で価格も比較的安く、環境に対する汚染も少ないため魅力的な物質ではあるが、容量が小さいという短所がある。LiCoOは良好な電気伝導度と高い電池電圧、さらには優れた電極特性を示し、現在はSony社などで商用化され市販されている代表的な正極活物質ではあるが、価格が高いという短所がある。LiNiOは、上述した正極活物質のうちで最も価格が安く、最も高い放電容量の電池特性を示すが、合成が困難であるという短所がある。
【0006】
これにより、リチウム二次電池用正極活物質に対する研究は、LiCoOを代替し、4.2V以上の高充電電圧において安定であり、高エネルギー密度と優れた寿命特性をすべて備えた物質を探索する方向に進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許第0539341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、伝導性が向上したリチウム二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の実施形態は、上述したリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを他の目的とする。
【0010】
また、本発明のさらに他の実施形態は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態において、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有する炭素シート、および前記炭素シートの表面に位置したオリビン系化合物粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質が提供される。前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層される。前記オリビン系化合物粒子は、下記化学式(1)で表示される化合物を含む。
LiPO・・・(1)
【0012】
前記式において、0<x≦2、0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0013】
前記炭素シートと前記オリビン系化合物粒子が、少なくとも1つの格子面を共有してもよい。
【0014】
前記正極活物質は、正極活物質全体のうちで約1質量%〜約15質量%の炭素シートを含んでもよい。
【0015】
前記Mは具体的に、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0016】
前記炭素シートが板状(plate)の形態であってもよい。
【0017】
前記多環ナノシートが、約0.846nm〜約1.154nmの厚さを有してもよい。
【0018】
本発明の他の実施形態において、前記正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池が提供される。
【0019】
前記正極の集電体はAlであってもよい。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態において、炭素シート、およびLi原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうちの少なくとも1つを溶媒と混合して混合溶液を準備する段階と、液相法によって前記炭素シートの表面にオリビン系化合物粒子のシード(seed)を成長させる段階と、前記オリビン系化合物粒子のシードを還元雰囲気下で熱処理してオリビン系化合物粒子を形成する段階とを含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。前記炭素シートは、前記炭素原子は、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有し、前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層される。前記オリビン系化合物粒子は、下記化学式(1)で表示される化合物を含む。
LiPO・・・(1)
【0021】
前記式において、0<x≦2、0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0022】
前記液相法は、沈殿法、加水分解法、溶媒蒸発法、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、共沈殿法(co−precipitation method)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0023】
前記オリビン系化合物粒子を熱処理する段階は、約400〜約800℃の温度で還元雰囲気下で実行されてもよい。
【0024】
前記オリビン系化合物粒子のシードと前記オリビン系化合物を生成するための残りの原料物質を添加した混合物を熱処理するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
前記リチウム二次電池は、正極活物質の電気伝導度を向上させ、電池容量特性を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るスーパー導電性ナノ粒子を概略的に示す図である。
【図2】図1のうち、Tで表示された点線円部分を分子水準で拡大した概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るリチウム二次電池の一般的な構造を示す概略図である。
【図4】実施例1に係る正極活物質の倍率別SEM写真である。
【図5】実施例1に係る正極活物質の倍率別SEM写真である。
【図6】実施例1に係る正極活物質の倍率別SEM写真である。
【図7】実施例1に係る電池の充放電グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用正極活物質は、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有する炭素シート、および前記炭素シートの表面に位置したオリビン系化合物粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0029】
前記六角形環は6個の炭素原子を含み、前記複数の六角形環は縮合して一平面上に配列され、前記多環ナノシートは前記六角形環を含む平面に垂直方向に積層される。
【0030】
前記オリビン系化合物は、前記炭素シートの格子面でその核が生成されて形成されたものであって、前記炭素シートと前記オリビン系化合物粒子は少なくとも1つの格子面を共有する。前記格子面とは、直線上にない3個の格子点を通過する平面を意味する。このように、前記炭素シートと前記オリビン系化合物粒子は、少なくとも1つの格子面を共有することによってより安定的であり、強い結合によって連結することができる。前記リチウム二次電池用正極活物質がこのような結合を形成することができるのは、オリビン系化合物粒子の核形成時に炭素シートの界面エネルギーを利用することができるためである。
【0031】
図1は、前記炭素シート10の概略図である。前記炭素シート10は、不規則な形態を有してもよいが、基本的に板状(plate)の形態を有する。前記炭素シート10の形態は板状を基本とするが、歪曲したり末端部が巻かれているなど、多様な変形形態を有してもよい。
【0032】
本明細書のうち「6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環」という用語は、六角形環であって、前記六角形の各頂点には炭素が位置した環を意味するものである。以下、略語として「六員(6−membered)炭素環」ともする。
【0033】
前記多環ナノシートは、複数の六員炭素環を有するが、前記複数の六員炭素環は互いに縮合して(fused)ハニカム形態を形成し、実質的に一平面上に配列されている。ここで「実質的に一平面上に配列されている」というのは、複数の六員炭素環が互いに縮合して配列および延長して実質的に一平面上に配列されることを意味し、垂直方向に縮合して配列および延長する場合は排除される。「6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環が互いに縮合して一平面上に配列された形状」は、図1のうち、Tで表示された点線サークル部分を分子水準に拡大した図2を参照すれば、より容易に理解することができる。図2によれば、前記複数の六員炭素環は互いに縮合しており、六員炭素環の間には別途の空間がなくハニカム状を形成しているが、これは左右方向に配列および延長している。図2のうち、各六員炭素環の頂点には炭素が存在するが、これは当業者が容易に理解することができる。
【0034】
前記多環ナノシートの炭素のうち、隣接した炭素は、互いにsp結合によって連結してもよい。したがって、前記六員炭素環内の共振構造(resonance)が形成されるようになり、電子の移動がより容易になる。
【0035】
前記多環ナノシートは、複数の六員炭素環が互いに縮合して一平面上に配列された構造を有するため、例えば、前記多環ナノシートの厚さは、約0.846nm〜約1.154nmの厚さを有してもよい。ここで、前記多環ナノシートの厚さが炭素原子粒径の厚さから若干逸脱した範囲の厚さを有することができるのは、前記多環ナノシートが歪曲したり末端部が巻かれた形態を有することがあり、部分的に欠損する場合があるためである。
【0036】
前記炭素シート10は、上述したような多環ナノシートn個が積層した構造を有する。ここで、前記n個の多環ナノシートは、前記多環ナノシートの複数の六員炭素環が互いに縮合して配列されている一平面に対して垂直方向に積層される。前記nは1〜200の整数である。
【0037】
前記炭素シートは、その構造によって電気伝導度が非常に優れているが、このように電気伝導度が優れた炭素シートを含む前記リチウム二次電池用正極活物質も電気伝導度が非常に優れている。さらに、前記炭素シートは比較的低い密度を有するため、密度が大きい場合の他の物質に対比して表面積がより大きい。これは、オリビン系化合物粒子との接触面積がより大きくなるということを意味するものであり、電気伝導度をさらに向上させる効果を付与できるようになる。
【0038】
前記オリビン系化合物粒子は、下記化学式(1)の化合物を含んでもよい。
LiPO・・・(1)
【0039】
前記化学式(1)において、xは0<x≦2であり、zは0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。前記Mは、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0040】
前記正極活物質は、約1質量%〜約15質量%含有量の前記炭素シートを含んでもよい。前記範囲内において、炭素シートの電導度に応じて正極活物質の高率特性が向上し、合剤密度を維持するため好ましい。
【0041】
本発明の他の実施形態によれば、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、炭素シート、およびLi原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうちの少なくとも1つを溶媒と混合して混合溶液を準備する段階と、液相法によって前記炭素シートの表面にオリビン系化合物粒子のシード(seed)を成長させる段階と、前記オリビン系化合物粒子のシードを還元雰囲気下で熱処理してオリビン系化合物粒子を形成する段階とを含む。前記炭素シートは、前記炭素原子は、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有し、前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層され、前記オリビン系化合物粒子は下記化学式(1)で表示される化合物を含む。
LiPO・・・(1)
【0042】
前記化学式(1)において、xは0<x≦2であり、zは0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせから選択される。前記Mは、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0043】
前記液相法は、具体的に、沈殿法、加水分解法、溶媒蒸発法、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、共沈殿法(co−precipitation method)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよいが、これに制限されるものではなく、公知された方法によって実行されてもよい。例えば、前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、共沈法によるものであってもよい。
【0044】
前記製造方法により、上述したようなリチウム二次電池用正極活物質を製造してもよい。すなわち、前記製造方法において、前記オリビン系化合物は、核形成時に炭素シートの界面エネルギーを利用するようになることにより、炭素シートの格子面において有利に核を形成できるようになる。その結果、前記製造方法によって製造されたリチウム二次電池用正極活物質において、前記炭素シートと前記オリビン系化合物粒子は、少なくとも1つの格子面を共有するようになる。
【0045】
また、前記炭素シートは比較的低い密度を有するため、密度が大きい場合の他の物質に対比して表面積がより大きい。これは、オリビン系化合物粒子との接触面積がより大きくなるということを意味するため、電気伝導度をさらに向上させる効果を付与することができる。
【0046】
前記オリビン系化合物のLi原料物質は、Liを含有しているアセテート酢酸塩(acetate)、硝酸塩(nitrate)、硫酸塩(sulfate)、炭酸塩(carbonate)、クエン酸塩(citrate)、フタル酸塩(phthalate)、過塩素酸塩(perchlorate)、アセチルアセトネート(acetylacetonate)、アクリレート(acrylate)、ギ酸塩(formate)、シュウ酸塩(oxalate)、ハロゲン化物(halide)、オキシハロゲン化物(oxyhalide)、ホウ化物(boride)、酸化物(oxide)、硫化物(sulfide)、過酸化物(peroxide)、アルコキシド(alkoxide)、水酸化物(hydroxide)、アンモニウム(ammonium)、これらの水和物、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0047】
前記オリビン系化合物のLi原料物質は、Li原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうち、約3質量%〜約6質量%で含まれてもよい。
【0048】
前記M原料物質は、前記オリビン系化合物の種類に応じて異なる。例えば、MがFeである場合、Fe原料物質であるFeを含有しているアセテート酢酸塩(acetate)、硝酸塩(nitrate)、硫酸塩(sulfate)、炭酸塩(carbonate)、クエン酸塩(citrate)、フタル酸塩(phthalate)、過塩素酸塩(perchlorate)、アセチルアセトネート(acetylacetonate)、アクリレート(acrylate)、ギ酸塩(formate)、シュウ酸塩(oxalate)、ハロゲン化物(halide)、オキシハロゲン化物(oxyhalide)、ホウ化物(boride)、酸化物(oxide)、硫化物(sulfide)、過酸化物(peroxide)、アルコキシド(alkoxide)、水酸化物(hydroxide)、アンモニウム(ammonium)、これらの水和物、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0049】
また、例えば、MがMnである場合、Mn原料物質は、Mnを含有しているアセテート酢酸塩(acetate)、硝酸塩(nitrate)、硫酸塩(sulfate)、炭酸塩(carbonate)、クエン酸塩(citrate)、フタル酸塩(phthalate)、過塩素酸塩(perchlorate)、アセチルアセトネート(acetylacetonate)、アクリレート(acrylate)、ギ酸塩(formate)、シュウ酸塩(oxalate)、ハロゲン化物(halide)、オキシハロゲン化物(oxyhalide)、ホウ化物(boride)、酸化物(oxide)、硫化物(sulfide)、過酸化物(peroxide)、アルコキシド(alkoxide)、水酸化物(hydroxide)、アンモニウム(ammonium)、これらの水和物、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0050】
前記M原料物質の種類は、前記オリビン系化合物の種類に応じて当分野に通常の技術者が容易に選択することができるため、具体的な説明は省略する。
【0051】
前記オリビン系化合物のM原料物質は、Li原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうち、約30質量%〜約40質量%で含まれてもよい。
【0052】
前記P原料物質は、リン酸(phosporic acid)、リン酸塩(Phosphate)、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。前記オリビン系化合物のP原料物質は、Li原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうち、約18質量部〜約20質量部で含まれてもよい。
【0053】
前記溶媒は、前記炭素シートの表面上に前記オリビン系化合物粒子を液相法によって成長させる反応を実行することができる溶媒であれば、制限なく用いられてもよい。例えば、前記溶媒は、純水蒸溜水から選択されてもよい。
【0054】
前記液相法によって得られた粒子を乾燥した後、還元雰囲気下で熱処理する段階をさらに含んでもよい。前記還元雰囲気下で熱処理を実行するとき、高温で発生するFeの酸化を防ぐことができる点で好ましい。
【0055】
前記熱処理段階は、約400〜約800℃で実行されてもよい。前記温度範囲で実行されるとき、前記生成後の粒子が成長しない温度内で焼成が進められ、小さい粒子の大きさによって電導度が向上する点で好ましい。
【0056】
前記熱処理段階は、約5〜約10時間実行されてもよい。前記時間範囲で実行されるとき、オリビン系化合物の結晶度が良くなって電導度が向上し、さらに数回の放電後にも構造が変わらない点で好ましい。
【0057】
さらに、オリビン系化合物粒子のシードと前記オリビン系化合物を生成するための残りの原料物質を添加した混合物を熱処理するようにしてもよい。
【0058】
本発明のさらに他の実施形態によれば、上述した正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、電解質とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0059】
リチウム二次電池は、用いられるセパレータと電解質の種類に応じて、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池に分類される。また、形態に応じて、円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類される。さらに、サイズに応じて、バルクタイプと薄膜タイプに分けられる。このような電池の構造と製造方法は、当分野に広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0060】
図3は、一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。図3を参照すれば、前記リチウム二次電池100は円筒形であって、負極112、正極114、前記負極112と正極114の間に配置されたセパレータ113、前記負極112、正極114およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)、電池容器120、そして、前記電池容器120を封入する封入部材140を主な部分として構成されている。このようなリチウム二次電池100は、負極112、セパレータ113、および正極114を順に積層した後、スピロール状に巻かれた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0061】
前記負極は、集電体および前記集電体上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は負極活物質を含む。
【0062】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0063】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素物質であって、リチウム二次電池として一般的に用いられる炭素系負極活物質であればいずれのものを用いてもよく、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを共に用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成したコークスなどが挙げられる。
【0064】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群より選択される金属の合金が用いられてもよい。
【0065】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si−C複合体、Si−Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、Siではない)、Sn、SnO、Sn−C複合体、Sn−R(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、Snではない)などが挙げられる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを用いてもよい。また、これらのうちの少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。
【0066】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0067】
前記負極活物質層もバインダを含み、選択的に導電材をさらに含んでもよい。
【0068】
前記バインダは、負極活物質粒子を互いに適切に付着させ、または負極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行う。前記バインダとしては、非水溶性バインダ、水溶性バインダ、またはこれらの組み合わせを用いてもよい。
【0069】
前記非水溶性バインダとしては、例えば、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
前記水溶性バインダとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、アクリレート化したスチレン−ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2〜8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
前記負極バインダとして水溶性バインダを用いる場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含んでもよい。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して用いてもよい。前記アルカリ金属としては、Na、K、またはLiを用いてもよい。このような増粘剤の使用含有量は、バインダ100質量部に対して約0.1〜約3質量部であってもよい。
【0072】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を招来せずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を用いてもよい。
【0073】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発砲体(foam)、銅発砲体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを用いてもよい。
【0074】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質としては、本発明の一実施形態に係る上述した正極活物質を用いる。前記正極活物質に関する内容は上述したものと同じであるため、重複する説明は省略する。
【0075】
前記正極活物質層もバインダおよび導電材を含む。
【0076】
前記バインダは、正極活物質粒子を互いに適切に付着させ、または正極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行うが、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリレート化したスチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを用いてもよいが、これに限定されることはない。
【0077】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を招来せずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを用いてもよく、またはポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
前記正極の電流集電体としてはAlを用いてもよいが、これに限定されることはない。
【0079】
前記負極と正極は、活物質、導電材、およびバインダを溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書において詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを用いてもよいが、これに限定されることはない。
【0080】
本発明の非水系電解質二次電池において、非水電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0081】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質役割を行う。
【0082】
非水性有機溶媒としては、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を用いてもよい。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが用いられてもよく、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバルロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが用いられてもよい。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられてもよく、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが用いられてもよい。さらに、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられてもよく、前記非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは炭素数2〜20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。
【0083】
前記非水性有機溶媒は、単独または2種以上を混合して用いてもよく、2種以上混合して用いる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよいが、これは当該分野に従事する者が広く理解することができる。
【0084】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して用いることが好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを1:1〜1:9の体積比で混合して用いれば、電解液の性能が優れるようになる。
【0085】
本発明の非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。このとき、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1〜30:1の体積比で混合してもよい。
【0086】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式(2)の芳香族炭化水素系化合物が用いられてもよい。
【0087】
【化5】

・・・(2)

【0088】
前記化学式(2)において、R〜Rは互いに同じあるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、ハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0089】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、アイオドベンゼン、1,2−ジアイオドベンゼン、1,3−ジアイオドベンゼン、1,4−ジアイオドベンゼン、1,2,3−トリアイオドベンゼン、1,2,4−トリアイオドベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3−ジフルオロトルエン、2,4−ジフルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、2,3,4−トリフルオロトルエン、2,3,5−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロトルエン、2,3,4−トリクロロトルエン、2,3,5−トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3−ジヨードトルエン、2,4−ジヨードトルエン、2,5−ジヨードトルエン、2,3,4−トリヨードトルエン、2,3,5−トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0090】
前記非水性電解質は、電池寿命を向上させるために、ビニレンカーボネートまたは下記化学式(3)のエチレンカーボネート系化合物をさらに含んでもよい。
【0091】
【化6】

・・・(6)
【0092】
前記化学式(3)において、RおよびRは互いに同じであるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、およびフッ素化した炭素数1〜5のアルキル基からなる群より選択され、前記RとRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、およびフッ素化した炭素数1〜5のアルキル基からなる群より選択されるが、RとRがすべて水素ではない。
【0093】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、またはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに用いる場合、その使用量は適切に調節してもよい。
【0094】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を行う物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(CF2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、およびLiB(C(リチウムビスオキサレートボレート(lithiumbis(oxalato)borate:LiBOB)からなる群より選択される1つまたは2つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1〜2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0095】
リチウム二次電池の種類に応じて、正極と負極の間にセパレータが存在してもよい。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、またはこれらの2層以上の多層膜が用いられてもよく、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜が用いられてもよいことは勿論である。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。このような実施例は本発明の一実施形態に過ぎず、本発明が後述する実施例に限定されることはない。
【0097】
(製造例1)
膨張黒鉛100gを500℃で1時間加熱して膨張させた後、これから発生したガスをオーブンの排気口を介して排気させた後、これから得た結果物をエタノールに分散させ、ホモジナイザ(homogenizer)を利用して10,000rpmで10分間粉砕した。これから収得した混合物をマイクロフルイダイザ(micro fluidizer)を利用して追加粉砕した後、フィルタリング(filtering)装備を利用してろ過した後、エタノールで洗浄して120℃のオーブンで乾燥させ、炭素シートの粉末を得た。
【0098】
(実施例1)
(正極活物質の製造)
Li原料物質として硝酸リチウム、Fe原料物質として硫酸鉄、P原料物質としてリン酸二アンモニウム、および炭素シートとして製造例1によって得られた炭素シートの粉末を15:57:27:2のモル比で溶媒純水に添加し、共沈法によって沈殿させて懸濁液を得た。前記得られた懸濁液を乾燥して溶媒を蒸発させた後、還元雰囲気下で約700℃で約10時間熱処理し、製造例1で得られた炭素シートの表面にリン酸鉄リチウム(LiFePO)が形成された正極活物質を得た。
【0099】
(正極の製造)
前記で得られた正極活物質、バインダとしてポリビニリデンフルオライド、および導電材として炭素ブラックを90:5:5の質量比でN−メチルピロリドン溶媒で混合して正極活物質層スラリーを製造した。前記正極活物質層スラリーを正極集電体としてアルミニウム箔上に塗布して薄い極板の形態に生成した後、約120℃で1時間乾燥し、圧延(pressing)して正極活物質層を含む正極を製造した。
【0100】
(負極の製造)
負極活物質としてLiホイル(foil)を用いて負極を製造した。
【0101】
(リチウム二次電池の製造)
前記得られた正極、負極、厚さ20μmのポリエチレン材質のセパレータ、および電解液(EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)、そしてDMC(ジメチルカーボネート)(EM:EMC:DMCの体積比は3:3:4である)の混合物+1.15MのLiPF)を組み立ててリチウム二次電池を製作した。
【0102】
(実施例2)
Fe原料物質の代わりに硫酸マンガン、P原料物質としてリン酸二アンモニウムを用い、正極活物質としてリン酸マンガンリチウム(LiMnPO)を含むようにした点を除いては、実施例1と同じように実施してリチウム二次電池用正極を製造した。さらに、前記リチウム二次電池用正極を用い、実施例1と同じようにリチウム二次電池を製造した。
【0103】
(比較例1)
Li原料物質として硝酸リチウム、Fe原料物質として硫酸鉄、P原料物質としてリン酸二アンモニウムを15:57:27のモル比で溶媒純水に添加し、還元雰囲気下で700℃で約10時間1次焼成した。これをスクロースと混合して2次焼成し、炭素がコーティングされたLiFePOを得て正極活物質として用いた点を除いては、前記実施例1と同じ方法によって正極を製造し、これを含めて実施例1と同じようにリチウム二次電池を製造した。
【0104】
(比較例2)
M原料物質としてマンガンを用いた点を除いては、前記比較例1と同じ方法によって正極を製造し、これを含めて実施例1と同じようにリチウム二次電池を製造した。
【0105】
(実験例)
(走査電子顕微鏡写真(Scanning Electron Microscope:SEM))
前記実施例1の正極活物質のSEM写真は、図4、図5、および図6のとおりである。図4の倍率は10,000倍であり、図5は20,000倍であり、図6は10,000倍である。このような図面から、前記実施例1の正極活物質が製造例1で得られた炭素シートの表面に化学的に結合をして核生成および成長したことを知ることができた。
【0106】
(電池特性1)
図7は、実施例1に係る電池の充放電グラフである。電気伝導度とイオンの伝導度が低い実施例1で用いられたリン酸鉄リチウム正極活物質が炭素と強い結合をなしながら電気伝導度が向上したことを、グラフから確認することができる。5Cの場合、0.1Cの50倍の電流密度で充放電を行った。前記グラフに示すように、充放電速度が極めて迅速に行われても、電池としての特性が優れることを確認することができる。
【0107】
(電池特性2:充放電実験)
前記実施例1および比較例1のコインセルを利用して充放電実験をした。その結果は下記表1に示すとおりである。
【0108】
実験条件および装備に対する情報は下記のとおりである。
【0109】
25℃の常温条件で0.1C(充電、放電同一)、0.2C、0.5C、1C、3C、そして最後に5Cをそれぞれ1サイクルを行った。Cut−off電圧は2.0〜4.2Vであった。
【0110】
それぞれの物質の放電容量は、下記表1のとおりである。
【0111】
【表1】

【0112】
前記表1に示すように、率別放電容量側面において、前記実施例1に係る電池特性が優れていることを知ることができた。
【0113】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0114】
10:炭素シート
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:封入部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有する炭素シートと、
前記炭素シートの表面に位置したオリビン系化合物粒子と、
を含み、
前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、
前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層され、
前記オリビン系化合物粒子は、下記化学式(1)で表示される化合物を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
LiPO・・・(1)
前記式において、0<x≦2、0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択される。
【請求項2】
前記炭素シートと前記オリビン系化合物粒子とが少なくとも1つの格子面を共有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質は、正極活物質全体のうちで1質量%〜15質量%の炭素シートを含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記Mは、Fe、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記炭素シートが板状(plate)の形態である、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記多環ナノシートが0.846nm〜1.154nmの厚さを有する、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
セパレータと、
電解質と、
を含む、リチウム二次電池。
【請求項8】
前記正極の集電体はAlである、請求項7に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
炭素シート、およびLi原料物質、M原料物質、およびP原料物質のうちの少なくとも1つを溶媒と混合して混合溶液を準備する段階と、
液相法によって前記炭素シートの表面にオリビン系化合物粒子のシードを成長させる段階と、
前記オリビン系化合物粒子のシードを還元雰囲気下で熱処理してオリビン系化合物粒子を形成する段階と、
を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
前記炭素シートは、6個の炭素原子が六角形状に連結して形成された環を複数含む多環ナノシート(polycyclic nano−sheet)が1〜200個積層された構造を有し、
前記複数の環は縮合して一平面上に配列され、
前記多環ナノシートは前記環を含む平面に垂直方向に積層され、
前記オリビン系化合物粒子は、下記化学式(1)で表示される化合物を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
LiPO・・・(1)
前記式において、0<x≦2、0.8≦z≦1.2であり、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【請求項10】
前記液相法は、沈殿法、加水分解法、溶媒蒸発法、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、共沈殿法(co−precipitation method)、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記オリビン系化合物粒子を熱処理する段階は、400〜800℃の温度で還元雰囲気下で実行される、請求項9または10に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記オリビン系化合物粒子のシードと前記オリビン系化合物を生成するための残りの原料物質を添加した混合物を熱処理する、請求項9に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182134(P2012−182134A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45436(P2012−45436)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】