説明

二次電池用電極群およびこれを用いた二次電池

【課題】電極板全体において合剤層の適切な結着力を確保したうえで、高い結着力の必要のない集電体11、14に接しない第1の合剤層12、15および巻終り側などの箇所において活物質比率を高くなるよう構成することで、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供すること。
【解決手段】正極板1または負極板2の少なくともいずれか一方の集電体11、14に第1の合剤層12、15と第1の合剤層12、15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層13、16とを備え、第2の合剤層13、16は第1の合剤層12、15の巻始め側の一部において集電体11、14と第1の合剤層との間に配置12、15する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される二次電池に関し、特に二次電池用電極群およびこれを用いた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっている二次電池としてのリチウムイオン二次電池は、負極板にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極板にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って更なるリチウムイオン二次電池の高容量化と高容量においても安全であることが望まれている。
そこで、単位容積当たりの活物質の充填率が高くできることで高容量を実現している円筒型の二次電池の集電体の表面にリチウムの複合酸化物を含む活物質と導電剤および結着剤からなる電極合剤層を塗布形成してなる電極板は、高容量化のために活物質の体積比率を高めるために導電剤、結着剤の体積比率を下げる取り組みがなされている。
【0003】
しかし、結着剤の体積比率を下げることによって、活物質、導電剤および結着剤より成る電極合剤層の集電体への結着力は低下し、二次電池の充放電と共に進む結着剤の劣化により集電体への結着力が低く形成された電極合剤層は徐々に剥離し、電池容量の低下つまり電池寿命の短命化につながる課題がある。
【0004】
従来、この結着剤量を削減しつつ電池寿命を劣化させない様々な方法が提案されている。
【0005】
例えば、電極合剤層の組成を厚み方向において変化させ、結着剤が集電体の界面に多い分布を形成することで、電極合剤層の塗布乾燥時の結着剤の活物質層の表面への流動、偏析による結着力の低下の防止を図る取り組みが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、別の同様な方法として、図10に示すように正極合剤層31の正極集電体32への当接面31aおよび/または正極合剤層31の多孔質絶縁体への当接面31bに存在する結着剤の割合が正極合剤層31の内部31cよりも小さくすることにより上記特許文献1の場合より正極集電体32への当接面31aにおける電気抵抗を減らし電池特性の改善を試みる取り組みもなされている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、別の方法としてアルカリ金属からなる負極板をもつ円筒形電解液電池で、正極板の渦巻状の電極群の中心に対して巻終り側に位置する面側の正極合剤層の結着剤の配合量を巻始め側に位置する面側の正極合剤層の結着剤の配合量より多くしたこと、つまり巻回の巻終り側面の結着剤の含有量が巻始め側面より多くすることにより巻終り側面の正極合剤層の脱落を防ぐことを特徴とするアルカリ金属からなる負極板をもつ円筒形電解液電池が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−185960号公報
【特許文献2】特開2001−357886号公報
【特許文献3】特開平03−046950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1、2では、電極合剤層の塗布乾燥時の結着剤の活物質層の表面への流動、偏析による結着力の低下の防止はできるが、電極群の巻始め側で最適化された結着力は電極板の巻回される曲率の小さな巻終り側では過剰な結着力となり、その結着剤の過剰な体積分だけ電池容量の低下につながる。一方で、電極群の巻終り側で最適化された結着力は電極板の巻回される曲率の大きな巻始め側では結着力が不足し、巻回もしくは電池の充放電により活物質層は脱落し、高容量の二次電池を実現することが困難となる。
【0010】
また、上述した特許文献3は、アルカリ蓄電池のような電極板が数mmの非常に厚みの厚い巻回型の円筒形二次電池の電極板を巻回するときに電極板の巻終り側面の電極合剤層が脱落防止のために結着剤量を電極板の巻始め側面に比べ多くしているが、現在のリチウム二次電池に代表される主流の二次電池の電極板の厚みは0.2mm以下であり、電極板の巻始め側面と巻終り側面の曲率の大きな差は生じず、巻終り側面の大きな脱落は発生しない。その上、特許文献3の電極板は、上述した特許文献1、2と同様に電極群の巻始め側で最適化された結着力は電極板の巻回される曲率の小さな巻終り側では過剰な結着力となり、その結着剤の過剰な体積分だけ電池容量の低下につながる。一方で、電極群の巻終り側で最適化された結着力は電極板の巻回される曲率の大きな巻始め側では結着力が不足し、巻回時もしくは電池の充放電により活物質層は脱落し、高容量の二次電池を実現することが困難となる。
【0011】
本発明は上記従来技術を鑑みて成されたもので、正極板または負極板の少なくともいずれか一方の集電体に第1の合剤層と前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記第2の合剤層は第1の合剤層の巻始め側の一部において前記集電体と前記第1の合剤層との間に配置されたことにより、巻回型の二次電池の電極板の巻始め側、すなわち電極板の曲率(たとえば、曲率半径2mm)が大きく、合剤層中および集電体に作用する圧縮応力が大きく作用する箇所において、合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保しつつ、かつ合剤層を結着力が弱く曲げ易い第1の合剤層と結着力は高いが厚みが薄く巻回し易い第2の合剤層とすることで巻回時の曲げ応力を第1の合剤層では合剤層が厚く曲率半径が大きいにもかかわらず小さくでき、第2の合剤層では合剤層を薄いことで曲げ応力の発生を抑制し、巻回時に集電体を曲げ応力で伸び、破断に至らない構成とし、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供することを目的としている。
さらに他の電極板の曲率の小さい箇所(たとえば曲率半径8mmで巻始め側の4倍のたわみに比例して発生する応力も4倍となる)において集電体から電極合剤層が脱落しない結着力を確保しつつ活物質密度を高めることもでき、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の二次電池用電極群およびこれを用いた二次電池は、正極板または負極板の少なくともいずれか一方の集電体に第1の合剤層と前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記第2の合剤層は第1の合剤層の巻始め側の一部において前記集電体と前記第1の合剤層との間に配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明の二次電池用電極群およびこれを用いた二次電池は、電極板全体において合剤層の適切な結着力を確保したうえで、高い結着力の必要のない集電体に接しな
い第1の合剤層および巻終り側などの箇所において活物質比率を高くなるよう構成することで、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態における円筒形二次電池の一部切欠斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図4】本発明の第3の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図5】本発明の第4の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図6】本発明の第5の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図7】本発明の第6の実施の形態における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図8】本発明の比較例における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図9】本発明の比較例における二次電池用電極群の正極板と負極板および多孔質絶縁体の配列状態を示す概略断面図
【図10】従来の二次電池用電極板を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の発明においては、正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回してなる二次電池用電極群において、前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方の集電体に、第1の合剤層と、前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記第2の合剤層は、前記第1の合剤層の少なくとも巻始め側の一部において前記集電体と前記第1の合剤層との間に配置したことにより、巻回型の二次電池の電極板の巻始め側、すなわち電極板の曲率が大きく、合剤層中および集電体に作用し、合剤脱落を引き起こす圧縮応力が作用する箇所において、電極合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保しつつ、かつ、合剤層を結着力が弱く曲げ易い第1の合剤層と結着力は高いが厚みが薄く巻回し易い第2の合剤層とすることで巻回時の曲げ応力を第1の合剤層では合剤層が厚く曲率半径が大きいにもかかわらず小さくでき、第2の合剤層では合剤層を薄いことで曲げ応力の発生を抑制し、巻回時に集電体を曲げ応力により破断まで伸びないように構成し、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池用電極群を提供することができる。
【0016】
本発明の第2の発明においては、正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回してなる二次電池用電極群において、前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方の集電体に、第1の合剤層と前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記集電体と前記第1の合剤層との間に、前記第1の合剤層の巻終り側にいくにつれて、前記第2の合剤層を、間隔を広げて間欠的に配置することにより、合剤層中および集電体に作用する圧縮応力が作用する箇所において、電極合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保しつつ、合剤層を結着力が弱く曲げ易い第1の合剤層と結着力は高いが厚みが薄く巻回し易い第2の合剤層とすることで合剤層を巻回し易くでき、かつ集電体が断裂し難い構成できる。さらに間欠膜の境界の第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層のない箇所で合剤層に集電体に対し垂直方向に亀裂を生じ、圧縮応力が緩和され、集電体が破断点まで伸びることを抑制することができ、集電体の断裂を抑制できる。
【0017】
本発明の第3の発明においては、第1の発明における第1の合剤層の巻始め側の一部として、渦巻状の巻回の5ターン分以下に第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層を設けることにより、巻回型の二次電池の電極板の巻始め側、すなわち電極板の曲率が大きく、合剤層中および集電体に作用する圧縮応力が作用する箇所において、電極合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保しつつ、合剤層を結着力が弱く曲げ易い第1の合剤層と結着力は高いが厚みが薄く巻回し易い第2の合剤層とすることで巻回時に発生する曲げ応力で集電体が伸び、集電体が断裂し難い構成とし、さらに他の電極板の曲率の小さい箇所、すなわち巻回の5ターン以上において集電体から電極合剤層が脱落しない結着力を確保しつつ活物質密度を高めることができ、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池用電極群を提供することができる。
【0018】
本発明の第4の発明においては、第1の発明における第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層は電極板の巻き内側に設けたことにより、巻回型の二次電池の電極板の巻始め側、すなわち電極板の曲率が大きく、合剤層中および集電体に作用する圧縮応力が作用する箇所において、電極合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保しつつ、合剤層を結着力が弱く曲げ易い第1の合剤層と結着力は高いが厚みが薄く巻回し易い第2の合剤層とすることで巻回時の曲げ応力を第1の合剤層では合剤層が厚く曲率半径が大きいにもかかわらず小さくでき、第2の合剤層では合剤層を薄いことで曲げ応力の発生を抑制し、巻回時に集電体を曲げ応力により破断まで伸びないように構成し、かつ他の電極板の曲率の小さい巻き外側において集電体から電極合剤層が脱落しない程度の巻き内側に比べて低い結着力を確保しつつ活物質密度を高めることができ、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池用電極群を提供することができる。
【0019】
本発明の第5の発明においては、前記第1の合剤層と第2の合剤層の厚みの比が、5以上20以下となることにより、例えば第2の合剤層5μm、第1の合剤層100μm、または第2の合剤層10μm、第1の合剤層50μm、というように確実に高い結着力を発揮できる第2の合剤層を形成でき、かつ活物質密度の高い第1の合剤層をより厚く形成できることができる。
【0020】
本発明の第6の発明においては、集電体に合剤層を形成した正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回した電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる二次電池において、前記電極群として第1〜5の発明のいずれか1つに記載の電極群を用いたことにより、高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の二次電池としては、例えば図に示したように構成することができる。
複合リチウム酸化物を正極活物質とする正極板1とリチウムを保持しうる材料を負極活物質とする負極板2とを多孔質絶縁体3を介して渦巻状に巻回して電極群4が構成されている。
【0022】
この電極群4を有底円筒形の電池ケース5の内部に絶縁板6と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード7を電池ケース5の底部に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース5に所定量の溶媒からなる電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース5の開口部に封口ガスケット10を周縁に取り付けた封口板9を挿入し電池ケース5の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口して二次電池を構成することができる。
【0023】
図2に、円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。
図2に示すように、正極板1は、正極集電体11と、第1の正極合剤層12と、第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13とを備える。第2の正極合剤層13は、巻き内面側の第1の正極合剤層12の巻始め側と正極集電体11との間、および、巻き外面側の第1の正極合剤層12の巻始め側と正極集電体11との間に配置されている。また、負極板2も同様に、負極集電体14と、第1の負極合剤層15と、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16とを備える。第2の負極合剤層16は、巻き内面側の第1の負極合剤層15の巻始め側と負極集電体14との間、および、巻き外面側の第1の負極合剤層15の巻始め側と負極集電体14との間に配置されている。
正極集電体11の無地部に正極リード8を接続し正極保護テープ17を貼付した正極板1と、負極集電体14の無地部に負極リード7を接続し負極保護テープ18を貼付した負極板2を多孔質絶縁体3と共に巻回方向19に巻回することで電極群4を形成することができる。
【0024】
以下、本発明に係わる二次電池用電極板の作製方法の一例を示す。
【0025】
まず、図2に示す本発明の二次電池電極板である正極板1については特に限定されないが正極集電体11として厚みが5μm〜30μmを有するアルミニウムやアルミニウム合金またはニッケルやニッケル合金製の金属箔を用いることができる。この正極集電体11の上に塗布する正極合剤塗料としては正極活物質、導電剤、結着剤とを分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて正極合剤塗料が作製される。
【0026】
まず、正極活物質、導電剤、結着剤を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、正極集電体11への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで正極合剤塗料を作製することができる。
【0027】
本発明に係わる二次電池用電極群の正極合剤塗料は、正極板の第1の正極合剤層12と第2の正極合剤層13で異なる結着力とするために、正極合剤塗料を2種類製作する必要がある。2種類の正極合剤塗料は、それぞれ個別に分散機により混合分散することにより作製できる。
【0028】
例えば、結着剤の量で第1の正極合剤層12と第2の正極合剤層13の結着力および活物質比率を設定する場合、結着剤量の少ない正極合剤塗料を作成し、2分割後一方の正極合剤塗料にのみ結着剤を加え、分散機により混合分散することにより結着剤量の多い正極合剤塗料を作成することができる。
【0029】
また他の方法として、結着剤の量および分子量で第1の正極合剤層12と第2の正極合剤層13の結着力を設定する場合、結着力の小さい合剤層となる正極合剤塗料を分子量の小さな結着剤で製作し、結着力の大きい合剤層となる正極合剤塗料を分子量の大きな結着剤で製作することで、正極合剤塗料に十分な粘度を与え正極合剤塗料の安定化を図り正極板の活物質重量の安定化を図ることができる。
【0030】
正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0031】
このときの導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャン
ネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいはこれらを組み合わせて用いても良い。
【0032】
このときの正極用結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着剤等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着剤中に混入させることも可能である。
【0033】
さらに、上記のように作製した正極合剤塗料をダイコーターを用いてアルミニウム箔からなる正極集電体11上に第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13を塗布し乾燥した後に、第1の正極合剤層12を塗布し乾燥した後に、プレスにて所定厚みまで圧縮することで図2に示すような第1の正極合剤層12と第2の正極合剤層13からなる正極板1が得られる。
【0034】
第2の正極合剤層13は第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低く、正極集電体11に薄く合剤層を形成することで巻回時に正極集電体11の外周側で発生する引張り方向の曲げ応力や内周側で発生する圧縮方向の曲げ応力に対して確実に集電体との結着を確保している。さらに、第2の正極合剤層13は、正極集電体11に薄い厚みで形成されているため巻回の曲げの曲率半径に比例して大きくなる引張りと圧縮方向の曲げ応力を小さくなるよう構成しており、結着力が高いことによる正極集電体11の大きな伸び、伸びによる破断は生じない。
【0035】
他方で、第1の正極合剤層12は、正極集電体11のように異種材料への結着でなく、同種の材料である第2の正極合剤層13への結着させるため、第2の正極合剤層13より低い結着力で十分な結着力を発揮することができる。そのため、結着剤量を減らし活物質の比率を高くすることができる。
【0036】
一方、負極板2についても特に限定されないが、負極集電体14として厚みが5μm〜25μmを有する銅または銅合金製の金属箔を用いることができる。この負極集電体14上に塗布する負極合剤塗料としては、負極活物質、結着剤、必要に応じて導電剤、増粘剤を分散媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて負極合剤塗料が作製される。
【0037】
まず、負極活物質、結着剤を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、負極集電体14への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで負極合剤塗料を作製することができる。
【0038】
本発明に係わる二次電池用電極群の負極合剤塗料は、負極板2の第1の負極合剤層15と第2の負極合剤層16で異なる結着剤力とするために、負極合剤塗料を2種類製作する必要がある。2種類の負極合剤塗料は、それぞれ個別に分散機により混合分散することにより作製できる。
【0039】
例えば、結着剤の量で第1の負極合剤層15と第2の負極合剤層16の結着力および活物質比率を設定する場合、結着剤量の少ない負極合剤塗料を作成し、2分割後一方の負極合剤塗料にのみ結着剤を加え、分散機により混合分散することにより結着剤量の多い負極合剤塗料を作成することができる。
【0040】
また他の方法として、結着剤の量および分子量で2層の結着力を設定する場合、結着力
の小さい合剤層となる負極合剤塗料を分子量の小さな結着剤で製作し、結着力の大きい合剤層となる負極合剤塗料を分子量の大きな結着剤で製作することで、負極合剤塗料に十分な粘度を与え負極合剤塗料の安定化を図り負極板の活物質重量の安定化を図ることができる。
【0041】
負極用活物質としては、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合剤料、および各種合金組成材料を用いることができる。
【0042】
このときの負極用結着剤としてはPVdFおよびその変性体をはじめ各種バインダーを用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体に、カルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等を併用することや少量添加するのがより好ましいといえる。
【0043】
さらに、上記のように作製した負極合剤塗料をダイコーターを用いて銅箔からなる負極集電体14上に第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16を塗布し乾燥した後に、第1の負極合剤層15を塗布し乾燥した後に、プレスにて所定厚みまで圧縮することで図2に示すような第1の負極合剤層15と第2の負極合剤層16からなる負極板2が得られる。
【0044】
第2の負極合剤層16は第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低く、負極集電体14に薄く合剤層を形成することで巻回時に負極集電体14の外周側で発生する引張り方向の曲げ応力や内周側で発生する圧縮方向の曲げ応力に対して確実に集電体との結着を確保している。さらに、第2の負極合剤層16は、負極集電体14に薄い厚みで形成されているため巻回の曲げの曲率半径に比例して大きくなる引張りと圧縮方向の曲げ応力を小さくなるよう構成しており、結着力が高いことによる負極集電体14の大きな伸び、伸びによる破断は生じない。
【0045】
他方で、第1の負極合剤層15は、負極集電体14のように異種材料への結着でなく、同種の材料である第2の負極合剤層16への結着させるため、第2の負極合剤層16より低い結着力で十分な結着力を発揮することができる。そのため、結着剤量を減らし活物質の比率を高くすることができる。
電極群4を電池ケース5へ収容し、負極リード7と電池ケース5を接続した後に充填する電解液については、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。また正/負極板上に良好な皮膜を形成させることや過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)およびその変性体を用いることも好ましい。
【0046】
多孔質絶縁体3については、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが一般的でありまた態様として好ましい。この多孔質絶縁体3の厚みは特に限定されないが、10〜25μmとすれば良い。
【0047】
以下、本発明の二次電池用電極板および電極群の具体的な実施の形態について説明する。
【0048】
本発明に関する一つの実施の形態の正極板1および負極板2を用いた電極群4は、図2に示すように電極群4を形成したときに巻回型の二次電池の正極板1、負極板2の巻始め
側、すなわち正極板1、負極板2の曲率が大きく、合剤層中および正極集電体11、負極集電体14に作用し、合剤脱落を引き起こす圧縮応力が作用する箇所において、巻始め側の正極集電体11、負極集電体14側に第2の正極合剤層13および第2の負極合剤層16を結着力を高く形成し、第1の正極合剤層12および第1の負極合剤層15の結着力を小さくしつつ活物質比率を大きくすることで形成することができる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。実施の形態1との違いは、第2の正極合剤層13は、巻き内面側の第1の正極合剤層12と正極集電体11との間、および、巻き外面側の第1の正極合剤層12と正極集電体11との間に、第1の正極合剤層12の巻終り側にいくにつれて、間隔を広げて間欠的に配置する。また、負極板2も同様に、負極集電体14と、第1の負極合剤層15と、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16とを備える。第2の負極合剤層16は、巻き内面側の第1の負極合剤層15と負極集電体14との間、および、巻き外面側の第1の負極合剤層15と負極集電体14との間に、第1の負極合剤層15の巻終り側にいくにつれて、間隔を広げて間欠的に配置する。
【0049】
正極板1または負極板2において、第2の正極合剤層13、第2の負極合剤層16を、第1の正極合剤層12、第1の負極合剤層15の巻終り側にいくにつれて、間隔を徐々に広げて間欠的に配置すれば、結着力をさほど必要としない巻終わり側に第1の正極合剤層12、第1の負極合剤層15を多くして電池容量を増やしても、全体的に最適な結着力をもった電極板とすることができる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態における円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。実施の形態1との違いは、負極板2に1種の負極合剤層20を配置したものである。
(実施の形態4)
図5は、本発明の第4の実施の形態における円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。実施の形態2との違いは、負極板2に1種の負極合剤層21を配置したものである。
(実施の形態5)
図6は、本発明の第5の実施の形態における円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。実施の形態1との違いは、正極板1に1種の正極合剤層22を配置したものである。
(実施の形態6)
図7は、本発明の第6の実施の形態における円筒型二次電池用電極群の正極板1と負極板2および多孔質絶縁体3の配列状態を示す概略断面図を示す。実施の形態2との違いは、正極板1に1種の正極合剤層23を配置したものである。
【0050】
以下、本発明の二次電池用電極板および二次電池の具体的な実施例について図面および表を参照しながらさらに詳しく説明する。
(実施例1)
図2に示すように正極リード8を正極板1のほぼ中央の無地部に配置し、第1の正極合剤層12の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13を巻き内側は巻き始め側から5ターンとなる部分、かつ巻き外側は3ターン以下となる部分に形成する。一方、負極リード7を負極板2の端の無地部に配置し、第1の負極合剤層15の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16の結着剤の含
有量を2%、厚み5μmとし、この第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16を巻き内側は巻き始め側から5ターンとなる部分、かつ巻き外側は3ターン以下となる部分に形成する。この正極板1と負極板2を多孔質絶縁体3を介して示す巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例1の二次電池とした。
【0051】
(比較例1)
図8に示すように正極集電体11、負極集電体14に、それぞれ、正極合剤層24および負極合剤層25を結着剤の含有量を2wt%とし、75μmの厚みで巻始め側から巻終り側にかけて形成した正極板1と負極板2を多孔質絶縁体3を介して巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を比較例1の二次電池とした。
【0052】
実施例1、比較例1の正極板1を多孔質絶縁体3を介して負極板2とともに巻回したところ、比較例1の電極板は、10個中3個が巻き始め側で正極板1が巾方向に一部破断していた。一方で実施例1の正極板1は10個いずれも正極板1の破断は確認できなかった。これにより実施例1は巻回時の圧縮応力を緩和することで正極板1の破断を防いでいると推察される。
【0053】
また、実施例1と同様にして第1の合剤層100μm、第2の合剤層5μm、および第1の合剤層50μm、第2の合剤層10μmの厚みの正極板1と負極板2を作成し巻回したところ、正極集電体11や負極集電体14の破断は確認できなかったことから、第1の合剤層と第2の合剤層の厚みの比が、5以上20以下の範囲においては安定した電極群4を構成することができる。
次に実施例1、比較例1の初期電池容量を100%としたときの実施例1の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表1)に示す。
(表1)


【0054】
(表1)から明らかなように、実施例1は、比較例1および後述する実施例3に比べ、負極板2にも活物質比率の高い第1の負極合剤層15をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。
(実施例2)
図3に示すように正極リード8を正極板1の端に配置し、第1の正極合剤層12の結着剤の含有量を1%、厚み70μmとし、第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この
第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13を巻始め側から巻終り側にかけてピッチを徐々に広くなるように間欠的に形成する。一方、負極リード7を負極板2の端の無地部に配置し、第1の負極合剤層15の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16を巻始め側から巻終り側にかけてピッチを徐々に広くなるように間欠的に形成する。この正極板1と負極板2を多孔質絶縁体3を介して、巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例2の二次電池とした。
【0055】
(比較例2)
図9に示すように、正極集電体11、負極集電体14に、それぞれ、正極合剤層24および負極合剤層25を結着剤の含有量を2wt%とし、75μmの厚みで巻始め側から巻終り側にかけて形成した正極板1と負極板2を多孔質絶縁体3を介して巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を比較例2の二次電池とした。
【0056】
実施例2、比較例2のような無地部が巻き内側にある正極板1は、ダイ塗工により正極合剤層端での厚みの厚い部分でき、電極板が破断し易い。実施例2、比較例2正極板1を多孔質絶縁体3を介して負極板2とともに巻回したところ、比較例2の電極板は、10個中5個が巻き始め側で正極板1が巾方向に一部破断していた。一方で実施例2の正極板1は10個いずれも正極板1の破断は確認できなかった。これにより実施例2は巻回時の圧縮応力を緩和することで正極板1の破断を防いでいると推察される。
次に実施例2、比較例2の初期電池容量を100%としたときの実施例2の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表2)に示す。
(表2)


【0057】
(表2)から明らかなように、実施例2は比較例2および実施例2に比べ、負極板2にも活物質比率の高い第1の負極合剤層15をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。
(実施例3)
図4に示すように正極リード8を正極板1のほぼ中央の無地部に配置し、第1の正極合剤層12の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13の結着剤の含有量を2%、厚
み5μmとし、この第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13を巻き内側は巻き始め側から5ターンとなる部分、かつ巻き外側は3ターン以下となる部分に形成する。この正極板1と第2の負極合剤層16を塗布して製作した負極板2を多孔質絶縁体3を介して巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例1の二次電池とした。
【0058】
次に実施例3、比較例1の比較例1の初期電池容量を100%としたときの実施例3の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表3)に示す。
(表3)

【0059】
(表3)から明らかなように、実施例3は比較例1に比べ活物質比率の高い第1の正極合剤層12をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。また、容量維持率においては比較例1の電極群4は巻回時に一部断裂し、かつ充放電にともない電極板の断裂が進み容量維持率が低くなっている。
(実施例4)
図5に示すように正極リード8を正極板1の端に配置し、第1の正極合剤層12の結着剤の含有量を1%、厚み70μmとし、第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この第1の正極合剤層12よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の正極合剤層13を巻始め側から巻終り側にかけてピッチを徐々に広くなるように間欠的に形成する。この正極板1と第2の負極合剤層16を塗布して製作した負極板2を多孔質絶縁体3を介して図4に示す巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例2の二次電池とした。
【0060】
次に実施例4、比較例2の初期電池容量を100%としたときの実施例4の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表2)に示す。
(表4)

【0061】
(表4)から明らかなように、実施例2は比較例2に比べ活物質比率の高い第1の合剤層をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。また、容量維持率においては比較例2の電極群4は巻回時に一部断裂し、かつ充放電にともない電極板の断裂が進み容量維持率が低くなっていると考えられる。
(実施例5)
図6に示すように負極リード7を負極板2の端の無地部に配置し、第1の負極合剤層15の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16を巻き内側は巻き始め側から5ターンとなる部分、かつ巻き外側は3ターン以下となる部分に形成する。この負極板2と、第2の正極合剤層13を塗布して製作した正極板1を多孔質絶縁体3を介して巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例5の二次電池とした。
【0062】
次に実施例5、比較例1の初期電池容量を100%としたときの実施例5の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表5)に示す。
(表5)

【0063】
(表5)から明らかなように、実施例5は比較例1に比べ、活物質比率の高い第1の負極合剤層15をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。
(実施例6)
図7に示すように負極リード7を負極板2の端の無地部に配置し、第1の負極合剤層15の結着剤の含有量を1wt%、厚み70μmとし、第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16の結着剤の含有量を2%、厚み5μmとし、この第1の負極合剤層15よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の負極合剤層16を巻始め側から巻終り側にかけてピッチを徐々に広くなるように間欠的に形成する。この負極板2と、第2の正極合剤層13を塗布して製作した正極板1を多孔質絶
縁体3を介して巻回方向19の向きに巻回した電極群4を電解液と共に電池ケース5へ封入し、封口板9で封口して製作した二次電池を実施例6の二次電池とした。
【0064】
次に実施例6、比較例2の初期電池容量を100%としたときの実施例6の初期電池容量の比較結果、および二次電池を45℃雰囲気中において繰り返し充電と放電を行い電池寿命としての容量維持率を各電池の初期の放電容量を100%として比較した結果を(表6)に示す。
(表6)

【0065】
(表6)から明らかなように、実施例6は比較例2に比べ、活物質比率の高い第1の負極合剤層15をもつことで初期容量の高容量化を実現していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の二次電池用電極群は、巻始め側の一部を集電体側に第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層を設け、集電体と離れた側に活物質の比率の高い合剤層を設け、電極板の少なくとも端の一部で2層からなる合剤層を設けたことにより、巻回型の二次電池の電極板の巻始め側、すなわち電極板の曲率が大きく、合剤層中および集電体に作用し、合剤脱落を引き起こす圧縮応力が作用する箇所において、電極合剤層が集電体より脱落しないように結着力を確保することで高容量でかつ電池寿命の長い二次電池を提供することができ、使用時の信頼性が望まれる携帯用電源等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 正極板
2 負極板
3 多孔質絶縁体
4 電極群
5 電池ケース
6 絶縁板
7 負極リード
8 正極リード
9 封口板
10 封口ガスケット
11 正極集電体
12 第1の正極合剤層
13 第2の正極合剤層
14 負極集電体
15 第1の負極合剤層
16 第2の負極合剤層
17 正極保護テープ
18 負極保護テープ
19 巻回方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回してなる二次電池用電極群において、前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方の集電体に、第1の合剤層と前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記第2の合剤層は、前記第1の合剤層の少なくとも巻始め側の一部において前記集電体と前記第1の合剤層との間に配置したことを特徴とする二次電池用電極群。
【請求項2】
正極板と負極板とを多孔質絶縁体を介して渦巻状に巻回してなる二次電池用電極群において、前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方の集電体に、第1の合剤層と前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層とを備え、前記集電体と前記第1の合剤層との間に、前記第1の合剤層の巻終り側にいくにつれて、前記第2の合剤層を、間隔を広げて間欠的に配置することを特徴とする二次電池用電極群。
【請求項3】
前記第1の合剤層の巻始め側の一部として、渦巻状の集電体の巻回の5ターン分以下に前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層を設けた請求項1記載の二次電池用電極群。
【請求項4】
前記第1の合剤層よりも結着力が高くかつ活物質の比率が低い第2の合剤層を電極板の巻き内側に設けた請求項1〜3のいずれか1つに記載の二次電池用電極群。
【請求項5】
前記第1の合剤層と第2の合剤層の厚みの比が、5以上20以下となることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の二次電池用電極群。
【請求項6】
前記二次電池用電極群を電解液とともに電池外装体内に封入してなる二次電池において、前記電極群として請求項1〜5のいずれか1つに記載の二次電池用電極群を用いたことを特徴とする二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−48027(P2013−48027A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185498(P2011−185498)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】