説明

二次電池用電解液、二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器

【課題】優れた電池特性を得ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、正極および負極と共に電解液を備えており、その電解液は、式(1)に示されるシアノ環状炭酸エステルを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池用電解液、その二次電池用電解液を用いた二次電池、ならびにその二次電池を用いた電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機または携帯情報端末機器(PDA)などの多様な電子機器が広く普及しており、その電子機器に関してさらなる小型化、軽量化および長寿命化が要望されている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。この二次電池は、最近では、電子機器などに着脱可能に搭載される電池パック、電気自動車などの電動車両、家庭用電力サーバなどの電力貯蔵システム、または電動ドリルなどの電動工具に代表される多様な他の用途への適用も検討されている。
【0003】
二次電池としては、さまざまな充放電原理を利用して電池容量を得るものが提案されており、中でも、電極反応物質としてリチウムを用いたリチウム二次電池が有望視されている。鉛電池およびニッケルカドミウム電池などよりも高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム二次電池には、リチウムイオンの吸蔵放出を利用するリチウムイオン二次電池と、リチウム金属の析出溶解を利用するリチウム金属二次電池とがある。
【0004】
二次電池は、正極および負極と共に電解液を備えており、その電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。充放電反応の媒介として機能する電解液は、二次電池の性能に大きな影響を及ぼすため、その電解液の組成に関しては、さまざまな検討がなされている。
【0005】
具体的には、電気化学的特性を向上させるために、ハロゲン基、シアノ基またはニトロ基などの電子吸引基を有する環状エステル化合物を用いることが検討されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この環状エステル化合物は、フルオロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはニトロエチレンカーボネートなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−038722号公報
【特許文献2】特開2006−019274号公報
【特許文献3】特開2009−117382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、二次電池が適用される電子機器などは益々高性能化および多機能化しているため、その二次電池の電池特性に関してさらなる改善が求められている。
【0008】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた電池特性を得ることが可能な二次電池用電解液、二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の二次電池用電解液は、下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含むものである。また、本技術の二次電池は、正極および負極と共に電解液を備え、その電解液が上記した本技術の二次電池用電解液と同様の組成を有するものである。さらに、本技術の電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具または電子機器は、二次電池を備え、その二次電池が上記した本技術の二次電池と同様の構成を有するものである。
【0010】
【化1】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【発明の効果】
【0011】
本技術の二次電池用電解液または二次電池によれば、電解液が式(1)に示したシアノ環状炭酸エステルを含んでいるので、優れた電池特性を得ることができる。また、本技術の二次電池を用いた電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器においても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本技術の一実施形態の二次電池用電解液を備えた二次電池(円筒型)の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本技術の一実施形態の二次電池用電解液を備えた他の二次電池(ラミネートフィルム型)の構成を表す斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】二次電池の適用例(電池パック)の構成を表すブロック図である。
【図6】二次電池の適用例(電動車両)の構成を表すブロック図である。
【図7】二次電池の適用例(電力貯蔵システム)の構成を表すブロック図である。
【図8】二次電池の適用例(電動工具)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.二次電池用電解液および二次電池
1−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
1−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)
2.二次電池の用途
2−1.電池パック
2−2.電動車両
2−3.電力貯蔵システム
2−4.電動工具
【0014】
<1.二次電池用電解液および二次電池>
<1−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
図1および図2は、本技術の一実施形態の二次電池用電解液を用いた二次電池の断面構成を表しており、図2では、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大している。
【0015】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、電極反応物質であるリチウム(リチウムイオン)の吸蔵放出により負極22の容量が得られるリチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)である。なお、以下では、リチウムイオン二次電池を単に「二次電池」ともいう。
【0016】
ここで説明する二次電池は、いわゆる円筒型である。この二次電池では、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されている。巻回電極体20は、例えば、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層されてから巻回されたものである。
【0017】
電池缶11は、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄、アルミニウムまたはそれらの合金などにより形成されている。なお、電池缶11の表面にニッケルなどの金属材料が鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を上下から挟むと共にその巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0018】
電池缶11の開放端部には電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられており、その電池缶11は密閉されている。この電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子16は、電池蓋14の内側に設けられており、その安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。この熱感抵抗素子16では、温度の上昇に応じて抵抗が増加するようになっている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により形成されており、その表面にアスファルトが塗布されていてもよい。
【0019】
巻回電極体20の中心には、センターピン24が挿入されていてもよい。正極21には、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード25が接続されていると共に、負極22には、例えば、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード26が接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされていると共に電池蓋14と電気的に接続されている。負極リード26は、電池缶11に溶接などされていると共にその電池缶11と電気的に接続されている。
【0020】
[正極]
正極21は、例えば、正極集電体21Aの片面または両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。
【0021】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である正極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて正極結着剤または正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0022】
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物(リチウム遷移金属複合酸化物)や、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物(リチウム遷移金属リン酸化合物)などである。中でも、遷移金属元素は、コバルト、ニッケル、マンガンまたは鉄などのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 またはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyの値は、充放電状態に応じて異なるが、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0023】
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、Lix CoO2 、Lix NiO2 、または下記の式(20)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。リチウム遷移金属リン酸化合物は、例えば、LiFePO4 またはLiFe1-u Mnu PO4 (u<1)などである。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。なお、正極材料は、上記以外の材料でもよい。
【0024】
LiNi1-z z 2 …(20)
(MはCo、Mn、Fe、Al、V、Sn、Mg、Ti、Sr、Ca、Zr、Mo、Tc、Ru、Ta、W、Re、Yb、Cu、Zn、Ba、B、Cr、Si、Ga、P、SbおよびNbのうちの少なくとも1種、zは0.005<z<0.5である。)
【0025】
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどである。
【0026】
正極結着剤は、例えば、合成ゴムまたは高分子材料などのいずれか1種類または2種類以上である。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデンまたはポリイミドなどである。
【0027】
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上である。炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックまたはケチェンブラックなどである。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などでもよい。
【0028】
[負極]
負極22は、例えば、負極集電体22Aの片面または両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。
【0029】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などである。この電解処理とは、電解槽中で電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に電解銅箔と呼ばれている。
【0030】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて負極結着剤または負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、それぞれ正極結着剤および正極導電剤と同様である。この負極活物質層22Bでは、例えば、充放電時の意図しないリチウム金属の析出を防止するために、負極材料の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。
【0031】
負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムイオンの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られるからである。また、負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素、または(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などである。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂またはフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下で熱処理された低結晶性炭素または非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0032】
また、負極材料は、例えば、金属元素または半金属元素のいずれか1種類または2種類を構成元素として含む材料(金属系材料)である。高いエネルギー密度が得られるからである。この金属系材料は、単体、合金または化合物でもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。ただし、合金には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種類以上の共存物などがある。
【0033】
上記した金属元素または半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成可能な金属元素または半金属元素のいずれか1種類または2種類以上であり、具体的には、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Cd、Ag、Zn、Hf、Zr、Y、PdまたはPtなどである。中でも、SiおよびSnのうちの少なくとも一方が好ましい。リチウムイオンを吸蔵放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0034】
SiおよびSnのうちの少なくとも一方を含む材料は、SiまたはSnの単体、合金または化合物でもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。ただし、単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)であり、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
【0035】
Siの合金は、例えば、Si以外の構成元素として、Sn、Ni、Cu、Fe、Co、Mn、Zn、In、Ag、Ti、Ge、Bi、SbまたはCrなどのいずれか1種類または2種類以上の元素を含む材料である。Siの化合物は、例えば、Si以外の構成元素としてCまたはOを含む材料である。なお、Siの化合物は、例えば、Si以外の構成元素として、Siの合金について説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0036】
Siの合金または化合物は、例えば、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、またはLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
【0037】
Snの合金は、例えば、Sn以外の構成元素として、Si、Ni、Cu、Fe、Co、Mn、Zn、In、Ag、Ti、Ge、Bi、SbまたはCrなどの元素のいずれか1種類または2種類以上を含む材料などである。Snの化合物は、例えば、CまたはOを構成元素として含む材料などである。なお、Snの化合物は、例えば、Sn以外の構成元素として、Snの合金について説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。Snの合金または化合物は、例えば、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOまたはMg2 Snなどである。
【0038】
また、Snを含む材料としては、例えば、Snを第1構成元素とし、それに加えて第2および第3構成元素を含む材料が好ましい。第2構成元素は、例えば、Co、Fe、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Ce、Hf、Ta、W、BiまたはSiなどの元素のいずれか1種類または2種類以上である。第3構成元素は、例えば、B、C、AlおよびPなどのいずれか1種類または2種類以上である。第2および第3構成元素を含むことで、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
【0039】
中でも、Sn、CoおよびCを含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。SnCoC含有材料の組成としては、例えば、Cの含有量が9.9質量%〜29.7質量%であり、SnおよびCoの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。このような組成範囲で高いエネルギー密度が得られるからである。
【0040】
このSnCoC含有材料は、Sn、CoおよびCを含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1°以上であることが好ましい。リチウムイオンがより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を含んでいる場合もある。
【0041】
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後で回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を有しており、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0042】
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態については、例えば、X線光電子分光法(XPS)で確認できる。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素の少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているため、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形が表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られるため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析して、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0043】
なお、SnCoC含有材料は、例えば、必要に応じて、さらにSi、Fe、Ni、Cr、In、Nb、Ge、Ti、Mo、Al、P、GaまたはBiなどのいずれか1種類または2種類以上の元素を含んでいてもよい。
【0044】
このSnCoC含有材料の他、Sn、Co、FeおよびCを含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、Feの含有量を少なめに設定する場合の組成は、以下の通りである。Cの含有量は9.9質量%〜29.7質量%、Feの含有量は0.3質量%〜5.9質量%、SnおよびCoの含有量の割合(Co/(Sn+Co))は30質量%〜70質量%である。また、例えば、Feの含有量を多めに設定する場合の組成は、以下の通りである。Cの含有量は11.9質量%〜29.7質量%、Sn、CoおよびFeの含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))は26.4質量%〜48.5質量%、CoおよびFeの含有量の割合(Co/(Co+Fe))は9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲で高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料と同様である。
【0045】
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物または高分子化合物などでもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
【0046】
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法または焼成法(焼結法)、あるいはそれらの2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、有機溶剤などの溶媒に分散させてから塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法または化学堆積法などである。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法またはプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法により塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しては、公知の手法を用いることができる。一例としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法などが挙げられる。
【0047】
この二次電池では、上記したように、充電途中において負極22にリチウム金属が意図せずに析出することを防止するために、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量が正極の電気化学当量よりも大きくなっている。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質でも単位質量当たりのリチウムイオンの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0048】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離して、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂またはセラミックからなる多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどである。
【0049】
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜からなる基材層と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても二次電池の抵抗が上昇しにくくなると共に電池膨れが抑制される。
【0050】
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン以外の他の材料でもよい。この高分子化合物層は、例えば、高分子材料が溶解された溶液を準備したのち、その溶液を基材層の表面に塗布してから乾燥させることで形成される。なお、基材層を溶液中に浸漬させてから乾燥させてもよい。
【0051】
[電解液/シアノ環状炭酸エステル]
セパレータ23には、液状の電解質である電解液(二次電池用電解液)が含浸されている。この電解液は、下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解液は、溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0052】
【化2】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【0053】
このシアノ環状炭酸エステルは、原則として、少なくとも1つのシアノ基を有する環状炭酸エステルである。ただし、シアノ環状炭酸エステルは、シアノ基の総数によっては、さらにハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基を有する場合もある。このシアノ基の総数とハロゲン基等の有無との関係については、後述する。
【0054】
電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいるのは、その電解液の化学的安定性が向上するため、充放電時において電解液の分解反応が抑制されるからである。詳細には、充放電時において、シアノ環状炭酸エステルに起因する強固な被膜が主に負極22の表面に形成されるため、高反応性の負極22の存在に起因する電解液の分解反応が抑制される。これにより、二次電池を繰り返して充放電させたり、または二次電池を保存しても、放電容量の低下が抑制される。このような傾向は、特に、高温または低温などの厳しい環境中において二次電池を充放電および保存させた場合に顕著となる。
【0055】
R1〜R3の種類は、上記したように水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。R1〜R3は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、R1〜R3のうちの任意の2つが同じ種類の基でもよい。ただし、R1〜R3のうちの任意の2つ以上が互いに結合されており、その結合された基同士により環が形成されていてもよい。
【0056】
ただし、シアノ基の総数が1である場合には、R1〜R3のうちの少なくとも1つは必ずハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。
【0057】
詳細には、式(1)から明らかなように、シアノ環状炭酸エステルは、R1〜R3とは別個に既に1つのシアノ基を有している。また、R1〜E3のそれぞれは、既存のシアノ基とは別個にシアノ基となり得る。このため、シアノ環状炭酸エステルは、全体として、最大で4つのシアノ基を有することができる。これらのことから、シアノ環状炭酸エステルでは、シアノ基の総数が1である場合(R1〜R3がいずれもシアノ基でないため、シアノ基が既存のものだけである場合)、R1〜R3のうちの少なくとも1つが必ずハロゲン基等になる。これに対して、シアノ基の総数が2以上である場合(既存のシアノ基に加えて、R1〜R3のうちの少なくとも1つがシアノ基である場合)、そのR1〜R3のそれぞれがハロゲン基等でもよいし、ハロゲン基等でなくてもよい。すなわち、シアノ基の総数が2以上である場合には、ハロゲン基等はあってもなくてもよい。
【0058】
「炭化水素基」とは、炭素および水素により構成される基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。「ハロゲン化炭化水素基」とは、上記した炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものであり、そのハロゲン基の種類は下記の通りである。
【0059】
ハロゲン基は、例えば、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)またはヨウ素基(−I)などであり、中でも、フッ素基が好ましい。シアノ環状炭酸エステルに起因する被膜が形成されやすいからである。
【0060】
1価の炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、または炭素数=3〜18のシクロアルキル基などである。また、1価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、上記したアルキル基などがハロゲン化されたものであり、すなわちアルキル基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。シアノ環状炭酸エステルの溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0061】
より具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基(−CH3 )、エチル基(−C2 5 )またはプロピル基(−C3 7 )などである。アルケニル基は、例えば、ビニル基(−CH=CH2 )またはアリル基(−CH2 −CH=CH2 )などである。アルキニル基は、例えば、エチニル基(−C≡CH)などである。アリール基は、例えば、フェニル基またはナフチル基などである。シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などである。アルキル基などがハロゲン化された基は、例えば、トリフルオロメチル基(−CF3 )またはペンタフルオロエチル基(−C2 5 )などである。
【0062】
「酸素含有炭化水素基」とは、炭素および水素と共に酸素により構成される基である。「ハロゲン化酸素含有炭化水素基」とは、上記した酸素含有炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものであり、そのハロゲン基の種類は上記の通りである。
【0063】
1価の酸素含有炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルコキシ基などである。また、1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、上記したアルコキシ基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。シアノ環状炭酸エステルの溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0064】
より具体的には、アルコキシ基は、例えば、メトキシ基(−OCH3 )またはエトキシ基(−OC2 5 )などである。アルコキシ基などがハロゲン化された基は、例えば、トリフルオロメトキシ基(−OCF3 )またはペンタフルエトキシ基(−OC2 5 )などである。
【0065】
なお、R1〜R3は、上記以外の他の種類の基でもよい。具体的には、R1〜R3は、例えば、上記した一連の基の誘導体でもよい。この誘導体とは、一連の基に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類は任意でよい。
【0066】
ここで、シアノ環状炭酸エステルの具体例は、下記の式(1−1)〜式(1−24)で表される化合物などであり、その化合物には、幾何異性体も含まれる。ただし、シアノ環状炭酸エステルは、式(1)に該当する他の化合物でもよい。
【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
電解液中におけるシアノ環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜20重量%であることが好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0070】
[補助化合物]
この電解液は、シアノ環状炭酸エステルと一緒に、下記の式(2)〜式(6)で表される化合物(補助化合物)のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するため、その電解液の分解反応がより抑制されるからである。なお、補助化合物の「補助」とは、シアノ環状炭酸エステルと一緒に用いられるという意味である。
【0071】
【化5】

(R4およびR6は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【0072】
【化6】

(R7およびR9は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R8は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)
【0073】
【化7】

(R10およびR12は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R11は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【0074】
Li2 PFO3 …(5)
LiPF2 2 …(6)
【0075】
[ジ炭酸エステル化合物]
式(2)に示した補助化合物は、両末端に炭酸エステル基(−O−C(=O)−O−R4および−O−C(=O)−O−R6)を有するジ炭酸エステル化合物である。
【0076】
R4およびR6の種類は、上記したように1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。ジ炭酸エステル化合物が2つの炭酸エステル基を有していることで、R4およびR6の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。なお、R4およびR6は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。
【0077】
1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基などである。また、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基などである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。なお、R4およびR6に関する上記以外の詳細は、例えば、R1〜R3と同様である。
【0078】
R5の種類は、上記したように2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。上記したR4およびR6と同様の理由により、R5の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
【0079】
2価の炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基などである。ただし、アリーレン基とアルキレン基とを含む基は、1つのアリーレン基と1つのアルキレン基とが連結された基でもよいし、2つのアルキレン基がアリーレン基を介して連結された基(アラルキレン基)でもよい。この場合のアルキレン基の炭素数は、12以下であることが好ましい。また、2価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、上記したアルキレン基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0080】
2価の酸素含有炭化水素基は、例えば、エーテル結合とアルキレン基とを含む基などである。ただし、エーテル結合とアルキレン基とを含む基は、1つのエーテル結合と1つのアルキレン基とが連結された基でもよいし、2つのアルキレン基が1つのエーテル結合を介して連結された基(アラルキレン基)でもよい。この場合のアルキレン基の炭素数は、12以下であることが好ましい。また、2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、上記したエーテル結合とアルキレン基とを含む基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0081】
R5の具体例は、下記の式(2−13)〜式(2−19)で表される直鎖状のアルキレン基、式(2−20)〜式(2−28)で表される分岐状のアルキレン基、式(2−29)〜式(2−31)で表されるアリーレン基、または式(2−32)〜式(2−34)で表されるアリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基(ベンジリデン基)などである。
【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
【化10】

【0085】
なお、エーテル結合とアルキレン基とを含む基としては、エーテル結合とアルキレン基とが交互に連結されていると共に両末端がアルキレン基である基(交互連結基)が好ましい。この交互連結基の炭素数は、4〜12であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。ただし、エーテル結合およびアルキレン基の数や、それらの連結順などは、自由に変更可能である。
【0086】
交互連結基であるR5の具体例は、例えば、下記の式(2−35)〜式(2−47)で表される基などである。また、式(2−35)〜式(2−47)に示した交互連結基がハロゲン化された基は、例えば、式(2−48)〜式(2−56)で表される基などである。中でも、式(2−40)〜式(2−42)に示した基が好ましい。
【0087】
【化11】

【0088】
【化12】

【0089】
ジ炭酸エステル化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0090】
ジ炭酸エステル化合物の具体例は、下記の式(2−1)〜式(2−12)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(2)に該当する他の化合物でもよい。
【0091】
【化13】

【0092】
[ジカルボン酸化合物]
式(3)に示した補助化合物は、上記したように、両末端にカルボン酸エステル基(−O−C(=O)−R7および−O−C(=O)−R9)を有するジカルボン酸化合物である。
【0093】
R7およびR9の種類は、上記したように1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。また、R8の種類は、上記したように2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。ジカルボン酸化合物が2つのカルボン酸基を有していることで、R7〜R9の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。なお、R7およびR9は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。nの値は、1以上の整数であれば、任意の値でよい。R7〜R9に関する詳細は、例えば、R4〜R6と同様である。
【0094】
ジカルボン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、162〜1000が好ましく、162〜500がより好ましく、162〜300がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0095】
ジカルボン酸化合物の具体例は、下記の式(3−1)〜式(3−17)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(3)に該当する他の化合物でもよい。
【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】
[ジスルホン酸化合物]
式(4)に示した補助化合物は、両末端にスルホン酸エスエル基(−O−S(=O)2 −R10および−O−S(=O)2 −R12)を有するジスルホン酸化合物である。
【0099】
R10およびR12の種類は、上記したように1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。また、R11の種類は、上記したように2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。ジスルホン酸化合物が2つのスルホン酸基を有していることで、R10〜R12の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。なお、R10およびR12は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R10〜R12に関する詳細は、例えば、R4〜R6と同様である。
【0100】
ジスルホン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0101】
ジスルホン酸化合物の具体例は、下記の式(4−1)〜式(4−9)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(4)に該当する他の化合物でもよい。
【0102】
【化16】

【0103】
[フルオロリン酸リチウム]
式(5)に示した補助化合物は、1つのフッ素を構成元素として含むフルオロリン酸リチウム(モノフルオロリン酸リチウム)である。式(6)に示した補助化合物は、2つのフッ素を構成元素として含むフルオロリン酸リチウム(ジフルオロリン酸リチウム)である。
【0104】
電解液中における補助化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.001重量%〜2重量%であることが好ましく、0.1重量%〜1重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0105】
[溶媒]
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒(上記したシアノ環状炭酸エステルおよび補助化合物を除く)のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0106】
この非水溶媒は、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、またはジメチルスルホキシドなどである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0107】
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種類が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0108】
特に、溶媒は、下記の式(7)〜式(9)で表される不飽和環状炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。充放電時において主に負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。この不飽和環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和炭素結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルである。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。ただし、不飽和環状炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られず、式(7)〜式(9)に該当する他の化合物でもよい。
【0109】
【化17】

(R21およびR22は水素基またはアルキル基である。)
【0110】
【化18】

(R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であり、R23〜R26のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【0111】
【化19】

(R27およびR28は水素基またはアルキル基であり、R29は=CH−R30で表される基であり、R30は水素基またはアルキル基である。)
【0112】
式(7)に示した不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。R21およびR22の種類は、上記したように水素基またはアルキル基であれば、特に限定されない。R21およびR22は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このアルキル基は、例えば、メチル基またはエチル基などであり、そのアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。炭酸ビニレン系化合物の具体例は、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、または4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどである。なお、R21およびR22は、アルキル基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基でもよい。この場合における炭酸ビニレン系化合物の具体例は、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0113】
式(8)に示した不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。R23〜R26の種類は、上記したように水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であれば、特に限定されない。ただし、R23〜R26のうちの少なくとも1つがビニル基またはアリル基であることを条件とする。R23〜R26は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、R23〜R26のうちの一部が同じ種類の基でもよい。このアルキル基の種類および炭素数は、R21およびR22と同様である。炭酸ビニルエチレン系化合物の具体例は、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R32〜R35としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
【0114】
式(9)に示した不飽和環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。R27およびR28の種類は、上記したように水素基またはアルキル基であれば、特に限定されない。R27およびR28は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R29は=CH−R30で表される基(R30は水素基またはアルキル基)であれば、特に限定されない。なお、上記したアルキル基の種類および炭素数は、R21およびR22と同様である。炭酸メチレンエチレン系化合物の具体例は、炭酸メチレンエチレン(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。この炭酸メチレンエチレン系化合物は、式(10)に示したように1つのメチレン基を有する化合物の他、2つのメチレン基を有する化合物でもよい。
【0115】
なお、不飽和環状炭酸エステルは、式(7)〜式(9)に示した化合物の他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)でもよい。
【0116】
また、溶媒は、下記の式(10)および式(11)で表されるハロゲン化炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。充放電時において主に負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。式(10)に示したハロゲン化炭酸エステルは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状の炭酸エステル(ハロゲン化環状炭酸エステル)である。式(11)に示したハロゲン化炭酸エステルは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む鎖状の炭酸エステル(ハロゲン化鎖状炭酸エステル)である。R30〜R33は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、R30〜R33のうちの一部が同じ種類の基でもよい。このことは、R34〜R39についても同様である。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。ただし、ハロゲン化炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られず、式(10)および式(11)に該当する他の化合物でもよい。
【0117】
【化20】

(R30〜R33は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R30〜R33のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【0118】
【化21】

(R34〜R39は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R34〜R39のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【0119】
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素(F)、塩素(Cl)または臭素(Br)が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
【0120】
ハロゲン化環状炭酸エステルは、例えば、下記の式(10−1)〜式(10−21)で表される化合物などである。このハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(10−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(10−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。また、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。
【0121】
【化22】

【0122】
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンは、例えば、プロパンスルトンまたはプロペンスルトンなどである。溶媒中におけるスルトンの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。ただし、スルトンの具体例は、上記した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0123】
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物は、例えば、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物、またはカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸または無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸または無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。ただし、酸無水物の具体例は、上記した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0124】
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の他の塩(例えばリチウム塩以外の軽金属塩)を含んでいてもよい。
【0125】
このリチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、または臭化リチウム(LiBr)である。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。ただし、リチウム塩の具体例は、上記した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0126】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種類が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0127】
特に、電解質塩は、下記の式(12)〜式(14)で表される化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、R41およびR43は同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R51〜R53、R61およびR62についても同様である。ただし、式(12)〜式(14)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られず、式(12)〜式(14)に該当する他の化合物でもよい。
【0128】
【化23】

(X41は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M41は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R41はハロゲン基である。Y41は−C(=O)−R42−C(=O)−、−C(=O)−CR432 −、または−C(=O)−C(=O)−である。ただし、R42はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R53はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a4は1〜4の整数であり、b4は0、2または4の整数であり、c4、d4、m4およびn4は1〜3の整数である。)
【0129】
【化24】

(X51は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M51は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y51は−C(=O)−(CR512 b5−C(=O)−、−R532 C−(CR522 c5−C(=O)−、−R532 C−(CR522 c5−CR532 −、−R532 C−(CR522 c5−S(=O)2 −、−S(=O)2 −(CR522 d5−S(=O)2 −、または−C(=O)−(CR522 d5−S(=O)2 −である。ただし、R51およびR53は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、e5およびn5は1または2の整数であり、b5およびd5は1〜4の整数であり、c5は0〜4の整数であり、f5およびm5は1〜3の整数である。)
【0130】
【化25】

(X61は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M61は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y61は−C(=O)−(CR612 d6−C(=O)−、−R622 C−(CR612 d6−C(=O)−、−R622 C−(CR612 d6−CR622 −、−R622 C−(CR612 d6−S(=O)2 −、−S(=O)2 −(CR612 e6−S(=O)2 −、または−C(=O)−(CR612 e6−S(=O)2 −である。ただし、R61は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R62は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a6、f6およびn6は1または2の整数であり、b6、c6およびe6は1〜4の整数であり、d6は0〜4の整数であり、g6およびm6は1〜3の整数である。)
【0131】
なお、1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
【0132】
式(12)に示した化合物は、例えば、式(12−1)〜式(12−6)で表される化合物などである。式(13)に示した化合物は、例えば、式(13−1)〜式(13−8)で表される化合物などである。式(14)に示した化合物は、例えば、式(14−1)で表される化合物などである。
【0133】
【化26】

【0134】
【化27】

【0135】
【化28】

【0136】
また、電解質塩は、下記の式(15)〜式(17)で表される化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、mおよびnは、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。このことは、p、qおよびrについても、同様である。ただし、式(15)〜式(17)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られず、式(15)〜式(17)に該当する他の化合物でもよい。
【0137】
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 ) …(15)
(mおよびnは1以上の整数である。)
【0138】
【化29】

(R71は炭素数=2〜4の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
【0139】
LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 )(Cr 2r+1SO2 ) …(17)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
【0140】
式(15)に示した化合物は、鎖状のイミド化合物であり、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 5 SO2 2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 7 SO2 ))、または(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 ))などである。
【0141】
式(16)に示した化合物は、環状のイミド化合物であり、例えば、式(16−1)〜式(16−4)で表される化合物などである。
【0142】
【化30】

【0143】
式(17)に示した化合物は、鎖状のメチド化合物であり、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )などである。
【0144】
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0145】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充電時において、正極21から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵されると共に、放電時において、負極22から放出されたリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0146】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0147】
最初に、正極21を作製する。正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合して、正極合剤とする。続いて、正極合剤を有機溶剤などに分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。続いて、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0148】
また、上記した正極21と同様の手順により、負極22を作製する。負極活物質と必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとが混合された負極合剤を有機溶剤などに分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成したのち、必要に応じて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
【0149】
また、溶媒に電解質塩を分散させたのち、シアノ環状炭酸エステルを加えて電解液を調製する。
【0150】
最後に、正極21および負極22を用いて二次電池を組み立てる。最初に、溶接法などを用いて、正極集電体21Aに正極リード25を取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層してから巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら、巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて、正極リード25の先端部を安全弁機構15に取り付けると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に取り付ける。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。続いて、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。
【0151】
[二次電池の作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいる。この場合には、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいない場合や、他の化合物を含んでいる場合と比較して、電解液の化学的安定性が特異的に向上するため、その電解液の分解反応が著しく抑制される。この「他の化合物」とは、例えば、下記の式(18)で表される化合物などであり、その化合物は、シアノ基の総数が1であるにもかかわらず、ハロゲン基等を有していない。よって、高温などの厳しい環境中において二次電池が充放電または保存されても電解液が分解しにくくなるため、優れた電池特性を得ることができる。特に、電解液中におけるシアノ環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜20重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
【0152】
【化31】

【0153】
<1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図3は、本技術の一実施形態における他の二次電池の分解斜視構成を表しており、図4は、図3に示した巻回電極体30のVI−VI線に沿った断面を拡大して示している。以下では、既に説明した円筒型の二次電池の構成要素を随時引用する。
【0154】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池であり、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されている。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層されてから巻回されたものである。正極33には正極リード31が取り付けられていると共に、負極34には負極リード32が取り付けられている。この巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
【0155】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成されていると共に、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。この導電性材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0156】
外装部材40は、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。このラミネートフィルムでは、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外周縁部同士が融着、または接着剤などにより貼り合わされている。融着層は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などである。表面保護層は、例えば、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートなどのフィルムである。
【0157】
中でも、外装部材40としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルム、または金属フィルムでもよい。
【0158】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により形成されている。このような材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂である。
【0159】
正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものであり、負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。また、セパレータ35の構成は、セパレータ23の構成と同様である。
【0160】
電解質層36は、高分子化合物により電解液が保持されたものであり、いわゆるゲル状の電解質である。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。この電解質層36は、必要に応じて、添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0161】
高分子化合物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などのいずれか1種類または2種類以上である。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。電気化学的に安定だからである。
【0162】
電解液の組成は、円筒型の場合と同様であり、その電解液は、シアノ環状エステルを含んでいる。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
【0163】
なお、ゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
【0164】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充電時において、正極33から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵されると共に、放電時において、負極34から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
【0165】
[二次電池の製造方法]
このゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
【0166】
第1手順では、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。この場合には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などの溶媒とを含む前駆溶液を調製したのち、その前駆溶液を正極33および負極34に塗布してゲル状の電解質層36を形成する。続いて、溶接法などを用いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層してから巻回させて巻回電極体30を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外周縁部同士を接着させて巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。
【0167】
第2手順では、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード52を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33および負極34を積層してから巻回させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、熱融着法などを用いて一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、モノマーを熱重合させる。これにより、高分子化合物が形成されるため、ゲル状の電解質層36が形成される。
【0168】
第3手順では、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2手順と同様に、巻回体を作製して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体または多元共重合体)などである。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体、またはフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、フッ化ビニリデンを成分とする重合体と一緒に、他の1種類または2種類以上の高分子化合物を用いてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40の開口部を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸するため、その高分子化合物がゲル化して電解質層36が形成される。
【0169】
この第3手順では、第1手順よりも二次電池の膨れが抑制される。また、第3手順では、第2手順とは異なり、高分子化合物の原料であるモノマーまたは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36との間において十分な密着性が得られる。
【0170】
[二次電池の作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、電解質層36の電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいるので、円筒型の二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、円筒型と同様である。
【0171】
<1−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)>
ここで説明する二次電池は、電極反応物質であるリチウム(リチウム金属)の析出溶解より負極22の容量が得られるリチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により形成されていることを除き、上記したリチウムイオン二次電池(円筒型)と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
【0172】
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属を用いているため、高いエネルギー密度が得られるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により形成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用して、負極集電体22Aを省略してもよい。
【0173】
この二次電池では、例えば、充電時において、正極21から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。また、例えば、放電時において、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって電解液中に溶出し、その電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0174】
このリチウム金属二次電池によれば、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいるので、上記したリチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、円筒型と同様である。なお、上記したリチウム金属二次電池は、円筒型に限らず、ラミネートフィルム型でもよい。この場合においても同様の効果を得ることができる。
【0175】
<2.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例について説明する。
【0176】
二次電池の用途は、それを駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして用いることが可能な機械、機器、器具、装置またはシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。二次電池が電源として用いられる場合、それは主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。この主電源の種類は、二次電池に限られない。
【0177】
二次電池の用途としては、例えば、以下の用途などが挙げられる。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビまたは携帯用情報端末などの携帯用電子機器である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源またはメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルまたは電動のこぎりなどの電動工具である。ノート型パソコンなどの電源として用いられる電池パックである。ペースメーカーまたは補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、上記以外の用途でもよい。
【0178】
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具または電子機器などに適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に特性向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源であり、いわゆる組電池などである。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源も併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されており、その電力が必要に応じて消費されるため、家庭用の電気製品などが使用可能になる。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0179】
ここで、二次電池のいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
【0180】
<2−1.電池パック>
図5は、電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、図5に示したように、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
【0181】
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。電源62は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の二次電池を含む組電池であり、それらの接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
【0182】
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
【0183】
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するようになっている。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時に制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時に補正処理を行うために用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定して、その測定電圧アナログ/デジタル変換(A/D)変換して制御部61に供給するものである。
【0184】
スイッチ制御部67は、電流測定部66および電圧測定部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
【0185】
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部67(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御するようになっている。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断するようになっている。
【0186】
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部67(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないように制御するようになっている。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断するようになっている。
【0187】
なお、二次電池では、例えば、過充電検出電圧は4.20V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
【0188】
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階で測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)が記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部10が残容量などの情報を把握できる。
【0189】
温度検出素子69は、電源62の温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
【0190】
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)または電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)に接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
【0191】
<2−2.電動車両>
図6は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、例えば、図6に示したように、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
【0192】
この電動車両は、エンジン75またはモータ77のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合、エンジン75の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力は発電機79にも伝達され、その回転力により発電機79が交流電力を発生させると共に、その交流電力はインバータ83を介して直流電力に変換され、電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換され、その交流電力によりモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。
【0193】
なお、図示しない制動機構により電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達され、その回転力によりモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換され、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
【0194】
制御部74は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続され、その外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積可能になっていてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどを含んでいる。
【0195】
なお、上記では電動車両としてハイブリッド自動車について説明したが、電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0196】
<2−3.電力貯蔵システム>
図7は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。この電力貯蔵システムは、例えば、図7に示したように、一般住宅または商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
【0197】
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能になっている。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能になっている。
【0198】
なお、電気機器94は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビまたは給湯器などの1または2以上の家電製品を含んでいる。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機または風力発電機などの1種類または2種類以上である。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクまたはハイブリッド自動車などの1種類または2種類以上である。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所または風力発電所などの1種類または2種類以上である。
【0199】
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能になっている。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、必要に応じて外部と通信しながら、家屋89における需要・供給のバランスを制御し、効率的で安定したエネルギー供給を可能にするようになっている。
【0200】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である太陽光発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部91の指示に応じて、必要に応じて電気機器94または電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
【0201】
電源91に蓄積された電力は、任意に利用可能である。このため、例えば、電気使用量が安い深夜に集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、その電源91に蓄積しておいた電力を電気使用量が高い日中に用いることができる。
【0202】
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
【0203】
<2−4.電動工具>
図8は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、図8に示したように、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
【0204】
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この制御物99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、必要に応じて電源100からドリル部101に電力を供給して可動させるようになっている。
【実施例】
【0205】
本技術の具体的な実施例について、詳細に説明する。
【0206】
(実験例1−1〜1−12)
以下の手順により、図1および図2に示した円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0207】
正極21を作製する場合には、最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とをLi2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で焼成(900℃×5時間)してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン:PVDF)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン:NMP)に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の正極集電体21A(20μm厚のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて正極活物質層21Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
【0208】
負極22を作製する場合には、最初に、負極活物質(炭素材料である人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(PVDF)10質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、負極合剤を有機溶剤(NMP)に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の負極集電体22A(15μm厚の電解銅箔)の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
【0209】
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレン(EC)および炭酸ジメチル(DMC))に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、表1に示したように、必要に応じてシアノ環状炭酸エステルを加えた。この場合には、溶媒の組成を重量比でEC:DMC=50:50、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。なお、比較のために、必要に応じて式(18)に示した化合物を用いた。
【0210】
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体21Aにアルミニウム製の正極リード25を溶接すると共に、負極集電体22Aにニッケル製の負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ23(25μm厚の微多孔性ポリプロピレンフィルム)を介して正極21と負極22とを積層してから巻回したのち、粘着テープで巻き終わり部分を固定して巻回電極体20を作製した。続いて、巻回電極体20の巻回中心にセンターピン24を挿入した。続いて、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟みながら、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶11の内部に巻回電極体20を収納した。この場合には、正極リード25の一端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の一端部を電池缶11に溶接した。続いて、減圧方式により電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させた。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめた。これにより、円筒型の二次電池が完成した。なお、二次電池を作製する場合には、正極活物質層21Bの厚さを調節して、満充電時に負極22にリチウム金属が析出しないようにした。
【0211】
二次電池の諸特性として高温サイクル特性および高温保存特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
【0212】
高温サイクル特性を調べる場合には、電池状態を安定化させるために常温環境中(23℃)において二次電池を1サイクル充放電させたのち、高温環境中(65℃)において二次電池をさらに1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、同環境中においてサイクル数の合計が300サイクルになるまで充放電を繰り返して放電容量を測定した。この結果から、サイクル維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充電時には、0.2Cの電流で上限電圧4.2Vまで定電流定電圧充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cに到達するまで充電した。放電時には、0.2Cの電流で終始電圧2.5Vに到達するまで定電流放電した。なお、「0.2C」および「0.05C」とは、それぞれ電池容量(理論容量)を5時間および20時間で放電しきる電流値である。
【0213】
高温保存特性を調べる場合には、高温サイクル特性を調べた場合と同様の手順により電池状態を安定化した二次電池を用いて、常温環境中(23℃)において二次電池を1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、二次電池を再び充電させた状態で恒温槽中(80℃)に10日間保存したのち、常温環境中(23℃)において二次電池を放電させて放電容量を測定した。この結果から、保存維持率(%)=(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、サイクル特性を調べた場合と同様である。
【0214】
【表1】

【0215】
負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合には、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
【0216】
詳細には、シアノ環状炭酸エステル等を用いていない場合(実験例1−11)の結果を基準とする。式(1)に示した条件を満たしていない化合物を用いた場合(実験例1−12)には、上記基準と比較して、サイクル維持率は同等であったが、保存維持率は減少した。これに対して、式(1)に示した条件を満たしている化合物(シアノ環状炭酸エステル)を用いた場合(実験例1−1〜1−10)には、上記基準と比較して、サイクル維持率および保存維持率が著しく増加した。この結果は、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいると、高温の厳しい温度条件下においても電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。
【0217】
特に、シアノ環状炭酸エステルを用いた場合には、電解液中の含有量が0.01重量%〜20重量%であると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
【0218】
(実験例2−1〜2−18)
表2に示したように溶媒の組成を変更したことを除き、実験例1−5と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
【0219】
ECと組み合わせた溶媒は、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)または炭酸プロピル(PC)である。この他、不飽和環状炭酸エステルは炭酸ビニレン(VC)、ハロゲン化環状炭酸エステルは4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)またはトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(t−DFEC)、ハロゲン化鎖状炭酸エステルは炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)、スルトンはプロペンスルトン(PRS)、酸無水物は無水コハク酸(SCAH)または無水スルホプロピオン酸(PSAH)である。
【0220】
溶媒の組成は、重量比でEC:PC:DMC=10:20:70である。溶媒中の含有量は、VCが2重量%、FEC、t−DFECまたはDFDMCが5重量%、PRS、SCAHまたはPSAHが1重量%である。
【0221】
【表2】

【0222】
溶媒の組成を変更しても、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液が不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルトンまたは酸無水物を含んでいると、サイクル維持率および保存維持率の一方または双方がより増加した。
【0223】
(実験例3−1〜3−17)
表3に示したように電解液に補助化合物を加えたことを除き、実験例1−5と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
【0224】
【表3】

【0225】
電解液がシアノ環状炭酸エステルと一緒に補助化合物を含んでいると、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
【0226】
(実験例4−1〜4−3)
表4に示したように電解質塩の組成を変更したことを除き、実験例1−5と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
【0227】
ここで、LiPF6 と組み合わせた電解質塩は、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、式(12−6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム(LiBOB)、またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 :LiTFSI)である。この場合には、LiPF6 の含有量を非水溶媒に対して0.9mol/kg、LiBF4 等の含有量を非水溶媒に対して0.1mol/kgとした。
【0228】
【表4】

【0229】
電解質塩の組成を変更しても、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液がLiBF4 などの他の電解質塩を含んでいると、保存維持率がより増加した。
【0230】
(実験例5−1〜5−12,6−1〜6−18,7−1〜7−18,8−1〜8−3)
表5〜表8に示したように、負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いたことを除き、実験例1−1〜1−12、2−1〜2−18,3−1〜3−17,4−1〜4−3と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
【0231】
負極22を作製する場合には、電子ビーム蒸着法を用いて負極集電体22Aの両面にケイ素を堆積させて負極活物質層22Bを形成した。この場合には、10回の堆積工程を繰り返して、負極活物質層22Bの厚さを6μmとした。
【0232】
【表5】

【0233】
【表6】

【0234】
【表7】

【0235】
【表8】

【0236】
負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いても、炭素材料を用いた場合(表1〜表4)と同様の結果が得られた。すなわち、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。これ以外の傾向は、炭素材料を用いた場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0237】
表1〜表8の結果から、電解液がシアノ環状炭酸エステルを含んでいると、優れた電池特性が得られることが確認された。
【0238】
以上、実施形態および実施例を挙げて本技術について説明したが、本技術は実施形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本技術の二次電池用電解液は、キャパシタなどの他の用途に適用されてもよい。
【0239】
また、実施形態および実施例では、二次電池の種類としてリチウムイオン二次電池またはリチウム金属二次電池について説明したが、これに限られない。本技術の二次電池は、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵放出による容量とリチウム金属の析出溶解に伴う容量とを含み、かつ、それらの容量の和により電池容量が表される二次電池についても、同様に適用可能である。この場合には、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料が用いられると共に、その負極材料の充電可能な容量は、正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0240】
また、実施形態および実施例では、電池構造が円筒型またはラミネートフィルム型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。本技術の二次電池は、角型、コイン型またはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
【0241】
また、実施形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、これに限られない。この電極反応物質は、例えば、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムまたはカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本技術の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。
【0242】
また、実施形態および実施例では、シアノ環状炭酸エステルの含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明している。しかしながら、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本技術の効果を得る上で特に好ましい範囲であるため、本技術の効果が得られるのであれば、上記した範囲から含有量が多少外れてもよい。このことは、補助化合物および不飽和環状炭酸エステルの含有量についても同様である。
【0243】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
二次電池。
【化32】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
(2)
前記R1〜R3のうち、
前記ハロゲン基はフッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記シアノ環状炭酸エステルは下記の式(1−1)〜式(1−24)で表される化合物である、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
【化33】

【化34】

(4)
前記電解液中における前記シアノ環状炭酸エステルの含有量は0.01重量%〜20重量%である、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(5)
前記電解液は下記の式(2)〜式(6)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
【化35】

(R4およびR6は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【化36】

(R7およびR9は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R8は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)
【化37】

(R10およびR12は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R11は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
Li2 PFO3 …(5)
LiPF2 2 …(6)
(6)
前記R4〜R12のうち、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の炭化水素基または前記2価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の酸素含有炭化水素基または前記2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基はエーテル結合とアルキレン基とを含む基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(5)に記載の二次電池。
(7)
前記式(2)に示した化合物は下記の式(2−1)〜式(2−12)で表される化合物であり、
前記式(3)に示した化合物は下記の式(3−1)〜式(3−17)で表される化合物であり、
前記式(4)に示した化合物は下記の式(4−1)〜式(4−9)で表される化合物である、
上記(5)または(6)に記載の二次電池。
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

(8)
前記電解液中における前記式(2)〜式(6)に示した化合物の含有量は0.001重量%〜2重量%である、
上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の二次電池。
(9)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の二次電池。
(10)
下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
二次電池用電解液。
【化42】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
(11)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(12)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(13)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(14)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(15)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、
電子機器。
【符号の説明】
【0244】
11…電池缶、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、36…電解質層、40…外装部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
二次電池。
【化1】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項2】
前記R1〜R3のうち、
前記ハロゲン基はフッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記シアノ環状炭酸エステルは下記の式(1−1)〜式(1−24)で表される化合物である、
請求項1記載の二次電池。
【化2】

【化3】

【請求項4】
前記電解液中における前記シアノ環状炭酸エステルの含有量は0.01重量%〜20重量%である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解液は下記の式(2)〜式(6)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1記載の二次電池。
【化4】

(R4およびR6は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R5は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【化5】

(R7およびR9は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R8は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)
【化6】

(R10およびR12は1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R11は2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
Li2 PFO3 …(5)
LiPF2 2 …(6)
【請求項6】
前記R4〜R12のうち、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の炭化水素基または前記2価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の酸素含有炭化水素基または前記2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基はエーテル結合とアルキレン基とを含む基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
請求項5記載の二次電池。
【請求項7】
前記式(2)に示した化合物は下記の式(2−1)〜式(2−12)で表される化合物であり、
前記式(3)に示した化合物は下記の式(3−1)〜式(3−17)で表される化合物であり、
前記式(4)に示した化合物は下記の式(4−1)〜式(4−9)で表される化合物である、
請求項5記載の二次電池。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【請求項8】
前記電解液中における前記式(2)〜式(6)に示した化合物の含有量は0.001重量%〜2重量%である、
請求項5記載の二次電池。
【請求項9】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項10】
下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
二次電池用電解液。
【化11】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項11】
二次電池と、
その二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備え、
前記二次電池は正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
電池パック。
【化12】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項12】
二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備え、
前記二次電池は正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
電動車両。
【化13】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項13】
二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備え、
前記二次電池は正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
電力貯蔵システム。
【化14】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項14】
二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備え、
前記二次電池は正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
電動工具。
【化15】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【請求項15】
二次電池を電力供給源として備え、
前記二次電池は正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は下記の式(1)で表されるシアノ環状炭酸エステルを含む、
電子機器。
【化16】

(R1〜R3は水素基、ハロゲン基、シアノ基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1〜R3のうちの任意の2つ以上は互いに結合されていてもよい。ただし、シアノ基の総数が1である場合、R1〜R3のうちの少なくとも1つはハロゲン基、1価のハロゲン化炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93300(P2013−93300A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−958(P2012−958)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】