説明

二次電池

【課題】シート状の正極及びシート状の負極に関するスペース効率を高めつつ電極の高温化の抑制を確保できる二次電池を提供する。
【解決手段】器部12内にはシート状の複数の負極14とシート状の複数の正極15とをセパレータを介在させて交互に積層した積層セル16が収納されている。積層セル16は、U字形状に折り返された形状に形成されている。面161が間を空けて対向する態様となるU字形状の積層セル16の凹部21には絶縁性の一対の平板22,23と、両平板22,23間で平板22,23に連結された波板形状の熱伝達部材24とが配設されている。熱伝達部材24の左右両端は、器部12の側壁121,122に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の正極と、シート状の負極と、セパレータとを備え、前記正極と前記負極とは交互に前記セパレータを介在させて積層してなる積層セルと、前記積層セルに含浸された電解液とを有する二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されるこの種の二次電池では、充放電に伴う電極の発熱によるサイクル性能や電池寿命の低下の問題がある。
特許文献2に開示の二次電池では、積層された平板形状の正極板と平板形状の負極板との間に放熱板が介在されている。放熱板は、正極板、負極板及び電解液を収納する容器に連結されている。電極の熱の一部は、電解液及び放熱板を経由して容器に伝えられて放熱され、電極の高温化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−58192号公報
【特許文献2】特開2010−287491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、平板形状の正極板及び負極板は、適度な間隔を置いて単に平行状態に並設されているだけであり、平行状態の正極板と負極板との間に放熱板を介在する構成では、正極板及び負極板に関するスペース効率が良いとは言えない。
【0005】
本発明は、二次電池におけるシート状の正極及びシート状の負極に関するスペース効率を高めつつ電極の高温化の抑制を確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シート状の正極と、シート状の負極と、セパレータとを備え、前記正極と前記負極とは交互に前記セパレータを介在させて積層してなる積層セルと、前記積層セルに含浸された電解液とを有する二次電池を対象とし、請求項1の発明では、前記積層セルは、前記積層セルの面が間を空けて対向する態様に折り返されており、折り返された前記積層セルの間に前記積層セルからの熱を吸収可能な熱吸収部が設けられている。
【0007】
シート状の正極とシート状の負極とを折り返した構成は、シート状の正極及びシート状の負極に関するスペース効率の向上に寄与する。折り返された内側は、高温化し易い箇所であり、このような折り返された内側に熱吸収部を設けた構成は、電極の高温化の抑制に有利である。
【0008】
好適な例では、前記熱吸収部は、温度相転移物質を備えている。
電極の熱の一部は、折り返された内側の温度相転移物質に蓄熱され、電極の高温化が抑制される。
【0009】
好適な例では、前記二次電池は、さらに前記積層セル及び前記電解液が収容される容器を有し、前記熱吸収部は、前記容器に連結された銅またはアルミニウムからなる熱伝達部材を備えている。
【0010】
電極の熱の一部は、折り返された内側の熱伝達部材を介して容器から放熱される。
好適な例では、前記熱吸収部は、冷媒が流通される流通管が備えられている。
電極の熱の一部は、冷媒を介して運ばれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二次電池は、シート状の正極及びシート状の負極に関するスペース効率を高めつつ電極の高温化の抑制を確保できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態を示し、(a)は、断面図。(b)は、図1(a)のA−A線断面図。
【図2】第2の実施形態を示し、(a)は、断面図。(b)は、図2(a)のB−B線断面図。
【図3】第3の実施形態を示し、(a)は、断面図。(b)は、図3(a)のC−C線断面図。
【図4】第4の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1(a),(b)に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、二次電池10を構成する容器11は、上に開口する器部12と、器部12の上部開口を塞ぐ蓋13とから構成されている。
【0014】
図1(b)に示すように、器部12内にはシート状の複数の負極14とシート状の複数の正極15とを交互に積層した積層セル16が収納されている。積層セル16は、U字形状に折り返された形状に形成されている。積層セル16は、積層セル16が含浸された電解液とともに容器11に収容されている。隣接する負極14と正極15との間には絶縁性のセパレータ25が介在されている。セパレータ25は、負極14と正極15との電気的接触を阻止する。正極15と負極14とを交互にセパレータ25を介在させて積層してなる積層セル16は、積層セル16の一方の面161が間を空けて対向する態様に折り返されている。積層セル16は、図示しない電解液に含浸されている。
【0015】
各負極14には集電端子17が電気的に接続されており、集電端子17には負極リード端子18が電気的に接続されている。負極リード端子18は、蓋13を貫通して容器11外へ突出している。各正極15には集電端子19が電気的に接続されており、集電端子19には正極リード端子20が電気的に接続されている。正極リード端子20は、蓋13を貫通して容器11外へ突出している。
【0016】
面161が間を空けて対向する態様となるU字形状の積層セル16の凹部21(折り返された内側)には一対の平板22,23と、両平板22,23間で平板22,23に連結された波板形状の熱伝達部材24とが配設されている。平板22,23は、絶縁部材で作られており、熱伝達部材24は、熱伝導率の高い部材(例えば銅、アルミニウム)で作られている。平板22,23は、積層セル16と熱伝達部材24との電気的な接触を阻止している。
【0017】
図1(a)に示すように、熱伝達部材24の左右両端は、器部12の側壁121,122に接合されている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0018】
積層セル16で生じる熱の一部は、器部12に接合された熱伝達部材24を介して器部12に伝達されて放熱される。積層セル16をU字形状に折り返した構成は、正極15及び負極14に関する容器11内のスペース効率の向上に寄与する。スペース効率の向上のための積層セル16の折り返しによって生じる凹部21内は、高温化し易い箇所であり、このような凹部21に熱伝達部材24を配設した構成は、二次電池10の高温化の抑制、及び容器11内の温度分布の不均一化の抑制に寄与する。又、高温化し易い凹部21に熱伝達部材24を配設した構成は、放熱効率を高める。
【0019】
熱伝達部材24は、積層セル16の折り返しによって形成された凹部21に設けられた熱吸収部である。つまり、熱伝達部材24は、積層セ16ルからの熱を吸収可能である。
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
【0020】
(1)積層セル16の折り返しによって生じる凹部21内に熱伝達部材24を配設した構成は、容器11内の温度分布の不均一化の抑制、及び放熱効率を高める。
次に、図2(a),(b)の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ校正部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。なお、セパレータの図示は省略している。
【0021】
凹部21内には密封器26が配設されており、密封器26内には相転移によって熱容量が変化する温度相転移物質27が収納されている。温度相転移物質27は、例えば硫酸ナトリウム十水和物である。硫酸ナトリウム十水和物の融点は、32°C程度であり、気温が32°Cを超える高温になっても、温度相転移物質27は、溶融して32°C程度に保たれる。密封器26及び温度相転移物質27は、熱吸収部としての蓄熱部材28を構成しており、蓄熱部材28は、二次電池10の高温化、及び容器11内の温度分布の不均一化を抑制する。
【0022】
次に、図3(a),(b)の第3の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。なお、セパレータの図示は省略している。
【0023】
凹部21内には複数本の流通管29が並列状態に配設されている。複数本の流通管29は、平板形状の一対の絶縁板30,31によって挟まれている。複数本の流通管29の一端は、器部12の側壁121を貫通して容器11外側へ突出しており、複数本の流通管29の他端は、器部12の側壁122を貫通して容器11外へ突出している。側壁121の外面には流入管32が配設されており、複数本の流通管29の一端が流入管32に接続されている。側壁122の外面には流出管33が配設されており、複数本の流通管29の他端が流出管33に接続されている。
【0024】
流入管32、流通管29及び流出管33は、循環路を構成しており、冷媒がこの循環路を循環して流通管29を流通する。冷媒が熱吸収部としての流通管29を流通することにより、二次電池10の高温化、及び容器11内の温度分布の不均一化が抑制される。
【0025】
次に、図4の第4の実施形態を説明する。第2の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。なお、セパレータの図示は省略している。
負極14と正極15とを交互に積層した積層セル16Aは、W字形状に折り返された形状に形成されている。積層セル16Aは、積層セル16Aの一方の面161が間を空けて対向する態様に2箇所で折り返されていると共に、他方の面162間を空けて対向する態様に1箇所で折り返されている。面161が間を空けて対向する態様となる積層セル16Aの凹部21A,21B(折り返された内側)、及び面162が間を空けて対向する態様となる積層セル16Aの凹部21C(折り返された内側)には蓄熱部材28が配設されている。蓄熱部材28は、積層セル16Aによって蓄熱部材28を挟み込んで積層セル16Aに予め固定されている。
【0026】
第4の実施形態では第2の実施形態と同じ効果が得られる。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○第1の実施形態において、折り返された積層セル16によって熱伝達部材24及び平板22,23を挟み込んで積層セル16に予め固定しておいてもよい。
【0027】
○第2の実施形態において、折り返された積層セル16,16Aによって蓄熱部材28を挟み込んで積層セル16,16Aに予め固定しておいてもよい。
○第3の実施形態において、流通管29に外気を流すようにしてもよい。
【0028】
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下に記載する。
(イ)前記積層セルは、1回のみ折り返された形状に形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【符号の説明】
【0029】
10…二次電池。11…容器。14…負極。15…正極。16,16A…積層セル。161,162…面。21,21A,21B,21C…凹部。24…熱吸収部としての熱伝達部材。25…セパレータ。27…温度相転移物質。28…熱吸収部としての蓄熱部材。29…熱吸収部としての流通管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の正極と、シート状の負極と、セパレータとを備え、前記正極と前記負極とは交互に前記セパレータを介在させて積層してなる積層セルと、前記積層セルに含浸された電解液とを有する二次電池において、
前記積層セルは、前記積層セルの面が間を空けて対向する態様に折り返されており、折り返された前記積層セルの間に前記積層セルからの熱を吸収可能な熱吸収部が設けられている二次電池。
【請求項2】
前記熱吸収部は、温度相転移物質を備えている請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記二次電池は、さらに前記積層セル及び前記電解液が収容される容器を有し、前記熱吸収部は、前記容器に連結された銅またはアルミニウムからなる熱伝達部材を備えている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項4】
前記熱吸収部は、冷媒が流通される流通管が備えられている請求項1に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−41741(P2013−41741A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177670(P2011−177670)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】