二相流体分離装置および方法
【課題】本発明は、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】排出流路に連通する開口部であって、長辺を有する少なくとも1つの開口部を二相流体に臨ませた上で、二相流体と開口部との間に、該開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせることによって、当該相対速度に相関した粒子径の粒子を分離する。本発明においては、相対速度の発生方法として、開口部を二相流体中で循環移動させる方法、または、開口部に対して二相流体を循環移動させる方法を採用することができる。
【解決手段】排出流路に連通する開口部であって、長辺を有する少なくとも1つの開口部を二相流体に臨ませた上で、二相流体と開口部との間に、該開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせることによって、当該相対速度に相関した粒子径の粒子を分離する。本発明においては、相対速度の発生方法として、開口部を二相流体中で循環移動させる方法、または、開口部に対して二相流体を循環移動させる方法を採用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二相流体分離装置に関し、より詳細には、二相流体から所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる二相流体分離装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二相流体(気液・固液・固気)の各相を分離する装置の多くは、フィルタ膜に対して二相流体を透過させ、流体中の液相あるいは固相のみを当該フィルタ膜で捕捉するものであったが、このようなフィルタ膜方式においては、フィルタの目詰まりに起因して分離効率が経時的に低下することが避けられず、フィルタの清掃・交換に伴う保守コストが過大になるという問題があった。
【0003】
この点につき、特開2005−28242号公報(特許文献1)は、二相流体内の比重(密度)の違いに基づいて、遠心力の作用を利用して固液を分離するフィルタ装置を開示する。しかしながら、この方式は、各相の比重に大きな差がない二相流体の分離に適用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法につき鋭意検討した結果、流体の排出側に連通するスリット状の開口部と分離対象となる二相流体との間に、該開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせた場合に、当該相対速度に相関した粒径の粒子成分が分離される現象を見出し、本発明に至ったのである。以下、本発明の二相流体分離方法の原理について、図1を参照して説明する。
【0007】
図1は、主流路Mおよび分岐流路Dからなる2次元流路を示す。図1に示す2次元流路においては、粒子径dの粒子成分を含む二相流体が主流路Mを左から右方向へ流下しており、主流路Mに対して幅hを有するスリット状の分岐流路Dが形成され、当該スリット開口の長手方向が二相流体の流下方向に直交しているものとする。この2次元流路において、主流路Mを流れる二相流体の流速をU、その粒子成分の体積濃度をα0、分岐流路Dを流れる二相流体の流速をu、その粒子成分の体積濃度をαとする。
【0008】
図1に示す2次元流路において、主流路Mの壁面からの離間距離が一定距離以内の場所を流れる二相流体の層は分岐流路Dに流れこみ、それを超える場所を流れる二相流体の層は分岐流路Dに流れ込むことなくこれを通過する。ここで、分岐流路Dに流れ込む限界流線の上流における主流路Mの壁面からの離間距離をHとする。
【0009】
さらに、限界流線以内の層を流れる二相流体に含まれる粒子成分のうち、主流路Mの壁面からの離間距離が一定距離以内の場所を流れる粒子は、流体に追随して分岐流路Dに流れこみ、それを超える場所を流れる粒子は、分岐流路Dに流れ込む流体に追随しきれずに分岐流路Dを通過する。ここで、分岐流路Dに流れ込む限界粒子軌跡の上流における主流路Mの壁面からの離間距離をYとする。
【0010】
ここで、主流路Mの壁面からの離間距離がd/2(粒子半径に相当)より小さい場所を流れる二相流体の層には粒子が含まれていないものとすることができるので、分岐流路Dに流入する二相流体のうち、粒子成分を含む流体は、上流における主流路Mの壁面からの離間距離yが、d/2≦y≦Yを満たす場所を流れる流体に限られる。したがって分岐流路Dに対して単位時間に流入する粒子体積は、
{ α0(Y−d/2)U }
となり、分岐流路Dの流量をq=UH=uhとすれば、分岐流路Dから流出する粒子の体積濃度αは、下記理論式で表すことができる。ここにqは奥行き単位幅当たりの流量で、m2/Sの単位をもつ。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、上記理論式(1)において、{d/H=dU/q=dU/(hu)=ζ}とおいて整理すると、分岐流路Dを流下する二相流体の体積濃度αと主流路Mを流れる二相流体の体積濃度α0の比(α/α0)を表す理論式として下記式(2)が導出される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、上記理論式(1)より{Y/d}の値が0.5以下のとき、体積濃度比(α/α0)が0になる。粒子が流れに追随する場合はY=Hとなり、{H/d=1/ζ}の値が0.5以下のとき、すなわちζの値が2以上のとき体積濃度比(α/α0)が0になる。つまり、上記理論式(1)、(2)によれば、これらの条件を満足するとき、分岐流路Dの体積濃度αを0にすること、すなわち、粒子径d以上の粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることが予想される。
【0015】
なお、上記理論式(1)(2)における{Y/d}ならびに{Y/H}はともに、分離対象系の比重=粒子密度/流体密度、レイノルズ数=流体密度×粒子直径×流速/流体粘度、ζ(=dU/q)の値、によって変化し、これらの値が大きくなるほど、{Y/d}ならびに{Y/H}は、小さな値を取る性質がある。なお、{Y/d}ならびに{Y/H}の値を求めるにあたっては、粒子と流体の相対速度によって粒子に加わる抗力、流体中で加速度運動する粒子に加わる付加質量、粒子が存在しない流れ場の圧力分布によって粒子が受ける力等を考慮に入れた、粒子の運動方程式を使用したシミュレーション計算によって求めることができる。
【0016】
たとえば、2次元流路中の二相流体において、仮に、粒子密度と流体密度の比が1を大きく超えない場合、また、粒子密度が流体密度よりかなり大きな場合であっても、レイノルズ数が小さい場合には、二相流体中の全ての粒子成分は、流体に追随する形で分岐流路Dに流れ込むため、Y=H、すなわち、{Y/H=1}となり、下記理論式(2)から、{ζ≧2}を満たす条件において、{U≧2q/d}を満たす流速を与えれば、直径dよりも大きな粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることになる。
【0017】
一方で、液滴を含む気体のように粒子の密度と流体の密度の比が1を大きく超えてかつレイノルズ数が1を大きく超えるような二相流体の場合には、図2に示すようなシミュレーション結果を使用して{Y/d}とUの関係を求める。図2は、直径30μの水滴を含む空気(気液流体)において、単位幅あたりの空気流量qが0.125m2/sの場合についてシミュレーションした結果である。図2に示されるシミュレーション結果が得られた場合、U(主流路Mを流れる二相流体の流速)の値を、{Y/d}の値が0.5となる値(図2の場合、U=42m/s)よりも大きく設定すれば、直径dよりも大きな粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることになる。
【0018】
本発明者は、上記理論式(2)の妥当性を検証すべく、図3(a)に概念的に示す2次元流路モデルを使用して予備実験を行なった。なお、本予備実験においては、固相としてポリスチレン粒子を、流体として当該ポリスチレンと同じ比重に調整した食塩水を使用し、主流路M(アスペクト比:H/B=1.66・0.6)について、所定条件(U,u,h,d)の下、分岐流路Dを流下する二相流体のポリスチレン粒子体積濃度αならびに主流路Mを流れる二相流体のポリスチレン粒子体積濃度α0を測定し、ζ(=dU/q)と体積濃度比(α/α0)の関係を算出した。本実験においては、上記条件(粒子密度/流体密度=1、すなわち、Y/H=1)を上記理論式(2)に代入し、ζ=2のときに、α/α0=0となる理論直線(実線)を設定したが、実験結果は、図3(b)に示すように、理論直線(実線)とよく一致した。
【0019】
本発明者は、上述した実証結果に基づいて、新規な二相流体の分離方法について検討を重ねた。その結果、上記理論式(2)のζ(=dU/q)における、{U}を、分岐流路Dのスリット開口と主流路M内に貯留される二相流体との間の相対速度として付与する構成に想到し、当該構成に基づく実証実験を実施した結果、二相流体中から所望に粒子成分を分離することに成功し、本発明に至ったのである。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明によれば、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を説明するための2次元流路を示す概念図。
【図2】気液流体についてのシミュレーション結果を示す図。
【図3】2次元流路モデルの予備実験の結果を示す図。
【図4】本発明の第一形式の第1の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図5】本発明の第一形式の第1の実施形態に適用可能な回転容器の形態を示す図。
【図6】本発明の第一形式の第1の実施形態に適用可能な回転容器の形態を示す図。
【図7】本発明の第一形式の第2の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図8】本発明の第一形式の第3の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図9】本発明の第二形式の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図10】貯留容器を開放容器または管として構成した二相流体分離装置を示す図。
【図11】実施例1の固液分離装置モデルを示す図。
【図12】排出液の質量流量(g/s)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図13】単位時間当たりに排出される排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図14】排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図15】実施例1の固液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)の関係を示す図。
【図16】実施例2の気液分離装置モデルを示す図。
【図17】排気の体積流量(L/s)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図18】単位時間当たりに排出される排気に含まれる水滴の質量(mg/s)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図19】排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図20】実施例2の気液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)の関係を示す図。
【図21】本実施例3の固液分離装置モデルを示す図。
【図22】排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と撹拌翼の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図23】実施例3の固液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)のを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0023】
本発明の二相流体分離装置の実装は、流体の排出側に連通する開口部と分離対象となる二相流体との間の相対速度を生じさせる構成によって、大きく2つの形式に分けることができる。すなわち、静止した二相流体に対して開口部側を循環移動させることによって当該二相流体との間に相対速度を生じさせる第1の形式、ならびに、静止した開口部に対して二相流体を循環移動させることによって当該開口部との間に相対速度を生じさせる第2の形式である。以下、まず、上述した第1の形式について説明する。
【0024】
図4は、第一形式の第1の実施形態である二相流体分離装置10を示す。図4(a)に示すように、二相流体分離装置10は、分離対象の二相流体を導入するための密閉容器11と、回転容器12とを含んで構成されている。なお、回転容器12は、モータなどの回転駆動手段13に接続されており、矢印の方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。
【0025】
図4(b)は、回転容器12のみを抜き出して示す。回転容器12は、中空の円盤状(すなわち、背の低い中空円柱状)に形成された容器14と細長い円筒部15とから構成されている。容器14の一方の底面の中心部には、円筒部15の内部空間と容器14の内部空間が連通する形で円筒部15が接続されており、回転容器12は、回転対称形状を有する中空容器として構成されている。
【0026】
回転容器12の容器14の底面のうち、一方の底面には、2つの開口部16,16が形成されており、密閉容器11の内部空間は、開口部16,16を介して回転容器12の内部と連通している。開口部16は、幅hを備える細長い長方形のスリットとして形成されており、矢印Rが示す回転容器12の回転方向に対して、その長辺がおおよそ垂直に対峙するように容器14の底面に対して形成されている。回転容器12は、密閉容器11の内部に回転自在に配置されており、円筒部15は、密閉容器11の壁面を貫通する形で外部に突出し、図示しない排出流路に接続される。
【0027】
上述した構成を備える二相流体分離装置10を使用した二相流体を分離する処理について、以下説明する。まず、導入流路17から密閉容器11内に二相流体が導入される。ここでは、説明の便宜のため、二相流体は、液相または気相の流体に対して2種類の粒子Lおよび粒子Sが分散しているものとし、粒子Lの粒子径がdであり、粒子Sの粒子径はdより小さいものとする。なお、図4に示す例の場合、密閉容器11内は二相流体によって完全に充填されるので、導入流路17から密閉容器11内に導入される二相流体の流量と、回転容器12の円筒部15から排出される二相流体の流量Q0とは等しくなり、Q0を開口部16の面積で割ると、二相流体分離装置10に設定される処理流量に対応した所定流速{u}ならびに単位幅あたりの流量q=uhが設定される。
【0028】
ここで、仮に回転容器12の回転が停止した状態であれば、導入流路17から導入された二相流体中の粒子Lおよび粒子Sは、いずれも開口部16,16から回転容器12内に流入し、円筒部15を通って外部に流出してしまうが、本実施形態の二相流体分離装置10においては、回転駆動手段13によって回転容器12を回転させ、その回転速度を制御することによって、粒子径dの粒子Lを含まない流体(すなわち、粒子Sのみを含む流体)を外部に送出することができる。
【0029】
本実施形態における回転容器12の回転速度(rpm)は、以下の手順で求めることができる。まず、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、限界粒子径d、単位幅あたりの流量q として、{ U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部16の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置10の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。
【0030】
なお、本実施形態における回転容器は、図4に示した形態に限定されるものではない。図5は、本実施形態に適用可能な回転容器の他の形態について例示する。図5(a)に示す回転容器20は、直方体状に形成された容器21と細長い円筒部22とを備え、容器21の上面の中心部に円筒部22が接続されてなるT字形状の中空容器として構成されており、容器21の底面には、2つの開口部23a、23bが形成されている。
【0031】
また、回転容器20においては、開口部23a、23bに接する流体の境界層をより薄くするために、例えば、図上に破線で囲んで示すように、直方体状の容器21に代えて中空の蒲鉾状に形成された容器24を使用して構成することができる。蒲鉾状の容器24の局面部分に開口部25を形成することによって、開口部と流体の相対速度は、丁度飛行機の翼の上の速度が飛行速度よりも大きくなるのと同様に、単純に回転によって得られる相対速度よりも大きな相対速度を得ることができ、しかも先端から開口部25までは増速流領域になるために、境界層の厚さを小さく抑えることができる。
【0032】
さらに、図左下に破線で囲んで示すように、容器21の底面に突き出した形で平板26を設け、そこに開口部23を設けることにより、開口部23周囲に平板26に平行で、乱れが少ない流れが形成され、その結果、開口部23近傍の境界層の厚さを小さく抑えることができる。さらに、図右下に破線で囲んで示す容器21の断面図に示されるように、容器21の厚み方向に対して傾斜した貫通孔として開口部23を形成することより、流体の主流方向に対してUターンするような流れが生まれ、その結果、粒子が流体に追随しないような二相流体において、そのフィルタリング効果が増加する。
【0033】
図6は、本実施形態に適用可能な回転容器の他の形態について例示する。図6に示す回転容器30は、中空の円柱状に形成された容器31と細長い円筒部32とを備え、容器31の上面の中心部に円筒部32が接続されてなる二段円柱状の中空容器として構成されており、容器31の外周面には、開口部33が形成されている。
【0034】
以上、本実施形態に適用可能な回転容器の形態について図5および図6に例示したが、本実施形態における回転容器は、上述した形態に限定されるものではなく、流体の排出側に連通する中空部を備える回転対称形状を有する中空容器であって、その壁面に少なくとも1つの開口部を備えるものであればどのような形態であってもよく、当業者であれば種々の設計変更が可能であろう。
【0035】
次に、本発明の第一形式の第2の実施形態に基づいて説明する。図7は、発明の第2の実施形態である二相流体分離装置40を示す。図7(a)に示すように、二相流体分離装置40は、分離対象の二相流体を導入するための直方体状の密閉容器41と、密閉容器41の外壁面41aに形成された円形の開口に対して、当該外壁面と面一になるように嵌合された正円形の回転壁42とを含んで構成されている。回転壁42は、モータなどの回転駆動手段43に対して密閉容器41の外壁面41aに垂直な軸44を介して接続されており、軸44を回転軸として、矢印R方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。また、図7(b)に示すように、密閉容器41の外壁面41aに対して、回転壁42を覆う形で排出流路45が形成されている。
【0036】
回転壁42は、正円形の円盤状に形成されており、回転壁42を貫通する2つの開口部46a、46bが形成されており、密閉容器41の内部空間は、開口部46a、46bを介して排出流路45と連通している。図7に示す開口部46a、46bは、細長い長方形状として形成されており、矢印Rが示す回転壁42の回転方向に対して、その長辺がおおよそ垂直に対峙するように回転壁42に対して形成されている。
【0037】
上述した構成を備える二相流体分離装置40が二相流体を分離する原理は、第1の実施形態について上述したのと基本的には同じである。ここで、導入流路47から密閉容器41内に所定流量Q0で導入された二相流体は、回転壁42に形成された開口部46a、46bから、同じ流量Q0で排出流路45側に送出されることから、回転壁42の回転速度(rpm)は、以下の手順で求めることができる。
【0038】
まず、流量Q0を開口部46a,46bの面積で除して流速uを求め、排出される二相流体の単位長さ当たりの流量{q=uh}を算出する。ここで、密閉容器41内に留まらせておきたい粒子Lの粒子径{d}とする場合、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、{U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部46の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置42の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。
【0039】
次に、図8を参照して、本発明の第一形式の第3の実施形態に基づいて説明する。図8は、発明の第3の実施形態である二相流体分離装置50を示す。図8(a)に示すように、二相流体分離装置50は、分離対象の二相流体を導入するための中空円柱状の密閉容器51を備え、密閉容器51の円周方向の一部は、密閉容器51(円柱)の中心軸を回転軸として回転自在に形成された円筒状の回転壁52によって構成されている。円筒状の回転壁52は、ロータリー・ジョイント53によって密閉容器51の外壁に回転自在に接続されており、回転壁52の外周に設けられたギア54を介して、モータなどの回転駆動手段55から動力を伝達され、密閉容器51の中心軸を回転軸として、矢印R方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。
【0040】
回転壁52には、貫通する2つの開口部55a、55bが形成されており、密閉容器51の内部空間は、開口部55a、55bを介して密閉容器51の外部と連通している。図8に示す開口部55a、55bは、細長い長方形状として形成されており、矢印Rが示す回転壁52の回転方向に対して、その長手辺がおおよそ垂直に対峙するように回転壁52に対して形成されている。また、図8(b)に示すように、密閉容器51の外周壁面に対して、回転壁52を覆う形で排出流路56が形成されており、密閉容器51の内部空間は、開口部55a、55bを介して排出流路56と連通している。なお、図8に示す二相流体分離装置50が二相流体を分離する原理は、第2の実施形態について上述したのと基本的には同じであるので説明を省略する。
【0041】
以上、本発明の第1の形式を第1実施形態〜第3実施形態をもって説明してきたが、本発明における回転容器ならびに回転壁に形成される開口部は、アスペクト比の大きい、長方形、平行四辺形、扇形等のスリット開口として形成することが好ましく、その長辺が回転容器の回転方向に対しておおよそ垂直に対峙するように形成されていることが好ましい。なお、開口部の形状およびその数については、各装置の実装に応じて適切な態様を適宜採用することができる。さらに加えて、本発明の第一形式においては、回転容器または回転壁の回転によって周りの流体に渦を生じさせないようにするため、各開口部の近傍の適切な位置に、邪魔板のような整流手段を設置することができる。
【0042】
以上、図4〜6を参照して、本発明の二相流体分離装置の実装のうち、静止した二相流体に対して開口部側を循環移動させることによって当該二相流体との間に相対速度を生じさせる第1の形式について説明しきたが、次に、静止した開口部に対して二相流体を循環移動させることによって当該開口部との間に相対速度を生じさせる第2の形式について、図9を参照して以下説明する。
【0043】
図9は、本発明の第二形式の実施形態である二相流体分離装置60を示す。図9(a)に示すように、二相流体分離装置60は、分離対象の二相流体を導入するための中空円柱状の密閉容器61と、密閉容器61内に導入した二相流体を回転撹拌するための回転撹拌翼62とを含んで構成されている。密閉容器61の底面61bには、長方形状の貫通孔である開口部63が形成されており、開口部63に連通する形で排出流路64が底面61bに接続されている。なお、開口部63は、上述した第1の形式について説明したのと同様に適宜適切な態様を採用することができる。
【0044】
回転撹拌翼62は、その回転方向が長方形状の開口部63の長辺に対しておおよそ垂直に対峙するように図示しない回転駆動手段によって回転駆動される。その結果、長方形状の開口部63の長辺に対しておおよそ垂直に対峙するような二相流体の流れRが形成され、二相流体と開口部63との間に相対速度が生じる。
【0045】
上述した構成を備える二相流体分離装置60が二相流体を分離する原理は、相対速度を発生させるための構成を除き、第一形式の第1の実施形態について上述したのと基本的には同じである。すなわち、導入流路65から密閉容器61内に所定流量Q0で導入された二相流体は、底面61bに形成された開口部63から、同じ流量Q0で排出流路64から排出される。この流量Q0を排出流路64の面積で除して流速uを求め、排出される二相流体の単位長さ当たりの流量{q=uh}を算出する。
【0046】
ここで、密閉容器61内に留まらせておきたい粒子Lの粒子径{d}とする場合、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、{U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部63の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置42の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。本実施形態においては、開口部63およびこれに連通する排出流路64を、図9(b)に示すように、密閉容器61の外周面61aに形成してもよい。
【0047】
なお、上述した第一形式、第二形式の実施形態においては、二相流体が貯留される容器を密閉容器として説明したが、本発明は、二相流体を貯留するための容器を開放容器として構成することもできる。図10(a)は、図4に例示した構成について、二相流体の貯留容器を開放容器11-2として構成した二相流体分離装置10-2を示す。二相流体分離装置10-2においては、二相流体の排出側に流量制御弁18を設けるなどして、排出される流体の単位長さ当たりの流量{q}を制御するとともに、その流量{q}と限界粒子径に適した回転数を選んで運転することが好ましい。
【0048】
さらに、図10(b)は、図4に例示した構成について、二相流体の貯留容器を閉塞端を持たない管11-3として構成した二相流体分離装置10-3を示す。二相流体分離装置10-3においては、二相流体の排出側に流量制御弁18を設けることに加え、管11-3の流下方向後方に流量制御弁19を設けて運用するもので、流量制御弁19の下流には高濃度の大粒子を含んだ二相流体が排出される。なお、上述した応用展開は、図4に例示した構成の変形に限らず、上述した形式1および形式2の他の全ての実施形態についても同様に可能である。
【0049】
本発明の二相流体分離装置は、気液・固液・固気の全ての二相流体に適用することが可能であり、また、一つの装置で種々のプロセスを実施することができる。例えば、所定径以上の粒子をターゲットにして、これを容器内で濃縮することはもちろんのこと、粒子成分を含まない流体のみを容器内に導入して運転し続けることによって、複数の粒径分布を持つ二相流体から、所定径未満の粒子成分のみを容器内から排除する(取り出す)といったプロセスを実施することもできる。
【0050】
さらに、本発明の二相流体分離装置は、二相流体の各相の比重差が小さい場合であっても確実に粒子を分離することができ、また、回転数制御によって、フィルタリングの限界粒子径を容易に変更することができる。さらに加えて、本発明の二相流体分離装置は、従来の遠心フィルタ装置において不可避であったターゲット粒子(比重の大きい粒子)に対する大きな重力の印加が発生しないため、壊れやすい粒子成分を分離するような用途に有効である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の二相流体分離装置について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
本発明を適用した固液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図11は、作製した固液分離装置モデル100を示す。本実施例の固液分離装置モデル100は、容器101(幅40cm、奥行き23cm、高さ27cm)と、支持体102に回転自在に支持された回転容器120と、回転容器120の内部に連通するように接続された排水管103とを含んで構成した。
【0053】
回転容器120は、直方体の上面に円筒を接続したT字形状の容器として構成し、直方体部分の底面に2つの開口部121a,121bを形成した。なお、開口部121a,121bの形状は、いずれも、回転中心cを中心とする半径R1=55mm(中心角θ=5.7°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=40mm(中心角5.7°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。また、回転容器120の円筒部の上端と排水管103とをロータリー・ジョイント104で接続した。さらに、支持体102に配置したモータ105の回転をプーリー106、連結ベルト107、プーリー108を介して回転容器120の円筒部に伝達し、回転容器120を回転駆動するように構成した。
【0054】
容器101には分離対象となる固液二相流体109を貯留した。なお、本実施例においては、液相と固相の比重が等しい固液二相流体を供試流体とした。具体的には、直径2.1mm、比重1.044のポリスチレン球形粒子を、同じく比重1.044に調整した食塩水に分散させたものを供試流体とした。
【0055】
回転容器120の直方体部が固液二相流体109に浸漬するように配置した。また、排水管103の端部が固液二相流体109の水面よりも下になるように固定し、サイフォンの原理で回転容器120内の流体が自然に排水管103側に吸い上げられ、排出されるようにした。
【0056】
上述した固液分離装置モデル100において、回転容器120の回転数(rpm)の条件を変化させ、排水管103から排出される供試流体に含まれるポリスチレン粒子の質量を計測した。
【0057】
図12は、排水管103から排出される排出液の質量流量(g/s)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。図12に示されるように、回転容器120の回転数が増加するにつれて水の抵抗が増すため、排出液の質量流量(g/s)が減少した。
【0058】
図13は、単位時間当たりに排出される排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。なお、ポリスチレン粒子の質量については、排出液をふるいにかけポリスチレン粒子を捕捉して、水分をふき取り、乾燥した後に質量を計測した。図13に示すように、回転容器120の回転数が増加するに従って、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)は減少した。
【0059】
ここで、図12に示した排出液の質量流量(g/s)のデータと図13に示した排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)のデータを総合して、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)を導出した。図14は、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。図14に示すように、回転容器120の回転数の増加に応じて、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)はほぼ直線的に減少した。
【0060】
上述した実験結果を受けて、本実施例の固液分離装置モデル100の挙動が本発明者の上記理論式(2)に合致するか否かについて検証した。
【0061】
図15は、本実施例の固液分離装置モデル100について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を示す。なお、本実施例においては、{ζ=U・d/(u・h)}における各項について、U:回転容器120の回転による相対速度、d:ポリスチレン粒子の直径、u :排水管103内の流速、h:開口部121の幅とした。ここで、S:開口部121の面積、r:任意の点の半径、N:回転容器120の回転数、n:開口部121の数、Q0:排水管103から流出する流量とした場合、U=2π・r・N、S=(R12−R22)・θ・n、h=r・θ、u=Q0/S、となるため、ζを式{ζ=Ud/(uh)=2πN・n・d(R12−R22)/Q0}により求めた。実験結果は、図15の●のプロットが示すように、破線で示す理論直線によく一致する結果となった。
【0062】
さらに、回転容器120の直方体状の容器を、図5(a)の破線で囲んで示した中空の蒲鉾状容器に代えた上で、上述したのと同様の条件で実験を行ない、同様に、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を求めた。図15の△のプロットがその結果を示す。図15に示されるように、蒲鉾状容器の局面部に開口部を設けた回転容器120を使用した実験結果は、破線で示す理論値により近づく結果となった。
【0063】
(実施例2)
次に、本発明を適用した気液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図16(a)は、作製した気液分離装置モデル200を示す。本実施例の気液分離装置モデル200は、密閉容器201(幅50cm、奥行き30cm、高さ30cm)に対して、吸気口202と排気口203とを形成して作製した。吸気口202には、ファン204を設け外気を密閉容器201内に導入した。一方、排気口203には、開口部が形成された回転板220を回転自在に嵌合し、これをモータ205によって回転駆動させた。さらに、排気口203を直方体容器206(幅40cm、奥行き25cm、高さ25cm)で覆い、直方体容器206の天井を貫通する形で内径54mmのパイプを取り付け、これを排気管207とした。排気流量については、排気管207の側面から熱線流速計を挿入して、パイプ内の流速を計測して求めた。なお、本実験においては、農業用噴霧器208(BH-590:パナソニック製/発生ミスト粒径50〜100μm)を使用して密閉容器201内でミストを発生させることによって、ミストを含んだ空気を吸気口202から導入した場合と同等の状態を再現した。
【0064】
図16(b)は、回転板220の上面図を示す。本実施例においては、回転板220に2つの開口部221a,221bを形成した。なお、開口部221a,221bの形状は、いずれも、回転中心cを中心とする半径R1=100mm(中心角θ=10°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=60mm(中心角10°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。
【0065】
上述した気液分離装置モデル200において、回転板220の回転数(rpm)の条件を変化させ、排気管207から排出される空気に含まれる水滴の質量を計測した。排気に含まれる水滴量については、以下の手順で計測した。排気管207の出口にガーゼを取り付け、これより先に水滴が流出しないようにした上で、のちにこのガーゼを回収した。さらに、直方体容器206の内壁に付着した水分を脱脂綿で完全にふき取り、回収したガーゼと脱脂綿の質量を計測し、質量の増分を排気に含まれる水滴量とした。
【0066】
図17は、排気管207から排出される排気の体積流量(L/s)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図17に示されるように、回転板220の回転数が増加するにつれて空気抵抗が増すため、排気の体積流量(L/s)が減少した。
【0067】
図18は、単位時間当たりに排出される排気に含まれる水滴の質量(mg/s)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図18に示すように、回転板220の回転数が増加するに従って、排気中の水滴の質量(mg/s)は減少した。
【0068】
ここで、図17に示した排気の体積流量(L/s)のデータと図18に示した排気中の水滴の質量(mg/s)のデータを総合して、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)を導出した。図19は、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図19に示すように、回転板220の回転数の増加に応じて、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)は減少した。
【0069】
図20は、本実施例の気液分離装置モデル200について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。なお、図中の▲および■のプロットは、使用したナショナル製噴霧器BH-590の主噴霧粒子径が50μ〜100μであることから、50μ粒子(▲)および100μの粒子(■)について、各回転数における体積濃度比(α/α0)を、上記理論式(2)に基づいたシミュレーション計算によって求めたものであり、図中の×は、実験点を示す。図20に示されるように、実験結果とシミュレーション結果はよく一致した。
【0070】
次に、先に図9を参照して説明した第二形式に基づいて固液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図21は、作製した固液分離装置モデル300を示す。本実施例の固液分離装置モデル300は、容器301(幅40cm、奥行き30cm、高さ30cm)と、容器301内に配置された板状の撹拌翼302(幅14cm、高さ10cm、厚さ5mm)とを含んで構成した。
【0071】
容器301の底面には2つの開口部303a,303bを形成し、これを覆う形で排水流路304を形成した。なお、開口部303a,303bの形状は、いずれも、撹拌翼302の回転軸との交点cを中心とする半径R1=55mm(中心角θ=5.7°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=40mm(中心角5.7°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。
【0072】
なお、本実施例においては、実施例1について使用したのと同じ、ポリスチレン球形粒子−食塩水分散液を供試流体として容器301に貯留した。上述した固液分離装置モデル300において、撹拌翼302の回転数(rpm)の条件を変化させ、排水流路304を流出する供試流体に含まれるポリスチレン粒子の質量を計測した。
【0073】
固液分離装置モデル300について、実施例1と同様の手順で排水流路304を流出する排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)を算出した。図22は、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と撹拌翼302の回転数(rpm)の関係を示す。図22に示すように、撹拌翼302の回転数の増加に応じて、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)は、減少した。なお、各プロット(○、△、□)は、再現性を確かめるために同様の実験を3回試行したことを示す。
【0074】
上述した実験結果を受けて、本実施例の固液分離装置モデル300の挙動が本発明者の上記理論式(2)に合致するか否かについて検証した。
【0075】
図23は、本実施例の固液分離装置モデル300について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を示す。なお、ζの値については、実施例1と同様の考え方によって求めた。実験結果は、図23の各プロットが示すように、理論実線によく一致する結果となった。
【符号の説明】
【0076】
10…二相流体分離装置、11…密閉容器、12…回転容器、13…回転駆動手段、14…容器、15…円筒部、16…開口部、17…導入流路、18,19…流量制御弁、20…回転容器、21…容器、22…円筒部、23…開口部、24…蒲鉾状の容器、25…開口部、26…平板、30…回転容器、31…容器、32…円筒部、33…開口部、40…二相流体分離装置、41…密閉容器、42…回転壁、43…回転駆動手段、44…軸、45…排出流路、46…開口部、47…導入流路、50…二相流体分離装置、51…密閉容器、52…回転壁、53…ロータリー・ジョイント、54…ギア、55…回転駆動手段、56…排出流路、60…二相流体分離装置、61…密閉容器、62…回転撹拌翼、63…開口部、64…排出流路、65…導入流路、100…固液分離装置モデル、101…容器、102…支持体、103…排水管、104…ロータリー・ジョイント、105…モータ、106…プーリー、107…連結ベルト、108…プーリー、109…固液二相流体、120…回転容器、121…開口部、200…気液分離装置モデル、201…密閉容器、202…吸気口、203…排気口、204…ファン、205…モータ、206…直方体容器、207…排気管、208…農業用噴霧器、220…回転板、221…開口部、300…固液分離装置モデル、301…容器、302…撹拌翼、303…開口部、304…排水流路、
【技術分野】
【0001】
本発明は、二相流体分離装置に関し、より詳細には、二相流体から所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる二相流体分離装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二相流体(気液・固液・固気)の各相を分離する装置の多くは、フィルタ膜に対して二相流体を透過させ、流体中の液相あるいは固相のみを当該フィルタ膜で捕捉するものであったが、このようなフィルタ膜方式においては、フィルタの目詰まりに起因して分離効率が経時的に低下することが避けられず、フィルタの清掃・交換に伴う保守コストが過大になるという問題があった。
【0003】
この点につき、特開2005−28242号公報(特許文献1)は、二相流体内の比重(密度)の違いに基づいて、遠心力の作用を利用して固液を分離するフィルタ装置を開示する。しかしながら、この方式は、各相の比重に大きな差がない二相流体の分離に適用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法につき鋭意検討した結果、流体の排出側に連通するスリット状の開口部と分離対象となる二相流体との間に、該開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせた場合に、当該相対速度に相関した粒径の粒子成分が分離される現象を見出し、本発明に至ったのである。以下、本発明の二相流体分離方法の原理について、図1を参照して説明する。
【0007】
図1は、主流路Mおよび分岐流路Dからなる2次元流路を示す。図1に示す2次元流路においては、粒子径dの粒子成分を含む二相流体が主流路Mを左から右方向へ流下しており、主流路Mに対して幅hを有するスリット状の分岐流路Dが形成され、当該スリット開口の長手方向が二相流体の流下方向に直交しているものとする。この2次元流路において、主流路Mを流れる二相流体の流速をU、その粒子成分の体積濃度をα0、分岐流路Dを流れる二相流体の流速をu、その粒子成分の体積濃度をαとする。
【0008】
図1に示す2次元流路において、主流路Mの壁面からの離間距離が一定距離以内の場所を流れる二相流体の層は分岐流路Dに流れこみ、それを超える場所を流れる二相流体の層は分岐流路Dに流れ込むことなくこれを通過する。ここで、分岐流路Dに流れ込む限界流線の上流における主流路Mの壁面からの離間距離をHとする。
【0009】
さらに、限界流線以内の層を流れる二相流体に含まれる粒子成分のうち、主流路Mの壁面からの離間距離が一定距離以内の場所を流れる粒子は、流体に追随して分岐流路Dに流れこみ、それを超える場所を流れる粒子は、分岐流路Dに流れ込む流体に追随しきれずに分岐流路Dを通過する。ここで、分岐流路Dに流れ込む限界粒子軌跡の上流における主流路Mの壁面からの離間距離をYとする。
【0010】
ここで、主流路Mの壁面からの離間距離がd/2(粒子半径に相当)より小さい場所を流れる二相流体の層には粒子が含まれていないものとすることができるので、分岐流路Dに流入する二相流体のうち、粒子成分を含む流体は、上流における主流路Mの壁面からの離間距離yが、d/2≦y≦Yを満たす場所を流れる流体に限られる。したがって分岐流路Dに対して単位時間に流入する粒子体積は、
{ α0(Y−d/2)U }
となり、分岐流路Dの流量をq=UH=uhとすれば、分岐流路Dから流出する粒子の体積濃度αは、下記理論式で表すことができる。ここにqは奥行き単位幅当たりの流量で、m2/Sの単位をもつ。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、上記理論式(1)において、{d/H=dU/q=dU/(hu)=ζ}とおいて整理すると、分岐流路Dを流下する二相流体の体積濃度αと主流路Mを流れる二相流体の体積濃度α0の比(α/α0)を表す理論式として下記式(2)が導出される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、上記理論式(1)より{Y/d}の値が0.5以下のとき、体積濃度比(α/α0)が0になる。粒子が流れに追随する場合はY=Hとなり、{H/d=1/ζ}の値が0.5以下のとき、すなわちζの値が2以上のとき体積濃度比(α/α0)が0になる。つまり、上記理論式(1)、(2)によれば、これらの条件を満足するとき、分岐流路Dの体積濃度αを0にすること、すなわち、粒子径d以上の粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることが予想される。
【0015】
なお、上記理論式(1)(2)における{Y/d}ならびに{Y/H}はともに、分離対象系の比重=粒子密度/流体密度、レイノルズ数=流体密度×粒子直径×流速/流体粘度、ζ(=dU/q)の値、によって変化し、これらの値が大きくなるほど、{Y/d}ならびに{Y/H}は、小さな値を取る性質がある。なお、{Y/d}ならびに{Y/H}の値を求めるにあたっては、粒子と流体の相対速度によって粒子に加わる抗力、流体中で加速度運動する粒子に加わる付加質量、粒子が存在しない流れ場の圧力分布によって粒子が受ける力等を考慮に入れた、粒子の運動方程式を使用したシミュレーション計算によって求めることができる。
【0016】
たとえば、2次元流路中の二相流体において、仮に、粒子密度と流体密度の比が1を大きく超えない場合、また、粒子密度が流体密度よりかなり大きな場合であっても、レイノルズ数が小さい場合には、二相流体中の全ての粒子成分は、流体に追随する形で分岐流路Dに流れ込むため、Y=H、すなわち、{Y/H=1}となり、下記理論式(2)から、{ζ≧2}を満たす条件において、{U≧2q/d}を満たす流速を与えれば、直径dよりも大きな粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることになる。
【0017】
一方で、液滴を含む気体のように粒子の密度と流体の密度の比が1を大きく超えてかつレイノルズ数が1を大きく超えるような二相流体の場合には、図2に示すようなシミュレーション結果を使用して{Y/d}とUの関係を求める。図2は、直径30μの水滴を含む空気(気液流体)において、単位幅あたりの空気流量qが0.125m2/sの場合についてシミュレーションした結果である。図2に示されるシミュレーション結果が得られた場合、U(主流路Mを流れる二相流体の流速)の値を、{Y/d}の値が0.5となる値(図2の場合、U=42m/s)よりも大きく設定すれば、直径dよりも大きな粒子成分を含まない流体のみを分岐流路D側に送出することができることになる。
【0018】
本発明者は、上記理論式(2)の妥当性を検証すべく、図3(a)に概念的に示す2次元流路モデルを使用して予備実験を行なった。なお、本予備実験においては、固相としてポリスチレン粒子を、流体として当該ポリスチレンと同じ比重に調整した食塩水を使用し、主流路M(アスペクト比:H/B=1.66・0.6)について、所定条件(U,u,h,d)の下、分岐流路Dを流下する二相流体のポリスチレン粒子体積濃度αならびに主流路Mを流れる二相流体のポリスチレン粒子体積濃度α0を測定し、ζ(=dU/q)と体積濃度比(α/α0)の関係を算出した。本実験においては、上記条件(粒子密度/流体密度=1、すなわち、Y/H=1)を上記理論式(2)に代入し、ζ=2のときに、α/α0=0となる理論直線(実線)を設定したが、実験結果は、図3(b)に示すように、理論直線(実線)とよく一致した。
【0019】
本発明者は、上述した実証結果に基づいて、新規な二相流体の分離方法について検討を重ねた。その結果、上記理論式(2)のζ(=dU/q)における、{U}を、分岐流路Dのスリット開口と主流路M内に貯留される二相流体との間の相対速度として付与する構成に想到し、当該構成に基づく実証実験を実施した結果、二相流体中から所望に粒子成分を分離することに成功し、本発明に至ったのである。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明によれば、二相流体の各相の比重差の大きさに関わらず、所望の粒子径の粒子成分を自在に分離することができる新規な二相流体分離装置および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を説明するための2次元流路を示す概念図。
【図2】気液流体についてのシミュレーション結果を示す図。
【図3】2次元流路モデルの予備実験の結果を示す図。
【図4】本発明の第一形式の第1の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図5】本発明の第一形式の第1の実施形態に適用可能な回転容器の形態を示す図。
【図6】本発明の第一形式の第1の実施形態に適用可能な回転容器の形態を示す図。
【図7】本発明の第一形式の第2の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図8】本発明の第一形式の第3の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図9】本発明の第二形式の実施形態の二相流体分離装置を示す図。
【図10】貯留容器を開放容器または管として構成した二相流体分離装置を示す図。
【図11】実施例1の固液分離装置モデルを示す図。
【図12】排出液の質量流量(g/s)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図13】単位時間当たりに排出される排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図14】排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と回転容器の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図15】実施例1の固液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)の関係を示す図。
【図16】実施例2の気液分離装置モデルを示す図。
【図17】排気の体積流量(L/s)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図18】単位時間当たりに排出される排気に含まれる水滴の質量(mg/s)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図19】排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)と回転板の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図20】実施例2の気液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)の関係を示す図。
【図21】本実施例3の固液分離装置モデルを示す図。
【図22】排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と撹拌翼の回転数(rpm)の関係を示す図。
【図23】実施例3の固液分離装置モデルについて、体積濃度比(α/α0)とζ(=dU/q)のを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0023】
本発明の二相流体分離装置の実装は、流体の排出側に連通する開口部と分離対象となる二相流体との間の相対速度を生じさせる構成によって、大きく2つの形式に分けることができる。すなわち、静止した二相流体に対して開口部側を循環移動させることによって当該二相流体との間に相対速度を生じさせる第1の形式、ならびに、静止した開口部に対して二相流体を循環移動させることによって当該開口部との間に相対速度を生じさせる第2の形式である。以下、まず、上述した第1の形式について説明する。
【0024】
図4は、第一形式の第1の実施形態である二相流体分離装置10を示す。図4(a)に示すように、二相流体分離装置10は、分離対象の二相流体を導入するための密閉容器11と、回転容器12とを含んで構成されている。なお、回転容器12は、モータなどの回転駆動手段13に接続されており、矢印の方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。
【0025】
図4(b)は、回転容器12のみを抜き出して示す。回転容器12は、中空の円盤状(すなわち、背の低い中空円柱状)に形成された容器14と細長い円筒部15とから構成されている。容器14の一方の底面の中心部には、円筒部15の内部空間と容器14の内部空間が連通する形で円筒部15が接続されており、回転容器12は、回転対称形状を有する中空容器として構成されている。
【0026】
回転容器12の容器14の底面のうち、一方の底面には、2つの開口部16,16が形成されており、密閉容器11の内部空間は、開口部16,16を介して回転容器12の内部と連通している。開口部16は、幅hを備える細長い長方形のスリットとして形成されており、矢印Rが示す回転容器12の回転方向に対して、その長辺がおおよそ垂直に対峙するように容器14の底面に対して形成されている。回転容器12は、密閉容器11の内部に回転自在に配置されており、円筒部15は、密閉容器11の壁面を貫通する形で外部に突出し、図示しない排出流路に接続される。
【0027】
上述した構成を備える二相流体分離装置10を使用した二相流体を分離する処理について、以下説明する。まず、導入流路17から密閉容器11内に二相流体が導入される。ここでは、説明の便宜のため、二相流体は、液相または気相の流体に対して2種類の粒子Lおよび粒子Sが分散しているものとし、粒子Lの粒子径がdであり、粒子Sの粒子径はdより小さいものとする。なお、図4に示す例の場合、密閉容器11内は二相流体によって完全に充填されるので、導入流路17から密閉容器11内に導入される二相流体の流量と、回転容器12の円筒部15から排出される二相流体の流量Q0とは等しくなり、Q0を開口部16の面積で割ると、二相流体分離装置10に設定される処理流量に対応した所定流速{u}ならびに単位幅あたりの流量q=uhが設定される。
【0028】
ここで、仮に回転容器12の回転が停止した状態であれば、導入流路17から導入された二相流体中の粒子Lおよび粒子Sは、いずれも開口部16,16から回転容器12内に流入し、円筒部15を通って外部に流出してしまうが、本実施形態の二相流体分離装置10においては、回転駆動手段13によって回転容器12を回転させ、その回転速度を制御することによって、粒子径dの粒子Lを含まない流体(すなわち、粒子Sのみを含む流体)を外部に送出することができる。
【0029】
本実施形態における回転容器12の回転速度(rpm)は、以下の手順で求めることができる。まず、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、限界粒子径d、単位幅あたりの流量q として、{ U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部16の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置10の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。
【0030】
なお、本実施形態における回転容器は、図4に示した形態に限定されるものではない。図5は、本実施形態に適用可能な回転容器の他の形態について例示する。図5(a)に示す回転容器20は、直方体状に形成された容器21と細長い円筒部22とを備え、容器21の上面の中心部に円筒部22が接続されてなるT字形状の中空容器として構成されており、容器21の底面には、2つの開口部23a、23bが形成されている。
【0031】
また、回転容器20においては、開口部23a、23bに接する流体の境界層をより薄くするために、例えば、図上に破線で囲んで示すように、直方体状の容器21に代えて中空の蒲鉾状に形成された容器24を使用して構成することができる。蒲鉾状の容器24の局面部分に開口部25を形成することによって、開口部と流体の相対速度は、丁度飛行機の翼の上の速度が飛行速度よりも大きくなるのと同様に、単純に回転によって得られる相対速度よりも大きな相対速度を得ることができ、しかも先端から開口部25までは増速流領域になるために、境界層の厚さを小さく抑えることができる。
【0032】
さらに、図左下に破線で囲んで示すように、容器21の底面に突き出した形で平板26を設け、そこに開口部23を設けることにより、開口部23周囲に平板26に平行で、乱れが少ない流れが形成され、その結果、開口部23近傍の境界層の厚さを小さく抑えることができる。さらに、図右下に破線で囲んで示す容器21の断面図に示されるように、容器21の厚み方向に対して傾斜した貫通孔として開口部23を形成することより、流体の主流方向に対してUターンするような流れが生まれ、その結果、粒子が流体に追随しないような二相流体において、そのフィルタリング効果が増加する。
【0033】
図6は、本実施形態に適用可能な回転容器の他の形態について例示する。図6に示す回転容器30は、中空の円柱状に形成された容器31と細長い円筒部32とを備え、容器31の上面の中心部に円筒部32が接続されてなる二段円柱状の中空容器として構成されており、容器31の外周面には、開口部33が形成されている。
【0034】
以上、本実施形態に適用可能な回転容器の形態について図5および図6に例示したが、本実施形態における回転容器は、上述した形態に限定されるものではなく、流体の排出側に連通する中空部を備える回転対称形状を有する中空容器であって、その壁面に少なくとも1つの開口部を備えるものであればどのような形態であってもよく、当業者であれば種々の設計変更が可能であろう。
【0035】
次に、本発明の第一形式の第2の実施形態に基づいて説明する。図7は、発明の第2の実施形態である二相流体分離装置40を示す。図7(a)に示すように、二相流体分離装置40は、分離対象の二相流体を導入するための直方体状の密閉容器41と、密閉容器41の外壁面41aに形成された円形の開口に対して、当該外壁面と面一になるように嵌合された正円形の回転壁42とを含んで構成されている。回転壁42は、モータなどの回転駆動手段43に対して密閉容器41の外壁面41aに垂直な軸44を介して接続されており、軸44を回転軸として、矢印R方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。また、図7(b)に示すように、密閉容器41の外壁面41aに対して、回転壁42を覆う形で排出流路45が形成されている。
【0036】
回転壁42は、正円形の円盤状に形成されており、回転壁42を貫通する2つの開口部46a、46bが形成されており、密閉容器41の内部空間は、開口部46a、46bを介して排出流路45と連通している。図7に示す開口部46a、46bは、細長い長方形状として形成されており、矢印Rが示す回転壁42の回転方向に対して、その長辺がおおよそ垂直に対峙するように回転壁42に対して形成されている。
【0037】
上述した構成を備える二相流体分離装置40が二相流体を分離する原理は、第1の実施形態について上述したのと基本的には同じである。ここで、導入流路47から密閉容器41内に所定流量Q0で導入された二相流体は、回転壁42に形成された開口部46a、46bから、同じ流量Q0で排出流路45側に送出されることから、回転壁42の回転速度(rpm)は、以下の手順で求めることができる。
【0038】
まず、流量Q0を開口部46a,46bの面積で除して流速uを求め、排出される二相流体の単位長さ当たりの流量{q=uh}を算出する。ここで、密閉容器41内に留まらせておきたい粒子Lの粒子径{d}とする場合、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、{U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部46の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置42の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。
【0039】
次に、図8を参照して、本発明の第一形式の第3の実施形態に基づいて説明する。図8は、発明の第3の実施形態である二相流体分離装置50を示す。図8(a)に示すように、二相流体分離装置50は、分離対象の二相流体を導入するための中空円柱状の密閉容器51を備え、密閉容器51の円周方向の一部は、密閉容器51(円柱)の中心軸を回転軸として回転自在に形成された円筒状の回転壁52によって構成されている。円筒状の回転壁52は、ロータリー・ジョイント53によって密閉容器51の外壁に回転自在に接続されており、回転壁52の外周に設けられたギア54を介して、モータなどの回転駆動手段55から動力を伝達され、密閉容器51の中心軸を回転軸として、矢印R方向に所望の速度で回転制御することができるように構成されている。
【0040】
回転壁52には、貫通する2つの開口部55a、55bが形成されており、密閉容器51の内部空間は、開口部55a、55bを介して密閉容器51の外部と連通している。図8に示す開口部55a、55bは、細長い長方形状として形成されており、矢印Rが示す回転壁52の回転方向に対して、その長手辺がおおよそ垂直に対峙するように回転壁52に対して形成されている。また、図8(b)に示すように、密閉容器51の外周壁面に対して、回転壁52を覆う形で排出流路56が形成されており、密閉容器51の内部空間は、開口部55a、55bを介して排出流路56と連通している。なお、図8に示す二相流体分離装置50が二相流体を分離する原理は、第2の実施形態について上述したのと基本的には同じであるので説明を省略する。
【0041】
以上、本発明の第1の形式を第1実施形態〜第3実施形態をもって説明してきたが、本発明における回転容器ならびに回転壁に形成される開口部は、アスペクト比の大きい、長方形、平行四辺形、扇形等のスリット開口として形成することが好ましく、その長辺が回転容器の回転方向に対しておおよそ垂直に対峙するように形成されていることが好ましい。なお、開口部の形状およびその数については、各装置の実装に応じて適切な態様を適宜採用することができる。さらに加えて、本発明の第一形式においては、回転容器または回転壁の回転によって周りの流体に渦を生じさせないようにするため、各開口部の近傍の適切な位置に、邪魔板のような整流手段を設置することができる。
【0042】
以上、図4〜6を参照して、本発明の二相流体分離装置の実装のうち、静止した二相流体に対して開口部側を循環移動させることによって当該二相流体との間に相対速度を生じさせる第1の形式について説明しきたが、次に、静止した開口部に対して二相流体を循環移動させることによって当該開口部との間に相対速度を生じさせる第2の形式について、図9を参照して以下説明する。
【0043】
図9は、本発明の第二形式の実施形態である二相流体分離装置60を示す。図9(a)に示すように、二相流体分離装置60は、分離対象の二相流体を導入するための中空円柱状の密閉容器61と、密閉容器61内に導入した二相流体を回転撹拌するための回転撹拌翼62とを含んで構成されている。密閉容器61の底面61bには、長方形状の貫通孔である開口部63が形成されており、開口部63に連通する形で排出流路64が底面61bに接続されている。なお、開口部63は、上述した第1の形式について説明したのと同様に適宜適切な態様を採用することができる。
【0044】
回転撹拌翼62は、その回転方向が長方形状の開口部63の長辺に対しておおよそ垂直に対峙するように図示しない回転駆動手段によって回転駆動される。その結果、長方形状の開口部63の長辺に対しておおよそ垂直に対峙するような二相流体の流れRが形成され、二相流体と開口部63との間に相対速度が生じる。
【0045】
上述した構成を備える二相流体分離装置60が二相流体を分離する原理は、相対速度を発生させるための構成を除き、第一形式の第1の実施形態について上述したのと基本的には同じである。すなわち、導入流路65から密閉容器61内に所定流量Q0で導入された二相流体は、底面61bに形成された開口部63から、同じ流量Q0で排出流路64から排出される。この流量Q0を排出流路64の面積で除して流速uを求め、排出される二相流体の単位長さ当たりの流量{q=uh}を算出する。
【0046】
ここで、密閉容器61内に留まらせておきたい粒子Lの粒子径{d}とする場合、粒子が流体に追随する二相流体の場合には、{U≧2q/d }を満たす相対速度U(開口部63の短辺方向の二相流体の流れRの必要な流速)を算出する。一方、粒子が流体に追随しない二相流体の場合には、上述した{ Y/d≦0.5 }を満たす相対速度Uを算出する。算出したこれらの相対速度Uをもとに、これを実現するために必要な回転速度(rpm)を求める。当該回転数をもって二相流体分離装置42の運転を制御することによって、二相流体中の粒子Lと粒子Sを分離することができる。本実施形態においては、開口部63およびこれに連通する排出流路64を、図9(b)に示すように、密閉容器61の外周面61aに形成してもよい。
【0047】
なお、上述した第一形式、第二形式の実施形態においては、二相流体が貯留される容器を密閉容器として説明したが、本発明は、二相流体を貯留するための容器を開放容器として構成することもできる。図10(a)は、図4に例示した構成について、二相流体の貯留容器を開放容器11-2として構成した二相流体分離装置10-2を示す。二相流体分離装置10-2においては、二相流体の排出側に流量制御弁18を設けるなどして、排出される流体の単位長さ当たりの流量{q}を制御するとともに、その流量{q}と限界粒子径に適した回転数を選んで運転することが好ましい。
【0048】
さらに、図10(b)は、図4に例示した構成について、二相流体の貯留容器を閉塞端を持たない管11-3として構成した二相流体分離装置10-3を示す。二相流体分離装置10-3においては、二相流体の排出側に流量制御弁18を設けることに加え、管11-3の流下方向後方に流量制御弁19を設けて運用するもので、流量制御弁19の下流には高濃度の大粒子を含んだ二相流体が排出される。なお、上述した応用展開は、図4に例示した構成の変形に限らず、上述した形式1および形式2の他の全ての実施形態についても同様に可能である。
【0049】
本発明の二相流体分離装置は、気液・固液・固気の全ての二相流体に適用することが可能であり、また、一つの装置で種々のプロセスを実施することができる。例えば、所定径以上の粒子をターゲットにして、これを容器内で濃縮することはもちろんのこと、粒子成分を含まない流体のみを容器内に導入して運転し続けることによって、複数の粒径分布を持つ二相流体から、所定径未満の粒子成分のみを容器内から排除する(取り出す)といったプロセスを実施することもできる。
【0050】
さらに、本発明の二相流体分離装置は、二相流体の各相の比重差が小さい場合であっても確実に粒子を分離することができ、また、回転数制御によって、フィルタリングの限界粒子径を容易に変更することができる。さらに加えて、本発明の二相流体分離装置は、従来の遠心フィルタ装置において不可避であったターゲット粒子(比重の大きい粒子)に対する大きな重力の印加が発生しないため、壊れやすい粒子成分を分離するような用途に有効である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の二相流体分離装置について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
本発明を適用した固液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図11は、作製した固液分離装置モデル100を示す。本実施例の固液分離装置モデル100は、容器101(幅40cm、奥行き23cm、高さ27cm)と、支持体102に回転自在に支持された回転容器120と、回転容器120の内部に連通するように接続された排水管103とを含んで構成した。
【0053】
回転容器120は、直方体の上面に円筒を接続したT字形状の容器として構成し、直方体部分の底面に2つの開口部121a,121bを形成した。なお、開口部121a,121bの形状は、いずれも、回転中心cを中心とする半径R1=55mm(中心角θ=5.7°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=40mm(中心角5.7°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。また、回転容器120の円筒部の上端と排水管103とをロータリー・ジョイント104で接続した。さらに、支持体102に配置したモータ105の回転をプーリー106、連結ベルト107、プーリー108を介して回転容器120の円筒部に伝達し、回転容器120を回転駆動するように構成した。
【0054】
容器101には分離対象となる固液二相流体109を貯留した。なお、本実施例においては、液相と固相の比重が等しい固液二相流体を供試流体とした。具体的には、直径2.1mm、比重1.044のポリスチレン球形粒子を、同じく比重1.044に調整した食塩水に分散させたものを供試流体とした。
【0055】
回転容器120の直方体部が固液二相流体109に浸漬するように配置した。また、排水管103の端部が固液二相流体109の水面よりも下になるように固定し、サイフォンの原理で回転容器120内の流体が自然に排水管103側に吸い上げられ、排出されるようにした。
【0056】
上述した固液分離装置モデル100において、回転容器120の回転数(rpm)の条件を変化させ、排水管103から排出される供試流体に含まれるポリスチレン粒子の質量を計測した。
【0057】
図12は、排水管103から排出される排出液の質量流量(g/s)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。図12に示されるように、回転容器120の回転数が増加するにつれて水の抵抗が増すため、排出液の質量流量(g/s)が減少した。
【0058】
図13は、単位時間当たりに排出される排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。なお、ポリスチレン粒子の質量については、排出液をふるいにかけポリスチレン粒子を捕捉して、水分をふき取り、乾燥した後に質量を計測した。図13に示すように、回転容器120の回転数が増加するに従って、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)は減少した。
【0059】
ここで、図12に示した排出液の質量流量(g/s)のデータと図13に示した排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量(g/s)のデータを総合して、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)を導出した。図14は、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と回転容器120の回転数(rpm)の関係を示す。図14に示すように、回転容器120の回転数の増加に応じて、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)はほぼ直線的に減少した。
【0060】
上述した実験結果を受けて、本実施例の固液分離装置モデル100の挙動が本発明者の上記理論式(2)に合致するか否かについて検証した。
【0061】
図15は、本実施例の固液分離装置モデル100について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を示す。なお、本実施例においては、{ζ=U・d/(u・h)}における各項について、U:回転容器120の回転による相対速度、d:ポリスチレン粒子の直径、u :排水管103内の流速、h:開口部121の幅とした。ここで、S:開口部121の面積、r:任意の点の半径、N:回転容器120の回転数、n:開口部121の数、Q0:排水管103から流出する流量とした場合、U=2π・r・N、S=(R12−R22)・θ・n、h=r・θ、u=Q0/S、となるため、ζを式{ζ=Ud/(uh)=2πN・n・d(R12−R22)/Q0}により求めた。実験結果は、図15の●のプロットが示すように、破線で示す理論直線によく一致する結果となった。
【0062】
さらに、回転容器120の直方体状の容器を、図5(a)の破線で囲んで示した中空の蒲鉾状容器に代えた上で、上述したのと同様の条件で実験を行ない、同様に、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を求めた。図15の△のプロットがその結果を示す。図15に示されるように、蒲鉾状容器の局面部に開口部を設けた回転容器120を使用した実験結果は、破線で示す理論値により近づく結果となった。
【0063】
(実施例2)
次に、本発明を適用した気液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図16(a)は、作製した気液分離装置モデル200を示す。本実施例の気液分離装置モデル200は、密閉容器201(幅50cm、奥行き30cm、高さ30cm)に対して、吸気口202と排気口203とを形成して作製した。吸気口202には、ファン204を設け外気を密閉容器201内に導入した。一方、排気口203には、開口部が形成された回転板220を回転自在に嵌合し、これをモータ205によって回転駆動させた。さらに、排気口203を直方体容器206(幅40cm、奥行き25cm、高さ25cm)で覆い、直方体容器206の天井を貫通する形で内径54mmのパイプを取り付け、これを排気管207とした。排気流量については、排気管207の側面から熱線流速計を挿入して、パイプ内の流速を計測して求めた。なお、本実験においては、農業用噴霧器208(BH-590:パナソニック製/発生ミスト粒径50〜100μm)を使用して密閉容器201内でミストを発生させることによって、ミストを含んだ空気を吸気口202から導入した場合と同等の状態を再現した。
【0064】
図16(b)は、回転板220の上面図を示す。本実施例においては、回転板220に2つの開口部221a,221bを形成した。なお、開口部221a,221bの形状は、いずれも、回転中心cを中心とする半径R1=100mm(中心角θ=10°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=60mm(中心角10°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。
【0065】
上述した気液分離装置モデル200において、回転板220の回転数(rpm)の条件を変化させ、排気管207から排出される空気に含まれる水滴の質量を計測した。排気に含まれる水滴量については、以下の手順で計測した。排気管207の出口にガーゼを取り付け、これより先に水滴が流出しないようにした上で、のちにこのガーゼを回収した。さらに、直方体容器206の内壁に付着した水分を脱脂綿で完全にふき取り、回収したガーゼと脱脂綿の質量を計測し、質量の増分を排気に含まれる水滴量とした。
【0066】
図17は、排気管207から排出される排気の体積流量(L/s)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図17に示されるように、回転板220の回転数が増加するにつれて空気抵抗が増すため、排気の体積流量(L/s)が減少した。
【0067】
図18は、単位時間当たりに排出される排気に含まれる水滴の質量(mg/s)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図18に示すように、回転板220の回転数が増加するに従って、排気中の水滴の質量(mg/s)は減少した。
【0068】
ここで、図17に示した排気の体積流量(L/s)のデータと図18に示した排気中の水滴の質量(mg/s)のデータを総合して、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)を導出した。図19は、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。図19に示すように、回転板220の回転数の増加に応じて、排気中に含まれる水滴の体積濃度(g/m3)は減少した。
【0069】
図20は、本実施例の気液分離装置モデル200について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と回転板220の回転数(rpm)の関係を示す。なお、図中の▲および■のプロットは、使用したナショナル製噴霧器BH-590の主噴霧粒子径が50μ〜100μであることから、50μ粒子(▲)および100μの粒子(■)について、各回転数における体積濃度比(α/α0)を、上記理論式(2)に基づいたシミュレーション計算によって求めたものであり、図中の×は、実験点を示す。図20に示されるように、実験結果とシミュレーション結果はよく一致した。
【0070】
次に、先に図9を参照して説明した第二形式に基づいて固液分離装置モデルを作製し、下記の手順で評価実験を行った。図21は、作製した固液分離装置モデル300を示す。本実施例の固液分離装置モデル300は、容器301(幅40cm、奥行き30cm、高さ30cm)と、容器301内に配置された板状の撹拌翼302(幅14cm、高さ10cm、厚さ5mm)とを含んで構成した。
【0071】
容器301の底面には2つの開口部303a,303bを形成し、これを覆う形で排水流路304を形成した。なお、開口部303a,303bの形状は、いずれも、撹拌翼302の回転軸との交点cを中心とする半径R1=55mm(中心角θ=5.7°)の扇形状から、同じく回転中心cを中心とする半径R2=40mm(中心角5.7°)の扇形状を取り去った残りの形状とした。
【0072】
なお、本実施例においては、実施例1について使用したのと同じ、ポリスチレン球形粒子−食塩水分散液を供試流体として容器301に貯留した。上述した固液分離装置モデル300において、撹拌翼302の回転数(rpm)の条件を変化させ、排水流路304を流出する供試流体に含まれるポリスチレン粒子の質量を計測した。
【0073】
固液分離装置モデル300について、実施例1と同様の手順で排水流路304を流出する排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)を算出した。図22は、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)と撹拌翼302の回転数(rpm)の関係を示す。図22に示すように、撹拌翼302の回転数の増加に応じて、排出液に含まれるポリスチレン粒子の質量パーセント濃度(%)は、減少した。なお、各プロット(○、△、□)は、再現性を確かめるために同様の実験を3回試行したことを示す。
【0074】
上述した実験結果を受けて、本実施例の固液分離装置モデル300の挙動が本発明者の上記理論式(2)に合致するか否かについて検証した。
【0075】
図23は、本実施例の固液分離装置モデル300について得られた実験データにおける、体積濃度比(α/α0)と{ζ=Ud/uh}の関係を示す。なお、ζの値については、実施例1と同様の考え方によって求めた。実験結果は、図23の各プロットが示すように、理論実線によく一致する結果となった。
【符号の説明】
【0076】
10…二相流体分離装置、11…密閉容器、12…回転容器、13…回転駆動手段、14…容器、15…円筒部、16…開口部、17…導入流路、18,19…流量制御弁、20…回転容器、21…容器、22…円筒部、23…開口部、24…蒲鉾状の容器、25…開口部、26…平板、30…回転容器、31…容器、32…円筒部、33…開口部、40…二相流体分離装置、41…密閉容器、42…回転壁、43…回転駆動手段、44…軸、45…排出流路、46…開口部、47…導入流路、50…二相流体分離装置、51…密閉容器、52…回転壁、53…ロータリー・ジョイント、54…ギア、55…回転駆動手段、56…排出流路、60…二相流体分離装置、61…密閉容器、62…回転撹拌翼、63…開口部、64…排出流路、65…導入流路、100…固液分離装置モデル、101…容器、102…支持体、103…排水管、104…ロータリー・ジョイント、105…モータ、106…プーリー、107…連結ベルト、108…プーリー、109…固液二相流体、120…回転容器、121…開口部、200…気液分離装置モデル、201…密閉容器、202…吸気口、203…排気口、204…ファン、205…モータ、206…直方体容器、207…排気管、208…農業用噴霧器、220…回転板、221…開口部、300…固液分離装置モデル、301…容器、302…撹拌翼、303…開口部、304…排水流路、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
二相流体を貯留するための貯留容器と、
回転対称形状を有する中空容器であって、前記貯留容器内に回転自在に配置される回転容器と、
前記回転容器に接続される排出流路とを備え、
前記回転容器の壁面には、回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記回転容器の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項2】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
二相流体を貯留するための容器であって、該容器の一部の壁面が回転自在に構成された貯留容器と、
前記貯留容器に接続される排出流路と備え、
回転自在に構成された前記壁面には、回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記排出流路は、前記開口部を介して前記貯留容器に連通するように設けられ、
回転自在に構成された前記壁面の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項3】
回転自在に構成された前記壁面は、前記容器の外壁面に対して垂直な軸を回転軸とする正円形の回転壁である、
請求項2に記載の二相流体分離装置。
【請求項4】
回転自在に構成された前記壁面は、中空円柱として構成される前記容器の外周壁の一部を構成し、該中空円柱の中心軸を回転軸とする円筒状の回転壁である、
請求項2に記載の二相流体分離装置。
【請求項5】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
前記二相流体を貯留するための貯留容器と、
前記貯留容器内に回転自在に配置され、前記二相流体を回転撹拌するための回転撹拌翼と
前記貯留容器に接続される排出流路とを備え、
前記貯留容器の壁面には、前記回転撹拌翼の回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記排出流路は、前記開口部を介して前記貯留容器に連通するように設けられ、
前記回転撹拌翼の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項6】
二相流体から所望の粒子径の粒子成分を分離する方法であって、
排出流路に連通する開口部であって、長辺を有する少なくとも1つの開口部を二相流体に臨ませ、
前記二相流体と前記開口部との間に、前記開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせることによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出することを特徴とする方法。
【請求項1】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
二相流体を貯留するための貯留容器と、
回転対称形状を有する中空容器であって、前記貯留容器内に回転自在に配置される回転容器と、
前記回転容器に接続される排出流路とを備え、
前記回転容器の壁面には、回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記回転容器の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項2】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
二相流体を貯留するための容器であって、該容器の一部の壁面が回転自在に構成された貯留容器と、
前記貯留容器に接続される排出流路と備え、
回転自在に構成された前記壁面には、回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記排出流路は、前記開口部を介して前記貯留容器に連通するように設けられ、
回転自在に構成された前記壁面の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項3】
回転自在に構成された前記壁面は、前記容器の外壁面に対して垂直な軸を回転軸とする正円形の回転壁である、
請求項2に記載の二相流体分離装置。
【請求項4】
回転自在に構成された前記壁面は、中空円柱として構成される前記容器の外周壁の一部を構成し、該中空円柱の中心軸を回転軸とする円筒状の回転壁である、
請求項2に記載の二相流体分離装置。
【請求項5】
二相流体内の粒子成分を分離するための二相流体分離装置であって、
前記二相流体を貯留するための貯留容器と、
前記貯留容器内に回転自在に配置され、前記二相流体を回転撹拌するための回転撹拌翼と
前記貯留容器に接続される排出流路とを備え、
前記貯留容器の壁面には、前記回転撹拌翼の回転方向に対峙する長辺を有する少なくとも1つの開口部が形成され、
前記排出流路は、前記開口部を介して前記貯留容器に連通するように設けられ、
前記回転撹拌翼の回転速度を制御することによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出する、
二相流体分離装置。
【請求項6】
二相流体から所望の粒子径の粒子成分を分離する方法であって、
排出流路に連通する開口部であって、長辺を有する少なくとも1つの開口部を二相流体に臨ませ、
前記二相流体と前記開口部との間に、前記開口部の長辺に対峙する方向における相対速度を生じさせることによって、所定径以上の粒子成分を含まない流体を前記排出流路へ送出することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−62642(P2011−62642A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215616(P2009−215616)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509262345)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509262345)
【Fターム(参考)】
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