説明

二色式回転粒子内包カプセル及び該二色式回転粒子内包カプセルの製造方法

【課題】円滑に二色式回転粒子(ツイストボール)が回転する二色式回転粒子内包カプセルを提供する。
【解決手段】本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1は、ツイストボール2の周面15にシリコーンオイル層3が形成され、このシリコーンオイル層3の周面16に、透明オリゴマーにより構成される透明膜層4が形成され、この透明膜層4の周面17にカプセル壁5が形成されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏で色が異なる二色式回転粒子がマイクロカプセルに内包されてなる二色式回転粒子内包カプセル、及び該二色式回転粒子内包カプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙のように薄くて軽く、可視情報を可逆的に書き換えて表示することができる情報表示媒体(いわゆる電子ペーパー、又はデジタルペーパー)が既に提案されている。この情報表示媒体の構成にはいくつか種類があり、そのなかに二色式回転粒子(例えば、ツイストボール)を用いた構成がある(例えば、特許文献1参照)。かかる構成について簡単に説明すると、半球ずつ白色と黒色とに色分けされた球形のツイストボールが透光性のエラストマーシートに回転可能に多数埋入されており、ツイストボールの白色半球部分には負電荷が帯電し、一方黒色半球部分には正電荷が帯電している。そして、このエラストマーシートの上面に負電荷パターンが印加されると、各ツイストボールが回転して正電荷を持つ黒色半球部分が上を向き、当該エラストマーシートの上面からは黒色が視認される。一方、エラストマーシートの上面に正電荷パターンが印加されると、各ツイストボールが回転して負電荷を持つ白色半球部分が上を向き、当該エラストマーシートの上面から白色が視認される。このようにツイストボールを用いた情報表示媒体は、各ツイストボールの向きを電界により反転制御して所定の線画の表示を行い、かかる線画を無電力で長時間保持することができるように構成されたものである。
【0003】
さらに、このツイストボールをマイクロカプセル化することも良く知られている(例えば、特許文献2参照)。このツイストボールがカプセル壁に囲繞されてなる二色式回転粒子内包カプセルAは、図4イに示すように、ツイストボールaの周面にシリコーンオイル層bが形成され、さらにこのシリコーンオイル層bの周面にカプセル壁cが形成されてなるものである。このようにツイストボールaがマイクロカプセルdに内包された構成の二色式回転粒子内包カプセルAは、ツイストボールをシリコーンオイルにより構成される分散相に分散させ、次に攪拌下の連続相(水等)に投入することで液滴を形成し、さらに公知技術を用いてカプセル壁を形成することにより製造される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−234686号公報
【特許文献2】特開2001−202037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したツイストボールを用いた情報表示媒体は、黒色部分と白色部分とが各々明瞭に表示されることによりコントラストが良好となって視認性が向上する。ここで、黒色部分と白色部分とが明瞭に表示されるためには、異なる電極パターンが印加される度に、ツイストボールが180°の回転角度で確実に反転制御される必要がある。これに対し、異なる電極パターンが印加された際に180°の回転角度が得られず、例えば90°程度の回転角度でツイストボールが回転停止してしまうと、中途半端な態様で黒色及び白色が表示されることとなり、結果的に線画は不明瞭となる。ここで、特にマイクロカプセルに内包されたツイストボールが適正にマイクロカプセル内で回転するには、マイクロカプセルの中心に精度良くツイストボールが配置され、かつ当該ツイストボール周囲にシリコーンオイルが適正に充填されている必要がある。これに対し、ツイストボールがマイクロカプセル内で一側へ偏位してしまうと、当該マイクロカプセルのカプセル壁とツイストボールとが接触してしまい、カプセル壁とツイストボールとの間で生ずる摩擦抵抗によって当該ツイストボールの円滑な回転が阻害され、充分な回転角度が得られないという問題が生ずる(図4ロ参照)。そして、この問題は、情報表示媒体のコントラスト性能を低下させてしまうこととなる。
【0006】
そこで本発明は、二色式回転粒子(例えばツイストボール)が安定的にマイクロカプセルの中心に配置された二色式回転粒子内包カプセル、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一側の半球部分が有色かつ正極に帯電し、他側の半球部分が白色かつ負極に帯電した二色式回転粒子の周面に、所定分散媒により構成された分散媒層が形成され、かつ該分散媒層を囲繞するようにカプセル壁が形成されることにより、二色式回転粒子がマイクロカプセルに内包されてなる二色式回転粒子内包カプセルにおいて、カプセル壁と前記分散媒層との間に、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成される透明膜層が設けられてなることを特徴とする二色式回転粒子内包カプセルである。
【0008】
かかる構成にあっては、二色式回転粒子に電極パターンが外部から印加されると、当該二色式回転粒子が透明ポリマー等で構成される透明膜層により囲繞された空間内で該電極パターンに従って反転することとなる。すなわち、本発明は、カプセル壁と二色式回転粒子との間に、従来にない透明膜層が介在しているため、マイクロカプセルの中心に適正に二色式回転粒子が配置され、反転時に二色式回転粒子がカプセル壁に直に接触してしまうことがなくなる。換言すれば、二色式回転粒子の回転がカプセル壁との摩擦で阻害されてしまうことを回避した二色式回転粒子内包カプセルである。したがって、マイクロカプセル内での二色式回転粒子の回転が円滑となり、電極パターンの切り換えに基づいて安定して反転制御されることとなる。なお、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成される透明膜層は、反転制御される二色式回転粒子の有色と白色とが判別可能となるような透明度に設定されている。すなわち、当該二色式回転粒子内包カプセルが埋入された情報表示媒体にあって、外部から二色式回転粒子により構成された線画が確実に視認可能となるように設定されるものである。ところで、上記構成の分散媒層とカプセル壁は、従来構成の二色式回転粒子内包カプセルと同様の組成であっても良いし、他の組成であっても良い。
【0009】
また、上記構成にあっては、カプセル壁と二色式回転粒子との間の極性差に比して、透明膜層と二色式回転粒子との間の極性差の方が小さい構成とするのが好適である。かかる構成とすることにより、二色式回転粒子とその周囲環境との間で相互作用が働きにくくなり、二色式回転粒子の回転への影響が低減され、反転制御が従来構成に比してより一層安定することとなる。なお、上記構成に係る透明ポリマー又は透明オリゴマーは、例えばシリコーンエラストマーにより構成することができる。
【0010】
これまでに述べた二色式回転粒子内包カプセルは、次のような製法で製造することができる。
すなわち、一側の半球部分が有色かつ正極に帯電し、他側の半球部分が白色かつ負極に帯電した二色式回転粒子がマイクロカプセルに内包されてなる二色式回転粒子内包カプセルの製造方法において、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成された分散相に二色式回転粒子を分散させる分散工程と、前記分散相に係る分散液を攪拌下の連続相に投入することにより、二色式回転粒子の周面に、透明ポリマー又は透明オリゴマーにより構成される透明膜層が形成されてなる粒子状第一中間体を作製する粒子状第一中間体作製工程と、粒子状第一中間体を所定の硬化処理により硬化させて、当該連続相から粒子状第一中間体を分離する硬化分離工程と、連続相から分離した粒子状第一中間体を所定の分散媒に投入して該粒子状第一中間体を膨潤させ、二色式回転粒子と透明膜層との間に当該分散媒により構成される分散媒層を形成することにより、透明膜層、分散媒層、及び二色式回転粒子からなる粒子状第二中間体を作製する粒子状第二中間体作製工程と、粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成し、当該粒子状第二中間体に係る二色式回転粒子をマイクロカプセルに内包するカプセル内包工程とを備えたことを特徴とする二色式回転粒子内包カプセルの製造方法である。
【0011】
かかる構成とすることにより、二色式回転粒子の周囲に分散媒層が形成され、該分散媒層の周囲に透明膜層が形成され、さらに該透明膜層の周囲にカプセル壁が形成されてなる二色式回転粒子内包カプセルを製造できる。すなわち、二色式回転粒子とカプセル壁との間に分散媒層と透明膜層とを介在させることができるため、マイクロカプセル内で二色式回転粒子が一側に片寄りにくくなり、二色式回転粒子をカプセル壁に対して非接触状にカプセル化することができる。なお、硬化分離工程に係る硬化処理としては、加熱処理又はUV処理等が例示されうる。また、カプセル内包工程に係るカプセル壁を形成する手段としては、公知技術が好適に採用されうる。
【0012】
また、上記製法にあって、透明ポリマー又は透明オリゴマーを、シリコーンエラストマーにより構成しても良い。
【0013】
ここで、従来構成では、カプセル壁を形成する対象面は、シリコーンオイル層であることが一般的であった(図4イ参照)。一方、本発明では、シリコーンエラストマーで構成される透明膜層がカプセル壁の形成対象面となる。ここで、シリコーンオイルとシリコーンエラストマーとを、表面張力という点で対比すると、シリコーンオイルの表面張力よりもシリコーンエラストマーの表面張力の方が小さい。したがって、上記本発明の構成とすることにより、カプセル壁を形成する対象面の表面張力を従来構成に比して小さくすることができ、カプセル壁の形成が容易となる利点がある。また、シリコーンオイルとシリコーンエラストマーとを、ぬれ性という点で対比すると、シリコーンオイルのぬれ性よりもシリコーンエラストマーのぬれ性の方が大きい。したがって、上記本発明の構成とすることにより、カプセル壁を形成する対象面のぬれ性を従来構成に比して向上させることができ、カプセル壁の形成が容易となる利点がある。
【0014】
また、上記製法にあって、カプセル内包工程は、界面沈殿法、又はコアセルベーション法を用いて粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成する構成が提案される。
【0015】
ここで、界面沈殿法(液中乾燥法)又はコアセルベーション法が選定される理由は、カプセル壁を形成する対象面(すなわち、透明膜層の表面)が、本発明にあっては液体でないためである。なお、本発明は、上記構成以外のカプセル化の手段を積極的に排除するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二色式回転粒子内包カプセルは、カプセル壁と前記分散媒層との間に、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成される透明膜層が設けられてなる構成としたため、マイクロカプセルの中心に二色式回転粒子が適正に配置され、二色式回転粒子に電荷が印加された場合でも、カプセル壁に直に接触することなく、マイクロカプセル内で円滑に回転することとなり、安定して反転制御される効果がある。
【0017】
また、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセルの製造方法は、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成された分散相に二色式回転粒子を分散させ、分散液を連続相に投入して粒子状第一中間体を作製し、粒子状第一中間体を所定の硬化処理により硬化させ、連続相から分離した粒子状第一中間体を所定の分散媒に投入して粒子状第二中間体を作製し、粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成し、二色式回転粒子をマイクロカプセルに内包する方法であるため、二色式回転粒子がカプセル壁に接触した状態でカプセル化されてしまうことを防止できる効果がある。
【0018】
また、上記製造方法にあって、透明ポリマー又は透明オリゴマーを、シリコーンエラストマーにより構成した場合は、カプセル壁を形成する対象面の表面張力を従来構成に比して小さくすることができると共に、当該対象面のぬれ性を向上させることができるため、従来に比してカプセル化が安定して行える効果がある。
【0019】
また、カプセル内包工程を、界面沈殿法、又はコアセルベーション法を用いて粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成する構成とした場合は、安定かつ確実にカプセル壁を形成することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の実施例を添付図面に従って説明する。
【0021】
図1に示すように、二色式回転粒子内包カプセル1は、その中心にツイストボール2(二色式回転粒子)を備えている。このツイストボール2は、ほぼ完全な球形であり、その直径をほぼ38μmとしている。また、ツイストボール2のベース樹脂は、ポリエチレン(PE)樹脂としている。また、ツイストボール2は二つの半球部分で構成されており、一側の半球部分を黒色半球部分2a(有色半球部分)とし、他側の半球部分を白色半球部分2bとしている。なお、黒色半球部分2aには、顔料としてカーボンブラックが添加されている。また、白色半球部分2bには、顔料として酸化チタンが添加されている。なお、ツイストボール2の直径は、10〜300μm程度が好ましい。
【0022】
さらに、前記黒色半球部分2aは、正電荷が帯電しており、一方白色半球部分2bは負電荷が帯電している。これによりツイストボール2は、永久双極子が形成されていることとなる。なお、かかる帯電技術は、周知技術である。
【0023】
また、ツイストボール2の周面15には、シリコーンオイル層3が形成されている。かかるシリコーンオイル層3を構成するシリコーンオイルは、従来構成の二色式回転粒子内包カプセルAで採用されていたものと同一である。具体的には、ポリジメチルシロキサンが用いられている。また、このシリコーンオイル層3の厚さは、9.6μmであり、ツイストボール2が回転可能な厚さがあれば良い。ただし、このシリコーンオイル層3は、画面の解像度が向上するため、可及的に薄く形成するのが好適である。このように、当該層を薄くすると、ツイストボール2の白黒以外の部分が少なくなり、解像度が上がるからである。なお、このシリコーンオイル層3により、本発明に係る分散媒層が構成される。
【0024】
さらに、シリコーンオイル層3の周面16には、本発明の特徴部分である透明膜層4が形成されている。この透明膜層4は、透明ポリマーにより構成されている。具体的には、シリコーンエラストマー(二液付加型KE−106 信越シリコーン)が用いられている。また、この透明膜層4の厚さは、6.4μmであり、ツイストボール2を被覆し、回転可能なオイル層が形成可能であれば良い。ただし、この透明膜層4は、画面の解像度が向上するため、可及的に薄く形成するのが好適である。理由はシリコーンオイル層3と同様である。なお、この透明膜層4により、本発明に係る透明膜層が構成される。
【0025】
また、透明膜層4の周面17には、カプセル壁5が形成されている。このカプセル壁5は、ほぼ球形のマイクロカプセル14を構成するもので、従来から良く知られている壁物質のなかから適正に選定されるものである。具体的には、ゼラチンで構成された透明ポリマーが用いられている。また、このカプセル壁5の厚さは、6.5μmであり、内容物が漏出しない程度の強度が得られる厚さであれば良い。なお、このカプセル壁5の厚さは、壁物質とその中身との体積比で任意に調整が可能である。ただし、シリコーンオイル層3及び透明膜層4と同様に、その厚さは可及的に薄い方が良い。また、シリコーンオイル層3、透明膜層4、及びカプセル壁5に関して、
1>(ツイストボール直径)/(マイクロカプセル直径)>0.2
を満たすのが好ましい。これは、肉眼で認識可能な範囲である。
【0026】
そして、これまでに述べた二色式回転粒子内包カプセル1が情報表示媒体に係るエラストマーシート(図示省略)に多数埋入されて製品となる。そして、かかる情報表示媒体の上面に負電荷パターンが印加されると、ツイストボール2がマイクロカプセル内で回転して正電荷を持つ黒色半球部分2aが上面を向き、黒色が視認される。一方、正電荷パターンが印加されると、負電荷を持つ白色半球部分6が上面を向き、白色が視認される。このとき、ツイストボール2はカプセル壁5に接触することがないため、回転不良を起こさずに、確実に180°の回転角度が得られる。
【0027】
次に、本実施例に係る二色式回転粒子内包カプセル1の製造方法について説明する。
かかる製造方法は、分散工程、粒子状第一中間体作製工程、硬化分離工程、粒子状第二中間体作製工程、カプセル内包工程の順番で実行される。以下、各工程について説明する。
【0028】
<分散工程について>
二色式回転粒子内包カプセル1を製造するには、まず、図2イに示す分散工程を実行する。具体的には、容器50に透明ポリマー(分散媒)で構成される分散相20を形成すると共に、この分散相20内に多数のツイストボール2(二色式回転粒子)を攪拌下で投入し、当該ツイストボール2を分散相20で分散させる。
【0029】
<粒子状第一中間体作製工程について>
次に、上記分散相20で分散させたツイストボール分散液を、図2ロに示すように、水により構成される連続相21に投入し、攪拌によって分散させる。そうすると、ツイストボール2の周面15に、透明ポリマーにより構成される透明膜層4が形成されることとなる。このツイストボール2の周面15に透明膜層4が形成されてなるものが、本発明に係る粒子状第一中間体30に相当する。なお、分散相20の組成と、連続相21の組成は、その相互関係であらかじめ定まるものである。
【0030】
<硬化分離工程について>
次に、前記粒子状第一中間体30に硬化処理をし、連続相21から粒子状第一中間体30を分離する。具体的には、粒子状第一中間体30が内在する連続相21に熱処理(例えば、約70℃、約2時間)を加える。そうすると、図2ハに示すような粒子状第一中間体30が連続相21から分離し、取り出し可能となる。
【0031】
<粒子状第二中間体作製工程について>
次に、図2ニに示すように、連続相21から分離した粒子状第一中間体30を分散媒22内に投入する。具体的にこの分散媒22は、シリコーンオイルにより構成されている。具体的には、ポリジメチルシロキサンが用いられている。このように、粒子状第一中間体30が分散媒22に投入されると、当該粒子状第一中間体30は膨潤し、図3イに示すような、ツイストボール2と透明膜層4との間にシリコーンオイルにより構成されるシリコーンオイル層3が形成されることとなる。この透明膜層4、シリコーンオイル層3、及びツイストボール2からなるものが、本発明に係る粒子状第二中間体31に相当する。
【0032】
<カプセル内包工程>
次に、粒子状第二中間体31の周面(すなわち、透明膜層4の周面17)に界面沈殿法(液中乾燥法)を用いてカプセル壁5を形成する(図3ロ参照)。具体的には、芯物質となる粒子状第二中間体31と壁物質であるポリマーとからなる(W1/O)分散系を作製し、この(W1/O)分散系を、水溶液W2で構成される(W1/O)/W2分散系に投入する。そうすると、(W1/O)/W2分散系内に、(W1/O)滴が生成される。次に、この(W1/O)分散系に対して油相蒸発させ、油相を除去する。そうすると、粒子状第二中間体31の周面(すなわち、透明膜層4の周面17)にカプセル壁5が形成され、当該粒子状第二中間体31をマイクロカプセル14に内在させることができる。なお、この界面沈殿法(液中乾燥法)は、周知技術である。
【0033】
このような手順で得られた二色式回転粒子内包カプセル1は、ツイストボール2がマイクロカプセル14の中心に配置されるため、ツイストボール2がカプセル壁5に付着することがない。したがって、ツイストボール2が180°の回転角度で安定して反転可能となり、情報表示媒体のコントラスト性能が向上することとなる。
【0034】
なお、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の、カプセル壁5とツイストボール2との間の極性差は、透明膜層4とツイストボール2との間の極性差の方が小さい構成とするのが好適である。かかる構成とすることにより、ツイストボール2とその周囲環境との間で相互作用が働きにくくなり、ツイストボール2の回転への影響が低減され、反転制御が従来構成に比してより一層安定化することとなる。
【0035】
次に、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の物性について従来構成と比較しながら説明する。
本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の透明膜層4を構成する透明ポリマーは、従来構成に係る二色式回転粒子内包カプセルAのシリコーンオイル層bを構成するオイルよりも密度が大きい。つまりツイストボール2との密度差が小さい。また、二色式回転粒子内包カプセル1の透明膜層4を構成する透明ポリマーは、二色式回転粒子内包カプセルAのシリコーンオイル層bを構成するオイルよりも粘度が大きい。したがって、ツイストボール2との密度差、粘度の差に起因して、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の製造方法の方が、ツイストボール2が片寄りにくいという点で有利である。
【0036】
また、二色式回転粒子内包カプセル1の透明膜層4を構成する透明ポリマーは、二色式回転粒子内包カプセルAのシリコーンオイル層bを構成するオイルよりも表面張力が小さく、かつぬれ性が良い。したがって、これらの物性に起因して、本発明に係る二色式回転粒子内包カプセル1の方が、カプセル壁が作製しやすい。さらに、カプセル壁が作製しやすくなると、シリコーンオイル層3に使用できるオイルの種類が豊富となり、様々な条件下で適宜製品設計することが可能となる。
【0037】
なお、分散工程に係る分散相20は、上記構成のほか、透明オリゴマーで構成することができる。そうすると、二色式回転粒子内包カプセル1の透明膜層4は、透明オリゴマーで構成されることとなる。要は、この分散相20は、膨潤可能で光透過性のものであれば良い。
【0038】
また、粒子状第一中間体作製工程に係る連続相21は、上記構成のほか、上記分散相20の透明ポリマー又は透明オリゴマーにそれぞれ対応して適宜選定されうる。
【0039】
また、硬化分離工程に係る硬化処理は、上記構成に代えて、UV処理であっても良い。
【0040】
また、粒子状第二中間体作製工程に係る分散媒22は、上記構成のほか、イソパラフィン系の溶媒(例えばアイソパー〔登録商標〕)等としても良い。
【0041】
また、カプセル内包工程にあって、カプセル壁5を形成する手段としては、上記構成のほかに、コアセルベーション法としても良い。具体的には、次のような手順となる。
芯物質となる粒子状第二中間体31と壁物質(ポリマー)の溶解液とからなるW/O分散系を作製する。ここで、壁物質(ポリマー)の溶解液が、油相に相当する。そして、このW/O分散系に、貧溶媒を添加する。そうすると、かかるW/O分散系で、粒子状第二中間体31の周面(すなわち、透明膜層4の周面17)に壁物質(ポリマー)が析出し、該周面17にカプセル壁5を形成することができる。なお、このコアセルベーション法は、周知技術である。
【0042】
ところで、このように界面沈殿法及びコアセルベーション法が好適であるのは、カプセル壁5を形成する対象面となる透明膜層4の周面17が液体でないためである。したがって、例えば、界面重合法によりカプセル壁を形成する手段は、カプセル化反応が進みにくい。
【0043】
また、上記したツイストボール2のベース樹脂としては、前記PEの他、ポリプロピレン、ナイロン等を用いることができる。
【0044】
また、正電荷が帯電した半球体部分の色は、黒色に限定されず、他の色であっても良い。具体的には、黒色顔料又は染料に代えて、例えばイエロー、マゼンタ、シアン等の顔料又は染料を用いることができる。要は、負電荷が帯電した半球体部分の白色に対して、正電荷が帯電した半球体部分は有色であれば良い。
【0045】
また、本発明に係る二色式回転粒子は、上記寸法に限定されない。また、形状は球形に限定されることはなく、例えば円柱状であっても良いし、他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】二色式回転粒子内包カプセル1の概略断面図である。
【図2】二色式回転粒子内包カプセルの作製手順を示す説明図である。
【図3】図2から続く、二色式回転粒子内包カプセルの作製手順を示す説明図である。
【図4】イは、従来構成の二色式回転粒子内包カプセルAの概略断面図であり、ロは、ツイストボールaが偏位した態様を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 二色式回転粒子内包カプセル
2 ツイストボール(二色式回転粒子)
2a 黒色半球部分
2b 白色半球部分
3 シリコーンオイル層(分散媒層)
4 透明膜層
5 カプセル壁
14 マイクロカプセル
15 ツイストボールの周面
16 シリコーンオイル層の周面
17 透明膜層の周面
20 分散相
21 連続相
22 分散媒
30 粒子状第一中間体
31 粒子状第二中間体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側の半球部分が有色かつ正極に帯電し、他側の半球部分が白色かつ負極に帯電した二色式回転粒子の周面に、所定分散媒により構成された分散媒層が形成され、かつ該分散媒層を囲繞するようにカプセル壁が形成されることにより、二色式回転粒子がマイクロカプセルに内包されてなる二色式回転粒子内包カプセルにおいて、
カプセル壁と前記分散媒層との間に、透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成される透明膜層が設けられてなることを特徴とする二色式回転粒子内包カプセル。
【請求項2】
一側の半球部分が有色かつ正極に帯電し、他側の半球部分が白色かつ負極に帯電した二色式回転粒子がマイクロカプセルに内包されてなる二色式回転粒子内包カプセルの製造方法において、
透明ポリマー又は透明オリゴマーで構成された分散相に二色式回転粒子を分散させる分散工程と、
前記分散相に係る分散液を攪拌下の連続相に投入することにより、二色式回転粒子の周面に、透明ポリマー又は透明オリゴマーにより構成される透明膜層が形成されてなる粒子状第一中間体を作製する粒子状第一中間体作製工程と、
粒子状第一中間体を所定の硬化処理により硬化させて、当該連続相から粒子状第一中間体を分離する硬化分離工程と、
連続相から分離した粒子状第一中間体を所定の分散媒に投入して該粒子状第一中間体を膨潤させ、二色式回転粒子と透明膜層との間に当該分散媒により構成される分散媒層を形成することにより、透明膜層、分散媒層、及び二色式回転粒子からなる粒子状第二中間体を作製する粒子状第二中間体作製工程と、
粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成し、当該粒子状第二中間体に係る二色式回転粒子をマイクロカプセルに内包するカプセル内包工程と
を備えたことを特徴とする二色式回転粒子内包カプセルの製造方法。
【請求項3】
透明ポリマー又は透明オリゴマーは、シリコーンエラストマーにより構成されるものであることを特徴とする請求項2記載の二色式回転粒子内包カプセルの製造方法。
【請求項4】
カプセル内包工程は、界面沈殿法、又はコアセルベーション法を用いて粒子状第二中間体の周面にカプセル壁を形成することを特徴とする請求項2又は3記載の二色式回転粒子内包カプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−292965(P2007−292965A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120005(P2006−120005)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000186566)小林記録紙株式会社 (169)
【Fターム(参考)】