説明

二色性偏光子と多層光学フィルムとを備える光学装置

光学装置には、二色性偏光子と、反射性偏光子すなわち反射鏡のような多層光学フィルムとが包含される。この多層光学フィルムは、この二色性偏光子と反射性偏光子とを同時配向させることができるポリマーを用いて作製される。この多層光学フィルムには、一式の複屈折性第1層と、等方性屈折率を有することもある一式の第2層とが含有されることが多い。この二色性偏光子は、二色染料と光学第2ポリマーとを含むポリビニルアルコールフィルムである。この多層光学フィルムと二色性偏光子は、160℃以下の温度で延伸することによって、この二色性偏光子に実質的に亀裂を入らせずに配向することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野 本発明は、二色性偏光子と多層光学フィルムとを含む多層光学装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、二色性偏光子と、コポリエステル光学層を有する多層光学フィルムとを有する光学偏光子に関する。
【0002】
発明の背景 光学偏光フィルムは、ギラツキを抑えるために、およびサングラスや液晶ディスプレイ(LCD)のような製品の光学コントラストを高めるために広く利用されている。これらの用途に対して最も一般的に用いられる種類の偏光子の1つとして、特定の偏光の光は吸収するが、その他の偏光の光は透過する二色性偏光子が挙げられる。二色性偏光子のうちの1つは、少なくとも1方向に延伸されているポリマーマトリックスに染料を混入することによって作製される。また、二色性偏光子は、ポリマーマトリックスを一軸配向し、延伸されたマトリックスを二色染料で着色することによって作製してもよい。あるいは、ポリマーマトリックスを配向された二色染料で染色してもよい。二色染料としては、アントラキノン染料、アゾ染料、およびヨウ素が挙げられる。市販されている二色性偏光子の多くは、染色用のポリマーマトリックスとしてポリビニルアルコールを使用している。
【0003】
別の種類の偏光子としては、特定の偏光の光は反射するが、別の直交偏光の光は透過させる反射性偏光子が挙げられる。反射性偏光子のうちの1つは、二式のポリマー層が交互にいくつも積み重ねられたスタックを形成することによって作製されるが、そのうちの一式は複屈折性であり、スタックの間に反射インターフェースを形成する。通常、その二式の層の屈折率はある方向においてはほぼ同じであるため、その方向に対して平行な平面内で偏光される光は透過される。もう1つの、直交方向における屈折率は通常異なるため、この直交方向に対して平行な平面内で偏光される光は反射される。
【0004】
偏光子の性能の目安の1つとして、消光比が挙げられる。消光比とは、a)選択透過偏光状態において偏光子によって透過される光のb)直交偏光状態において透過される光に対する比のことである。これらの2種類の直交状態は、2種類の直線偏光に関わることが多い。しかしながら、左旋および右旋円偏光または2種類の直交楕円偏光のような他の種類の直交状態を使用してもよい。二色性偏光子の消光比は、それらの特定の構造および目的用途によって広い範囲にわたって変動する。例えば、二色性偏光子は5:1〜3,000:1の範囲の消光比を有していてもよい。一般に、ディスプレイ装置に用いられる二色性偏光子の消光比は、100:1よりも大きいことが好ましく、500:1よりも大きいことがさらに好ましい。
【0005】
一般に、二色性偏光子は非透過偏光の光を吸収する。しかしながら、二色性偏光子は、透過偏光の高い一部の光も吸収する。この吸収の量は、偏光子の構造の詳細および意図される消光比に依存する。LCDディスプレイに用いられるような高性能ディスプレイ偏光子の場合、この吸収損は、通常約5%〜15%である。吸収(すなわち抵透過)偏光を有する光に対するこれらの偏光子の反射率は低くなりやすい。表面反射を含めたとしても、この反射率は、一般に10%よりも低く、通常は5%よりも低い。
【0006】
一般に、反射性偏光子は、特定の偏光を有する光は反射し、直交偏光を有する光は透過する。反射性偏光子は、対象となる波長帯全体にわたって高い消光偏光の不完全な反射率を有することが多い。一般に、その反射率は50%よりも高く、90%または95%よりも高いことが多い。一般に、反射性偏光子は、高い透過偏光を有する光もある程度吸収する。通常、この吸収は約5〜15%よりも低い。
【0007】
上記2種類の偏光子を組み合わせて、両者の有用な特性を取り入れた別の光学偏光子を作製することができる。これらの偏光子は、一緒に作製および、任意に、配向されてもよい。残念ながら、多くの二色性偏光子に利用されているポリビニルアルコールフィルムは、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)光学層またはcoPEN光学層を使用するもののような一部の反射性偏光子を作製するのに必要な加工条件下においては、亀裂が入りやすい。これらの反射性偏光子は、ポリマーフィルムを135〜180℃のような加工温度で2:1〜10:1の延伸比で延伸することによって作製することができる。
【0008】
また、二色性偏光子は、別の種類の反射性偏光子および反射鏡のような他の光学装置と一緒に用いられてもよい。二色性偏光子と赤外線鏡の併用は、ギラツキを抑えるのに有効であることがある。この鏡を組み合わせた二色性偏光子を作製しても、特にこの鏡が配向ポリエステル層から作られている場合、前述の加工における問題点は残ったままである。従って、二色性偏光子フィルムを亀裂させずに二色性偏光子と同時配向することのできる改良型反射性偏光子と他の光学装置が必要とされている。
【0009】
発明の開示 従って、本発明は、二色性偏光子と、コポリエステル材料を用いて形成される多層ポリマーフィルムとを包含する光学装置に関する。1つの実施態様として、二色性偏光子と、この二色性偏光子と同じ光路に位置する多層光学フィルムとを有する光学装置が挙げられる。この多層光学フィルムには、複数の第1光学層と、複数の第2光学層とが包含される。この第1光学層は、第1コポリエステルを用いて作られる。この第1コポリエステルは、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを有し、このカルボキシレートサブユニットの70〜100mol%は第1カルボキシレートサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーカルボキシレートサブユニットであり、このグリコールサブユニットの70〜100mol%は第1グリコールサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーグリコールサブユニットであり、そして第1コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはこれらを組み合わせたものである。第2光学層は第2ポリマーから作られる。
【0010】
もう1つの実施態様として、二色性偏光子と、この二色性偏光子と同じ光路に位置する反射性偏光子とを有する光学装置が挙げられる。この反射性偏光子には、複数の第1光学層と、複数の第2光学層とが包含される。この第1光学層は、複屈折性であり半晶質である第1コポリエステルを用いて作られる。この第1コポリエステルは、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを有し、このカルボキシレートサブユニットの70〜100mol%は第1カルボキシレートサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーカルボキシレートサブユニットであり、このグリコールサブユニットの70〜100mol%は第1グリコールサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーグリコールサブユニットであり、そして第1コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはこれらを組み合わせたものである。第2光学層は、上記反射性偏光子が形成された後に、632.8nmにおける面内複屈折が約0.04以下である第2ポリマーから作られる。
【0011】
さらにもう1つの実施態様として、光学偏光子の作製方法が挙げられる。この方法には、反射性偏光子を形成する工程が包含される。この反射性偏光子には、複数の第1光学層と、複数の第2光学層とが包含される。この第1光学層は、複屈折性であり半晶質である第1コポリエステルを用いて作られる。この第1コポリエステルは、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを有し、このカルボキシレートサブユニットの70〜100mol%は第1カルボキシレートサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーカルボキシレートサブユニットであり、このグリコールサブユニットの70〜100mol%は第1グリコールサブユニットであり、その0〜30mol%は第1コモノマーグリコールサブユニットであり、そして第1コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはこれらを組み合わせたものである。第2光学層は、上記反射性偏光子が形成された後に、632.8nmにおける面内複屈折が約0.04以下である第2ポリマーから作られる。二色性偏光子は、この反射性偏光子の上に形成される。この二色性偏光子には、ポリビニルアルコールと二色染色材料とが包含される。この二色性偏光子と反射性偏光子は、二色性偏光子を亀裂させずに、延伸されて約160℃以下の温度で配向される。
【0012】
上記本発明の開示は、本発明のすべての典型的な実施態様またはそのすべての実施を説明することを意図するものではない。以下の各図および詳細な説明によって、これらの実施態様がさらに詳しく例示される。
【0013】
発明の実施態様の詳細な説明 本発明は、二色性偏光子と、多層光学フィルムと前記二色性偏光子の同時配向を可能にするポリマーを用いて形成される多層光学フィルムとを用いる光学装置の形成に関するものである。この多層光学フィルムは、反射性偏光子、反射鏡、赤外線鏡、あるいは他の光学形態のいずれでもよい。以下の実施例の多くは多層光学フィルムの反射性偏光子としての使用に関するものであるが、他の光学特性を有する同等の多層光学フィルムを使用してもよいことは理解できよう。
【0014】
図1は、典型的な装置、すなわち二色性偏光子11と反射性偏光子12とを包含する光学偏光子10を示している。この異なる2種類の偏光子の組み合わせによって、特定の偏光の光の反射/吸収が高く、かつもう1つの直交偏光を有する光の透過が高い光学偏光子を作製することができる。一般に、これらの2種類の偏光子は、特定の偏光を有する光の最大透過率が得られるように、互いに対して配列されている。
【0015】
一般に、二色性偏光子11は反射性偏光子12に近接しているが、これは必要ではない。これらの2種類の偏光子11および12が互いに接着されて、エアギャップを完全に排除することが好ましい。
【0016】
反射性偏光子12は、通常、第1の偏光を有する光のかなりの部分を反射し、第2の、直交偏光を有する光のほとんどを透過する。一般に、二色性偏光子11は、第3の偏光を有する光のほとんどを吸収し、第4の、直交偏光を有する光のかなりの部分を透過する。多くの場合、光学偏光子10は、反射性偏光子12と二色性偏光子11とが特定の偏光(すなわち、第2偏光と第4偏光は同じである)の光を透過し、かつ直交偏光(すなわち、第1偏光と第3偏光は同じである)の光を反射/吸収するように、反射性偏光子12と二色性偏光子11とを配向することによって形成される。本発明をこの特定の構成に関して説明する。しかしながら、反射性偏光子12と二色性偏光子11とが互いに対して異なる手段で配向される他の構成も適当であり、本発明の範囲に包含される。
【0017】
使用の際に、この複合偏光子は、図1に示されるように、その外面の一方または両方が照光される。光線13は、反射性偏光子12に選択的に反射されることによって光線14を形成する偏光を有する光である。光線15は、反射性偏光子12によって透過される光線13からの光である。一般に、光線15は光線14よりもかなり輝度が低い。さらに、光線15は、通常、二色性偏光子11によって弱められる。光線13に対して垂直に偏光される光線16は、反射性偏光子12によって選択的に透過され、かつ、通常は、二色性偏光子11によってほんのわずかだけ弱められる。
【0018】
光線17は、二色性偏光子11によって選択的に吸収される偏光を有し、かつ好ましくは光線13と同じ偏光を有する光である。光線17の、二色性偏光子11によって透過される部分が、反射性偏光子12の反射によってさらに弱められることによって、光線18が形成される。光線19は、光線17に対して垂直に偏光され、光線16と同じ偏光を有するのが好ましいとされる。光線19は、二色性偏光子11と反射性偏光子12の両方によって選択的に透過される。
【0019】
二色性偏光子11を反射性偏光子12と組み合わせると、二色性偏光子のみの場合よりも透過光の消光比が高い光学偏光子10になる。これにより、消光比の低い二色性偏光子の利用が考慮される。一般に、二色性偏光子は透過されるはずの光の一部を吸収するため、これは有用であることがあり得る。光学偏光子10よりも消光比の低い二色性偏光子を用いることによって、透過される所望の偏光の光の量が増加することがある。消光軸に沿って偏光される光の場合、この二色性偏光子に対する好ましい消光率は10%以上、さらに好ましくは55%以上、そして最も好ましくは70%以上である。二色性偏光子と反射性偏光子の最適な選択は、フィルムの二色性偏光子側の許容反射率、反射性偏光子の消光比、および所望の最終偏光子コントラストのような設定目標に依存する。
【0020】
反射性偏光子と二色性偏光子との組み合わせには他にも利点がある。例えば、この組み合わせでは、特定の偏光に対するフィルムの片側の反射率が高く、フィルムのもう一方の側の反射率が低い。これらの2つの性質の組み合わせは、LCD直視型ディスプレイをはじめとする数多くの装置において有用であることがある。例えば、LCD直視型ディスプレイは、1%の裏面反射率を有することがあり、また1,000:1を上回る最終消光比を必要とすることもある。約100%の反射率を有する反射性偏光子と組み合わせたときに1%の反射率を実現するには、二色性偏光子が、消光方向に偏光された光の10%以下を透過する必要がある。もし反射性偏光子の消光比が50:1である場合、1,000:1の最終消光比を実現するためには、二色性偏光子には少なくとも20:1の消光比が通常必要とされる。
【0021】
反射性偏光子12は、屈折率が適切な方向と正確に一致していないという異なる材料間の境界面、または他の散乱中心のような内部構造を含んでいてもよい。これらの種類の内部構造は、共に、通常は上記偏光子を透過する光と干渉することがある。一般に、反射性偏光子12による透過偏光を有する光の反射率は、約30%以下であるのが好ましく、約20%以下であるのがさらに好ましく、そして約15%以下であるのが最も好ましい。さらに、反射性偏光子の反射率は、入射光の波長帯と角度に依存する。反射偏光を有し、かつ対象となる波長帯内にある光に対する反射性偏光子12による好ましい反射率は20%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
【0022】
多層光学フィルムが反射鏡または赤外線鏡である場合には、同等な設計特性およびパラメーターが使用されてもよい。可視であるか赤外であるかに関わらず、対象となる波長帯を有する光に対する反射鏡による好ましい反射率は20%以上であり、さらに好ましくは約50%以上であり、最も好ましくは約90%以上である。
【0023】
多層光学フィルム 有用な多層光学フィルム20の一例が図2に示されている。この多層光学フィルム20は、反射性偏光子、反射鏡および他の光学装置を作製するのに用いられてもよい。多層光学フィルム20には、1層以上の第1光学層22、1層以上の第2光学層24、および1層以上の非光学層28が包含される。第1光学層22は、一軸または二軸配向されている複屈折ポリマー層であることが多い。一部の実施態様では、第1光学層22は複屈折性ではない。第2光学層24は、複屈折性であり、かつ一軸または二軸配向されているポリマー層であってもよい。しかしながら、さらに一般的には、第2光学層24は、配向後の第1光学層22の屈折率のうちの少なくとも1つと異なる等方性屈折率を有する。多層光学フィルム20の製造方法、利用用途、および設計における考慮点は、「多層光学フィルム」という表題のついた米国特許出願第08/402,041、「改質コポリエステルおよび改良型多層反射性フィルム」という表題のついた米国特許出願第09/006,601、および米国特許出願第09/006,288に詳しく説明されている。本発明は、等方性屈折率を有する第2光学層24を有する多層光学フィルム20によって主に例示されるが、本願明細書に記載される趣旨および実施例は、例えば「光学フィルムおよびその製造方法」という表題のついた米国特許出願第09/006,455に記載されるような、複屈折性である第2光学層24を有する多層光学フィルム20に適用することもできる。
【0024】
また、第1光学層22および第2光学層24と同様の別の光学層の集まりを多層光学フィルム20に使用してもよい。本願明細書に開示される第1光学層および第2光学層の集まりに対する設計原理は、あらゆる他の光学層の集まりに適用することができる。さらに、図2には1つのスタック26しか示されていないが、多層光学フィルム20は、後に組み合わされてフィルム20を形成する複数のスタックから作成されてもよい。
【0025】
光学層22、24および、任意に、1層以上の非光学層28は、一般に、互いに重ね合わされて、層のスタック26を形成する。通常、光学層22および24は、図2に示されるように、対で用いられて互い違いになるように配設されて、異なる光学特性を有する層の間に一連の境界面を形成する。通常、光学層22および24の厚さは1Tmよりも小さいが、これよりも厚さの大きい層を用いてもよい。さらに、図2には光学層22および24が合わせて6層しか示されていないが、多層光学フィルム20の多くは、多数の光学層を含んでいる。一般的な多層光学フィルム20は、約2〜5,000の光学層、好ましくは約25〜2,000の光学層、さらに好ましくは約50〜1,500の光学層、そして最も好ましくは約75〜1,000の光学層を含んでいる。
【0026】
非光学層28は、スタック26の内部(図3参照)および/または最上部(図2R>2参照)に配設されるポリマー層であり、光学層22および24を損傷から保護し、同時押出処理を補助し、および/または後処理機械的性質を向上させる。非光学層28は、光学層22および24よりも厚みがあることが多い。非光学層28の厚さは、通常、光学層22および24の個々の厚さの少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍、さらに好ましくは少なくとも10倍である。この非光学層の厚さを変えて特定の厚さの光学フィルム20を得ることもできる。一般に、光学層22および24によって透過、偏光、および/または反射される光の少なくとも一部が非光学層28も通過するように、少なくとも1層の非光学層28が配設される(すなわち、非光学層は、光学層22および24を通過する又は光学層22および24によって反射される光の光路に配設される)。
【0027】
非制限的な例として、多層光学フィルム20の光学層22、24および非光学層28は、ポリエステルのようなポリマーを用いて作製してもよい。「ポリマー」という用語には、ポリマーやコポリマーだけでなく、例えば同時押出しによって、または、例えばエステル交換反応などの反応によって、ミシブルブレンド中で形成されることがあるポリマーおよび/またはコポリマーも含まれる。ポリエステルは、カルボキシレートモノマー分子とグリコールモノマー分子との反応によって生成されるカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを有する。各々のカルボキシレートモノマー分子は2つ以上のカルボン酸またはカルボン酸エステル官能基を有し、各々のグリコールモノマー分子は2つ以上のヒドロキシ官能基を有する。カルボキシレートモノマー分子は、すべて同じでもよいし、あるいは2種類以上の異なる分子が混在していてもよい。同じことがグリコールモノマー分子にも該当する。
【0028】
ポリマー層またはフィルムの特性は、特定のモノマー分子を選択することによって変化する。多層光学フィルムに有用なポリエステルの一例として、例えばナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの反応によって生成することができるポリエチレンナフタレン(PEN)が挙げられる。
【0029】
ポリエステル層のカルボキシレートサブユニットを形成するのに用いられる好適なカルボキシレートモノマー分子としては、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびその異性体、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1、b−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体、t−ブチルイソフタル酸、トリメリト酸、スルホン化イソフタル酸ナトリウム、2,2’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体、およびメチルエステルまたはエチルエステルのようなこれらの酸の低級アルキルエステルが挙げられる。「低級アルキル」という用語は、この文脈においては、C1〜C10直鎖状または分岐鎖状アルキル基を意味する。さらに、「ポリエステル」という用語には、グリコールモノマー分子と炭酸のエステルとの反応から得られるポリカーボネートも含まれる。
【0030】
ポリエステル層のグリコールサブユニットを形成するのに用いられる好適なグリコールモノマー分子としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびその異性体、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリシクロデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体、ノルボルナンジオール、ビシクロオクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体、ビスフェノールA、1,8−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体、および1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0031】
非ポリエステルポリマーも偏光子フィルムまたは反射鏡フィルムを作製するのに有用である。例えば、ポリエチレンナフタレートのようなポリエステルから作られる層をアクリルポリマーから作られる層と組み合わせて、高反射性反射鏡フィルムを作成してもよい。さらに、ポリエーテルイミドをPENおよびcoPENのようなポリエステルと併用して多層光学フィルム20を作製してもよい。また、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ塩化ビニルのような、他のポリエステル/非ポリエステルの組み合わせを使用してもよい。
【0032】
また、多層光学フィルムを非ポリエステルのみを用いて作製してもよい。例えば、ポリ(メチルメタクリレート)とポリフッ化ビニリデンを用いて多層光学フィルム20のための層を作製してもよい。他の非ポリエステルの組み合わせとしては、アタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンとポリフェニレンオキサイドとの組み合わせが挙げられる。他の組み合わせを使用してもよい。
【0033】
一般に、第1光学層22は、例えば第1光学層22を所望の方向に延伸することによって複屈折性にされることもある、ポリエステルフィルムのような配向性ポリマーフィルムである。「複屈折性」という用語は、直交するx、yおよびz方向の屈折率がすべて同じではないことを意味する。図2には、x軸とy軸がこのフィルムまたは層の長さおよび幅に対応し、z軸がこのフィルムまたは層の厚さに対応するという、フィルム中のフィルムまたは層にとって都合のよい選択であるx軸、y軸およびz軸が示されている。図2に示される実施態様においては、多層光学フィルム20は、z軸方向に互い違いに重ね合わされている複数の光学層22および24を有している。
【0034】
第1光学層22は、例えば一方向に延伸することにより一軸配向されてもよい。第2の直交方向は、その元の長さよりも少ない任意の値にされてもよい。ある実施態様においては、延伸方向は、図2に示されるx軸かy軸のどちらかに実質的に対応している。しかしながら、他の方向が選択されてもよい。一般に、複屈折性の一軸配向層は、配向方向(すなわち延伸方向)に対して平行な偏光面を有する入射光線の透過および/または反射と、横方向(すなわち延伸方向と直交する方向)に対して平行な偏光面を有する光線との間の差を示す。例えば、配向性ポリエステルをx軸に沿って延伸すると、nxとnyが、それぞれ「x」軸と「y」軸に対して平行な平面内で偏光される光の屈折率を表す場合、その一般的な結果はnx≠nyである。延伸方向に沿った屈折率の変化の度合は、延伸の量、延伸速度、延伸中のフィルムの温度、フィルムの厚さ、フィルムの厚みの変化、およびフィルムの組成のような要素に依存する。第1光学層22の配向後の面内複屈折(nx−nyの絶対値)は、632.8nmにおいて0.04以上、好ましくは約0.1以上、さらに好ましくは約0.2以上である。すべての複屈折および屈折率の値は、特に断わらない限り、632.8nmの光に対して報告される。
【0035】
ポリエチレンナフタレート(PEN)は、延伸後に高い複屈折性を示すため、第1光学層22を形成するのに有用な材料の1つの例として挙げられる。延伸方向に対して平行な面内で偏光された632.8nmの光に対するPENの屈折率は、約1.62から最大約1.87まで増加する。可視スペクトル内では、PENは、一般的な高配向延伸(すなわち、材料が130℃の温度および20%/分の初期歪速度で元の長さの5倍以上に延伸される)の場合、400〜700nmの波長帯全体にわたって0.20〜0.40の複屈折を示す。
【0036】
材料の複屈折は、分子配向を高めることによって向上させることができる。多くの複屈折材料は、結晶質または半晶質である。本願明細書で用いられる「結晶質」という用語は、結晶質材料および半晶質材料の両方を意味する。PENおよびポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)のような他の結晶質材料は、第1光学層22の場合によくあるような複屈折フィルム層の構築に有用な結晶質材料の例として挙げられる。さらに、PEN、PBN、PET、およびPBTのコポリマーの一部も結晶質または半晶質である。コモノマーをPEN、PBN、PET、またはPBTに添加すると、例えば第2光学層24または非光学層28に対する接着性および/または運転温度(すなわち、押出しおよび/またはフィルムの延伸のための温度)の低下のような材料の他の特性が向上することがある。運転温度を低下させると、二色性偏光子の亀裂の数および/または大きさが減ることがあるという点で、多層光学フィルム20とポリビニルアルコールから作られる二色性偏光子の間の適合性が向上することがある。
【0037】
coPENを初めとする多くのコポリマーの運転温度を決定することが多いガラス転移温度は、ガラス転移温度(単位:ケルビン)の逆数が、各成分のガラス転移温度の逆数の組成的重み付き平均であるというフォックス方程式によって概算することができる。例えば、70%のナフタレートサブユニットと30%のテレフタレートサブユニットとを含有する低融点PENの場合、1/Tg(低融点PEN)= 0.70(1/Tg(PEN))+0.30(1/Tg(PET))PENのTgは約123℃(396K)であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)のTgは約76℃(349K)である。この例の場合、Tgは約108℃(381K)であると推測されるので、このcoPENのガラス転移温度は、この方法により、PENのガラス転移温度よりも約15℃ほど低いと推測される。一般に、加工温度は、これとほぼ同じ分量だけ下げることができる。この方法を用いたガラス転移温度の推量は、一般に非常に大まかであり、主にコポリマーのガラス転移温度の推定範囲を求める際に役に立つ。
【0038】
図4Aおよび4Bは、3〜9mol%の(ジメチルイソフタレート(DMI)から誘導される)イソフタレートサブユニットまたは(ジメチルテレフタレート(DMT)から誘導される)テレフタレートサブユニットを添加した場合のガラス転移温度および凍結点温度の低下を示している。一般に、凍結点の低下は、所定量の置換サブユニットに対するガラス転移温度の変化よりも大きい。これらの測定値は、これらの測定値および計算方法が精度に欠けるため、前述のように、フォックス方程式を用いて推定されたガラス転移温度と完全には一致しない。
【0039】
図5は、0〜9mol%のテレフタレートサブユニットとイソフタレートサブユニットとを有する低融点coPENの平均複屈折を示している。また、一般にこの低融点coPENは、共通のモノマーサブユニットの存在により、テレフタレートサブユニットおよび/またはイソフタレートサブユニットを含有するcoPENから作られる第2光学層に対してより高い接着性を有する。
【0040】
一部の実施態様においては、第1光学層22は、70〜99mol%の第1カルボキシレートサブユニットと、1〜30mol%、好ましくは5〜15mol%のコモノマーカルボキシレートサブユニットとを含有する半晶質の複屈折コポリエステルから作られる。このコモノマーカルボキシレートサブユニットは、前述のサブユニットの1種類以上であってもよい。好ましい第1カルボキシレートサブユニットとして、ナフタレートおよびテレフタレートが挙げられる。
【0041】
第1光学層22のポリエステル材料が1種類以上のカルボキシレートサブユニットを含有する場合、このポリエステルは、同様のブロックを有するブロックコポリマーから作られる他の層(すなわち、第2光学層24または非光学層28)に対する接着性を高めるために、ブロックコポリエステルであってもよい。また、ランダムコポリエステルを使用してもよい。
【0042】
他の実施態様においては、第1光学層22は、70〜99mol%の第1グリコールサブユニットと、1〜30mol%、好ましくは5〜30mol%のコモノマーグリコールサブユニットとを含有する半晶質の複屈折コポリエステルから作られる。このコモノマーグリコールサブユニットは、前述のサブユニットの1種類以上であってもよい。好ましい第1グリコールサブユニットは、C2〜C8ジオールから誘導される。さらに好ましい第1グリコールサブユニットは、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールから誘導される。
【0043】
さらに他の実施態様には、カルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの両方が混ぜ合わされている第1光学層22が包含される。これらの実施態様の場合、混在するカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの一般に少なくとも0.5mol%、好ましくは少なくとも2.5mol%が、コモノマーカルボキシレートサブユニット、コモノマーグリコールサブユニット、またはこれらを組み合わせたものである。
【0044】
コモノマーカルボキシレートサブユニットおよび/またはコモノマーグリコールサブユニットの添加量を増やすと、配向方向の屈折率、通常は最大屈折率、が低下することが多い。このような所見に基づくと、これによって第1光学層の複屈折が比例して影響を受けるという結果が導かれる可能性がある。しかしながら、コモノマーサブユニットの添加によって横方向の屈折率も低下することが分かっている。このため、実質的な複屈折が維持されることになる。
【0045】
多くの場合、多層光学フィルム20は、所定の延伸比(すなわち、延伸後と延伸前の延伸方向のフィルムの長さの比)に対して、第1光学層用のPENを用いて形成された同様な多層フィルムと同じ面内複屈折を有するcoPENから作られる第1光学層22を用いて形成することができる。複屈折値の整合は、加工温度または延伸温度のような加工パラメータを調整することによって達成されることができる。coPEN光学層は、PEN光学層の延伸方向の屈折率よりも少なくとも0.02ユニット小さい延伸方向の屈折率を有することが多い。非延伸方向の屈折率が低下するため、複屈折が維持される。
【0046】
多層光学フィルム20の一部の実施態様において、第1光学層22は、632.8nmの光を用いて測定した場合に、1.83以下、好ましくは1.80以下であり、かつその差(すなわち、|nx−ny|)が0.15ユニット以上、好ましくは0.2ユニット以上である面内屈折率(すなわち、nxとny)を有するcoPENから作られる。PENは、632.8nmの光を用いて測定した場合に、1.84以上の面内屈折率を有することが多く、2つの面内屈折率の差は約0.22〜0.24である。第1光学層22がPENであってもcoPENであっても、その面内屈折率の差、すなわち複屈折を、層間接着のような特性を向上させるために、0.2よりも小さい値まで低減してもよい。第1層にとって好適であるcoPBNポリマーとcoPENポリマーの間の同様な比較はPBNとPETを用いて行うことができる。
【0047】
第2光学層24は、様々なポリマーから作製することができる。好適なポリマーの例としては、ビニルナフタレン、スチレン、無水マレイン酸、アクリレート、およびメタクリレートのようなモノマーから生成されるビニルポリマーおよびビニルコポリマーが挙げられる。そのようなポリマーの例としては、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のようなポリメタクリレート、およびアイソタクチックまたはシンジオタクチックポリスチレンが挙げられる。他のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、およびポリイミドが挙げられる。さらに、第2光学層24は、ポリエステルやポリカーボネートのようなポリマーおよびコポリマーから形成されてもよい。第2光学層24は、ポリエステルのコポリマーによって以下に例示される。しかしながら、前述の他のポリマーを用いてもよいことは理解できよう。コポリエステルの光学特性に関する同じ考慮点が、後述のように、他のポリマーおよびコポリマーにも通常該当する。
【0048】
一部の実施態様において、第2光学層24は一軸または二軸配向が可能である。しかしながら、さらに一般的には、第2光学層24は、第1光学層22を配向するのに用いられる加工条件下では配向されない。一般に、これらの第2光学層24は、延伸された場合にも、比較的等方性の屈折率を維持する。第2光学層は、632.8nmにおいて約0.04を下回る複屈折を有するのが好ましく、約0.02を下回る複屈折を有するのがさらに好ましい。
【0049】
第2光学層24にとって好適な材料の例としては、PEN、PBN、PET、またはPBTのコポリマーが挙げられる。一般に、これらのコポリマーには、20〜100mol%の、例えば(coPENまたはcoPBNのための)ナフタレートサブユニットまたは(coPETまたはcoPBTのための)テレフタレートサブユニットのような第2カルボキシレートサブユニットと、0〜80mol%の第2コモノマーカルボキシレートサブユニットとからなるカルボキシレートサブユニットが含有される。また、これらのコポリマーには、40〜100mol%の、例えば(coPENまたはcoPETのための)エチレンまたは(coPBNまたはcoPBTのための)ブチレンのような第2グリコールサブユニットと、0〜60mol%の第2コモノマーグリコールサブユニットとからなるカルボキシレートサブユニットが含有される。この混在するカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの少なくとも約10mol%が第2コモノマーカルボキシレートサブユニットまたは第2コモノマーグリコールサブユニットである。
【0050】
第2光学層24に用いられるポリエステルの一例として、廉価coPENが挙げられる。現在使用されているcoPENの1つは、約70mol%がナフタレートであり、約30mol%がイソフタレートであるカルボキシレートサブユニットを有する。廉価coPENは、イソフタレートサブユニットの一部あるいは全部をテレフタレートサブユニットで置き換える。このポリマーの価格は、イソフタレートサブユニットの一般的な供給源であるジメチルイソフタレートがテレフタレートサブユニットの供給源であるジメチルテレフタレートよりも現在はるかに高価なので、下げられる。さらに、図6に示されるように、テレフタレートサブユニットを有するcoPENは、イソフタレートサブユニットを有するcoPENよりも高い熱安定度を有する傾向がある。
【0051】
しかしながら、イソフタレートをテレフタレートで置換するとcoPEN層の複屈折を高めてしまうこともあり得るので、テレフタレートとイソフタレートを組み合わせることが望ましいこともある。一般に、廉価coPENは、20〜80mol%がナフタレートサブユニットであり、10〜60mol%がテレフタレートサブユニットであり、そして0〜50mol%がイソフタレートサブユニットであるカルボキシレートサブユニットを有する。このカルボキシレートサブユニットの20〜60mol%がテレフタレートであり、0〜20mol%がイソフタレートであることが好ましい。このカルボキシレートサブユニットの50〜70mol%がナフタレートサブユニットであり、20〜50mol%がテレフタレートサブユニットであり、0〜10mol%がイソフタレートサブユニットであることがさらに好ましい。
【0052】
coPENは、延伸されたときにわずかに複屈折性を示し、配向することがあるので、この複屈折が低減された第2光学層24に用いられるポリエステル組成物を生成することが望ましい。低複屈折coPENは、コモノマー材料を添加することによって合成してもよい。ジオールサブユニットとして用いられる好適な複屈折低減コモノマー材料の例としては、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、およびネオペンチルグリコールから誘導されるものが挙げられる。カルボキシレートサブユニットとして用いられる好適な複屈折低減コモノマー材料の例としては、t−ブチルイソフタル酸、フタル酸、およびこれらの低級アルキルエステルから誘導されるものが挙げられる。図7は、これらの材料を添加したことによるcoPENの複屈折の減少を示すグラフである。この減少は、第2光学層24が高ひずみ条件下(すなわち、5:1以上の延伸比)または低延伸温度において延伸されたときに、632.8nmにおいて0.07以上であることもある。また、coPENにコモノマーを添加すると、光学偏光子の垂直角度利得が増加する。垂直角度利得とは、反射性偏光子が吸収ポリマーと組み合わせて用いられるときにLCDから発せられる光の増加の目安である。
【0053】
好ましい複屈折低減コモノマー材料は、t−ブチルイソフタル酸、その低級アルキルエステル、および1,6−ヘキサンジオールから誘導される。他の好ましいコモノマー材料としては、他のポリマーとの分岐すなわち架橋を形成するための分岐剤としても作用することがあるトリメチロールプロパンとペンタエリスリトールが挙げられる。これらのコモノマーは、coPENポリエステル中にランダムに分散されてもよいし、あるいはブロックコポリマー中で1つ以上のブロックを形成してもよい。
【0054】
低複屈折coPENの例には、70〜100mol%のC2〜C4ジオールと、1、6−ヘキサンジオールまたはその異性体、トリメチロールプロパン、またはネオペンチルグリコールから誘導される約0〜30mol%のコモノマージオールサブユニットとから誘導されるグリコールサブユニット、および20〜100mol%のナフタレートと、0〜80mol%のテレフタレートサブユニット、イソフタレートサブユニットまたはこれらの混合物と、フタル酸、t−ブチルイソフタル酸、またはこれらの低級アルキルエステルから誘導される0〜30mol%のコモノマーカルボキシレートサブユニットとからなるカルボキシサブユニットが含有される。さらに、この低複屈折coPENは、コモノマーカルボキシレートサブユニットまたはコモノマーグリコールサブユニットであるカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを合わせたものの少なくとも0.5〜5mol%を有する。
【0055】
また、3種類以上のカルボキシレート官能基、エステル官能基、またはヒドロキシ官能基を有する化合物から誘導されるコモノマーサブユニットを添加しても、第2層のコポリエステルの複屈折を低下させることができる。これらの化合物は、他のポリマー分子と分岐すなわち架橋を形成する分岐剤として作用する。本発明の一部の実施態様では、第2層のコポリエステルにこれらの分岐剤が0.01〜5mol%、好ましくは0.1〜2.5mol%含有されている。
【0056】
ある特定のポリマーは、70〜99mol%のC2〜C4ジオールと、1、6−ヘキサンジオールから誘導される約1〜30mol%のコモノマーサブユニットとから誘導されるグリコールサブユニット、および5〜99mol%のナフタレートと、1〜95mol%のテレフタレート、イソフタレートまたはこれらの混合物と、フタル酸、t−ブチルイソフタル酸、またはこれらの低級アルキルエステルの1種類以上から誘導される0〜30mol%のコモノマーカルボキシレートサブユニットとからなるカルボキシレートサブユニットを有する。さらに、このコポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットとを合わせたものの少なくとも0.01〜2.5mol%が分岐剤である。
【0057】
一般に、複屈折は分子量とともに低下するので、他の有用なポリエステルとして、低分子量coPENを挙げることができる。この低分子量coPENは、0.4〜0.5dL/gの固有粘度を有する。このポリマーの固有粘度は、3種類以上のカルボキシレート基、エステル基、および/またはヒドロキシ基を有するモノマーを約0.5〜5mol%添加することによって維持される。これらのモノマーは分岐剤として作用することが多い。このポリマーの分子量は、例えば、反応器撹拌機の消費電力、攪拌機速度、および溶融温度によって決定される規定溶融粘度において重合を終了させることによって設定される。一般に、0.5dL/g以上の固有粘度を有する非光学層が、構造支持を与えるために、この低分子量coPENと併用される。
【0058】
低分子量coPENの溶融粘度を高める際に分岐剤として用いられる好適なモノマーとして、2種類より多いヒドロキシ官能基を有するアルコールだけでなく、2種類より多いカルボン酸官能基を有するカルボン酸およびその低級アルキルエステルが挙げられる。好適な分岐モノマーの例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、またはトリメリト酸が挙げられる。図8は、(固有粘度の低下によって測定される)分子量の低下に伴う複屈折の低下を示している。
【0059】
別の種類の有用なコポリエステルには、シクロヘキサンジカルボキシレートサブユニットが含有される。これらのコポリエステルは、第1光学層22のポリエチレンナフタレートとの安定した多層同時押出を可能にする粘弾性を有するので、低屈折率ポリマーとして特に有用である。対照的に、低い屈折率を有する一部の他の脂肪酸コポリエステルには、ポリエチレンナフタレンと一緒に多層メルトマニホールドに同時押出しされる際に安定したメルトメルトフローを供給するのに必要な流動学的性質がない。また、シクロヘキサンジカルボキシレートは、同時押出しの際に他の低屈折率コポリエステルよりも高い熱安定性を供給することがある。
【0060】
t−ブチルイソフタレートは、実質的に屈折率を高めずに、コポリエステルのガラス転移温度とモジュラスとを効果的に向上させる際にシクロヘキサンジカルボキシレートと併用される好ましいカルボキシレートサブユニットである。t−ブチルイソフタレートによって、シクロヘキサンジカルボキシレートのコポリエステルは、632.8nmにおける屈折率を1.51ほどの低い値に維持したままで室温よりも高いガラス転移温度を有することができる。トリメチロールプロパンのような分岐モノマーを利用することによって、合成されるポリマーの色および透明度を向上させる多量の触媒または長い反応時間を必要とせずに、これらのモノマーから高粘度ポリマーを合成することができる。したがって、屈折率の低い非複屈折コポリエステルを、カルボキシレートサブユニットを供給するシクロヘキサンジカルボキシレートおよびt−ブチルイソフタレートと、グリコールサブユニットを供給するエチレングリコールおよびトリメチロールプロパンとを用いて製造してもよい。これらのコポリエステルは、室温で物理特性を維持する多層光学フィルムを作製するのに有用である。
【0061】
カルボキシレートとしてナフタレンジカルボキシレートとシクロヘキサンジカルボキシレートとを用いて作られるコポリエステルは、ポリエチレンナフタレートと一緒に同時押出しされて、層間接着の良好な多層光学フィルムを形成することができる。この多層光学フィルムからの屑をフレーク状に粉砕してから二軸スクリュー押出機に押出し、この押出機の中で十分に混合してエステル交換反応させて、ナフタレート含有量が増加した新しいコポリエステルを形成してもよい。この屑は再利用されてもよい。
【0062】
本発明の実施態様の1つには、シクロヘキサンジカルボキシレートから誘導されるカルボキシレートサブユニットを有するポリエステルから作られる第2光学層が包含される。好ましくは、このポリエステルは、5〜95mol%のジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートと5〜95mol%のジメチルt−ブチルイソフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、85〜99.99mol%のC2〜C4ジオールと0.01〜5mol%のトリメチロールプロパンとから誘導されるグリコールサブユニットとを有する。さらに好ましくは、このポリエステルは、50〜85mol%のジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートと15〜50mol%のジメチルt−ブチルイソフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、98〜99.99mol%のC2〜C4ジオールと0.01〜2mol%のトリメチロールプロパンとから誘導されるグリコールサブユニットとを有する。
【0063】
また、非光学層28も、同様の材料を同様の分量用いて、第2光学層24と同様なコポリエステルから作製されてもよい。さらに、第2光学層24に関して前述されたような他のポリマーを使用してもよい。(図2に示されるように)スキン層にcoPEN(すなわち、PENのコポリマー)または他のコポリマー材料を使用することによって、多層光学フィルムの割れ(すなわち、配向方向のポリマー分子の大部分の、ひずみによって誘発される結晶化度と配列によるフィルムの分断)が低減されるが、これはスキン層のcoPENが第1光学層22を配向するのに用いる条件下で延伸されたときに非常にわずかしか配向しないためであることが分かっている。
【0064】
第1光学層22のポリエステル、第2光学層24のポリエステル、および非光学層28のポリエステルは、同時押出しできるようにするために、同等の流動学的性質(すなわち、溶融粘度)を有するように選択されるのが好ましい。一般に、第2光学層24と非光学層28は、第1光学層22のガラス転移温度よりも約40℃高い温度を超えない温度であるガラス転移温度Tgを有する。第2光学層24と非光学層28のガラス転移温度が第1光学層22のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。
【0065】
偏光子は、一軸配向された第1光学層22を、この配向された層の面内屈折率の1つとほぼ等しい等方性屈折率を有する第2光学層24と組み合わせることによって作製されてもよい。あるいは、光学層22と24の両方が複屈折ポリマーから形成され、1つの面内方向における屈折率がほぼ等しくなるように、多段延伸法において配向される。2つの光学層22と24の間の境界面は、どちらの場合でも、光反射面を形成する。これらの2つの層の屈折率がほぼ等しい方向に対して平行である平面内で偏光される光は、実質的に透過される。これらの2つの層が異なる屈折率を有する方向に対して平行である平面内で偏光される光は、少なくとも部分的に反射される。反射率は、層の数を増やすことによって、または第1層22と第2層24の間の屈折率の差を大きくすることによって高めることができる。
【0066】
一般に、特定の境界面に対する最高反射率は、この境界面を形成する一組の光学層22と24の光学的厚さを合わせたものの2倍に相当する波長において起こる。これらの2つの層の光学的厚さはn11+n22で表され、n1とn2はこれらの2つの層の屈折率を表し、d1とd2はこれらの層の厚さを表す。光学層22と24は、それぞれ4分の1波長の厚さを有していてもよく、あるいは光学層22と24は、それらの光学的厚さの合計が2分の1波長(またはその倍数)であるならば、互いに異なる光学的厚さを有していてもよい。複数の層を有する多層光学フィルムには、特定の波長帯全体にわたるフィルムの屈折率を高めるために、互いに異なる光学的厚さを有する層が含まれていてもよい。例えば、多層光学フィルムには、特定の波長を有する光の反射が最適になるように各々が調整される複数の対となる層が含まれていてもよい。
【0067】
あるいは、第1光学層22を2つの異なる方向に延伸することによって二軸配向してもよい。この2つの異なる方向に光学層22を延伸すると、選択された2つの直交する軸における正味対称または非対称延伸になることがある。
【0068】
反射鏡の形成の1つの例として、二軸配向光学層22と、この二軸配向層の両方の面内屈折率と異なる屈折率を有する第2光学層24との組み合わせが挙げられる。この反射鏡は、2つの光学層22と光学層24の間の屈折率の不整合のため、どちらかの偏光を有する光を反射することによって機能する。また、反射鏡は、相互の面内屈折率が著しく異なる一軸配向層同士の組み合わせを用いて作製されてもよい。他の実施態様においては、第1光学層22は複屈折性ではなく、反射鏡は、相互の面内屈折率が著しく異なる第1光学層22と第2光学層24とを組み合わせることによって形成される。反射は、これらの層の配向なしで起こる。反射鏡と偏光子の両方を製造することで知られており、かつ使用されてもよい方法と層の組み合わせは他にも存在する。前述のそれらの特定の組み合わせは単に一例に過ぎない。
【0069】
第2光学層24は、多層光学フィルム20の所望の動作に、少なくとも部分的に、依存する様々な光学特性を用いて作製されてもよい。ある実施態様においては、第2光学層24は、第1光学層22を配向するのに用いる条件下で延伸した場合にはっきりと分かる程度に光学的に配向しないポリマー材料から作られる。そのような層は、第2光学層24を比較的等方性の状態に維持したままで第1光学層22を配向するために延伸されることのできる層のスタック26を、例えば、同時押出しによって形成させることができるので、反射偏光フィルムの形成に特に有用である。一般に、第2光学層24の屈折率は、屈折率が一致する方向に対して平行な平面内に偏光を有する光を透過させるために、配向された第1光学層22の屈折率の1つとほぼ等しい。この2つのほぼ等しい屈折率の差は、632.8nmにおいて、好ましくは約0.05以下、さらに好ましくは約0.02以下である。ある実施態様においては、第2光学層24の屈折率は、延伸前の第1光学層22の屈折率とほぼ等しい。
【0070】
他の実施態様においては、第2光学層24は配向可能である。場合によっては、第2光学層24の有する面内屈折率の一方が、2組の層22と層24を配向した後の第2光学層22の対応する屈折率と実質的に同じであるのに対し、そのもう一方の面内屈折率は、第2光学層22の対応する屈折率と実質的に異なる。他の場合、特に反射鏡用途の場合には、光学層22と24の両方の面内屈折率は、配向後には実質的に異なっている。
【0071】
もう一度図2と図3を参照すると、例えば加工中および/または加工後に光学層22と24を物理的損傷から保護するために、1層以上の非光学層28が、図2R>2に示されるようにスタック26の少なくとも一方の表面上にスキン層として形成されてもよい。さらに、例えばスタック26に機械的強度を与えるために、又は加工中にこのスタックを保護するために、1層以上の非光学層28が、図3に示されるようにスタック26の層の間に形成されてもよい。
【0072】
理想としては、非光学層28が、少なくとも対象となる波長帯においては、多層光学フィルム20の光学特性の決定に大きく関わらない方がよい。一般に、非光学層28は複屈折性でもなく配向可能でもないが、場合によっては、これは真実ではない。一般に、非光学層28がスキン層として用いられる場合、少なくともある程度の表面反射が見込まれる。多層光学フィルム20を偏光子とする場合、この非光学層が比較的低い屈折率を有することが好ましい。これによって表面反射量が低下する。多層光学フィルム20を反射鏡とする場合、光の反射を向上させるために、非光学層28が高い屈折率を有するのが好ましい。
【0073】
非光学層28がスタック26の内部に存在する場合、非光学層28に隣接する光学層22および24とこの非光学層28とによって少なくともある程度の光の偏光または反射が通常存在する。しかしながら、一般に、非光学層28は、スタック26内の非光学層28によって反射される光が赤外帯の波長を有することを示す厚さを有する。
【0074】
様々な機能層または機能被膜を本発明の光学フィルムおよび光学装置、特にそれらの表面に沿って付与することによって、それらの物理的または化学的性質を変更または改良してもよい。そのような層または被膜としては、例えば、スリップ剤、低接着性裏面材料、導電層、帯電防止被膜またはフィルム、障壁層、難燃剤、紫外線安定剤、耐摩耗材料、光学被膜、補正フィルム、リターデイションフィルム、拡散接着剤、および/または上記フィルムまたは装置の機械的結着性または機械的強度を向上させるために設計された支持体が挙げられる。
【0075】
また、スキン層またはスキン被膜は、得られたフィルムまたは装置に所望の遮断性を付与するために添加されてもよい。従って、例えば、水または有機溶剤のような液体、あるいは酸素または二酸化炭素のような気体に対する上記フィルムまたは装置の透過性を変えるために、障壁フィルムまたは障壁被膜をスキン層として、またはスキン層の1成分として付与してもよい。
【0076】
さらに、スキン層またはスキン被膜は、得られた物品の耐磨耗性を付与または改善するために添加されてもよい。従って、例えば、ポリマーマトリックスに埋め込まれたシリカ粒子を含むスキン層を本発明に従って製造された光学フィルムに付与することによって、このフィルムに耐磨耗性を付与してもよいが、もちろんこれは、そのような層がこのフィルムが利用される用途において必要とされる光学特性を過度に損なうことがないという前提で行われる。
【0077】
さらに、スキン層またはスキン被膜は、得られた物品の耐破壊性および/または耐引裂性を付与または改善するために添加されてもよい。耐引裂性層の材料を選択する際に考慮される要素としては、破断伸び率、ヤング率、引裂強度、内部層に対する接着性、対象となる電磁帯域幅における透過率および吸収率、光学的透明度すなわち曇り度、周波数の関数としての屈折率、きめおよび粗度、溶融熱安定性、分子量分布、溶融流動学および同時押出性、スキン層の材料と光学層の材料の間の混和性および相互拡散率、粘弾性反応、延伸条件下における弛緩および結晶化動作、使用温度における熱安定性、耐候性、被膜に対する接着力、および各種気体および溶剤に対する透過性が挙げられる。耐破壊性層または耐引裂性層は、製造工程の間に付与されてもよいし、あるいは製造工程後に多層光学フィルムの上に被覆または積層されてもよい。製造工程の間に、例えば同時押出法によってこれらの層をフィルムに接着することによって、このフィルムが製造工程の間保護されるという利点が得られる。一部の実施態様においては、1層以上の耐破壊性層または耐引裂性層を、単独であるいは耐破壊性スキン層または耐引裂性スキン層と組み合わせて、このフィルムの内部に形成してもよい。
【0078】
本発明のフィルムおよび光学装置を、その表面に被覆されるポリマービーズのような低摩擦被膜またはスリップ剤で処理することによって、良好なスリップ性を付与してもよい。あるいは、これらの材料の表面の形態学を、例えば押出条件を操作することによって変更することによって、フィルムの表面を滑りやすくしてもよい。表面形態学をそのように変更することができる方法は、米国特許出願第08/612,710号に記載されている。
【0079】
本発明の光学フィルムが接着テープの1成分として用いられるような一部の用途においては、ウレタン化学、シリコーン化学またはフルオロカーボン化学に基づくもののような低接着性裏面(LAB)被膜またはフィルムで、この光学フィルムを処理することが望ましいこともある。このように処理されたフィルムは、感圧接着剤(PSA)に対して適当な剥離性示すので、接着剤で処理してからロール状に巻くことができる。このようにして作製されたフィルムは装飾用途、またはテープの表面が拡散的に反射性または透過性であることが望ましいとされるすべての用途に用いることができる。
【0080】
本発明のフィルムおよび光学装置に、1層以上の導電層を付与してもよい。そのような導電層には、銀、金、銅、アルミニウム、クロム、ニッケル、スズおよびチタンのような金属、銀合金、ステンレススチールおよびインコネルのような合金、およびドープおよび非ドープ酸化スズ、酸化亜鉛および酸化スズインジウム(ITO)のような半導体酸化金属が含まれていてもよい。
【0081】
また、本発明のフィルムおよび光学装置に、帯電防止被膜またはフィルムを付与してもよい。そのような被膜またはフィルムとしては、例えば、五酸化バナジウムおよびスルホン酸ポリマー、炭素または他の導電性金属層の塩が挙げられる。
【0082】
また、本発明のフィルムおよび装置に、特定の液体または気体に対してフィルムの透過性を変える1層以上の障壁フィルムまたは被膜を付与してもよい。従って、例えば、本発明の装置およびフィルムに、水蒸気、有機溶剤、酸素、または二酸化炭素が前記フィルムを透過するのを抑制するフィルムまたは被膜を付与してもよい。障壁被膜は、本発明のフィルムおよび装置の成分が水分透過に起因するひずみを受ける可能性がある高湿度環境において特に望ましいことがある。
【0083】
また、本発明のフィルムおよび光学装置は、特に、例えば飛行機上のような厳しい防火規則によって規制される環境において使用される場合に、難燃剤によって処理されてもよい。好適な難燃剤としては、アルミニウム三水和物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および難燃性有機リン酸塩化合物が挙げられる。
【0084】
また、本発明のフィルムおよび光学装置に、スキン層として用いられてもよい耐摩耗被膜またはハードコートを付与してもよい。これらとしては、ペンシルバニア州のフィラデルフィアにあるローム&ハース(Rohm&Haas)社から入手できるアクリロイドA−11(Acryloid A−11)やパラロイドK−120N(Paraloid K−120N)のようなアクリルハードコート、米国特許第4,249,011号に記載されるものやペンシルバニア州のウェストチェスターにあるサルトマー社(Sartomer Corp.)から入手できるようなウレタンアクリラート、および脂肪族ポリイソシアネート(すなわち、ペンシルバニア州のピッツバーグにあるマイルズ社(Miles,Inc.)から入手できるデスモジュールN−3300(Desmodur N−3300))とポリエステル(すなわち、テキサス州のヒューストンにあるユニオンカーバイド(Union Carbide)社から入手できるトーンポリオール0305(Tone Polyol 0305))との反応から得られるウレタンハードコートが挙げられる。
【0085】
さらに、本発明のフィルムおよび光学装置を、構造剛性や耐候性を付与するため、または扱いやすさを向上させるために、例えばガラス、金属、アクリル、ポリエステル、および他のポリマー裏材料のような剛性または半剛性支持体に貼り合せてもよい。例えば、多層光学フィルム20を、所望の形状にスタンプさもなければ形成して維持できるように、薄いアクリルまたは金属裏材に貼り合せてもよい。このフィルムを他の壊れやすい裏材に貼付するような用途の場合には、PETフィルムまたは耐破壊−引裂性フィルムを含む層をさらに用いてもよい。
【0086】
また、本発明のフィルムおよび光学装置に、耐破砕性フィルムおよび被膜を付与してもよい。この用途に好適なフィルムおよび被膜は、例えば、特許公報EP592,284およびEP591,055に記載されており、ミネソタ州のセントポールにあるスリーエムカンパニー(3M Company)社から商業的に入手できる。
【0087】
また、様々な光学層、光学材料および光学装置を、特定の用途の場合に、本発明のフィルムよび装置に対して、または本発明のフィルムよび装置と組み合わせて使用してもよい。これらとしては、限定されるわけではないが、磁気または光磁気被膜またはフィルム、ディスプレイパネルやプライバシーウィンドウに用いられるような液晶パネル、写真乳剤、織物、線形フレネルレンズのようなプリズムフィルム、輝度増強フィルム、ホログラフィーフィルムまたはイメージ、エンボス性フィルム、タンパー防止フィルムまたは被膜、低放射率用途のための赤外線透過フィルム、剥離フィルムまたは剥離コート紙、補正フィルム、リターデーションフィルム、拡散接着剤、および偏光子または反射鏡が挙げられる。
【0088】
多層光学フィルム20の一方または両方の主要な面に複数の層をさらに設けることが考慮されるが、それらは前述の被膜またはフィルムの如何なる組み合わせでもよい。例えば、接着剤を多層光学フィルム20に用いる場合、その接着剤は全体の反射率を高めるために二酸化チタンのような白色顔料を含有していてもよいし、あるいは支持体の屈折率を多層光学フィルム20の屈折率に加算することができるようにするために光学的に透明でもよい。
【0089】
フィルムのロール形成および加工性を向上させるために、本発明の多層光学フィルムは、フィルムに混入されるか又は独立した被膜として付加されるスリップ剤をさらに含んでいてもよい。ほとんどの用途では、スリップ剤は、曇りを最小限に抑えるために、フィルムの片側のみ、理想としては剛性支持体に面している側に添加される。
【0090】
本発明に従って作製されたフィルムおよび他の光学装置は、例えば慣用の真空めっきされた誘電酸化金属または金属/酸化金属光学フィルム、シリカゾルゲル被膜、および3M社(ミネソタ州、セントポール)から入手できる押出し可能なフルオロポリマーであるTHVのような低屈折率フルオロポリマーから誘導されるような被覆された又は同時押出しされた非反射層のような非反射層または被膜の1層以上さらに含有する。そのようなフィルムまたは被膜は、感偏光性であってもなくてもよいが、透過性を高め、かつ反射によるギラツキを低下させる役割を果たし、そして塗装またはスパッタエッチングのような適当な表面処理を施すことによって本発明のフィルムおよび光学装置に付与されてもよい。
【0091】
本発明に従って作製されたフィルムおよび他の光学装置に、防曇性を付与するフィルムまたは被膜を付与してもよい。場合によって、前述の非反射層は、前記フィルムまたは装置に非反射性と防曇性の両方を付与するという2つの役割を果たす。様々な防曇剤が当該技術分野において公知である。しかしながら、一般に、これらの材料には、フィルム表面に疎水性を付与し、かつ連続した、不透明度の低い水の膜の形成を促進させる脂肪酸エステルのような物質が含まれている。
【0092】
表面が「曇る」傾向を低減する被膜が、数人の発明者によって報告されている。例えば、レイ(Leigh)に対する米国特許第3,212,909号には、防曇性組成物を調製するために、アルキルアンモニウムカルボキシレートを硫酸化またはスルホン化脂肪材料である界面活性剤と混ぜ合わせたアンモニウムセッケンを使用することが記載されている。エリアス(Elias)に対する米国特許第3,075,228号には、各種表面を浄化し、かつその表面に防曇性を付与するのに有用である防曇性物品を製造するために、硫酸化アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールの塩とアルキルベンゼンスルホン酸塩を使用することが記載されている。ズモダ(Zmoda)に対する米国特許第3,819,522号には、デシンジオールの誘導体を含む界面活性剤の組み合わせの使用だけでなく、防曇性ウィンドウクリーナー界面活性剤混合物中にエトキシ化アルキル硫酸塩を含む界面活性剤混合物の使用も記載されている。特開平06−41335号には、コロイドアルミニウムと、コロイドシリカと、アニオン界面活性剤とを含む防曇および防滴性組成物が記載されている。米国特許第4,478,909号(タニグチら)には、ポリビニルアルコールと、超微粒子状シリカと、有機シリコン化合物とを含み、炭素/シリコン重量比が報告されるフィルムの防曇性にとって明らかに重要であるという硬化防曇性塗膜が記載されている。フッ素含有界面活性剤を初めとする様々な表面活性剤は、被膜の表面の滑らかさを向上させるために用いられてもよい。界面活性剤を取り入れた他の防曇性被膜は、米国特許第2,803,522号、3,022,178号、および3,897,356号に記載されている。PCT96/18,691(ショルツ(Scholtz)ら)には、被膜が防曇性と非反射性の両方を付与することがある方法が記載されている。
【0093】
本発明のフィルムおよび光学装置は、紫外線安定化フィルムまたは被膜を用いることによって紫外線から保護されてもよい。好適な紫外線安定化フィルムまたは被膜としては、ベンゾトリアゾールまたはニューヨーク州のホーソーンにあるチバガイギー社(Ciba Geigy Corp.)からチニュヴィン(Tinuvin)という商品名で入手できるようなヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含有するものが挙げられる。他の好適な紫外線安定化フィルムおよび被膜としては、ニュージャージー州のパルシーパニー(Parsippany)にあるBASF社(BASF Corp.)から商業的に入手できるベンゾフェノンまたはジフェニルアクリレートを含有するものが挙げられる。そのようなフィルムまたは被膜は、本発明のフィルムおよび光学装置が屋外用途、もしくは光源がかなりの量の紫外線域のスペクトルの光を発する照明器具に用いられる場合に特に望ましいこともある。
【0094】
本発明のフィルムおよび光学装置は、外観を変えるために、もしくは特定の用途に合うように変更するために、インク、染料、または顔料で処理されてもよい。従って、例えば、前記フィルムは、インクまたは製品識別、宣伝、警告、装飾、または他の情報を表示するために利用されるようなインクまたは他の印刷証印によって処理されてもよい。スクリーン印刷、凸版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、点描印刷、レーザー印刷などの様々な技法がフィルムに印刷するのに使用されてもよく、そして1および2成分インク、酸化乾燥インクおよび紫外線乾燥インク、溶解インク、分散インクおよび100%インク系のような様々な種類のインクを用いることができる。さらに、染料または顔料は、加工中の任意の時点でポリマーに混入されてもよい。
【0095】
多層光学フィルムの外観を、この多層光学フィルムに染色フィルムを貼り合わせたり、この光学フィルムの表面に着色被膜を貼り付けたり、あるいはこの光学フィルムを作製するのに用いる材料の1種類以上に顔料を含ませることによってフィルムを着色することによって変えてもよい。
【0096】
可視と近赤外の両方の染料および顔料が本発明において考慮され、例として、可視域の色スペクトルにおいて紫外線および蛍光を吸収する染料のような蛍光増白剤が挙げられる。光学フィルムの外観を変えるために添加してもよい他の層としては、例えば、不透明化(黒色)層、拡散層、ホログラフィーイメージまたはホログラフィーディフューザ、および金属層を挙げることができる。これらのそれぞれは、フィルムの片面または両面に直接貼りあわされてもよいし、あるいはこのフィルムに貼り合わされる第2フィルムまたはフォィル構造物の1成分でもよい。あるいは、不透明または拡散剤、または着色顔料のような一部の成分は、フィルムを別の面に張り合わせるのに用いられる接着剤層に含まれていてもよい。
【0097】
また、本発明のフィルムおよび装置には、金属被膜が付与されてもよい。従って、例えば、金属層は、熱分解、粉体被覆、蒸着、陰極スパッタリング、イオンめっきなどによって、光学フィルムに直接貼り合わされてもよい。また、金属箔または剛性金属板を光学層に貼りあわせてもよいし、あるいは、まず独立したポリマーフィルムもしくはガラスシートまたはプラスチックシートを前述の技法を用いて金属被覆してから本発明のフィルムまたは光学装置に貼り合せてもよい。
【0098】
多層ポリマーフィルムを形成する方法の1つを簡単に説明する。加工条件および加工における考慮点は、米国特許出願第09/006,288にさらに詳しく説明されている。多層ポリマーフィルムは、第1および第2光学層だけでなく非光学層にも用いられるポリマーを押出成形することによって形成される。押出成形の条件は、ポリマー樹脂の供給流れが連続かつ安定した状態で十分に供給、溶融、混合および注入されるように選択される。最終メルトストリーム温度は、その下限値において凍結、結晶化または過度の高圧力降下を低減させ、かつその上限値において劣化を低減させる範囲に納まるように選択される。冷却ロール上へのフィルム流延まで、およびその工程を含む1種類以上のポリマーのメルトストリーム作業全体を同時押出と呼ぶことが多い。
【0099】
押出成形後、各メルトストリームはネックチューブを介して、ポリマーフローの連続かつ一定した速度を規制するのに用いられるギアポンプに運ばれる。静的混合装置をネックチューブの末端に設置することによって、ギアポンプからのポリマーメルトストリームを、メルトストリーム温度を一定に維持したままで、多層フィードブロックに運んでもよい。一般に、メルトストリーム全体をできるだけ均一加熱することによって、メルトストリームの一定の流れが向上され、かつ溶融加工中の劣化も低減される。
【0100】
多層フィードブロックは、2つ以上のポリマーメルトストリームの各々を複数の層に分割し、これらの層を交互に配置し、それらの複数の層を組み合わせて1つの多層ストリームにする。任意の所定のメルトストリームからの層は、そのストリームの一部を主要流路から逐次的に抜き出し、フィードブロックマニホールドの層スロットに続いている副流路管に供給することによって作製される。この層の流れは、装置の選択だけでなく、各々の副流路管および層スロットの形状および物理的寸法によっても制御されることが多い。
【0101】
多くの場合、この2つ以上のメルトストリームの副流路管および層スロットは交互に配置されて、例えば、交互配置層を形成する。フィードブロックの下流側のマニホールドは、組み合わされた多層スタックを圧縮し、かつ横方向に均一に広げるような形状をとることが多い。保護境界層(PBLs)として知られる、厚みのある非光学層は、光学多層スタックのメルトストリームによって、あるいは別のメルトストリームによってマニホールドの壁面の近くに供給されてもよい。前述のように、これらの非光学層は、壁圧および結果として起こり得る不安定な流れの影響から、非光学層よりも薄い光学層を保護するために用いられてもよい。
【0102】
フィードブロックマニホールドから排出された多層スタックは、次に、ダイのような最終整形装置に供給されてもよい。あるいは、このストリームを、好ましくはスタックの層に対して垂直に、分割して2つ以上の多層ストリームを形成し、積み重ねることによって再度組み合わせてもよい。このストリームは、層に対して垂直以外の角度で分割されてもよい。ストリームを分割して積み重ねるフローチャネリング装置は倍増器(multiplier)と呼ばれる。分割されたストリームの幅(すなわち、各層の厚さの合計)は同じあってもなくてもよい。倍増器比は、ストリームの広い方の幅の狭い方の幅に対する比として定義される。異なるストリーム幅(すなわち、均一よりも大きな倍増器比)は、層厚勾配を作成するのに役に立つことがある。ストリームの幅が異なる場合、倍増器は、積み重ねる際に層の幅が一致するように、厚さ方向および流動方向に対して、横方向に幅の狭いストリームを広げてもよいし、および/または幅の広いストリームを圧縮してもよい。
【0103】
倍増化の前に、多層スタックに非光学層をさらに加えてもよい。これらの非光学層は、倍増器内でPBLsとして機能してもよい。倍増化と積層の後に、これらの層の一部が光学層の間に内部境界層を形成する一方で、他の層がスキン層を形成してもよい。
【0104】
倍増化の後に、得られたウェブは最終整形装置に送られる。そして、このウェブは、時には鋳造ホイールまたは鋳造ドラムと呼ばれることもある冷却ロール上に流延される。この流延は、その詳細がポリマーフィルム製造の技術分野において周知である静電ピンによって支持されることが多い。このウェブは、ウェブ全体が均一の厚みになるように流延されてもよいし、またはダイリップを制御することによって意図的なウェブの厚み分布を引き起こしてもよい。
【0105】
次に、この多層ウェブを延伸して最終多層光学フィルムを作製する。多層光学偏光子を作製する典型的な方法の1つにおいては、一段延伸工程が利用される。この工程は、テンターあるいは縦配向機内で実施されてもよい。一般的なテンターは、ウェブ経路に対して横方向(TD)に延伸するが、特定のテンターは、フィルムをウェブ経路すなわち縦方向(MD)に特定の寸法に延伸または弛緩(収縮)させる仕組みを備えている。従って、この典型的な方法においては、フィルムは1つの面内方向に延伸される。第2の面内寸法は、慣用のテンターの場合のように一定に保たれるか、あるいは縦配向機の場合のようにより小さな幅に合わせて縮小されてもよい。そのような縮小は重要であり、延伸比と共に増加する。
【0106】
多層反射鏡を作製する典型的な方法の1つにおいては、二段式延伸法を用いて、両方の面内方向に複屈折材料を配向する。この延伸方法は、2つの面内方向に延伸ができる一段式方法の組み合わせであればどれでもよい。さらに、縦方向に延伸できるテンター、すなわち2つの方向に逐次的または同時に延伸できる二軸テンターが用いられてもよい。この後者の場合、単一の二軸配向方法が用いられてもよい。
【0107】
多層偏光子を作製するさらに別の方法においては、各延伸工程に対する様々な材料の異なる働きを利用することによって、1つの同時押出しされた多層フィルム内の、異なる材料を含む異なる層が、互いに異なる度合いおよび種類の配向を有するようにする多段式延伸法が用いられる。
【0108】
これらの層およびフィルムに用いられるポリエステルの固有粘度は、このポリマーの(分岐モノマーの非存在下における)分子量に関係する。一般に、ポリエステルの固有粘度は約0.4dL/gよりも高い。この固有粘度が約0.4〜0.7dL/gであるのが好ましい。この開示目的においては、固有粘度は、特に断わらない限り、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン溶媒において30℃で測定される。
【0109】
二色性偏光フィルム 様々な二色性偏光子が存在する。特に有用な二色性偏光子11の1つとして、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。これらのフィルムは、染色材料を混入した際に、当該技術分野において公知であり、二色性偏光子としてうまく利用されている。二色性偏光子として機能するために、このポリビニルアルコールフィルムは通常延伸された配向される。着色されたときに、このフィルムの配向によって、このフィルムの光学特性(すなわち、消光軸)が決まる。
【0110】
前記フィルムは、様々な手法によって作製することができる。このフィルムを作製する方法の1つには、ポリビニルアルコールを溶剤、通常は水、に混入して、約5〜30%の固体を含有する溶液を調製する工程が包含される。次に、この溶液を支持体に塗布し、約100℃〜約120℃の温度で乾燥させる。得られたフィルムを延伸してポリビニルアルコールを配向させる。
【0111】
本発明は光学偏光子、特に二色性偏光子に関するものである。さらに、本発明は、これらの偏光子の形成、および反射性偏光子、反射鏡および赤外線鏡のような他の光学素子との併用に関するものである。
【0112】
慣用の二色性偏光子11はポリビニルアルコールフィルムから作られることが多い。これらのフィルムは当該技術分野において公知であり、染色材料を混入した際に、二色性偏光子として利用される。二色性偏光子として機能するために、このポリビニルアルコールフィルムは通常延伸されて配向される。着色されたときに、このフィルムの配向によって、このフィルムの光学特性(すなわち、消光軸)が決まる。これらのフィルムの利用法の1つとして、延伸されて1層以上が配向されることが多い前述の多層光学層との併用が挙げられる。
【0113】
残念なことに、ポリビニルアルコールフィルムは、例えば多層ポリエステルフィルムから作られるもの、および特にPENのようなナフタレートサブユニットを含有するポリエステルフィルムのような多くの多層光学フィルムの形成に用いられる延伸条件下では亀裂が生じやすい。本発明に対して特定の推測は全く必要でないが、ポリビニルアルコールが、その構造の完全性を維持したままでこれらの条件下では延伸ができないという水素結合網状組織を形成すると考えられている。この水素結合網状組織がひずみ、そして、最終的に何度かスリップを起こして、亀裂が入る。実験によって、小分子偏光子ではこの問題は解決されないことが示されている。
【0114】
ポリビニルアルコールの形成に用いられる溶媒に分散可能な第2のポリマーを添加すると亀裂の発生が減少することが分かっている。この第2ポリマーは、水がポリビニルアルコールにとって一般的な溶媒であるので、水溶性であることが好ましい。この第2ポリマーが極性ポリマーであることがさらに好ましい。好適な第2ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールの溶媒に分散可能なポリエステルが挙げられる。水溶性ポリエステルの例としては、米国特許第5,427,835号に記載されているようなスルホン化ポリエステルが挙げられる。好適な助溶剤としては、例えば、C1〜C4アルコールのような極性溶剤が挙げられる。
【0115】
一般に、このポリビニルアルコールと第2ポリマーは5:1〜100:1の重量比、好ましくは8:1〜20:1の重量比で混合される。この溶液は、一般に1〜50重量%が固体、好ましくは5〜25重量%が固体である。本発明に対して特定の推測は全く必要でないが、この第2ポリマーを添加することによって水素結合網状組織が多数の領域に分割され、ひずんだ際にこれらの領域が互いに向かって動くことによって、ひずみが緩和され、かつ亀裂の量を減少させることがあると考えられている。
【0116】
ポリビニルアルコールフィルムは様々な手法で作製できる。このフィルムを作製する典型的な方法の1つには、ポリビニルアルコールと第2ポリマーとを前述の割合および重量パーセントで溶媒に分散させる工程が包含される。次に、これらの2種類のポリマーの分散液を支持体の表面に塗布する。この支持体は、別のフィルム、多層スタック、プラスチック性の物体、あるいはポリビニルアルコールフィルムを延伸できる任意の他の表面でもよい。この溶液の塗布は、例えばシューコーティング、押出コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、または均一の被膜を形成することができるあらゆる他の被覆方法のような手法を用いて支持体を被覆するような様々な公知の方法によって実施されてもよい。この支持体を下塗剤または接着剤で被覆してもよいし、あるいはポリビニルアルコールフィルムがこの支持体に固定されるのを補助するために、この支持体をコロナ放電処理してもよい。一般に、この被膜の厚さは、未乾燥状態で25〜500μm、好ましくは50〜125μmである。被覆後、このポリビニルアルコールフィルムを通常100℃〜150℃の温度で乾燥させる。次に、このフィルムを、例えば縦配向機またはテンタークリップを用いて延伸させて配向させる。一部の実施態様では、このフィルムは支持体から剥離される。その後、所望であれば、このフィルムを他の表面に接着してもよい。そして、得られたポリビニルアルコールフィルムは、二色性偏光子として利用することができる。しかしながら、このポリビニルアルコールフィルムを他の用途に用いてもよいことは理解できよう。
【0117】
一般に、完成したポリビニルアルコールフィルムには、二色性偏光子を形成するための二色染色材料が含まれている。この二色染色材料としては、染料、顔料などが挙げられる。二色性偏光子フィルムに用いられる好適な染色材料としては、例えば、ヨウ素だけでなく、コンゴーレッド(ジフェニル‐ビス‐α‐ナフチルアミンスルホン酸ナトリウム)、メチレンブルー、スチルベン染料(カラーインデックス(CI)=620)、および1,1’−ジエチル−2,2’−シアニンクロライド(CI=374(橙)またはCI=518(青))のようなアントラキノン染料およびアゾ染料が挙げられる。これらの染料の特性およびそれらの製造方法はイー.エイチ.ランド(E.H.Land)、コロイド化学(1946)に記載されている。さらに他の二色染料およびそれらの製造方法が、カークオスマー化学技術百科事典(Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第8巻の652〜661ページ(第4版、1993)、およびそこに援用されている参考文献において論じられている。
【0118】
この二色染色材料を、被覆前のポリビニルアルコールと第2ポリマーとの分散液に添加してもよい。あるいは、ポリビニルアルコールフィルムを、例えばヨウ素含有溶液のような着色組成物を用いて着色してもよい。ポリビニルアルコールフィルムの着色は、フィルムの延伸前または延伸後に行われてもよい。場合によっては、この二色染色材料は延伸条件に耐えられないこともあるので、延伸後にポリビニルアルコールフィルムに塗布されるべきである。
【0119】
好適な着色組成物の1つの例として、ヨウ素含有溶液が挙げられる。ヨウ素で着色されたフィルムは、例えばホウ酸/ホウ砂溶液のようなホウ素含有組成物を用いて安定化されてもよい。他の着色には異なる安定剤が必要になることがある。着色組成物または安定化組成物の濃度だけでなく、着色または安定化の起こる温度、および各溶液との接触時間は、着色を損なわない範囲で大幅に変化する。
【0120】
様々な他の成分を、ポリビニルアルコールと第2ポリマーとの溶液に添加してもよい。例えば、支持体の濡れを促進するために界面活性剤を添加してもよい。例えば、コネチカット州のダンビュリーにあるユニオンカーバイドケミカルズアンドプラスチックスカンパニー社(Union Carbide Chemicals and Plastics Company Inc.)からトリトンX−100(Triton X−100)の商品名で入手できるような各種界面活性剤が使用できる。一般に、界面活性剤はこの溶液の約1%以下、好ましくは約0.5%以下である。ポリマーの極性基と干渉しないようにするために、界面活性剤は非イオン系であることが好ましい。
【0121】
他の光学添加剤として、乾燥の際のフィルム形成を促進する乾燥助剤を挙げることができる。好適な乾燥助剤の例としては、N−メチル−ピロリドンおよびブチルカルビトールが挙げられる。一般に、乾燥助剤は溶液の約10%以下、好ましくは約5%以下である。
【0122】
さらに、ポリビニルアルコールフィルムを支持体に接着するために、前記フィルムに接着剤を塗布してもよい。これは、ポリビニルアルコールフィルムを第1支持体から剥離して第2支持体に添付する場合に特に有用であることがある。例えば、樹脂および感圧接着剤(PSA)のような各種接着剤を用いることができる。好適な接着剤を選択する際に、接着剤の光学特性が通常考慮される。また、例えば、環境的な損傷からフィルムを保護するハードコート、剥離ライナー、および支持体に対する接着性を高めるための下塗のような他の被覆物を用いてもよい。
【0123】
第2ポリマーをこのポリビニルアルコールフィルムに加えることによって、ポリビニルアルコールフィルムと、反射性偏光子すなわち反射鏡フィルムのような多層光学フィルムとの同時配向と適合性のある改良型二色性偏光子が得られる。この改良型二色性偏光子を用いることの利点とは、この二色フィルムと多層光学フィルムとを一緒に配向することによって、例えば、さらに完璧に配列される二色性要素および反射性要素を有することがある光学偏光子が形成されることがあるという点である。さらに、第2ポリマーをこのポリビニルアルコールフィルムに加えることによって、フィルムの支持体に対する接着性が向上することが多い。
【0124】
光学装置を作製するための典型的な方法には、前述のように、まず多層光学フィルムを形成する工程が包含される。この多層光学フィルムは、例えば、シューコーティング、押出コーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、または均一の被膜を形成することができるあらゆる他の被覆方法のような公知の光学手段を用いて、ポリビニルアルコールに、またはポリビニルアルコールと第2ポリマーとに被覆または積層される。
【0125】
次に、この多層光学フィルムとポリビニルアルコールフィルムとを同時に延伸して、配向多層光学フィルムと配向ポリビニルアルコールフィルムとを形成する。一部の実施態様では、この多層光学フィルムは数回延伸される。これらの実施態様において、ポリビニルアルコールフィルムは、最終延伸の前に多層光学フィルムに被覆または積層されることが多い。別の実施態様では、この2つのフィルムが別々に延伸および配向されることもある。この2つのフィルムを、例えば、テンターまたは縦配向機のような公知の装置を用いて延伸してもよい。一般に、このポリビニルアルコールフィルムと多層光学フィルムとを一緒に延伸すると、ポリビニルアルコール層の配向軸が、偏光子フィルムでも反射鏡フィルムでもよい多層光学フィルムの最終配向の軸と一致することになる。二色染色材料は、これらのフィルムの延伸の前に添加されてもよいし、または、例えば、前述のように、ポリビニルアルコールフィルムを着色することによって後から混入されてもよい。
【0126】
二色性偏光子と多層ポリマーフィルムとのかなりの数の異なる組み合わせを形成することができる。例えば、中でも、可視帯二色性偏光子および反射性偏光子の組み合わせ、赤外帯反射鏡および二色性偏光子の組み合わせ、赤外帯偏光子および二色性偏光子の組み合わせを形成することができる。
【0127】
実施例 これらの実施例のためのポリマーを製造するのに用いられるモノマー、触媒、および安定剤は下記の製造業者、すなわち、アモコ(Amoco)社(デカター(Decatur)、アラバマ州)のジメチルナフタレンジカルボキシレートとテレフタル酸、ヘキストセラニーズ(Hoechst Celanese)社(ダラス、テキサス州)のジメチルテレフタレート、モルフレックス社(Morflex Inc.)(グリーンズボロ、ノースキャロライナ州)のジメチルイソフタレートとジメチルt−ブチルイソフタレート、ユニオンカーバイド(Union Carbide)社(チャールストン、ウェストバージニア州)のエチレングリコール、BASF社(シャーロット、ノースキャロライナ州)の1,6−ヘキサンジオール、ユニオンキャンプ(Union Camp)社(ドーバー、オハイオ州)のセバシン酸、エルフアトケム(Elf Atochem)社(フィラデルフィア、ペンシルバニア州)の三酢酸アンチモン、ホールケミカル(Hall Chemical)社(ウィックリフ、オハイオ州)の酢酸コバルトと酢酸マンガン、アルブライト&ウィルソン(Albright & Wilson)社(グレンアレン、バージニア州)のトリエチルホスホノアセテート、イーストマンケミカル社(Eastman Chemical Co.)(キングズポート、テネシー州)のジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、およびエアプロダクツ(Air Products)(フィリップスバーグ、ニュージャージー州)社のトリエチルアミン、から商業的に入手可能である。
【0128】
以下の各々の実施例では、836層フィルムが形成される。この836光学層構造体には、多層フィードブロックからの209層構造体の二重倍増化によって得られるような、層厚が少しずつ異なる4つの多層光学スタックが含まれている。これらの光学層は、この構造体の厚みの約50%を占めている。これらのスタックの各々は、それぞれが全厚の約2%を占めるという3つの非光学内部保護境界層のうちの1層によって分けられている。最後に、このフィルムの両面には、それぞれがその厚さの約22%を占めるという外部非光学スキン層が存在する。静電ピンによって補助されながら、このフィルムは約15℃の冷却ロールに流延される。延伸前は、このフィルムは「流延ウェブ」と呼ばれる。
【0129】
いくつかの試験および測定量が、以下の実施例に共通している。コントラストは、偏光子の「パス」状態(すなわち、透過偏光)の光の透過の、「ブロック」状態(すなわち、消光偏光)の光の透過に対する比として定義される。オリエル分光光度計が使用された。透過率は可視スペクトル全体にわたってそのまま(すなわち、加重値を全く与えないで)平均化された。コントラストは、二色性/反射性偏光子複合構造体に基づいて測定された。
【0130】
二色比は二色性偏光子の性能の目安である。それは、PVAで被覆された多層フィルムのパス透過率およびブロック透過率を、ヨウ素で着色してからホウ酸で定着することによって二色性偏光子を形成する前と後に測定することによって推量される。同一試料の着色前と着色後ではなく、同等の着色された試料と未着色の試料とを測定するので、ある程度の誤差が生ずる。正規化パス透過率とは、着色された試料のパス透過の、被覆されてはいるが着色されてはいない試料のパス透過に対する比のことである。正規化ブロック透過率とは、着色された試料のブロック透過の、被覆されてはいるが着色されてはいない試料のブロック透過に対する比のことである。二色比とは、正規化パス透過率の対数で除算した正規化ブロック透過率の対数のことである。
【0131】
二色性偏光子層と反射性偏光子層の間の接着性は、クロスハッチテープ引張接着試験を用いて特徴付けられる。試料を、汚れのない硬い表面の上に設置する。1/4’’間隔で1/8’’スロットを有するテンプレートを用いて、この試料に罫書工具で罫書きを施して網目模様を作る。この罫書きは支持体の被膜に及ぶが、支持体にまで届いてはならない。スコッチブランド#610テープ(3M社、セントポール、ミネソタ州)の1’’幅の4’’ストリップを、この網目模様に対して斜めに配置する。このテンプレートを用いて、このテープを試料から剥離する。このテープは試料の表面に対して小さな角度で剥離されるべきである。この手順を、新しいテープストリップを用いて繰り返す。得られた試料を被膜の剥離について検査する。被膜が全く剥離していない場合、試料はこの試験に合格したということになる。さもなければ、その試料は不合格ということである。
【0132】
比較例 PEN/coPEN(70/0/30)を含む偏光フィルム 比較例として、ポリエチレンナフタレートから形成される第1光学層と、70mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと30mol%のジメチルイソフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと100mol%のエチレングリコールから誘導されるグリコールサブユニットとを含むコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される第2光学層とを用いて、多層反射性偏光子フィルムを構築した。
【0133】
第1光学層を形成するために用いられたポリエチレンナフタレートは、以下の原料、すなわち136kgのジメチルナフタレンジカルボキシレート、73kgのエチレングリコール、27gの酢酸マンガン、27gの酢酸コバルト、および48gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、メタノール(エステル交換反応の副生成物)を除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。35kgのメタノールを除去した後に、49gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.48dL/gであるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0134】
第2光学層を形成するために用いられたコ(ポリエチレンナフタレート)は、以下の原料、すなわち109kgのジメチルナフタレンジカルボキシレート、37kgのジメチルイソフタレート、79kgのエチレングリコール、29gの酢酸マンガン、29gの酢酸コバルト、および58gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、メタノールを除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。41kgのメタノールを除去した後に、52gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.57dL/gであるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0135】
次に、前述のPENおよびcoPENを多層メルトマニホールドを介して同時押出し、836の第1光学層と第2光学層とが交互に積層されている多層フィルムを作製した。この多層反射性フィルムには、第2光学層に使用されたものと同じコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される内部保護層と外部保護層とがさらに含まれる。これらの保護層は、特別のメルトポートを介して導入された。このフィルムを冷却ロールに流延した。
【0136】
10重量%のエアボル107(Airvol 107)ポリビニルアルコール(エアプロダクツ、アレンタウン、ペンシルバニア州)と、0.1重量%のトリトンX−100(ユニオンカーバイド、ダンビュリー、コネチカット州)とを含有する水溶液を、シューコーターを用いてこの多層流延ウェブに被覆して、厚さが64Tm(2.50mils)であるこの溶液の未乾燥被膜を得た。この被膜を105℃で1分間乾燥させた。
【0137】
この多層流延ウェブとポリビニルアルコールフィルムとを、160℃で充填された熱気によって加熱されたテンターオーブンに投入した。約1分間ほど予熱した後に、この複合構造体を、150℃で充填された熱気によって加熱されたテンターオーブン区域内で、6:1になるまで35秒以上同時一軸配向した。次に、これらのフィルムを急冷する前に85秒間加熱して、厚さが約125Tmである光学偏光子を作製した。
【0138】
この被膜は、得られたフィルムを白くする重大な亀裂欠陥を示した。この構造体は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格しなかった。
【0139】
実施例1 coPEN(85/15/0)層/coPEN(50/0/50)層を含む偏光フィルム 85mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと15mol%のジメチルテレフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと100mol%のエチレングリコールから誘導されるグリコールサブユニットとを含むコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される第1光学層と、50mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと50mol%のジメチルイソフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと100mol%のエチレングリコールから誘導されるグリコールサブユニットとを含むコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される第2光学層とを用いて、多層反射性偏光子フィルムを構築した。
【0140】
第1光学層を形成するために用いられたコ(ポリエチレンナフタレート)は、以下の原料、すなわち123kgのジメチルナフタレンジカルボキシレート、17kgのジメチルテレフタレート、76kgのエチレングリコール、27gの酢酸マンガン、27gの酢酸コバルト、および48gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、メタノールを除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。36kgのメタノールを除去した後に、49gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.51dL/gであるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0141】
第2光学層を形成するために用いられたコ(ポリエチレンナフタレート)は、以下の原料、すなわち77kgのジメチルナフタレンジカルボキシレート、61kgのジメチルイソフタレート、82kgのエチレングリコール、27gの酢酸マンガン、27gの酢酸コバルト、および48gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、メタノールを除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。39.6kgのメタノールを除去した後に、49gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.60dL/gであるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0142】
そして、上記両coPENを前述のように同時押出して、836多層流延ウェブを形成した。
【0143】
14重量%のエアボル107ポリビニルアルコール(エアプロダクツ、アレンタウン、ペンシルバニア州)と、0.1重量%のトリトンX−100(ユニオンカーバイド、ダンビュリー、コネチカット州)とを含有する水溶液を、シューコーターを用いてこの多層流延ウェブに被覆して、厚さが64Tm(2.5mils)であるこの溶液の未乾燥被膜を得た。この被膜を105℃で1分間乾燥させた。
【0144】
この多層流延ウェブとポリビニルアルコールフィルムとを、130℃で充填された熱気によって加熱されたテンターオーブンに投入した。約1分間ほど予熱した後に、この複合構造体を、6:1になるまで35秒以上同時一軸配向した。次に、これらのフィルムを急冷する前に85秒間加熱して、厚さが約125Tmである光学偏光子を作製した。この構造体は、テンターから排出される際にわずかな孤立した非特異的欠陥を示した。これらの欠陥は、フィルムに混入した異物または気泡が原因であった可能性がある。
【0145】
ポリビニルアルコール被膜で被覆された構造体を、35℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中で20秒間着色した。この着色溶液には、0.4重量%のヨウ素と21重量%のヨウ化カリウムとが含有されていた。なされた着色を65℃のホウ酸/ホウ砂浴で25秒間定着させた。この定着溶液には4.5重量%のホウ酸が含有されていた。
【0146】
偏光子のパス状態における平均透過率は約84%であった。最終構造体のコントラストは約300であった。二色比は約30であった。この構造体は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格しなかった。
【0147】
実施例2 80mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと20mol%のジメチルテレフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと100mol%のエチレングリコールから誘導されるグリコールサブユニットとを含むコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される第1光学層と、55mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと45mol%のジメチルテレフタレートとから誘導されるカルボキシレートサブユニットと、96.8mol%のエチレングリコールと、3.0mol%のヘキサンジオールと、0.2mol%のトリメチロールプロパンとから誘導されるグリコールサブユニットとを含むコ(ポリエチレンナフタレート)から形成される第2光学層とを用いて、多層反射性偏光子フィルムを構築した。
【0148】
第1光学層を形成するために用いられたコ(ポリエチレンナフタレート)は、2種類のポリマー、すなわちPET(4.8重量%)とcoPEN(95.2重量%)のブレンドとして調製された。このブレンドに用いられたPETは、以下の原料、すなわち138kgのジメチルテレフタレート、93kgのエチレングリコール、27gの酢酸亜鉛、27gの酢酸コバルト、および48gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、エステル交換反応の副生成物であるメタノールを除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。45kgのメタノールを除去した後に、52gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.60であるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0149】
第1光学層を形成するためのブレンドに用いられたcoPENには、85mol%のジメチルナフタレンジカルボキシレートと15mol%のジメチルテレフタレートとから誘導されたカルボキシレートサブユニットと、100mol%のエチレングリコールから誘導されたグリコールサブユニットとが含有されていた。このcoPENは、実施例1に記載されるような手順で合成された。
【0150】
第2光学層を形成するために用いられたコ(ポリエチレンナフタレート)は、以下の原料、すなわち88.5kgのジメチルナフタレンジカルボキシレート、57.5kgのジメチルテレフタレート、81kgのエチレングリコール、4.7kgのヘキサンジオール、15gの酢酸マンガン、22gの酢酸コバルト、15gの酢酸亜鉛、239gのトリメチロールプロパン、および51gの三酢酸アンチモンを投入したバッチ反応器で合成した。2気圧下で、メタノールを除去しながら、この混合物を254℃まで加熱した。39.6kgのメタノールを除去した後に、47gのトリエチルホスホノアセテートをこの反応器に投入し、290℃まで加熱しながら1torrまで圧力を徐々に下げた。この縮合反応の副生成物であるエチレングリコールを、60/40重量%のフェノール/o−ジクロロベンゼン中で測定したときの固有粘度が0.56dL/gであるポリマーが得られるまで、連続して除去した。
【0151】
次に、前述の両方のcoPENを多層メルトマニホールドを介して同時押出して、836の第1光学層と第2光学層とが交互に積層されている多層流延ウェブを形成した。また、この特定の多層反射性フィルムには、第2光学層に用いられたものと同じコ(ポリエチレンナフタレート)から作られる内部保護層と外部保護層とが含まれる。
【0152】
10重量%のエアボル107ポリビニルアルコール(エアプロダクツ、アレンタウン、ペンシルバニア州)と、0.1重量%のトリトンX−100(ユニオンカーバイド、ダンビュリー、コネチカット州)とを含有する水溶液を、シューコーターを用いてこの多層フィルムに被覆して、厚さが64Tm(2.50mils)であるこの溶液の未乾燥被膜を得た。この被膜を105℃で1分間乾燥させた。
【0153】
この多層フィルムとポリビニルアルコールフィルムとを、130℃で充填された熱気によって加熱されたテンターオーブンに投入した。約1分間ほど予熱した後に、この複合構造体を、6:1になるまで35秒以上同時一軸配向した。次に、これらのフィルムを急冷する前に85秒間加熱して、厚さが約125Tmである光学偏光子を作製した。この二色性偏光子は透明であったが、わずかに孤立した非特異的欠陥が見られた。
【0154】
このフィルムを、35℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中で20秒間着色した。この着色溶液には、0.4重量%のヨウ素と21重量%のヨウ化カリウムとが含有されていた。なされた着色を65℃のホウ酸/ホウ砂浴で25秒間定着させた。この定着溶液には4.5重量%のホウ砂と14.5重量%のホウ酸が含有されていた。
【0155】
パス状態における平均透過率は約84%であった。最終構造体のコントラストは約100であった。二色比は約28であった。この構造体は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格しなかった。
【0156】
実施例3 多層光学ウェブを実施例1と同様に流延した。9重量%のエアボル107ポリビニルアルコール(エアプロダクツ、アレンタウン、ペンシルバニア州)と、1重量%のWB54(ミネソタ州、セントポールにある3M社のスルホン化ポリエステル)、3重量%のN−メチルピロリドン(ウィスコンシン州、ミルウォーキーのアルドリック(Aldrich)社製)および0.1重量%のトリトンX−100(ユニオンカーバイド、ダンビュリー、コネチカット州)とを含有する水溶液を、シューコーターを用いて、それぞれが209の光学層からなる4つのスタックを有する未配向多層ポリエステル流延ウェブに被覆して、厚さが64Tm(2.50)milsであるこのポリビニルアルコール溶液の未乾燥被膜を得た。この被膜を105℃で1分間乾燥させた。
【0157】
この多層反射性偏光子フィルムとポリビニルアルコールフィルムとを、130℃で充填された熱気によって加熱されたテンターオーブンに投入した。約1分間ほど予熱した後に、この複合構造体を、6:1になるまで35秒以上同時一軸配向した。次に、これらのフィルムを急冷する前に85秒間加熱して、厚さが約125Tmである光学偏光子を作製した。
【0158】
この構造体にはわずかに曇りが見られ、わずかに孤立した非特異的欠陥が見られた。ポリビニルアルコールフィルムで被覆された構造体を、35℃のヨウ素/ヨウ化カリウム水溶液中で20秒間着色した。この着色溶液には、0.4重量%のヨウ素と21重量%のヨウ化カリウムとが含有されていた。なされた着色を65℃のホウ酸/ホウ砂浴で25秒間定着させた。この定着溶液には4.5重量%のホウ砂と14.5重量%のホウ酸とが含有されていた。
【0159】
最終構造体のコントラストは約170であった。二色比は約22であった。この構造体は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格した。
【0160】
本実施例の一部を変更したものには、構造体を6:1ではなく7:1に延伸する工程が含まれる。この場合にも、この構造体にはわずかに曇りが見られ、わずかに孤立した非特異的欠陥も見られた。この構造体は着色されており、その着色は定着されていた。パス状態の透過率は約72%であり、コントラストは約1,000であった。二色比は約22であった。この試料は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格した。
【0161】
実施例4 比較例に従って多層光学ウェブを流延した。この流延ウェブを実施例3に従って被覆した。そして、この複合構造体を、比較例に従って延伸し、着色し、定着させた。
【0162】
被覆後、この構造体にはわずかな曇りが見られ、わずかに孤立した非特異的欠陥も見られた。パス状態の透過率は約78%であった。コントラストは約200であり、二色比は約22であった。この試料は、クロスハッチテープ引張接着試験に合格した。
【0163】
本発明は、前述の特定の実施例に限定されると考えられるべきではなく、むしろ添付されている請求の範囲に十分に詳述されている本発明のすべての態様を包括するものであると理解されるべきである。様々な修正、同等の製法、および本発明を適用できる各種構造体は、本願明細書の評価の際に、本発明が宛てられた当業者らにとって容易に明らかとなるであろう。添付の請求の範囲は、そのような修正および手段を包括するものである。
【図面の簡単な説明】
本発明は、添付図面に関連して、本発明の様々な実施態様についての以下の詳細な説明を考慮することにより、さらに徹底して理解を深めることができる。
【図1】 本発明による光学装置の1つの実施態様の側面図である。
【図2】 図1の光学装置に用いられる多層光学フィルムの1つの実施態様の側面図である。
【図3】 図1の光学装置に用いられる多層光学フィルムのもう1つの実施態様の側面図である。
【図4A】 テレフタレート(ジメチルテレフタレート(DMT)を使用)サブユニットとイソフタレート(ジメチルイソフタレート(DMI)を使用)サブユニットとを、ジメチルナフタレンジカルボキシレートから誘導されるポリエチレンナフタレート(PEN)に添加した場合のガラス転移温度の低下を示すグラフである。
【図4B】 テレフタレート(ジメチルテレフタレート(DMT)を使用)サブユニットとイソフタレート(ジメチルイソフタレート(DMI)を使用)サブユニットとを、ジメチルナフタレンジカルボキシレートから誘導されるポリエチレンナフタレート(PEN)に添加した場合の凍結温度の低下を示すグラフである。
【図5】 テレフタレートサブユニットとイソフタレートサブユニットとを含有し、かつ比較的低い温度で配向されたcoPENの632.8nmにおける平均面内複屈折のグラフである。
【図6】 テレフタレートサブユニットとイソフタレートサブユニットとを含有するcoPENの熱安定度のグラフである。
【図7】 コモノマーサブユニットをcoPENへの添加した場合の632.8nmにおける面内複屈折の低下を示すグラフである。
【図8】 632.8nmにおける面内複屈折の分子量に対する依存度を示すグラフである。
本発明は様々な修正や他の形態に適しているが、その詳細は図面に例として示されており、以下に詳しく説明される。しかしながら、その意図は、本発明を以下に説明される特定の実施態様に対して限定することではないことは理解されるべきである。これに反して、その意図は、添付の請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨および範囲に納まるすべての修正、同等物および代案を包括するということである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 二色性偏光子と、該二色性偏光子と同じ光路に位置する反射性偏光子とを含む光学偏光子であって、該反射性偏光子が、 70〜100mol%が第1カルボキシレートサブユニットであり、0〜30mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニットであるカルボキシレートサブユニットと、70〜100mol%が第1グリコールサブユニットであり、0〜30mol%が第1コモノマーグリコールサブユニットであるグリコールサブユニットとを有し、かつ第1コポリエステルの該カルボキシレートサブユニットと該グリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである半晶質で複屈折性である該第1コポリエステルを含む複数の第1光学層と、 該反射性偏光子が形成された後の632.8nmにおける面内複屈折が約0.04以下である第2ポリマーを含む複数の第2光学層と、を含むことを特徴とする光学偏光子。
【請求項2】 前記第1コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の少なくとも2.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである、請求項1に記載の光学偏光子。
【請求項3】 前記第2ポリマーが第2コポリエステルを含む、請求項1に記載の光学偏光子。
【請求項4】 前記第2コポリエステルが、20〜100mol%が第2カルボキシレートサブユニットであり、0〜80mol%が第2コモノマーカルボキシレートサブユニットであるカルボキシレートサブユニットと、40〜100mol%が第2グリコールサブユニットであり、0〜60mol%が第2コモノマーグリコールサブユニットであるグリコールサブユニットとを含み、該第2コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の10mol%以上が第2コモノマーカルボキシレートサブユニット、第2コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである、請求項3に記載の光学偏光子。
【請求項5】 前記第2コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の0.01〜2.5mol%が、3種類以上のカルボキシレート官能基またはエステル官能基を有する化合物から誘導される第2コモノマーカルボキシレートサブユニット、3種類以上のヒドロキシ官能基を有する化合物から誘導される第2コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである、請求項4に記載の光学偏光子。
【請求項6】 前記グリコールサブユニットが、70〜100mol%のC2〜C4ジオールと、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、またはこれらを組み合わせたものの1種類以上から誘導される0〜30mol%の第2コモノマーグリコールサブユニットとから誘導され、そして前記カルボキシレートサブユニットが、20〜100mol%のナフタレートサブユニットと、0〜80mol%のテレフタレートサブユニット、イソフタレートサブユニットまたはこれらの混合物と、フタル酸、t−ブチルイソフタル酸、これらの酸の低級アルキルエステル、またはこれらを組み合わせたものから誘導される0〜30mol%の第2コモノマーカルボキシレートサブユニットとからなり、 前記第2コポリエステルのカルボキシレートサブユニットとグリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第2コモノマーカルボキシレートサブユニット、第2コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである、請求項4に記載の光学偏光子。
【請求項7】 前記第2コポリエステルが、85〜99.99mol%のC2〜C4ジオールと0.01〜5mol%の分岐モノマー分子とから誘導されるグリコールサブユニットと、5〜95mol%のシクロヘキサンジカルボン酸またはその低級アルキルエステルと5〜95mol%のt−ブチルイソフタル酸またはその低級アルキルエステルとから誘導されるカルボキシレートサブユニットとを含む、請求項4に記載の光学偏光子。
【請求項8】 前記第1カルボキシレートサブユニットと前記第2カルボキシレートサブユニットは同じものである、請求項4に記載の光学偏光子。
【請求項9】 前記多層反射性偏光子が形成された後に、前記第1コポリエステルが632.8nmにおいて0.1以上の面内複屈折を有する、請求項1に記載の光学偏光子。
【請求項10】 前記第1カルボキシレートサブユニットが、ナフタレートサブユニットまたはテレフタレートサブユニットである、請求項1に記載の光学偏光子。
【請求項11】 1層以上の非光学層をさらに含む、請求項1に記載の光学偏光子。
【請求項12】 光学偏光子の製造方法であって、 70〜100mol%が第1カルボキシレートサブユニットであり、0〜30mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニットであるカルボキシレートサブユニットと、70〜100mol%が第1グリコールサブユニットであり、0〜30mol%が第1コモノマーグリコールサブユニットであるグリコールサブユニットとを含有し、かつ第1コポリエステルの該カルボキシレートサブユニットと該グリコールサブユニットの合計の少なくとも0.5mol%が第1コモノマーカルボキシレートサブユニット、第1コモノマーグリコールサブユニット、またはそれらを組み合わせたものである半晶質で複屈折性である該第1コポリエステルを含む複数の第1光学層と、反射性偏光子フィルムが形成された後の632.8nmにおける面内複屈折が約0.04以下である第2ポリマーを含む複数の第2光学層とを含む反射性偏光子を形成する工程と、 ポリビニルアルコールと二色染色材料とを含む二色性偏光子を該反射性偏光子の上に形成する工程と、 該二色性偏光子を実質的に亀裂させずに、約160℃以下の温度で該二色性偏光子と該反射性偏光子とを延伸して配向させる工程と、を含む光学偏光子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2002−509282(P2002−509282A)
【公表日】平成14年3月26日(2002.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−540467(P2000−540467)
【出願日】平成11年1月8日(1999.1.8)
【国際出願番号】PCT/US99/00458
【国際公開番号】WO99/36813
【国際公開日】平成11年7月22日(1999.7.22)
【出願人】
【氏名又は名称】ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニー
【Fターム(参考)】