説明

二色性偏光素子の製造方法

【課題】凹凸面を有する基材に対しても二色性色素含有溶液の均一な塗布を可能とし、優れた偏光特性を有する二色性偏光素子を簡易且つ高精度に製造できる方法を提供する。
【解決手段】基材表面上にリオトロピック液晶性を有する二色性色素含有溶液を塗布することにより製造される二色性偏光素子の製造方法であって、フェルト部材を用いて前記二色性色素含有溶液を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる二色性偏光素子の製造方法に関し、特に、二色性色素配向膜を有する二色性偏光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等に使用されている偏光素子としては、ポリビニルアルコール樹脂フィルム等を一軸延伸し、その表面にヨウ素系化合物等の二色性材料を吸着配向させた二色性偏光素子が広く用いられているが、耐熱性等の観点から基材上に二色性色素を含有する二色性色素配向膜を形成した二色性偏光素子が検討されている。
【0003】
上記の二色性色素配向膜を有する二色性偏光素子の製造方法としては、二色性色素は流動配向と言われる液晶化合物自身の流れによって配向することから、基材上に二色性色素を含有する溶液をカーテンコーティング、押出コーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング、スライドコーティング等の塗布手段を用いて塗布することにより二色性色素を配向させた偏光特性を示す二色性色素配向膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
また、二色性色素の配向を制御するため、ラビング処理されたポリイミド配向膜を有する基材上に二色性色素を含有する溶液をスピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法等の塗布方法により塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。このラビング処理は、基材表面上に形成されたポリイミド配向膜をナイロン等の布を貼り付けたローラで擦ることにより基材表面に異方性を発現させて、これにより二色性色素を所望の方向に初期配向させるためのものである。
【0005】
さらに、基材上に光活性基を有する液晶高分子薄膜を形成し、該薄膜にマイクロパターン状のマスクを介してパターン状に直線偏光を照射することにより所望の異方性を薄膜表面に発現させた後、薄膜上に二色性色素を含有する溶液をスピンコート法により塗布して二色性色素を配向させる光配向法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】米国特許2400877号公報
【特許文献2】特開2002−90526号公報
【特許文献3】特開2006−323377号公報
【特許文献4】特開2001−159713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような二色性偏光素子は基材として表面が平坦な高分子フィルムやガラスが用いられているが、液晶表示装置等の量産化、薄型化を図っていく場合には、他の部材上に直接偏光素子を形成することが好ましい。しかしながら、例えば、マイクロレンズやレンチキュラレンズ等の凹凸面を有する光学部材を基材とし、該基材上に二色性色素配向膜を直接形成する場合、上記のような塗布手段では二色性色素含有溶液に含まれる二色性色素にずり応力が掛かり難く、また凹部に溶液が溜まり、形成される二色性色素配向膜に基材の表面形状が反映されないという問題がある。
【0007】
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたものであり、凹凸面を有する基材に対しても二色性色素含有溶液の均一な塗布を可能とし、もって優れた偏光特性を有する二色性偏光素子を簡易且つ高精度に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材表面上にリオトロピック液晶性を有する二色性色素含有溶液を塗布することにより製造される二色性偏光素子の製造方法であって、
フェルト部材を用いて前記二色性色素含有溶液を塗布することを特徴とする製造方法である。
上記製造方法によれば、フェルト部材は内部に気孔を有するため、二色性色素含有溶液を保持することができる。また、フェルト部材は基材表面と接触した際に、内部の気孔によってフェルト部材が容易に変形する。このため、基材が凹凸面を有していても、フェルト部材が凹凸に追随することができる。これにより、凹部に溶液が留まることなく、また凸部だけでなく凹部に塗布された二色性色素にも十分なずり応力を掛けることができ、均一な塗布を行うことができる。
【0009】
前記基材の表面は、凹凸面を有していてもよい。上記製造方法によれば、凹凸面を有する基材表面に二色性色素含有溶液を均一に塗布することができる。
【0010】
前記凹凸面は、0.5μm以上、500μm以下の凹凸高さを有していてもよい。上記製造方法によれば、微細な凹凸を有する基材上にも、二色性色素含有溶液を均一に塗布することができる。
【0011】
前記基材は、光学機能層を有し、前記凹凸面は、前記光学機能層に形成されており、前記光学機能層の表面に前記二色性色素含有溶液が塗布されてもよい。上記製造方法によれば、例えば、マイクロレンズアレイシート、レンチキュラレンズシート等の凹凸面を有する光学機能層を備えた光学部材を基材として用いた場合でも、均一な塗布を行うことができ、基材の表面形状が反映された二色性色素配向膜を形成することができる。
【0012】
前記基材の表面は、親水化処理されていてもよい。上記製造方法によれば、前記基材表面の二色性色素含有溶液に対する濡れ性が改善されるため、さらに均一な塗布を行うことができる。
【0013】
前記フェルト部材は、45%以上、60%以下の気孔率を有することが好ましい。上記気孔率を有するフェルト部材であれば、基材との接触によりフェルト部材が変形しやすいため、微細な凹凸にもフェルト部材が十分に追随することができる。
【0014】
前記フェルト部材は、ポリエステル繊維を有することが好ましい。ポリエステル繊維を有するフェルト部材は弾性に優れるため、微細な凹凸にもフェルト部材が十分に追随することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、凹凸面を有する基材に対しても二色性色素含有溶液を均一に塗布することができ、優れた偏光特性を有する二色性偏光素子を簡易且つ高精度に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本実施の形態に係る二色性偏光素子の製造方法の塗布工程の一例を示す部分概略図である。図1に示すように、本実施の形態の塗布工程においては、フェルト部材2を凹凸面を有する基材1の一面に接触させ、該フェルト部材2から二色性色素含有溶液3が基材1上に供給される。凹凸面を有する基材1にダイコータやグラビアコータ等の塗布手段を用いて溶液を塗布する場合、ダイスリット幅やグラビアロール径が凹凸ピッチよりも非常に大きいため凹部に二色性色素含有溶液が溜まりやすく、またダイスリットやグラビアロールが凹部に入りこめないため凹部で二色性色素含有溶液に含まれる二色性色素にずり応力が掛かり難い。このため、凹部に溶液が溜まり、形成される二色性色素配向膜に基材の表面形状が反映され難いだけでなく、得られる二色性色素配向膜は低配向性となりやすい。これに対して、フェルト部材は内部に気孔を有するため、基材1との接触によってフェルト部材2が容易に変形し、凹凸に追随することができる。この結果、凹部に塗布された二色性色素にも十分なずり応力を付与しながら二色性色素含有溶液を塗布することができる。
【0017】
基材1としては、例えば、高分子フィルムまたはガラスを用いることができる。高分子フィルムとしては、具体的には、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等からなる高分子フィルムを挙げることができる。ガラスとしては、具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英等のガラスを挙げることができる。基材1は、単板、長尺いずれの形状であってもよいが、長尺の基材を用いることにより連続した塗布が可能であるため好ましい。
【0018】
凹凸面は、上記のような高分子フィルムまたはガラスの表面に直接形成されていてもよいし、これらの上に形成された紫外線硬化樹脂等からなる光学機能層の表面に形成されていてもよい。凹凸面が形成された光学機能層を有する基材としては、例えば、液晶表示装置に用いられる光学シートを挙げることができる。このような光学機能層を有する基材上に二色性色素配向膜を直接設けることにより、二色性色素配向膜を形成するための基材を別途用いることが不要となり、量産化、薄型化が図れるだけでなく、高分子フィルムやガラス等による透過率の低下も抑えられる。図2は主材5上に光学機能層4を有する基材1を例示する概略断面図であり、図2(a)は柱状レンズ形状の凹凸を有する光学機能層4が設けられたレンチキュラレンズシートを、図2(b)はプリズム形状の凹凸を有する光学機能層4が設けられたプリズムシートを、図2(c)はマイクロレンズ形状の凹凸を有する光学機能層4が設けられたマイクロレンズアレイシートを、図2(d)はランダムな凹凸を有する光学機能層4が設けられた拡散シートを示す。主材5としては、上記と同様の高分子フィルムまたはガラスを用いることができる。上記の凹凸高さは、使用する基材1の種類にもよるが、0.5μm以上、500μm以下が好ましい。このような微細な凹凸にもフェルト部材が十分に追随できるため、凹凸形状を反映した二色性色素配向膜を均一に形成することができる。なお、本実施の形態の二色性色素配向膜をLCDやOLED等の各種の液晶表示装置の偏光フィルタとして用いる場合には、これらの表示素子を構成する電極基板等を基材として用いてもよい。
【0019】
基材1の表面は、二色性色素含有溶液3に対する濡れ性を向上するために親水化処理が施されてもよい。このような親水化処理としては、具体的には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、グロー放電処理等が挙げられる。これらの中でもコロナ放電処理が特に好ましい。また、基材1の表面にはポリイミド等の配向膜がさらに形成されていてもよい。
【0020】
フェルト部材2としては、具体的には、例えば、ウール、コットン等の天然繊維からなるフェルト部材、ポリエステル、アクリル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維からなるフェルト部材、あるいはこれらの繊維がポリエステル、メラミン等の樹脂によって接着されたフェルト部材等が挙げられる。フェルト部材2の材質は、二色性色素含有溶液の塗布膜厚、二色性色素配向膜の特性、基材の材質・形状等により適宜選択することができる。上記の中でもポリエステル繊維を有するフェルト部材は弾性に優れるため微細な凹凸面を有する基材を用いる場合に特に好ましく用いられる。また、フェルト部材2の気孔率は、45%以上、60%以下が好ましく、50%以上、60%以下がより好ましい。上記気孔率を有するフェルト部材は基材との接触により変形しやすいため、微細な凹凸にもフェルト部材が追随することができる。フェルト部材2の繊維の太さは、特に限定されるものではないが、0.1デニール以上、6デニール以下が好ましい。
【0021】
二色性色素としては、一定の溶剤組成、色素濃度、及び温度条件下でリオトロピック液晶性を示す化合物が挙げられる。このような二色性色素はクロモニック液晶相といわれる会合した集合体を形成する。このため、該集合体が基材表面上で一定方向に整列することにより偏光性を有する二色性色素配向膜が得られる。また、複数の分子が会合しているため、得られる二色性色素配向膜は耐光堅牢性にも優れている。
【0022】
二色性色素は親水性基を有することが好ましい。親水性基を有する二色性色素を用いることにより二色性色素の配向性をさらに向上することができる。このような親水性基としては、導入が容易であり、高い親水性を示すスルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。二色性色素は、1種の親水性基を有していてもよいし、2種以上の親水性基を有していてもよい。二色性色素の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量で500以上、5,000以下が好ましい。上記範囲内の分子量を有する二色性色素を用いることにより、配向性をさらに向上することができる。
【0023】
好適な二色性色素としては、例えば、偏光能が高い芳香族系環構造を有する化合物が挙げられる。このような芳香族系環としては、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フェナントレン等の芳香環;チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン等の複素環あるいはこれらの4級塩;芳香環と複素環との縮合環が好ましい。また、芳香族系環に上記の親水性基が導入されていてもよい。
【0024】
他の好適な二色性色素としては、例えば、アゾ系色素;シアニン系色素;インダンスロン等の縮合系を含むアントラキノン系色素;スチルベン系色素;ピラゾロン系色素;ペリレン系色素;ナフタルイミド系色素;トリフェニルメタン系色素;キノリン系色素;オキサジン系色素;チアジン系色素;キノフタロン系色素;インジゴ系色素;チオインジゴ系色素等が挙げられる。これらの中でも、水溶性の色素が好ましい。上記の二色性色素の具体例としては、C.I.Direct Blue 1、C.I.Direct Blue 15、C.I.Direct Blue 67、 C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 83、C.I.Direct Blue 90、C.I.Direct Blue 98、C.I.Direct Blue 151、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Green 51、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Green 85、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 41、C.I.Direct Orange 49、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 26、C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Yellow 50、C.I.Acid Red 37、C.I.No.27865、C.I.No.27915、C.I.No.27920、C.I.No.29058、C.I.No.29060、disufoindanthrone、disulfo−N,N’−dixylylperylenetetracarbodiimideや、特開2005−255846号公報に記載のアゾ色素等が挙げられる。これらは単独でも複数混合して用いてもよい。
【0025】
二色性色素含有溶液は、例えば、二色性色素を60〜95℃の溶剤と混合し、撹拌して、二色性色素を溶解した後、室温に戻すことにより調製することができる。溶剤としては、水及び水混和性のある有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルフォキシド(DMSO);N−メチルピロリドン(NMP);ジメチルアセトアミド(DMAc);ジメチルイミダゾリン(DMI)等の非プロトン性極性溶剤が好ましい。特に、水を主体(50容量%以上)とし、上記の有機溶剤を含有する混合溶剤が好ましい。二色性色素含有溶液中の二色性色素の濃度としては、色素の溶解性やリオトロピック液晶状態を形成する濃度にも依存するが、溶液全体の質量割合で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内の濃度であれば、二色性色素の凝集物や未溶解物等の影響が少なくなるとともに、二色性色素配向膜の異方性(配向性)を損なう恐れがなく、また十分な膜厚の二色性色素配向膜を形成することができる。
【0026】
二色性色素含有溶液3は、基材1への濡れ性、塗布性を向上させるため、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれの界面活性剤も制限無く使用することができる。二色性色素含有溶液中の界面活性剤の濃度は、溶液全体の質量割合で、0.05質量%以上、5質量%以下が好ましい。上記の範囲内の濃度であれば、界面活性剤のミセル形成等が二色性色素配向膜の異方性に影響を及ぼす恐れがなく、また二色性色素含有溶液3の基材1に対する濡れ性を向上することができる。
【0027】
フェルト部材2を用いて基材1上に二色性色素含有溶液3を塗布するにあたって、フェルト部材2に二色性色素含有溶液3を保持させるためには、調製された二色性色素含有溶液3にフェルト部材2を浸漬することによって行ってもよく、供給タンク等から二色性色素含有溶液3をフェルト部材2に供給することにより行ってもよい。長尺の基材1を用いる場合には、フェルト部材2に二色性色素含有溶液3を継続的に供給しながら塗布することが好ましい。フェルト部材2に保持させる二色性色素含有溶液3の量は、0.5g/cm以上、1.0g/cm以下が好ましい。
【0028】
上記のフェルト部材2を用いて基材1の表面に二色性色素含有溶液3を塗布した後、乾燥することにより偏光性を有する二色性色素配向膜が得られる。基材1に接触させるフェルト部材2の塗布方向の接触長さは、特に限定されるものではないが、1mm以上、50mm以下が好ましい。また、乾燥温度は0℃以上、120℃以下が好ましい。形成する二色性色素配向膜の厚さは、用途にもよって異なるが、通常50nm以上、1000nm以下が好ましい。
【0029】
本実施の形態の二色性偏光素子は、二色性色素配向膜上に保護膜をさらに形成してもよい。このような保護膜としては、具体的には、例えば、トリアセテート、アクリル、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ポリウレタン等からなるフィルム等の透明な高分子膜が挙げられる。
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、以下で「部」とあるのは、「質量部」を意味する。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
(基材の作製)
マイクロレンズアレイ形成用の凹凸パターンを有するロール版上にダイコータから紫外線硬化樹脂を供給し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:100μm)を走行させながら該ロール版の樹脂塗工面に押し当て、紫外線硬化樹脂をフィルム上に転写し、転写された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化することにより、マイクロレンズアレイシートを作製した。作製したマイクロレンズアレイシートの形状寸法をSEM写真により測定したところ、レンズ平面の半径は15μm、レンズ高さは15μm、レンズ面の曲率半径は15μmであった。また、レンズエッジから隣接するレンズエッジまでの最短距離は7.8μm、シートの平坦部比率は43%であった。
上記のようにして作製したマイクロレンズアレイシートの表面を、室温、大気雰囲気下でコロナ放電処理した。コロナ放電処理には、コロナ放電処理装置(春日電機(株)製,処理ロール表面材質:硬質シリコーンゴム)を用いた。
【0032】
(二色性偏光素子の作製)
まず、二色性色素(C.I.Direct Blue67)15部を80℃の水(抵抗率:16MΩ・cm以上)85部に添加し、撹拌混合して、二色性色素を溶解させた。次に、溶液を室温まで冷却した後、エタノール50部を溶液に添加し、沈殿を生じさせ、沈殿を回収することにより二色性色素を精製した。
上記のようにして精製した二色性色素15部を、80℃の水85部に添加し、撹拌混合することにより二色性色素を溶解させた後、室温まで自然冷却して二色性色素含有溶液を調製した。このようにして調製した溶液は、粘度が44mPa・s、pHが7.3であった。
【0033】
調製した二色性色素含有溶液にフェルト部材(ポリエステル繊維製,繊維太さ:3デニール,気孔率:50〜60%)を浸漬することにより、フェルト部材に0.85g/cmの二色性色素含有溶液を含浸させた。そして、上記で作製したマイクロレンズアレイシートを搬送速度5m/minで走行させながら、フェルト部材を塗布方向に接触長さ5mmでシート表面に接触させることにより二色性色素含有溶液を塗布した後、自然乾燥した。乾燥後、シートを所定サイズに裁断して、二色性偏光素子を作製した。
【0034】
[実施例2]
(基材の作製)
ロール版として、レンチキュラレンズ形成用の凹凸パターンを有するロール版を用いた以外は、実施例1の基材の作製と同様にしてレンチキュラレンズシートを作製した。作製したレンチキュラレンズシートの各シリンドリカルレンズの横断形状は長軸の端点をレンズ頂点とする楕円弧状であることが確認された。また、レンチキュラレンズシートの形状寸法をSEM写真により測定したところ、レンズの長軸径は100μm、レンズの短軸径は58.8μm、レンズ高さは23.7μm、接触角は70度、配列ピッチは50μmであった。
上記のようにして作製したレンチキュラレンズシートの表面を、実施例1と同様にして室温、大気雰囲気下でコロナ放電処理した。
【0035】
(二色性偏光素子の作製)
上記のようにして作製したレンチキュラレンズシートを用いた以外は、実施例1と同様にして二色性偏光素子を作製した。
【0036】
[比較例1]
フェルト部材の代わりに、コータとしてマイクログラビアコータを用いた以外は、実施例1と同様にして、二色性偏光素子を作製した。
【0037】
[比較例2]
フェルト部材の代わりに、コータとしてマイクログラビアコータを用いた以外は、実施例2と同様にして、二色性偏光素子を作製した。
【0038】
上記のようにして作製した実施例及び比較例の二色性偏光素子の表面形状を電子顕微鏡により観察した。その結果、マイクログラビアコータを用いて二色性色素含有溶液を塗布することにより作製された比較例の二色性偏光素子は、凹部に二色性色素が埋まり基材の表面形状が反映されていないことが確認された。これに対し、フェルト部材を用いて二色性色素含有溶液を塗布することにより作製された実施例の二色性偏光素子は、各基材の表面形状を反映した、厚みが300nmの均一な二色性色素配向膜が形成されていることが確認された。また、実施例で作製した二色性偏光素子の偏光特性を測定したところ、塗布方向に透過軸を有し、優れた偏光性能を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る二色性偏光素子の製造方法の塗布工程の一例を示す部分概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学機能層を有する基材を例示する概略断面図であり、図2(a)は柱状レンズ形状の凹凸を有する光学機能層が設けられたレンチキュラレンズシートを、図2(b)はプリズム形状の凹凸を有する光学機能層が設けられたプリズムシートを、図2(c)はマイクロレンズ形状の凹凸を有する光学機能層が設けられたマイクロレンズアレイシートを、図2(d)はランダムな凹凸を有する光学機能層が設けられた拡散シートを示す。
【符号の説明】
【0040】
1 基材
2 フェルト部材
3 二色性色素含有溶液
4 光学機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面上にリオトロピック液晶性を有する二色性色素含有溶液を塗布することにより製造される二色性偏光素子の製造方法であって、
フェルト部材を用いて前記二色性色素含有溶液を塗布することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記基材の表面は、凹凸面を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸面は、0.5μm以上、500μm以下の凹凸高さを有することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、光学機能層を有し、前記凹凸面は、前記光学機能層に形成されており、前記光学機能層の表面に前記二色性色素含有溶液を塗布することを特徴とする請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記基材の表面は、親水化処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記フェルト部材は、45%以上、60%以下の気孔率を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記フェルト部材は、ポリエステル繊維を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−3250(P2009−3250A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165052(P2007−165052)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】