説明

二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルム

【課題】 安価で耐環境性(耐加水分解、耐候性等)に優れ、かつ、反射効率、軽量性が要求される分野に最適な二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、厚みDが175[μm]以上であり、ポリエチレンテレフタレートフィルム中の、白色顔料含有濃度Wが2.0〜10.0[重量%]、固有粘度IVが0.65[dl/g]以上、末端カルボキシル基量AVが26[当量/トン]以下であり、かつ、リン元素含有量Pが70[重量ppm]以下あることを特徴とする、二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で耐環境性(耐加水分解、耐候性等)に優れ、かつ、反射効率、軽量性が要求される分野に最適な、二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のエネルギー源として太陽電池が注目を浴びている。該電池の構成部品の一部に用いられる太陽電池モジュール用裏面保護フィルムも自然環境に対する耐久性(耐加水分解、耐候性)が強く要求される。さらに電池の太陽光の電換効率の向上も要求され、裏面保護フィルムの反射光まで電換される。また軽量性、強度および電池の加工性も要望されつつある。
【0003】
太陽電池モジュール用裏面保護フィルムとしては、ポリエチレン系樹脂やポリエステル系樹脂のフィルムを用いたり、フッ素系フィルムを用いたりすることが知られている(特許文献1、2参照)。
【0004】
特に、安価が求められていること、燃焼した際に有毒ガスが出ないことから、ポリエチレンテレフタレートフィルムを利用した裏面保護シートが広く開発されている。しかし、フッ素系フィルムと比較して、ポリエチレンテレフタレートフィルムは加水分解しやすく、太陽光中のUV照射により、フィルムが黄変するという課題がある。
【0005】
ポリエチレンテレフタレートフィルムのUV光による黄変は、フィルムに白色顔料を添加することで軽減できる。また、白色顔料が太陽光を反射することから、セル側への反射効率の向上も同時に行える。しかし、白色顔料を含んだポリエチレンテレフタレートによるフィルムの製膜では、押出過程にて、顔料により高分子にシェアーがかかり、ポリエチレンテレフタレートの分子量が低下することから、耐加水分解性が低下する。
【0006】
そこで、高濃度の白色顔料を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを封止剤側に、耐加水分解性を有する透明のポリエチレンテレフタレートフィルム外側に配置させることで、耐UV性と耐加水分解性を併せ持つ太陽電池モジュール用裏面保護シートとなることが知られている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、この高濃度の白色顔料を有するポリエチレンテレフタレートフィルムには耐久性がないため、高濃度の白色顔料を有するポリエチレンテレフタレートフィルムと耐加水分解性を有する透明のポリエチレンテレフタレートフィルムの間に、ガスバリアフィルムを設けることが必要であり、その場合、高濃度の白色顔料を有するポリエチレンテレフタレートフィルムとガスバリアフィルムと耐加水分解性を有する透明のポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネートする工程を含むことになるため、歩留まりの低下が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−261085号公報
【特許文献2】特開平11−186575号公報
【特許文献3】特開2002−100788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、安価で、耐加水分解性や耐UV性等の耐環境性を改良し、且つ、太陽光の電換効率に有利な高反射率を付与する太陽電池モジュール用裏面保護フィルムに好適な二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることで、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、厚みDが175[μm]以上であり、ポリエチレンテレフタレートフィルム中の、白色顔料含有濃度Wが2.0〜10.0[重量%]、固有粘度IVが0.65[dl/g]以上、末端カルボキシル基量AVが26[当量/トン]以下であり、かつ、リン元素含有量Pが70[重量ppm]以下あることを特徴とする、二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、それからなる太陽電池モジュール用裏面保護フィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、反射率に優れた太陽電池モジュール用裏面保護フィルムに好適な二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明でいう太陽電池とは、太陽光を電気に変換し該電気を蓄えるシステムをいい、好ましくは高光線透過材、太陽電池モジュール、充填樹脂層および裏面保護シートを基本構成とするものであり、ハウスの屋根に組み込まれるものや、電気、電子部品等に使用されるものであり、フレキシブルな性質を有するものもある。
【0014】
ここで高光線透過材とは、太陽光を効率よく入射させ、内部の太陽電池モジュールを保護するもので、好ましくはガラスや高光線透過プラスチックやフィルムなどが用いられる。また、太陽電池モジュールは、太陽光を電気に変換し蓄えるもので、太陽電池の心臓部分である。該モジュールは、シリコン、カドミウム−テルル 、ゲルマニウム−ヒ素などの半導体が用いられる。現在、多用されているものに、単結晶、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等がある。
【0015】
また、充填樹脂層とは、太陽電池内の太陽電池モジュールの固定および保護、電気絶縁の目的に用いられ、中でもエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂が性能と価格面で好ましく使用される。
【0016】
本発明でいう太陽電池モジュール用裏面保護フィルムとは、太陽電池の裏側の太陽電池モジュールの保護が重要な役目である。そして、太陽電池の電換効率を上げるために太陽光の高反射率を有し、長期間使用での屋外暴露で機械的強度が維持され、見た目(色調)の変化が少ない裏面保護シートが必要である。一般使用者にとって、見た目の変化は商品の性能劣化・故障を連想させてしまう。
【0017】
本発明においては、下記詳述する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから構成されるが、必要に応じて適宜その他の層を設けてもよい。
【0018】
本発明は太陽電池モジュール用裏面保護フィルムに好適な白色の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。ここでのポリエチレンテレフタレートフィルムに使用するポリエチレンテレフタレート樹脂とは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸およびその誘導体を、また、グリコール成分としてはエチレングリコールを用い、これらをエステル化反応によって高分子化してなる結晶性の熱可塑性樹脂である。かかるポリエチレンテレフタレートの融点は、250℃以上のものが耐熱性の上で好ましく、290℃以下のものが生産性の上で好ましい。この範囲内であれば、他のジカルボン酸成分もしくは他のグリコール成分を共重合させたり、他のポリエステルがブレンドされたりしていてもよい。他のポリエステルをブレンドする際には、全ポリエステル樹脂中、50重量%以下とするのが望ましい。
【0019】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて検出されるリン元素量が特定範囲にあるものである。本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム中のリン元素は、通常はリン化合物に由来するものであり、ポリエチレンテレフタレートフィルム製造時に添加される。
【0020】
本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルム中のリン元素量P[重量ppm]は70[重量ppm]以下の範囲である必要があり、好ましくは50[重量ppm]以下の範囲であり、さらに好ましくは40[重量ppm]以下の範囲である。下限については特に設けないが、実際には1[重量ppm]程度が現在の技術では下限となる。リン元素量が多すぎると、製膜後のフィルムの加水分解が促進することになるため好ましくない。
【0021】
リン酸化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそのエステルホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当し、具体例としては、正リン酸、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、エチルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0022】
また、熱分解や加水分解を抑制するために触媒として働きうる金属化合物をできる限り含まないことが好ましいが、ポリエチレンテレフタレートフィルムの生産性を向上すべく溶融時の体積固有抵抗値を低くするため、マグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属を、通常、フィルム中に、白色顔料由来の金属を除き、好ましくは500[重量ppm]以下、好ましくは400[重量ppm]以下であれば含有させることができる。
【0023】
太陽電池セルの間から漏れた入射光による、太陽電池裏面封止材の劣化を防ぐために、太陽電池裏面封止材は高隠蔽性を有することが好ましい。本発明においては、ポリエチレンテレフタレート成分に白色顔料を添加して白色ポリエチレンテレフタレートフィルムとする。白色顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウムなどを例示することができ、好ましくは二酸化チタン、硫酸バリウム、特に好ましくは二酸化チタンを用いる。
【0024】
白色顔料の平均粒径は、好ましくは0.25[μm]以上、さらに好ましくは0.28[μm]以上、特に好ましくは0.30[μm]以上である。平均粒径が0.25[μm]未満であると、効率的に散乱できる光の波長が低波長側へずれるため、近赤外光領域での反射率が低下することがある。白色顔料の平均粒径が10[μm]を超えると、粒度分布によっては粗大な粒子を含有するため、フィルムにピンホールを生じるなどの不具合が発生することがあることから、白色顔料は平均粒径10[μm]以下であることが好ましい。
【0025】
また、白色顔料を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム中の白色顔料の濃度W[重量%]は、10.0[重量%]以下、好ましくは8.0[重量%]以下である。白色顔料の含有量が10.0[重量%]より多いと、フィルム製膜時に、白色顔料により高分子鎖にシェアーがかかり、ポリエチレンテレフタレート分子の分解が、固有粘度IVの低下/末端カルボキシ量AVの増大を誘発し、当該ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性が低下してしまい、太陽電池モジュール用裏面保護フィルム向け二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルムには不敵なフィルムとなってしまう。一方、W[重量%]の下限は2.0[重量%]以上、更に好ましくは、3.0[重量%]以上である。Wが2.0[重量%]未満であると、フィルムに耐UV性が得られず、屋外に長時間放置したときフィルムが黄変してしまう。
【0026】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みD[μm]は、反射率と隠蔽性の関係から、175[μm]以上が好ましく、200[μm]以上が更に好ましい。厚みの上限は特に設けないが、通常500[μm]である。
【0027】
ポリエチレンテレフタレートフィルム中に白色顔料を含有させる方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエチレンテレフタレート成分を製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた白色顔料のスラリーとポリエステル原料とをブレンドしてもよい。また、混練押出機を用い、乾燥させた白色顔料とポリエステル原料とをブレンドする方法でもよい。なお、白色顔料を高濃度に含有する、いわゆるマスターバッチチップを、混練押出機を用いて製造し、必要に応じこのマスターバッチチップを、白色顔料を含有しないか、あるいは、少量含有するポリエステル原料と混練押出機を用いて混合することにより、所定の配合量のポリエステルフィルムを製造することもできる。
【0028】
本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート成分の末端カルボン酸量AV[当量/トン]が26[当量/トン]以下、好ましくは24[当量/トン]以下であることが望ましい。末端カルボン酸量AV[当量/トン]が26[当量/トン]を超えると、ポリエチレンテレフタレートの耐加水分解性が劣る。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエチレンテレフタレートの末端カルボン酸量の下限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は10程度である。
【0029】
尚、本発明において、末端カルボン酸量AV[当量/トン]は、実施例の項に記載した方法で、フィルムを用いて測定されたものを意味する。
【0030】
また、本発明においては、ポリエチレンテレフタレートフィルムに耐加水分解性を付与するにおいて、リン元素の含有量及び末端カルボン酸量を上記範囲にする他に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度IV[dl/g]が0.65[dl/g]以上、好ましくは0.68[dl/g]以上であることが重要である。
【0031】
フィルムの固有粘度が0.65[dl/g]未満である場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性が劣り、高温高湿度環境や屋外での長期使用が難しくなる。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度の上限はないが、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は0.75[dl/g]程度である。
【0032】
尚、本発明において、固有粘度IV[dl/g]は、実施例の項に記載した方法で、フィルムを用いて測定されたものを意味する。
【0033】
本発明において、ポリエチレンテレフタレートの末端カルボン酸量及び固有粘度を特定範囲とするため、例えば、ポリエチレンテレフタレートチップの押出工程における押出機内でのポリエチレンテレフタレートの滞留時間を短くする方法などが用いられる。また、低末端カルボン酸量のポリエチレンテレフタレートチップを製膜することで、末端カルボン酸量が特定範囲のポリエチレンテレフタレートフィルムを得てもよい。ポリエチレンテレフタレートチップの末端カルボン酸量を低くする方法としては、溶融重合で得られたチップを固相重合する方法や、重合効率を上げる方法、重合速度を速くする方法、分解速度を抑制する方法など従来公知の方法を採用しうる。例えば、溶融重合時間を短くする方法、重合触媒量を増やす方法、高活性の重合触媒を使用する方法、重合温度を低くする方法などによって行われる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合すると末端カルボン酸量が増大するので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましく、配合するとしても20重量部以下とすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム中には、必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、紫外線吸収剤を添加することができる。
【0035】
以下、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0036】
すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエチレンテレフタレートチップを混練押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボン酸量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエチレンテレフタレートの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50[ppm]以下、好ましくは30[ppm]以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用する。
【0037】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、160〜220℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。
【0038】
さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0039】
本発明においては、前記の通りポリエチレンテレフタレートの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層ポリエチレンテレフタレートフィルムとすることができる。層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のポリエチレンテレフタレートフィルムとすることができる。
【0040】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性は、ポリエチレンテレフタレートフィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては、共押出による積層構造を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート全体として、固有粘度、末端カルボン酸量が上記した範囲であることが必要である。同様に、リン元素の含有量、並びに白色顔料量は、共押出による積層構造を有するポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、当該ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート全体として含有量が前述の範囲であることが必要である。
【0041】
本発明においては、前記延伸工程においてまたはその後に、ポリエチレンテレフタレートフィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面または両面に塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理を施したりすることなどもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、この実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0043】
(1)白色顔料含有量/触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置(島津製作所社製型式「XRF−1500」)を用いて、下記表1に示す条件下で、単枚測定でポリエチレンテレフタレートフィルム中の元素量を求めた。積層ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合はポリエチレンテレフタレートフィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム全体に対する含有量を測定した。尚、ポリエチレンテレフタレートフィルム中に白色顔料が含まれている場合、白色顔料由来のピークが検出されるので、全体から白色顔料を除いて、ポリエチレンテレフタレート成分の触媒由来元素の定量を行う。
【0044】
【表1】

【0045】
表中、Tiはチタン元素を、Pはリン元素を表す。白色顔料TiO含有量φ[重量%]は、Ti由来ピークから検算する。
【0046】
(2)固有粘度IV[dl/g]
ポリエチレンテレフタレート試料(樹脂又はフィルム)0.5gを、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒中に溶解し、毛細管粘度計を用いて、1.0(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、固有粘度IVappaを算出した。その際、Huggins定数を0.33と仮定した。これで得られたIVappaから固有粘度IVを、白色顔料含有量φ[重量%]を用いて、下記式にして求めた。
【0047】
【数1】

【0048】
(3)末端カルボン酸量AV[当量/トン]
ポリエチレンテレフタレート試料(樹脂又はフィルム)に対し、いわゆる滴定法によって、見かけの末端カルボキシル基量AVappaの[当量/トン]を測定した。試料を粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込ながら攪拌下に、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液(溶媒種:水/メタノール/ベンジルアルコール)で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。又、ブランクとして試料を使用せずに同様の操作を実施し、見かけの末端カルボキシル基量AVappa[当量/トン]を次式より求めた。
【0049】
AVappa[当量/トン] = (A−B)×0.1×f/W
(ここで、Aは滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Bはブランクでの滴定に要した0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Wは試料の量(g)、fは0.1Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液の力価である。)
これで得られた見かけの末端カルボキシル基量AVappa[当量/トン]からポリエチレンテレフタレート試料の末端カルボキシル基量AV[当量/トン]を、白色顔料含有量φ[重量%]を用いて、下記式にして求めた。
【0050】
【数2】

【0051】
尚、0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1(N)の塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した。(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。) 以下の式によって力価(f) を算出した。
【0052】
力価(f)=0.1(N)の塩酸水溶液の力価×0.1(N)の塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl)
【0053】
(4)耐加水分解性
85℃―85%RHの雰囲気にてポリエチレンテレフタレートフィルムを2000時間処理し、フィルムの機械的特性として破断伸度を測定した。処理前後での破断伸度の保持率(%)を下記の式にて算出し、下記の基準で判断した。
【0054】
破断伸度保持率=処理後の破断伸度÷処理前の破断伸度×100
○:保持率が20%以上
△:保持率が6〜20%
×:保持率が6%未満
【0055】
(5)耐UV性の評価
A)促進耐候性試験
ポリエチレンテレフタレートフィルムに対し、下記条件で促進耐候性試験を行った。
装置:メタルウェザ試験機(型式/メーカー:KW−R5TP/ダイプラ ウィンテス(株))
放射照度 100mW/cm
照射条件 BP63℃ 湿度50%
フィルター:KF−2
処理時間:12時間
B)耐候性の評価方法
ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐候性試験前後の色目(L*, a*, b*)をコニカミノルタ製分光測光計 CM-3730dを用いて反射法にて測定。色差(ΔEab)の大小にて耐UV性の評価を行った。
耐候性試験前の色目 L*, a*, b*
耐候性試験後の色目 L*, a*, b*
【0056】
【数3】

【0057】
○:10未満
△:10以上−12未満
×:12以上
【0058】
(6)透過濃度の評価
マクベス濃度計TD−904型を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムを単枚で測定した。表示値が安定後、読み取りを行った。得られた物性値を下記の基準で判断した。
◎:透過濃度が1.0以上
○:透過濃度が0.7以上〜1.0未満
△:透過濃度が0.5以上〜0.7未満
×:透過濃度が0.5未満
【0059】
(7)光線反射率の評価
島津製作所社製UV−3100を用いて、拡散反射法により、光線波長550nmの反射率測定を行った。
【0060】
○: 85%以上
△: 80%以上85%未満
×: 80%未満
【0061】
[製造例1]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(1)の製造法>
精留塔を備えた攪拌機付きエステル交換反応槽にジメチルテレフタレート1700重量部、エチレングリコール1200重量部を仕込み、エステル交換反応触媒として酢酸マグネシウム四水塩1.39重量部をエチレングリコール溶液として添加し、反応温度150〜240℃、常圧下、反応によって生じるメタノールを留去させつつ、エステル交換反応を行い反応時間4時間にてエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体(オリゴマー、エステル交換反応率99.5%)を得た。このオリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽に移送した。移送後のオリゴマーに平均分子量140.01のエチルアシッドホスフェート0.57重量部を、20分後にテトラブチルチタネート0.24重量部をそれぞれエチレングリコール溶液として添加した。更に、シリカ粒子51重量部を添加した。シリカ粒子はエチレングリコール中に分散させスラリー状として添加した(シリカ粒子:富士シリシア製 SL320)。シリカ粒子添加後、反応槽内を常圧から徐々に0.2kPaまで減圧にするとともに反応温度を240℃から280℃に昇温しその後280℃にて重縮合反応を行い、減圧開始から214分後、常圧に戻して反応終了とし、反応槽底部より重縮合物をストランド状に押し出し、水冷しつつカッティングしポリエチレンテレフタレート樹脂(1)のペレットを得た。
【0062】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(1)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.643dl/g
末端カルボキシル基量AV=25当量/トン
チタン含有量=20重量ppm
マグネシウム含有量=93重量ppm
リン含有量=74重量ppm
【0063】
[製造例2]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)の製造法>
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で865:485の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートの0.3重量% エチレングリコール溶液を、得られるポリエステル樹脂1トン当たりのリン原子としての含有量P が6重量ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを、窒素雰囲気下で260℃ 、相対圧力50kPaG 、平均滞留時間4時間に設定された第1段目のエステル化反応槽、次いで、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPaG 、平均滞留時間1.5時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、エステル化反応させた。
【0064】
また2段目反応槽には槽上部に設けた配管を通じて、酢酸マグネシウム4水和物の0.6 重量% エチレングリコール溶液を、得られるポリエステル樹脂1 トン当たりのマグネシウム原子としての含有量Mが6重量ppmとなる量で連続的に添加した。
【0065】
引き続いて、前記で得られたオリゴマーを連続的に溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のオリゴマーに、テトラ−n−ブチルチタネートを、チタン原子の濃度0.15重量% 、水分濃度を0.5重量%としたエチレングリコール溶液として、得られるポリエステル樹脂1トン当たりのチタン原子としての含有量が4重量ppmとなる量で連続的に添加しつつ、270℃、2.6kPaに設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、278℃ 、圧力0.5kPaに設定された第2 段目の溶融重縮合槽、次いで、280℃、0.3 kPaに設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、得られるポリエステル樹脂の固有粘度IVが0.650dl/g となるように各重縮合槽における滞留時間を調整して溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口から連続的にストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してポリエチレンテレフタレート樹脂(2)のペレットを製造した。ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.650dl/g
末端カルボキシル基量AV=18当量/トン
チタン含有量=4重量ppm
マグネシウム含有量=6重量ppm
リン含有量=6重量ppm
【0066】
[製造例3]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(3)の製造法>
ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)を、窒素雰囲気下で約160℃に保持された攪拌結晶化機内に滞留時間が約60分となるように連続的に供給して結晶化させた後、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気大気圧下210℃で、滞留時間16時間、固相重縮合させポリエチレンテレフタレート樹脂(3)を得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(3)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.820dl/g
末端カルボキシル基量AV=12当量/トン
チタン含有量=4重量ppm
マグネシウム含有量=6重量ppm
リン含有量=6重量ppm
【0067】
[製造例4]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(4)の製造法>
ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)の製造法においてエチルアシッドホスフェートの添加量をリン原子としての含有量P が10重量ppm、酢酸マグネシウムの添加量をマグネシウム原子としての含有量が15重量ppm、テトラ−n−ブチルチタネートの添加量をチタン原子としての含有量 が0 8重量ppmとなるように変更した以外はポリエステル樹脂(2)の製造法と同様にして行いポリエチレンテレフタレート樹脂(4)を得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(4)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.638dl/g
末端カルボキシル基量AV=28当量/トン
チタン含有量=8重量ppm
マグネシウム含有量=15重量ppm
リン含有量=10重量ppm
【0068】
[製造例5]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(5)の製造法>
ポリエチレンテレフタレート樹脂(4)を、窒素雰囲気下で約160℃に保持された攪拌結晶化機内に滞留時間が約60分となるように連続的に供給して結晶化させた後、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気大気圧下210℃で、滞留時間16時間、固相重縮合させポリエステル樹脂(5)を得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(5)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.700dl/g
末端カルボキシル基量AV=24当量/トン
チタン含有量=8重量ppm
マグネシウム含有量=15重量ppm
リン含有量=10重量ppm
【0069】
[製造例6]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(6)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を0.02部加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃ とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドホスフェート0.03部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(プレポリマー)を製造した。
前記ポリエステル樹脂ペレット(プレポリマー)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行って、ポリエステル樹脂(6)を得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(6)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.850dl/g
末端カルボキシル基量AV=34当量/トン
チタン含有量=0重量ppm
マグネシウム含有量=32重量ppm
リン含有量=66重量ppm
【0070】
[製造例7]<ポリエチレンテレフタレート樹脂(7)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩 441重量ppmを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃ とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸をリン量が1000重量ppmとなるように添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.62に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエチレンテレフタレート(7)を得た。ポリエチレンテレフタレート樹脂(7)のIV、AV、元素含有量を以下、及び表2に示す。
固有粘度IV=0.620dl/g
末端カルボキシル基量AV=45当量/トン
チタン含有量=0重量ppm
マグネシウム含有量=69重量ppm
リン含有量=1000重量ppm
【0071】
製造例8<二酸化チタンマスターバッチ(T-MB)の製造法>
上記ポリエチレンテレフタレート樹脂(2)50重量部と平均粒径0.45μmの二酸化チタン粒子50重量部を、常法に従い押出機中290℃で溶融混合しマスターバッチ(T-MB)を得た。
固有粘度IV=0.510dl/g
末端カルボキシル基量AV=84当量/トン
二酸化チタン含有量=50重量%
リン含有量=6重量ppm
【0072】
[実施例1]−[実施例6]
ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜ポリエチレンテレフタレート樹脂7と二酸化チタンマスターバッチ(T−MB)ペレットを表3に示す割合で混合し、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融して押し出し、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、静電印加密着法を適用してキャスティングして未延伸シートを得た。次いで、88℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、120℃で横方向に3.9倍延伸し、更に、225℃で熱処理を行い、厚さD[μm]が250μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの、白色顔料含有濃度W[重量%]、IV[dl/g]、AV[当量/トン]、リン元素含有量P[重量ppm]、を表3に示す。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、光線反射率の評価結果を表4に示す。
【0073】
[実施例7]
ポリエチレンテレフタレート樹脂1、ポリエチレンテレフタレート樹脂3、ポリエチレンテレフタレート樹脂7、二酸化チタンマスターバッチ(T−MB)ペレットを表3に示す割合で混合し、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融して押し出し、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、静電印加密着法を適用してキャスティングして未延伸シートを得た。次いで、88℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、115℃で横方向に3.9倍延伸し、更に、230℃で熱処理を行い、厚さD[μm]が188μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの、白色顔料含有濃度W[重量%]、IV[dl/g]、AV[当量/トン]、リン元素含有量P[重量ppm]、を表3に示す。また、ポリエステルフィルムの耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、光線反射率の評価結果を表4に示す。
【0074】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート樹脂1、ポリエチレンテレフタレート樹脂3、ポリエチレンテレフタレート樹脂4、二酸化チタンマスターバッチ(T−MB)ペレットを表5に示す割合で混合し、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融して押し出し、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、静電印加密着法を適用してキャスティングして未延伸シートを得た。次いで、88℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、更に、235℃で熱処理を行い、厚さD[μm]が150μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの、白色顔料含有濃度W[重量%]、IV[dl/g]、AV[当量/トン]、リン元素含有量P[重量ppm]、を表5に示す。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、光線反射率の評価結果を表6に示す。
【0075】
[比較例2]−[比較例6]
ポリエチレンテレフタレート樹脂1〜ポリエチレンテレフタレート樹脂7と二酸化チタンマスターバッチ(T−MB)ペレットを表3に示す割合で混合し、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融して押し出し、表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、静電印加密着法を適用してキャスティングして未延伸シートを得た。次いで、88℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、120℃で横方向に3.9倍延伸し、更に、230℃で熱処理を行い、厚さD[μm]が250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレートフィルムの、白色顔料含有濃度W[重量%]、IV[dl/g]、AV[当量/トン]、リン元素含有量P[重量ppm]、を表5に示す。及びポリエチレンテレフタレートフィルムの耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、反射率を表6に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの諸物性(即ち、厚み、白色顔料含有量、リン元素含有量、固有粘度、末端カルボキシル基量)が、上記の範囲内であれば、耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、光線反射率を満足するフィルムとなることが実施例からわかるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムの諸物性が上記の範囲外であれば、耐加水分解性、耐UV性、透過濃度、光線反射率のいずれか1つ以上を満足できないポリエチレンテレフタレートフィルムとなることが比較例からわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明により、良好な二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び太陽電池モジュール用裏面保護フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートフィルムであって、厚みDが175[μm]以上であり、ポリエチレンテレフタレートフィルム中の、白色顔料含有濃度Wが2.0〜10.0[重量%]、固有粘度IVが0.65[dl/g]以上、末端カルボキシル基量AVが26[当量/トン]以下であり、かつ、リン元素含有量Pが70[重量ppm]以下あることを特徴とする、二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の二軸延伸白色ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる、太陽電池モジュール用裏面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−19070(P2012−19070A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155629(P2010−155629)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】