説明

二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムおよびその製造方法

【構成】 フィルムの一方の面(A面)の表面粗さ(Ra)が3nm未満かつそのピーク個数(RMS−n)が40以上であり、反対側の面(B面)の表面粗さ(Ra)が3〜50nmであり、かつ、A面、B面の表面全反射ラマン結晶化指数が20cm-1以下である二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
【効果】 蒸着テープとして時に高S/Nと面耐久性とを有し、蒸着面、走行面ともに滑り性に極めて優れたフィルムが得られた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム、その製造方法及びそれを用いた金属薄膜型磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属薄膜型磁気記録媒体としては、ポリエステルフィルムに金属薄膜型磁性層を設けてなる磁気記録媒体が知られている(たとえば特開昭58−68225号公報)。また、磁気記録のハード、ソフトの高性能化に伴い、磁気記録テープの磁性体も酸化物塗布、メタル塗布、そして蒸着へと移行してきた。こうした磁気記録の変化にあわせて磁気記録テープの基材フィルムにも数多くの改良が加えられてきた。従来の2層積層の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムにおいて、片面について平滑性(磁気テープにした時のS/N(シグナル/ノイズ比)の高さに関与)と滑り性(磁気テープの走行性に関与)、面耐久性の3者を満足させたものがある(たとえば特開平2−77431号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような従来のフィルムでは、蒸着面に関して平滑性と滑り性、面耐久性を満足させることができないという問題があった。
【0004】本発明は、かかる問題点を解決し、蒸着テープに用いた時にも高いS/Nを有し、しかも両面の滑り性、面耐久性が良好な二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム、その製造方法及びそれを用いた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムは、少なくとも2層の共押出による積層フィルムであって、フィルムの一方の面(A面)の表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で3nm未満かつそのピーク個数(RMS−n)が40以上であり、反対側の面(B面)の表面粗さ(Ra)が3〜50nmであり、かつ、A面の表面全反射ラマン結晶化指数が20cm-1以下であるものからなる。
【0006】ここで、B面となるフィルム(フィルムBとする)の厚さ(tB )とフィルムBに含まれる不活性粒子の粒径(dB )が以下の関係を満たすことが好ましい。
0.1≦tB /dB ≦3
【0007】また、A面となるフィルム(フィルムAとする)がフィルムBを構成する熱可塑性樹脂より融点が40℃以上低い熱可塑性樹脂を主成分とし、その中に含有される不活性粒子の粒径が5〜50nm未満であり、フィルムAの厚さ(tA )とフィルムAに含まれる不活性粒子の粒径(dA )が以下の関係を満たすことが好ましい。
0.1≦tA /dA ≦3さらに、A面に存在する突起の数密度が800万個/mm2 以上であって、その突起径が40nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0008】また、フィルムB中に含有される不活性粒子の粒径が50〜400nmであって、B面に存在する突起の数密度が20〜500万個/mm2 、その突起径が200nm以上1500nm以下であることが好ましい。
【0009】このようなフィルムを製造するに際しては、二軸延伸した後、フィルムAの融点以上、フィルムBの融点以下の温度で熱処理するとよい。
【0010】さらに、上記のような二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを基材とし、該基材のA面に金属薄膜層を設けることにより、前述の問題を解消した磁気記録媒体が得られる。
【0011】本発明を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド等フィルム成形性を有するものであれば特に限定されないが、特にポリエステル、なかでもエチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造単位を主要構成成分とするのが望ましい。
【0012】本発明のフィルムは、上記組成物を主要成分とするが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他種ポリマをブレンドしてもよいし、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、核生成剤等の無機または有機添加剤が添加されていてもよい。
【0013】本発明のフィルムは上記組成物を二軸配向せしめたフィルムであって、その配向の程度を示す厚さ方向の屈折率比は特に限定されないが、例えばエチレンテレフタレートを主要な成分とするポリエステルの場合には0.935〜0.970の範囲である場合に、S/N、滑り性、面耐久性がより一層良好となるので特に望ましい。
【0014】本発明のフィルムは、A面の表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)にて3nm未満である。より好ましくは0.3〜2.5nm、さらに好ましくは0.5〜1.5nmであることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性、面耐久性が悪化し、この範囲より大きいとS/Nが低下するので好ましくない。また、B面の表面粗さ(Ra)は、3〜50nmである。より好ましくは8〜40nm、さらに好ましくは12〜30nmであることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性が悪化し、この範囲より大きいと出力特性が不良となるので好ましくない。また、RMS−nが40未満であるとA面のすべり性が悪化するので好ましくない。
【0015】A面の表面全反射ラマン結晶化指数は、20cm-1以下とすることにより、耐久性がより一層良好となり、ハンドリング性も良好となる。
【0016】本発明のフィルムは、フィルムBの厚さ(tB )、及び、フィルムBに含まれる粒径(dB )の間に、0.1≦tB /dB ≦3という関係があることが好ましい。より好ましくは0.2以上2以下、さらに好ましくは0.5以上1.5以下である。この範囲より小さいと滑り性が悪化するので好ましくない。この範囲より大きいと出力特性が不良となるので好ましくない。
【0017】本発明のフィルムにおいて、フィルムAがフィルムBを構成する熱可塑性樹脂より融点が40℃以上低い熱可塑性樹脂を主成分とし、その中に含有される不活性粒子の粒径が5〜50nm未満であることが好ましく、より好ましくは10〜40nm、さらに好ましくは15〜30nmであることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性と面耐久性が悪化し、この範囲より大きいとS/Nが低下するので好ましくない。また、A面に存在する突起の数密度は800万個/mm2 以上であることが好ましく、より好ましくは1200万個/mm2 以上、さらに好ましくは1500万個/mm2 以上であることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性と面耐久性が悪化するので好ましくない。そして突起径については、40nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以上160nm以下、さらに好ましくは80nm以上130nm以下であることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性、面耐久性が悪化し、大きいとS/Nが低下するので好ましくない。また、フィルムA中に含まれる不活性粒子の添加量が0.05〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜4重量%、さらに好ましくは0.25〜3重量%であることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性と面耐久性が悪化し、大きいとS/Nが低下するので好ましくない。さらに、本発明のフィルムは、フィルムAの厚さ(tA )とフィルムAに含まれる不活性粒子の粒径(dA )が以下の関係を満たすことが好ましい。
0.1≦tA /dA ≦3この範囲より小さいと滑り性、面耐久性が悪化し、大きいと出力特性が不良となるので好ましくない。さらに、フィルムAを構成する熱可塑性樹脂に共重合熱可塑性性樹脂を用いると、高いS/Nが得られるので好ましい。
【0018】本発明において、フィルムB中に含有される不活性粒子の粒径は50〜400nmであることが好ましく、より好ましくは60〜350nm、さらに好ましくは100〜300nmであることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性が悪化するので好ましくない。この範囲より大きいと出力特性が不良となるので好ましくない。また、添加量は0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%であることが望ましい。また、B面に存在する突起の数密度は20万個/mm2 以上500万個/mm2 以下であることが好ましく、より好ましくは50万個/mm2 以上400万個/mm2 以下、さらに好ましくは100万個/mm2 以上300万個/mm2 以下であることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性が悪化し、大きいと出力特性が悪化する。そして突起径については、200nm以上1500nm以下であることが好ましく、より好ましくは250nm以上1200nm以下、さらに好ましくは300nm以上1000nm以下であることが望ましい。この範囲より小さいと滑り性が悪化し、大きいと出力特性が悪化する。
【0019】本発明のフィルムを得るためには、その製造において、二軸延伸後、フィルムAの融点以上、フィルムBの融点以下で、より好ましくはフィルムAの融点+10℃以上、フィルムBの融点−10℃以下で、さらに好ましくはフィルムAの融点+15℃以上、フィルムBの融点−15℃以下で熱処理することが望ましい。
【0020】本発明のフィルムは、少なくとも上記フィルムAとフィルムBとの二層積層構成を有するが、フィルムAとフィルムBの間にC層を設け、A/C/Bの3層フィルムとしてもよい。この場合、中央のC層は不活性粒子を含まなくてもよいが、フィルムAに含まれる粒子と同じ粒径の粒子を同量程度まで添加してもよい。
【0021】本発明によって得られる二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムは、蒸着フィルム、特に3層蒸着フィルムにおいてその効果が顕著となる。
【0022】本発明に使用する不活性粒子の種類は特に限定されないが、コロイダルシリカに起因する実質的に球形のシリカ粒子、架橋高分子による粒子(たとえば架橋ポリスチレン)などが挙げられる。特に10重量%減量時温度(窒素中で熱重量分析装置島津製作所製TG−30Mを用いて測定。昇温速度20℃/分)が380℃以上になるまで架橋度を高くした架橋高分子粒子の場合に耐久性がより一層良好となるので特に望ましい。なお、コロイダルシリカに起因する球形シリカの場合にはアルコキシド法で製造された、ナトリウム含有量が少ない、実質的に球形のシリカの場合に耐久性がより一層良好となるので特に望ましい。
【0023】次に本発明のフィルム及びそれを基材とする磁気記録媒体の製造方法について説明する。まず、熱可塑性樹脂A、BまたはCに不活性粒子を含有せしめる方法としては、不活性粒子をエチレングリコールのスラリーとし、ベント方式の2軸混練押出機を用いて熱可塑性樹脂に練り込む方法が、延伸破れなく、本発明範囲の厚さと平均粒径の関係、含有量の基材フィルムを得るのにきわめて有効である。粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度マスターを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しない熱可塑性樹脂で希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0024】次に、不活性粒子を所定量含有する熱可塑性樹脂A、BまたはCのペレットを必要に応じて乾燥したのち、公知の溶融積層用押出装置に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、A/B2層の構成については2台の押出し機、2層のマニホールドまたは合流ブロックを用いて、熱可塑性樹脂A、Bを積層し、口金から2層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、熱可塑性樹脂Aのポリマ流路に、スタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は延伸破れなく、本発明範囲の厚さと平均粒径の関係、含有量、望ましい範囲の表層粒子濃度比のフィルムを得るのに有効である。また、合流ブロックとして矩形のフィードブロックを用いるのがきわめて有効である。また、A/C/Bの構成の場合は3台の押出機を用いて同様に、3層のマニホールドまたは合流ブロックを用いて、熱可塑性樹脂A、C、Bを積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。
【0025】次にこの未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向せしめる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ただし、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行なう逐次二軸延伸法を用い、長手方向の延伸を3段階以上に分けて、総縦延伸倍率を3.0〜6.5倍で行なう方法は、本発明範囲の厚さと平均粒径の関係、含有量のフィルムを得るのに有効である。長手方向延伸温度は熱可塑性樹脂の種類によって異なり一概には言えないが、通常、その1段目を50〜130℃とし、2段目以降はそれより高くすることが本発明範囲の積層厚さ斑、本発明の望ましい範囲の表層粒子濃度比のフィルムを得るのに有効である。長手方向延伸速度は5000〜50000%/分の範囲が好適である。幅方向の延伸方法としてはステンタを用いる方法が一般的である。延伸倍率は、3.0〜5.0倍の範囲が適当である。幅方向の延伸速度は、1000〜20000%/分、温度は80〜160℃の範囲が好適である。
【0026】次にこの延伸フィルムを熱処理する。幅方向の延伸を行なった後、熱処理を行なわずにもう一度長手方向、幅方向の延伸を行なった後、熱処理することも可能である。
【0027】次に、このフィルム上に磁性層となる金属薄膜を形成する。磁性層を形成する方法は公知の方法で行なうことができる。例えば、鉄、コバルト・ニッケルまたはその合金の金属薄膜を真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等により基材フィルム上に直接、あるいはアルミニウム、チタン、クロム等の下地薄膜を介して形成させるのが好ましい。
【0028】〔特性の測定方法並びに効果の評価方法〕本発明の特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次のとおりである。
(1)粒子の平均粒径フィルムからポリエステルをプラズマ低温灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件はポリエステルは灰化されるが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子の画像をイメージアナライザーで処理する。観察箇所を変えて粒子数5,000 個以上で次の数値処理を行ない、それによって求めた数平均径Dを平均粒径とする。
D=ΣDi/Nここで、Diは粒子の円相当径、Nは粒子数である。
【0029】(2)突起径、突起密度明石製作所(株)製SEMを用いてフィルム表面を粒径にもよるが、おおよそ数万倍で写真撮影し、200個の粒子について突起径を写真測定し、その平均を突起径とする。また、これよりも低倍で20視野撮影し、各視野に存在する突起個数の平均から突起密度を換算した。
【0030】(3)粒子の含有量ポリエステルは溶解し粒子は溶解させない溶媒を選択し、粒子をポリエステルから遠心分離し、粒子の全体重量に対する比率(重量%)をもって粒子含有量とする。場合によっては赤外分光法の併用も有効である。
【0031】(4)表面粗さパラメータRa(中心線平均粗さ)、Rt(最大高さ)、RMS−n(ピーク個数)
小坂研究所製の高精度段差測定器ET−10を用いて測定した。条件は下記のとおりであり、20回の測定の平均値をとった。
・触針先端半径:0.5μm・触針荷重 :5mg・測定長 :0.5mm・カットオフ値:0.008mm
【0032】(5)S/Nフィルムに真空蒸着機内で微量の酸素の存在下にコバルト・ニッケル合金(Ni20重量%)高周波スパッタリング法により斜め蒸着し、厚さμmの蒸着層を形成させた。続いてテープ幅にスリットし蒸着テープのパンケーキを作成した。このパンケーキから長さ250mの長さをVTRカセットに組み込みVTRカセットテープとした。このテープに家庭用VTRを用いてシバソク製のテレビ試験波形発生器(TG7/U706)により100%クロマ信号を記録し、その再生信号からシバソク製カラービデオノイズ測定器(925D/1)でクロマS/Nを測定しこのクロマS/Nを市販されている8mmビデオテープ(120分ME)と比較して1.0dB以上高いものをS/N良好、それ以下のものをS/N不良と判定した。
【0033】(6)滑り性ASTM−D−1894B−63に従い、スリップテスターを用いて測定した。A面に関しては0.7未満を良好、0.7以上を不良と判定し、B面に関しては0.5未満を良好、0.5以上を不良と判定した。
【0034】(7)面耐久性フィルムを幅1/2 インチのテ−プ状にスリットしたものをテ−プ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面粗度:Raで100nm)上を走行させる(走行速度1,000m/min、走行回数10パス、巻き付け角:60゜、走行張力:65g)。この時、フィルムに入った傷を顕微鏡で観察し、幅2.5μm以上の傷がテ−プ幅あたり2本未満は優、2本以上10本未満は良、10本以上は不良と判定した。優が望ましいが、良でも実用的には使用可能である。
【0035】(8)積層樹脂層の厚さ2次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表面から深さ3000nmの範囲のフィルム中の粒子の内、最も高密度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+ /C+ )を粒子濃度とし、表面から深さ3000nmまでの厚さ方向の分析を行なう。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から中に入るにつれて粒子濃度は高くなる。本発明フィルムの場合、一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに表層粒子濃度が極大値の1/2となる深さ(この深さは極大値となる深さよりも深い)を求め、これを積層厚さとした。条件は次の通り。
■測定装置2次イオン質量分析装置(SIMS)
西独、ATOMIKA社製、A−DIDA3000■測定条件1次イオン種 :O2 +1次イオン加速電圧 :12KV1次イオン電流 :200nAラスター領域 :400μm□分析領域 :ゲート30%測定真空度 :6.0×10-9TorrE−GUN :0.5KV−3.0Aなお、表面から深さ3000nmの範囲に最も多く含有する粒子が有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらXPS(X線光電子分光法)、IR(赤外分光法)などで上記同様のデプスプロファイルを測定し積層厚さを求めても良いし、また、電子顕微鏡等による断面観察で粒子濃度の変化状態やポリマの違いによるコントラストの差から界面を認識し積層厚さを求めることもできる。さらには、積層ポリマを剥離後、薄膜段差測定機を用いて積層厚さを求めることもできる。
【0036】
【実施例】本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1〜6、比較例1〜7平均粒径の異なる架橋ポリスチレン粒子、コロイダルシリカに起因するシリカ粒子を規定量含有するエチレングリコールスラリーを調製し、このエチレングリコールスラリーを190℃で1.5時間熱処理した後、テレフタル酸ジメチルまたはイソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル混合物とエステル交換反応させ、重縮合し、該粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)のペレットA、B、Cを作った。この時、重縮合時間を調節し固有粘度を0.65とした。
【0037】これらのポリマをそれぞれ180℃で6時間減圧乾燥(3Torr)した後、3台の押出機にそれぞれ供給し280℃で溶融し、これらのポリマを合流ブロック(フィードブロック)で合流積層し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、積層未延伸フィルムを作った。この時、厚さ調整はA層、B層についてはギヤポンプを用いて各層の厚さを調節し、C層の押出機の吐出量の調節により総厚さを調節した。
【0038】この未延伸フィルムを温度80℃にて長手方向に3.5倍延伸した。延伸は2組ずつのロ−ルの周速差で、4段階で行なった。得られた一軸延伸フィルムをステンタを用いて延伸速度2,000 %/分で100℃で幅方向に3.6倍延伸し、定長下で、所定の温度で5秒間熱処理し、総厚さ10μmの二軸配向積層フィルムを得た。
【0039】これらのフィルムの片面に、真空蒸着機内で微量の酸素の存在化にコバルト・ニッケル合金(Ni 20重量%)を高周波スパッタリング法により斜め蒸着し、厚さ0.2μmの強磁性薄膜層を形成させた。続いてテープ幅にスリットし金属薄膜型磁気記録媒体を得た。
【0040】得られたフィルムの評価結果をまとめて表1と表2に示した。それらから、フィルムの表面パラメータが本発明範囲内の場合は、蒸着テープとしたときのS/N、滑り性、面耐久性の全てを満足するフィルムが得られることがわかる。
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


【0043】
【発明の効果】本発明においては、表面形態を特定した二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムとしたので、従来の熱可塑性フィルムに比べて、蒸着テープとした時に、高いS/Nと面耐久性とを有し、蒸着面、走行面ともに滑り性に極めて優れたフィルムが得られた。これはさらにまた、今後の磁気記録媒体の高品質化のために幅広く活用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも2層の共押出による積層フィルムであって、フィルムの一方の面(A面)の表面粗さが中心線平均粗さ(Ra)で3nm未満かつそのピーク個数(RMS−n)が40以上であり、反対側の面(B面)の表面粗さ(Ra)が3〜50nmであり、かつ、A面の表面全反射ラマン結晶化指数が20cm-1以下であることを特徴とする二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項2】 B面となるフィルム(フィルムB)の厚さ(tB )とフィルムBに含まれる不活性粒子の粒径(dB )が以下の関係を満たす請求項1の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
0.1≦tB /dB ≦3
【請求項3】 A面となるフィルム(フィルムA)がフィルムBを構成する熱可塑性樹脂より融点が40℃以上低い熱可塑性樹脂を主成分とし、その中に含有される不活性粒子の粒径が5〜50nm未満であり、フィルムAの厚さ(tA)とフィルムAに含まれる不活性粒子の粒径(dA )が以下の関係を満たす請求項1又は2の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
0.1≦tA /dA ≦3
【請求項4】 前記A面に存在する突起の数密度が800万個/mm2 以上であり、その突起径が40nm以上200nm以下である請求項2又は3の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項5】 フィルムB中に含有される不活性粒子の粒径が50〜400nmである請求項2ないし4のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項6】 前記B面に存在する突起の数密度が20万個/mm2 以上500万個/mm2 以下であり、その突起径が200nm以上1500nm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルム。
【請求項7】 二軸延伸した後、A面となるフィルムAの融点以上、B面となるフィルムBの融点以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項8】 請求項1の二軸配向熱可塑性樹脂積層フィルムを基材とし、該基材のA面に金属薄膜層を設けてなる磁気記録媒体。

【公開番号】特開平5−212788
【公開日】平成5年(1993)8月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−293848
【出願日】平成4年(1992)10月6日
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)