説明

二輪電動車

【課題】 運転のしやすさを向上して、足こぎ手段の回転数(回転速度)を制御信号に効率良く変換して電動モータを駆動制御することで、足こぎ手段の回転方向(前方向又は後ろ方向)によって運転者の意思に応じた適度な増速又は減速ができ、安定した走行を行うことができる二輪電動車を提供する。
【解決手段】
本発明の二輪電動車1は、前輪2及び後輪3の少なくとも何れか一方を駆動するための電動モータM1,M2と、該電動モータM1,M2を駆動制御するための駆動制御手段13と、運転者が足こぎ操作する足こぎ手段11とを備え、駆動制御手段13が、足こぎ手段11の回転速度に応じた速度で電動モータM1,M2を駆動制御するように構成されている。二輪電動車1は、足こぎ手段11の回転方向によって極性の異なる電力Wを出力する発電手段50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪及び後輪を一輪ずつ備え、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が電動駆動するように構成された二輪電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前輪及び後輪を一輪ずつ備え、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方が電動モータで駆動するように構成された二輪電動車が提供されている。
【0003】
かかる二輪電動車は、一般的な二輪自動車と同様に、運転者が前輪及び後輪をコントロールするためのアクセル手段を備え、そのアクセルワークによって前輪及び後輪の駆動状態を調整できるようになっている。そして、この種の二輪電動車には、アクセル手段として、運転者が操作する足こぎ手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種の二輪電動車は、運転者が足こぎ手段を足こぎ操作したとき(足でペダルを踏んだとき)の足こぎ手段の回転数(回転速度)を検出し、電気信号としての制御信号に変換する発電手段を備え、該発電手段によって出力された制御信号に応じて電動モータを駆動制御するようになっている。
【0005】
また、上記構成の二輪電動車は、足こぎ手段の回転方向に応じて電動モータの駆動制御を行って走行するようになっており、足こぎ手段を一方向(前方向)に回転させることで電動モータの駆動を加速させるように制御し、足こぎ手段を反対方向(後ろ方向)に回転させることで電動モータの駆動を停止させるように制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−63678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アクセル手段として足こぎ手段を用いた二輪電動車は、運転者が自転車を運転するように足こぎ手段を足こぎ操作することで運転できるため、自転車に乗り慣れていれば容易に運転が可能であるが、足こぎ手段の回転数(回転速度)が速すぎると二輪電動車のスピードが出過ぎてしまうという問題がある。また、運転者が自転車に乗り慣れていない場合や、足こぎ手段を足こぎ操作する力が弱い場合には、運転者が足こぎ手段を回転させて該足こぎ手段の回転数(回転速度)を増速させるには限界がある。そのため、この種の二輪電動車をある程度の速さで走行させるには、足こぎ手段の回転数(回転速度)を制御信号に効率良く変換して電動モータを駆動制御する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、運転のしやすさを向上して、足こぎ手段の回転数(回転速度)を制御信号に効率良く変換して電動モータを駆動制御することで、足こぎ手段の回転方向によって運転者の意思に応じた適度な増速又は減速ができ、安定した走行を行うことができる二輪電動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る二輪電動車は、前輪及び後輪の少なくとも何れか一方を駆動するための電動モータと、該電動モータを駆動制御するための駆動制御手段と、運転者が足こぎ操作する足こぎ手段とを備え、前記駆動制御手段が、前記足こぎ手段の回転速度に応じて前記電動モータを駆動制御するように構成された二輪電動車において、前記足こぎ手段の回転方向によって極性の異なる電力を出力すると共に回転速度によって異なる電圧を出力する発電手段と、前記足こぎ手段の回転速度を増速させて前記発電手段に出力する増速機と、前輪または後輪の回転速度を検知して電気信号としての速度信号を出力する速度検知手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記発電手段から出力された電力を指令速度として演算し、前記速度検知手段から出力される速度信号と比較して、該速度信号が前記指令速度と同じになるように電動モータを駆動するように制御し、前記発電手段から出力された電力が逆極性のときは電動モータを停止させるように制御することを特徴とする。ここで、「極性の異なる電力」とは、足こぎ手段の回転方向によって、発電手段から出力される電力の電流の向きが異なることをいう。
【0010】
運転者が足で踏んで足こぎ手段を回転させて該足こぎ手段の回転数(回転速度)を増速させるには限界があるため、それに応じて発電手段から出力される電力の最高値にも制限があり、該電力の最高値と最小値との差が小さくなる。このように、発電手段から出力される電力の最高値と最小値との差が小さいと、その差分に応じた電動モータの制御が難しくなるが、上記構成の二輪電動車によれば、足こぎ手段の回転速度を増速させて発電手段に出力する増速機を備えているため、発電手段から出力される足こぎ手段の1回転当りの電力量が増加し、足こぎ手段の回転数(回転速度)が小さくても発電手段を高速回転することが可能となる。このため、運転のしやすさを向上して、足こぎ手段の回転数(回転速度)を制御信号に効率良く変換して電動モータを駆動制御することができ、発電手段を小型化した場合であっても、電動モータが発電手段から十分な電力を得ることができ、電動モータの制御が容易となる。
【0011】
また、発電手段が極性の異なる電力を駆動制御手段に出力し、該駆動制御手段が、発電手段が出力する電力の極性に応じて電動モータの駆動と停止を切り替えるようにしている。すなわち、足こぎ手段を前方向に回転させた場合、電動モータを駆動するように制御し、足こぎ手段を後ろ方向に回転させた場合、電動モータを停止させるように制御する。これによって、自転車を漕いでいるのと同じ感覚で二輪電動車を操作できるようになる。
【0012】
また、上記構成の二輪電動車は、発電手段から出力された電力を指令速度として演算し、速度検知手段から出力される速度信号と比較して、該速度信号が指令速度と同じになるように電動モータを駆動するように制御し、発電手段から出力された電力が逆極性のときは電動モータを停止するように制御しているため、足こぎ手段の回転速度に応じて車速が制御されるので、速くこげば速く、遅くこげば遅く走行することができ、自転車を運転するのと同じ感覚での二輪電動車の走行が可能となる。
【0013】
本発明の他態様として、前記足こぎ手段に加え、前記電動モータを駆動させるための駆動スイッチを備えていることが好ましい。該駆動スイッチをONの状態にすると、駆動スイッチの入力によって駆動制御手段が発進時に必要なトルクを電動モータに出力させ、前輪又は後輪を駆動する。従って、駆動スイッチを操作するだけで発進時に必要なトルクを得ることができるため、発進時に安定した走行を行うことができる。これにより、発進時のふらつき抑制が可能となる。また、二輪電動車を坂道で発進する際には、足を地面に着いて車両を支え、車両が動き出してから足こぎ手段に足を乗せるようにすることができ、坂道での発進や走行も容易になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の二輪電動車によれば、運転のしやすさを向上して、足こぎ手段の回転数(回転速度)を制御信号に効率良く変換して電動モータを駆動制御することで、足こぎ手段の回転方向によって運転者の意思に応じた適度な増速又は減速ができ、安定した走行を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る二輪電動車の斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る二輪電動車の側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る二輪電動車の正面図を示す。
【図4】同実施形態に係る二輪電動車の制御系の概略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る二輪電動車について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本実施形態に係る二輪電動車は、図1及び図2に示す如く、前輪2及び後輪3を一輪ずつ備える。本実施形態においては、二輪電動車1は、後輪3の両側に上下動可能な一対の補助輪70,70をさらに備えている。そして、該二輪電動車1は、前輪2及び後輪3の少なくとも何れか一方を駆動するための電動モータM1,M2と、該電動モータM1,M2を駆動制御するための駆動制御手段13と、運転者が足こぎ操作する足こぎ手段11とを備え、駆動制御手段13が、足こぎ手段11の回転数(回転速度)に応じて電動モータM1,M2を駆動制御するように構成されている。また、二輪電動車1は、ハンドル(後述するハンドルバー6)の操作で前輪2を操舵するように構成されている。
【0018】
より具体的に説明すると、本実施形態に係る二輪電動車1は、運転者が着座するシート部40が取り付けられると共に、着座した運転者が足こぎ操作する足こぎ手段11が取り付けられた車体フレーム4と、該車体フレーム4の前部に対して縦方向に延びる軸線回りで回転自在に取り付けられたフロントフォーク5と、該フロントフォーク5の上端側に連結されたハンドルバー6と、前記フロントフォーク5の下端部に対して前記縦方向と直交する方向(以下、横方向)に延びる軸線回りで回転可能に取り付けられた前輪2と、前記車体フレーム4の後部に対して横方向に延びる軸線を支点にして上下方向に揺動可能に取り付けられたスイングアーム7と、車体フレーム4及びスイングアーム7に懸架されたリアサスペンション8と、前記スイングアーム7に対して横方向に延びる軸線回りで回転可能に取り付けられた後輪3とを備えている。
【0019】
そして、本実施形態に係る二輪電動車1は、上述の如く、一対の補助輪70,70を備えており、各補助輪70,70はスイングアーム7に対して上下方向に揺動可能に取り付けられた補助アーム71によって支持されている。そして、該補助アーム71は、スイングアーム7の回転軸と略平行な回転軸を中心にして回転可能に構成されている。そして、補助輪70,70は、前記補助アーム71に対して横方向に延びる軸回りで回転自在に構成されている。
【0020】
そして、該二輪電動車1は、図3に示すように補助アーム71とスイングアーム7との間に独立懸架装置(以下、補助サスペンションという)72が介装され、一対の補助輪70,70のそれぞれが補助サスペンション72の付勢力で下方に押し下げられて路面に接触し、また、路面の起伏に応じて上下動するようになっている。
【0021】
これにより、本実施形態に係る二輪電動車1は、旋回等を円滑に行えるようにした上で転倒防止が図られている。なお、本実施形態に係る二輪電動車1は、一対の補助輪70,70が後輪3の両側に配置されることで、後輪3が三つあるように見えるが(図1参照)、ここで言う後輪3は駆動を受ける車輪のことを意味しており、回転自在な補助輪70,70は後輪3には含まれない。
【0022】
そして、本実施形態に係る二輪電動車1は、後輪3の上方にバッテリーを収容するバッテリーボックス9が配置されるとともに、フロントフォーク5(前輪2)の上方に前輪2及び後輪3に対する駆動を制御する駆動制御手段(制御基板)13を収容した制御ボックス10が配置されている。なお、バッテリーボックス9は、車体フレーム4に支持され、制御ボックス10は、フロントフォーク5に支持されている。
【0023】
本実施形態に係る二輪電動車1は、図1及び図2に示すように、バッテリーからの電力供給を受けて駆動する電動モータM1,M2として、インホイールモータを備えている。すなわち、前輪2及び後輪3は、自身を回転させるためのインホイールモータM1,M2が回転中心に組み込まれている。該電動モータM1,M2は、バッテリー(直流電源)からの電力供給で制御駆動できれば、直流モータ又は交流モータの何れであってもよく、出力を考慮すれば、モータ効率が高効率で出力が高出力な永久磁石型同期モータを採用することが好ましい。
【0024】
また、本実施形態に係る二輪電動車1は、前輪2及び後輪3のそれぞれにブレーキ手段(例えば、ドラムブレーキ)が組み込まれており、ハンドルバー6に取り付けられたブレーキレバー(図示しない)を引き操作することで制動できるようになっている。また、該二輪電動車1は、パーキングブレーキレバー(図示しない)を備えており、該パーキングブレーキレバーに対する操作を行うことで前輪2又は後輪3(本実施形態においては後輪3)のブレーキ手段が機能し、駐車時に前輪2又は後輪3(本実施形態においては後輪3)の回転を規制できるようになっている。
【0025】
本実施形態に係る二輪電動車1は、運転者が前輪2及び後輪3をコントロールするためのアクセル手段としての足こぎ手段11を備えている。該足こぎ手段11は、車体フレーム4を横方向に貫通する態様で回転自在に軸支された回転軸21と、該回転軸21の両端部に設けられたクランク22,22と、該クランク22,22のそれぞれの先端に回転自在に設けられた足こぎペダル23,23とを備える。なお、本実施形態において、回転軸21の前記周方向の一方向(前輪2側)に足こぎペダル23,23(クランク22,22)を回転させる方向を正方向といい、他方向(後輪3側)に足こぎペダル23,23(クランク22,22)を回転させる方向を逆方向という。
【0026】
クランク22,22は、運転者が足こぎペダル23,23を足で踏んで回転軸21の周方向で回転させることで、回転軸21を中心に図2中の矢印Aの方向(正方向)、又は図2中の矢印Bの方向(逆方向)に回転するように構成されている。
【0027】
また、足こぎ手段11は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転方向(正方向又は逆方向)によって極性の異なる電力を出力する発電手段50を備える。なお、「極性の異なる電力」とは、足こぎ手段11の回転方向によって、発電手段50から出力される電力の電流の向きが異なることをいう。したがって、「極性の異なる電力を出力する」とは、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転方向によって、発電手段50が電流の向きが異なる電力Wを出力することをいう。
【0028】
本実施形態においては、足こぎ手段11は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転数(回転速度)を増速させて発電手段50に出力する増速機51を備える。具体的には、増速機51は、足こぎ手段11の回転軸21に設けられた径の大きなプーリー(図示せず)と、発電手段に設けられた径の小さなプーリー(図示せず)とがベルト(図示せず)で連結されることで増速されるようになっている。増速機51は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)が回転軸21の周方向で図2中の矢印Aの方向(正方向)に回転される場合、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転数(回転速度)を増速させて発電手段50に出力し、発電手段50から出力される足こぎペダル23,23(クランク22,22)の1回転当りの電力量を増加させるようにしている。
【0029】
また、増速機51は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)が回転軸21の周方向で図2中の矢印Bの方向(逆方向)に回転される場合、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の逆方向の回転数(回転速度)を増速させて発電手段50に出力し、発電手段50から出力される足こぎペダル23(クランク22,22)の1回転当りの電力量を増加させるようにしている。
【0030】
また、本実施形態に係る二輪電動車1は、車輪(前輪2,後輪3)の回転数(回転速度)を検知して電気信号としての速度信号を出力する速度検知手段52を備えている。
【0031】
速度検知手段52は、センサ類を採用することができ、本実施形態においては、速度センサが採用されている。また、本実施形態においては、速度検知手段52は、フロントフォーク5に固定されており、足こぎペダル23,23の操作に連動して回転する車輪(前輪2,後輪3)の回転数(回転速度)を検出し、検出した車輪(前輪2,後輪3)の回転数(回転速度)に関する信号を、速度信号として駆動制御手段13に出力するようになっている。
【0032】
駆動制御手段13は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転方向によって発電手段50が出力する電力の極性に応じて電動モータM1,M2の加速と減速とを切り替えると共に、その出力における電圧に応じて電動モータM1,M2の回転速度を制御するように構成されている。
【0033】
すなわち、駆動制御手段13は、足こぎペダル23,23(クランク22,22)を一方向(正方向)に回転した状態では、電動モータM1,M2を駆動するように発電手段50から電力(電圧)が入力されて、電動モータM1,M2を制御し、足こぎペダル23,23(クランク22,22)を他方向(逆方向)に回転した状態では、電動モータM1,M2を停止するように発電手段50から電力(電圧)が入力されて、電動モータM1,M2を制御する。
【0034】
より具体的に説明すると、本実施形態の駆動制御手段13は、図4に示すように、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転方向に応じて発電手段50から出力された極性の異なる電力Wと、速度検知手段52から出力された速度信号Sとに基づいて、電動モータM1,M2の駆動状態を設定する駆動力制御回路14を備えている。また、駆動制御手段13は、駆動力制御回路14で設定された駆動状態で電動モータM1,M2を駆動させるドライバーであるモータ回転制御回路15を備えている。
【0035】
本実施形態においては、発電手段50は、永久磁石を備えた整流子型の直流発電機であり、正方向の回転では回転数に略比例した正の電圧を電圧信号として駆動力制御回路14に出力し、逆方向の回転では回転数に略比例した負の電圧を電圧信号として駆動力制御回路14に出力する。駆動力制御回路14には、この発電手段50からの電圧信号と、速度検知手段52から出力された速度信号(速度に比例してパルス数が多くなるパルス信号)Sとが入力される。駆動力制御回路14は、発電手段50から出力された電圧信号を指令速度として演算する。
【0036】
本実施形態においては、例えば、ペダル23,23(クランク22,22)の回転数が毎分60回転の場合に指令速度が時速20kmとなることを基準とし、回転数に略比例して指令速度を決めるようにする。発電手段50からの出力電圧は回転数(回転速度)に略比例した大きさの電圧信号として駆動力制御回路14に入力されるため、駆動力制御回路14は、ペダル23,23(クランク22,22)が毎分60回転の回転数のときの発電手段50からの出力電圧を、時速20kmの指令速度として変換する。
【0037】
駆動力制御回路14は、発電手段50からの出力電圧がこの電圧より小さいときは、電圧に比例して指令速度を小さくし、発電手段50からの出力電圧がこの電圧より大きいときは、電圧に比例して指令速度を大きくするようにする。そして、駆動力制御回路14は、このようにして変換された指令速度と速度検知手段52から出力される速度信号Sが示す速度とを比較し、速度信号が指令速度に対して小さいときにはモータ出力を大きくすることを指示する制御電圧Cを、モータ回転制御回路15に出力すると共に、速度信号が指令速度に対して大きいときにはモータ出力を小さくすることを指示する制御電圧Cを、モータ回転制御回路15に出力する。このように、駆動力制御回路14は、速度信号Sが指令速度と同じになるように電動モータM1,M2を駆動するように制御する。また、駆動制御手段14は、発電手段50から出力された電力が逆極性のときは電動モータM1,M2を停止させるように制御する。
【0038】
なお、上記のように電動モータM1,M2を制御すると、足こぎペダル23,23(クランク22,22)の回転数が速くなるにつれて指令速度も大きくなるため、スピードが出過ぎてしまうことがある。そのため、発電手段50からの出力電圧があらかじめ設定した電圧以上の場合には、あらかじめ設定した電圧であるとして判断するようにする。このようにすれば、所定速度以上の速さの指令速度は出なくなり、二輪電動車1に対して上限速度を設けることが出来る。本実施形態においては、例えば、発電手段50からの出力電圧が時速20kmに対応する電圧以上の場合には、すべて時速20kmに対応する電圧と同じとして扱えば、二輪電動車1が自転車の走行時の速度程度しか出せないようにできる。このように、二輪電動車1が走行する際の最高速度に上限を設けることで、スピードの出過ぎを防止し、より安全な走行が可能となる。
【0039】
そして、本実施形態に係る二輪電動車1は、足こぎ手段11に加え、電動モータM1,M2を駆動させるための駆動スイッチ24を備えている(図1参照)。本実施形態では、駆動スイッチ24は、ハンドルバー6の右側の部分に突出した押しボタンスイッチとして設けられている。駆動スイッチ24は、駆動力制御回路14に接続されており、駆動スイッチ24が操作されたとき、駆動力制御回路14が発進時に必要な電動モータM1,M2のトルクを出力させる制御電圧Cをモータ回転制御回路15に出力する。
【0040】
本実施形態に係る二輪電動車1において、駆動スイッチ24による制御によって車両を発進させる場合、まず、駆動スイッチ24を操作してONの状態にする。これにより二輪電動車1は、時速6kmの速度になるまで徐々に加速し、時速6kmの速度になると時速6kmの定速で走行を行う。この制御は、駆動スイッチ24からの信号入力を受けて駆動力制御回路14が行う。すなわち、上述のように、駆動スイッチ24は、ON/OFFの信号を駆動力制御回路14に出力するもので、該駆動力制御回路14は、この信号を受けると制御電圧Cをモータ回転制御回路15に出力して、上記速度制御を行うようになる。このようにすることで、足こぎペダル23,23(クランク22,22)を誤って正回転させた場合でも、二輪電動車1は、駆動スイッチ24を操作してONの状態にしない限り発進することはない。また、二輪電動車1を坂道で発進する際には、足を地面に着いて車両を支え、車両が動き出してから足を地面から離して足こぎ手段に乗せるようにすることができるので、走りはじめにふらつくこともなく、坂道での発進や走行も容易になる。
【0041】
また、本実施形態においては、駆動スイッチ24を操作して二輪電動車1が動き出した後、足こぎペダル23,23(クランク22,22)を正回転させることで、駆動スイッチ24による速度制御から足こぎペダル23,23(クランク22,22)による速度制御に切り替わるようにしている。なお、二輪電動車1の走行が規定速度又は規定時間に到達すると、電動モータM1,M2の駆動が足こぎペダル23,23(クランク22,22)による制御に切り替わるようにしてもよい。
【0042】
本実施形態に係る二輪電動車1においては、足こぎ手段11は、運転者の足こぎ操作に伴う回転速度を増速させて発電手段50に出力する増速機51を備えているため、発電手段50から出力される足こぎ手段11の1回転当りの電力量を増加し、足こぎ手段11の回転速度が小さくても発電手段50を高速回転することが可能となる。このため、発電手段50を小型化した場合であっても、電動モータM1,M2が発電手段50から十分な電力を得ることができ、電動モータM1,M2の制御が容易となる。
【0043】
また、本実施形態に係る二輪電動車1は、足こぎ手段11に加え、電動モータM1,M2を駆動させるための駆動スイッチ24を備えているため、駆動スイッチ24を操作するだけで発進時に必要なトルクを得ることができ、発進時に安定した走行を行うことができる。これにより、発進時のふらつき抑制が可能となる。また、二輪電動車1を坂道で発進する際には、足を地面に着いて車両を支え、車両が動き出してから足こぎ手段に足を乗せるようにすることができ、坂道での発進や走行も容易になる。
【0044】
尚、本発明の二輪電動車は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0045】
上記実施形態において、電動モータM1,M2は、一つのモータ回転制御回路15によって制御されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、電動モータM1、M2のそれぞれに接続された別々のモータ回転制御回路で制御してもよい。
【0046】
また、上記実施形態において、足こぎ手段11に加え、電動モータM1,M2を駆動させるための駆動スイッチ24を備えるようにしたが、これに限定されず、駆動スイッチ24を設けなくてもよい。また、上記実施形態において、駆動スイッチ24を設ける場合、駆動スイッチ24が押しボタンスイッチである場合を示したが、駆動スイッチ24は、ON/OFFの切り替えが可能であればよい。また、駆動スイッチ24は、手で操作するものが好ましいが、手以外、例えば、足で操作するものであってもよい。
【0047】
上記実施形態において、二輪電動車1は、前輪2及び後輪3と、後輪3の両側に上下動可能な一対の補助輪70,70を備えているが、これに限定されず、補助輪70,70を備えなくてもよく、前輪2及び後輪3の少なくとも何れか一方が、ペダル23の回転速度に応じて電動モータM1,M2で駆動するように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0048】
1…二輪電動車、2…前輪、3…後輪、4…車体フレーム、5…フロントフォーク、6…ハンドルバー、7…スイングアーム、8…リアサスペンション、9…バッテリーボックス、10…制御ボックス、11…足こぎ手段、13…駆動制御手段、14…駆動力制御回路、15…モータ回転制御回路、21…回転軸、22…クランク、23…足こぎペダル、24…駆動スイッチ、40…シート部、50…発電手段、51…増速機、52…速度検知手段、70…補助輪、71…補助アーム、72…補助サスペンション、M1,M2…電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪の少なくとも何れか一方を駆動するための電動モータと、該電動モータを駆動制御するための駆動制御手段と、運転者が足こぎ操作する足こぎ手段とを備え、前記駆動制御手段が、前記足こぎ手段の回転速度に応じて前記電動モータを駆動制御するように構成された二輪電動車において、前記足こぎ手段の回転方向によって極性の異なる電力を出力すると共に回転速度によって異なる電圧を出力する発電手段と、前記足こぎ手段の回転速度を増速させて前記発電手段に出力する増速機と、前輪または後輪の回転速度を検知して電気信号としての速度信号を出力する速度検知手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記発電手段から出力された電力を指令速度として演算し、前記速度検知手段から出力される速度信号と比較して、該速度信号が前記指令速度と同じになるように電動モータを駆動するように制御し、前記発電手段から出力された電力が逆極性のときは電動モータを停止させるように制御することを特徴とする二輪電動車。
【請求項2】
前記足こぎ手段に加え、前記電動モータを駆動させるための駆動スイッチを備えていることを特徴とする請求項1に記載の二輪電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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