説明

二酸化炭素混合ガスからの二酸化炭素分離方法および分離装置

【課題】装置規模がコンパクトでありながら、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高回収率、高濃度で回収できる二酸化炭素分離装置を実現する。
【解決手段】ガス配管1から混合ガスがPSA塔2に送られ、二酸化炭素が除去されたガスがガス配管1aへと排出され目的設備9に供給される(ステップ1)。PSA塔2aの内部吸着剤から二酸化炭素を脱着させる(ステップ2)。PSA塔2aからのガスを配管4から超音速ノズル5に送り分離した二酸化炭素をタンク8に供給する(ステップ3)。超音速ノズル5は二酸化炭素のみを完全に分離することは困難であるので、超音速ノズル5から二酸化炭素を含むであろうガスをPSA塔2aに送りガス中に混入している二酸化炭素を吸着させて二酸化炭素を除いたガスを得る(ステップ4)。次のサイクルでは、PSA塔2、2a、2bの役割を変更してステップ1に戻り実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電設備などで発生する二酸化炭素を含むガスから、二酸化炭素を分離する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電設備や製鉄所などでは、二酸化炭素を含むガスが大量に発生する。二酸化炭素は、従来、他の排ガスと共に大気中に放出されてきたが、大気中の二酸化炭素の温室効果による地球温暖化への懸念から、大気中の二酸化炭素濃度を増加させないこと、言い換えると、今日では様々な工業プロセスの排出ガスから二酸化炭素を分離して大気中に放出しないことの重要性が認識されている。
【0003】
燃焼排ガス等の二酸化炭素を含むガスからの二酸化炭素分離法として実用化されている処理方法に、アミン化合物を利用した化学吸収法がある。二酸化炭素吸収液としてアミン化合物の溶解液を用い、比較的低温、高圧の吸収塔で燃焼排ガスと吸収液とを接触させて二酸化炭素を吸収液に吸収し、次いで吸収液を比較的高温、低圧の再生塔へ送り、吸収液が加熱・減圧されることで二酸化炭素を吸収液から回収する。
【0004】
使用するアミン化合物の種類によって異なるが、モノエタノールアミン(MEA)の例を記すと、単位吸収液当たりの二酸化炭素吸収量は16〜22Nm/m、供給ガスに残留する二酸化炭素濃度は5〜100ppm、二酸化炭素の分離に必要なエネルギーは4.3〜6.4GJ/ton−COである。
【0005】
このように、二酸化炭素の分離には多大な所要エネルギーおよびコストが必要である。
【0006】
化学吸収法と異なる二酸化炭素分離方法としては、吸収液を用いる点では化学吸収法と同じであるが、化学反応ではなく圧力による気体の溶解度差を利用した物理吸収法もある。しかし、二酸化炭素分離に必要な熱量やコストはやはり化学吸収法と同様に多大な熱量やコストが必要である。
【0007】
また、物理吸着法として、ガスの種類によって吸着性能が異なる吸着剤を利用し、高圧下で特定のガス成分を吸着させ、低圧下で吸着したガスを回収する方法によりガス分離する圧力スイング吸着法(PSA)もある。本方法は乾式であり、吸収液を用いた化学吸収法や物理吸収法のような廃液処理や飛散に伴う吸収溶液の補充といった作業が発生せず簡便である。
【0008】
しかし、1段での濃縮率に限界があるため、二酸化炭素を高濃度かつ高回収率で分離するためには、複数段のシステムで繰り返し処理する必要があり、装置規模が大きくなる。
【0009】
特許文献1では、PSAを複数段設けずに二酸化炭素の濃縮率を向上させるため、PSAで二酸化炭素が濃縮されたガスを圧縮し、ジュールトムソン弁を用いてガス中の二酸化炭素を液化し、不凝縮ガスを再びPSAに還流させて不凝縮ガス中の二酸化炭素を回収することで、二酸化炭素を高純度で回収するシステムが記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、水素と二酸化炭素の混合ガスから、PSAと水素透過膜、二酸化炭素透過膜を用いて分離するシステムについて記載されている。PSAで二酸化炭素を濃縮した後、水素透過膜で水素を分離し、次に二酸化炭素透過膜で二酸化炭素を分離する。
【0011】
さらに、特許文献3では、二酸化炭素を含むガスを超音速ノズルで断熱膨張させることで、ガスを冷却して二酸化炭素を凝縮させ、さらに旋回流を加えて凝縮した二酸化炭素をノズルの外側に集めて分離する方法が記載されている。超音速ノズルによる断熱膨張は、特許文献1のジュールトムソン膨張と異なり、水素を含む任意の気体を冷却させることができ、また温度もジュールトムソン膨張より低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−359785号公報
【特許文献2】特開2008−247632号公報
【特許文献3】特表2010−500163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載の技術において、ジュールトムソン膨張は気体の種類によって温度変化が異なる。例えば、混合ガスが水素と二酸化炭素とした場合、特許文献1に記載されている26気圧、−50度Cの混合ガスをジュールトムソン膨張させた場合、水素は当該温度ではジュールトムソン膨張で温度が上昇するため、二酸化炭素の液化が十分に行えない懸念がある。
【0014】
また、当該条件で二酸化炭素を液化しても、不凝縮ガス中に30%程度の比較的高濃度の二酸化炭素が含まれるため、PSAに還流させるとPSAで処理するガス量が増加し、それによりPSAの装置規模を大きくする必要がある。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術においては、透過膜の分離性能に限界があるため、膜分離後も30%程度の比較的高濃度の二酸化炭素が含まれるガスをPSA入口に還流させる必要があり、やはりPSAの装置規模を大きくする必要がある。
【0016】
さらに、特許文献3に記載の技術においては、ガスの流速が超音速から亜音速に戻ると再び温度が上昇するため、超音速状態のまま旋回流で凝縮した二酸化炭素を外側に集めて分離することから、二酸化炭素を全量分離することが困難であり、二酸化炭素を分離し除いた後のガス中にも回収できなかった二酸化炭素が数%程度残ってしまう。
【0017】
このように、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高回収率かつ高濃度に分離するために、PSAにジュールトムソン弁や水素透過膜と二酸化炭素透過膜を設けても、PSAに還流させる必要のあるガス流量が多くなり、PSA装置を多段にするまでに至らなくとも、PSA装置規模を十分大きくする必要がある。また、超音速ノズルの場合、二酸化炭素の回収率を上げることが難しい。
【0018】
本発明の目的は、装置規模がコンパクトでありながら、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高回収率、高濃度で回収できる二酸化炭素分離方法および分離装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は次のように構成される。
【0020】
二酸化炭素混合ガスを二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔に流通させて二酸化炭素を除去し、二酸化炭素吸着剤に吸着された二酸化炭素を脱着処理し、脱着処理して得られたガスを超音速ノズルに供給し、二酸化炭素の分離処理を行い、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する方法および装置であって、二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔で二酸化炭素の吸着及び脱着を繰り返しながら、上記超音速ノズルで二酸化炭素を分離し、二酸化炭素混合ガスから二酸化炭素を分離回収する。
【発明の効果】
【0021】
装置規模がコンパクトでありながら、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高回収率、高濃度で回収できる二酸化炭素分離方法および分離装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による一実施例である二酸化炭素分離装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例におけるPSA塔に流入、流出するガスの二酸化炭素濃度の時間変化の計算結果を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施例におけるPSA塔内の二酸化炭素吸着量の時間変化の計算結果を示すグラフである。
【図4】ガスのマッハ数と、圧力、温度の低下割合およびノズル断面積の割合を示すグラフである。
【図5】本発明による一実施例の変形例を示す図である。
【図6】本発明の一実施例における動作フローチャートである。
【図7】超音速ノズルの内部構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明による二酸化炭素分離方法および分離装置の実施例を説明する。
【0024】
本発明は、PSA塔と超音速ノズルと共働させ、PSA塔で二酸化炭素の吸着と脱着とを繰り返しながら、超音速ノズルで二酸化炭素を分離することにより、装置規模を最小限にして二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を高回収率かつ高濃度で分離することができる方法および装置である。
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の一実施例である二酸化炭素分離装置の概略システム構成図である。
【0026】
図1において、火力発電所等からの二酸化炭素を含むガスを送るためのガス配管1が圧力スイング吸着(PSA)塔2、2a、2bの一方端におけるガス供給入口に接続されている。また、ガス配管1aが圧力スイング吸着(PSA)塔2、2a、2bの他方端におけるガス供給排出口に接続されている。そして、ガス配管1aは、目的設備9に接続されている。この目的設備9は、例えば水素貯蔵庫等である。圧力スイング吸着(PSA)塔2、2a、2bには、それぞれ、二酸化炭素吸着剤20、21、22が備えられている。
【0027】
各圧力スイング吸着(PSA)塔2、2a、2bには、弁3a〜3oを介してガスの供給及び排出が行われる。
【0028】
また、各圧力スイング吸着(PSA)塔2、2a、2bの一方端は、弁3g、3h、3i、配管4を介して案内羽11を有する超音速ノズル5に接続されている。また、超音速ノズル5は弁3b、3d、3fを介して配管1に接続されている。さらに、超音速ノズル5は二酸化炭素を貯蔵するタンク8に接続されている。
【0029】
弁3a〜3oはコントローラ(シーケンサ)10からの指令信号により開閉動作制御が行われる。
【0030】
図6は、図1に示した第1の実施例の動作フローチャートである。この動作はコントローラ10が各弁3a〜3oや超音速ノズル5に指令信号を送ることにより弁の開閉動作制御等を行うことにより実行される。なお、後述するステップ1〜4までを1サイクルとして、このサイクルを繰り返し行い、複数のPSA塔の役割を交代しながら二酸化炭素を分離することで、設備を有効利用し、設備規模拡大を防止している。
【0031】
図1及び図6において、まず、ステップ1の工程で、火力発電所の燃焼排ガスなどの二酸化炭素を含む混合ガスは、脱硫および脱水処理(図示せず)をした後に、ガス配管1を通って圧力スイング吸着(PSA)塔2に送られる。
【0032】
PSA塔2の内部には、二酸化炭素を吸着する吸着剤(斜線で示す部分)20が充填されており、二酸化炭素の吸着が飽和するまで、混合ガスから二酸化炭素が除去されたガスがPSA塔2からガス配管1aへと排出される。これは、予め定めた時間が経過したか否かを判断することにより、二酸化炭素の吸着が飽和したか否かを判断する。二酸化炭素を除いたガスは、目的設備9に供給され、貯蔵等が行われる。
【0033】
次に、吸着剤が二酸化炭素で飽和したらステップ2の工程に移り、前回のサイクルで二酸化炭素の吸着が飽和したPSA塔2aの内部を減圧して吸着剤21に吸着されていた二酸化炭素を脱着させる。この時、弁3lよりステップ1の行程で得られた二酸化炭素を除去したガスの一部を使ってパージし、脱着した二酸化炭素を含むガスを配管4へと排出する。このガスの一部を使ってパージを行うために、弁3lの近辺に減圧器(図示せず)を接続してもよいし、弁3lの開度を調整してもよい。他のPSA塔2、2bの弁3i、3nについても同様である。
【0034】
次に、ステップ3の工程に移り、PSA塔2aから脱着した二酸化炭素を含むガスを配管4から超音速ノズル5へと送る。超音速ノズル5において、二酸化炭素を含むガスは超音速まで流速が加速され、流速の増加に伴って温度が低下し、ガス成分の中で凝縮温度の高い二酸化炭素が凝縮する。
【0035】
超音速ノズル5内には旋回流を起こさせる案内羽11が設けられており、旋回させることで凝縮した二酸化炭素を超音速ノズル5内の外側方向面近辺に集め、十分に集まったところで流路を、外側と内側とに分け、二酸化炭素を分離する。分離した二酸化炭素は、タンク8に供給する。
【0036】
ここで、超音速ノズル5の内部構成及び機能について、図7を参照して説明する。図7において、超音速ノズル5の中央には芯24が設けられ、ガスは芯4の周りの円筒状の流路を流れる。超音速ノズル5の上流側に旋回羽根11が設けられ、ガスは旋回羽根11を通過することによって、円筒状の流路を旋回しながら流れる。流路断面積は次第に絞られ、ガスは旋回しながら軸方向の速度が増加する。
【0037】
流路断面積が最少となるスロート23付近ではガスは音速となり、再び流路が拡大するに従い、ガスはさらに流速を増して超音速状態となる。超音速となると、ガスの温度は急激に低下し、二酸化炭素の凝縮温度よりも低下すると、ガス中の二酸化炭素が凝縮して粒子となる。凝縮した二酸化炭素はガスの旋回流による遠心力で分離管25の外側に集められる。二酸化炭素が十分に分離管25の外側に集まった部分で、分離管25の中央と周囲とに分離することにより、分離管25の中央からは二酸化炭素濃度が低下したガスを得ることができ、周囲からは二酸化炭素を多く含むガスを得ることができる。
【0038】
なお、超音速ノズル5では、二酸化炭素のみを完全に分離することは困難であり、一部の二酸化炭素は超音速ノズル5の内側のガスの中に混入する。そこで、ステップ4の工程で、超音速ノズル5から二酸化炭素を含むであろうガスを、前回のサイクルで二酸化炭素を脱着した後のPSA塔2aに送り、ガス中に混入している二酸化炭素を吸着させて二酸化炭素を除いたガスを得る。
【0039】
ステップ4の動作は一定時間経過するまで実行され、一定時間が経過した後は、次のサイクルに進む。
【0040】
次の第2サイクルの動作は、ステップ1に戻り実行されるが、第2サイクルにおいては、ステップ1の対象となるPSA塔はPSA塔2bであり、ステップ2、3の対象となるPSA塔はPSA塔2であり、ステップ4の対象となるPSA塔はPSA塔2aである。
【0041】
そして、第3サイクルにおいては、ステップ1の対象となるPSA塔はPSA塔2aであり、ステップ2、3の対象となるPSA塔はPSA塔2bであり、ステップ4の対象となるPSA塔はPSA塔2である。
【0042】
第3サイクルが終了すると、第1サイクルの動作に戻る。
【0043】
次に、二酸化炭素33.5%を含むガスに、本発明の第1の実施例を適用した場合の計算結果を以下に述べる。ただし、PSA塔に充填した二酸化炭素吸着剤には分子ふるい炭を想定し、飽和吸着量やラングミュア定数、物質移動係数をそれぞれ設定し計算した。
【0044】
図2は、PSA塔に流入および流出するガスおよびPSA塔中央のガスの二酸化炭素濃度の時間変化を示すグラフである。図2の濃い線は流出ガスを示し、薄い線は流入ガスを示す。そして、点線は、PSA塔中央部における二酸化炭素濃度を示す。図2の縦軸はガスの二酸化炭素モル分率を示し、横軸は時間(min)を示す。また、図3は、PSA塔の上側と中央の吸着剤に吸着している二酸化炭素の量の時間変化を示し、実線は塔上側、点線は塔中央における変化を示す。そして、図3の縦軸は二酸化炭素の吸着量を示し、横軸は時間(min)を示す。
【0045】
まず、上記ステップ1工程で、二酸化炭素33.5%を含むガスを圧力2MPaでPSA塔2に6分間導入する。6分間は二酸化炭素が破過しない時間として設定した。図2に示すとおり、流出ガス中の二酸化炭素濃度はほぼ0である。また、図3に示すとおり、PSA塔2の上側では二酸化炭素の吸着量は飽和に近づいているが、PSA塔2の中央ではまだ上側の半分程度の吸着量となっている。
【0046】
次に、ステップ2工程で、PSA塔2a内を0.1MPaに減圧するとともに、ステップ1工程で二酸化炭素を除いたガスの一部を反対側の弁3lよりPSA塔2a内に10分間導入する。
【0047】
すると、吸着剤に吸着していた二酸化炭素が脱着し、PSA塔2aから流出する。このときの二酸化炭素濃度の変化は、図2に示すように、最大70%近くまで上昇した後、徐々に低下していく。また、図3に示すように、ステップ2の終了直前には、二酸化炭素の吸着量はほぼ0となり、二酸化炭素が完全に脱着される。
【0048】
次に、ステップ3工程で、ステップ2でPSA塔2aから流出したガスを、超音速ノズル5に送る。超音速ノズル5でガスを加速するには、超音速ノズル5の入口と出口に圧力差を設ける必要がある。また、PSA塔2aから流出するガスの二酸化炭素濃度も時間により大きく変化するため、PSA塔2aから超音速ノズル5に至る配管4の途中に、図5に示すように、バッファタンク6と圧縮機7を設け、二酸化炭素濃度を平均化するとともに、圧力を2MPaに昇圧することも可能である。ステップ2でPSA塔2aから流出したガスの二酸化炭素濃度の平均値は27.8%となる。
【0049】
超音速ノズル5は、初め流路断面積が減少していき、途中にスロートと呼ばれる流路断面積の最小部を経由して、再び流路断面積が増加するような構造を持つ。超音速ノズル5を流れるガスは、初め亜音速の状態では流路断面積の減少と共に流速が増加し、スロート部でちょうど音速に等しい流速となる。さらに今度は流路断面積の増加と共に流速が増し、超音速状態となる。
【0050】
ガスの流速と音速の比はマッハ数Mと呼ばれ、M<1の状態は亜音速、M>1の状態は超音速となる。ガスの圧力や温度は、ガスの流速すなわちマッハ数Mの増加と共に低下する。
【0051】
図4は、断熱で、かつガスの粘性が無視でき、かつガス成分の凝縮が無いものとした場合のマッハ数と、温度、圧力および流路断面積の関係を示す図である。図4に示されるように、ガスが音速を超えて超音速状態になると、温度および圧力は大きく低下する。
【0052】
超音速ノズル5内の流れに等エントロピー流れを仮定した場合、圧力2MPa、温度300Kのガスを、超音速ノズル5でマッハ数2.6まで加速すると、圧力は0.1MPa、温度は130K程度まで低下する。二酸化炭素の凝縮温度は0.1MPaで194Kのため、ガス中の二酸化炭素は凝縮する。
【0053】
超音速ノズル5内には案内羽11によって旋回流を発生させる機構も設けられており、凝縮した二酸化炭素は遠心力によって超音速ノズル5内の周囲に集まり、中心付近では二酸化炭素の濃度が低下する。
【0054】
そこで、超音速ノズル5の下流側でガス流路を中心と周囲に分けると、周囲の凝縮した二酸化炭素と二酸化炭素濃度の低いガスに分離する。超音速ノズル5の二酸化炭素の分離効率はノズルの構造に大きく依存するため、本計算では二酸化炭素の80%が分離でき、20%がガス中に残ると仮定する。
【0055】
そうすると、超音速ノズル5で二酸化炭素を分離した後のガスの二酸化炭素濃度は5.6%となる。このガスを、次のステップ4工程で二酸化炭素を脱着した後のPSA塔2aに流入させる。
【0056】
超音速ノズル5で二酸化炭素を分離した後のガスは、図5に示すように、バッファタンク6aと圧縮機7aを介して2MPaの圧力でPSA塔2aに流入させることも可能である。PSA塔2a内では、ガス中の二酸化炭素が吸着され、二酸化炭素濃度がほぼ0となったガスが流出する。
【0057】
二酸化炭素の濃度が5.6%と低いので、図3に示すように、全てのガスの処理が終わっても二酸化炭素の吸着量は、ステップ1工程で吸着する量の半分程度のとどまっており、まだ二酸化炭素を吸着することが可能である。そこで、ステップ4工程の次に、二酸化炭素を脱着させずに、引き続きステップ1工程へと続けることができる。
【0058】
以上のように、本発明の一実施例では、第1のPSA塔により、混合ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化ガスを除去したガスの一部を用いて第2のPSA塔に吸着した二酸化炭素を排出し、超音速ノズルにより、二酸化炭素を除去する。超音速ノズルでは完全には二酸化炭素を除去できないため、残留したガスを超音速ノズルから第3のPSA塔に供給し、二酸化炭素を吸着させる。そして、第3のPSA塔に二酸化炭素を含むガスを新たに供給して吸着させ、同様な動作により、二酸化炭素の吸着、脱着を行う構成となっている。
【0059】
したがって、本願発明によれば、特許文献1や特許文献2に記載の技術のように、処理後のガスを還流させることなく二酸化炭素を分離するため、PSA塔でのガスの処理量が増大する事がなく、PSA塔の装置規模を小さくする事ができる。
【0060】
また、二酸化炭素を除去した後のガスでは、二酸化炭素濃度をほぼ0にすることができるため、二酸化炭素を分離する目的の他に、例えば石油や天然ガスなどの化石燃料から改質反応とシフト反応を用いて二酸化炭素と水素の混合ガスを製造し、その後に二酸化炭素を分離して水素を製造する方法にも本発明を適用することができる。
【0061】
さらに、本発明は、二酸化炭素を分離するのに、吸収液を用いた化学吸収法や物理吸収法に比べてエネルギーやコストを小さくすることができる。
【0062】
なお、上述した例は、PSA塔を3塔用いる例であるが、PSA塔は1塔でも、本発明は適用可能である。つまり、1つのPSA塔に火力発電所等からの混合ガスを供給して、二酸化炭素を吸着させた後、減圧して、二酸化炭素を含むガスを超音速ノズル5に供給し、二酸化炭素を分離して、外部タンクに供給する。そして、分離後のガスを超音速ノズル5から上記1つのPSA塔に供給し、二酸化炭素を吸着させる。そして、次のサイクルで、上記と同様にして、火力発電所等からの混合ガスを同一の1つのPSA塔に供給する。このような構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・ガス配管、 2、2a、2a・・・圧力スイング吸着(PSA)塔、 3a〜3o・・・切り替え弁 4・・・ガス配管、 5・・・超音速ノズル、 6、6a・・・バッファタンク、 7、7a・・・圧縮機、 8・・・タンク、 9・・・目的設備、 10・・・コントローラ(シーケンサ)、 11・・・案内羽 20〜22・・・二酸化炭素吸着剤 23・・・スロート、 24・・・芯、 25・・・分離管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素混合ガスを二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔に流通させて二酸化炭素吸着剤に吸着させて、上記混合ガスから二酸化炭素を除去する第1ステップと、
上記二酸化炭素吸着剤に吸着された二酸化炭素を上記吸着塔を減圧することにより脱着処理する第2ステップと、
上記吸着塔の二酸化炭素吸着剤を二酸化炭素脱着処理して得られたガスを超音速ノズルに供給し、断熱膨張冷却を行い、二酸化炭素の分離処理を行う第3ステップと、
上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第4のステップと、
を備え、二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔で二酸化炭素の吸着及び脱着を繰り返しながら、上記超音速ノズルで二酸化炭素を分離し、二酸化炭素混合ガスから二酸化炭素を分離回収することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素分離方法において、
上記第3ステップにおける上記超音速ノズルは、超音速ノズルによりガス流を旋回させて凝縮した二酸化炭素をノズルの外周に集めて分離することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素分離方法において、
上記超音速ノズルには、ガス流を旋回させるための案内羽を有し、旋回流によってノズル周囲に集められた凝縮した二酸化炭素を排出することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項4】
請求項2に記載の二酸化炭素分離方法において、
上記第3ステップの二酸化炭素脱着処理して得られたガスを一時的にバッファタンクに貯留し、このバッファタンクから送られるガスを圧縮機により圧縮して上記超音速ノズルに供給することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項5】
請求項1に記載の二酸化炭素分離方法において、
上記吸着塔は、第1の吸着塔と、第2の吸着塔と、第3の吸着塔とを有し、
上記第1のステップで、上記第1の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第2の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第3の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第1のサイクルを実行し、
続いて、上記第1のステップで、上記第3の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第1の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第2の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第2のサイクルを実行し、
続いて、上記第1のステップで、上記第2の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第3の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第1の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第3のサイクルを実行し、
その後、上記第1のサイクルに戻り、第2、第3のサイクルを実行することを特徴とする二酸化炭素分離方法。
【請求項6】
二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔と、
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離する処理を行う超音速ノズルと、
上記吸着塔と上記超音速ノズルとを接続する配管と、
上記吸着塔及び上記超音速ノズルへのガスの供給及び排出を行うため、上記配管に接続される複数の弁と、
上記複数の弁及び上記超音速ノズルの動作を制御するコントローラを備え、
上記コントローラは、上記複数の弁の開閉動作を制御して、二酸化炭素吸着剤を有する吸着塔で二酸化炭素の吸着及び脱着を繰り返しながら、上記超音速ノズルで二酸化炭素を分離し、二酸化炭素混合ガスから二酸化炭素を分離回収することを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素分離装置において、
上記超音速ノズルは、超音速ノズルによりガス流を旋回させて凝縮した二酸化炭素をノズルの外周に集めて分離することを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項8】
請求項7に記載の二酸化炭素分離装置において、
上記超音速ノズルには、ス流を旋回させるための案内羽を有し、旋回流によってノズル周囲に集められた凝縮した二酸化炭素を排出することを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項9】
請求項7に記載の二酸化炭素分離装置において、
上記第3ステップの二酸化炭素脱着処理して得られたガスを一時的に潮流貯留するバッファタンクと、このバッファタンクから送られるガスを圧縮して上記超音速ノズルに供給する圧縮機とを備えることを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項10】
請求項6に記載の二酸化炭素分離装置において、
上記コントローラは、二酸化炭素混合ガスを吸着塔に流通させて二酸化炭素吸着剤に吸着させ、上記混合ガスから二酸化炭素を除去する第1ステップと、上記二酸化炭素吸着剤に吸着された二酸化炭素を上記吸着塔を減圧することにより脱着処理する第2ステップと、上記吸着塔の二酸化炭素吸着剤を二酸化炭素脱着処理して得られたガスを超音速ノズルに供給し、断熱膨張冷却を行い、二酸化炭素の分離処理を行う第3ステップとを実行させることを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項11】
請求項10に記載二酸化炭素分離装置において、
上記吸着塔は、第1の吸着塔と、第2の吸着塔と、第3の吸着塔とを有し、
上記コントローラは、
上記第1のステップで、上記第1の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第2の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第3の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第1のサイクルを実行し、
続いて、上記第1のステップで、上記第3の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第1の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第2の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第2のサイクルを実行し、
続いて、上記第1のステップで、上記第2の吸着塔の二酸化炭素吸着剤に二酸化炭素を吸着させ、上記第2のステップで、上記第3の吸着塔を減圧することにより脱着処理し、上記第4のステップで、上記超音速ノズルにより二酸化炭素分離処理を行った残りのガスを上記第1の吸着塔に供給し、二酸化炭素吸着処理する第3のサイクルを実行し、
その後、上記第1のサイクルに戻り、第2、第3のサイクルを実行することを特徴とする二酸化炭素分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10079(P2013−10079A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144778(P2011−144778)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】