説明

二酸化炭素隔離のためのシステム、装置、及び方法

次の工程を含む二酸化炭素隔離プロセスである。第1段階において、金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する。第2段階において、このプロセスは、二酸化炭素を含むガス流を、第1段階からの溶液を用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させる工程を含む。第3段階において、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている反応器に、第2段階からの反応性スラリーを通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、二酸化炭素隔離のためのシステム、装置、および方法に関し、より詳細には、発電所煙道ガスから二酸化炭素を捕捉し、隔離するためのシステムおよび方法(但し、これらに限定しない)に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中への二酸化炭素の放出を減らし、地球温暖化の影響をより小さくすることに注目が集まっている。二酸化炭素の吸収は自然界にも存在し、主な自然吸収は海洋で起きている。植物も効果的な二酸化炭素吸収体であり、光合成を用いて炭素をバイオマスに組み入れることで大気中から炭素を除去する。しかし、より多くのエネルギーを求める現代の社会情勢において生じる莫大な量の二酸化炭素に対し、このような自然吸収では有効に対応しきれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有害な二酸化炭素ガスの主な発生源は、大規模な化石燃料発電所であり、黒炭を燃料とした場合、一般に、発電量1メガワット時(MWh)当たり、平均約0.8から1トンのガスを排出する。例えば、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州ハンターバレーにある、年間2千万MWhを発電する、2,640MWのベイズウォーター(Bayswater)などの大規模発電所では、1,800万トンの二酸化炭素も排出していると考えられる。このような発電所から排出される二酸化炭素の、少なくとも一部を捕捉し、永久に隔離できるシステムおよび方法があるならば有益であろう。また独立して監査される、ガスの廃棄システムおよび方法が提示されれば有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、本発明は、(i)第1段階において、金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程と、(ii)第2段階において、二酸化炭素を含むガス流を、(i)からの溶液を用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させる工程と、(iii)第3段階において、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている反応器に、(ii)からの反応性スラリーを通す工程とを含む、二酸化炭素隔離プロセスを提示する。
【0005】
“二酸化炭素を含むガス流”の語が、二酸化炭素だけを含んでいる流れを意味するのではなく、他の排ガス類も含むことに注目すべきである。
【0006】
工程(i)の、ある実施の形態において、加圧した液体アンモニアは、液体アンモニアの一部が蒸気となって噴出するような方法で金属ケイ酸塩スラリーに投入され、アンモニア/金属ケイ酸塩スラリーを生成する。
【0007】
工程(ii)の、ある実施の形態は、二酸化炭素含有ガス流をスラリーのスプレーに曝露する工程を含むものである。
【0008】
工程(iii)の、ある実施の形態は、反応器の圧力および温度の少なくとも一方を上昇させて、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進する工程を含むものである。
【0009】
ある実施の形態において、反応器はパイプラインである。パイプラインは、望ましくは複数の流路を含んでいる。ある実施の形態において、反応は流路のある1本の長さに沿って起こる。別の流路は、金属ケイ酸塩スラリーを第1段階に供給するために用いられる。
【0010】
ある実施の形態において、この方法は、パイプラインの前、および/または後で、反応性スラリーと金属ケイ酸塩スラリーとの間で、圧力および熱の少なくとも一方を交換する工程を更に含んでいる。
【0011】
ある実施の形態において、反応器は、使用地下に設置されたチャンバである。望ましくは、チャンバは、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応の促進に十分な圧力となるような深さに設置されている。ある実施の形態において、その深さは、静水頭のみで十分な圧力となるような、十分な深さである。
【0012】
ある実施の形態において、本方法は、反応段階(iii)で生じるアンモニアを回収し、これを第1段階にリサイクルする工程も含んでいる。ある実施の形態では、アンモニア回収工程を行う前に、最終生成物にアルカリを加える。アルカリは、二酸化炭素を含む煙道ガス流を、濾過または別の方法で浄化する際に得られる、発電所フライアッシュまたは粉砕化ボトムアッシュである。アンモニアは、液体および気体の両方として回収され、液体は、第1段階にリサイクルするため一部を蒸気に変換し、気体は、抽出、凝縮し、第1段階に供給する前に金属ケイ酸塩と混合する。
【0013】
ある実施の形態において、アンモニア回収工程は、周囲温度において液状のアンモニアを回収し易くするために加圧された回収容器内で行われる。ある実施の形態において、回収容器は、使用時、液状のアンモニアを回収できる圧力となるような、十分な深さに設置されている。ある実施の形態において、その深さは、静水頭のみで十分な圧力となるような、十分な深さである。
【0014】
ある実施の形態において、本プロセスは、金属ケイ酸塩岩石を粉砕して金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程を更に含む。金属ケイ酸塩スラリーは、30から60質量%の微粉砕固体を含んでいる。ある実施の形態において、金属ケイ酸塩は、マグネシウムを多く含むケイ酸塩(「高マグネシウム含量ケイ酸塩」ともいう)鉱物である。高マグネシウム含量ケイ酸塩は、蛇紋岩および/またはカンラン石および/または輝石を多く含む鉱物から成るものである。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、ガス流から二酸化炭素を隔離するためのシステムを提示する。このシステムは、(a)ガス流から二酸化炭素を除き、分散させた金属ケイ酸塩を含むアンモニア化スラリーに二酸化炭素を吸収させるための第1装置と、(b)(a)からスラリーを受けるための反応器とを含むものである。反応器は、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている。
【0016】
ある実施の形態において、第1装置は、(a)金属ケイ酸塩スラリーを冷却し、(b)冷却したスラリーをアンモニアと混合してアンモニア化スラリーを生成する、よう配置した、アンモニア吸収冷却装置を含むものである。ある実施の形態において、工程(a)は、工程(b)の前に行われる。
【0017】
反応器は、第1の態様で述べたようなパイプラインを含むものである。別の実施の形態では、反応器は、第1の態様で述べたようなチャンバを含むものである。金属ケイ酸塩は、第1の態様で述べたような高マグネシウム含量ケイ酸塩を含むものである。ある実施の形態において、本システムは、金属炭酸塩生成物中に含まれるアンモニアを回収するよう配置された回収容器を含んでいる。
【0018】
本発明の第3の態様に従って、パイプライン中に、炭素隔離プロセスの第1装置で使用するための金属ケイ酸塩スラリーを運搬する第1流路と、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリー中に吸収された二酸化炭素を含んでいる反応性スラリーを第1装置から運搬する第2流路とを設置する。第2流路は、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている。
【0019】
本発明の第4の態様に従って、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリー中に吸収された二酸化炭素を含むスラリーを反応させて、金属炭酸塩を生成する方法を提示する。この方法は、チャンバ内の圧力が、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するために十分な圧力となるような深さの地下に、チャンバを設置する工程と、スラリーが反応できるよう十分な期間に亘って、スラリーをチャンバに供給する工程とを含んでいる。
【0020】
ある実施の形態において、チャンバに供給されるスラリーは、第1の態様で述べたようなプロセスで生成する反応性スラリーである。ある実施の形態において、その深さは、静水頭のみで十分な圧力となるような、十分な深さである。
【0021】
ある実施の形態において、本方法は、チャンバに供給されるスラリーを用いて、チャンバの生成物から熱を交換する工程を更に含む。ある実施の形態において、熱は、チャンバ生成物およびスラリーの流路中、または流路付近に配置した、1つ以上の熱交換器ユニット中で交換される。
【0022】
第5の態様に従って、第2の態様による炭素隔離システムを利用した発電所を提示する。このシステムは、発電所より排出される煙道ガスから二酸化炭素を隔離するよう配置されている。
【0023】
第6の態様に従って、金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、二酸化炭素隔離プロセスで使用するためのアンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する、アンモニア吸収プロセスにおいて、(i)アンモニアを吸収プロセスに通す前に、加圧した液状のアンモニアを蒸発器段階で膨張させ、この段階において冷却効果を生じる工程と、(ii)水/金属ケイ酸塩スラリーをアンモニア吸収器プロセスでアンモニアと混合する前に、前記水/金属ケイ酸塩スラリーを蒸発器段階に通して、これを冷却する工程と、を提示する。
【0024】
ある実施の形態において、本プロセスは、アンモニア化スラリーをスクラビング段階に供給する工程を更に含む。ここでは、二酸化炭素を含むガス流を、冷却したアンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させる。
【0025】
ある実施の形態において、本プロセスは、スクラビングチャンバを通って再循環される反応性スラリーを、再循環させる前に、蒸発器段階に通す工程を更に含む。蒸発器段階は、蒸発器チャンバ内で行う。スクラビング段階は、第2の態様に述べたような第1装置内で行う。
【0026】
本発明の第7の態様に従って、第6の態様に述べたようなプロセスを行うよう配置されたアンモニア吸収チャンバを提示する。
【0027】
本発明の第8の態様に従って、金属ケイ酸塩を、アンモニアとアンモニウム塩とを含む溶液と混合することにより、アンモニアを金属ケイ酸塩と反応させて、標的金属を溶液中に溶解する工程を含む、金属ケイ酸塩から標的金属を抽出する方法を提示する。
【0028】
ある実施の形態において、本方法は、金属ケイ酸塩を溶液と混合する前に、金属ケイ酸塩を粉砕し、これをスラリーとする工程を更に含む。
【0029】
ある実施の形態において、混合は、アンモニア吸収チャンバ内で行う。
【0030】
ある実施の形態において、金属ケイ酸塩は、高マグネシウム含量ケイ酸塩である。
【0031】
ある実施の形態において、高マグネシウム含量ケイ酸塩は、蛇紋岩および/またはカンラン石および/または輝石ケイ酸塩金属である。
【0032】
ある実施の形態において、溶液中のアンモニウムは、炭酸アンモニウムを含んでいる。
【0033】
ある実施の形態において、標的金属は、溶液中に溶解した後、金属炭酸塩として沈殿させて、回収のため取り出す。
【0034】
ある実施の形態において、標的金属は、マグネシウム、鉄、銅、およびニッケルの1つ以上である。金属ケイ酸塩中の主要金属はマグネシウムを含むものであっても良い。
【0035】
第9の態様において、本発明は、(i)第1段階において、金属ケイ酸塩岩石の冷却したスラリーをアンモニアと混合して、冷却したアンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程と、(ii)第2段階において、二酸化炭素を含むガス流を(i)からの冷溶液を用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させる工程と、(iii)第3段階において、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている反応器に、(ii)からの反応性スラリーを通す工程とを含む、二酸化炭素隔離プロセスを提示する。
【0036】
例として、添付図を参照しながら本発明の実施の形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態による二酸化炭素隔離システムを示す概略図である。
【図1A】更に詳細に、残留アンモニアスクラバ、アンモニア吸収器、及びCO2吸収器を示した、本発明の実施の形態による二酸化炭素隔離システムを示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態による、図1のシステムを使用した、二酸化炭素隔離方法を示すプロセス流れ図である。
【図3】本発明の実施の形態による、図1の二酸化炭素隔離システムで使用される、圧力交換装置を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態による、図1の二酸化炭素隔離システムで使用される、熱交換装置を示す概略図である。
【図5】本発明の別の実施の形態による二酸化炭素隔離システムを示す概略図である。
【図5A】更に詳細に、残留アンモニアスクラバ、アンモニア吸収器、及びCO2吸収器を示した、本発明の別の実施の形態による二酸化炭素隔離システムを示す概略図である。
【図6】本発明のさらに別の実施の形態による二酸化炭素隔離システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の記述において、本発明の実施の形態は、化石燃料火力発電所から排出される煙道ガス中に含まれる二酸化炭素を捕捉および隔離するための、システム、装置、および方法について述べる。しかし、このシステム、装置、および方法は、どのような排出源からの二酸化炭素の永久的な隔離にも同様に利用でき、本件に示されている特定の配置に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0039】
図1に、本発明の実施の形態による、発電所から排出される二酸化炭素を含むガス供給流から二酸化炭素(CO2)を隔離するプロセスを行うためのシステム10の流れ図を示す。更に図2において、本システムは、(i)第1段階において、冷却した粉砕金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程と、(ii)第2段階において、二酸化炭素を含むガス流を、アンモニア/水/金属ケイ酸塩溶液を用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性溶液中に吸収させる工程と、(iii)二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩と副生物のシリカを生成するよう制御されている反応器に、反応性溶液を通す工程(第3段階)とから成る、プロセス100を行うよう配置されている。
【0040】
ある実施の形態において、粉砕した金属ケイ酸塩岩石のスラリーは、アンモニアを蒸発させている容器内にスラリーを循環させることで冷却する。ある実施の形態では、段階(ii)の前に別の段階を行う。即ち、向流の段階的な方法で容器中において煙道ガスを接触させて、煙道ガス中の残留アンモニアをスクラビングし、最終的に大気中へ放出できる程度までその濃度を下げる。
【0041】
図示した実施の形態において、3つの段階が連続的に行われ、最初の2つの段階は、2つの別個の反応チャンバ、即ち、吸収チャンバ28とスクラビングチャンバ30の形をした、第1装置20内で行われ、最後の段階は、例えば、採鉱場と発電所を繋ぐパイプライン52の形をした反応器内で起こる。本明細書の後の段落で詳しく述べるように、反応器は、あるいは、炭酸塩化反応が起こり易い条件となるよう、十分な深さに掘削した地下チャンバ(図5参照)の形であっても良い。
【0042】
本発明の実施の形態で用いられる二酸化炭素隔離プロセスは、鉱物炭酸塩化に基づいている。鉱物炭酸塩化は、金属酸化物を含む材料と二酸化炭素との反応である。金属酸化物含有材料とは、例えばアルカリ土類金属である。都合の良いことに、プロセス100は、特に純粋な二酸化炭素源を必要としない。鉱物炭酸塩化において、二酸化炭素は金属酸化物含有材料と反応して不溶性炭酸塩を生じる。即ち、以下の通りである。
[化1]
MO+CO2→MCO3+熱 ・・・(1)
【0043】
これは発熱反応であり、高温、一般に200℃以上ではより早く進む。ある特定の化学物質が、それ自体を消費することなく、この反応の進行速度を高めるよう働く、即ち、触媒として働くことがある。本発明者は、触媒としてアンモニアを用いると、炭素捕捉として知られるガス混合物からの二酸化炭素の分離と、その永久的隔離の両方を、1つの統合的なプロセスを用いて行えるという特徴的な利点があることを発見した。
【0044】
この反応から生じる不溶性炭酸塩の詳しい性質は、金属酸化物を含む材料によって変わる。適当な材料は、蛇紋岩(Mg3Si25(OH)4)、カンラン石(Mg2SiO4)、斜方輝石(MgSiO3)、滑石(Mg3Si410(OH)2)、珪灰石(CaSiO3)などの鉱物質を含む、アルカリ土類金属を多く含む天然由来のケイ酸塩岩石である。実際には、マグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)の一部が元素鉄(Fe)で置き換えられている。他の適当な材料としては、製鉄スラグ、微粉炭燃焼ボイラの灰(フライアッシュ及びボトムアッシュの両方)、再生紙製造残渣の燃焼灰(脱インク灰)、セメントなどのアルカリ性工業残渣が挙げられる。この反応で発生する熱量は、下記の3種類の天然ケイ酸塩類(発熱量は、CO2単位モル当たり、標準状態(25℃、0.1MPa)で示されている)の場合から分かるように、特定の金属に応じ、また金属酸化物を含む鉱物に応じて変わるであろう。
【0045】
カンラン石:
[化2]
Mg2SiO4+2CO2→2MgCO3+SiO2+89kJmol-1CO2 ・・・(2a)
【0046】
蛇紋岩:
[化3]
Mg3Si25(OH)4+3CO2
→3MgCO3+2SiO2+2H2O+64kJmol-1CO2 ・・・(2b)
【0047】
珪灰石:
[化4]
CaSiO3+CO2→CaCO3+SiO2+90kJmol-1CO2 ・・・(2c)
【0048】
望ましいケイ酸塩岩石(大陸塊におけるその大きな存在量のため)は、鉱物蛇紋岩(Mg3Si25(OH)4)を含むものである。これらの鉱物には全て前処理を行い、二酸化炭素と直接触れる岩石の表面積を大きくする。ある実施の形態において、この前処理には、鉱物の粉砕(crushing、grinding、および/または milling)、更に、いくつかの機械的分級及び分離が含まれる。典型的に、これらの鉱物類は、ボールミルまたはそれと同様のもので湿式粉砕し、鉱物質の90%が40μm以下の、微粉砕金属ケイ酸塩スラリー(以後、“ケイ酸塩スラリー”と呼ぶ)36とする。しかし、前処理の程度は、本プロセスで使用する鉱物の入手源や種類に応じて変わる。
【0049】
図1を具体的に参照しながら、二酸化炭素隔離システム10について詳しく述べる。システム10は、発電所(図示せず)で発生した後に排出される、未処理の煙道ガス混合物供給流32を受け入れる。ここに示す実施の形態では、未処理煙道ガス混合物32をフィルタ34に通して粒子状物質を除去する。適当なフィルタとしては、繊維フィルタ、電気集塵装置などが挙げられる。未処理煙道ガス混合物32を浄化すると、下流のガス処理設備のメンテナンス費用と、最終的に大気中に放出される煙道ガス中の微粒子の濃度の両方を下げるのに役立つ。しかし、プロセス上の理由で好ましくはあっても、未処理煙道ガス混合物32をスクラビングチャンバ30に導入する前の微粒子の除去は必須ではないことは理解されよう。
【0050】
システム10内での熱回収を大きくするため、濾過した煙道ガス混合物を、次に、熱交換器34の形をした熱交換装置に通し、濾過煙道ガス混合物の顕熱(一般に、約135℃の温度で放射される)を、第1装置20のスクラビングチャンバ30から排出される冷たいガスと交換して、濾過煙道ガス混合物をその水蒸気飽和温度(即ち、約50℃まで)まで冷やす。適当な熱交換器としては、例えば、発電所で空気予熱に用いられている Ljungstromロータリー型などの、伝熱式熱交換器が挙げられる。
【0051】
先の段落で言及したように、二酸化炭素隔離システム10は、ある発生源からのケイ酸塩スラリー36を受け入れる。ここに示す実施の形態によれば、ケイ酸塩スラリー発生源は、ケイ酸塩岩石が産出される採鉱場に、またはその付近に設置されている。先に述べたように、採鉱場から産出されたケイ酸塩鉱物を細かく粉砕し(望ましくは、ボールミルまたはそれと同様のものを用いた湿式粉砕によりスラリーとする)、鉱物質の90%を40μm以下とする。ケイ酸塩スラリー36を、次に、第1圧力交換装置38に通す。電力消費を小さくするため、最終的な金属炭酸塩/シリカ生成物(以後、“最終生成物”と呼ぶ)と圧力交換して、ケイ酸塩スラリー36の圧力を、一般に、約10Bar(約1.0×106Pa)に上げる。更に、システム10からの熱損失を小さくするため(そして、最終生成物が、その最終永久貯蔵場に置かれる前に適当な温度まで冷えるよう)、ケイ酸塩スラリー36を、向流になるよう第2熱交換器40に通して、最終生成物に含まれている残りの顕熱を吸収させる。第2圧力交換装置42で、ケイ酸塩スラリー36の圧力を更に、今度はかなり高く(一般に、100Bar(1.0×107Pa))まで上げる。この圧力の再上昇も圧力交換で行われるが、今回は、アンモニアガス回収容器54で処理する(後の段落で詳しく述べるように)前の炭酸塩/シリカスラリーを用いる。
【0052】
パイプライン44は、第1装置20と採鉱場とを繋いでおり、隔離プロセス100で使用するケイ酸塩スラリー36の輸送に用いられる。後の段落でより詳しく述べるように、パイプライン44中の別の経路52(この実施の形態において)は、その中で金属炭酸塩化反応の大部分が起こる、制御された反応器としても働く。発電所側で、またはその付近で、ケイ酸塩スラリー36を、蒸発器容器82に直接供給する前に、向流になるよう第3熱交換器46と第3圧力交換装置48に通し、第1装置20から放出される反応性スラリーと交換を行って、ケイ酸塩スラリー36を冷却し、圧力を下げる。蒸発器容器82では、膨張弁29を通って、今や非常に低温となったアンモニアが、ケイ酸塩スラリーを氷点付近まで冷却する。ケイ酸塩スラリー36が実際に凍りついてしまわないよう、このスラリーの一部を蒸発器容器中に循環させる。含まれていた二酸化炭素の大半が除かれた、浄化され、冷却された煙道ガスが下から上に通過するように、冷却したケイ酸塩スラリーを、容器(残留アンモニアスクラバ)中を下へ向かって通過させる。ここには6段ほどの向流接触段階があり、このシステムから出る、浄化されて殆ど二酸化炭素を含まない煙道ガスのアンモニア含量は、1ppm以下となる。
【0053】
下方からの煙道ガスに含まれていたアンモニアを、今や加えられたケイ酸塩スラリーは、アンモニア吸収器28に入る。ここで、アンモニア回収容器54で回収したアンモニアを全て溶液に吸収させて、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する。
【0054】
アンモニアは、本プロセスのアンモニアガス回収段階(後の段落で述べる)で回収され、損失を補うために必要な量(少量である)だけを追加する。回収された液体アンモニア(少量の水を含んでいる)を、圧力をかけてパイプライン60を通って吸収チャンバ28へ供給する。望ましい実施の形態では、吸収チャンバ28へ加える前に、加圧した液体アンモニアを減圧弁29に通してその圧力を大気圧付近まで下げ、この圧力で容器(蒸発器チャンバ82)内へ放出する。蒸発器チャンバ82へ入る際に、アンモニアの一部は噴出して蒸気となると考えられる。アンモニアは、気化の際に相当量の潜熱を吸収し、蒸発器チャンバ82内の管群を通って循環しているスラリーから潜熱が奪われて、スラリーは氷点付近まで冷却される。図1に示す実施の形態において、アンモニアの気化で吸収される熱は、残留アンモニアスクラビングチャンバで残留二酸化炭素スクラビング媒体として用いられるケイ酸塩スラリーから奪われる。これにより、冷却され、濾過された煙道ガスと最後に接触するスクラビング媒体が、最も冷却されることになる。
【0055】
気化したアンモニアは、蒸発器チャンバ82からアンモニア吸収チャンバ28へ直接流れ込み、ここで、激しく吹き付けられる循環ケイ酸塩スラリー36に速やかに吸収された後、数段階の残留二酸化炭素スクラバを通って下へ流れ、二酸化炭素スクラビングチャンバ30の循環スクラビング媒体として用いられる、アンモニア/水/金属スラリーを生成する。アンモニアがケイ酸塩スラリー36中に吸収される際には相当量の熱が放出され、水にアンモニアガスが溶けた溶液の熱となる。この熱の大部分は、スラリーが熱交換器84を流れる間に除かれる。図示したように、熱交換器84や冷却塔も、ケイ酸塩スラリーへのアンモニアの吸収から生じる余分な低度の熱の多くを取り除く。
【0056】
熱交換器34を通って冷やされた濾過煙道ガス混合物はスクラビングチャンバ30に入り、ここでガス混合物は、激しく吹き付けられる吸収性スラリー中を上に向かって通過する。吸収性スラリーは、アンモニア吸収チャンバ28から吸引され、スクラビングチャンバ30のヘッドスペース内に放出される。二酸化炭素がアンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーに吸収されると、二酸化炭素とアンモニアが溶液中で一連の炭酸アンモニウム化合物を生成するにつれて、相当量の熱が更に放出される。吸収チャンバ28に十分なアンモニアを供給して二酸化炭素の90%を捕捉すると、通常の炭酸塩((NH42CO3)やカルバミン酸塩(NH2COONH4)よりも、重炭酸塩(NH4HCO3)が生成し易くなる。この系中には、少量のカルバミン酸塩の他に、少量の尿素(CO(NH22)も存在すると考えられる。システム10は、アンモニアの損失(スリップ:slip)(最終的な煙道ガス中に含まれて大気中へ失われる)が基本的にないような方法で、最も冷たいスラリーが除去(二酸化炭素の)煙道ガス混合物に最後に接触するよう構成されている。図1に示す実施の形態において、スクラビングチャンバ30は、吸収チャンバ28とは別に構築されたものとして示されている。適当なスクラビングチャンバは、煙道ガス脱硫に用いられるものと一般に同じタイプである。
【0057】
先に述べたように、濾過煙道ガス混合物の顕熱は第1熱交換器34で除かれ、スクラビングチャンバ30に入る前に約50℃まで冷やされる。スクラビングチャンバ30から出る清浄な煙道ガスは一般に、約95体積%の窒素と不活性ガスを含んでいる。残りは、少量の酸素と約1.5%の二酸化炭素から成り、この二酸化炭素の量は、スクラビングチャンバ30内で約90%が除かれた後の残量である。
【0058】
この2段階プロセスで得られる生成物は、それ自体が主として炭酸アンモニウムの溶液である、水相中の金属ケイ酸塩スラリーの形をした反応性溶液である。反応性アンモニア化金属ケイ酸塩スラリー(以後、“反応性スラリー”と呼ぶ)の流れを、スクラビングチャンバ30から排出し、パイプライン44の戻り経路52を経由して採鉱場へ送る。パイプライン44は、制御された反応器としても有利に働く。採鉱場への途上、発電所またはその付近において、反応性スラリーを第3圧力交換装置48で加圧して、約120Bar(約1.2×107Pa)(アンモニアの臨界圧力以上)の高圧とし、更に、当該圧力での水の沸点近くまで加熱する。加熱は、まず熱交換装置46で、採鉱場から到着する流入ケイ酸塩スラリーから熱を移動し、また更に、蒸気54を注入することによって行う。理論によって拘束されるものではないが、発明者は、実施例1を想定したプロセス設計(以下の表を参照のこと)の場合、反応性スラリーの温度を約100℃まで上げるには、毎時約600トンの蒸気が必要であり、温度が225℃ともなれば、炭酸塩化反応は十分な速度に達すると予想している。反応性スラリー中での、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との非常に発熱性の反応から放出される熱は、それ自体で反応性スラリーの温度を約75℃まで(実施例1について設定した仮定条件下で)上げることができ、反応性スラリーが採鉱場付近に、または、他の最終配置場所に到着する頃には、約300℃の最終温度となる。この温度上昇は、戻りパイプライン52の長さに沿って多少の損失があっても得られると考えられるが、このような損失を小さくするため、このパイプライン52の全長を適当な絶縁体(断熱材)で覆っておく。
【0059】
パイプ反応器の戻りパイプライン52内で、反応性スラリー中に存在する二酸化炭素は、全てではないとしてもその殆どが輸送の最初の数時間のうちにケイ酸塩鉱物と反応し、不溶性炭酸塩に変換される。1時間が、このパイプラインの10kmの長さに相当する。しかし実際には、発電所と採鉱場はこの距離よりもずっと離れているため、反応はほぼ完了するまで進み、最初に発電所煙道ガスからスクラビングされた二酸化炭素の、全てではないとしてもその殆どを含む金属炭酸塩生成物が生じる時間は十分にある。発電所から採鉱場/採石場または他の配置場所までのその経路全体で、スラリー中のアンモニア濃度は高く保たれている。
【0060】
先に述べたように、戻りパイプライン52中の最終生成物が採鉱場付近に達したら、アンモニアガス回収容器54に入る前に、これを第2圧力交換装置42に通し、流れの圧力を、120Bar(1.2×107Pa)ほどの高さから、約15から20Bar(約1.5から2.0×106Pa)に下げる。図1に示した温度では、最終生成物がアンモニアガス回収容器54に入る際に、アンモニアの全てと水の一部が蒸気となって噴き出し(水は沸騰し、アンモニアは溶液から追い出される)、その結果、温度は100℃以上も下がる。図1に示すように、熱く、加圧された最終生成物は、その顕熱をアンモニアガス回収容器54の内容物に移す。アンモニアを気体として生成物から除去すると多量の熱エネルギーを吸収するため、この熱の流入によってシステムの効率が上がる。システム10で発生する廃棄物を少なくするため、連続式反応器22へ供給するためのパイプライン44へ入れる前に、採鉱場からのケイ酸塩スラリーを、アンモニアガス回収容器54からの残留蒸気を通している残留アンモニア吸収器56に加えて再循環させる。アンモニアガス回収容器54の頂部から出るガス相の流れは、遊離アンモニアのほぼ全てを含んでおり、これを少量の水蒸気と共に凝縮器58で凝縮して、大部分がアンモニアから成る液相とする。ある実施の形態において、凝縮器58は、乾式(例えば、ラジエータ型)冷却塔、フィンファン(fin fan)冷却塔、あるいは、送風機が求められていないため、発電所で冷却に使われているような自然通風型冷却塔(図示せず)からの循環水で冷却する。この回収された液体アンモニア(吸収チャンバ28で循環スラリーへ注入されるアンモニアの大部分に相当する)は、加圧下(図示されていないが、ポンプを用いて)、地上のアンモニアパイプライン60を通って発電所側へ流れる。
【0061】
最終生成物の炭酸塩スラリー(発電所煙道ガス中に元々含まれていたが、今や炭酸塩として隔離された、ほぼ全ての二酸化炭素を含んでいる)を、アンモニアガス回収容器54の底部から排出する。最終生成物スラリーはアンモニアを含まず、鉱山の空洞や、他の専用の貯蔵場(図示せず)への永久的な配置に適した形態をしている。このような配置場所で、固体は固まって安定し、水相の大部分を透明な上澄みとして放出する。この上澄みは集められ、プロセス中で、例えば、ケイ酸塩スラリー36の調製に再利用されて、パイプライン44を通って発電所側へ戻る。
【0062】
第1装置20に加えたアンモニアの全てが回収されて、地上アンモニアパイプライン60を経てプロセスへ戻る訳ではないことに注意する必要がある。アンモニアの一部は、最終的にアンモニウム塩類(未処理煙道ガス中のSOxとNOxによってそれぞれ、亜硫酸および硫酸アンモニウムと、亜硝酸および硝酸アンモニウム)となる。未処理煙道ガス源が典型的な化石燃料火力発電所から発生した煙道ガスであり、最新式の低NOxバーナーを用いているならば、この反応によるアンモニアの損失は小さいと考えられる。最終炭酸塩生成物スラリー中にこれらがあると、炭酸塩鉱物の最終配置場所の復旧になお役立つ。図1Aは、スクラビングチャンバ30内に設けられた残留アンモニアスクラバを含む、別の実施の形態を示している。
【0063】
この過程で起こるアンモニアの損失を少なくすることが好ましい。ある実施の形態においては、反応したスラリーをアンモニア回収容器54に入れる直前に、反応スラリーに適量の消石灰または適当な他のアルカリを投入し、または他の方法で加えることによってこれを行う。このようなアルカリの原料は、発電所フライアッシュまたは微粉化ボトムアッシュである。原料炭中に石灰石またはドロマイトがあると、この用途になお向いている。ボイラを通る間に、この石灰石やドロマイトの大部分は、アンモニア回収に適したアルカリ類(それぞれ生石灰またはドライム(ドロマイト石灰))に変換される。
【0064】
石炭燃料中の石灰石またはドロマイトの含量がこの用途に不適当である場合(大部分の発電所フライアッシュではそうなりがちである)、適当量の粉砕した石灰石またはドロマイトを発電所ボイラ(図示せず)に投入することができる。この投入は、高温燃焼ガス経路内のガス温度が800から1,000℃の範囲、即ち、これらの鉱物を活性酸化物体(それぞれ、石灰またはドライム)に変換するために十分な温度である場所で行う。例えば、ボイラのエコライザの上流で投入する。地下チャンバ反応器の実施の形態(図5)の場合のように、アンモニア回収容器が発電所の近くにあるならば、発電所フライアッシュを全て最終生成物スラリーに加えて、このプロセスで再利用するためのアンモニアの再生率を上げても良いだろう。この方法では、フライアッシュと、炭素隔離プロセスから生じる最終生成物スラリーの両方をひとつの流れとして扱い、共に処分する。最終生成物中にポゾランの性質(アルカリ類と湿度の存在下で固まり易い)を持つフライアッシュがあることから期待される長所は、最終生成物/フライアッシュ混合物の“固化”を促進して、復旧プロセスに役立つことであろう。
【0065】
図3を参照しながら、前述の圧力交換装置の配置を示す。反応プロセスの終わりに、最終的な炭酸塩を多く含む生成物の圧力を、約120Bar(約1.2×107Pa)から大気圧まで下げなければならない。先に述べたように、これは2段階で行われ、120Bar(1.2×107Pa)から約15Bar(約1.5×106Pa)(アンモニア回収段階の稼働に適した圧力)へ下げた後、15Bar(1.5×106Pa)から大気圧まで下げる。ただ単にバルブを締めて圧力を下げ、この圧力が示しているエネルギーを失わせる代わりに、この圧力が示すエネルギーを、2段階でケイ酸塩スラリーにできるだけ移動させて保存する。図3において、スラリーAは、アンモニア化し、炭酸塩化したケイ酸塩スラリーがパイプライン44を通って発電所から採鉱場側へ流れる間に起こる反応の生成物から成り、一方、スラリーBは、採鉱場からのケイ酸塩スラリーを示している。この2段階の圧力交換の結果、スラリーAの圧力は約120Bar(約1.2×107Pa)から周囲圧力付近まで下がり、一方、スラリーBの圧力は、第1段階(右から左へ進む)で約10Bar(約1.0×106Pa)に、第2段階で約100Bar(約1.0×107Pa)に上昇する。
【0066】
発電所側では別の圧力交換装置も使用する。ここで図3の用語を用いるならば、スラリーAは、採鉱場からパイプラインを経て到着する熱いケイ酸塩スラリーを示し、スラリーBは、スクラビングチャンバ30から排出されるスラリー(即ち、現在、アンモニアと二酸化炭素とを含んでおり、周囲圧力に近いケイ酸塩スラリー)から成る。この段階で圧力交換を行うと、スラリーAの圧力は、その到着時の圧力(120Bar(1.2×107Pa)程度であり、この圧力は、摩擦損失に勝つため、パイプライン44に沿う戦略的な位置(図示せず)に設けた増圧ポンプ場によって保たれている)から、周囲圧力付近まで低下する。この圧力を、可能な限りスラリーBへ移動(交換)することで、このスラリーの圧力を必要な高さ(ここでは、120Bar(1.2×107Pa)を想定)まで上げるために必要なポンピングエネルギーの量を小さくする。この時点でのスラリーAは、良くても120Bar(1.2×107Pa)より低いため、スラリーAとBの圧力交換だけでは、スラリーBの圧力を120Bar(1.2×107Pa)まで上げることはできない。更に、スラリーBの容積はスラリーAよりも大きい。これは、二酸化炭素とアンモニアの含量が非常に高く、また発電所煙道ガスから凝縮により除かれる水の含量が高いためである。ある実施の形態において、追加ポンプの能力は、パイプライン44で必要な圧力までスラリーBの圧力を押し上げ、また、スラリーAとの圧力交換では加圧できない量(比較的少ない)のスラリーBを加圧するよう設定する。この機能のためには、Weir Netherlands b.v.製の Geho pumpなどの、従来の高圧ダイアフラムポンプを用いることができる。このポンピングは、パイプラインの長さに沿って圧力を保つために必要なポンピングエネルギーと共に、全プロセスにつぎ込まれる全ての機械的エネルギーのかなりの割合を占める。その他の適当な圧力交換/ポンプ−タービン装置は、遠心力ポンプおよびラジアル型水力タービンなどである。圧力が比較的高いため、遠心力タイプのポンプは多段バレル型ポンプである。
【0067】
図4を参照しながら、本発明の実施の形態による、熱交換装置40および46の構造を示す。先に論じたように、炭素隔離反応(ケイ酸塩の炭酸塩への変換)の開始と促進には高温が必要である。発熱性であるこれらの反応は、更に熱を生じる。この熱は、これらの反応を最も効率良く進めるために必要な条件を作り出すために利用でき、また利用すべきである。図示されているように、熱交換装置は、内側が“チューブ”、外側が“シェル”を構成する2つの同心パイプから成る、単純なシェルアンドチューブ熱交換器の形をしている。この装置の長所は、熱交換器を、所望の熱移動を行うために必要なだけ長く、必要ならば、数百メートルの長さにできることである。熱交換器40(即ち、採鉱場側の熱交換器)では、熱い最終炭酸塩/シリカ生成物(即ちスラリーA)と、冷たいケイ酸塩スラリー(スラリーB)との間で熱エネルギーを移動する。熱交換器46(即ち、発電所側の熱交換器)では、スラリーAは、採鉱場からの熱いケイ酸塩スラリーであり、スラリーBは、スクラビングチャンバ30から排出されたスラリー(即ち、現在、アンモニアと二酸化炭素とを含んでおり、周囲温度に近い)である。
【0068】
図5に、図1に示したパイプライン反応器とは異なり、反応器として地下チャンバを用いて(地質学的に可能な場所に)、二酸化炭素の隔離を行うための別のシステム200を示す。この実施の形態において、反応器は、中心となる炭酸塩化反応が、静水頭だけで完全に、または部分的に起こる条件(例えば、炭酸塩化反応では120Bar(1.2×107Pa)、反応生成物からのアンモニアガスの回収では20Bar(2.0×106Pa))となるような十分な深さで、岩盤に掘削したチャンバ70の形をしている。およそ1,000メートルの深さに、内容物の滞留時間が24時間以上となるよう、15万立方メートルの容積で掘削したチャンバ70は、高効率の1,000MWe石炭火力発電所に合わせたシステム200から出る反応性スラリーの収容を予想したものである。反応がより短い時間でほぼ完了するならば、実際にはそれより小さいチャンバでも十分である。
【0069】
ケイ酸塩スラリー36は、蛇紋岩の採鉱場で製造し、ポンプで発電所まで地表を運んでも、あるいは、鉱石を鉄道、トラック、または他の適当な輸送手段で発電所まで運び、そこで製造しても良い。前者の手順を用いた場合、パイプライン配置44は、図1を参照として先に述べたパイプライン反応器の実施の形態よりも、かなり簡単となるだろう。特に、ケイ酸塩スラリー36は、熱および圧力エネルギーを採鉱場から集めて、発電所へ輸送する必要がなく、また、残留アンモニアを処理する必要がなくなる。パイプライン44は鉱石の輸送だけに用いられ、鉱石を塊状の生産物として鉄道で輸送するか、スラリーとしてパイプラインで輸送するかは、主に経済的見地によって決まる。この実施の形態においては、ケイ酸塩スラリーの濃度をかなり高く(例えば、固体が60%)できるため、ポンプ輸送の必要なケイ酸塩スラリーの容量が少なく、また、濃度の高いスラリー中の固体は分離しにくく、パイプライン44を浅くしないため、パイプライン速度を遅くできることが明らかである。また、熱と圧力を節約するための装置は、別のパイプライン反応器で必要とされるものよりずっと簡単である。
【0070】
図5では、注入ポンプ72を用いて、反応性スラリーが、スクラビングチャンバ40から、複数の向流熱交換器74,76と、地下反応器70と、アンモニアガス回収容器78(放出/精留容器)とを通って地上に戻る循環を駆動している。反応したスラリーが地下反応器70から上昇するにつれてアンモニアガスの泡が生じるため(上昇に伴って静水頭が失われるため圧力が下がる)、反応器から昇ってくる反応スラリーの嵩密度は小さくなると予想される。注入ポンプ72で反応の進行に必要な循環を作り上げた後はオフラインとなり、必要とされる循環は、完全に自然的手段によって進むことになる。注入ポンプ72の設計は逆向きにも回転できるように、つまり、反応器出口管80中で発生するアンモニア気泡の浮力効果によって作り出される循環の固有速度が十分に高ければ、パワーを生むようになっている。
【0071】
熱交換器74,76を、図5の2つの位置に略図で示す。実際には、熱交換器74,76は、図4に示すような長いシェルアンドチューブ型の設計とすることができ、スクラビングチャンバ40から下方の地下チャンバ70までの垂直距離の大部分に亘るものである。つまり、図5には2つの別個のパイプラインが示されているが、実際には、その長さの大部分に亘ってこれらは同心であり、外管と同心の内管との間に形成された環帯が、熱い反応生成物を輸送し、内管が、反応チャンバへ向け下方へ生成物を輸送する。この選択は逆にもできることは当業者には理解されよう。
【0072】
図1に示したパイプライン反応器の形態とは逆に、反応性スラリーの加熱は、アンモニアガス回収容器78から最初に昇ってくる熱い反応生成物からの熱交換、また、未処理スラリーが更に下がるため地下チャンバ70から昇ってくる熱いスラリーからの熱交換によって行われる。多少の熱の補充が必要ではあるが、方程式2(b)で発生する熱を保存し、未処理反応性スラリーの加熱に使用することができる。
【0073】
地下チャンバ70の設計は、栓流特性が多少得られるよう最適化されている。ある実施の形態において、チャンバ70は大きな長さ/直径比を持ち、垂直に配置されている。このような場合、流入する反応性スラリーは、冷たいため反応性チャンバ70の平均的な内容物よりも僅かに重く、底部に層を作って、より熱いスラリーを上に押し上げる。ある実施の形態では、地下チャンバ70を2つ以上の垂直に積み重ねたサブチャンバに分割する。
【0074】
反応チャンバ内には、固体を懸濁させておくために、独立した撹拌装置を備える必要がない。図5に示すように、流入する反応性スラリーは、容器の底付近に溜まり、沈降速度は、スラリー全体の上昇流速度に比べて小さいと考えられる。しかし、長い滞留時間が必要な場合(つまり、反応器の体積が大きいことが示唆される)には、ある種の撹拌を行っても良い。
【0075】
容易に分かるように、地下チャンバ70およびパイプラインからの熱損失は、断熱材で包んだ地上のパイプラインからの熱損失と比べても遙かに小さく、また、反応器、パイプライン、および他の全ての地下プロセス容器の周囲を断熱することで更に小さくすることができる。地上のパイプラインは栓流反応器を表しているが、炭素隔離に関わるような比較的ゆっくりとした一連の反応の理想的な条件は、図5に示す実施の形態でも得られる。
【0076】
図5ではまた、別のアンモニア吸収回収プロセスを用いている。この実施の形態では、最終生成物スラリーが地下チャンバ70から上昇するにつれ、それが受ける静水頭は小さくなる。この結果、沸点温度が下がり、終には、生成物パイプライン内を上昇しているスラリーの沸点を下回って、水の一部が爆発的に蒸気に変わり、また溶液からアンモニアが追い出される。アンモニアが気体として溶液から出て行く際に最終生成物スラリーから潜熱を奪い、これを部分的に冷やす。温度は、平均的(prevailing)な圧力における水の沸点を追う傾向がある。アンモニアの気泡は、熱生成物パイプライン内のスラリーの平均密度を、流入反応物パイプライン内より小さくし、系中に圧力差を生じる。これは、CO2吸収器30から、地下チャンバ70、熱交換器、及びプロセスプラントの他の装置を通る、反応物および生成物スラリーの循環を駆動するよう働く。図5に示すように、アンモニア回収容器78と、生成物スラリーからアンモニアを回収するために必要な他のプラント及び装置は、容器78中の圧力を約15Bar(約1.5×106Pa)、即ち、周囲温度付近でアンモニアが液体である十分に高い圧力に保つために、静水頭が使える深さ(地表からおよそ150m)に設置する。
【0077】
パイプライン反応器の場合、アンモニアは、容器78の頂部から気体として放出されるが、上に概要を述べた事情により、この容器78の設計をずっと簡単にすることができ、ある実施の形態では、気液分離器とするだけで良い。基本的に全てのアンモニアを気体、一般に蒸気として回収するには、多少の熱エネルギーを加える必要があるが、提案した装置を用いれば炭素隔離の熱エネルギー負担を著しく小さくすることができる。
【実施例】
【0078】
再び図2を詳しく参照しながら、本件に示す第1システム配置10(即ち、図1に示したシステム)について、炭素隔離の非制限的な工程の例を示す。ここでは便宜上、前述の実施の形態で示した図の同じ部品には、同じ番号が付けられている。
【0079】
実施例1:
【表1】

【0080】
表1は、次のように仮定した二酸化炭素隔離プロセスの、詳細な物質および熱収支を示している。
−ベース負荷モードで稼働すると年間8,000GWhの発電が予想される、1,000MWeの石炭火力発電所から発生する二酸化炭素の90%を捕捉および隔離する。
−無水無灰ベースで、石炭は、81.3質量%の炭素と、0.65質量%の硫黄(Sとして)とを含み、煙道ガスは、400ppmのNOxを含んでいる。
【0081】
溶液中における、アンモニアと水と二酸化炭素からの炭酸アンモニウムの生成熱は、二酸化炭素1トン当たり約2.0GJであり、スラリーを75℃まで加熱するには十分である。これを打ち消すように、吸収ゾーンでアンモニアが蒸発する際には、アンモニア1トン当たり約1.0GJの熱を吸収する。これは、吸収される二酸化炭素1トン当たり約1.8GJに相当し、スラリー供給物を約60℃まで冷やすには十分である。スラリー供給物が吸収ゾーンへ入るときと、これが戻りパイプライン52へ入るときとの間の、全体の温度上昇は約15℃となると考えられる。実際には、最終的な殆ど二酸化炭素を含まない煙道ガスと接する最後のスラリー供給物が最も冷たく、5℃以下となるように、プロセスを設計する必要がある。
【0082】
更に、溶液中の炭酸アンモニウムがケイ酸塩岩石と反応する際に放出される熱(吸収される二酸化炭素1トン当たりおよそ1.45GJ)は、スラリー供給物の温度を約55℃まで上げるのに十分である。これは戻りパイプライン52内で起こる。
【0083】
採鉱場では、約300t/時間のアンモニアの凝縮により、約160MWtの熱エネルギーが放出される。これは冷却塔を経て環境中に放出することができる。
【0084】
本発明の実施の形態による、二酸化炭素隔離プロセス100およびシステム10,20の長所は、触媒/促進剤としてアンモニアを選ぶことで、二酸化炭素の捕捉と隔離の両方を行う、1つの統合的なプロセスが得られることである。ある実施の形態において、二酸化炭素の隔離は、パイプライン44の戻り経路52の形をした反応器中で起こる。このパイプラインは、発電所(即ち、二酸化炭素の発生源)と、プロセスで用いられる吸収材料の入手源/目的地とを繋いでいる点が有利である。別の実施の形態では、地質学的条件が許すならば、反応器を地下チャンバの形とする。これは、パイプラインの実施の形態では必要とされる圧力交換および熱回収のための装置を必要とせずに、反応を進められる点で有利である。この二酸化炭素隔離プロセスおよびシステムのもう一つの長所は、アンモニアの使用により反応速度が向上することである。このため、アンモニアを使用し、発熱反応で生じる熱を有効利用することで、プロセス100のエネルギー消費を最小に抑えることができる。反応生成物は熱力学的に安定であるため、二酸化炭素を永久に安定した固体として貯蔵することができる。このことから更に、操業および資本コストが安いという長所も挙げられる。
【0085】
当業者ならば、前述の実施の形態のある特定のステップを別個に行うことで、更に有利となることに気づくであろう。例えば、二酸化炭素隔離プロセスにおける、アンモニウム塩(アンモニアを多く含む溶液を、二酸化炭素を含むガス流に曝露して生成した炭酸アンモニウムでも良い)を含むアンモニア溶液の触媒効果は、マグネシウム多く含む金属ケイ酸塩などの金属ケイ酸塩類から金属(例えば、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅、およびケイ酸塩岩石中に存在するその他の金属)を抽出するためにも利用できる。このような実施の形態では、アンモニアとアンモニウムを含む溶液を金属ケイ酸塩(一般に、スラリー状)と混合して、アンモニアでマグネシウムイオンを溶出させ、金属(この実施の形態では、炭酸マグネシウムの形をした金属化合物)を回収する。混合は、先の実施の形態に関連して既に述べたようなアンモニア吸収チャンバ内で行う。望ましくは、アンモニア溶液は、炭酸アンモニウムなどのアンモニア塩の存在下、溶液中で濃縮したアンモニアを含むものであり、水酸化マグネシウムの沈殿を防いで、アンモニアによるマグネシウムイオンの溶出を継続させる。このプロセスから生じる更なる長所は、炭酸マグネシウムの抽出後、ケイ酸塩岩石中に存在する他の鉱物類(金属類)も回収し易いことである。このケイ酸塩岩石は、苦鉄質岩または超苦鉄質岩(即ち、高マグネシウム含量岩石)を含むものである。
【0086】
アンモニアの触媒効果は、ある種の金属イオン、例えば、マグネシウム(Mg2+)、2価鉄(Fe2+)、銅(Cu2+)、ニッケル(Ni2+)とアンモニアが錯体(アミン類)を作り易いことによる。アンモニウム塩、特に、アンモニアと二酸化炭素との反応から生じた炭酸塩があると、他の方法では不溶性の水酸化マグネシウムの沈殿を防ぐ。しかし、炭酸マグネシウムはこのような環境中では不溶性であるため、この化合物の沈殿物は、水酸化マグネシウムと炭酸アンモニウムとの反応から生じ、溶液中に水酸化アンモニウムと遊離アンモニアを生じる。後者は、アミン錯体を形成することでケイ酸塩岩石から更にマグネシウムや他の金属類を抽出し続け、これら影響を受ける金属が全て抽出されるまで抽出は続く。
【0087】
次に、アンモニアを、アンモニア回収容器内で溶液から回収する。この結果、反応性スラリー中の遊離アンモニアの濃度は次第に減少する。これは金属アミン錯体の破壊につながるが、徐々に進むものであり、錯体の安定性に応じて変わる。その安定性も金属によって異なる。マグネシウムの安定性は比較的弱く(大部分のマグネシウムは、炭酸マグネシウムとして沈殿しているという理由で)、最初に沈殿する塩も炭酸マグネシウムである。溶液中のアンモニア濃度が下がり続けるにつれて、他の金属も次々と沈殿し、比較的純度の高い状態で各金属それぞれの沈殿物を得ることができる。
【0088】
最後に、本発明の意図または範囲から外れることなく、先に述べた部分に対し、様々な変更または追加を行えることは明らかであろう。本プロセスは、1つの2段階連続反応器、または、1つの管形反応器を備えているものに限定されない。これは、本プロセスが、異なる原材料、資本および操業コストから生じるプロセス変数に適合させる必要から、異なる設定の装置項目を用いるよう配置できるためである。例えば、先に述べた実施の形態の例で、プラント設計は、最新鋭の石炭火力発電所から発生する、1GWh当たり800トンのCO2の排出をベースとしている。比較として、いずれも、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のハンターバレーにある、それぞれ、2,640MWeおよび2,040MWeの発電が可能なベイズウォーター発電所およびリデル(Liddell)発電所では、古いため効率が悪く、1GWh当たり850から900トンのCO2を排出すると予想される。
【0089】
このように、発電所から排出される煙道ガス中の二酸化炭素排出濃度および速度は変化するため、プラント設備の設計も、これらの変数に合わせて設定し直す。例えば、別の設備を、様々な熱および圧力交換施設のために設定することができる。二酸化炭素吸収ゾーンおよびスクラビングゾーンを、連続した2つの別々の容器(図1に示す入れ子形配置ではなく)として配置しても良い。二酸化炭素の不溶性炭酸塩への変換率を、反応器からの総変換率をまだ上げられるにもかかわらず、例えば70%と低い値に制限しても良い。同様に、スラリー供給物中の対応する固体の濃度を、30質量%以上または以下としても良い。金属ケイ酸塩溶液を、金属ケイ酸塩類の混合物、例えば、蛇紋岩とカンラン石との、更に輝石との混合物を含むものとすることも可能である。反応速度論的には、反応性溶液から熱を除く必要がある(先に述べたように熱を加えるよりも)。これらの要因は、系の圧力に影響を与え、変えると考えられる。金属ケイ酸塩溶液と反応性溶液の輸送用のパイプラインが2つ以上あることもある。更にパイプラインがあることで、追加の熱交換器や圧力交換装置を用いても良い。発電所煙道ガスに更に、脱硫(FGD)や選択的接触還元(SCR)などの前処理工程を行い、それぞれSOxおよびNOxの濃度を下げることで、系からのアンモニアの損失を少なくしても良い。更に、蒸気や冷却水などを供給するため、様々な設備の配置も必要と考えられる。
【0090】
本件に含まれる先行技術への参照は、特に指示のない限り、これらの情報が一般的な知識であると認めるものではない。
【0091】
本発明の後述の請求項および前述の記述において、表現言語または必要な含意のため、文脈が別な意味を必要とする場合を除き、“含む(comprise)”の語、あるいは“comprises”または“comprising”などのその変化形は、包含的な意味、即ち、述べた機構(features)の存在を明示するものであって、本発明の様々な実施の形態において更なる構成物の存在または追加を排除するものではない。
【符号の説明】
【0092】
10 二酸化炭素隔離システム、20 第1装置、22 連続式反応器、28 アンモニア吸収チャンバ、29 減圧弁、30 スクラビングチャンバ、32 未処理煙道ガス混合物、34 フィルタ、34 第1熱交換器、36 ケイ酸塩スラリー、38 第1圧力交換装置、40 第2熱交換器、42 第2圧力交換装置、44 パイプライン、46 第3熱交換器、48 第3圧力交換装置、52 パイプライン(戻り経路)、54 蒸気、54 アンモニアガス回収容器、56 残留アンモニア回収器、58 凝縮器、60 アンモニアパイプライン、70 地下チャンバ、72 注入ポンプ、74,76 熱交換器、78 アンモニアガス回収容器、80 反応器出口管、82 蒸発器チャンバ、84 熱交換器、100 二酸化炭素隔離プロセス、200 二酸化炭素隔離システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素隔離プロセスであって、
(i)第1段階において、金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程と、
(ii)第2段階において、二酸化炭素を含むガス流を、(i)からの溶液を用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させる工程と、
(iii)第3段階において、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている反応器に、(ii)からの前記反応性スラリーを通す工程と
を含むことを特徴とする二酸化炭素隔離プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、工程(i)において、加圧した液体アンモニアは、前記液体アンモニアの一部が蒸気となって噴出するような方法で前記金属ケイ酸塩スラリーに投入され、アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーが生成することを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロセスであって、前記ガス流スクラビング工程は、前記二酸化炭素含有ガス流を前記スラリーのスプレーに曝露する工程を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記反応器制御工程は、反応器の圧力および温度の少なくとも一方を上昇させて、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進する工程を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記反応器はパイプラインであることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、前記パイプラインは、複数の流路を含み、前記反応は、前記流路のある1本の長さに沿って起こることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項6に記載のプロセスであって、前記流路の別の流路は、前記金属ケイ酸塩スラリーを前記第1段階に供給するために用いられることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスであって、前記パイプラインの前、および/または後で、前記反応性スラリーと前記金属ケイ酸塩スラリーとの間で、圧力および熱の少なくとも一方を交換する工程を更に含むことを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記反応器は、使用地下に設置されたチャンバであることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスであって、前記チャンバは、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応の促進に十分な圧力となるような深さに設置されていることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記反応段階(iii)で生じたアンモニアを回収し、これを前記第1段階にリサイクルする工程を更に含むことを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスであって、前記アンモニア回収工程を行う前に、前記反応段階(iii)から生じた前記金属炭酸塩生成物に、アルカリを加える工程を更に含むことを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のプロセスであって、前記アンモニアは、液体および気体の両方として回収され、前記液体は、前記第1段階にリサイクルするため一部を蒸気に変換し、前記気体は、抽出、凝縮し、前記第1段階へ供給する前に前記金属ケイ酸塩と混合することを特徴とするプロセス。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記アンモニア回収工程は、液状のアンモニアを回収し易くするために加圧された回収容器内で行われることを特徴とするプロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスであって、前記回収容器は、使用時、液状のアンモニアを回収できる圧力となるような、十分な深さに設置されていることを特徴とするプロセス。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のプロセスであって、金属ケイ酸塩岩石を粉砕して金属ケイ酸塩スラリーを生成する工程を更に含むことを特徴とするプロセス。
【請求項17】
請求項16に記載のプロセスであって、前記金属ケイ酸塩スラリーは、30質量%の微粉砕固体を含んでいることを特徴とするプロセス。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記金属ケイ酸塩は、高マグネシウム含量ケイ酸塩であることを特徴とするプロセス。
【請求項19】
請求項18に記載のプロセスであって、前記高マグネシウム含量ケイ酸塩は、蛇紋岩および/またはカンラン石および/または輝石であることを特徴とするプロセス。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記金属ケイ酸塩岩石スラリーは、前記スラリーを前記第2段階に通す前に冷却されることを特徴とするプロセス。
【請求項21】
ガス流から二酸化炭素を隔離するためのシステムであって、
(a)ガス流から二酸化炭素を除き、分散させた金属ケイ酸塩を含むアンモニア化スラリーに、前記二酸化炭素を吸収させるための第1装置と、
(b)(a)から前記スラリーを受けるための反応器であって、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されている反応器と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記第1装置は、金属ケイ酸塩をアンモニアと混合してアンモニア化スラリーを生成するよう配置したアンモニア吸収冷却装置を含むことを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載のシステムであって、前記反応器は、請求項5から請求項8のいずれか1項で定義したようなパイプラインであることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項21または請求項22に記載のシステムであって、前記反応器は、請求項9または請求項10で定義したようなチャンバであることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項21から請求項24のいずれか1項に記載のシステムであって、前記金属ケイ酸塩は、請求項17または請求項18で定義したような、高マグネシウム含量ケイ酸塩を含むことを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項21から請求項25のいずれか1項に記載のシステムであって、前記金属炭酸塩生成物中に含まれるアンモニアを回収するよう配置されたアンモニア吸収回収容器を更に含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
パイプライン中における、
炭素隔離プロセスの第1装置で使用するための金属ケイ酸塩スラリーを運搬する第1流路と、
アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリー中に吸収された二酸化炭素を含んでいる反応性スラリーを第1装置から運搬するための第2流路と
の設備であって、
前記第2流路は、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するよう制御されていることを特徴とする設備。
【請求項28】
アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリー中に吸収された二酸化炭素を含むスラリーを反応させて、金属炭酸塩を生成する方法であって、
チャンバ内の圧力が、二酸化炭素と金属ケイ酸塩との反応を促進して金属炭酸塩を生成するために十分な圧力となるような深さの地下に、前記チャンバを設置する工程と、
前記スラリーが反応できるよう十分な期間に亘って、前記スラリーを前記チャンバに供給する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記チャンバに供給される前記スラリーは、請求項1から請求項4のいずれか1項に依存している場合に、請求項1から請求項4、または請求項11から請求項20のいずれか1項に記載のプロセスで生成する反応性スラリーであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28または請求項29に記載の方法であって、前記チャンバに供給される前記スラリーを用いて、前記チャンバの生成物から熱を交換する工程を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記熱は、前記チャンバ生成物および前記スラリーの流路中、または流路付近に配置した、1つ以上の熱交換器ユニット中で交換されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項21から請求項27のいずれか1項に記載の炭素隔離システムを利用した発電所であって、前記システムは、前記発電所より排出される煙道ガスから二酸化炭素を隔離するよう配置されていることを特徴とする発電所。
【請求項33】
金属ケイ酸塩岩石のスラリーをアンモニアと混合して、二酸化炭素隔離プロセスで使用するためのアンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを生成する、アンモニア吸収プロセスにおいて、
(i)アンモニアを前記吸収プロセスに通す前に、加圧した液状のアンモニアを蒸発器段階で膨張させ、前記段階において冷却効果を生じる工程と、
(ii)前記吸収プロセスで生成した前記アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを、前記蒸発器段階に通して、前記アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを冷却する工程と
から成るプロセス。
【請求項34】
請求項33に記載のプロセスであって、前記冷却スラリーをスクラビング段階に供給する工程を更に含み、二酸化炭素を含むガス流を、前記冷却アンモニア/水/金属ケイ酸塩スラリーを用いてスクラビングすることにより、二酸化炭素を反応性スラリー中に吸収させることを特徴とするプロセス。
【請求項35】
請求項34に記載のプロセスであって、スクラビングチャンバを通って再循環される反応性スラリーを、再循環させる前に、前記蒸発器段階に通す工程を更に含むことを特徴とするプロセス。
【請求項36】
請求項33から請求項35のいずれか1項に記載のプロセスであって、前記蒸発器段階は、蒸発器チャンバ内で行われることを特徴とするプロセス。
【請求項37】
請求項34または請求項36に記載のプロセスであって、前記スクラビング段階は、請求項21または請求項22で定義したような第1装置内で行われることを特徴とするプロセス。
【請求項38】
請求項33から請求項37のいずれか1項に記載の前記プロセスを行うよう配置されたアンモニア吸収チャンバ。
【請求項39】
金属ケイ酸塩を、アンモニアとアンモニウム塩とを含む溶液と混合することにより、アンモニアを金属ケイ酸塩と反応させて、標的金属を前記溶液中に溶解する工程を含むことを特徴とする金属ケイ酸塩から標的金属を抽出する方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記金属ケイ酸塩を前記溶液と混合する前に、前記金属ケイ酸塩を粉砕し、これをスラリーとする工程を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39または請求項40に記載の方法であって、前記混合は、アンモニア吸収チャンバ内で行うことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39から請求項41のいずれか1項に記載の方法であって、前記金属ケイ酸塩は、高マグネシウム含量ケイ酸塩であることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記高マグネシウム含量ケイ酸塩は、蛇紋岩および/またはカンラン石および/または輝石ケイ酸塩金属であることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項39から請求項43のいずれか1項に記載の方法であって、溶液中の前記アンモニウムは、炭酸アンモニウムを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、前記標的金属は、前記溶液中に溶解した後、金属炭酸塩として沈殿させて、回収のため取り出すことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項39から請求項45のいずれか1項に記載の方法であって、前記標的金属は、マグネシウム、鉄、銅、およびニッケルの1つ以上であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519027(P2010−519027A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550646(P2009−550646)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000232
【国際公開番号】WO2008/101293
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509234803)
【Fターム(参考)】