説明

二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンドによるヒドロホルミル化方法

遷移金属並びにオルガノポリホスファイト及びオルガノモノホスフィンを含むリガンド混合物を利用することによる、オルガノポリホスファイトリガンドの改良された安定性を有する少なくとも1つのアルデヒド生成物を製造する連続ヒドロホルミル化方法。この方法は、オルガノポリホスファイトリガンド及び有機モノホスフィンリガンドの存在下に、1種又はそれ以上のオレフィン性不飽和化合物を一酸化炭素及び水素と反応させることを伴い、かかる少なくとも1種のリガンドは、遷移金属と結合して、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を形成する。驚くべきことに、オルガノモノホスフィンのRh/オルガノポリホスファイト触媒系への添加は反応速度の有意な損失をもたらさなかった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によって本明細書にその全内容が組み込む2009年3月31日出願の米国特許仮出願第61/165,039号の利益を請求する。
【0002】
本開示は、オレフィン性不飽和化合物をヒドロホルミル化して、1種又はそれ以上のアルデヒド生成物を製造する改良方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1種又はそれ以上のアルデヒド生成物が、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒の存在下に、反応条件下でオレフィン性不飽和化合物を一酸化炭素及び水素と接触させることによって製造することができることは当業界において周知である。特許文献1、特許文献2及び特許文献3において例示されているように、かかるプロセスは、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒、より好適にはVIII族−オルガノリンリガンド錯体触媒を含む溶液の循環による連続的なヒドロホルミル化を伴う。ロジウムは好適なVIII族金属である。オルガノホスフィン及びオルガノポリホスファイトは好適なオルガノリンリガンドである。ヒドロホルミル化プロセスによって製造されるアルデヒドは、例えば脂肪族アルコールへの水素化、脂肪族アミンへのアミノ化、脂肪酸への酸化及び可塑剤を製造するアルドール縮合のための中間体として、広範囲の実用性を有する。
【0004】
ヒドロホルミル化プロセスのロジウム−オルガノポリホスファイトリガンド錯体に付随する利益は周知であるが、オルガノホスファイトリガンドの安定性が依然として最も関心のあるところである。オルガノホスファイトリガンドの分解は、触媒活性を弱め、又はリガンドの損失速度を増加させ得る触媒毒、阻害剤又は酸性の副生物を導き得る。ロジウムは、極めて高価であるため、触媒活性の有意な損失は、プロセスの経済状況に劇的な衝撃を有し得る。更に、オルガノポリホスファイトリガンドは、多段階の合成を通して製造され、そしてしばしばそれら自体が非常に高価である。経済的に実現可能なロジウム−オルガノポリホスファイトに基づく工業的なヒドロホルミル化プロセスのために、リガンドは、プロセス条件の厳密さに対して安定化させなければならない。
【0005】
第二のリン系化合物の添加を介して、触媒及び/又はオルガノホスファイトの安定性を維持するために、多くのプロセスが提案されてきた。例えば特許文献4は、立体的に込み合ったホスフィン(例えばトリ(オルト-トリル)ホスフィン)を添加して、酸化的分解に対してホスファイトリガンドを安定化させることを記載している。更にオルガノホスファイトリガンドよりも安価であるトリ(オルト-トリル)ホスフィン)の添加は、工業的プロセスの経済状況に有意に影響を及ぼすだろう。より安価で、より立体的に込み合っていないホスフィン(例えばトリフェニルホスフィン;以後TPP)は、オルガノホスファイトを保護するのに有用であるにもかかわらず、特許文献4はそれらが触媒のヒドロホルミル化速度を有意に減少させることも教示している。
【0006】
オルガノホスファイトリガンドの安定化は、トリ(アリール)ホスフィン(例えばTPP)のロジウム/ビスホスファイト系への添加を特徴付ける特許文献5において検討されている。ビスホスファイトリガンド/TPPの組合せは、ビスホスファイト単独よりも安定であるが、ヒドロホルミル化反応速度は有意に減少する。反応速度の減少は、反応温度の上昇によって取り戻すことができるが、より高い温度は、全体の反応効率を低めるアルデヒドオリゴマー「重質物(heavies)」の生成を増加させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,148,830号
【特許文献2】米国特許第4,717,775号
【特許文献3】米国特許第4,769,498号
【特許文献4】米国特許第6,153,800号
【特許文献5】中国特許第1986055 A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本来備わっている系のヒドロホルミル化反応速度を有意に減少させない、ロジウム/オルガノホスファイトリガンド系の安定化について比較的に安価な方法を採用するヒドロホルミル化プロセスを有することが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
1つの態様では、本開示は、少なくとも1種のアルデヒド生成物の連続的な製造のためのヒドロホルミル化プロセスに関し、本プロセスは、ヒドロホルミル化反応流体中における連続反応条件下で、二重オープンエンド型(doubly open-ended)オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの混合物であって、その少なくとも1方のリガンドが遷移金属に結合している混合物の存在下に、1種又はそれ以上のオレフィン性不飽和化合物、一酸化炭素及び水素を接触させて、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を形成させる工程を含んで成り;オルガノポリホスファイトリガンドは、それぞれが3つのヒドロカルビルオキシラジカルに結合した複数のリン(III )原子を含み、その任意の非架橋種は、(置換又は非置換の)アリールオキシラジカルから本質的に成り;金属に対するオルガノモノホスフィン及びオルガノポリホスファイトの両方のモル比が少なくとも1であり、即ち金属に対するオルガノモノホスフィンの比率が少なくとも1であり、且つ金属に対するオルガノポリホスファイトの比率が少なくとも1となる様式で、接触を実施する。
【0010】
驚くべきことに、Rh/オルガノポリホスファイト触媒へのホスフィン化合物の添加は、オルガノポリホスファイトリガンドの安定性を改良するが、選択性(N:I比)又は系の反応速度に有意に悪影響を及ぼすことはない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
1種又はそれ以上のアルデヒドを製造する本開示のヒドロホルミル化プロセスは、1種又はそれ以上のオレフィン性不飽和化合物、一酸化炭素、水素並びに二重オープンエンド型(doubly open-ended)オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの混合物を用い、少なくとも1種の前記リガンドは、遷移金属に結合して、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を生成する。
【0012】
以下に詳細に記載するように、本開示のプロセスは、ヒドロホルミル化反応流体における連続反応条件下で、オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの混合物であって、少なくとも1種の前記リガンドが遷移金属に結合している混合物の存在中で、1種又はそれ以上のオレフィン性不飽和化合物、一酸化炭素及び水素を接触させて、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を生成させることを含んで成る。オルガノポリホスファイトリガンドは、それぞれが3つのヒドロカルビルオキシラジカルと結合した複数のリン(III )原子を含んで成り、その任意の非架橋種(non-bridging species)は、置換又は非置換のアリールオキシラジカルから本質的に成る。更に、接触は、遷移金属に対するオルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの両方のモル比が、少なくとも1であるように実施される。
【0013】
本開示のヒドロホルミル化プロセスは、不斉又は非不斉であってよく、好適なプロセスは、非不斉であり、且つ任意の連続的又は半連続的方法で実施され、そしてヒドロホルミル化反応流体及び/又はガスを含む任意の慣用の触媒、そして/或いは所望されるような抽出循環操作を伴うことができる。本明細書において使用される用語「ヒドロホルミル化」は、1種又はそれ以上の置換又は非置換のオレフィン化合物、或いは1種又はそれ以上の置換又は非置換のオレフィン化合物を含む反応混合物を、一酸化炭素、水素及びヒドロホルミル化触媒の存在下に、少なくとも1種の置換又は非置換のアルデヒドを含む生成物に転化することに伴う全ての操作可能な不斉及び非不斉プロセスを含むことを意図する。
【0014】
本開示のヒドロホルミル化工程において用いることができる置換又は非置換のオレフィン化合物は2〜40、好適には3〜20の炭素原子並びに1種又はそれ以上の炭素−炭素二重結合(C=C)を含む光学活性(プロキラル及びキラル)及び非光学活性(アキラル)不飽和化合物の両方を含むことができる。かかるオレフィン化合物は、末端的に、又は内部で不飽和化され、且つ直鎖、分岐鎖又は環状構造であることができる。プロペン、ブテン及びイソブテンのオリゴマー化から得られるようなオレフィン混合物(例えば参照によって本発明に組み込む米国特許第4,518,809号及び米国特許第4,528,403号において開示されるような、いわゆる二量体、三量体又は四量体プロピレン等)も、混合ブテン、例えば当業者に公知であるラフィネートI及びラフィネートIIと同様に用いることができる。かかるオレフィン化合物及びそれに由来する対応のアルデヒド生成物は、更に本開示のヒドロホルミル化プロセスに悪影響を及ぼさない1種又はそれ以上の基又は置換基を含んでよく;適切な基又は置換基は、参照によって本発明に組み込む米国特許第3,527,809号及び米国特許第4,769,498号に記載されている。
【0015】
本開示の最も好ましいプロセスは2〜30、好適には3〜20の炭素原子を含むアキラルα−オレフィン及び4〜20個の炭素原子を含むアキラル内部オレフィン並びにかかるα−オレフィン及び内部オレフィンの出発原料混合物をヒドロホルミル化することによる非光学活性アルデヒドの製造に特に有用である。
【0016】
実例となるα及び内部オレフィンは、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、2−ブテン、2−メチルプロペン(イソブチレン)、2−メチルブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、2−オクテン、シクロヘキセン、プロピレン二量体、プロピレン三量体、プロピレン四量体、ブタジエン、ピペリレン、イソプレン、2−エチル−1−ヘキセン、スチレン、4−メチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、4−tert−ブチル−α−メチルスチレン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3−シクロヘキシル−1−ブテン等並びに1,3−ジエン、ブタジエン、アルキルアルケノエート、例えばメチルペンテノエート;アルケニルアルカノエート、アルケニルアルキルエーテル、アルケノール、例えばペンテノール;アルケナール、例えばペンテナールを含め;かかる種はアリルアルコール、酪酸アリル、ヘキセ−l−エン−4−オール、オクテ−l−エン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸3−ブテニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸アリル、メタクリル酸メチル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−プロピル−7−オクテノエート、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド、オイゲノール、イソ-オイゲノール、サフロール、イソ-サフロール、アネトール、4−アリルアニソール、インデン、リモネン、β-ピネン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、カンフェン、リナロオール、オレイン酸及びオレイン酸メチル等のそのエステル並びに対応する不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルを含む。実例となる適切な置換及び非置換オレフィン出発原料は、その関連する部分を参照によって本明細書に組み込むKirk-Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、1996年において記載されている、それらのオレフィン化合物を含む。
【0017】
水素及び一酸化炭素も本開示のプロセスに必要である。これらのガスは、石油分解法及び精製操作を含める任意の入手可能源から得ることができる。好適には合成ガス混合物を用いる。ガス状水素対一酸化炭素のH2:COモル比は、好適には約1:10〜約100:1、より好適にはH2:COモル比は、約1:10〜約10:1の範囲であることができる。
【0018】
本開示のプロセスでは、2つの異なる有機リンリガンドが必要とされ、その両方が遷移金属への結合が可能であり、ヒドロホルミル化プロセスを触媒することができる遷移金属-オルガノリンリガンド錯体触媒を形成する。一方のオルガノリンリガンドは、オルガノポリホスファイトリガンドを含むことが必要であるが、他方のオルガノリンリガンドは、オルガノモノホスフィンリガンドを含んで成ることが必要である。オルガノポリホスファイトリガンドとして、1つのかかるリガンド又はかかるリガンドの混合物を使用することができる。オルガノモノホスフィンリガンドとして、1つのかかるリガンド又はかかるリガンドの混合物も使用することができる。
【0019】
本開示に適用可能なヒドロホルミル化プロセス技術は、公知及び当業界において発表された任意のプロセス技術に対応することができる。好適なプロセスは、米国特許第4,668,651号;米国特許第4,774,361号;米国特許第5,102,505号;米国特許第5,110,990号;米国特許第5,288,918号;米国特許第5,874,639号;及び米国特許第6,090,987号において発表されるような、触媒液体循環ヒドロホルミル化工程並びに米国特許第5,932,772号;米国特許第5,952,530号;米国特許第6,294,700号;米国特許第6,303,829号;米国特許第6,303,830号;米国特許第6,307,109号;及び米国特許第6,307,110号に記載されるような抽出ヒドロホルミル化プロセスを伴うものであり;それらの開示は、参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0020】
一般に、かかる触媒化液体ヒドロホルミル化プロセスは、遷移金属-オルガノリンリガンド錯体触媒の存在下に、触媒及びリガンドのための有機溶媒も含むことができる液相において、オレフィン不飽和化合物を一酸化炭素及び水素と接触させることによるアルデヒドの製造を伴う。遊離オルガノリンリガンドも液相中に存在する。本開示における一般用語「オルガノリンリガンド(又は有機リンリガンド)」とは、オルガノポリホスファイト及びオルガノモノホスフィンの両タイプのリガンドを包含する。両リガンドが必要であるが、両リガンドが常に遷移金属に錯化されるとの推測は成されない。むしろリガンドは、触媒循環として錯化又は非結合化されてよく、且つ遷移金属のためのリガンド間の競合を決定づけ得る。「遊離オルガノリンリガンド」とは、錯体触媒の金属、例えばロジウム原子により錯化されない(結び付かない、又は結合されない)オルガノリンリガンドを意味する。一般に、ヒドロホルミル化工程は、循環方法を含めてよく、ここでの触媒及びアルデヒド生成物を含む液体反応流体の一部分は、ヒドロホルミル化反応器(1つの反応ゾーン又は例えば連続する複数の反応ゾーンを含むことができる)から連続的に、又は間欠的に取り出され;そしてアルデヒド生成物は、当業界において公表された技術によって、そこから分離及び回収され;そしてその後に分離からの残渣を含む金属触媒は、例えば米国特許第5,288,918号において開示されるように、反応ゾーンへ循環される。複数の反応ゾーンを連続的に用いる場合、反応体のオレフィンは、本開示の1つの態様において、最初の反応ゾーンのみに供給すればよく;一方、触媒溶液、一酸化炭素及び水素は、それぞれの反応ゾーンに供給してよく、又はもう1つの態様では、オレフィンは、1つより多い反応ゾーン中に供給することができる。
【0021】
以下に使用する用語「反応流体(reaction fluid)」又は「反応生成物流体(reaction product fluid)」は、これらに限定するものではないが、(a)オルガノポリホスファイトリガンド、(b)オルガノモノホスフィンリガンド、(c)遷移金属-リガンド錯体触媒(ここでのリガンドは、オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの流体中の混合物から選定される)、(d)反応中で形成させる少なくとも1つのアルデヒド生成物、(e)任意的に、未反応のオレフィンを含む未変化反応体及び(f)前記金属-リガンド錯体触媒及び前記遊離リガンドのための有機可溶化剤を含む反応混合物を含むと考えられる。ヒドロホルミル化反応流体は、プロセスの間に故意的に添加され、又はその場で(in-situ)形成されるもののような、少量の追加の成分を含むことができることを理解されたい。かかる追加の成分の例は、一酸化炭素及び水素ガス並びに飽和炭化水素等のその場で形成される生成物並びに/或いはオレフィン出発原料に対応する未反応異性化オレフィン並びに/或いは高沸点液体アルデヒド縮合副生成物並びに/或いはオルガノリンリガンドの加水分解によって形成される副生成物を含む1種又はそれ以上の触媒及び/又はオルガノリンリガンドの分解生成物並びに用いる場合には、不活性共溶媒又は炭化水素添加剤を含む。
【0022】
遷移金属-リガンド錯体触媒を生成する適切な金属はロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)及びその混合物から選定されるVIII族金属を含め、好適な金属はロジウム、コバルト、イリジウム及びルテニウムであり、より好適にはロジウム、コバルト及びルテニウムであり、そして最適にはロジウムである。他の許容される金属は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びその混合物から選定されるVIB族金属を含む。VIB及びVIII群からの金属混合物も使用することができる。
【0023】
本明細書において使用される用語「錯体」は、1種又はそれ以上の電子的に富む分子又は原子(即ちリガンド)と、1種又はそれ以上の電子的に乏しい分子又は原子(即ち遷移金属)との結合によって形成される配位化合物を意味する。例えば本明細書において用いることができるオルガノモノホスフィンリガンドは、金属と共に配位共有結合を形成することができる1つの非共有電子対を有する1つのリン(III )ドナー原子を有する。本明細書において用いることができるオルガノポリホスファイトリガンドは、それぞれが1つの非共有電子対を有し、そのそれぞれが独立して、又はおそらく一斉に(例えばキレート化を介して)、遷移金属と共に配位共有結合を形成することができる2種又はそれ以上のリン(III )ドナー原子を有する。更に一酸化炭素も存在し、且つ遷移金属と共に錯化させることができる。錯体触媒の最終的な組成物は、金属の配位部位又は核電荷を満たす追加のリガンド、例えば水素又はアニオンを含むこともできる。実例となる追加のリガンドは、例えばハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換アリール、アシル、CF3、C25、CN、(R)2PO及びRP(O)(OH)O(式中、それぞれのRは、同一であるか、又は相違し、且つ置換又は非置換炭化水素ラジカル、例えばアルキル又はアリールである)、酢酸塩、アセチルアセトネート、SO4、PF4、PF6、NO2、NO3、CH3O、CH2=CHCH2、CH3CH=CHCH2、C25CN、CH3CN、NH3、ピリジン、(C253N、モノオレフィン、ジオレフィン及びトリオレフィン、テトラヒドロフラン等を含む。
【0024】
遷移金属上の利用可能な配位部位の数は、当業界において周知であり、且つ選定される特定の遷移金属によって決まる。触媒種は、それらの単量体、二量体又はより高い核形態において、錯体触媒混合物を含むことができ、好適には1つの金属分子、例えばロジウムにつき錯化された分子を含む少なくとも1つの有機リンによって特徴付けられる。例えばヒドロホルミル化反応において用いられる好適な触媒の触媒種はオルガノポリホスファイトリガンド又はオルガノモノホスフィンリガンドのいずれかに加えて、一酸化炭素及び水素と共に錯化され得ると見なされる。
【0025】
オルガノポリホスファイトリガンドは、広く複数のホスファイト基を含み、そのそれぞれが3つのヒドロカルビルオキシラジカルに結合した1つの3価のリン原子を含む。2つのホスファイト基を連結及び架橋するヒドロカルビルオキシラジカルは、より適切には「2価のヒドロカルビルジオキシラジカル」と呼ばれる。これらの架橋ジラジカルは、任意の特定のヒドロカルビル種に限定されない。
【0026】
本明細書において使用される用語「アリールオキシ」とは、−O−アリールのように、いずれかの単結合に結合した1価の置換又は非置換のアリールラジカルについて広く言及し、ここでのアリール基は1つ又は複数の芳香族環を含む。好適なアリールオキシ基は、1つの芳香族環又は2〜4の融合もしくは連結した芳香族環を含み、それぞれの環は、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ又はビフェノキシのように、約5〜約20の炭素原子を有する。任意の上記ラジカル及び基は、以下に指摘するように、非置換であるか、又は置換されていてもよい。
【0027】
本明細書において使用される用語「末端基(end group)」とは、リン原子からつり下がり、且つ2つのホスファイト基を橋架けしない(即ち端末、非架橋)アリールオキシラジカルについて広く言及する。下記の式(I)では、末端基は、R1及びR2によって表され、且つアリールラジカルから本質的に成ることがそれぞれ要求される。
【0028】
本明細書において使用される用語「末端基対(end group pair)」とは、同一のリン原子からつり下がる上記に定義されるような2つのアリールオキシラジカルについて広く言及する。本明細書において使用される用語「オープンエンド型(open-ended)」とは、ポリオルガノホスファイトリガンドについて広く言及し、ここでの少なくとも1つの末端基対を含んで成るアリールオキシラジカルは、もう一方に結合されない。本明細書において使用される用語「二重オープンエンド型(doubly open-ended)」とは、ポリオルガノホスファイトリガンドについて広く言及し、ここでの2つの末端基対を含んで成るアリールオキシラジカルは、もう一方に結合されない。
【0029】
好適なオルガノポリホスファイトリガンドは、2つ、3つ又はより大きい数のホスファイト基を含む。かかるリガンドの混合物は、所望ならば、用いることができる。アキラル(achiral)オルガノポリホスファイトは、好適である。典型的なオルガノポリホスファイトは、式:
【0030】
【化1】

【0031】
(式中、nは2〜4である。Xは2〜40の炭素原子を含む置換又は非置換の−価の有機架橋ラジカルを表し、R1及びR2は同一であるか又は相違し、且つそれぞれは、6〜40の炭素原子、好適には6〜24の炭素原子、最適には6〜20の炭素原子を含むアリールラジカル末端基を表す。これらの末端基対はオープンエンド型の定義による。好適な態様では、Xは2価である)を有するものを含める。
【0032】
Xによって表される典型的な−価の炭化水素架橋ラジカルはアルキレン、アルキレン−Qm−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、及びアリーレン−(CH2y−Qm−(CH2y−アリーレンラジカル(式中それぞれのyは同一であるか、又は相違し、且つ0又は1の価を有し、そして、式中、mは0又は1の価を有する。Qは−C(R32−、−O−、−S−、−NR4−、−Si(R52−及び−CO−(式中、それぞれのR3は、同一であるか、又は相違し、且つ水素、1〜12の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル又はアニシルを表し、R4は水素又は置換もしくは非置換の1価の炭化水素ラジカル、例えば、1〜4の炭素原子を有するアルキルラジカルを表し;並びにそれぞれのR5は、同一であるか、又は相違し、且つ水素又はアルキルラジカル、好適にはC1〜C10アルキルラジカルを表す。)から選定される2価の架橋基を表す。)等の非環式ラジカル及び芳香族ラジカルの両方を含む。例えばその開示を参照によって本明細書に組み込む、米国特許第4,769,498号;米国特許第4,774,361号;米国特許第4,885,401号;米国特許第5,179,055号;米国特許第5,113,022号;米国特許第5,202,297号;米国特許第5,235,113号;米国特許第5,264,616号;米国特許第5,364,950号;米国特許第5,874,640号;米国特許第5,892,119号;米国特許第6,090,987号;及び米国特許第6,294,700号において、より完全に開示されているように、上記Xによって表されるより好適な非環式ラジカルは2価のアルキレンラジカルであるが、上記Xによって表されるより好適な芳香族ラジカルは2価のアリーレン及びビスアリーレンラジカルである。
【0033】
更に、所望ならば、上記の式(I)中の任意の所定のオルガノポリホスファイトは、イオン性ホスファイトであってよく、即ち、その開示を参照によって本明細書に組み込む、例えば米国特許第5,059,710号;米国特許第5,113,022号;米国特許第5,114,473号;及び米国特許第5,449,653号に記載されるように、−SO3M(式中、Mは無機又は有機カチオンを表す)、−PO3M(式中、Mは無機又は有機カチオンを表す)、−N(R631(式中、それぞれのR6は、同一であるか、又は相違し、且つ1〜30の炭素原子を含む炭化水素ラジカル、例えばアルキル、アリール、アルカリル、アラルキル及びシクロアルキルラジカルを表し、且つX1は無機又は有機アニオンを表す)及び−CO2M(式中、Mは無機又は有機カチオンを表す)から成る群から選定される1種又はそれ以上のイオン部位を含むことができる。従って、所望ならば、かかるオルガノポリホスファイトリガンドは1〜3のかかるイオン部位を含むことができるが、オルガノポリホスファイトリガンドが1つより多いかかるイオン部位を含む場合に、1つのかかるイオン部位のみが任意の所定のアリール部位上に置換されることが好適である。Mの適切なカチオン種は、これらに限定するものではないが、水素 (即ちプロトン)、アルカリ及びアルカリ土類金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムのカチオン、アンモニウムカチオン及び第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アルソニウムカチオン並びにイミニウムカチオンを含める。適切なアニオンX1は、例えば硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、塩化物、酢酸塩、シュウ酸塩等を含める。
【0034】
勿論、上記の式(I)のかかる非イオン性及びイオン性オルガノポリホスファイトの任意のR1、R2、X及びQラジカルは、所望ならば、本開示のプロセスの所望の結果に悪影響を及ぼさない、任意的に1〜30の炭素原子を含む、任意の適切な置換基により置換されることができる。勿論アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル及びシクロヘキシル置換基等の対応の炭化水素ラジカルに加えて、前記ラジカル上にあり得る置換基は、例えば―Si(R73等のシリルラジカル;−N(R72等のアミノラジカル;−アリール−P(R72等のホスフィンラジカル;−C(O)R7等のアシルラジカル;−OC(O)R7等のアシルオキシラジカル;−CON(R72及び−N(R7)COR7等のアミノラジカル;−SO27等のスルホニルラジカル、−OR7等のアルコキシラジカル;−SOR7等のスルフィニルラジカル;−SR7等のスルフェニルラジカル;−P(O)(R72等のホスホニルラジカル;並びにハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシラジカル等を含めてよく、好適にはここでのそれぞれのR7ラジカルは、個々に1〜約18個の炭素原子を有する同一又は異なる1価の炭化水素ラジカル(例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル及びシクロヘキシルラジカル)を表すが、−N(R72等のアミノ置換基中で統合されたそれぞれのR7は、窒素原子と共に複素環式ラジカルを形成する2価の架橋基を更に表すことができ、且つ−C(O)N(R72及び−N(R7)COR7等のアミド置換基中でNと結合した、それぞれのR7は水素であることもできる。勿論特定の所定のオルガノポリホスファイトを作る任意の置換又は非置換炭化水素ラジカル基は、同一であっても、又は相違してもよいということを理解されたい。
【0035】
より具体的に実例となる置換基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシル等の第1級、第2級及び第3級アルキルラジカル;フェニル及びナフチル等のアリールラジカル;ベンジル、フェニルエチル及びトリフェニルメチル等のアラルキルラジカル;トリル及びキシリル等のアルカリルラジカル;シクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル及びシクロヘキシルエチル等の脂環式ラジカル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH2CH2OCH3、−O(CH2CH22OCH3及び−O(CH2CH23OCH3等のアルコキシラジカル;フェノキシ等のアリールオキシラジカル;並びに―Si(CH33、―Si(OCH33、及び―Si(C373等のシリルラジカル;−NH2、−N(CH32、―NHCH3及び−NH(C25)等のアミノラジカル;−P(C652等のアリールホスフィンラジカル;−C(O)CH3、−C(O)C25及び−C(O)C65等のアシルラジカル;−C(O)OCH3等のカルボニルオキシラジカル;−O(CO)C65等のオキシカルボニルラジカル;−CONH2、−CON(CH32及び−NHC(O)CH3等のアミドラジカル;−S(O)225等のスルホニルラジカル;-S(O)CH3等のスルフィニルラジカル;−SCH3、−SC25、及び−SC65等のスルフェニルラジカル;−P(O)(C652、−P(O)(CH32、−P(O)(C252、−P(O)(C372、−P(O)(C492、−P(O)(C6132、−P(O)CH3(C65)及び−P(O)(H)(C65)等のホスホニルラジカルを含む。
【0036】
具体的な実例となるかかるオルガノビスホスファイトリガンドの例は以下:
【0037】
【化2】

【0038】
(式中、R1及びR2は、上記に定義した通りであり、且つR8〜R24は、それぞれ互いに独立して、水素原子、C1〜C20アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル又はシクロヘキシル置換基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH2CH2OCH3、−O(CH2CH22OCH3及び−O(CH2CH23OCH3等のアルコキシラジカル;フェノキシ等のアリールオキシラジカル;―Si(R73等のシリルラジカル;−C(O)R7等のアシルラジカル;−OC(O)R7等のアシルオキシラジカル;−CON(R72及び−N(R7)COR7等のアミドラジカル(式中、R7は上記に定義した通りである);ハロゲン又はトリフルオロメチルであることができる)を含む。
【0039】
より好適な態様では、実例となるオルガノビスホスファイトリガンドの例は、以下:
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、R1及びR2は上記に定義した通りであり、且つR28はC1〜C20アルキル又はシクロアルキルラジカル或いはアルコキシラジカルであってよく;R29は水素原子、C1〜C2Oアルキル又はシクロアルキルラジカル或いはアルコキシラジカルであることができる)を含める。
【0042】
最適な態様では、オルガノビスホスファイトリガンドはリガンドAである。
【0043】
【化4】

【0044】
本開示のプロセスにおいて用いることができるオルガノモノホスフィンは3つのアリール又はアルキルラジカル、或いはその組合せと共有結合した1つのリン原子を含む、任意の有機化合物を含む。オルガノモノホスフィンリガンドの混合物も用いることができる。
【0045】
代表的なオルガノモノホスフィンは、式:
【0046】
【化5】

【0047】
(式中、それぞれのR29、R30及びR31は同一であっても、又は相違してもよく、且つアルキルラジカル或いは4〜40又はそれより多い炭素原子を含む置換又は非置換のアリールラジカルを表す)を有するものを含む。かかるオルガノモノホスフィンは、より詳細に記載されている、例えばその開示を参照によって本明細書に組み込む、米国特許第3,527,809号に見出すことができる。式中、それぞれのR29、R30及びR31がフェニルであるトリフェニルホスフィン、すなわち式(II)の化合物は、好適なオルガノモノホスフィンリガンドの例である。
【0048】
本開示のヒドロホルミル化プロセスの反応流体中に存在する金属-リガンド錯体(複数)の濃度は、所望されるヒドロホルミル化プロセスを触媒するために必要な金属濃度を提供するために最小限に必要な量であることのみを必要とする。一般に、プロピレンのヒドロホルミル化における金属濃度、好適にはロジウム濃度は、ヒドロホルミル化反応流体の重量に基づき、約100万分の1(ppm)超であり、そして好適には約20ppm超である。一般に、プロピレンのヒドロホルミル化における金属濃度は、ヒドロホルミル化反応流体の重量に基づき、約100万分の500(ppm)未満、好適には約120ppm未満、そしてより好適には約95ppm未満である。ブテン及びより高分子量のオレフィン等のC4+オレフィンの金属の適切な濃度は、プロピレンと比較して、より高分子のオレフィンが減少した活性を示すために、より高くすることができる。
【0049】
遊離及び錯化形態を含めて、本開示の工程において採用することができるオルガノポリホスファイト及びオルガノモノホスフィンリガンドの両方は、ヒドロホルミル化反応流体中に存在する遷移金属に対するそれぞれのリガンドのモル比が少なくとも1(即ち遷移金属のモル当り、少なくとも1モルのそれぞれのリガンド)であるような量で、プロセスに提供される。好適にはそれぞれのリガンドの量は、遷移金属のモル当り、少なくとも2モルである。
【0050】
ヒドロホルミル化反応流体中の遷移金属、オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの濃度は、周知の分析方法によって容易に決定することができる。これらの濃度分析から、要求されるモル比は、容易に計算及び追跡することができる。遷移金属、好適にはロジウムは、原子吸光又は誘導結合プラズマ(ICP)技術によって最もよく決定される。リガンドは、31P核磁気共鳴分光法(NMR)によって、又は一定分量の反応流体の高圧液相クロマトグラフィー(HPLC)によって最も量子化される。オンラインHPLCは、リガンド及び遷移金属-リガンド錯体の濃度を監視するためにも使用することができる。異なるリガンドは、必要とされるような適切な内部標準を用いて化学シフト及び/又は保持時間を確立するために、定量的方法において、独立して(例えば反応流体中に遷移金属が存在せずに)特徴付けられるべきである。遷移金属-オルガノポリホスファイトリガンド及び遷移金属-オルガノモノホスフィンリガンド錯体は、錯化リガンド(複数)の定量化を可能にする任意の上記の同定分析方法を介して観察することができる。
【0051】
ヒドロホルミル化反応流体中のいずれかのリガンドの濃度は、任意の適切な方法、例えば一定量のリガンドをすべて一度に添加することによって、又はヒドロホルミル化反応器への付加的添加(インクレメント的添加)において、増加又は維持することができる。本開示の1つの態様では、リガンド濃度は、反応器への液体供給として、連続的に、又は間欠的に可溶化剤の中に一定量のリガンドを添加することによって増加又は維持することができる。或いは、追加のリガンドは、ヒドロホルミル化反応器の任意の下流点で、前記反応器に逆循環させるために、循環流(又は循環流を生み出すユニット)の中に添加することができる。連続的なヒドロホルミル化プロセスの間の任意の時点で、追加のオルガノポリホスファイト及び/又はオルガノモノホスフィンリガンド(複数)が反応流体に供給して、分解の間のかかるリガンドの損失を埋め合わせることができる。
【0052】
一般に、本開示のヒドロホルミル化工程は、任意的な操作可能な反応温度で実施することができる。好適には、反応温度は、約−25℃超、より好適には約50℃超である。好適には、反応温度は約200℃未満、好適には約120℃未満である。
【0053】
一般に、本開示のヒドロホルミル化プロセスは、任意的な操作可能な反応圧力で実施することができる。好適には、反応は、少なくとも約15psia(103.4kPa)、より好適には少なくとも約25psia(172.4kPa)の総圧力で実施する。好適には、反応圧力は、約2,000psia(13,789.6kPa)を超えず、より好適には、約300psia(2,068.4kPa)を超えない。
【0054】
ヒドロホルミル化反応器は、好適にはインペラ、インペラシャフト、オレフィン供給ライン及びフロー制御、合成ガス(syn gas)供給ライン及びフロー制御、ベントライン及びベントフロー制御、反応器内部での圧力を検知するための総圧力センサー、反応器からの生成物流体を除去するための出口ライン並びに反応器に戻されて回収された触媒を供給する入口ラインを備える。合成ガス供給ラインは、典型的にスパージャーと共に反応器中で終結する。任意に反応器は、複数の反応ゾーン中に反応器の内側チャンバーを分ける1つ又はそれ以上のバッフルを含むことができる。典型的には、それぞれのバッフルは、反応器の内側の壁に取り付けられて、そしてインペラシャフトと垂直に反応器中に伸び;そしてそれぞれのバッフルは、インペラシャフトの移行、並びに反応流体及びガスの移行のために十分な大きさの開口部または穴を含む。典型的には、かかるバッフルにより形成される反応器中のそれぞれのチャンバー又はゾーンは、インペラ及びチャンバー又はゾーンにおいて循環し、そして反応流体を混合するためのガススパージャーを含む。
【0055】
合成ガス供給流入速度は、所望のヒドロホルミル化プロセスを得るために充分な任意的な操作可能な流入速度とすることができる。典型的には、合成ガス供給流入速度は、特定の触媒の形態、オレフィン供給流入速度及び他の操作条件に応じて、広く変化させることができる。適切な合成ガス供給流入速度及びベント流入速度は、参照によって本明細書に組み込むものとする、1999年12月に刊行された“Process Economics Program Report 21D: Oxo Alcohols 21d,” SRI Consulting, Menlo Park, Californiaにおいて記載されている。
【実施例】
【0056】
発明の特定の態様
本開示のプロセスは、純粋に本発明の使用の例示を意図するものである。以下の実施例の検討によって更に明らかにされるだろう。本開示の他の態様は、本明細書の検討又は本明細書において開示されたプロセスの実施から、当業者には明らかであろう。
【0057】
以下の実施例における反応速度は、1時間につき、1リットルの反応流体容積につき製造されたアルデヒドのモルとして報告される(gmole/1/hr)。プロピレン及び合成ガス供給(他に断りのない限り、1:1モルのCO:H2)の純度は、99.8%超である。
【0058】
ヒドロホルミル化工程の一般手順
一方は、以下に示すように、ロジウム触媒前駆体(ジカルボニルアセチルアセトネートロジウム(I))及び二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンドAを含み、もう一方は、トリフェニルホスフィンを含む、2つの貯蔵溶液を乾燥、脱気トルエン中で調製する。真空下で、100mlのParrミニ反応器の中に溶液を移す。その後20〜30分間、合成ガス下で、得られた触媒溶液を予備加熱する。反応器の端と上のいずれかにバルブを有する開閉可能な供給系に液体プロピレンを添加し、そして合成ガスにより正確な量のプロピレンを反応器中で加圧する。実際の合成ガス圧力を決定するために、多様な温度でのオレフィン/トルエン蒸気圧に関して既に生じているデータを使用する。反応器中にプロピレンを導入し、そして反応中に必要とされるより多くの合成ガスを供給することによって維持される所望される圧力を反応器にもたらす。定期的に液体反応サンプルを採取し、そしてDB−1 30m×0.32mm、1μmのフィルムカラムを備えたAgilent Technologies 6890ガスクロマトグラフィー上で分析する。成分分析は唯一の溶媒のGC面積パーセントに基づく。
【0059】
比較実験1
上記のヒドロホルミル化工程の一般手順を用いて、ロジウム(ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートとして、75ppm)を含む触媒及びトルエン(20ml)中の二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンドA(4当量/Rh)によりヒドロホルミル化反応器を充填する。1:1の合成ガス下で、触媒溶液を80℃まで予備加熱した後、300psig(167psigの合成ガス圧力)の総反応圧力を与えるために充分である1:1の合成ガスにより、プロピレン(4.7g)を反応器中で加圧する。上記のとおり、30分及び60分で反応溶液を分析する。
【0060】
実施例2
トリフェニルホスフィン(4当量/Rh)の添加を除き、比較実験1の手順を繰り返す。結果は表1に示す。
【0061】
実施例3
用いた反応温度が90℃であることを除き、実施例2において記載した手順と同一の手順を行う。結果は表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
n:i比率は、アルデヒド生成物の混合物におけるブチルアルデヒド生成物(n)対イソブチルアルデヒド生成物(i)の標準の相対量について言及する。トリフェニルホスフィンの添加が反応速度又は直鎖アルデヒドに対する生成物位置選択性(N:I比率)に悪影響を及ぼさなかったことが、表1から見られる。
【0064】
比較実験4〜5及び実施例6〜7
小規模連続反応系において、安定性データを得る。75ppmのRh(ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートとして)及び25mLのテトラグリム中のRhにつき、4当量のリガンドAから成る触媒溶液をそれぞれ4つの肉厚なガラス管に添加し、そして実験中そのままにする。1mlのトルエン中に溶解したRhにつき、4当量のトリフェニルホスフィンを2つの管にさらに添加する。一酸化炭素、水素、窒素及び1−ブテンを90℃の反応器中に連続的に供給する。過剰な供給ガスを有する反応器から、トルエン及び生成物を含む揮発性物質を連続的に揮散させ、そしてインラインガスクロマトグラフを介して分析する。注意深く反応及び供給速度のバランスをとることによって、反応器の液体レベルを手動で制御する。反応器を介する総ガス流入は15〜20標準リットル/hrである。転化率は20〜30%であり、総圧力は150psigで維持する。
【0065】
Rh/二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンドA(比較実験4及び5)及びRh/二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンドA/トリフェニルホスフィン(実施例6及び7)との反応に関するデータは、表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
生成物の選択性は、触媒錯体の性質の指標であり、且つ経時的な選択性の変化は、リガンド安定性の指標である。トリフェニルホスフィンが存在しない比較実験4及び5は、11〜12日後に分解の兆しを明確に示しているが、実施例6及び7は22日後でも分解の兆しがないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアルデヒド生成物を連続的に製造するヒドロホルミル化方法であって、当該方法がヒドロホルミル化反応流体中において、連続反応条件下に、二重オープンエンド型オルガノポリホスファイトリガンド及びオルガノモノホスフィンリガンドの混合物であって、その少なくとも1方のリガンドが遷移金属に結合している混合物の存在下に、1種又はそれ以上のオレフィン性不飽和化合物、一酸化炭素及び水素を接触させて、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を形成させる工程を含んで成り;前記オルガノポリホスファイトリガンドが、それぞれ3つのヒドロカルビルオキシラジカルと結合した複数のリン(III )原子を含み、その任意の非架橋種が(置換又は非置換の)アリールオキシラジカルから本質的に成り;前記金属に対する前記オルガノモノホスフィン及び前記オルガノポリホスファイトの両方のモル比が少なくとも1となる様式で前記接触を実施する方法。
【請求項2】
前記オルガノポリホスファイトリガンドが以下の式:
【化1】

(式中、nは2〜4であり、Xは2〜40の炭素原子を含む置換又は非置換の価の有機架橋ラジカルを表し、そしてそれぞれのR1及びR2は同一であるか又は相違し、且つ6〜40の炭素原子を含む置換又は非置換の1価のアリールラジカルを表す)によって表される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属に対するオルガノポリホスファイトリガンドのモル比が、オルガノポリホスファイトリガンドを前記反応流体に添加することによって増加又は維持される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オルガノモノホスフィンリガンドが以下の式:
【化2】

(式中、R29、R30及びR31は、それぞれ独立に、4〜40又はそれより多い炭素原子を含むアルキルもしくはシクロアルキルラジカル又は置換もしくは非置換のアリールラジカルを表し、且つ同一であっても、又は相違してもよい)によって表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記R29、R30及びR31が、それぞれ独立に、4〜40又はそれより多い炭素原子を含む置換又は非置換のアリールラジカルを表す請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オルガノモノホスフィンリガンドがトリフェニルホスフィンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属の濃度が、ヒドロホルミル化反応流体の重量に基づき、約100万分の1(ppm)超で且つ約500ppm未満である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程温度が約−25℃超で且つ約200℃未満である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記一酸化炭素、水素及びオレフィン反応体(複数)を含む総ガス圧力が約25psia(172kPa)超で且つ約2,000psia(13,790kPa)未満である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記オレフィンが2〜30の炭素原子を有するアキラルα−オレフィン又は4〜20の炭素原子を有するアキラル内部オレフィンである請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記一酸化炭素及び水素が1:10〜100:1のH2:COモル比を与える量で存在する請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記遷移金属がロジウム、コバルト、イリジウム、ルテニウム及びその混合物から選定されるVIII族金属である請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
オルガノポリホスファイトリガンドの混合物を用いるか;又はオルガノモノホスフィンリガンドの混合物を用いるか;又はオルガノポリホスファイトリガンドの混合物及びオルガノモノホスフィンリガンドの混合物を一緒に用いる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1種又はそれ以上の反応体、一酸化炭素及び水素をヒドロホルミル化触媒の存在下に反応させて、1種又はそれ以上の生成物を含む反応生成物流体を生成させることを含んで成るヒドロホルミル化方法であって、前記反応を触媒金属、トリアリールホスフィン化合物及び式
【化3】

の二重オープンエンド型ビスホスファイトリガンド(リガンドA)の存在下に、実施する方法。
【請求項15】
少なくとも1種のアルデヒド生成物を連続的に製造するヒドロホルミル化方法であって:当該方法がヒドロホルミル化反応流体中において、連続反応条件下に、リガンドA及びトリフェニルホスフィンの混合物であって、その少なくとも1つのリガンドが遷移金属に結合している混合物の存在下に、1種又はそれ以上のC2〜C4アキラルオレフィン、一酸化炭素及び水素を接触させて、遷移金属-リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を生成させる工程を含んで成る方法であって、前記金属がロジウムを含み、前記金属に対する前記オルガノモノホスフィン及び前記オルガノポリホスファイトの両方のモル比が少なくとも1である様式で前記接触を実施し、前記プロセス温度が約−25℃超で且つ約200℃未満であり、そして前記一酸化炭素、水素及びオレフィン反応体(複数)を含む総ガス圧力が、約25psia(172kPa)超で且つ約2,000psia(13,790kPa)未満である方法。

【公表番号】特表2012−522048(P2012−522048A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503408(P2012−503408)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067416
【国際公開番号】WO2010/117391
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508168701)ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】