説明

二重係止コネクタ

【課題】スペーサによる二重係止状態を簡単に目視判別することができる二重係止コネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタハウジング10のスペーサ収容空間12は、一側の外側面10aに開口するスペーサ挿入口と、他側の外側面10bに開口する装着状態検知用開口12bと、を備え、スペーサ収容空間に挿入装着されるスペーサ20は、当該スペーサが仮係止位置に移動したときにコネクタハウジングのスペーサ係止手段と係合して移動を規制する仮係止突起21と、当該スペーサが本係止位置に移動したときに隣接する端子収容孔11間を仕切るように挿入方向に沿って延出して装備された隔離壁片24と、隔離壁片の先端に延出形成されて当該スペーサが本係止位置に移動したときに装着状態検知用開口を塞ぐ凸片25と、を備え、装着状態検知用開口及び凸片は端子金具30の幅の一部にオーバーラップするように装備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングの端子収容孔に装着された端子金具を前記コネクタハウジングに挿入装着されるスペーサにより二重係止状態にする二重係止コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタハウジングの端子収容孔に装着された端子金具を前記コネクタハウジングに挿入装着されるスペーサにより二重係止状態にする二重係止コネクタが各種開発されている。
【0003】
このような二重係止コネクタでは、コネクタハウジングに装着するスペーサは、コネクタハウジング側に装備されるスペーサ係止手段との係合によって、仮係止位置及び本係止位置の2位置に位置決め可能にされる。
【0004】
ここに、仮係止位置とは、コネクタハウジングの端子収容孔に対して端子金具の着脱を許容する位置である。また、本係止位置とは、仮係止位置から更にハウジング内にスペーサを押し込んだ位置で、スペーサの一部が端子金具に係合して、端子金具の抜けを防止する位置である。通常のコネクタハウジングは、端子収容孔内に、挿入された端子金具と係合して端子金具の抜けを防止するランスを備えている。
【0005】
二重係止コネクタは、コネクタハウジングの端子収容孔に挿入装着された端子金具を、ハウジング内のランスと前記スペーサとで、二重に抜け止めする。
【0006】
図10は、下記特許文献1に開示された二重係止コネクタを示したものである。
この二重係止コネクタ100は、電線108の端部に接続される複数の端子金具110と、これらの複数の端子金具110が挿入装着されるコネクタハウジング120と、コネクタハウジング120に装着されるスペーサ130と、を備える。
【0007】
コネクタハウジング120は、端子金具110が挿入装着される複数の端子収容孔121と、端子収容孔121を横断するスペーサ収容空間122と、スペーサ収容空間122を臨む位置に装備される不図示のスペーサ係止手段と、を備える。
【0008】
スペーサ収容空間122は、スペーサ130を挿入可能にコネクタハウジング120の一側の外側面120aに、スペーサ130を挿入可能に開口して設けられている。
【0009】
スペーサ130は、隔離壁片131と、仮係止突起132と、本係止突起133と、端子係合部134と、を備える。
【0010】
隔離壁片131は、当該スペーサ130がスペーサ収容空間122に挿入された際に、コネクタハウジング120において隣接する端子収容孔121間を隔離している隔離壁123の代わりに、端子収容孔121相互間を隔絶する凸片である。
【0011】
仮係止突起132は、スペーサ130の両外側壁135における前端面の下端側に突設された突起である。この仮係止突起132は、スペーサ収容空間122への挿入操作によって当該スペーサ130が仮係止位置に移動したときに前述のスペーサ係止手段と係合して、スペーサ130の挿入方向(図10における矢印Y1方向)への移動を規制する。
【0012】
本係止突起133は、スペーサ130の両外側壁135における後端面の中間部に突設された突起である。この本係止突起133は、スペーサ130が本係止位置に移動したときに前述のスペーサ係止手段と係合して、スペーサ130の挿入方向への移動を規制する。
【0013】
即ち、スペーサ130は、図10に矢印Y1で示す方向の挿入操作によって、スペーサ収容空間122に挿入され、挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に前述のスペーサ係止手段(不図示)によって位置決め可能になっている。
【0014】
端子係合部134は、スペーサ収容空間122に挿入されたスペーサ130が前記本係止位置に移動したときに、端子収容孔121に収容されている端子金具110の係止片112と係合して、端子金具110の抜けを防止する端子金具係止状態になる。
【0015】
端子収容孔121に装着された端子金具110は、端子収容孔121内に装備される抜け止め用のランス(不図示)による係止と、前述の端子係合部134による係止とで、二重に係止された状態になる。
【0016】
ところで、スペーサ130に装備された仮係止突起132は、仮係止位置から本係止位置に移動する際及び本係止位置から仮係止位置に戻される場合に、コネクタハウジング120側のスペーサ係止手段を乗り越える。そのため、仮係止位置と本係止位置との間の移動を繰り返すと、コネクタハウジング120側のスペーサ係止手段との擦れによって仮係止突起132が破損してしまうことがあった。
【0017】
そして、特許文献1におけるスペーサ130は、仮係止突起132が破損すると、スペーサ130を仮係止位置に固定する手段がないため、スペーサ130を仮係止位置に戻した際に、スペーサ130がコネクタハウジング120から不用意に脱落するおそれがあった。
【0018】
また、特許文献1における二重係止コネクタ100の場合は、スペーサ130が仮係止位置から本係止位置に移動した際の外観変化が少なく、スペーサ130が適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することができないという問題もあった。
【0019】
一方、下記特許文献2には、前述した特許文献1における不都合を回避することができる二重係止コネクタが開示されている。
【0020】
具体的には、特許文献2に開示された二重係止コネクタにおけるスペーサは、コネクタハウジングの隣接する端子収容孔間に挿入される隔離壁(図10における隔離壁片131に相当)相互が挿入方向と直交する方向に延在する連結壁で結合されて、端子金具を挿通させる開口が格子状に並ぶ構造を有している。
【0021】
このようなスペーサの構造では、コネクタハウジング側のスペーサ係止手段が仮係止突起の破損によってスペーサを仮係止位置に固定することができなくなっても、スペーサの隔離壁相互を連結している連結壁がコネクタハウジングに収容中の端子金具に引っかかるため、スペーサがコネクタハウジングから不用意に脱落することを回避することができる。
【0022】
また、下記特許文献2に開示された二重係止コネクタの場合、コネクタハウジングに装備されるスペーサ収容空間は、コネクタハウジングの一側から他側に貫通して形成されている。そして、スペーサ収容空間に挿入されるスペーサは、本係止位置に移動したときには、当該スペーサにおける先端側の連結壁が前記コネクタハウジングにおけるスペーサ収容空間の他側の開口に嵌合して、仮係止状態の時には開放していた開口が本係止状態の時には閉じられた状態に変わる構造になっている。そのため、コネクタハウジングの他側の開口がスペーサの先端の連結壁により閉じられたか否かを視認することで、スペーサが適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平7−73923号公報
【特許文献2】特開平7−226250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ところが、特許文献2に開示された二重係止コネクタの場合、端子金具を挿通させる開口が格子状に並ぶ構造にスペーサを形成するため、スペーサは壁部が縦横に交差する密構造となって、スペーサの構造の複雑化や重量化を避けられないという問題が生じた。
【0025】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、スペーサをコネクタハウジング上における本係止位置から仮係止位置に戻した際に、仮係止突起の破損によってスペーサが不用意にコネクタハウジングから脱落することがなく、且つ、スペーサによる二重係止状態を簡単に目視判別することができ、しかも、スペーサにおける壁部の増加を抑えてスペーサの構造の単純化や軽量化を図ることのできる二重係止コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)端子金具が挿入装着される複数の端子収容孔と、前記端子収容孔を横断するスペーサ収容空間と、前記スペーサ収容空間を臨む位置に装備されたスペーサ係止手段と、を備えたコネクタハウジングと、
前記スペーサ収容空間に挿入され、前記挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に前記スペーサ係止手段によって位置決め可能なスペーサと、
を備えて、前記端子収容孔に装着された端子金具を本係止位置に位置決めされた前記スペーサにより二重係止状態にする二重係止コネクタであって、
前記スペーサ収容空間は、
前記スペーサを挿入可能に前記コネクタハウジングの一側の外側面に開口するスペーサ挿入口と、前記スペーサ挿入口に対向する前記コネクタハウジングの他側の外側面に開口する装着状態検知用開口と、を備え、
前記スペーサは、
当該スペーサが前記仮係止位置に移動したときに前記スペーサ係止手段と係合して前記スペーサの挿入方向への移動を規制する仮係止突起と、
当該スペーサが前記本係止位置に移動したときに前記スペーサ係止手段と係合して前記スペーサの挿入方向への移動を規制する本係止突起と、
前記本係止位置に移動したときに前記端子金具に係合して前記端子金具の抜けを防止する端子係合部と、
前記本係止位置に移動したときに隣接する前記端子収容孔間を仕切るように、当該スペーサの挿入方向に沿って延出して装備された隔離壁片と、
前記コネクタハウジングにおける前記他側の外側面に沿うように前記隔離壁片の先端に延出形成されて、当該スペーサが前記本係止位置に移動したときに前記装着状態検知用開口を塞ぐ凸片と、
を備え、
前記装着状態検知用開口及び前記凸片は、前記端子収容孔に挿入された端子金具の幅の一部にオーバーラップするように装備されていることを特徴とする二重係止コネクタ。
【0027】
上記(1)の構成によれば、仮係止突起の破損によってコネクタハウジング側のスペーサ係止手段がスペーサを仮係止位置に固定することができなくなっても、スペーサを本係止位置から仮係止位置に移動させたときには、スペーサの隔離壁片の先端に延出形成された凸片がコネクタハウジングに収容中の端子金具に引っかかるため、スペーサがコネクタハウジングから不用意に脱落することを回避することができる。
【0028】
また、スペーサが仮係止位置から本係止位置に移動した時には、コネクタハウジングの他側の外側面に開口する装着状態検知用開口が開放している状態から凸片により塞がれた状態に変わるため、装着状態検知用開口が凸片により閉じられたか否かを視認することで、スペーサが適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することができる。
【0029】
しかも、凸片は、端子金具の幅の一部にオーバーラップする寸法で良い。従って、コネクタハウジングにおいて端子収容孔が幅方向に3個以上並ぶためにスペーサには隔離壁片が複数配列される場合でも、凸片は隣接する隔離壁片同士を連結する連結壁にはならない。換言すれば、隣接する隔離壁同士が連結壁により連結されることで壁部が格子状に形成される構造となる従来のスペーサと比較すると、スペーサにおける壁部の増加を抑えてスペーサの構造の単純化や軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による二重係止コネクタによれば、コネクタハウジング側のスペーサ係止手段が仮係止突起の破損によってスペーサを仮係止位置に固定することができなくなっても、スペーサを本係止位置から仮係止位置に移動させたときには、スペーサの隔離壁片の先端に延出形成された凸片がコネクタハウジングに収容中の端子金具に引っかかるため、スペーサがコネクタハウジングから不用意に脱落することを回避することができる。
【0031】
また、スペーサが仮係止位置から本係止位置に移動した時には、コネクタハウジングの他側の外側面に開口する装着状態検知用開口が開放している状態から凸片により塞がれた状態に変わるため、装着状態検知用開口が凸片により閉じられたか否かを視認することで、スペーサが適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することができる。
【0032】
しかも、凸片は、端子金具の幅の一部にオーバーラップする寸法で良い。従って、コネクタハウジングにおいて端子収容孔が幅方向に3個以上並ぶためにスペーサには隔離壁片が複数配列される場合でも、凸片は隣接する隔離壁片同士を連結する連結壁にはならない。換言すれば、隣接する隔離壁同士が連結壁により連結されることで壁部が格子状に形成される構造となる従来のスペーサと比較すると、スペーサにおける壁部の増加を抑えてスペーサの構造の単純化や軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る二重係止コネクタの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示したコネクタハウジングを一側から見た斜視図である。
【図3】図1に示したコネクタハウジングを他側から見た斜視図である。
【図4】図1に示したスペーサを先端側から見た斜視図である。
【図5】図1に示したスペーサが仮係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタの横断面図である。
【図6】図1に示したスペーサが本係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタの横断面図である。
【図7】図1に示したスペーサが本係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタを他側から見た斜視図である。
【図8】本実施形態に対する比較例としての二重係止コネクタの分解斜視図である。
【図9】図8に示した二重係止コネクタにおいてスペーサが仮係止位置に位置決めされている状態の横断面図である。
【図10】従来の二重係止コネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る二重係止コネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図1〜図7は本発明に係る二重係止コネクタの一実施形態を示したもので、図1は本発明の一実施形態の二重係止コネクタの分解斜視図、図2は図1に示したコネクタハウジングを一側から見た斜視図、図3は図1に示したコネクタハウジングを他側から見た斜視図、図4は図1に示したスペーサを先端側から見た斜視図、図5は図1に示したスペーサが仮係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタの横断面図、図6は図1に示したスペーサが本係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタの横断面図、図7は図1に示したスペーサが本係止位置に位置決めされている状態の二重係止コネクタを他側から見た斜視図である。
【0036】
この一実施形態の二重係止コネクタ1は、図1に示すように、コネクタハウジング10と、スペーサ20と、を備える。
【0037】
コネクタハウジング10は、図1〜図3に示すように、複数(本実施形態では、2個)の端子収容孔11と、これらの端子収容孔11を横断するスペーサ収容空間12と、スペーサ収容空間12を臨む位置に装備されたスペーサ係止突起13(図2参照)と、を備えている。
【0038】
端子収容孔11は、端子金具30(図1では、端子金具30の先端部のみを図示している)が矢印X1方向から挿入装着される孔で、コネクタハウジング10の前後方向(図1における矢印X2方向)に沿って貫通形成されている。
【0039】
図示していないが、端子収容孔11には、適正に挿入が完了した端子金具30に係合して端子金具30の抜けを防止するランスが設けられている。
【0040】
スペーサ収容空間12は、スペーサ20を挿入装着するための孔である。本実施形態の場合、スペーサ収容空間12は、スペーサ20を挿入可能にコネクタハウジング10の一側の外側面10a(図2参照)に開口するスペーサ挿入口12aと、スペーサ挿入口12aに対向するコネクタハウジング10の他側の外側面10b(図3参照)に開口する装着状態検知用開口12bと、を備えている。このスペーサ収容空間12は、コネクタハウジング10の一側の外側面10aから他側の外側面10bに貫通して装備されている。スペーサ収容空間12の貫通方向は、端子収容孔11の貫通方向と直交している。
【0041】
本実施形態の場合、装着状態検知用開口12bは、スペーサ挿入口12aよりも小さい開口である。
【0042】
スペーサ係止突起13は、スペーサ収容空間12に挿入されたスペーサ20を仮係止位置、及び本係止位置に位置決めするスペーサ係止手段としての突起である。このスペーサ係止突起13は、図2に示すように、スペーサ収容空間12において端子収容孔11の配列方向(図2の矢印H2方向)に対向する各内側面12cの前後の4箇所に設けられている。図1及び図2に示す矢印Y2は、スペーサ収容空間12に対するスペーサ20の挿入方向を示している。
【0043】
スペーサ20は、図1及び図4に示すように、仮係止突起21と、本係止突起22と、端子係合部23と、隔離壁片24と、凸片25と、を備える。
【0044】
仮係止突起21は、図4に示すように、コネクタハウジング10における一対の内側面12cと同様に対向配置されたスペーサ20の一対の側壁片26の前端面26a及び後端面26bの先端側(図4では、矢印Y3方向側)に、それぞれに突設されている。
【0045】
一対の側壁片26は、スペーサ20をスペーサ収容空間12に挿入するときに、図2に示したスペーサ収容空間12の内側面12cと対峙する壁片である。スペーサ20をスペーサ収容空間12に挿入する際には、一対の側壁片26と対峙する一対の内側面12cが、スペーサ20の移動を案内するガイド面となる。
【0046】
また、それぞれの側壁片26には、仮係止突起21がスペーサ係止突起13を乗り越える際に仮係止突起21を変位させて仮係止突起21に作用する荷重を軽減するために、スリット26cが形成されている。
【0047】
一対の側壁片26の基端は、図5及び図6に示すように、連結壁27により連結されている。連結壁27は、スペーサ20が本係止位置に到達したときには、図6に示すように、スペーサ挿入口12aを塞ぐ蓋として機能する。
【0048】
一対の側壁片26に装備されたそれぞれの仮係止突起21は、図5に示すように当該スペーサ20が仮係止位置に移動したときに、スペーサ係止突起13を乗り越えてスペーサ係止突起13により抜け止めされた係合状態(後述の比較例において、図9に示すように仮係止突起21がスペーサ係止突起13を乗り越えた状態)になり、当該スペーサ20の挿入方向への移動を規制する。
【0049】
本係止突起22は、一対の側壁片26における前端面26a及び後端面26b上に、仮係止突起21とは挿入方向に位置をずらして装備されている。
【0050】
この本係止突起22は、スペーサ収容空間12に挿入された当該スペーサ20が図6に示すように本係止位置に移動したときに、スペーサ係止突起13を乗り越えてスペーサ係止突起13により抜け止めされた係合状態になり、当該スペーサ20の挿入方向への移動を規制する。
【0051】
端子係合部23は、図4に示すように連結壁27から端子収容孔11側に隆起した突起部で、スペーサ20が本係止位置に移動したときに、図6に示すように端子金具30に係合して端子金具30の抜けを防止する。
【0052】
隔離壁片24は、スペーサ収容空間12内において隣接する前記端子収容孔11相互間におけるコンタミ(異物侵入)対策手段として装備されている。この隔離壁片24は、スペーサ20が本係止位置に移動したときに、隣接する端子収容孔11間を仕切るように、当該スペーサ20の挿入方向(図4の矢印Y3方向)に沿って延出する構造に、連結壁27上に装備されている。
【0053】
凸片25は、図5に示すように、コネクタハウジング10における他側の外側面10bに沿うように、隔離壁片24の先端に延出形成されている。本実施形態の場合、凸片25の延出方向は、図1及び図4の矢印Z3方向で、隔離壁片24の延出方向である矢印Y3方向とは直交する方向である。
【0054】
本実施形態の場合、凸片25は、当該スペーサ20が本係止位置に移動したときに、図6及び図7に示すように、当該凸片25の先端面(外表面)25aがコネクタハウジング10における他側の外側面10bと面一になって、装着状態検知用開口12bを塞ぐ。
【0055】
また、本実施形態の場合、装着状態検知用開口12b及び凸片25は、図6に示すように、端子収容孔11に挿入された端子金具30の幅の一部であるラップ域Rにオーバーラップするように寸法や配置が設定されて、装備されている
【0056】
以上に説明したスペーサ20は、スペーサ収容空間12に挿入されると、挿入方向に位置をずらした仮係止位置(図5に示す位置)及び本係止位置(図6に示す位置)の2位置に、スペーサ係止突起13によって位置決め可能である。
【0057】
本実施形態の二重係止コネクタ1は、コネクタハウジング10に対して、スペーサ20を図5に示す仮係止位置に位置決めした状態で、各端子収容孔11に対して、端子金具30の着脱作業を行う。
【0058】
そして、コネクタハウジング10への端子金具30の装着が完了したら、図6に示すように、スペーサ20をスペーサ収容空間12に押し込んで、スペーサ20を本係止位置に移動させる。すると、既に端子収容孔11内のランスとの係合によって抜け止めされている端子金具30に対して、図6に示すようにスペーサ20の端子係合部23が端子金具30に係合した状態となり、端子金具30の抜け止めが二重に構築された二重係止状態が得られる。
【0059】
以上に説明した一実施形態の二重係止コネクタによれば、仮係止突起21の破損によってコネクタハウジング10側のスペーサ係止突起13がスペーサ20を仮係止位置に固定することができなくなっても、スペーサ20を本係止位置から仮係止位置に移動させたときには、図5に示すように、スペーサ20の隔離壁片24の先端に延出形成された凸片25がコネクタハウジング10に収容中の端子金具30に引っかかる。そのため、スペーサ20がコネクタハウジング10から不用意に脱落することを回避することができる。
【0060】
また、スペーサ20が仮係止位置から本係止位置に移動した時には、図5に示すようにコネクタハウジング10の他側の外側面10bに開口する装着状態検知用開口12bが開放している状態から、図6に示すように凸片25により塞がれた状態に変わる。
【0061】
そのため、装着状態検知用開口12bが凸片25により閉じられたか否かを視認することで、スペーサ20が適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することができる。
【0062】
しかも、凸片25は、図6に示したように端子金具30の幅の一部のラップ域Rにオーバーラップする寸法で良い。従って、コネクタハウジング10において端子収容孔11が幅方向に3個以上並ぶためにスペーサ20には隔離壁片24が複数配列される場合でも、凸片25は隣接する隔離壁片24同士を連結する連結壁にはならない。換言すれば、隣接する隔離壁同士が連結壁により連結されることで壁部が格子状に形成される構造となる従来のスペーサと比較すると、スペーサ20における壁部の増加を抑えてスペーサ20の構造の単純化や軽量化を図ることができる。
【0063】
図8及び図9は比較例としての二重係止コネクタを示したもので、図8は比較例としての二重係止コネクタの分解斜視図、図9は図8に示した二重係止コネクタにおいてスペーサが仮係止位置に位置決めされている状態の横断面図である。
【0064】
比較例の二重係止コネクタにおけるコネクタハウジング10Aは、上記の一実施形態のコネクタハウジング10の構成の一部を変更したものである。変更した構成は、一実施形態に示したスペーサ収容空間12の代わりに、スペーサ収容空間12Aを装備した点である。スペーサ収容空間12Aは、コネクタハウジング10の他側の外側面10bに貫通しない行き止まりの構造である点が一実施形態のスペーサ収容空間12とは異なっているが、それ以外の構成は一実施形態と同様で良く、一実施形態と同様の構成については同番号を付して説明を省略する。
また、比較例におけるスペーサ20Aは、上記の一実施形態のスペーサ20の一部を変更したものである。一実施形態に示したスペーサ20とは、隔離壁片24が先端に凸片25を有しない単純な突片状になっている点が、異なっている。
【0065】
比較例の二重係止コネクタの場合も、スペーサ20Aを仮係止位置や本係止位置の2つの位置に位置決めする係止構造は、一実施形態と同様で良い。
【0066】
図9は、比較例の二重係止コネクタにおいて、スペーサ20Aに装備された仮係止突起21が、コネクタハウジング10Aに装備されたスペーサ係止突起13を乗り越えて、仮係止位置に位置決めされた状態を示している。この仮係止状態から更に矢印Y4で示すようにスペーサ20Aがスペーサ収容空間12Aに押し込まれて、本係止突起22がスペーサ係止突起13を乗り越えると、本係止位置に位置決めされた状態となる。
【0067】
この比較例の場合は、凸片25を有していないため、仮係止突起の破損によってコネクタハウジング側のスペーサ係止手段がスペーサを仮係止位置に固定することができなくなった状態のときに、スペーサを本係止位置から仮係止位置に移動させると、スペーサ20Aにはコネクタハウジング10Aや端子金具30との引っかかりがないため、スペーサ20Aがコネクタハウジングから不用意に脱落することを回避することができない。
【0068】
また、スペーサ収容空間12Aがコネクタハウジング10Aの他側の外側面10bに貫通していないため、スペーサ20Aが仮係止位置から本係止位置に移動した際の外観変化が少なく、スペーサスペーサ20Aが適正に本係止位置へ移動したか否かを簡単に目視判別することもできない。
【0069】
更に、比較例のスペーサ20Aの場合は、凸片25を有していない分、コンタミ対策手段としての隔離壁片24の沿面距離が一実施形態の場合よりも短くなり、コンタミを抑止する性能も低下するおそれがある。
【0070】
このように比較例と比較することで、本発明の一実施形態において装備されている凸片25や装着状態検知用開口12bの有用性が明確になる。
【0071】
なお、本発明の二重係止コネクタは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。
【0072】
例えば、前述した実施形態における本係止突起22と仮係止突起21とのずれ量や、これらの係止突起22,21の具体的形状は、適宜に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 二重係止コネクタ
10 コネクタハウジング
10a 一側の外側面
10b 他側の外側面
11 端子収容孔
12 スペーサ収容空間
12a スペーサ挿入口
12b 装着状態検知用開口
13 スペーサ係止突起(スペーサ係止手段)
20 スペーサ
21 仮係止突起
22 本係止突起
23 端子係合部
24 隔離壁片
25 凸片
30 端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具が挿入装着される複数の端子収容孔と、前記端子収容孔を横断するスペーサ収容空間と、前記スペーサ収容空間を臨む位置に装備されたスペーサ係止手段と、を備えたコネクタハウジングと、
前記スペーサ収容空間に挿入され、前記挿入方向に位置をずらした仮係止位置及び本係止位置の2位置に前記スペーサ係止手段によって位置決め可能なスペーサと、
を備えて、前記端子収容孔に装着された端子金具を本係止位置に位置決めされた前記スペーサにより二重係止状態にする二重係止コネクタであって、
前記スペーサ収容空間は、
前記スペーサを挿入可能に前記コネクタハウジングの一側の外側面に開口するスペーサ挿入口と、前記スペーサ挿入口に対向する前記コネクタハウジングの他側の外側面に開口する装着状態検知用開口と、を備え、
前記スペーサは、
当該スペーサが前記仮係止位置に移動したときに前記スペーサ係止手段と係合して前記スペーサの挿入方向への移動を規制する仮係止突起と、
当該スペーサが前記本係止位置に移動したときに前記スペーサ係止手段と係合して前記スペーサの挿入方向への移動を規制する本係止突起と、
前記本係止位置に移動したときに前記端子金具に係合して前記端子金具の抜けを防止する端子係合部と、
前記本係止位置に移動したときに隣接する前記端子収容孔間を仕切るように、当該スペーサの挿入方向に沿って延出して装備された隔離壁片と、
前記コネクタハウジングにおける前記他側の外側面に沿うように前記隔離壁片の先端に延出形成されて、当該スペーサが前記本係止位置に移動したときに前記装着状態検知用開口を塞ぐ凸片と、
を備え、
前記装着状態検知用開口及び前記凸片は、前記端子収容孔に挿入された端子金具の幅の一部にオーバーラップするように装備されていることを特徴とする二重係止コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84460(P2013−84460A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223973(P2011−223973)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】