説明

二重容器

【課題】 肉薄に成形されてしまう組付きリブ片に、瞬間的に荷重負荷が作用しても亀裂が発生しないようにすることにより、安全な二重容器を得ることを目的とする。
【解決手段】 有底筒状に成形された外容器1と、ボトル状にブロー成形された内容器6から成り、内容器6の肩部9の周端に突設した組付きリブ片10を、外容器1の開口筒片3の組付け凹部5に係合させ、内容器6を支える組付きリブ片10の下面壁11を傾斜壁構造とすることにより、衝撃荷重に対して下面壁11が弾性撓み変形可能とし、組付きリブ片10に亀裂が発生するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外容器内に内容器を収納した二重容器の関するものである。
【背景技術】
【0002】
外容器内に内容器を収納組付けした二重容器として、種々の構成が提案されているが、その代表的なものとして、有底筒状の本体の上端に、肩部を介して開口部を形成する首部を連設したボトル状のレフィル容器である内容器と、この内容器の本体を挿入組付けする有底筒状の外容器本体である外容器と、内容器の首部に螺合組付きしたポンプの押ボタンを突出可能に、内容器を覆った状態で、外容器に組付く肩部材とから構成されたものがある。
【0003】
この従来技術は、ポンプを螺合組付けした内容器に、肩部材を被せるようにして組付け、この内容器とポンプと肩部材の組合せ物を、内容器の本体を胴部に挿入しながら、肩部材により外容器に係止組付けして、その組立てを完了する(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−180445号公報
【0004】
この従来技術において、組立てに際して内容器は、外容器に直接組付けられることはなく、ポンプと肩部材を介して外容器に組付けられるものとなっており、またポンプに対する肩部材の組付きは、アンダーカット結合で達成され、さらに肩部材の外容器に対する組付きは、筒構造部分の端面を突き合わせた状態で、端部の一部を乗り越え係止させることにより達成している。
【0005】
このように、上記した従来技術にあっては、内容器と外容器との組付けは、ポンプと肩部材とを介して行うので、外容器に対する内容器の組付き状態が不安定となり易く、何らかの手段(例えば、内容器および外容器ともに楕円筒状として、相互に回動変位不能とする)を講じる必要があり、その分、構成が複雑となる、と云う不都合があった。
【0006】
また、その組立ては、内容器とポンプとの組合せ物に対して、肩部材を被せ状にアンダーカット結合させる必要があるが、内容器が撓み変形し易いものであるので、その作業が行い難く、何らかの手段により内容器の首部もしくはポンプを支える必要があり、この支えがきわめて面倒である、と云う不都合あった。
【0007】
この不都合を解決する手段として、ボトル状にブロー成形された内容器6aの肩部9aの周端に複数の四角突片状の組付きリブ片10aを突設(図9および図5参照)し、この組付きリブ片10aを外容器の本体筒2の上端の開口筒片3に形成された組付け凹部5に係合(図10参照)させることにより、内容器の本体部分を吊下げ状に保持して、外容器と内容器6aとの組付きを達成し、この組付きを、開口筒片3にアンダーカット結合する肩カバー15により保持する手段が考えられている。
【0008】
この解決手段は、外容器に内容器6aを直接組付けるので、外容器と内容器との安定した組付き状態を得ることができるのであるが、内容器6aがブロー成形品であるために、突片構造をした組付きリブ片10aが局部延伸を受けて、肉薄に成形される部分となる。
【0009】
このため、二重容器を落下させた場合、内容器の全荷重が衝撃荷重として組付きリブ片10aに作用することになるが、この際、組付きリブ片10aの下面壁11aが組付け凹部5の底面に載置した状態となっているので、下面壁11aと胴部上端部8aの境界部分に、きわめて強大な引っ張り力が作用し、この強大な引っ張り力により、下面壁11aと胴部上端部8aの境界部分に亀裂が生じて、内容液の漏れが発生する恐れがあった。
【0010】
特に、低温雰囲気内においては、また内容器の表面に蒸着を施したものにおいては、亀裂の発生が起こり易くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記した従来技術における不満点を解消すべく創案されたもので、肉薄に成形されてしまう組付きリブ片に、瞬間的に荷重負荷が作用しても亀裂が発生しないようにすることを技術的課題とし、もって亀裂発生のない、安全な二重容器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の二重容器は、有底筒状に射出成形された外殻体としての外容器と、有底筒状の胴部の上端に、肩部を介して口筒部を起立連設してボトル状にブロー成形された内容液収納用の内容器と、から構成されている。
【0013】
外容器は、上端開口部を形成する開口筒片の上端部に、この開口筒片の一部を切り取った形状で組付け凹部を形成しており、これに対し内容器の肩部の周端には組付きリブ片が突設されており、この組付きリブ片は、外容器の組付け凹部に係合組付きすることにより、胴部を外容器内に吊下げ状に保持する。
【0014】
内容器の組付きリブ片は、その縦断面形状が三角突片状に成形されていて、下面壁を、斜め下内方に傾斜する傾斜壁構造としている。
【0015】
このため、外容器に内容器を挿入組み付けした状態では、内容器の胴部を、外容器の本体筒内に吊下げ状に保持している組付きリブ片は、その下面壁を組付け凹部の底面に載置するのではなく、組付け凹部の底面の内側端縁に斜めに当接させて載置した状態となる。
【0016】
それゆえ、二重容器の落下等により、組付きリブ片の下面壁に、組付け凹部の底面の内側縁から衝撃荷重が作用すると、組付きリブ片の下面壁は、上方および内方に容易に弾性変形して、この衝撃荷重を吸収し、これにより衝撃荷重のために組付きリブ片に亀裂が発生することがない。
【0017】
本発明の別の構成は、組付け凹部および組付きリブ片を、軸対称に位置する一対を含めて複数設けた、ことにある。
【0018】
組付け凹部および組付きリブ片を、軸対称に位置する一対を含めて複数設けたものにあっては、組付きリブ片による内容器の吊下げ保持が、必ず軸対称にバランスして達成されることになる。
【0019】
また本発明の別の構成は、組付きリブ片の傾斜壁構造となっている下面壁を、膨出状に湾曲させた、ことにある。
【0020】
組付きリブ片の下面壁を、膨出状に湾曲させたものにあっては、組付きリブ片の下面壁に衝撃荷重が作用した際に、この衝撃荷重を吸収する弾性変形量を、湾曲膨出した分、大きくすることができる。
【0021】
また本発明の別の構成は、外容器を透明とした、ことにある。
【0022】
外容器を透明としたものにあっては、外容器にクリスタル観を現出する構成を施すことにより、内容器との組合せにより、立体感のある光学的装飾効果が現出される。
【0023】
また本発明の別の構成は、外容器の開口筒片に外嵌してアンダーカット結合する肩カバーにより、内容器の外容器からの抜け出しを阻止し、内容器の口筒部に吐出ポンプを組付け固定した、ことにある。
【0024】
肩カバーと吐出ポンプとを組付けたものにあっては、内容器に対して吐出ポンプを直接螺合組付けすることができ、また肩カバーの外容器に対する組付けは、硬い外容器に対する単純な嵌め込み組付けとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、ブロー成形品である内容器の一部に、局部延伸状態となって肉薄に成形される組付きリブ片であっても、外容器に対する載置面である下面壁を傾斜壁構造としたので、二重容器の落下等により、組付きリブ片の下面壁に、組付け凹部の底面の内側縁から衝撃荷重が作用しても、この衝撃荷重を弾性変形により吸収するので、衝撃荷重のために組付きリブ片に亀裂が発生することがなく、もって内容液の漏れの発生のない安全な容器を得ることができる。
【0026】
組付け凹部および組付きリブ片を、軸対称に位置する一対を含めて複数設けたものにあっては、組付きリブ片による内容器の吊下げ保持が、必ず軸対称にバランスして達成されることになるので、外容器に対する内容器の組付きを、安定して適正な状態に維持することができる。
【0027】
組付きリブ片の下面壁を、膨出状に湾曲させたものにあっては、衝撃荷重を吸収する弾性変形量を、湾曲膨出した分、大きくすることができるので、衝撃荷重に対して、より安全な二重容器を提供することができる。
【0028】
外容器を透明としたものにあっては、外容器にクリスタル観を現出する構成を施すことにより、立体感のある光学的装飾効果が得ることができるので、高級感に富んだ容器を、容易に得ることができる。
【0029】
肩カバーと吐出ポンプとを組付けたものにあっては、内容器に対して吐出ポンプを直接螺合組付けすることができ、また肩カバーの外容器に対する組付けは、硬い外容器に対する単純な嵌め込み組付けとなるので、組立て処理が簡単で行い易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図1ないし図8を参照しながら説明する。
本発明の二重容器は、透明な硬質合成樹脂により有底円筒状に射出成形された外容器1と、軟質合成樹脂によりボトル状にブロー成形された内容器6と、外容器1に対する内容器6の組付きを確保する肩カバー15と、内容器6に組付けられる吐出ポンプ19と、外容器1から上方に突出した吐出ポンプ19部分を、着脱自在に覆うオーバーキャップ25とから構成されている。
【0031】
外容器1の本体筒2の上端には、上端開口部を形成する開口筒片3が、段部を介して外径を縮径した構成で形成されており、この開口筒片3の外周面には係合突条4が周設されていると共に、開口筒片3の上端部には、軸対称に位置した一対と、この一対の中間に位置する一つの、計3つの組付け凹部5(図3参照)が、切り欠き状に設けられている。
【0032】
内容器6は、球弧状の底部を有する主体部分である胴部7の上端に、やや拡径した胴部上端部8を介して肩部9を連設し、この肩部9の中央に、外周面に螺条13とネックリング14とを設けた口筒部12を起立連設している。
【0033】
肩部9の周端には、外容器1の組付け凹部5に対応して、この組付け凹部5に係合する組付きリブ片10が突設されているが、この組付きリブ片10は、その縦断面形状が、三角突片状(図6および図7参照)となっていて、下面壁11が、斜めに下内方に傾斜した傾斜壁構造となっている。
【0034】
それゆえ、外容器1に内容器6を組付けると、組付きリブ片10により胴部7を外容器1内に吊下げ状に支持した状態で組付くが、この組付き状態では、組付きリブ片10の下面壁11は、組付け凹部5の底面に載置するのではなく、図6および図7に示すように、組付け凹部5の底面の、角取りされた内側端縁に当接する状態となる。
【0035】
このため、組付きリブ片10の下面壁11に、組付け凹部5の底面の内側端縁から衝撃荷重が作用すると、下面壁11は斜め上内方に湾曲弾性変形して、この衝撃荷重を吸収する。
【0036】
図7に示された組付きリブ片10の下面壁11は、基本的には平坦壁構造をしているが、必ずしも平坦壁構造に特定されることはなく、わずかに内方に湾曲することにより、作用した衝撃荷重を吸収するための湾曲変形をし易いようにしても良い。
【0037】
図8は、組付きリブ片10の別の実施例を示すもので、組付きリブ片10の傾斜壁構造となっている下面壁11が、やや膨出状に湾曲しており、それゆえ衝撃荷重が作用した際には、湾曲して膨出した分だけ下面壁11の弾性変形量を大きくすることができ、これにより弾性変形による衝撃荷重の吸収量を大きくすることができる。
【0038】
なお、組付け凹部5および組付きリブ片10共に、軸対称に位置した一対と、この一対の中間に位置する一つの、計3つで構成されているので、この組付け凹部5と組付きリブ片10で組付いた外容器1と内容器6は、その組付く向きが一定に限定されることになり、これにより構成部分を、一定した向きで組付ける必要のある場合には、きわめて有効に機能することになる。
【0039】
外容器1と内容器6との組付きを保持する肩カバー15(以下、図1、図6そして図7参照)は、二重円筒片構造をした押さえリング16と、この押さえリング16の外周面下端に垂下状に連設された係合筒片17とから構成されており、係合筒片17の内周面に設けた係合周条18を、外容器1の係合突条4に下方から乗り越え係止させることにより、外容器1に組付き、この組付きにより押さえリング16を、内容器7の肩部9さらには組付きリブ片10の上面に当接させ、これにより外容器1に対する内容器6の組付きを保持する。
【0040】
この肩カバー15の外容器1に対するアンダーカット結合を、着脱可能とすることにより、内容器6の外容器1に対する着脱が自在となり、これにより内容器6をレフィル容器として取扱うことが可能となる。
【0041】
吐出ポンプ19(以下、図1および図6参照)は、そのシリンダ22および吸上げ管23を、口筒部12から内容器6内に挿入し、かつポンプヘッド20を上端に位置させた状態で、口筒部12にポンプキャップ21で螺合組付けされ、その際、口筒部12の上端面と、ポンプキャップ21との間にパッキン24を組付けて、密な組付けを達成している。
【0042】
オーバーキャップ25(図1、図6参照)は、有頂円筒形状をしており、肩カバー15の押さえリング16に、着脱自在に外嵌することにより、吐出ポンプ19の突出部分を覆う。
【0043】
なお、透明な外容器1の本体筒2の外周面に、稜線角部やダイヤモンドカット等の凹凸を形成することにより、クリスタル効果による高い装飾効果を得ることができるが、さらに内容器6の胴部7の外表面を、蒸着、塗装により鏡面状とすることにより、立体感に富んだ光学装飾を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態例の、不規則半縦断全体図である。
【図2】図1の実施形態例の、外容器の半縦断正面図である。
【図3】図1の実施形態例の、外容器の平面図である。
【図4】図1の実施形態例の、内容器の正面図である。
【図5】図1の実施形態例の、内容器の平面図である。
【図6】図1の実施形態例の、要部拡大不規則縦断面図である。
【図7】図6に示した拡大図の、さらに要部を拡大した縦断面図である。
【図8】組付きリブ片の他の実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図9】内容器の従来例を示す、正面図である。
【図10】図9に示した従来例の、説明に供する拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ; 外容器
2 ; 本体筒
3 ; 開口筒片
4 ; 係合突条
5 ; 組付け凹部
6、6a ; 内容器
7、7a ; 胴部
8、8a ; 胴上端部
9、9a ; 肩部
10,10a; 組付きリブ片
11、11a; 下面壁
12 ; 口筒部
13 ; 螺条
14 ; ネックリング
15 ; 肩カバー
16 ; 押さえリング
17 ; 係合筒片
18 ; 係合周条
19 ; 吐出ポンプ
20 ; ポンプヘッド
21 ; ポンプキャップ
22 ; シリンダ
23 ; 吸上げ管
24 ; パッキン
25 ; オーバーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に成形された外殻体としての外容器と、有底筒状の胴部の上端に、肩部を介して口筒部を起立連設してボトル状にブロー成形された内容液収納用の内容器から成り、前記外容器の上端開口部を形成する開口筒片の上端部に組付け凹部を形成すると共に、前記内容器の肩部の周端に組付きリブ片を突設し、該組付きリブ片を組付け凹部に係合組付きすることにより、前記胴部を外容器内に吊下げ状に保持し、前記組付きリブ片の下面壁を、斜め下内方に傾斜する傾斜壁構造とした二重容器。
【請求項2】
組付け凹部および組付きリブ片を、軸対称に位置する一対を含めて複数設けた請求項1に記載の二重容器。
【請求項3】
組付きリブ片の傾斜壁構造となっている下面壁を、膨出状に湾曲させた請求項1または2に記載の二重容器。
【請求項4】
外容器を透明とした請求項1から3のいずれか1項に記載の二重容器。
【請求項5】
外容器の開口筒片に外嵌してアンダーカット結合する肩カバーにより、内容器の外容器からの抜け出しを阻止し、前記内容器の口筒部に吐出ポンプを組付け固定した請求項1から4のいずれか1項に記載の二重容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−179356(P2009−179356A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20171(P2008−20171)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】