説明

二重容器

【課題】押圧部を押圧したときの内容器の変形を抑制し、内容器を外容器内から容易に引き抜くことができる二重容器を提供することを目的としている。
【解決手段】内容物を収容する内容器2と、内容器2を収納した外容器3と、を備える二重容器1において、内容器2には、内容器2の口部20から垂下され、容器径方向外側の押圧面23aが押圧されることで上端を支点にして容器径方向内側に向けて回動する押圧部23が設けられており、外容器3には、押圧部23の容器径方向の外側に配置された被係止部36が設けられ、押圧部23の外面には、被係止部36に下方から係止する係止部24が設けられ、押圧部23と口部20との連結部分には、容器周方向に沿って延在する段差26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容器と外容器とを組み合わせた二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の二重容器として、従来、例えば下記特許文献1に示されるような、クリーム等の内容物を収容する内容器と、内容器を収納した外容器と、を備える構成が知られている。上記した内容器は、外容器に対して出し入れ可能なレフィール容器であり、消費者によって外容器内に収納された内容器を取り外して新たな内容器に交換することで、外容器の再利用が図られる。
【0003】
ところで、上記した内容器には、内容器の外周部から垂下された押圧部が設けられている。この押圧部は、指等で容器径方向内側に向けて押圧されることで上端を支点にして容器径方向内側に向けて回動する板片であり、内容器の周壁部の両側にそれぞれ間隔をあけて配設されている。
この押圧部の外面には、押圧部の横幅方向に延在する係止部が突設されている。一方、外容器の周壁部の上部には、押圧部が嵌め込まれる切欠部が形成されている。この切欠部には、押圧部の容器径方向の外側に立設されて押圧部の下端部に対向する壁部が形成されており、この壁部の内面には、上記した係止部によって下方から係止される被係止部が突設されている。これにより、上記した係止部と被係止部とによって押圧部と切欠部とがアンダーカット嵌合され、外容器内からの内容器の抜け出しが規制される。
【0004】
上記した構成からなる従来の二重容器では、外容器から内容器を取り外す際、まず、両側の押圧部を指等で摘んで容器径方向内側に向けてそれぞれ押圧することにより、両側の押圧部がそれぞれ上端を支点にして容器径方向内側に向かって回動する。これにより、押圧部の係止部が外容器の被係止部から外れる。
そして、押圧部を押圧したまま、内容器を引き上げることで、内容器が外容器から引き抜かれる。このように外容器内から内容器を取り出した後、新たな内容器を外容器内に挿入することで、内容器の交換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2588201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の二重容器では、押圧部を大きな力で容器径方向内側に押圧すると、その押圧力が内容器の外周部に伝達され、内容器が変形するおそれがある。
例えば、円筒形状の内容器の左右両側に押圧部がそれぞれ設けられている場合、両側の押圧部をそれぞれ容器径方向内側に押圧すると、押圧部を押圧する力が内容器の外周部に伝達され、内容器が両側から押し潰されるように平面視略楕円形状に変形される。
このように内容器が変形すると、内容器の外周面の一部が外容器の内周面に圧接され、内容器が外容器内から抜けにくくなるという問題が生じる。特に、内容器は、軽量化(薄肉化)されている場合が多いため、上記した押圧によって変形しやすく、この問題が顕著になる。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、押圧部を押圧したときの内容器の変形を抑制し、内容器を外容器内から容易に引き抜くことができる二重容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る二重容器は、内容物を収容する内容器と、該内容器を収納した外容器と、を備える二重容器において、前記内容器には、該内容器の外周部から垂下され、容器径方向外側の押圧面が押圧されることで上端を支点にして容器径方向内側に向けて回動する押圧部が設けられており、前記外容器には、前記押圧部の容器径方向の外側に配置された被係止部が設けられ、前記押圧部の外面には、前記被係止部に下方から係止する係止部が設けられ、前記押圧部と前記外周部との連結部分には、容器周方向に沿って延在する段差が形成されていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴により、外容器内に収納された内容器を取り出す際には、まず、押圧部の押圧面を押圧して押圧部を容器径方向内側に向けて回動させる。これにより、押圧部の外面に設けられた係止部が被係止部から外れ、内容器の上方移動が許容される。このとき、内容器の外周部と押圧部との連結部分には、容器周方向に沿って延在する段差が形成されているので、押圧面を押圧する力が内容器の外周部に伝達されず、内容器の外周部の変形が抑えられる。続いて、押圧面を押圧したまま内容器を外容器内から引き抜く。これにより、外容器内から内容器が取り出される。
【0010】
(2)また、本発明に係る二重容器は、前記外容器に、前記押圧部の下端部の容器径方向内側に配置された凸部が設けられ、該凸部および前記押圧部の下端部のうちの少なくとも一方に、容器径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が設けられていることが好ましい。
【0011】
これにより、押圧部の押圧面を押圧して押圧部を容器径方向内側に向けて回動させると、押圧部の下端部が凸部に当接する。このとき、押圧部の下端部および凸部のうちの少なくとも一方に容器径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が形成されているので、押圧部が径方向内側に回動するとともに内容器が押圧部を介して押し上げられる。
また、内容器が外容器内に固定されている際、仮に押圧部を容器径方向内側に回動させるような力が作用したとしても、上述したように押圧部の下端部が凸部に当接するので、容器径方向内側に回動し難い。しかも、凸部と押圧部とのうちの少なくとも一方に容器径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が形成されているので、押圧部に上記力が作用したとしても、該押圧部を容器径方向外側に戻すような力が作用し易い。
従って、押圧部の外面に設けられた係止部を外容器の被係止部に対して係止させた状態に維持し易く、外容器から内容器を抜け難くすることができる。
【0012】
(3)また、本発明に係る二重容器は、前記押圧部に、上端を支点にして容器径方向に撓み変形可能に垂下された当接部が設けられ、前記外容器に、前記当接部の容器径方向の内側に配置され、前記押圧部の容器径方向内側への回動によって前記当接部の下端部が当接して乗り越えられる被当接部が設けられていることが好ましい。
【0013】
これにより、押圧部の押圧面を押圧して押圧部を容器径方向内側に向けて回動させると、当接部の下端部が容器径方向外側から被当接部に当接して当接部の下端部が被当接部に係止された状態となり、当接部が容器径方向に撓み変形する。そして、押圧部が容器径方向内側に向けて回動し続けることで、当接部が被当接部を乗り越え、被当接部の容器径方向内側に配置される。このとき、当接部が被当接部を乗り越える際に当接部が弾かれるので、クリック感(触感)が生じる。
【0014】
(4)また、本発明に係る二重容器は、前記内容器に、前記押圧部を容器径方向外側に回動するように付勢する付勢体が設けられていることが好ましい。
【0015】
この場合には、付勢体によって押圧部が容器径方向外側に回動するように付勢されているので、内容器を外容器から取り出す前の段階では、押圧部の外面に設けられた係止部が外容器の被係止部に対してより確実に係止している。つまり、内容器は外容器内により強固に固定される。従って、外容器から内容器を抜け難くすることができ、二重容器としての信頼性を高めることができる。
また、付勢体が押圧部を容器径方向外側に回動するように付勢しているので、内容器の製造段階において、押圧部が容器径方向内側に撓んでしまうような癖が付き難い。しかも、その後に内容器を搬送するような場合、内容器同士が接触したり、内容器がなんらかに接触したりしたとしても、やはり押圧部が容器径方向内側に撓んでしまうような癖が付き難い。
従って、内容器を外容器内に挿入して組み付ける際に、押圧部の係止部を外容器の被係止部に対して確実に係止させることができ、内容器と外容器とを強固に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る二重容器によれば、内容器の外周部と押圧部との連結部分に段差が形成されているので、押圧面を押圧する力が内容器の外周部に伝達されず、内容器の外周部の変形が抑えられる。従って、内容器の外周面が外容器の内周面に圧接されず、内容器を外容器内から容易に引き抜くことができ、内容器の交換時における操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を説明するための二重容器の半断面図であって、図2におけるA−A´間の半断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を説明するための二重容器の平面図であって、中蓋や外装蓋が外された状態を示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態を説明するための二重容器の縦断面図であって、図2におけるB−B´間の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を説明するための押圧部を示した部分断面図であり、図5に示すC−C´間の平断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態を説明するための押圧部を示した部分縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を説明するための押圧部を示した部分断面図であり、図7に示すD−D´間の平断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態を説明するための押圧部を示した部分縦断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を説明するための押圧部を示した部分斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態を説明するための内容器の縦断面図である。
【図10】図9に示す内容器の部分拡大図である。
【図11】図10に示す内容器のE−E´間の断面図である。
【図12】図9に示す内容器を外容器内に組み合わせた縦断面図である。
【図13】図12に示す内容器及び外容器の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る二重容器の第1実施形態について、図1から図5に基づいて説明する。
なお、図1に示す鎖線Oは二重容器1の中心軸線を示しており、以下、単に「軸線O」と記す。また、本実施形態では、軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とする。また、本実施形態では、後述する内容器2及び外容器3の口部20,30側(図1における上側)を「上側」とし、その反対側(図1における下側)を「下側」とする。
【0019】
図1、図2に示すように、二重容器1は、クリーム等の内容物を収容した内容器2と、その内容器2を収納可能な外容器3と、内容器2の口部20を閉塞する中蓋4と、外容器3に被着された外装蓋5と、を備えている。
【0020】
外容器3は、上端が開放された有底筒状の外装容器である。この外容器3は、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の合成樹脂や、金属、ガラス等からなり、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形等によって成形される。外容器3の概略構成としては、軸線Oに沿って延設された略円筒形状の周壁部31と、その周壁部31の下側部分に設けられた底壁部32と、を備えている。
【0021】
周壁部31の上端部には、外周面が全周に亘って段差状に縮径された口部30が形成されている。この口部30の外周面には、略螺旋状に延設された雄ねじ33が形成されている。また、周壁部31の上部の内周面には、周壁部31の上端(口部30の上端)から軸方向に沿って延在する凹溝状のガイド溝34が形成されている。このガイド溝34は、二本平行に形成されている。
【0022】
また、図1から図3に示すように、周壁部31には、後述する内容器2の押圧部23が嵌め込まれる切欠部35が形成されている。この切欠部35は、周壁部31の上部(口部30)を側面視凹状に切り欠いた切欠部である。切欠部35は、周壁部31の上端(口部30の上端)から軸方向に沿って口部30の下端の下方まで延在されており、口部30の下方の周壁部31のうち、外周部分を残して内周部分が切り欠かれている。すなわち、切欠部35の下部は、平面視において径方向内側に向けて開放された凹形状となっており、切欠部35の下部の径方向外側には、周壁部31の外周面に沿って形成された壁部37が配設されている。
この壁部37は、後述する押圧部23の下部の径方向外側に配設されており、壁部37の内面(径方向内側の面)には、周方向に延在した断面略半円形状の被係止部36が突設されている。すなわち、被係止部36は、後述する押圧部23の径方向外側に配設されている。
【0023】
また、図4、図5(a)に示すように、切欠部35の底面には、周方向に延在する断面視略直角台形の凸条部38が突設されている。この凸条部38は、切欠部35の周方向中央に配設されていると共に後述する押圧部23の径方向内側に配設されており、周壁部31の内周に沿って延在されている。凸条部38の径方向外側の側面は、径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面38aとなっている。すなわち、この傾斜面38aは、押圧部23の下端部の径方向内側に配設されている。
また、図2に示すように、ガイド溝34及び切欠部35は、それぞれ軸線Oを挟んで一対ずつ配設されており、これら一対のガイド溝34と一対の切欠部35とは、互いに直交する位置に配設されている。
【0024】
図1から図3に示すように、内容器2は、外容器3に対して出し入れ可能な容器であり、消費者によって適宜交換可能なレフィール容器である。
詳しく説明すると、内容器2は、上端が開放された有底筒状の内装容器であり、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系等の合成樹脂からなり、例えば射出成形やブロー成形等によって成形される。なお、内容器2は、例えばプレス成形等によって形成される薄肉の金属製の容器であってもよい。内容器2の概略構成としては、軸線Oに沿って延設された略円筒形状の周壁部21と、その周壁部21の下側部分に設けられた底壁部22と、を備えている。
【0025】
周壁部21の上端部には、全周に亘って径方向外側に拡径された口部20が形成されており、その口部20の上端部の内周面には、内径が全周に亘って段差状に拡径された拡径部27が形成されている。また、この内容器2の周壁部21の外径は、外容器3の周壁部31の内径よりも若干小さく、内容器2は外容器3の内側に隙間をあけて収納されている。なお、内容器2の周壁部21の外径と外容器3の周壁部31の内径とを等しくしても良い。また、内容器2の外周高さは、外容器3の内周高さよりも高くなっており、内容器2の上端部(口部20)は、外容器3の口部30から上方に向けて突出され、外容器3の口部30の直上に配置されている。
【0026】
また、内容器2の口部20には、内容器2を外容器3の内側に挿入したときに上記した切欠部35に嵌め込まれる押圧部23が設けられている。この押圧部23は、口部20の下端から軸方向に沿って垂下された略矩形の板片であり、径方向外側の押圧面23aが押圧されることで上端を支点にして径方向内側に向けて回動する垂壁部である。
押圧部23の内面(径方向内側の面)は、内容器2の周壁部21の外周面との間に隙間をあけて対向されており、押圧部23は、径方向内側に向かって弾性的に撓み変形可能となっている。
【0027】
また、口部20の外周面には、周方向に延在する凹溝状の段差26が形成されている。この段差26は、口部20と押圧部23との接続部分に配設されており、これにより、押圧部23は段差26を支点にして撓み変形される。なお、段差26は、少なくとも押圧部23の横幅の範囲に延設されていればよく、例えば全周に亘って延設されていてもよい。
【0028】
また、図4、図5(a)に示すように、押圧部23の外面(径方向外側の面)には、周方向(押圧部23の横方向)に延在した係止部24が突設されている。この係止部24は、外容器3の被係止部36に対して下方から係止しており、これにより、押圧部23は外容器3の切欠部35にアンダーカット嵌合される。
また、押圧部23の下端部の周方向中央部は、押圧部23の径方向内側に配設された凸条部38の傾斜面38aに当接、或いは、隙間をあけて対向配置されている。
【0029】
また、図1、図2に示すように、内容器2の周壁部21の外周面には、ガイド溝34に摺動可能に嵌合されるガイド部25が突設されている。このガイド部25は、軸方向に沿って平行に延設された二本の凸条部からなる。
また、図2に示すように、ガイド部25及び押圧部23は、それぞれ軸線Oを挟んで一対ずつ配設されており、これら一対のガイド部25と一対の押圧部23とは、互いに直交する位置に配設されている。
【0030】
図1に示すように、中蓋4は、軸線Oに対して垂直に配設された浅皿状の板部であり、内容器2の口部20に着脱可能に嵌合されている。中蓋4の外縁部は、内容器2の口部20の上端部に形成された拡径部27に全周に亘って係止されている。また、中蓋4の外縁部には、径方向内側に突出した摘み部40が設けられている。
【0031】
外装蓋5は、外容器3の口部30に螺着される有頂筒状のキャップ体であり、その概略構成としては、軸線Oに対して垂直に配設された円盤状の天壁部50と、天壁部50の外縁から垂下された円筒形状の周壁部51と、を備えている。
周壁部51の内周面には、外容器3の口部30の雄ねじ33に螺合される雌ねじ52が形成されている。また、外装蓋5の内側には、円盤状のパッキン6が嵌合されている。このパッキン6は、外装蓋5の天壁部50の下面に接合されており、パッキン6の外周部が、外装蓋5の天壁部50の下面と内容器2の口部20の上端面との間に挟み込まれてシールされ、内容器2内が密封されている。
【0032】
次に、このように構成された二重容器1の作用について説明する。
例えば内容器2内の内容物が無くなった場合など、外容器3内の内容器2を新たな内容器2と交換する際には、まず、外装蓋5を外容器3から取り外す。このとき、外装蓋5と共にパッキン6が取り外される。
なお、中蓋4は、初めに開封した際に内容器2の口部20から取り外し、その後、内容器2の口部20には取り付けられずに廃棄してもよい。なお、内容器2の交換時に中蓋4が内容器2の口部20に取り付けられていてもよい。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、押圧部23の押圧面23aを押圧して押圧部23を径方向内側に向けて回動させる。これにより、押圧部23の係止部24が外容器3の被係止部36から外れ、内容器2の上方移動が許容される。このとき、内容器2の口部20と押圧部23との連結部分に、周方向に沿って延在する段差26が形成されているので、押圧面23aを押圧する力が内容器2の口部20に伝達されることを阻害し、内容器2の口部20の変形が抑えられる。
【0034】
また、押圧部23の押圧面23aを押圧して押圧部23を径方向内側に向けて回動させると、押圧部23の下端部が凸条部38の傾斜面38aに当接して傾斜面38a上を径方向外側から内側に向かって上向きに摺動する。これにより、押圧部23が径方向内側に回動するとともに内容器2が押圧部23を介して押し上げられる。
次に、押圧面23aを押圧したまま内容器2を引き上げて外容器内から取り出す。これにより、外容器3内から内容器2が取り出される。
【0035】
次に、新たな内容器2を外容器3内に挿入する。具体的に説明すると、内容器2と外容器3との周方向の相対的な位置合わせを行いつつ、内容器2を外容器3の内側に挿入する。すなわち、内容器2のガイド部25と外容器3のガイド溝34との位置を合わせると共に、内容器2の押圧部23と外容器3の切欠部35との位置を合わせ、その後、内容器2を外容器3の内側に挿入する。これにより、ガイド部25がガイド溝34内に挿入されてガイド溝34内に嵌合されると共に、押圧部23が切欠部35内に挿入されて押圧部23の係止部24が切欠部35の被係止部36にアンダーカット嵌合される。
その結果、内容器2と外容器3との相対的な周方向の回転が規制されると共に、内容器2と外容器3との相対的な軸方向の移動が規制されて、内容器2が外容器3内に固定される。
【0036】
次に、有頂筒状の外装蓋5を外容器3に螺着させる。
以上により、二重容器1における内容器2の交換作業が完了する。
【0037】
上記した二重容器1によれば、内容器2の口部20と押圧部23との連結部分に段差26が形成されているので、押圧面23aを押圧する力が内容器2の口部20に伝達され難く、内容器2の口部20の変形が抑えられる。よって、押圧面23aを押圧して内容器2の係止部24と外容器3の被係止部36との係合を外したとき、内容器2の周壁部21の外周面が外容器3の周壁部31の内周面に圧接されない。したがって、内容器2を外容器3内から容易に引き抜くことができ、内容器2の交換時における操作性を向上させることができる。
【0038】
また、押圧部23の押圧面23aを押圧して押圧部23を径方向内側に向けて回動させると、押圧部23の下端部が凸条部38の傾斜面38aに当接して傾斜面38a上を摺動し、内容器2が押圧部23を介して若干押し上げられる。そのため、仮に内容器2を外容器3内から引き抜く前に押圧面23aへの押圧が解除或いは低減されても、内容器2の係止部24が外容器3の被係止部36に当接されることで押圧部23の径方向外側への回動が抑制され、内容器2の係止部24と外容器3の被係止部36とが再係合されにくい。これにより、内容器2を外容器3内から容易に引き抜くことができ、内容器2の交換時における操作性を向上させることができる。
【0039】
また、内容器2が外容器3内に固定されている際、仮に押圧部23を径方向内側に回動させるような力が作用したとしても、押圧部23の下端部が凸条部38に当接するので径方向内側に回動し難い。しかも、凸条部38には径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面38aが形成されているので、押圧部23に上記力が作用したとしても、該押圧部23を径方向外側に戻すような力が作用し易い。
従って、押圧部23の外面に設けられた係止部24を外容器3の被係止部36に対して係止させた状態に維持し易く、外容器3から内容器2を抜け難くすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る二重容器の第2実施形態について、図6から図8に基づいて説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6から図8に示すように、押圧部123の下端部には、下辺を凹状に切り欠いた凹部123bが形成されており、この凹部123bの上辺から矩形板状の当接部123cが垂設されている。この当接部123cは、押圧部123よりも薄い帯状の板部であり、上端を支点にして径方向に撓み変形可能に垂下されている。
また、押圧部123の外面には、周方向に延在する係止部124が突設されており、この係止部124は、凹部123bの周方向両側方にそれぞれ配設されている。
【0042】
一方、外容器3の切欠部35の底面には、矩形板状の被当接部139が立設されている。この被当接部139は、切欠部35の底面の周方向中央部分に配設されていると共に、上記した当接部123cの径方向内側に配設されており、被当接部139の外面(径方向外側の面)には、当接部123cの下端部が当接、或いは間隔をあけて対向配置されている。
また、切欠部35の底面には、周方向に延在する凸条部138が被当接部139の周方向両側にそれぞれ配設されている。この凸条部138には、径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面138aが形成されており、この傾斜面138aには上記した押圧部123の下端部がそれぞれ当接、或いは間隔をあけて対向配置されている。
【0043】
このように構成された二重容器1では、図7(b)に示すように、押圧部123の押圧面123aを押圧して押圧部123を径方向内側に向けて回動させると、当接部123cの下端部が径方向外側から被当接部139に当接して当接部123cの下端部が被当接部139に係止された状態となり、当接部123cが径方向に撓み変形する。そして、押圧部123が径方向内側に向けて回動し続けることで、当接部123cが被当接部139を乗り越えて被当接部139の径方向内側に配置される。このとき、当接部123cが被当接部139を乗り越える際に当接部123cが弾かれるので、押圧面123aを押圧する指等にクリック感(触感)が伝わり、また、クリック音が生じる場合もある。
【0044】
上記した二重容器1によれば、押圧部123の押圧面123aを押圧して内容器2の係止部124と外容器3の被係止部36との係合を解除する際、押圧面123aを押圧する指等にクリック感が伝わったりクリック音が生じたりする。従って、内容器2の係止部124と外容器3の被係止部36との係合が解除されたことを確認することができる。これにより、内容器2の係止部124と外容器3の被係止部36との係合を確実に解除させることができ、内容器2の交換時における操作性を向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る二重容器の第3実施形態について、図9から図13に基づいて説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同様の符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態と第1実施形態とは、図9から図11に示すように、押圧部23を容器径方向外側に回動するように付勢するレバー部(付勢体)150が内容器2に設けられている点が異なっている。このレバー部150について、詳細に説明する。
【0047】
本実施形態のレバー部150は、押圧部23の下端部の内面(径方向内側の面)から径方向内側で且つ上方に向かって延在するように形成された板片状の部材であって、押圧部23の周方向中央部に位置するように形成されていると共に、周方向に沿った横幅が押圧部23よりも短くなるように形成されている。また、このレバー部150の先端には、周壁部21側に突出した連結部151が設けられており、内容器2の製造後、外容器3に組み合わされる前の段階では、この連結部151と周壁部21の外周面との境界部分が連結された状態となっている。そして、レバー部150は、この状態において自身の弾性力により押圧部23を径方向外側に回動するように付勢している。
なお、前記境界部分は、破断可能な弱化部(薄肉部)として形成されている。
【0048】
ところで、このレバー部150が設けられた内容器2を外容器3内に挿入して組み合わせると、押圧部23が切欠部35内に挿入されて、押圧部23の係止部24が切欠部35の被係止部36を乗り越えた後にアンダーカット嵌合されるが、係止部24が被係止部36を乗り越える際に、レバー部150の先端部は上方に移動しようとする力を受ける。そのため、図12及び図13に示すように、連結部151と周壁部21の外周面との境界部分の連結が解かれるようになっている。この場合であっても、レバー部150は、自身の弾性力により押圧部23を径方向外側に回動するように付勢している。
【0049】
従って、本実施形態の場合には、内容器2を外容器3から取り出す前の段階において、押圧部23の係止部24が外容器3の被係止部36に対してより確実に係止している。よって、内容器2は外容器3内により強固に固定された状態となっている。従って、外容器3から内容器2を抜け難くすることができ、二重容器としての信頼性を高めることができる。
【0050】
また、レバー部150が押圧部23を容器径方向外側に回動するように付勢しているので、内容器2の製造段階において、押圧部23が容器径方向内側に撓んでしまうような癖が付き難い。しかも、その後に内容器2を搬送するような場合、内容器2同士が接触したり、内容器2がなんらかに接触したりしたとしても、やはり押圧部23が容器径方向内側に撓んでしまうような癖が付き難い。
加えて、本実施形態の場合には、内容器2の製造後、外容器3に組み合わされる前の段階において、レバー部150の先端の連結部151が周壁部21の外周面に連結されている。そのため、押圧部23は、外力を受けても容器径方向内側に撓み難くなっている。この点においても、癖が付き難い状態となっている。
従って、これらのことから、内容器2を外容器3内に挿入して組み付ける際に、押圧部23の係止部24を外容器3の被係止部36に対して確実に係止させることができ、内容器2と外容器3とを強固に組み合わせることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、内容器2の口部20と押圧部23との間に形成された段差26を第1実施形態及び第2実施形態よりも深く形成している。そのため、内容器2を取り外すにあたって押圧部23を径方向内側に押圧する際に、レバー部150による付勢力に抗するために押圧力が大きくなったとしても、深い段差26によって押圧時の力が口部20に伝達されてしまうことを効果的に阻害でき、口部20の変形を防止することができる。
【0052】
なお、上記第3実施形態では、内容器2の製造段階でレバー部150の連結部151が周壁部21に連結されている場合を例に挙げて説明したが、必ずしも連結されている必要はない。
【0053】
また、上記第3実施形態では、レバー部150を押圧部23の下端部の内面に設けた場合を例に挙げて説明したが、下端部以外、例えば押圧部23の中央部の内面に設けても構わない。更に、レバー部150を径方向内側で且つ下方に向かって延在するように形成しても構わない。
また、レバー部150を複数設けても構わない。例えば、押圧部23の下端部の内面と中央部の内面とにそれぞれ設けても構わない。
更には、レバー部150を押圧部23側に設けるのではなく、周壁部21側に設けても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。なお、この場合において、内容器2の製造段階でレバー部150の先端の連結部151を押圧部23の内面に連結させた状態にしても構わない。
【0054】
また、上記第3実施形態では、切欠部35の底面に凸条部38を設けた構成としたが、
この凸条部38を設けなくても構わない。凸条部38の役割の1つとして、内容器2が外容器3内に固定されている際に、押圧部23を径方向内側に回動させ難くして係止部24を被係止部36に対して確実に係止させる点があるが、上記第3実施形態では、この点をレバー部150に担わせることができる。従って、凸条部38を設けなくても、外容器3から内容器2を抜け難くすることができる。
特に、外容器3に凸条部38を設けない場合には、壁部37の内面に形成される被係止部36の突出量(径方向内側に向かって突出する突出量)をより大きくすることができる。従って、アンダーカット嵌合される係止部24と被係止部36との嵌合力を高めることができ、内容器2を外容器3内により強固に固定することができる。
【0055】
また、上記レバー部150を第2実施形態の内容器2に適用しても構わない。
【0056】
以上、本発明に係る二重容器の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、外容器3の切欠部35の底面に凸条部38,138が設けられ、押圧部23,123が径方向内側に回動したとき、押圧部23,123の下端部が、凸条部38,138に形成された傾斜面38a,138a上を摺動する構成となっているが、本発明は、上記した凸条部38,138(傾斜面38a,138a)を省略することも可能である。
【0058】
また、本発明は、上記した傾斜面38a,138aが凸条部38,138以外に形成されていてもよい。例えば、切欠部35の底面に断面視矩形の凸部が立設され、押圧部の下端面に、径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が形成された構成であってもよく、或いは、切欠部35の底面に立設された凸部および押圧部の下端面の両方に、径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が形成されていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、押圧部23,123が内容器2の口部20から垂下されているが、本発明は、押圧部23,123が口部20以外から垂下されていてもよい。例えば、口部20の下方に、径方向外側に突出したフランジ部が設けられ、このフランジ部から押圧部23,123が垂下されていてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、押圧部23,123と内容器2の口部20との連結部分に凹溝状の段差26が形成されているが、本発明は、凹溝状以外の段差を形成することも可能である。例えば、押圧部23,123を内容器2の口部20よりも径方向外側に配設して、押圧部23,123と内容器2の口部20との連結部分に階段状の段差26を形成することも可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、切欠部35の下部の径方向外側に壁部37が配設され、その壁部37の内面に被係止部36が設けられているが、本発明は、上記した壁部37を省略することも可能である。この場合、押圧部23,123の係止部24,124に係止される被係止部を切欠部35の底面に立設させたり、或いは、切欠部35の側面から突設させたり、切欠部35の両側の側面間に架設させたりすることが可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、内容器2にガイド部25が設けられ、外容器3にガイド溝34が設けられているが、本発明は、これらを適宜省略することも可能である。
また、上記実施形態では、左右一対の押圧部23,123が内容器2に設けられているが、本発明は、押圧部が1つにすることも可能であり、或いは、3つ以上の押圧部を設けることも可能である。
【0063】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…二重容器
2…内容器
3…外容器
20…口部(外周部)
23、123…押圧部
23a、123a…押圧面
24、124…係止部
26…段差
36…被係止部
38、138…凸条部(凸部)
38a、138a…傾斜面
123c…当接部
139…被当接部
150…レバー部(付勢体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する内容器と、該内容器を収納した外容器と、を備える二重容器において、
前記内容器には、該内容器の外周部から垂下され、容器径方向外側の押圧面が押圧されることで上端を支点にして容器径方向内側に向けて回動する押圧部が設けられており、
前記外容器には、前記押圧部の容器径方向の外側に配置された被係止部が設けられ、
前記押圧部の外面には、前記被係止部に下方から係止する係止部が設けられ、
前記押圧部と前記外周部との連結部分には、容器周方向に沿って延在する段差が形成されていることを特徴とする二重容器。
【請求項2】
請求項1記載の二重容器において、
前記外容器には、前記押圧部の下端部の容器径方向内側に配置された凸部が設けられ、
該凸部および前記押圧部の下端部のうちの少なくとも一方に、容器径方向内側から外側に向かって下向きに傾斜した傾斜面が設けられていることを特徴とする二重容器。
【請求項3】
請求項1または2記載の二重容器において、
前記押圧部には、上端を支点にして容器径方向に撓み変形可能に垂下された当接部が設けられ、
前記外容器には、前記押圧部の容器径方向内側への回動によって前記当接部の下端部が当接して乗り越えられる被当接部が設けられていることを特徴とする二重容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の二重容器において、
前記内容器には、前記押圧部を容器径方向外側に回動するように付勢する付勢体が設けられていることを特徴とする二重容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−195484(P2010−195484A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266683(P2009−266683)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】