説明

二重床構造体及びその施工方法

【課題】断熱性、防火性、結露防止性を有し、強度に優れる二重床構造体を提供する。
【解決手段】基材1上に、支持体7及び該支持体上に上部床面8を備える二重床構造体において、基材上には、ハニカムコア2のセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物3が充填されたハニカムコア構造体4が積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床構造体及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター等のOA機器やLANの普及に伴い、事務所、商業施設、工場、学校等の多くの配線を必要とする場所において、床を二重床形式とし、この空間に配線類を収納する「OAフロア」が設置されている。
しかし、収納された配線は、高熱となるため、漏電等により火災が発生するおそれがある。また、OAフロアを設置する場所は、室温が一定となるよう空調が管理されているにもかかわらず、配線の発熱に伴い、室温が上昇するおそれがある。この場合、室温を一定とするためのエネルギーも必要となる。さらには、OAフロア内の空間と室内との温度差が大きい場合には結露を生じるおそれがある。
また、収納された配線のメンテナンス時には、OAフロアの内部床面を人が歩行する必要もある。
さらに、近年、改修により床を二重床形式にすることも多く、現場施工性に優れるものが望まれている。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1には、OAフロア内部の床上に区画材を設置し、区画材とOAフロア床材の接合部に断熱・吸音・耐火被覆材等を介在させた防火区画処理方法が記載されている。また、特許文献2には、二重床用断熱材として、ロックウールやガラスウール等の鉱物繊維にフェノール樹脂あるいはメラミン樹脂を吹き付けて繊維間を結合積層させたものを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−299914号公報
【特許文献2】実開平6−54832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように所定間隔のみに防火区画を設置するだけでは、断熱性が考慮されておらず、結露を生じるおそれがある。また、火災時、空間が延焼してしまうおそれがある。一方、特許文献2のような断熱材を使用した場合、配線のメンテナンス時に、断熱層を損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行なった結果、基材上に、支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造体において、基材上に、ハニカムコアのセル部に特定の断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層された構造を有する二重床構造体に想到し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の二重床構造体は、下記の特徴を有するものである。
1.基材上に、支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造体において、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層されていることを特徴とする二重床構造体。
2.基材上に、支持体を立設し、
基材上に、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物を充填したハニカムコア構造体を積層し、
上記支持体上に上部床面を設ける
ことを特徴とする二重床の施工方法。
3.基材上に、支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造体において、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層され、
さらに、該ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料が積層されていることを特徴とする二重床構造体。
4.基材上に、支持体を立設し、
基材上に、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物を充填したハニカムコア構造体を積層し、
上記ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料を積層し、
上記支持体上に上部床面を設ける
ことを特徴とする二重床の施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二重床構造体は、基材上に支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造において、基材上に、ハニカムコアのセル部に特定の断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層された構造を有するものである。本発明では、このような二重床構造体とすることによって、防火性に優れ、結露を防止することができる。また、配線のメンテナンス時には、OAフロアの内部床面を人が歩行することが可能な強度を発揮することもできるのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明二重床構造体の構造図である。
【図2】本発明ハニカム構造体の一例を示す図である。
【図3】本発明二重床構造体の構造図である。
【図4】本発明二重床構造体の施工方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明の二重床構造体は、基材上に支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造において、基材上に、ハニカムコアのセル部に特定の断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体(以下、単に「ハニカムコア構造体」ともいう)が積層された構造を有する。
【0012】
図1に、本発明の二重床構造体の一例を示す。
基材としては、一般的な床材であれば特に限定されず、例えば、コンクリート、モルタル、軽量モルタル、軽量コンクリート、等が挙げられる。
支持体は、図1に示すように基材上に複数立設されるものである。その形状や材質等は、配線等を設けることを考慮して空間を設け、上部床面を安定に支えることができるものであれば特に限定されない。また、高さ調整機能を有するものや、防音(吸音)機能を付加させたもの等を使用することもできる。
【0013】
図1に示すように、基材上には、ハニカムコア構造体が積層されている。本発明のハニカムコアとしては、紙製ハニカムコア、フェノール含浸ペーパーハニカムコア、水酸化アルミニウム含浸ペーパーハニカムコア、プラスチック製ハニカムコア、金属(例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン等)製ハニカムコアと等が挙げられる。そのセル部の形状は、正方形、長方形、ひし形等の四角形状、六角形状、円形状、リブ形状等、例えば、JIS A 6931に規定される種々の形状等であり、本発明の目的を達成できる全ての材質、形状を包含する。ハニカムコアは、折り畳まれた形状を広げて使用するものであっても、予め広げられた形状のものを使用してもよい。また、圧縮強度が5N/cm以上となるようにセル部のサイズを適宜設定することが好ましい。セルサイズが小さすぎる場合は、本発明の断熱性組成物が充填できないおそれがあり、セルが大きすぎる場合は、強度が低下するおそれがある。このようなハニカムコアを使用することにより、配線メンテナンスの際に人が歩行することが可能な強度を発揮することもできるのである。
【0014】
ハニカムコアのセル部に充填される断熱性組成物は、セメント、発泡有機樹脂粉粒体を含有するものであり、セル部に断熱層を形成するものである。
セメントは特に限定されず、公知のもの又は市販品を使用できる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントのほか、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント、メーソンリーセメント等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましい。より具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントの少なくとも1種が好ましい。
【0015】
発泡有機樹脂粉粒体は、個々の粉粒体中に気孔を有するものであれば良い。発泡有機樹脂粉粒体のかさ密度としては、通常0.08g/cm以下であり、好ましくは0.03g/cm以下、より好ましくは0.015g/cm以下である。
【0016】
発泡有機樹脂粉粒体を構成する発泡有機樹脂は特に限定されない。例えば、発泡スチロール、発泡フェノール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリ塩化ビニル等の公知の発泡有機樹脂を使用できる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、特に発泡スチロールが好ましい。
【0017】
発泡有機樹脂粉粒体の粒子径は、所望の断熱性、発泡有機樹脂の種類等に応じて適宜設定できる。通常は平均粒径1〜10mm程度である。上記粉粒体としては、発泡有機樹脂を粉砕したものも好適に使用できる。例えば、発泡スチロールを破砕して得られる粉粒体も使用できる。発泡スチロール等の廃棄物の破砕物を使用することもでき、この場合には廃棄物の有効利用にも貢献できる。
【0018】
発泡有機樹脂粉粒体としては、予め難燃処理したものを使用しても良い。難燃化処理したものを使用することにより、防火性において十分な物性を得ることができる。難燃処理方法は特に限定されず、例えば、アルコキシシラン化合物、珪酸塩化合物、難燃処理剤等を粉粒体にコーティングする方法、粉粒体に吸着させる方法等が挙げられる。
【0019】
発泡有機樹脂粉粒体の含有量は、セメント100重量部に対して4重量部以上である。好ましくは5重量部以上とする。また、上限は特に限定されないが、通常70重量部程度である。好ましくは5重量部を超え且つ40重量部未満とし、より好ましくは7重量部以上30重量部以下とする。かかる範囲内に規定することにより、より優れた断熱性及び強度が得られる。
【0020】
さらに、断熱性組成物には、セメント、発泡有機樹脂粉粒体のほかに、必要に応じて、無機質骨材、有機バインダー、繊維、添加剤等を配合できる。
【0021】
無機質骨材としては特に限定されず、例えば、山砂、川砂、珪砂等のほか、無機質軽量骨材等が挙げられる。これらは公知のもの又は市販品を使用できる。また1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、特に無機質軽量骨材が好ましい。無機質軽量骨材としては、例えば、パーライト、膨張頁岩、膨張バーミキュライト、シラスバルーン、ALC粉砕物等が挙げられる。
無機質骨材の平均粒径は、所望の断熱性、強度等に応じて適宜決定できる。通常は平均粒径0.05〜5mm、好ましくは0.1〜3mm程度である。
無機質骨材の含有量は、セメント100重量部に対して5〜300重量部である。この中でも、10〜200重量部が好ましい。かかる範囲内に規定することにより、優れた断熱性、強度等が得られる。
【0022】
有機バインダーとしては、公知の樹脂類、ゴム類等を含むものが使用できる。樹脂類としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、プロピオン酸ビニル樹脂、バーサチック酸ビニル樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が挙げられる。ゴム類としては、例えば、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0023】
このような有機バインダーは、いずれの形態でも使用できる。例えば、粉末状は勿論、水溶液、エマルジョン等の形態でも使用できる。いずれの形態でも、公知のもの又は市販品が使用できる。
有機バインダーの含有量は、セメント100重量部に対して固形分で0.5〜50重量部である。この中でも、1〜30重量部が好ましい。かかる範囲内に規定することにより、十分な断熱性、強度等が得られる。
【0024】
繊維としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維;炭素繊維、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。
【0025】
繊維の含有量は、セメント100重量部に対して0.5〜50重量部である。この中でも、1〜30重量部が好ましい。かかる範囲内に規定することにより、十分な強度が得られる。
【0026】
添加剤としては、硬化促進剤、減水剤、界面活性剤、難燃剤、消泡剤、造膜助剤等を配合できる。
【0027】
断熱材組成物は、セメント、発泡有機樹脂粉粒体を混合機、ミキサー等により均一に混合することにより調製できる。必要に応じて、上記の無機質骨材、有機バインダー、繊維、添加剤等を配合すれば良い。混合時には、必要に応じて水を配合しても良い。水の配合量は限定的ではないが、セメント100重量部に対して、通常100〜1500重量部程度とすれば良い。
【0028】
本発明の断熱性組成物を用いて形成される断熱層(以下、「断熱層」ともいう。)は、優れた断熱性、防火性を示すものである。具体的に、本発明の断熱性組成物を乾燥させた断熱層(厚さ30mm)の熱伝導率は、0.08(W/(m・K))以下、好ましくは0.05以下(W/(m・K))とすることができ、ウレタンフォームと同等の断熱性能を発揮することができる。また、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間10分の条件下における総発熱量を8MJ/m以下とすることができ、ウレタンフォーム(総発熱量が200MJ/m以上)と比べ優れた防火性を有する。
【0029】
さらに、上記断熱層の防火性を高めるために、断熱性組成物に水溶性金属塩、水溶性高分子を添加することが好ましい。これにより、断熱層の表層に無機質薄層が形成されやすくなり、防火性を高めることができる。(図2)
【0030】
このような水溶性金属塩としては、水に溶解し、金属イオンを生成するものが好ましく、さらには2価以上の多価金属イオンを生成するものが好ましい。例えば、
硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸鉄、硫酸カリウム鉄、硫酸マグネシウム、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸ベリリウム、硫酸ジルコニウム等の金属硫酸塩;
リン酸アルミニウム、リン酸コバルト、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸二水素亜鉛等の金属リン酸塩;
硝酸アルミニウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸コバルト、硝酸ビスマス、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸マグネシウム等の金属硝酸塩;
酢酸亜鉛、酢酸コバルト等の金属酢酸塩;
塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化コバルト、塩化鉄等の金属塩化物塩、
が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0031】
上記の水溶性金属塩としては、特に水に溶解しアルミニウム塩を生成するものが好ましく、中でも硫酸アルミニウムが好ましい。
【0032】
水溶性金属塩の比率は、セメント100重量部に対し、通常0.5〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは2〜20重量部である。この範囲であれば、後述の水溶性高分子化合物との相互作用により、断熱層の表層に無機質薄層が効率的に形成され、防火性を高めることができる。
【0033】
水溶性高分子化合物としては、例えば、
ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアルキレンオキサイド、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸及びその誘導体、ゼラチン、カゼイン及びアルブメンならびにこれらの誘導体、セルロース誘導体等が挙げられる。水溶性高分子化合物は、高粘度品がより好ましく、具体的にはその水溶性高分子化合物の1%水溶液の粘度(B型粘度計を用いて20℃で測定した値を示す。以下同じ。)が通常8000mPa・s以上、好ましくは10000mPa・s以上、より好ましくは12000mPa・s以上となるような水溶性高分子化合物を使用することが好ましい。
【0034】
水溶性高分子化合物の比率は、セメント100重量部に対し、通常0.5〜30重量部、好ましくは0.8〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。この範囲であれば、水溶性金属塩との相互作用により、断熱層の表層に無機質薄層が効率的に形成され、防火性を高めることができる。
【0035】
本発明では、水溶性金属塩と水溶性高分子化合物を併用して使用することにより、無機質薄層を効率的に形成することができ、防火性を向上することができる。その作用機構は明らかではないが、両成分による保水性向上効果が寄与しているものと推測される。
【0036】
無機質薄層は、セメント成分に由来するものであり、少なくともCa成分及びSi成分を含むものである。無機質薄層は、断熱性組成物の硬化段階において、水に分散または溶解したセメント成分が、断熱性組成物の表層で固化することにより形成される。この無機質薄層の厚さは、好ましくは0.05〜1mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、さらに好ましくは0.1〜0.4mmである。
【0037】
本発明では、図3に示すように、ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料を積層することができる。ハニカムコア構造体の上部に積層する不燃性材料としては、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス板、アルミ・亜鉛合金板、アルミニウム板等の金属板材料、珪酸カルシウム板、繊維混入珪酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、石膏ボード板、強化石膏板、パーライトセメント板、繊維強化セメント板、木片セメント板、木粉セメント板、スラグ石膏板等の無機質板、ロックウール保温板等の無機質板状材料、セラミックウールブランケット、アルミナシリカ繊維フェルト、セラミック紙、水酸化アルミ紙等のシート状物、またはセメントや石膏等の水硬性無機材料により形成される塗膜面が挙げられる。このような不燃性材料を積層することにより、強度、防火性が向上する。本発明では、特に、水硬性無機材料を使用することが好ましい。水硬性無機材料はセル部に充填された断熱性組成物との密着性が高く、強度を向上させることができる。さらに、現場施工の際、作業性や施工性に優れる。
【0038】
支持体上に備える上部床面としては、アルミニウム、鋼、コンクリート、合成樹脂、木材、或いはこれらを組み合わせた複合材など公知の材料を使用することができる。さらにその上にカーペット等の化粧層を設けてもよい。
【0039】
図4に、本発明の二重床構造体の施工方法例を示す。本発明の二重床構造体の施工方法は以下の工程を含むものである。
(1)基材上に支持体を立設する工程(図4(a))、
(2)基材上にハニカムコア構造体を積層する工程(図4(b))、
(3)ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料を積層する工程(図4(c)
(4)支持体上に上部床面を設ける工程(図4(d))
ただし、上記(3)の工程は、不燃性材料を積層する場合にのみ行うものである。
【0040】
上記(1)において、基材に支持体を立設する方法としては、基材施工時に予め埋め込む方法、基材施工後にボルト等で固定する方法等が挙げられる。支持体の数や立設する間隔等は適宜設定すればよい。
【0041】
上記(2)において、ハニカムコア構造体を積層する方法としては、予めセル部に断熱性組成物が充填されたハニカムコアを積層してもよいが、本発明では、基材上にハニカムコアを広げた状態(断熱性組成物が充填可能な状態)で載置し、その後セル部に断熱性組成物を充填し積層することが好ましい。
基材上にハニカムコアを載置する場合、
(I)予め広げられた形状のハニカムコアを基材に載置する方法、
(II)基材に接着剤等を塗付し次いでハニカムコアを広げた状態で載置する方法、
(III)ハニカムコアのセル部の一部を支持体に固定しハニカムコアを広げた状態で載置する方法、
等が挙げられる。本発明では(III)の方法が好ましく、支持体にハニカムコアを固定する方法としては、支持体をハニカムコアのセル部の一部に通す方法、ハニカムコアに接着剤等を塗付し、支持体に固定化する方法等が挙げられる。支持体にハニカムコアの一部を固定することにより、折り畳んだ状態のハニカムコアを容易に広げることができ、セル内に断熱性組成物を容易に充填できる。
【0042】
また、上記(2)において、ハニカムコアのセル部に断熱材料組成物を充填する方法は特に限定されず、流し込み、吹き付け、コテ塗り等の方法が挙げられる。また、流し込み、吹き付け等により充填する場合、コテ、へら、ローラー等を用いて表面を平滑に仕上げることが好ましい。
【0043】
上記(3)において、不燃性材料を積層する場合、上記(2)の断熱性組成物は硬化した状態、または半硬化、未硬化の状態であってもよいが、金属板等の板状材料の場合、断熱性組成物の硬化後に積層することが好ましい。一方、セメントや石膏等の水硬性無機材料の場合、断熱性組成物を充填後、半硬化、未硬化の状態で続けて積層することができる。この場合、ハニカムコアのセル部に充填した断熱性組成物との密着性が高く、強度が向上するため好ましい。水硬性無機材料を積層する場合、流し込み、吹き付け、コテ塗り等の方法を採用することができる。
【0044】
上記(4)において、支持体上に上部床面を設ける場合、不燃性材料を積層後に続けて行えばよいが、上記(3)で不燃性材料に水硬性無機材料を使用した場合には、水硬性無機材料の乾燥後に行うことが好ましい。
【0045】
本発明の二重床構造体において、配線または配線のメンテナンスは、上部床面を取り外して行う。本発明の二重床構造体の内部床面(図1)は、基材上に、ハニカムコア構造体が積層された構造を有するため、優れた強度を発揮することができる。このため、配線または配線のメンテナンス時には、人の歩行が可能であり、配線が複雑な場合であっても効率よく作業することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0047】
(ハニカムコア)
紙製ハニカムコア(高さ:30mm、セルの形状:長方形、セルサイズ:116mm×58mm、圧縮強度:9.7N/cm
(断熱性組成物1)
セメント100重量部、発泡有機樹脂粉粒体20重量部、無機質骨材70重量部、有機バインダー5重量部、添加剤5重量部、水を均一に混合し、断熱性組成物1を調製した。
(断熱性組成物2)
セメント100重量部、発泡有機樹脂粉粒体20重量部、無機質骨材70重量部、有機バインダー5重量部、水溶性金属塩10重量部、水溶性高分子5重量部、添加剤5重量部、水を均一に混合し、断熱性組成物2を調製した。
(不燃性材料)
セメント100重量部、無機質骨材70重量部、有機バインダー5重量部、繊維3重量部、添加剤5重量部、水を均一に混合し、不燃性材料用組成物を調製した。
なお、使用した原料を以下に示す。
・セメント:普通ポルトランドセメント
・発泡有機樹脂粉粒体:再生発泡スチロール破砕品(平均粒子径約5mm、かさ密度0.012g/cm
・無機質骨材:パーライト(平均粒子径0.1mm)、ALC粉砕物(平均粒子径0.5mm)
・有機バインダー:粉末状メチルセルロース
・水溶性金属塩:硫酸アルミニウム
・水溶性高分子化合物:メチルセルロース(1%水溶液の粘度が15000mPa・s)
・添加剤:硬化促進剤
【0048】
(実施例1)
コンクリート基材に上に支持体を立設し、ハニカムコアを広げた状態でコンクリート基材上に載置した。ハニカムコアのセル部に断熱性組成物1を流し込み、充填した後、表面を平滑にし、十分に乾燥させ、上部床面を設置し二重床構造体とした。この二重床構造体は、施工性、作業性、防火性、断熱性、強度において良好であった。
【0049】
(実施例2)
コンクリート基材に上に支持体を立設し、ハニカムコアを広げた状態でコンクリート基材上に載置した。ハニカムコアのセル部に断熱性組成物2を流し込み、充填した後、表面を平滑にし、十分に乾燥させた。ハニカム構造体の断熱性組成物の表層には無機質薄層が形成されていた。
次いで、実施例1と同様に上部床面を設置し二重床構造体とした。この二重床構造体は、施工性、作業性、防火性、断熱性、強度において良好であった。
【0050】
(実施例3)
コンクリート基材に上に支持体を立設し、セルの一部に支持体を通しつつ、ハニカムコアを支持体に固定するようにコンクリート基材上に載置した。ハニカムコアのセル部に断熱性組成物1を流し込み、充填した後、表面を平滑にした。次いで、その表面に不燃性材料を塗り付けて積層し、十分に乾燥させ、上部床面を設置し二重床構造体とした。この二重床構造体は、施工性、作業性、防火性、断熱性、強度において良好であった。
【符号の説明】
【0051】
1:基材
2:ハニカムコア
3:断熱層(断熱性組成物)
31:無機質薄層
4:ハニカムコア構造体
5:不燃性材料
6:内部床面
61:内部床面
7:支持体
8:上部床面
9:配線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造体において、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層されていることを特徴とする二重床構造体
【請求項2】
基材上に、支持体を立設し、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物を充填したハニカムコア構造体を積層し、
上記支持体上に上部床面を設ける
ことを特徴とする二重床の施工方法
【請求項3】
基材上に、支持体及び該支持体上に上部床面を備える二重床構造体において、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物が充填されたハニカムコア構造体が積層され、
さらに、該ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料が積層されていることを特徴とする二重床構造体
【請求項4】
基材上に、支持体を立設し、
基材上には、ハニカムコアのセル部にセメント100重量部に対し、発泡有機樹脂粉粒体4重量部以上を含有する断熱性組成物を充填したハニカムコア構造体を積層し、
上記ハニカムコア構造体の上部に不燃性材料を積層し、
上記支持体上に上部床面を設ける
ことを特徴とする二重床の施工方法




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156194(P2010−156194A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270866(P2009−270866)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】