説明

二重相硬質材料、その製造法および該二重相硬質材料の使用

二重相硬質材料、その製造法および該二重相硬質材料の使用。要約:タングステン溶融炭化物からなる核およびタングステンモノカーバイドからなる被覆を有する粉末状粒子からなる炭化タングステン粉末、タングステン溶融炭化物粉末を炭素源の存在で1300〜2000℃の温度に加熱することによる該炭化タングステン粉末の製造法、ならびに耐摩耗性が要求される構造部材を表面被覆するため、およびドリルビットを製造するための該炭化タングステン粉末の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン溶融炭化物からなる核およびタングステンモノカーバイドからなる被覆を有する粉末状粒子からなる炭化タングステン粉末、その製造および耐摩耗性が要求される構造部材またはその被覆のための該炭化タングステン粉末の使用に関する。
【0002】
硬質材料、殊に炭化タングステンは、硬さおよび抵抗能のための多種多様に使用されている。例えば、前記の硬質材料を含有する層は、工具、例えば浚渫用シャベル上にもたらされ、前記工具に高い耐摩耗性および摩擦および衝撃に対する靭性を付与する。
【0003】
炭化タングステンの群から、工業的には、タングステンモノカーバイド(WC)および所謂タングステン溶融炭化物(WSC)が使用されている。WSCは、WCと炭化二タングステン(WzC)とからなる共融混合物であり、この場合平均的な炭素質量比は、一般に3.8〜4.2質量%である。これは、WC73〜80質量%およびWC20〜27質量%の相分布に相当する。WSCは、極めて微粒状の結晶組織を有し、この結晶組織は、しばしばばね構造として記載されており、炭化物融液の急速な冷却によって得ることができる。
【0004】
米国特許第4834963号明細書の記載から、所謂巨視的結晶質のWC(mWC)の製造は、公知である。これは、テルミット法で製造され、殊に極めて僅かな含量の不純物を示す。金属の鉄を出発混合物中に添加することによって、製造過程は、望ましい温度範囲で進行し、mWCは、粒径のために数多くの範囲においてWSCの代わりに使用されている。しかし、WSCと比較して、mWCは、明らかに低い硬さおよび靭性を有している。
【0005】
WSCの製造のためには、本質的に熱供給および熱導出の方法で区別される種々の方法が公知である。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3626031号明細書A1には、WSCを電気アーク中で製造することが記載されている。3.5〜4.2質量%の炭素含量および微細な針状の構造組織を有するWSCを得ることができる。硬さHV0.4は、2100〜2400で記載される。WSCは、古典的な後処理技術、例えば破砕および篩別にかけられ、したがって破砕され分別されたWSCを得ることができる。
【0006】
欧州特許第238425号明細書B1、ドイツ連邦共和国特許出願公開第19945318号明細書A1および欧州特許出願公開第687650号明細書A1の記載から、WSCを製造するための種々の方法が公知であり、この場合このWSCは、球状の粒子形態を示す。球状のWSC(sWSC)は、HV0.1 3000を上廻る極めて高い硬さと共に、形態のために、例えば荷重下での応力のピークを回避させることに関連して、破砕されたWSCに対する利点を有する。
【0007】
耐摩耗層を形成させるかまたは建築部材を製造するためにWSCを加工する場合には、WSCは、通常、Fe、NiまたはCoを基礎とする粉末状の金属合金と混合され、熱の作用下で加工される。ドリル頭部を製造する場合には、マトリックス金属、例えばCuは、浸潤によって供給されてもよい。しかし、全ての場合に熱処理は必要とされる。マトリックス金属を溶融させ、再び凝固させることによって、硬質材料は、均一に延性の金属マトリックス中に分布され、堅固に埋設される。
【0008】
WSCの重大な欠点は、WSCがマトリックス金属中への埋設の際に必要とされる、金属の熱処理の経過中に一部分が溶融することにある(B.Z. LA et. al.: Acta. Met, Vol. 12, No. 4, 566-572 (1999), F. Schreiber: Ziegelindustrie International, 55(6), 12-17 (2002), L. Aydin et. al.: DVS-Bericht 175, 137-142(1996))。従って、利用可能な硬質材料の含量は減少し、マトリックス材料として使用される金属合金は、タングステンおよび炭素の含量の増加によって不可逆的に変化される。加工すべき硬質材料マトリックス金属混合物中の硬質材料含量を簡単に上昇させるには、加工側で明らかに制限が設けられている。マトリックス金属との混合物中での硬質材料含量は、混合物の流動挙動のために、溶接で使用する場合には、通常60質量%を上廻らない。
【0009】
処理温度の上昇ならびに熱作用の継続と共に、溶解されたWSCの量が上昇することは、重大な結果をまねく。作用を明確に説明するために、例として、耐摩耗層を手で溶接することが挙げられる。製造された層の局所的な品質は、溶接に使用される装置の使用者の技能、持続性および忍耐力に直接に依存する。それというのも、この使用者は、熱処理の強さおよび時間に影響を及ぼすからである。機械での溶接または類似の場合にも標準化された処理は、WSCの溶解に不利に作用する。例えば、熱処理のための温度および溶接速度は、狭い範囲でのみ選択されることができ、WSCの強すぎる溶解または完全な溶解は、回避される。
【0010】
WSCの溶解は、マトリックス材料を著しく変化させうる。炭素およびタングステンを金属中で溶解することによって、例えばマトリックスの延性を減少させる、脆い炭化物相の制御されない分離を生じ、亀裂の形成を促進させる。また、付加的な炭化物形成剤の僅かな含量を有するマトリックス合金のためには、WSCの溶解は、不利である。それというのも、硬質材料の利用可能な含量は、全ての場合に減少されるからである。Feをベースとする合金を使用した場合には、炭素の含量が増加すると、望ましいフェライト相よりも劣悪な耐摩耗性の性質を有するオーステナイトの分離が生じうる。
【0011】
数多くの工業的な開発は、間接的に耐摩耗性層の製造の際に使用される硬質材料が溶解することを排除することを目的としている。即ち、例えば僅かな融点を有するマトリックス合金、炭化物形成剤の僅かな含量を有するマトリックス合金または温度に関連して高い処理定数を有する加熱法(プラズマ移行式アークPlasma Transferred Arc(PTA), レーザーLaser)が使用される。しかし、それによって、数多くのマトリックス金属中でのWSCの高い溶解性の原理的な問題は、排除することができない。
【0012】
従って、本発明の課題は、殊に金属融液中での高い化学的安定性および同時に高い硬さおよび靭性を示す炭化タングステンを提供することであった。
【0013】
この課題は、WCからなる厚手の被覆によって包囲されている、WSCからなる核を有する炭化タングステン粉末によって解決される。
【0014】
従って、本発明は、炭化二タングステン粉末に関し、この場合粉末粒子は、タングステン溶融炭化物からなる核およびタングステンモノカーバイドからなる被覆を有する。
【0015】
本発明による硬質材料、以下”cWSC”と略記する、は、WSCを加炭によって望ましい深さに至るまでWCに変換することにより得ることができ、例えば耐摩耗性層の形成および耐摩耗性の建築部材の製造に使用されることができる。
【0016】
本発明によるcWSCは、殊に常法で加工される場合、即ち液状のマトリックス材料と接触させる場合にもWC/WSC複合体の核中でのWSCの驚異的な靭性および硬さが保持されたままであることを示す。
【0017】
本発明による炭化タングステン粉末は、特に4〜6質量%、殊に有利に4.5〜5.5質量%、特に有利に4.3〜4.8質量%の結合された炭素含量を有する。遊離炭素の含量は、0.1質量%を上廻らない。
【0018】
結合された炭素の含量が4質量%未満である場合には、十分な密度のWC被覆は、形成されず、したがってWSCと比較して化学的安定性は、観察することができない。結合された炭素は、純粋なWCに相応して限界値6.13質量%に近似しており、したがってWSC核は、純粋なWCと比較して硬さの上昇をもはや達成しない程度に小さい。
【0019】
本発明による炭化タングステン粉末の好ましい性質は、この炭化タングステン粉末がWC粒子の微少含量を有し、即ち全ての粉末粒子がWSCからの核およびWC被覆から形成されていない場合にも維持されたままである。従って、このようなタングステン粉末は、同様に本発明によるものである。しかし、特に粉末粒子の少なくとも90%、殊に有利に95%、特に有利に少なくとも99%は、WSCからなる核とWC被覆とを有する。
【0020】
平均粒径は、幅広い範囲内で変動することができ、殊にcWSCの計画された使用により左右される。ASTM B 214に記載のロータップ(RoTap)篩分析により測定された粒径は、例えば3000μmまでであることができる。耐摩耗性層の形成のためにPTA方法を使用しながらcWSCを使用する場合には、40〜160μmのASTM B 214に記載のロータップ篩分析により測定された粒径画分が有利であることが証明された。平均粒径は、例えば一定の平均粒径を有するWSC粉末をcWSCの製造のためのエダクトとして選択することによって調節することができる。しかし、例えば既に製造されたcWSCから一定の粒子画分を、例えば篩別またはスクリーニングによって混合するかまたは分離することも可能である。
【0021】
本発明による炭化タングステン粉末においては、WSC核は、タングステンモノカーバイドからなる緻密な被覆によって包囲されている。エッチングされた材料についての光学顕微鏡測定法により測定された被覆の厚さは、ASTM B 214に記載のロータップ篩分析により測定された平均粒径の0.05〜0.4倍、殊に有利に0.05〜0.15倍である。
【0022】
cWSCは、顕著な硬さを有する。特に、ヴィッカース硬さは、HV0.1 2000超、殊に有利にHV0.1 2500超である。
【0023】
粒子の形態は、例えば適当なWSC粉末を使用することによって調節することができる。
【0024】
それに応じて、本発明による炭化タングステン粉末は、種々の形態、例えば鋭利な端部を有する破砕された形態または球状の形態を有することができる。球状の形態は、原理的に耐摩耗性に関連して利点を提供するが、しかし、製造の点で不規則な形態を有する粉末よりも費用がかかる。
【0025】
更に、本発明の対象は、タングステン溶融炭化物粉末を炭素源の存在で1300〜2000℃、特に1400〜1700℃の温度に加熱することにより、本発明による炭化タングステン(cWSC)を製造する方法である。
【0026】
本発明による方法は、不活性ガスの存在、反応性ガスの存在または真空中で実施されてよい。有利には、水素の存在で作業される。
【0027】
反応性ガスとしては、殊にガス状炭素源、例えば一酸化炭素、CO−/CO混合物、炭化水素または炭化水素混合物、例えば天然ガスが適当である。
【0028】
炭素源としては、ガス状または固体の炭素源がこれに該当する。固体の炭素源としては、例えばカーボンブラックまたは黒鉛が使用されてよい。勿論、種々のガス状炭素源および/または固体の炭素源の混合物を使用することも可能である。WSCを炭素源の存在で温度処理することによって、表面上でWCからWCへの変換が生じる。即ち、WSCは、緻密なWC層を形成する。
【0029】
温度、反応時間および添加される炭素源の量は、WCの被覆が望ましい厚さで形成されるように選択することができる。維持することができる条件は、本質的に使用されるWSC粉末の粒径および粒子形によって定められ、簡単な一連の試験で定めることができる。炭素含量を過剰に高くなるように調節した場合には、この結果、反応に必要とされる時間および温度は、上昇し、ばね状態組織の含量、即ちWSCの含量は、不必要に減少する。
【0030】
反応混合物中の全炭素含量、即ちWSCおよび炭素源の炭素含量の総和が4〜6質量%、特に4.3〜5.5質量%であるような量で炭素源を添加することは、有利であることが判明した。
【0031】
WSCを著しく異なる粒径の粉末粒子と反応させた場合には、粒径の比較で粗大な粒子よりも微細な粒子画分は、著しく浸炭されうる。これは、なかんずく45μm未満の高い微細含量を有する粉末に当てはまり、微細含量の早期の分離および種々の粉末画分の別個の反応によって回避されうる。
【0032】
反応時間は、例えば1〜10時間、特に1.5〜7時間である。
【0033】
即ち、本発明による炭化タングステンの製造のために、所望の粒径に篩別される、破砕されたかまたは球状のWSCから出発することができる。引続き、この材料は、炭素源、例えばカーボンブラックと所望の量で強力に混合され、熱処理に掛けられ、その際に縁部で浸炭される。熱処理のために、例えば1550〜1900℃の温度範囲で水素雰囲気下または保護ガス下で運転されることができる、例えば常用の押出機型の炉または比較可能なユニットが適当である。WSCとカーボンブラックとからなる混合物は、例えば黒鉛ボート中に注入される。反応の場合、炭素は、WSC中に存在するWzCと反応し、このWzCは、WCに変換され、このWCは、既に存在するWCともはや区別することができない。それによって生じるWC表面層は、炭素のための天然の拡散バリヤーを形成し、したがって望ましい浸炭深さは、時間および温度のパラメーターにより制御されることができる。
【0034】
本発明によるcWSCは、常法で焼結、噴霧、溶接、浸潤、回転塗布または緻密な複合材料の製造に適した他の方法によって加工されてよい。この本発明によるcWSCは、耐摩耗性が要求される構造部材の表面被覆を形成させるのに有利に好適である。そのために、cWSCは、一般にマトリックス金属、例えばFe、NiまたはCoをベースとする合金と混合され、引続き記載された方法、殊に溶接により保護すべき表面上に塗布される。
【0035】
従って、本発明の対象は、耐摩耗性が要求される構造部材を表面被覆するため、およびドリルビットを製造するための本発明による炭化タングステン粉末の使用である。
【0036】
次の実施例は、本発明を詳説するために使用され、この場合この実施例は、本発明による原理の理解を簡易化するものであって、この原理を制限するものとして理解すべきではない。
【0037】
実施例
全炭素の含量は、試料を酸素流中で燃焼させ、熱伝導率を検出することによって測定され、遊離炭素の含量は、酸分解(HF/HNO/HPO)および引続く非分散性赤外吸収によって酸素流中での燃焼後に測定される。結合された炭素の含量は、全炭素と遊離炭素とからの差に対応する。
【0038】
例1
結合された炭素約3.94質量%および遊離炭素0.035質量%を有する−150+45μmの粒子のWSCをカーボンブラック(BET比表面積10m/g)と混合した。添加されたカーボンブラックの量をCgesamtの全炭素含量が5.7質量%であるように選択した。この混合物を黒鉛ボート中に注入し、1550℃で2時間水素雰囲気下で押出型の炉中で灼熱させる。生じたcWSCを横断面で調製し、相の組成を目視可能にするためにエッチングし、反射型光学電子顕微鏡で検査した。顕微鏡写真(倍率1000倍)は、図1に記載されている。
【0039】
粗大な粒子は、浸炭後にWCからなる厚さ約15μmの縁部を有し、この縁部は、図1で明るい縁部層として確認することができる。大きな長さ−幅比(縦横比)を有する粒子、即ち長手方向に形成された粒子は、部分的に完全に浸炭されている。最終製品は、結合された炭素5.26質量%および遊離炭素0.41質量%を有していた。遊離炭素の高い含量は、提供された炭素が選択された浸炭条件下で完全には吸収されなかったことを示す。150μm〜45μmの篩画分の含量は、処理によって出発材料と比較して変化しなかった。
【0040】
こうして得られた炭化タングステン6kgをマトリックス金属として−150+53μmのNi−3B−3Si合金4kgに添加し、プラズマ移行式アークPlasma Transferred Arc(PTA)溶接により手動式バーナーを用いて70〜80A/約30Vで単層および二層で鋼製支持体上に溶接した。この材料は、攪乱溶融浴の形成ならびにスプラッシの形成をまねく傾向にあり、このことは、遊離炭素の高い含量に帰因しうる。試験体を横断面で反射型光学顕微鏡下で検査した。顕微鏡写真は、図2(倍率50倍)および図3(倍率500倍)に示されている。
【0041】
溶接で生じた組織は、殆んど炭化物の沈殿物を含有していない。マトリックス金属および硬質材料は、元来の組成でそのまま維持され、殊に大気に暴露され強い熱応力を受けた縁部帯域は、熱の影響を受けた帯域の中央部および下部と比較して無傷の硬質材料の不変の高い含量を示し、この場合には、むしろ著量の数の粒子が大気に暴露された表面から突出している。
【0042】
比較のために、本発明による炭化タングステンの製造に使用されたWSCを同一の条件下で溶接した。WSCは、外側の縁部で200〜500μmの深さになるまで殆んど完全に溶解する。微細な炭化物は、沈殿される。試験体を横断面で反射型光学顕微鏡下で検査した。顕微鏡写真は、図4(倍率50倍)および図5(倍率500倍)に示されている。明らかに微細な炭化物粒子を確認することができる。
【0043】
定量的な画像分析により、同量で使用される硬質材料は、浸炭されずに同じ条件下で溶接された参照材料(WSC)と比較して、複合材料中に埋設された硬質材料粒子の数を約30%上廻ることが確認された。
【0044】
例2
−150+45μmの粒子のWSCを例1と同様にカーボンブラックと反応させた。しかし、処理時間は、6時間であった。結合された炭素5.48質量%および遊離炭素0.06質量%を有するcWSCを生じた。粒径分布は、延長された反応時間によって影響を及ぼされなかった。遊離炭素と結合された炭素との比は、予想されたように延長された温度処理によって例1と比較して減少されていた。例1と同様に、cWSC6kgをNi−3B−3Si合金4kgと混合し、PTA手動式バーナーで溶接した。僅かな含量の遊離炭素は、例1と比較して溶接挙動に対してプラスに作用した。溶接層を顕微鏡検査した場合、溶解されていない炭化タングステン粒子の数は、浸炭されていない比較試験体(WSC)と比較してさらに10%、即ち全体で40%上昇しうることが判明した。
【0045】
例3
−150+45μmの粒子のWSCを例1と同様にカーボンブラックと反応させた。しかし、微少量のカーボンブラックを使用し、したがって混合物の全炭素含量は、4.3質量%であった。結合された炭素4.3質量%および遊離炭素0.01質量%を有するcWSCを生じた。微少量の炭素源が添加されたために、WCからなる極めて薄手の被膜のみが形成された。例1と同様に、こうして得られた炭化タングステン6kgをNi−3B−3Si合金4kgと混合し、PTA手動式バーナーで溶接した。混合物の溶接挙動は、浸炭されなかった比較試験体(WSC)と区別することができなかった。溶接層を顕微鏡検査した場合、炭化タングステンの溶解は、WCからなる極めて薄手の被覆にも拘わらず十分に抑制することができたことが判明した。しかし、例1および例2と比較して、明らかに高い含量の炭化物が形成され、この炭化物は、金属マトリックス中で冷却の際に溶融液から沈殿された。浸炭されなかった比較材料(WSC)と比較して、溶接された層中で残存する炭化タングステン粒子の数の約18%の上昇が達成された。
【0046】
図6は、横断面で溶接後の炭化タングステンの顕微鏡写真(倍率50倍)を示す。僅かな数の微細な炭化物粒子を確認することができる。
【0047】
例4(比較)
比較のために、結合された炭素6.1質量%を有する−150+45μmの粒子の巨視的結晶質のWSC6kgを例1と同様にNi−3B−3Si合金4kgに添加し、例1に記載の条件下で溶接した。予想したように巨視的結晶質のWCは、溶接の際に溶解しなかった。溶接された層中での硬質粒子の含量は、例1からのWSC出発材料を使用した場合よりも約48%高い。溶接層中での巨視的結晶質のWCの硬さは、HV0.1 約1500であり、それによってHV0.1 2200〜2500と記載することができる本発明による例1〜3からのcWSCの硬さよりも明らかに低かった。溶接後のマトリックス金属の平均硬さは、HV0.1 約700であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】生じたcWSC相の横断面の金属組織を反射型光学電子顕微鏡で検査した結果を示す顕微鏡写真(倍率1000倍)。
【図2】試験体の横断面の金属組織を反射型光学顕微鏡下で検査した結果を示す顕微鏡写真(倍率50倍)。
【図3】試験体の横断面の金属組織を反射型光学顕微鏡下で検査した結果を示す顕微鏡写真(倍率500倍)。
【図4】試験体の横断面の金属組織を反射型光学顕微鏡下で検査した結果を示す顕微鏡写真(倍率50倍)。
【図5】試験体の横断面の金属組織を反射型光学顕微鏡下で検査した結果を示す顕微鏡写真(倍率500倍)。
【図6】溶接後の炭化タングステンの横断面の粒子の金属組織を示す顕微鏡写真(倍率50倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化タングステン粉末において、粉末粒子がタングステン溶融炭化物からなる核およびタングステンモノカーバイドからなる被覆を有することを特徴とする、炭化タングステン粉末。
【請求項2】
結合された炭素の含量が4〜6質量%、有利に4.3〜5.5質量%である、請求項1記載の炭化タングステン粉末。
【請求項3】
ASTM B 214に記載のロータップ篩分析により測定された粒径が3000μmまでである、請求項1または2記載の炭化タングステン粉末。
【請求項4】
タングステンモノカーバイドからなる被覆の厚さが平均粒径の0.05〜0.4倍である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末。
【請求項5】
HV0.1 2000超の硬さを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末。
【請求項6】
粉末粒子が鋭利な端部を有する破砕された形態を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の製造法において、タングステン溶融炭化物粉末を炭素源の存在で1300〜2000℃、特に1400〜1700℃の温度に加熱することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の製造法。
【請求項8】
炭素源がカーボンブラック、黒鉛および/または炭化水素である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
炭素源を反応混合物中の全炭素含量が4〜6質量%であるような量で添加する、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
耐摩耗性が要求される構造部材を表面被覆するための請求項1から6までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の使用。
【請求項11】
ドリルビットを製造するための請求項1から6までのいずれか1項に記載の炭化タングステン粉末の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−516918(P2007−516918A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540285(P2006−540285)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012959
【国際公開番号】WO2005/049490
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(303036245)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】