説明

二重管の端末構造及び二重管の端末加工方法

【課題】 外管内の流通抵抗を悪化させることなく、内管と外管との分岐、おとび曲げ加工などが容易な二重管の端末構造、および端末の加工方法を提供する。
【解決手段】 大径の外管2の内壁2aと、小径の内管3の外壁3aとが接合部4で一体となるように外管2の内部に内管3を配置した二重管1に、二重管1の開口部から刃具10を挿入することで、接合部4を切断し、外管2と内管3に分割しつつ、内管3の端部を外管2の中央部に移動し、外管2の接合部4が切断された部位を切除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管内に内管が配置される二重管の端末構造、および端末の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二重管101としては、特許文献1、2に開示されたものがある。特許文献1の二重管構造は、図8(a)、(b)に示すように、内管103を外管102に挿入して二重管101を構成し、両端部において継手部材(図示せず)に接合する。外管102の先端膨拡部(図示せず)を継手部材の筒状雄部(図示せず)に外嵌させて膨拡部の先端を絞り加工させることによって外管102を塑性変形させ、内管103の先端拡径部(図示せず)を外管102の膨拡部より突出させるとともに、継手部材の挿通部(図示せず)に挿通させた後、拡径部の先端部を口広げ加工させて挿通部の大径接合部(図示せず)に圧接して内管103を塑性変形することで、継手部材に接合する際にコスト低減できる物である。
【特許文献1】特開2004−239318号公報
【特許文献2】特開2004−270928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術では、内管103と外管102とが別部材で構成されており、二重管を屈曲させて配管する際に、内管103と外管102との干渉を防止するために別体の支持部材105を外管102と内管103との間の屈曲部位に挿入し、内管103を支持している。
【0004】
しかしながら、このように支持部材105で内管103を外管102に支持した場合、外管102内の所定の部位に支持部材105を保持しつつ、曲げ加工を行なうことは困難であるうえ、支持部材105が挿入された部位の機械的強度は他の部位よりも強くなるため、周辺部位を不要に変形させることなく、所定の形状になるよう曲げ加工を施すことは大変困難である。
【0005】
また、支持部材105で内管103を外管102に支持した場合、および特許文献2に示されるように内管と外管とが一体に形成された場合ともに、内管はリブによって外管に支えられているため、外管内の流通抵抗が増加してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、リブによる外管内の流通抵抗を悪化させることなく、内管と外管との分岐、おとび曲げ加工などが容易な二重管の端末構造、および端末の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する請求項1の発明は、大径の外管の内壁と、小径の内管の外壁とが接合部で一体となるように、該外管の内部に該内管が配置され、該二重管の開口部から刃具を挿入することで、該接合部が切断されて、該外管と該内管に分割されつつ、該内管の端部が該外管の中央部に移動され、該外管の該接合部が切断された部位が切除されたことを特徴とする二重管の端末構造である。
【0008】
請求項2の発明は、大径の外管の内壁と、小径の内管の外壁とが接合部で一体となるように、該外管の内部に該内管が配置された二重管の開口部から刃具を挿入することで、該接合部を切断して、該外管と該内管に分割しつつ、該内管の端部を該外管の中央部に移動する工程と、該外管の該接合部が切断された部位を切除する工程とを備えたことを特徴とする二重管の端末加工方法である。
【発明の効果】
【0009】
外管の内壁と、内管の外壁とが接合部で一体となるように、外管の内部に内管が配置されたことにより、外管内の流通抵抗を悪化させることなく外管内に内管を配置することができるとともに、二重管を所定の形状に曲げる際にも不要な変形を起こすことがない。また、接合部を切断することで内管と外管とが分割されるので、他の二重管との連結、および内管と外管とを分岐することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明の第1実施形態を示し、図1は二重管の端末部分を示し、(a)は長手方向に沿った側方断面図、(b)は(a)A−A線に沿った断面図、(c)は二重管の開口端を示す正面図、図2は接合部を切断する刃具を示し、(a)は刃具の先端を示す正面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図、図3は刃具で接合部を切断する様子を示す側方断面図である。
【0011】
本実施形態の二重管1は、アルミ材などの熱伝導に優れた素材で形成され、図1(a)、(b)に示すように、外管2の内壁2aと、内管3の外壁3aとが、押出し成形、およびロウ付けなどによって接合部4で一体となるように、大径の外管2の内部に小径の内管3が配置されている。内管、外管ともに外形が円形で、円形中心が偏心して接合部で接合している。このため外管の中心に内管がある物と比べリブがない。本実施形態では内管が外管に接するように接合しているが、内管と外管の接合部が短いリブ状になったものでも良い。内管が偏心している事で短いリブが実現可能になる。また、図1(a)、(c)に示すように、二重管1の端部は、接合部4が切断されて外管2と内管3に分割され、外管2の端部と内管3の端部が同心円状に位置するように内管3に曲げ加工が施されている。
【0012】
刃具10は、図2(a)、(b)に示すように、円筒形状を有し、刃具10の外径R3は外管2の内径r1と一致するように設定されている。また、刃具10の内部空間には、円形断面形状を有し、内径r3が内管3の外径R2と一致するように設定された内管収容部13が設けられている。
【0013】
刃具10の端部は、軸方向に対して斜めに切断され、楕円形状の端面17が形成されている。端面17には、長穴形状を有し、後述する内管誘導部12を通じて内管収容部13に連通する内管導入口11が形成されている。内管導入口11は、一端が刃具10の先端部に接し、楕円形状の長半径に沿って配置され、幅が内管3の外径R2と一致するように設定されている。
【0014】
刃部14は、接合部4を切断する部位で、刃具10の先端部分に刃具10の外周に沿って円弧状に設けられ、断面がくさび形状に形成されている。刃部14から内管収容部13の間は、滑らかな曲面で形成された内管誘導部12によって段差がなく接続されている。
【0015】
次に、二重管1の端末を加工する手順を説明する。まず、二重管1を固定治具(図示せず)に固定する。次に、刃具10の先端部分を二重管1の開口部の接合部4に一致させて、二重管1の長手方向に沿って刃具10を押込み、刃具10の先端部に設けられた刃部14で接合部4を切断する。
【0016】
そして、図3に示すように、さらに刃具10を二重管1内に押込み、挿入することで、刃部14によって接合部4が切断され、分割した内管3の端部は、刃具10の内管誘導部12に沿って外管2の中心部に向かって曲げられ、内管収容部13に収容されつつ、外管2の中央部に移動され、外管2と内管3が同心円状に成形される。
【0017】
最後に外管2の接合部4が切断された部位を切除して、外管2から内管3の先端部を突出させる。
【0018】
以上のような構成により、外管の内壁と、内管の外壁とが接合部で一体となるように、外管の内部に内管が配置されているため、外管内の流通抵抗を悪化させることなく外管内に内管を配置することができるとともに、二重管を所定の形状に曲げる際にも不要な変形を起こすことがない。
【0019】
また、接合部を切断することで内管と外管とが分割されるので、他の二重管との連結、および内管と外管とを分岐する作業を容易に行なうことができる。
【0020】
図4(a)〜(c)には、上記第1実施形態の刃具10の別態様となる刃具体10aが示されている。上記実施形態の刃具10では、先端部分に刃部14が形成されているため、二重管1と刃具10との位置決めを正確に行ない、接合部4のみを切断することが困難である。そこで、本態様の刃具体10aは、本体15に上記刃具10と、先端部分が円錐形状を有する丸棒状の位置出しピン16とが、平行に配置されている。
【0021】
このような刃具体10aを用いた場合の二重管1の端末を加工する手順を説明する。まず二重管1を固定治具(図示せず)に固定し(図4(a)参照)、位置出しピン16の先端部を内管3に挿入して刃具体10aの位置を決定する(図4(b)参照)。次に、位置出しピン16を抜き、所定の量だけ刃具体10aを平行移動して、外管2の内径に刃具10を一致させる。これにより、刃具体10aを刃部14が接合部4のみを切断しながら刃具10が二重管1の中に挿入される(図4(c)参照)。
【0022】
以上のような構成により、二重管1と刃具10との間の位置決めが容易に行えるため、上記作用効果に加え、さらに二重管1の端末の加工を簡易化することができる。
【0023】
次に、本願発明の刃具の第2実施形態について、図5(a)〜(c)を用いて説明する。図5は本実施形態の刃具の要部を示し、(a)は上面図、(b)はC−C線に沿った断面図、(c)は斜視図である。
【0024】
本実施形態の刃具20は、本体部分25から2本の支持部26,26が突接され、これら支持部26,26の間の部分に断面がくさび形状を有する刃部24が設けられている。また、各支持部26,26は基端側から先端側に向かって先細に設定された略三角錐形状を有しており、刃具20は所謂バール(釘抜き)形状を備えている。なお、刃具20の下面27は、外管2の内径r1の曲率と一致する円弧状の曲面に形成されている。
【0025】
各支持部26,26を接合部4の両脇に位置する外管2と内管3との隙間部分に挿入することで、二重管1と刃具20との位置決めを行なう。そして、上記第1実施形態と同様に、刃具20を二重管1の内部に挿入し、接合部4を切断する。
【0026】
なお、図示を省略しているが、刃具20のさらに基端側に第1実施形態と同様の筒形状を有する内管収容部(図示せず)を形成し、分割された内管3の端部を外管2の中央部に移動し、外管2と内管3を同心円状に成形することも可能である。
【0027】
以上のような構成により、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、2本の支持部26,26を接合部4の両脇に位置する外管2と内管3との隙間部分に挿入することで二重管1と刃具20との位置決めが行えるため、二重管1の端末部分の加工工程をさらに簡素化することができる。
【0028】
次に、本願発明の刃具の第3実施形態について、図6を用いて説明する。図6は本実施形態の刃具の要部を示す斜視図である。
【0029】
本実施形態の刃具30は、円筒形状を有しており、刃具30の外径R4は外管2の内径r1と一致するように設定されている。また、刃具30の内部空間には、円形断面形状を有し、内径r4が内管3の外径R2と一致するように設定された内管収容部33が設けられている。
【0030】
刃具30の端部は、軸方向に対して直角に切断されており、外管2の外周に沿って環状で、且つ断面が端部に向かって先細のくさび形状を有する刃部34が形成されている。
【0031】
そして、これら内管収容部33と刃部34とは、端部に向かって拡径する筒状のテーパ面で形成された内管誘導部32を介して段差なく接続されている。
【0032】
二重管1の端部を加工する際には、二重管1と刃具30との中心軸を一致させて二重管1を固定し、刃具30を二重管1に挿入する。これにより、接合部4が切断され、内管3の端部が内管誘導部32によって外管2の中央部に移動し、内管収容部33によって外管2と内管3が同心円状に成形される。
【0033】
以上のような構成により、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、環状に刃部34が形成されているので、二重管1と刃具30との中心軸を一致させるだけで位置決めが済むため、二重管1と刃具30との位置決めが簡素化され、二重管1の端末部分の加工工程をさらに簡素化することができる。
【0034】
図7には、上記第3実施形態の刃具10の別態様となる刃具体30aが示されている。上記実施形態の刃具30では、端部に環状の刃部34が形成されているため、二重管1と刃具30との中心軸を一致させて、正確に位置決めをしなければならなかった。そこで、本態様の刃具体30aは、刃具30の外周に環状の外管誘導部38が設けられた形状を備えている。
【0035】
外管誘導部38は、内径r5が外管2の外径R1と一致するように設定されている。また、外管誘導部38は環状の刃部34よりも先端側に突出するように設定されている。さらに、刃部34の外周と外管誘導部38との間には、外管2が収容される外管収容部39が設けられている。
【0036】
このような刃具体30aを用いて二重管1の端末を加工する際には、固定された二重管1に刃具体30aの外管誘導部38を被せ、外管2を外管誘導部38に挿入する。これにより、二重管1と刃具体30aの中心軸が一致する。そしてさらに刃部34を外管2内に挿入すると、上記実施形態と同様に外管2と内管3が同心円状に成形される。
【0037】
以上のような構成により、二重管1と刃具10との間の位置決めが容易に行えるため、上記第3実施形態の作用効果に加え、二重管1と刃具体30aとの中心軸を一致させる工程が簡素化されるため、さらに二重管1の端末の加工を簡易化することができる。
【0038】
なお、たとえば、車両用空調装置の冷媒配管に二重管を適用した場合、低圧側配管として外管流路に低圧の冷媒が循環し、高圧側配管として内管流路に高圧の冷媒が循環する。そして、冷媒を配管内に封入する際には、低圧側配管である外管にチェックバルブを設け、このチェックバルブを介して配管内に冷媒を封入する。
【0039】
ところが、外管内に内管を複数のリブで支持する二重管では、外管流路が複数の空間に分かれているため、そのままではチェックバルブを配置することができず、チェックバルブを配置する部位のリブを切除するなどの予備加工が必要になる。
【0040】
しかし、上記本願発明の二重管を適用した場合には、外管2の内壁2aと、内管3の外壁3aとが、押出し成形、およびロウ付けなどによって接合部4で一体となるように、大径の外管2の内部に小径の内管3が配置されており、外管内に内管を複数のリブで支持するものと異なり、外管流路が1つの空間で形成されている。したがって、予備加工を施すことなくチェックバルブを配置し、冷媒を封入することが可能である。
【0041】
尚、切断して、外管と内管に分割しつつ、内管の端部を外管の中央部に移動する工程に加え、内管中央位置の位置修正を再加工してもリブによる外管内の流通抵抗を悪化させることなく、内管と外管との分岐、おとび曲げ加工などが容易な二重管の端末を提供可能である事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態の二重管の端末部分を示し、(a)は長手方向に沿った側方断面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は二重管の開口端を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の二重管の接合部を切断する刃具を示し、(a)は刃具の先端を示す正面図、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
【図3】図2の刃具で接合部を切断する様子を示す側方断面図である。
【図4】(a)〜(c)は第1実施形態の刃具の別態様である刃具体によって接合部を切断される様子を示す図である。
【図5】本願発明の第2実施形態の刃具の要部を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図、(c)は斜視図である。
【図6】本願発明の第3実施形態の刃具の要部を示す斜視図である。
【図7】第3実施形態の刃具の別態様である刃具体を示す斜視図である。
【図8】従来技術の二重管構造を示し、(a)は屈曲部の断面図、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…二重管
2…外管
2a…内壁
3…内管
3a…外壁
4…接合部
10…刃具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の外管(2)の内壁(2a)と、小径の内管(3)の外壁(3a)とが接合部(4)で一体となるように、該外管(2)の内部に該内管(3)が配置され、
該二重管(1)の開口部から刃具(10)を挿入することで、該接合部(4)が切断されて、該外管(2)と該内管(3)に分割されつつ、該内管(3)の端部が該外管(2)の中央部に移動され、
該外管(2)の該接合部(4)が切断された部位が切除されたことを特徴とする二重管の端末構造。
【請求項2】
大径の外管(2)の内壁(2a)と、小径の内管(3)の外壁(3a)とが接合部(4)で一体となるように、該外管(2)の内部に該内管(3)が配置された二重管(1)の開口部から刃具(10)を挿入することで、該接合部(4)を切断して、該外管(2)と該内管(3)に分割しつつ、該内管(3)の端部を該外管(2)の中央部に移動する工程と、
該外管(2)の該接合部(4)が切断された部位を切除する工程とを備えたことを特徴とする二重管の端末加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−336788(P2006−336788A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163624(P2005−163624)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】