説明

二重紙管およびその製造方法

【課題】特に貼着ラベル付き剥離シートを巻き取る時に、貼着ラベルが剥がれることなく巻き取ることができる。また、プラスチックフィルムなどのシート状物を巻き取る時においても、巻癖あるいは先端部の段差による型つきなどが生じることのない軽量性と強度性に優れた二重紙管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】口径の小さい円筒状の内筒紙管2と、その内筒紙管2の外周に間隔部4をあけて配設する口径の大きい円筒状の外筒紙管3とからなるシート状物をロール状に巻きつける二重紙管1であり、内筒紙管2と外筒紙管3との間隔部4に硬質発泡樹脂5を介在してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、プラスチックフィルムやシート、金属箔、布、不織布などの長尺シート状物を巻き取る二重紙管に関するものであり、特に貼着ラベル付きシートをロール状に巻き取るのに適した二重紙管およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙、プラスチックフィルムやシートなどをロール状に巻き取る場合、一般的には円筒状の紙管に巻き取っている。この紙管は、密度の高いクラフト紙を細幅テープに加工された原紙に接着剤を塗布しつつマンドレルにスパイラル状に何層にも巻回して形成されており、シート状物の巻き付け圧力に対して充分に耐え得る強度と運搬輸送時などに他物と接触しても変形しない堅牢強固に形成されている。
【0003】
このようにして形成された口径の小さい紙管を用いて、例えば、裏面に粘着剤を塗布した貼着ラベルと粘着剤剥離紙を重合した貼着ラベル付きシートを巻き取る場合、図16に示すように、貼着ラベル付きシート21が水平状態で送られていく過程において何ら問題は生じないが、ロール状に巻き取られる紙管22に達すると、その円弧面が小さいと貼着ラベル23と粘着剤剥離紙24との間において剥離が生じ、貼着ラベル23の先端部23aが捲れ、紙管22が矢印A方向に回転していることから、次第に剥がれていき粘着剤剥離紙24だけ巻き取られ、貼着ラベル付きシートとして使用できないといった問題点があった。
【0004】
また、プラスチックフィルムなどのシート状物を、口径の小さい紙管で巻き取る場合、下巻層に多大の圧力がかかり巻き始め部分から数周分については巻癖(カール)がついたり、巻き始めに近い部分には紙管表面のスパイラル状の溝による型付き、あるいはシート状物の先端部の段差による型付き、さらにはシート状物の先端部を接着テープで固着した場合は、その接着テープによるテープ状の型付きなどが生じることから、シート状物が不良品になるといった欠点があった。
【0005】
上記のような欠点を解決するには、口径の大きな紙管を使えば解消できるが、口径の大きな紙管にそれなりの強度を持たせるには、肉厚を分厚くしなければならず、そうすると大幅に重量が増して取り扱いが容易でなくなると共に、持ち運びや巻取り装置への装着も面倒になる。
【0006】
このような問題点を解消するものとして、例えば、外側紙管に対して、間隔をあけてその内側に内側紙管が配設され、前記外側紙管と内側紙管の端部同士を口金によって固定し、前記外側紙管と内側紙管との間隙部に発泡した硬化樹脂層が充填されている二重紙管が提案されている。また、その二重紙管の製造方法として、外側紙管の内側に内側紙管を配設した後に、これらの両側端縁部にて、外側紙管と内側紙管の両端部に亙る口金を装着すると共に、外側紙管と内側紙管との間に間隙を形成するようにして口金を固定し、前記外側紙管と内側紙管との間隙内に、外側紙管に設けてある注入口から発泡樹脂を注入し、これを硬化させることによって二重紙管を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
さらに、別な二重紙管の製造方法として、マンドレル上に第一紙管用原紙を巻き込んだ後に、エキストルーダーにより該第一紙管用原紙外周全面に樹脂層を形成し、その樹脂層の外周に第二紙管用原紙を巻き込んで中間に樹脂層を設ける紙管の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−300488号公報
【特許文献2】特公昭55−15299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の二重紙管は、外側紙管に樹脂注入口が穿設されてあるから、シート状物を巻きつけると、この注入口により跡型が付き不良品になる致命的な欠点がある。また、外側紙管と内側紙管の両端部同士に口金を取り付ける必要があり、その取り付けに手間を要するばかりでなく、軽量化を図るにも拘らず、口金を取り付けることにより紙管が重くなりコスト高にもなる。また、その製造方法においても、外側紙管に穿設してある極めて細い注入口から発泡樹脂を充填するようになっており、樹脂注入に時間がかかり生産効率が悪く、かつ口金を取り付けなければ間隙もできないし、硬質発泡樹脂を充填できないといった問題点があった。
【0010】
また、上記の引用文献2は、マンドレル上に第一紙管用原紙を巻き込んだ後に、エキストルーダーを利用して該第一紙管用原紙の外周面の全面に樹脂層を形成し、ついで、該樹脂層の上に第二紙管用原紙を巻き込んで、第一紙管用原紙と第二紙管用原紙との間に樹脂層を設けたものであり、この樹脂層は防水性および耐水性の付与を目的としている。また、第一紙管用原紙と第二紙管用原紙との間に樹脂層を巻きつけるため、肉厚にすることができず、十分な強度を持つ二重紙管にならなかった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決することを課題として開発されたもので、特に貼着ラベル付き剥離シートを巻き取る時に、貼着ラベルが剥がれることなく巻き取ることができる。また、プラスチックフィルムなどのシート状物を巻き取る時においても、巻癖あるいは先端部の段差による型つきなどが生じることのない軽量性と強度性に優れた二重紙管およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明では、口径の小さい円筒状の内筒紙管と、その内筒紙管の外周に間隔部をあけて配設する口径の大きい円筒状の外筒紙管とからなるシート状物をロール状に巻きつける二重紙管であって、内筒紙管と外筒紙管との間隔部に硬質発泡樹脂を介在したことを特徴とする二重紙管を開発し、採用した。
【0013】
また、本発明では、上記のように構成した二重紙管において、内筒紙管は上下端部の中空部に口金具を固着したことを特徴とする二重紙管、および口金具は内筒紙管の中空部に固着される短筒体と、内筒紙管の上下両端面を被覆する鍔体とから構成されていることを特徴とする二重紙管を開発し、採用した。
【0014】
また、本発明は、内筒紙管の下端部を下部治具のリング状凸部の内径にセットする第1工程と、口径の大きい円筒状の外筒紙管の下端部をリング状凸部の外径にセットする第2工程と、内筒紙管と外筒紙管の上面の間隔部から硬質発泡樹脂を注入し充填する第3工程と、充填後、内筒紙管と外筒紙管の上端面に上部治具を被せて内筒紙管の上端部がリング状凸部の内径に嵌まると同時に、外筒紙管の上端部がリング状凸部の外径に嵌まって上端開口部を閉鎖する第4工程と、下部治具および上部治具を挟持具で挟持する第5工程とからなることを特徴とする二重紙管の製造方法を開発し、採用した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、口径の小さい内筒紙管と口径の大きい外筒紙管との間隔部に硬質発泡樹脂を介在した二重紙管であるから、粘着ラベル付きシートを巻き付ける場合において、紙管の円周面に沿って巻き取られラベルが剥がれることなく、正常な形で巻き付けられると共に、巻き癖などが付くことがない。また、同サイズの紙管と比べれば格段に軽くなり、巻き取り装置への装着時に取り扱いやすく作業性が向上するばかりでなく、強度性が向上し運搬輸送時に他物と接触しても損傷することがない。
【0016】
本発明の請求項2によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、内筒紙管の上下端部の中空部に口金具を固着してあるから、両端からテーパー状のチャッキング治具が挿入されても、内筒紙管を傷めることなく、長期間にわたって使用可能になる。
【0017】
本発明の請求項3によれば、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、内筒紙管の中空部だけでなく、上下端面も被覆保護され損傷することがなく長く使用できる。
【0018】
本発明の請求項4によれば、内筒紙管と外筒紙管を下部治具のリング状凸部の内径と外径に嵌めてセットするから、内筒紙管と外筒紙管は所定の間隔部を存して立設することになり、硬質発泡樹脂の注入充填が容易になるばかりでなく、充填後においては、内筒紙管と外筒紙管の上端面を上部治具を被せて上面開口部を閉鎖し、上部治具、下部治具を挟持具で挟持することから硬質発泡樹脂が漏れることがなく、効率的に樹脂が硬化して、口径の大きな外径を持つ二重紙管であっても、重量の軽い強度性に優れた二重紙管を容易に製造できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施の形態を示す二重紙管の正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】その縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施の形態を示す二重紙管の正面図である。
【図5】その平面図である
【図6】その縦断面図である。
【図7】内筒紙管の斜視図である。
【図8】外筒紙管の斜視図である。
【図9】下部治具の斜視図である。
【図10】内筒紙管を下部治具にセットした状態の縦断面図である。
【図11】内筒紙管と外筒紙管を下部治具にセットした状態の縦断面図である。
【図12】内筒紙管と外筒紙管の間隔部から硬質発泡樹脂を注入充填している状態の縦断面図である。
【図13】上部治具を被せた状態の縦断面図である。
【図14】上、下部治具を挟持具で挟持している状態の縦断面図である。
【図15】口金を固着してある内筒紙管の断面図である。
【図16】従来の粘着ラベル付きシートをロール状に巻き取る場合の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の第1実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例を示す二重紙管の正面図、図2はその平面図、図3はその縦断正面図である。この発明に係る二重紙管1は、口径の小さい円筒状の内筒紙管2と、その内筒紙管2の外周に間隔をあけて配設する口径の大きい円筒状の外筒紙管3と、その内筒紙管2と外筒紙管3の間隔部4に介在して硬化する硬質発泡樹脂5とで構成されている。
【0021】
前記内筒紙管2は、密度の高いクラフト紙を細幅テープに加工された原紙に接着剤を塗布しつつマンドレルにスパイラル状に何層にも巻回して形成された肉厚の薄い口径の小さい円筒状のものである。
【0022】
前記外筒紙管3は、内筒紙管2と同様に密度の高いクラフト紙を細幅テープに加工された原紙に接着剤を塗布しつつマンドレルにスパイラル状に何層にも巻回して形成された肉厚の分厚い口径の大きい円筒状のものであり、少なくとも口径が3吋以上あればよく、好ましくは4〜6吋が好適であり、6吋を超えてもよいが、大きくなると重くなり、使い勝手が悪くなることから好ましくない。そして、内筒紙管2の外周部に所定の間隔部4を存して外筒紙管3を配設してある。
【0023】
内筒紙管2の外周部と外筒紙管3の内周部の間の間隔部4には硬質発泡樹脂5が充填され硬化されている。この硬質発泡樹脂5としては、常温で発泡して硬化するタイプのウレタン樹脂が最適であるが、その他にも塩化ビニール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂などでもよい。
【0024】
図4〜6に示すのは、本発明の第2実施の形態を示すもので、前記第1実施の形態と異なるのは、内筒紙管2と外筒紙管3の肉厚を同じにした点と、内筒紙管2の上下端部の中空部に、口金具6,6を固着した点が相違している。この口金具6,6は、内筒紙管2の中空部を被覆する短筒体6a,6aと、上端面と下端面を被覆する鍔体6b,6bによって保護され、チャッキング装置のチャックとの接触による損傷を防止している点が異なっているだけであり、他は前記第1実施の形態と全く変わることがないので、同一部に同一符号を付してある。
【0025】
つぎに、本発明の二重紙管の製造方法の実施の形態を添付の図7〜図15に基づいて説明する。この発明に係る二重紙管の製造方法は、図7に示す口径の小さい円筒状の内筒紙管2と、図8に示す口径の大きい円筒状の外筒紙管3と、図9に示す鋼板製で方形状に形成され、内筒紙管2と外筒紙管3を組立てるリング状凸部8を有する治具7を用いて製造するものである。
【0026】
すなわち、水平面Hに下部治具7aを載置し、内筒紙管2の下端部2aをリング状凸部8の内径8aに嵌めて垂直に立設するのを第1工程とする(図10)。つづいて、口径の大きい円筒状の外筒紙管3の下端部3aをリング状凸部8の外径8bに嵌めて垂直に立設すると共に、内筒紙管2と外筒紙管3の間隔部4にリング状凸部8が嵌まるのを第2工程とする(図11)。内筒紙管2と外筒紙管3の上端面の間隔部4から硬質発泡樹脂5を注入して充填するのを第3工程とする(図12)。充填後、内筒紙管2と外筒紙管3の上端面に、空気孔9を穿設した上部治具7bを被せ、内筒紙管2の上端部2bがリング状凸部8の内径8aに嵌まると共に、リング状凸部8が内筒紙管2と外筒紙管3の間隙部4に嵌まり、外筒紙管3の上端部3bがリング状凸部8の外径8bに嵌まり、上端面開口を閉鎖するのを第4工程とする(図13)。下部治具7aと上部治具7bを万力などの挟持具10、10で挟持するのを第5工程とする(図14)。上記第1工程から第5工程を経ることにより、内筒紙管2と外筒紙管3の間に硬質発泡樹脂5が介在した軽量性と強度性に優れた二重紙管1が得られる。
【0027】
なお、上記の実施の形態による二重紙管の製造方法においては、口金具を固着しない内筒紙管2で説明したが、図15に示すように、内筒紙管2の上下端部の中空部に、口金具6,6を固着する内筒紙管2を用いることもあり、その場合には、両端部からチャックするチャッキング装置との接触による損傷を防止する二重紙管が得られるものである。
【0028】
以上、本発明の二重紙管の製造方法の実施の形態においては、内筒紙管と外筒紙管の上端面の間隔部から硬質発泡樹脂5を注入して充填する例で説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、上部治具に設けたノズルを介して注入充填する場合もあり、本発明の目的を達成でき、かつ本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の設計変更が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、粘着ラベル付きシート、プラスチックフィルムやシート、金属箔、不織布、布などのシート状物をロール状に巻き取る二重紙管として好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 二重紙管
2 内筒紙管
3 外筒紙管
4 間隔部
5 硬質発泡樹脂
6 口金具
7 治具
7a 下部治具
7b 上部治具
8 リング状凸部
10 挟持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口径の小さい円筒状の内筒紙管と、その内筒紙管の外周に間隔部をあけて配設する口径の大きい円筒状の外筒紙管とからなるシート状物をロール状に巻きつける二重紙管であって、内筒紙管と外筒紙管との間隔部に硬質発泡樹脂を介在したことを特徴とする二重紙管。
【請求項2】
前記内筒紙管は、上下端部の中空部に口金具を固着したことを特徴とする請求項1に記載の二重紙管。
【請求項3】
前記口金具は、内筒紙管の中空部に固着される短筒体と、内筒紙管の上下両端面を被覆する鍔体とから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の二重紙管。
【請求項4】
内筒紙管の下端部を下部治具のリング状凸部の内径にセットする第1工程と、口径の大きい円筒状の外筒紙管の下端部をリング状凸部の外径にセットする第2工程と、内筒紙管と外筒紙管の上面の間隔部から硬質発泡樹脂を注入し充填する第3工程と、充填後、内筒紙管と外筒紙管の上端面に上部治具を被せて内筒紙管の上端部がリング状凸部の内径に嵌まると同時に、外筒紙管の上端部がリング状凸部の外径に嵌まって上端開口部を閉鎖する第4工程と、下部治具および上部治具を挟持具で挟持する第5工程とからなることを特徴とする二重紙管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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