説明

二頂ポリオレフィンを単一反応槽内で製造するに適したハフノセン成分含有二部位触媒系

本発明ではポリオレフィン製造用メタロセン触媒系を開示し、これは、A.ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適するハフノセンが基になった触媒成分、B.成分Aとは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上のメタロセンもしくはポストメタロセン成分、C.配位能力が低いか或は配位能力を持たない活性化剤を含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハフノセンが基になったメタロセン触媒成分(hafnocene−based metallocene catalyst component)、そして幅広または多頂分子量分布を示すポリオレフィンの製造で用いるに適した触媒系に関する。本発明は、更に、前記触媒成分を触媒系で用いてオレフィンを重合させる方法にも関する。
【0002】
高い分子量を有するポリオレフィン、例えばポリエチレンなどは、一般に、分子量が低い方の対照物に比べて向上した機械的特性を示す。しかしながら、高分子量のポリオレフィンは加工が困難でありかつ製造に費用がかかる可能性がある。
【0003】
ポリエチレンが示すじん性、強度および環境応力亀裂抵抗(ESCR)を向上させることがいろいろな高密度ポリエチレン(HDPE)用途にとって重要である。そのような特性の向上はポリエチレンの分子量を高くすることでより容易に達成可能である。しかしながら、その重合体の分子量を高くするにつれて、そのような樹脂の加工性が低下する。重合体が幅広または二頂MWDを示すようにすると、高分子量の樹脂が示す特徴である望ましい特性が維持されながら加工性、特に押出し加工性が向上する。
【0004】
二頂もしくは幅広い分子量分布を示す樹脂を製造するに適した方法はいくつか存在する、即ち溶融状態で混合を行う方法、反応槽を直列配置で用いる方法、または単一の反応槽で二部位触媒(dual site catalysts)を用いる方法が存在する。溶融状態の混合は、完全に均一にする必要があることで引き起こされる欠点および費用が高いと言った欠点を有する。また、単一の反応槽内で二頂樹脂を製造する目的で二部位触媒を用いることも公知である。
【0005】
メタロセン触媒がポリオレフィンの製造で用いられることは公知である。例えば、多頂もしくは少なくとも二頂分子量分布を示すポリオレフィン、例えばポリエチレンなどを製造する方法が特許文献1に記述されている。その方法で用いられた触媒系は少なくとも2種類のメタロセンを含んで成る。その用いられたメタロセンは、例えばビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドとエチレン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライドなどである。異なる2種類のメタロセン触媒を同じ反応槽内で用いると、少なくとも二頂の分子量分布が得られる。
【0006】
メタロセン触媒を2つの反応ゾーン内で用いて二頂ポリオレフィンを製造することが特許文献2に開示されている。そのメタロセン触媒成分はビス−テトラヒドロインデニル化合物を含んで成る。特許文献2に開示されている多頂ポリオレフィン樹脂が示す密度は0.9から0.97g/ml、好適には0.92から0.97g/mlの範囲であり、HLMIは0.1から45,000g/10分の範囲、好適には0.4から45,000g/10分の範囲である。従って、特許文献2には、幅広く多様な特性を有するポリオレフィンの製造が開示されている。
【0007】
また、多頂分子量分布を示すポリエチレンを製造する方法が特許文献3にも開示されている。その触媒には、特許文献2に開示されているのと同様に、ビス−テトラヒドロインデニル化合物を含んで成るメタロセン触媒が使用されている可能性がある。特許文献3にはパイプ用樹脂の製造が開示されている。その開示されたパイプ用樹脂は良好な機械的特性を示しはするが、それでも機械的特性を向上させる必要がある。向上した機械的特性を有するがそれでも良好な加工性を示すポリエチレン樹脂を製造する必要性が存在する。
【0008】
ポリエチレン樹脂はパイプの製造に適することが知られている。パイプ用樹脂は遅い亀裂成長に対して高い抵抗を示す必要があるばかりでなく衝撃じん性の降伏をもたらす亀裂伝播(crack propagation yielding impact toughness)にも抵抗を示す必要がある。
【0009】
本技術分野で「PE 80」および「PE 100」の名称で呼ばれるパイプ用樹脂が知られている。それらは、特定の寸法のパイプに成形した時にいろいろな温度で長期の圧力試験に5,000時間に渡って耐えるポリエチレン樹脂である。それらは推定で20℃においてそれぞれ少なくとも8および10MPaに50年間耐えることが示されている。このような分類分けはISO 9080およびISO 12162に記述されている。PE 100樹脂を良好にするに適した鍵となる成分は短鎖分枝(SCB)をほとんどまたは全く持たなくて共重合用単量体が組み込まれていることで低い分子量を示す高密度ポリエチレンとSCBを有する高分子量の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂の混合物であることが本技術分野で知られている。公知のパイプ用樹脂は機械的特性と加工性の間の妥協を有する。それにも拘らず、公知のパイプ用樹脂を向上させる必要性が存在する。
【0010】
そのような改良を受けさせたメタロセン触媒成分を用いて作られた樹脂は高い分子量を有することから向上した機械的特性を示す。加うるに、それらは向上した加工能力も有する。しかしながら、改良の余地がある。
【0011】
ハフノセンが基になったメタロセン触媒成分を非常に高い分子量を示すポリオレフィンを生じさせる触媒系で用いることができることを見いだした、と言うのは、そのような触媒系は他のメタロセン触媒系に比べて共重合用単量体、例えばヘキセンまたはブテンなどを取り込ませる能力がより良好であるからである。しかしながら、それらが示す活性は極めて低い。
【0012】
従って、ハフノセンが基になった触媒成分を含んで成る触媒系の活性を向上させる必要性が存在する。
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第0619325号
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第0881237号
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開第0989141号
【発明の開示】
【0013】
本発明の1つの目的は、ハフノセンが基になった触媒成分を含んで成る触媒系が示す活性を向上させることにある。
【0014】
本発明の別の目的は、幅広、二頂もしくは多頂分子量分布を示すポリオレフィンを生じさせる能力を有する触媒系を製造することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、高分子量画分と低分子量画分を有するポリオレフィンを生じさせる能力を有する触媒系を製造することにある。
【0016】
本発明の更に別の目的は、ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるように共重合用単量体を非常に高い比率で取り込ませる触媒成分とポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるように良好な水素反応(hydrogen response)を示す触媒成分を含んで成る触媒系を提供することにある。
【0017】
従って、本発明は、
− ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適するハフノセンが基になった触媒成分、
− 成分Aとは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上のメタロセンもしくはポストメタロセン(post−metallocene)触媒成分、
− 配位能力が低いか或は配位能力を持たない活性化剤(activating agent)、
を含んで成る活性のある触媒系を開示する。
【0018】
本発明のハフノセンが基になったメタロセン成分は、式:
R”(CpR(CpR)MQ3−g (I)
[式中、
− 各Cpは、置換もしくは非置換シクロペンタジエニル環であり、
− 各Rは、同一もしくは異なり、水素、または炭素原子を1から20個含有するヒドロカルビル基、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基などであるか、或は2個の炭素原子が一緒に連結してC4−C6環を形成しており、
− R”は、2個のCp環の間に位置する構造ブリッジ(structural bridge)であり、
− Mはハフニウムであり、
− Qは、互いに同一または異なってもよく、炭素原子を1から20個有するヒドロカルビル基、例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールまたはアリールアルキル基など、炭素原子を1から20個有するヒドロカルボキシ基またはハロゲンであり、
− sは0または1であり、gは0、1または2であり、そしてgが0の時にはsが0であり、sが1の時にはnが4であり、そしてsが0の時にはnが5である]
に従う構造を有する。
【0019】
置換は、シクロペンタジエニル誘導体上の位置のいずれかが水素原子の代わりに置換基を含有し得ることを意味する。それは、5員のシクロペンタジエニル環内であってもよいか、或は配位子が例えばインデニル、テトラヒドロインデニルまたはフルオレニルの場合には、それは5員環の外側の環系の中の炭素原子上であってもよい。
【0020】
各触媒成分は、同一もしくは異なってもよい2個以上のシクロペンタジエニル誘導体を含んで成る。
【0021】
メタロセン触媒に存在させるシクロペンタジエニル配位子が特別なことで本発明の利点がもたらされる。
【0022】
本発明では、シクロペンタジエニル誘導体の種類には特に制限はない。従って、本発明の好適な態様では、Cpをシクロペンタジエニル型基、インデニル型基およびフルオレニル型基から独立して選択してもよい。本開示におけるシクロペンタジエニル型基は置換もしくは非置換の単一のシクロペンタジエニル環系を意味し、インデニルまたはフルオレニル系の如き縮合環系を意味しない。
【0023】
本触媒成分の中の配位子と配位子の間に存在させるブリッジの種類にも特に制限はない。R”には、典型的に、炭素原子数が1から20のアルキリデン基、ゲルマニウム基(例えばジアルキルゲルマニウム基)、ケイ素基(例えばジアルキルケイ素基)、シロキサン基(例えばジアルキルシロキサン基)、アルキルホスフィン基またはアミン基が含まれる。そのようなブリッジには、好適には、炭素数が少なくとも1のヒドロカルビル基、例えば置換もしくは非置換のエチレニル基、例えば−CH−CH−(Et)などが含まれる。最も好適には、R”はEtまたはMeSiである。
【0024】
Qは、好適にはハロゲン、最も好適にはClである。
【0025】
前記配位子上に存在させる置換基1種または2種以上にも特に制限はない。置換基を2個以上存在させる場合、それらは同じまたは異なってもよい。それらを、典型的には、炭素原子数が1から20のヒドロカルビル基から独立して選択する。好適な置換基として、とりわけ、メチル(Me)基、フェニル(Ph)、ベンジル(Bz)、ナフチル(Naph)、インデニル(Ind)、ベンゼンジル(BzInd)ばかりでなくEt、n−プロピル(n−Pr)、イソプロピル(I−Pr)、n−ブチル(n−Bu)、t−ブチル(t−Bu)、シラン誘導体(例えばMeSi)、アルコキシ、好適には式R−O[式中、Rは、炭素原子数が1から20のアルキルである]で表されるアルコキシ、シクロアルキルおよびハロゲンを挙げることができる。好適には、各Cp環上に存在させる置換基は多くて2個である。
【0026】
前記配位子上の置換基1種または2種以上の位置にも特に制限はない。従って、この配位子の置換様式は如何なる様式であってもよく、それには非置換または完全置換が含まれる。しかしながら、Cpがシクロペンタジエニル型基の場合には置換基を好適には3位および/または5位または2位および/または4位に存在させる。Cpがフルオレニル型基の場合には置換基を好適には3位および/または6位または2位および/または7位に存在させる。Cpがインデニル型基の場合には置換基を好適には2位および/または4位に存在させる。
【0027】
本発明に従う別の態様におけるハフノセン触媒成分は、式
R”(CpRMXQ3−g (II)
[式中、
R”、Cp、Rn、MおよびQは既に定義したそれらであり、Xは、孤立電子対を1つもしくは2つ有するヘテロ原子配位子(hetero atom ligand)であり、これをVAもしくはVIA族から選択する]
で記述可能である。Xは、好適には窒素、燐、酸素または硫黄であり、これは置換されているか或は置換されていなくてもよい。
【0028】
前記他の1種以上のメタロセン触媒成分は、Mが周期律表のIIIB、IVB、VBまたはVIB族の金属である一般式(I)または(II)で定義可能である。Mは好適にはジルコニウムまたはチタン、ハフニウムまたはバナジウムであるが、Mがハフニウムの時にはハフノセンが基になった2種類の触媒成分が異なると言った制限を伴う。より好適には、Mはジルコニウムである。このような追加的メタロセン触媒成分は水素に対して良好な反応を示し、それによって最終的なポリオレフィンが低分子量画分を含有することになる。それは好適には橋状ではなくかつ置換されている。より好適には、その置換基の少なくとも1個はかさ高い。
【0029】
別法として、前記他の1種以上の触媒成分は、例えばBritovsek他(Britovsek,G.J.P.、Gibson,V.C.、Kimberley,B.S.、Maddox,P.J.、McTavish,S.J.、Solan,G.A.、White,A.J.P.およびWilliams,D.J.、J.Chem.Coc.、Chem.Commun.、849、1999)が記述した如き新規な単一部位触媒成分(single site catalyst component)であってもよい。そのような新規な触媒成分には2,6−ビス(イミノ)ピリジル配位子の鉄およびコバルト錯体が含まれ、前記配位子は2,6−置換ピリジン基と結合している2個の2,6−ジイソプロピルアニリン基を含んで成り、従って図2に示す如き三座配位子を形成している。前記2個のジイソプロピルアニリン基上の置換基は同一または異なってもよく、それらは典型的に水素、メチルまたはイソプロピルから選択可能であり、好適にはそれらの全部がメチルである。前記金属は好適には鉄である、と言うのは、鉄が基になった錯体は共重合用単量体を取り込ませず、従って高い結晶度を示すポリオレフィンをもたらすからである。加うるに、前記鉄が基になった錯体は連鎖移動剤として共重合用単量体と反応することで、非常に低い分子量を有する画分の生成を有利に起こさせる、即ち共重合用単量体が低分子量の高密度画分の中に組み込まれないようにする。その結果として共重合用単量体が水素として働くことから、低分子量の高密度画分を生じさせる目的で水素を用いる必要がほとんどか或は全くない。
【0030】
図2に三座配位子および可能な置換基のリストを示す。
【0031】
本発明の触媒系は、ハフノセンが基になった1種の触媒成分と他の少なくとも1種のメタロセンもしくはポストメタロセン触媒成分を含んで成る。これに、この上に示した触媒成分に加えて、前記メタロセン触媒成分を活性にする能力を有しかつイオン化作用を示す1種以上の活性化剤も含有させる。本発明の活性化剤を球形のアニオン化剤(anionogenic agents)から選択し、このアニオン化剤は、負電荷をむらなく分布させる能力を有しかつ配位能力が低いか或は配位能力を全く持たない。好適には、それらをボレート、ボランおよびアルミネートまたはこれらの混合物から選択する。
【0032】
適切なホウ素含有化合物である活性化剤には、トリフェニルカルベニウムボロネート、例えばヨーロッパ特許出願公開第0,427,696号に記述されている如きテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラト−トリフェニルカルベニウムなどが含まれ得る。
【0033】
C(Ph)B(C
このような活性化剤はオレフィンの重合に高い効果を示しはするが、それらは熱安定性が劣ると言った欠点を持ち得る。官能化(functionalised)フルオロアリールホウ酸塩は炭化水素中で向上した溶解性を示しかつ優れたオレフィン重合効率を保持しながら向上した熱安定性を示すことから、これらが好適である。
【0034】
他の適切なホウ素含有活性化剤がヨーロッパ特許出願公開第0,277,004号に記述されている。それらは一般式:
[L’−H] [BArAr
[式中、L’は中性ルイス塩基であり、Hは水素原子であり、[L’−H]はブレンステッド酸であり、Bは原子価状態が3のホウ素であり、ArおよびArは、同一もしくは異なり、炭素原子を6から20個含有する芳香族炭化水素基もしくは置換芳香族炭化水素基であり、それらは安定な橋渡し基を通して互いに連結していてもよく、そしてXおよびXは、ハイドライド基、ハライド基(但し、XとXが同時にハライドであることはないことを条件とする)、炭素原子を1から20個含有するヒドロカルビル基、炭素原子を1から20個含有する置換ヒドロカルビル基(水素原子の1個以上がハロゲン原子に置き換わっている)、ヒドロカルビル置換金属基(各ヒドロカルビル置換基が含有する炭素原子の数は1から20でありそして前記金属は元素周期律表のIVA族から選択される)から成る群から独立して選択される基である]
で描写可能である。
【0035】
適切な芳香族基ArおよびArには、フェニル、ナフチルまたはアントラセニル基が含まれ得、この芳香族基上の適切な置換基には、ヒドロカルビル基、有機半金属基、アルコキシ基、アルキルアミド基、フルオロ基およびフルオロ−ヒドロカルビル基、そしてXおよびXとして有用であり得る基の如き基が含まれ得る。そのような置換基は、ホウ素原子と結合している炭素原子に対してオルソ位、メタ位またはパラ位に位置していてもよい。
【0036】
およびXのいずれかまたは両方がヒドロカルビル基の場合、各々が同じもしくは異なる芳香もしくは置換芳香族基、炭素原子を1から20個有する同じもしくは異なる直鎖もしくは分枝アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基、炭素原子を5から8個有する同じもしくは異なる環状炭化水素基、または炭素原子を6から20個有するアルキル置換環状炭化水素、同じもしくは異なるアルコキシもしくはジアルキルアミド基(このアルキル部分は1から20個の炭素原子を有する)、炭素原子を1から20個有する同じもしくは異なるヒドロカルビル基もしくは有機半金属基であってもよい。
【0037】
ArとArが互いに連結していてもよい。加うるに、ArとArのいずれかまたは両方がXまたはXのいずれかと連結していてもよく、そしてXとXが適切な橋渡し基を通して互いに連結していてもよい。
【0038】
本発明で使用可能なホウ素化合物には、トリアルキル置換アンモニウム塩、例えばテトラ(フェニル)ホウ酸トリフェニルアンモニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸トリプロピルアンモニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸トリ(n−ブチル)アンモニウム、テトラ(p−トリル)ホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラ(o−トリル)ホウ酸トリメチルアンモニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ酸トリプロピルアンモニウム、テトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ酸トリブチルアンモニウム、テトラ(o−トリル)ホウ酸トリ(n−ブチル)アンモニウムなどが含まれる。
【0039】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩、例えばテトラ(フェニル)ホウ酸N,N−ジメチルアニリニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸N,N−ジエチルアニリニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどを用いることも可能である。
【0040】
ジアルキルアンモニウム塩、例えばテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジ−(i−プロピル)アンモニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸ジシクロヘキシルアンモニウムなどを用いることも可能である。
【0041】
トリアリールホスホニウム塩、例えばテトラ(フェニル)ホウ酸トリフェニルホスホニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、テトラ(フェニル)ホウ酸トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムなどを用いることも可能である。
【0042】
数種の活性化剤、例えば(パーフルオロアリール)ボランおよびアルミネートなどに関する活性化方法および構造と活性の関係がChenおよびMarks(Chen E.Y−X.、Marks T.J.、「Cocatalysts for metal−catalysed olefin polymerisation:activators,activation processes,and structure−activity relationship」、Chem.Rev.、100、1391−1434、2000)に開示されている。ボランおよびアルミネートである活性化剤がカチオン−アニオンのイオン対構造および反応性の調整で果たす役割がChen他(Chen E.Y−X.、Metz M.V.、Li L.、Stern C.、Marks T.J.、「Sterically encumbered(perfluoroaryl)borane and aluminate cocatalysts for tuning cation−anion ion pair structure and reactivity in metallocene polymerisation processes.A synthetic,structural,and polymerisation sutdy」、J.Am.Chem.Soc.、120、6287−6305、1998)に開示されている。この2つの出版物に、そのようなボランおよびアルミネート化合物が有する配位能力は弱いことが示されており、従って、それらも本発明で活性化剤として用いるに非常に適する。
【0043】
加うるに、場合により、1種以上のアルミニウムアルキルを共触媒(cocatalyst)1種または2種以上として用いることも可能である。それらは式AlR[式中、各Rは、同一もしくは異なり、ハライドまたは炭素原子数が1から12のアルコキシもしくはアルキル基から選択され、そしてxは1から3である]で表される。特に適切なアルミニウムアルキルはトリアルキルアルミニウムであり、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)が最も好適である。
【0044】
本触媒系は溶液重合方法(これは均一である)またはスラリー方法(これは不均一である)で使用可能である。溶液方法の場合の典型的な溶媒には、炭素原子数が4から7の炭化水素、例えばヘプタン、トルエンまたはシクロヘキサンなどが含まれる。スラリー方法の場合には本触媒系を不活性な支持体、特に多孔質の固体状支持体、例えばタルク、無機酸化物など、および樹脂状支持体材料、例えばポリオレフィンなどに固定する必要がある。好適には、そのような支持体材料は微細形態の無機酸化物である。
【0045】
本発明に従って用いることができる適切な無機酸化物材料には、IIA、IIIA、IVAまたはIVB族金属の酸化物、例えばシリカ、アルミナおよびこれらの混合物が含まれる。単独またはシリカもしくはアルミナとの組み合わせのいずれかで使用可能な他の無機酸化物は、例えばマグネシア、チタニアまたはジルコニアである。他の適切な支持体材料には、例えば微細な官能化ポリオレフィン、例えば微細なポリエチレンなどが含まれる。
【0046】
そのような支持体は、好適には比表面積が200から700m/gで細孔容積が0.5から3ml/gのシリカである支持体である。
【0047】
2種以上の触媒成分を同じ支持体または異なる支持体に固定することも可能である。
【0048】
前記ハフノセンが基になった触媒成分と他の1種以上のメタロセン触媒成分の相対量は最終的な樹脂に望まれる特性に依存する。前記ハフノセンが基になった成分の量は、このハフノセン成分と他のメタロセン触媒成分の総重量の10から90重量%の範囲であってもよい。パイプの如き用途では、前記ハフノセンが基になった成分の量をあらゆるメタロセン成分の重量を基準にして典型的には50重量%以下、好適には35から49重量%にする。
【0049】
本触媒系を生じさせる時に有効に用いる活性化剤および全メタロセン成分の量は幅広い範囲に渡って多様であり得る。ホウ素が基になった活性化剤を用いる場合、ホウ素の量を前記ハフノセンが基になった触媒成分と他の1種以上のメタロセン触媒成分の中に存在する金属の総量を基準にしてほぼ化学量論的量にする。ホウ素(B)と全金属(ΣM)の比率、即ちB/ΣMを1:2から2:1の範囲にし、好適にはほぼ1:1にする。
【0050】
そのような触媒成分および活性化剤を支持体材料に添加する順は多様であり得る。本発明の好適な態様に従い、前記ホウ素が基になった活性化剤を適切な不活性炭化水素溶媒に溶解させて、同じまたは別の適切な炭化水素液に入れてスラリー状にしておいた支持体材料に加えた後、このスラリーに当該触媒成分を添加する。
【0051】
好適な溶媒には、反応温度で液状でありかつ個々の材料と反応を起こさない鉱油およびいろいろな炭化水素が含まれる。有用な溶媒の具体例には、アルカン、例えばペンタン、イソ−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびノナンなど、シクロアルカン、例えばシクロペンタン、シクロヘキサンなど、および芳香族、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびジエチルベンゼンなどが含まれる。
【0052】
好適には、当該支持体材料をトルエンに入れてスラリー状にし、そして当該触媒成分および活性化剤をトルエンに溶解させた後、それを前記支持体材料に添加する。
【0053】
本発明では、更に、触媒系を生じさせる方法も開示し、この方法は下記の段階を含んで成る:
A. ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適していて一般式
R”(CpR(CpR)MQ3−g (I)
または一般式
R”(CpRMXQ3−g (II)
[前記式中、
− 各Cpは、置換もしくは非置換シクロペンタジエニル環であり、
− 各Rは、同一もしくは異なり、水素、または炭素原子を1から20個含有するヒドロカルビル基、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基などであるか、或は2個の炭素原子が一緒に連結してC4−C6環を形成しており、
− R”は、2個のCp環の間に位置する構造ブリッジであり、
− Mはハフニウムであり、
− Qは、互いに同一または異なってもよく、炭素原子を1から20個有するヒドロカルビル基、例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールまたはアリールアルキル基など、炭素原子を1から20個有するヒドロカルボキシ基またはハロゲンであり、
− sは0または1であり、gは0、1または2であり、そしてgが0の時にはsが0であり、sが1の時にはnが4であり、そしてsが0の時にはnが5であり、
− Xは、VAもしくはVIA族から選択される孤立電子対を1つもしくは2つ有する置換もしくは非置換のヘテロ原子配位子である]
で表される1番目のハフノセンが基になったメタロセン触媒成分を準備し、
B. 成分Aとは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上のメタロセンもしくはポストメタロセン触媒成分を準備し、
C. 負電荷をむらなく分布させる能力を有しかつ配位能力が低いか或は配位能力を持たない球形のアニオン化剤が基になっていてイオン化作用を示す活性化剤を用いて前記ハフノセンが基になった触媒成分および1種以上のメタロセン触媒成分を活性にし、
D. 場合により、前記触媒成分を無機支持体に固定してもよい。
【0054】
本発明の触媒系は、前記ハフノセンが基になった触媒成分が優れた共重合用単量体取り込みを示しかつ高分子量画分を生じさせる能力を有することから、幅広い分子量分布を示すポリオレフィンを生じさせる目的で使用可能である。前記1種以上の追加的メタロセン触媒成分は水素に対して良好な反応性を示すことで最終的ポリオレフィンの低分子量画分の生成を助長し、それらを望まれる重合体特性に応じて選択する。例えば、シンジオタクテックポリプロピレンが望まれる場合には、そのようなメタロセン触媒成分に好適には左右相称Cs対称を持たせ、例えばフルオレニル型基の中に左右相称Cs対称を存在させる。イソタクティックポリプロピレンを製造しようとする場合には、そのようなメタロセン触媒成分に好適にはC2対称を持たせ、例えばインデニル型基の中にC2対称を存在させる。
【0055】
従って、本発明は、更に、幅広、二頂もしくは多頂分子量分布を示すポリオレフィンを製造する方法も開示し、この方法は下記の段階を含んで成る:
A.
− ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適したハフノセンが基になった触媒成分、
− 成分Aとは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上のメタロセンもしくはポストメタロセン触媒成分、
− 配位能力が低いか或は配位能力を持たない活性化剤、
を含んで成る触媒系を準備し、
B. 場合により、共触媒も準備し、
C. 前記触媒系および任意の共触媒をオレフィン単量体および任意の共重合用単量体が入っている重合ゾーンに導入して前記反応ゾーンを重合条件下に維持し、
D. 幅広または多頂分子量分布を示す所望のポリオレフィンを抽出する。
【0056】
この重合で用いる条件には特に制限はないが、但しその条件が出発材料として用いる個々の単量体を有効に重合させるに充分であることを条件とする。好適には、重合を水素および共重合用単量体であるアルケン、例えば1−ブテンまたは1−ヘキセンなどの存在下で行う。
【0057】
場合により、予備重合を実施することも可能である。
【0058】
本発明に従って生じさせたポリオレフィンは幅広、二頂もしくは多頂分子量分布を示すことに加えて高分子量画分と低分子量画分の間の分子量の差も大きい。本発明に従う触媒系を用いて製造したポリエチレンが示した分子量分布を示す図1から分かるであろうように、好適には、高分子量画分の分子量の方が低分子量画分の分子量よりも5倍から15倍高く、より好適には、低分子量画分の分子量よりほぼ10倍高い。そのような高分子量画分の重量平均分子量(Mw)は300,000から2,000,000である。これは好適には300,000から800,000、より好適には300,000から500,000である。このようなポリオレフィンの高分子量画分が示す密度は典型的に0.9から0.927g/cm、好適には0.908から0.926g/cm、より好適には0.912から0.925g/cmである。この密度は標準試験方法ASTM D 1505に従って23℃で測定した密度である。このような高分子量画分が示す高荷重メルトインデックス(HLMI)は0.001から0.5g/10分、好適には0.01から0.25g/10分である。このHLMIおよびMI2は標準試験方法ASTM D 1238に従ってそれぞれ21.6kgおよび2.16kgの荷重下で測定したそれらである。前記低分子量画分が示す重量平均分子量(Mw)は25,000から75,000、より好適には30,000から50,000であり、密度は少なくとも0.950g/cm、好適には0.970から0.990g/cm、より好適には0.971から0.980g/cmである。MI2は100から1000g/10分、好適には300から1000g/10分である。
【0059】
このようなポリオレフィンをパイプ用途で用いる場合には、最終的な樹脂が示す密度が0.949から0.960g/cm、より好適には0.952から0.958g/cmでHLMIが5から90g/10分、より好適には10から80g/10分であるようにする。
【0060】
このようなポリオレフィンをブロー成形用途で用いる場合には、最終的な樹脂が示す密度が0.925から0.970g/cmでHLMIが0.5から100g/10分であるようにする。
【0061】
前記分子量分布は多分散指数Dで定義され、これは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した時の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比率Mw/Mnである。この分子量分布は典型的に4から20、好適には7から14の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】多項分子量分布を示すグラフ。
【図2】三座配位子および可能な置換基のリスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン製造用メタロセン触媒系であって、
A. ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適するハフノセンが基になった触媒成分、
B. 成分Aとは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上の非橋状メタロセンもしくはポストメタロセン触媒成分、
C. ボレート、ボロネートまたはアルミネートから選択される配位能力が低いか或は配位能力を持たない活性化剤、
を含んで成るメタロセン触媒系。
【請求項2】
前記ハフノセンが基になった成分が式(I)
R”(CpR(CpR)MQ3−g (I)
に従うか或は式(II)
R”(CpRMXQ3−g (II)
に従う構造
[前記式中、
− 各Cpは、置換もしくは非置換シクロペンタジエニル環であり、
− 各Rは、同一もしくは異なり、水素、または炭素原子を1から20個含有するヒドロカルビル基、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキル基などであるか、或は2個の炭素原子が一緒に連結してC4−C6環を形成しており、
− R”は、2個のCp環の間に位置する構造ブリッジであり、
− Mはハフニウムであり、
− Qは、互いに同一または異なってもよく、炭素原子を1から20個有するヒドロカルビル基、例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリールまたはアリールアルキル基など、炭素原子を1から20個有するヒドロカルボキシ基またはハロゲンであり、
− sは0または1であり、gは0、1または2であり、そしてgが0の時にはsが0であり、sが1の時にはnが4であり、そしてsが0の時にはnが5であり、
− Xは、VAもしくはVIA族から選択される孤立電子対を1つもしくは2つ有する置換もしくは非置換のヘテロ原子配位子である]
で表される請求項1記載のメタロセン触媒系。
【請求項3】
前記ハフノセンが基になった成分が各シクロペンタジエニル上に有する置換基が多くて2個である請求項1または請求項2記載のメタロセン触媒系。
【請求項4】
前記ハフノセンが基になった成分上の置換基の位置がシクロペンタジエニル型基の場合には3位および/または5位であり、フルオレニル型基の場合には3位および/または6位でありそしてインデニル型基の場合には2位および/または4位である請求項1から3のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項5】
前記ハフノセンが基になった触媒成分の中の前記ブリッジがEtまたはMeSiである請求項1から4のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項6】
前記ハフノセンが基になった触媒成分の中のQが塩素である請求項1から5のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項7】
前記ハフノセンが基になった触媒成分の中のXが窒素、燐、酸素または硫黄である請求項1から6のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項8】
前記他の1種以上のメタロセン触媒成分がジルコニウムが基になった成分である請求項1から7のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項9】
前記他の1種以上のメタロセン触媒成分が置換されていてかさ高い置換基を少なくとも1個有する請求項1から8のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項10】
前記他の1種以上のポストメタロセン触媒成分が2,6−ビス(イミノ)ピリジル配位子の鉄錯体である請求項1から9のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項11】
更に共触媒も含んで成る請求項1から10のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項12】
前記追加的共触媒がアルミニウムアルキルである請求項1から11のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項13】
更に不活性な無機支持体も含んで成る請求項1から12のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項14】
前記無機支持体が200から700m/gの比表面積および0.5から3ml/gの細孔容積を有するシリカである請求項1から13のいずれか1項記載のメタロセン触媒系。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項記載の触媒系を生じさせる方法であって、
A. ポリオレフィンの高分子量画分を生じさせるに適する1番目のハフノセンが基になったメタロセン触媒成分を準備し、
B. 段階Aの成分とは異なっていてポリオレフィンの低分子量画分を生じさせるに適する1種以上の非橋状メタロセンもしくはポストメタロセン触媒成分を準備し、
C. ボレート、ボロネートまたはアルミネートから選択される配位能力が低いか或は配位能力を持たずかつイオン化作用を有する活性化剤を用いて前記メタロセン成分を活性にし、
D. 場合により、前記触媒系を無機支持体上に固定してもよい、
段階を含んで成る方法。
【請求項16】
ポリオレフィンの製造方法であって、
a. 請求項1から14のいずれか1項記載の触媒系を選択し、
b. 場合により、共触媒を準備し、
c. 前記触媒系および任意の共触媒をオレフィン単量体および任意の共重合用単量体が入っている重合ゾーンに導入して前記反応ゾーンを重合条件下に維持し、
d. 所望のポリオレフィンを抽出する、
段階を含んで成る方法。
【請求項17】
重合段階c)に先行する追加的予備重合段階も含んで成る請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ポリオレフィンがポリエチレンまたはポリプロピレンである請求項16または請求項17記載の方法。
【請求項19】
高分子量画分の分子量の方が低分子量画分の分子量より5倍から15倍高い、好適には低分子量画分の分子量より約10倍高いポリオレフィンを製造する目的で請求項1から14のいずれか1項記載の触媒系を用いる使用。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項記載の方法で入手可能で高分子量画分の分子量の方が低分子量画分の分子量より約10倍高いポリオレフィン。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500452(P2006−500452A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539033(P2004−539033)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010712
【国際公開番号】WO2004/029101
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】