説明

交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板

【課題】交流型プラズマディスプレイパネルの前面板の放電開始電圧を低減させる。
【解決手段】誘電体保護層16の表面に、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であるリチウム含有酸化マグネシウム粉末17を点在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板に関する。
【背景技術】
【0002】
交流型プラズマディスプレイパネル(以下、AC型PDPという)は、一般に、画像表示面となる前面板と、放電ガスが充填された放電空間を挟んで対向配置された背面板とからなる。前面板は、前面透明基板、前面透明基板の上に形成された一対の放電電極、放電電極を被覆する誘電体層、そして誘電体層の表面に形成された誘電体保護層からなる。背面板は、背面透明基板、背面透明基板の上に形成されたアドレス電極、背面透明基板とアドレス電極とを被覆し、かつ放電空間を区画する隔壁、そして隔壁の表面に配置された赤、緑、青の蛍光体で形成された蛍光体層からなる。
【0003】
誘電体保護層は、放電空間内にて生成するプラズマによるイオン衝撃から誘電体層を保護する機能と、AC型PDPの放電開始時には高い二次電子放出効率によって、放電開始電圧を低減させる機能とが要求される。これらの二つの機能を高い次元でバランスよく持っている材料として、酸化マグネシウムが広く利用されている。
【0004】
特許文献1には、AC型PDPの放電開始電圧をさらに低減させるために、誘電体保護層の中にアルカリ金属を含有させる又は誘電体保護層の上にアルカリ金属からなる層を積層させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−67759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、誘電体保護層の中にリチウムなどのアルカリ金属を含有させる又は誘電体保護層の上にリチウムなどのアルカリ金属からなる層を積層させた場合では、AC型PDPの放電時にプラズマによるイオン衝撃によって、誘電体保護層あるいはその上に積層させたアルカリ金属からなる層の表面が削られたときに放電開始電圧の変動が大きくなる恐れがある。このプラズマによるイオン衝撃によって誘電体保護層が削られたときの放電開始電圧の変動を小さくするために、誘電体保護層の表面に放電開始電圧を低減させる効果を有する放電開始電圧低減材を点在させて、放電開始電圧低減材がプラズマによるイオン衝撃によって削られる確率を低減させることは有効であると考えられる。
従って、本発明の目的は、誘電体保護層の上に点在させることによってAC型PDPの放電開始を低減させることができる新規な材料を開発し、長期間にわたって放電開始電圧が低い電圧で安定するAC型PDPの前面板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、AC型PDPの前面板の誘電体保護層の表面に、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ酸化マグネシウム結晶内にフッ素を、酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含むことがないリチウム含有酸化マグネシウム粉末を点在させることによって、AC型PDPの放電開始電圧を低減させることが可能となることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、透明基板と、該透明基板の上に形成された一対の放電電極と、該放電電極を被覆する誘電体層と、該誘電体層の上に形成された誘電体保護層とを含む交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板であって、該誘電体保護層の表面にリチウム含有酸化マグネシウム粉末が点在し、該リチウム含有酸化マグネシウム粉末が、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含むことがないことを特徴とする交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板にある。
【0009】
本発明はまた、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含むことがないリチウム含有酸化マグネシウム粉末にもある。
【0010】
本発明はまた、透明基板と、該透明基板の上に形成された一対の放電電極と、該放電電極を被覆する誘電体層と、該誘電体層の上に形成された誘電体保護層とを含む交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板であって、該誘電体保護層の表面にリチウム含有酸化マグネシウム粉末が点在し、該リチウム含有酸化マグネシウム粉末が、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ該リチウム含有酸化マグネシウム粉末を、電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であることを特徴とする交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板にもある。
【0011】
本発明はさらに、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であるリチウム含有酸化マグネシウム粉末にもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の前面板では、誘電体保護層の表面にリチウム含有酸化マグネシウム粉末を点在させているので、AC型PDPの放電時にプラズマによるイオン衝撃によって、リチウム含有酸化マグネシウム粉末が削られる確率が少なくなる。また、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を緻密な膜とするよりも点在させた方が、AC型PDPの放電空間に接するリチウム含有酸化マグネシウム粉末の面積が大きくなるので、リチウム含有酸化マグネシウム粉末から二次電子が発生し易くなる。このため本発明の前面板を用いたAC型PDPは、放電開始電圧が長期間にわたって低い電圧で安定する。
また、本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末をAC型PDPの前面板に形成されている誘電体保護層の表面に点在させることによって、AC型PDPの放電開始電圧を長期間にわたって安定して低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従う前面板を備えたAC型PDPの断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末は、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲、好ましくは7〜800μgの範囲にて含有する。
【0015】
本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末では、酸化マグネシウムの結晶内に含まれるリチウムによって、酸化マグネシウムの禁制バンド中に不純物準位が形成される。この不純物準位が形成されることによって、酸化マグネシウムの二次電子放出効率が向上すると考えられる。本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末では、リチウムの不純物準位が形成されることにより、電子線で励起させたときに700〜800nmの波長範囲にある光が強く現れる傾向がある。
【0016】
本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末では、酸化マグネシウム結晶内にフッ素を多量に含有すると二次電子放出効率が低下する傾向がある。このため、本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末では、酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含まないことが必要である。酸化マグネシウム結晶内にフッ素を多量に含有すると、電子線で励起させたときに200〜300nmの波長範囲にある光が強く現れる傾向がある。従って、酸化マグネシウム結晶内にフッ素量は、電子線で励起させたときに200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度から確認できる。すなわち、酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含まないことは、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であることによって確認することができる。200〜300nmの波長範囲にある発光ピークは実質的に検出されないことが好ましい。ここで、発光ピークが実質的に検出されないとは、S/N比の3倍以上の発光ピークが検出されないことをいう。
【0017】
本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末は、BET比表面積が2〜10m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0018】
本発明のリチウム含有酸化マグネシウム粉末は、例えば、酸化マグネシウム粉末とリチウム化合物の粉末とを、酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が7〜10000μgの範囲となるように混合し、得られた粉末混合物を焼成する方法によって製造することができる。
【0019】
酸化マグネシウム粉末は、気相法により製造された酸化マグネシウム粉末であることが好ましい。気相法とは、金属マグネシウムの蒸気と酸素とを反応させることによって、金属マグネシウムを酸化して、酸化マグネシウム粉末を製造する方法である。リチウム化合物粉末の例としては、水酸化リチウム粉末、炭酸リチウム粉末、硝酸リチウム粉末及びシュウ酸リチウム粉末を挙げることができる。
【0020】
酸化マグネシウム粉末とリチウム化合物粉末との粉末混合物の焼成温度は、一般に450〜1200℃の範囲、好ましくは700〜1200℃の範囲である。焼成時間は、一般に10〜600分の範囲である。
【0021】
次に、本発明のAC型PDP用の前面板について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に従うAC型PDPの前面板を備えたAC型PDPの断面図である。図1において、AC型PDPは、前面板10と放電ガスが充填された放電空間20を挟んで対向配置された背面板30とからなる。
【0022】
前面板10は、透明基板11と、透明基板の上に形成された一対の放電電極14a、14b(それぞれ、透明電極12a、12bとバス電極13a、13bとからなる)と、放電電極14a、14bを被覆する誘電体層15と、誘電体層の上に形成された誘電体保護層16と、誘電体保護層16の表面に点在しているリチウム含有酸化マグネシウム粉末17とからなる。
【0023】
透明基板11の例としてはガラス基板が挙げられる。透明電極12a、12bの材料の例としては、ITO、ZnO及びSnO2を挙げることができる。バス電極13a、13bの材料の例としては、Ag、Al、Cr/Cu/Crの積層金属材料を挙げることができる。
【0024】
誘電体層15は、一般に低融点ガラス組成物から形成されている。低融点ガラス組成物の例としては、酸化亜鉛、三酸化二ホウ素及び酸化ケイ素の混合物(ZnO−B23−SiO2)を主成分とするガラス組成物、酸化鉛、三酸化二ホウ素及び酸化ケイ素の混合物(PbO−B23−SiO2)を主成分とするガラス組成物、酸化鉛、三酸化二ホウ素、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの混合物(PbO−B23−SiO2−Al23)を主成分とするガラス組成物、酸化鉛、酸化亜鉛、三酸化二ホウ素及び酸化ケイ素の混合物(PbO−ZnO−B23−SiO2)を主成分とする低融点ガラス組成物が挙げられる。誘電体層15の厚さは、10〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0025】
誘電体保護層16は、酸化マグネシウムから形成されていることが好ましい。酸化マグネシウムからなる誘電体保護層は、電子ビーム蒸着法により成形することが好ましい。誘電体保護層16の厚さは、0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、0.1〜10μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0026】
リチウム含有酸化マグネシウム粉末17は、誘電体保護層16の表面に一次粒子の形で点在していてもよいし、凝集粒子(二次粒子)として点在していてもよい。凝集粒子として存在する場合は、凝集粒子の平均サイズは、0.5〜10μmの範囲にあることが好ましい。誘電体保護層16の表面に点在するリチウム含有酸化マグネシウム粉末の量は、誘電体保護層の表面をリチウム含有酸化マグネシウム粉末が占める占有面積が、誘電体保護層全体の面積に対して1〜30%の範囲となる量であることが好ましく、5〜15%の範囲となる量であることがより好ましい。リチウム含有酸化マグネシウム粉末の占有面積は、走査型電子顕微鏡により得られる誘電体保護層の拡大写真から測定することができる。
【0027】
リチウム含有酸化マグネシウム粉末17を誘電体保護層16の表面に点在させる方法としては、リチウム含有酸化マグネシウム粉末の分散液を、誘電体保護層の上に塗布した後、乾燥する方法を用いることができる。分散液の溶媒の例としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類を挙げることができる。
【0028】
放電空間20には、放電ガスが充填される。放電ガスとしては、一般にXeとNeの混合ガスが用いられる。
【0029】
背面板30は、透明基板31と、透明基板31の上に形成されたアドレス電極32と、アドレス電極32を被覆する誘電体層33と、放電空間20を区画する隔壁34と、誘電体層33と隔壁34の表面に形成された蛍光体層35とからなる。
【0030】
透明基板31の例としてはガラス基板が挙げられる。アドレス電極32の材料の例としては、Ag、Al、Cr/Cu/Crの積層金属材料を挙げることができる。誘電体層33及び隔壁34は、一般に低融点ガラス組成物からなる。低融点ガラス組成物の例は上記と同様である。蛍光体層35は、一般に赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び青色発光蛍光体のうちのいずれかの蛍光体から形成される。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
(1)リチウム含有酸化マグネシウム粉末の製造
気相合成法により製造された酸化マグネシウム粉末(2000A、宇部マテリアルズ(株)製)と水酸化リチウム粉末とを、酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が500μgとなる割合で混合して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物をアルミナ製るつぼに投入し、蓋をして電気炉に入れ、240℃/時間の昇温速度で700℃まで上昇させ、次いでその温度で180分間焼成した。その後、炉内温度を240℃/時間の降温速度で室温まで冷却して、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を得た。
【0032】
(2)AC型PDP用前面板の製造
ホウ珪酸ガラス(縦横の長さ50mm、厚さ0.55mm)の上に、互いに0.1mm間隔で平行に配置された一対の放電電極を10組形成した。次いで、該放電電極の表面に低融点ガラス組成物を塗布して誘電体層(厚み:10μm)を形成した。誘電体層の上に電子ビーム蒸着法により酸化マグネシウム製誘電体保護層(厚さ:1μm)を形成した。
次いで、上記(1)で製造したリチウム含有酸化マグネシウム粉末をイソプロピルアルコールに分散させたリチウム含有酸化マグネシウム粉末分散液を、エアーブラシで噴霧したのち、箱形電気炉に入れて、500℃の温度で30分間焼成して前面板を製造した。得られた前面板の誘電体保護層の表面に点在しているリチウム含有酸化マグネシウム粉末の面積占有率を走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、10%であった。
【0033】
(3)AC型PDP用前面板の放電開始電圧の測定
上記(2)で製造したAC型PDP用の前面板の放電電極を電源に接続し、密閉容器に設置し、該密閉容器内の圧力を1kPa以下にまで減圧した後、キセノンガスを5体積%、ネオンガスを95体積%の割合で含む混合ガスを60kPaの圧力となるまで封入した。この操作を3回繰り返した後、前面板の放電電極間に電圧を印加して、徐々に電圧を上昇させ、10組全ての放電電極間で発光が見られたときの電圧を読み取り、この電圧を放電開始電圧とした。
【0034】
表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。なお、リチウム含有量、フッ素含有量及び電子線で励起させたときの最大発光ピーク強度の測定方法は、次の通りである。
【0035】
[リチウム含有量]
リチウム含有酸化マグネシウム粉末を酸で溶解し、得られた溶液中のリチウム量をICP発光分析法により測定して、酸化マグネシウム1gに対する量に換算する。
[フッ素含有量]
リチウム含有酸化マグネシウム粉末を酸で溶解し、得られた溶液中のフッ素量をランタン−アリザリンコンプレキソン吸光光度法により測定して、酸化マグネシウム1gに対する量に換算する。フッ素の検出下限値は酸化マグネシウム1gに対する量で10μgである。
[電子線で励起させたときの最大発光ピーク強度]
リチウム含有酸化マグネシウム粉末に電子線を照射して、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度と、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度とを測定する。
【0036】
[実施例2]
水酸化リチウム粉末の量を、酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量を100μgとなる量としたこと、粉末混合物の焼成温度を900℃とした以外は、実施例1と同様にして、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を製造した。そして、このリチウム含有酸化マグネシウム粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0037】
[実施例3]
水酸化リチウム粉末の量を、酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が10μgとなる量としたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を製造した。そして、このリチウム含有酸化マグネシウム粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0038】
[実施例4]
水酸化リチウム粉末の代わりに炭酸リチウム粉末を使用し、炭酸リチウム粉末の量を酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が5000μgとなる量としたこと、粉末混合物の焼成温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を製造した。そして、このリチウム含有酸化マグネシウム粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0039】
[実施例5]
水酸化リチウム粉末の代わりに炭酸リチウム粉末を使用し、炭酸リチウム粉末の量を酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が10000μgとなる量としたこと、粉末混合物の焼成温度を500℃とした以外は、実施例1と同様にして、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を製造した。そして、このリチウム含有酸化マグネシウム粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0040】
[比較例1]
水酸化リチウム粉末の量を、酸化マグネシウム1gに対してリチウムの量が5μgとなる量としたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を製造した。そして、このリチウム含有酸化マグネシウム粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0041】
[比較例2]
リチウム含有酸化マグネシウム粉末の代わりに、リチウム含有酸化マグネシウム粉末の酸化マグネシウム源として用いた酸化マグネシウム粉末(2000A、宇部マテリアルズ(株)製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、AC型PDP用前面板を製造し、その放電開始電圧を測定した。表1に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウム含有量、フッ素含有量及びBET比表面積を、表2に、リチウム含有酸化マグネシウム粉末を電子線で励起させたときに発光する、200〜300nmの波長範囲にある光と700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度を、そして表3に、AC型PDP用前面板の放電開始電圧を示す。
【0042】
表1
────────────────────────────────────────
リチウム含有量 フッ素含有量 BET比表面積
(μg) (μg) (m2/g)
────────────────────────────────────────
実施例1 500 検出下限値以下 5.56
実施例2 100 検出下限値以下 5.71
実施例3 10 検出下限値以下 6.43
実施例4 5000 検出下限値以下 3.08
実施例5 10000 検出下限値以下 3.12
────────────────────────────────────────
比較例1 5 検出下限値以下 7.30
比較例2 0 検出下限値以下 8.00
────────────────────────────────────────
【0043】
表2
────────────────────────────────────────
200〜300nmの波長範囲 700〜800nmの波長範囲
での最大発光ピーク強度 での最大発光ピーク強度
────────────────────────────────────────
実施例1 実質的に検出されない 190
実施例2 実質的に検出されない 140
実施例3 実質的に検出されない 120
実施例4 実質的に検出されない 240
実施例5 実質的に検出されない 260
────────────────────────────────────────
比較例1 実質的に検出されない 105
比較例2 実質的に検出されない 100
────────────────────────────────────────
注)700〜800nmの波長範囲での最大発光ピーク強度は、比較例2を100とした相対値。
【0044】
表3
────────────────────────────────────────
放電開始電圧(V)
────────────────────────────────────────
実施例1 180
実施例2 170
実施例3 190
実施例4 210
実施例5 220
────────────────────────────────────────
比較例1 260
比較例2 270
────────────────────────────────────────
【0045】
上記表1〜3の結果から明らかなように、本発明に従うリチウム含有酸化マグネシウム粉末を誘電体保護層の上に点在させたAC型PDP用の前面板(実施例1〜5)は、リチウムを含有しない酸化マグネシウム粉末を誘電体保護層の上に点在させたAC型PDP用の前面板(比較例2)と比較して、放電開始電圧が低減する。
【符号の説明】
【0046】
10 前面板
11 透明基板
12a、12b 透明電極
13a、13b バス電極
14a、14b 放電電極
15 誘電体層
16 誘電体保護層
17 リチウム含有酸化マグネシウム粉末
20 放電空間
30 背面板
31 透明基板
32 アドレス電極
33 誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、該透明基板の上に形成された一対の放電電極と、該放電電極を被覆する誘電体層と、該誘電体層の上に形成された誘電体保護層とを含む交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板であって、該誘電体保護層の表面にリチウム含有酸化マグネシウム粉末が点在し、該リチウム含有酸化マグネシウム粉末が、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含むことがないことを特徴とする交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板。
【請求項2】
リチウム含有酸化マグネシウム粉末のリチウムの含有量が、酸化マグネシウム1gに対して7〜800μgの範囲にある請求項1に記載の交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板。
【請求項3】
酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ酸化マグネシウム結晶内にフッ素を酸化マグネシウム1gに対して10μg以上含むことがないリチウム含有酸化マグネシウム粉末。
【請求項4】
リチウムの含有量が、酸化マグネシウム1gに対して7〜800μgの範囲にある請求項3に記載のリチウム含有酸化マグネシウム粉末。
【請求項5】
透明基板と、該透明基板の上に形成された一対の放電電極と、該放電電極を被覆する誘電体層と、該誘電体層の上に形成された誘電体保護層とを含む交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板であって、該誘電体保護層の表面にリチウム含有酸化マグネシウム粉末が点在し、該リチウム含有酸化マグネシウム粉末が、酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ該リチウム含有酸化マグネシウム粉末を、電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であることを特徴とする交流型プラズマディスプレイパネル用の前面板。
【請求項6】
酸化マグネシウム1gに対してリチウムを7〜10000μgの範囲にて含有し、かつ電子線で励起させたときに発光する光のうち、200〜300nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度が、700〜800nmの波長範囲にある光の最大発光ピーク強度の1/100以下であるリチウム含有酸化マグネシウム粉末。

【図1】
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【公開番号】特開2012−109112(P2012−109112A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256867(P2010−256867)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】