説明

交流用電子スイッチ装置

【課題】回路構成が簡素な交流用電子スイッチ装置を提供すること。
【解決手段】交流用電子スイッチ装置1では、商用交流電圧を負荷LDへ印加する素子として、PW MOSFETQ1,Q2を用いている。そして、このPW MOSFETQ1,Q2を、商用交流電圧から生成された正制御電圧および負制御電圧の入力期間に応じて導通させることで、商用交流電圧を負荷LDへ印加している。よって、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1では、トライアックを用いた交流用電子スイッチ装置と比較して、交流電圧がゼロ点になる正確なタイミングでトリガ電圧を生成する回路が不要となる。従って、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1によれば、回路構成を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交流用電子スイッチ装置に関し、特に、回路構成が簡素な交流用電子スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流電源から供給される交流電圧の負荷への印加および非印加を切り換える交流用電子スイッチ装置に関しては、例えば、特開平9−045482号公報に記載のトライアック(2方向3端子サイリスタ)を用いた交流用電子スイッチ装置が知られている。このトライアックを用いた交流用電子スイッチ装置では、交流電圧を負荷へ印加する閉回路を形成する部品として、2方向3端子サイリスタを用いている。この2方向3端子サイリスタへ、交流電圧がゼロ点になるタイミングでトリガ電圧を入力することで、閉回路を形成させて、交流電圧を負荷へ印加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−045482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のトライアックを用いた交流用電子スイッチ装置では、交流電圧を負荷へ波形を崩さないように印加させるためには、交流電圧がゼロ点になる正確なタイミングで、2方向3端子サイリスタへトリガ電圧を入力しなければならない。よって、トライアックを用いた交流用電子スイッチ装置では、この正確なタイミングのトリガ電圧を生成する回路が、負荷への交流電圧の印加の為に使用する回路の他に、別途必要となる。従って、トライアックを用いた交流用電子スイッチ装置では、回路構成が複雑になってしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、回路構成が簡素な交流用電子スイッチ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載の交流用電子スイッチ装置は、交流電源から供給される交流電圧の負荷への印加と非印加とを切り換えるものであり、前記交流電源から交流電圧が供給されると、その供給された交流電圧の正の半波である正半波を抽出し、その抽出した正半波から、その正半波と同位相の正の電圧である正入力電圧を生成する正生成手段と、前記交流電源から交流電圧が供給されると、その供給された交流電圧の負の半波である負半波を抽出し、その抽出した負半波から、その負半波と同位相の負の電圧である負入力電圧を生成する負生成手段と、前記正生成手段および負生成手段により生成された前記正入力電圧および負入力電圧の伝送と非伝送とを切り換える切換手段と、その切換手段の切り換えにより前記正入力電圧が伝送されて入力端子に入力された場合に、その正入力電圧の入力期間に応じて、前記交流電源から供給される交流電圧の正半波を前記負荷へ印加する閉回路をドレインとソースとを導通させることで形成する第1の電界効果トランジスタを用いた正印加手段と、前記切換手段の切り換えにより前記負入力電圧が伝送されて入力端子に入力された場合に、その負入力電圧の入力期間に応じて、前記交流電源から供給される交流電圧の負半波を前記負荷へ印加する閉回路をドレインとソースとを導通させることで形成する第2の電界効果トランジスタを用いた負印加手段とを備えている。
【0007】
請求項2記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置において、前記正印加手段に用いられる第1の電界効果トランジスタは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、前記正印加手段は、前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記正入力電圧を印加する構成であり、前記負印加手段の有する第2の電界効果トランジスタは、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、前記負印加手段は、前記Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記負入力電圧を印加する構成である。
【0008】
請求項3記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置において、前記正印加手段および負印加手段に用いられる第1および第2の電界効果トランジスタは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、前記正印加手段は、前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記正入力電圧を印加する構成であり、前記負印加手段は、前記入力端子に入力された負入力電圧の波形を同一に保った上で、その負入力電圧をゼロボルトを基準とした正の電圧へ反転させて前記正入力電圧を生成する反転生成手段を備え、その反転生成手段により生成された前記正入力電圧を前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに印加する構成である。
【0009】
請求項4記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項1から3のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置において、前記正生成手段により生成される正入力電圧の最大値と前記負生成手段により生成される負入力電圧の最小値との絶対値は、等しい値である。
【0010】
請求項5記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項1から4のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置において、前記切換手段は、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切り換えられた時に、前記第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる正の電圧である第1閾値電圧よりも前記正入力電圧の最大値が小さくなり、前記切り換えから所定時間経過した時には、前記正入力電圧の最大値が前記第1閾値電圧よりも大きい前記第1所定電圧となるように、前記切り換えからの時間経過に伴って前記正印加手段の入力端子に入力される正入力電圧の最大値を上昇させる正調整手段と、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切り換えた時に、前記第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる負の電圧である第2閾値電圧よりも前記負入力電圧の最小値が大きくなり、前記切り換えから所定時間経過した時には、前記負入力電圧の最小値が前記第2閾値電圧よりも小さい前記第2所定電圧となるように、前記切り換えからの時間経過に伴って前記負印加手段の入力端子に入力される負入力電圧の最小値を降下させる負調整手段とを備えている。
【0011】
請求項6記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項4に従属する請求項5記載の交流用電子スイッチ装置において、前記正生成手段は、第1のツェナーダイオードを備え、前記負生成手段は、前記第1のツェナーダイオードとは極性が逆の第2のツェナーダイオードを備え、前記正調整手段は、抵抗およびコンデンサから構成される第1の積分回路と、その第1の積分回路に電流が流れ込む方向を順方向とする第1のダイオードとを有し、前記第1の積分回路と第1のダイオードとを直列接続して前記第1のツェナーダイオードに対して並列に接続することで、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に前記切換手段が切り換えられた時に、前記交流電源から供給され第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにする一方、前記切換手段の切り換えから所定時間経過した時に、前記第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることで、前記切り換えからの時間経過に伴って前記正印加手段に入力される正入力電圧の最大値を上昇させるものであり、前記負調整手段は、抵抗およびコンデンサから構成される第2の積分回路と、その第2の積分回路から電流が流れ出す方向を順方向とする第2のダイオードとを有し、前記第2の積分回路と第2のダイオードとを直列接続して前記第2のツェナーダイオードに対して並列に接続することで、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に前記切換手段が切り換えられた時に、前記交流電源から供給され第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにする一方、前記切換手段の切り換えから所定時間経過した時に、前記第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることで、前記切り換えからの時間経過に伴って前記負印加手段に入力される負入力電圧の最小値を降下させるものである。
【0012】
請求項7記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項1から6のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置において、前記交流電源から供給される交流電圧の電圧値を検出する電圧検出手段と、その電圧検出手段により検出された前記電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、前記正入力電圧および負入力電圧が前記正印加手段および負印加手段へ伝送される状態に前記切換手段が切り換えられていても、その正入力電圧および負入力電圧が前記正印加手段および負印加手段へ伝送されることを禁止する禁止手段とを備えている。
【0013】
請求項8記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項7記載の交流用電子スイッチ装置において、前記禁止手段は、前記電圧検出手段により検出された前記電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、前記正入力電圧が前記正印加手段へ伝送される経路および前記負入力電圧が前記負印加手段へ伝送される経路と、前記正入力電圧および負入力電圧の基準線とを短絡する短絡手段を備えている。
【0014】
請求項9記載の交流用電子スイッチ装置は、請求項8記載の交流用電子スイッチ装置において、前記短絡手段は、前記交流電源からの交流電圧が供給停止されるまで、前記経路と前記基準線との短絡を維持する維持手段を備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の交流用電子スイッチ装置によれば、交流電源から交流電圧が供給されると、正生成手段は、供給された交流電圧の正半波から、その正半波と同位相の正の電圧である正入力電圧を生成する。また、負生成手段は、供給された交流電圧の負半波から、その負半波と同位相の負の電圧である負入力電圧を生成する。そして、切換手段の切り換えにより正入力電圧が正印加手段の入力端子に入力されると、その正入力電圧の入力期間に応じて、正印加手段は、第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させて、供給される交流電圧の正半波を負荷へ印加する閉回路を形成する。また、切換手段の切り換えにより負入力電圧が負印加手段の入力端子に入力されると、その負入力電圧の入力期間に応じて、負印加手段は、第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させて、供給される交流電圧の負半波を負荷へ印加する閉回路を形成する。これにより、交流電源から供給される交流電圧の両波が負荷へ印加される。ここで、負荷への交流電圧の印加の為に使用する正印加手段および負印加手段には、電界効果トランジスタを用いている。そして、この電界効果トランジスタを、交流電圧から生成された正入力電圧および負入力電圧の入力期間に応じて導通させているので、波形を崩すことなく交流電圧を負荷へ印加することができる。よって、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置では、トライアックを用いた交流用電子スイッチ装置と比較して、交流電圧の波形を崩さないために必要となる回路、即ち、交流電圧がゼロ点になる正確なタイミングでトリガ電圧を生成する回路が不要となる。従って、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置によれば、回路構成を簡素化することができるという効果がある。
【0016】
請求項2記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、正印加手段は、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに正入力電圧を印加し、負印加手段は、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタに負入力電圧を印加する。ここで、正印加手段に用いられるNチャネル型のMOS電界効果トランジスタと負印加手段に用いられるPチャネル型のMOS電界効果トランジスタとは、チャネル型が異なるだけの電界効果トランジスタとなっている。よって、正印加手段と負印加手段とを、極性を逆にするだけの構成で実現することができるという効果がある。
【0017】
請求項3記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項1記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、負印加手段は、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに、入力端子に入力された負入力電圧の波形を同一に保った上で、その負入力電圧をゼロボルトを基準とした正の電圧へ反転させて生成した正入力電圧を印加する。よって、正印加手段および負印加手段は、共に、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタを用いることができる。ここで、一般的に、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタは、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタと比較して、非常に安価である。従って、請求項3記載の交流用電子スイッチ装置によれば、MOS電界効果トランジスタの費用を抑制することで、全体に掛かる費用を安価にすることができるという効果がある。
【0018】
請求項4記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、正入力電圧の最大値と負入力電圧の最小値との絶対値は、等しい値であるので、正入力電圧の波形と負入力電圧の波形とは、極性が異なるだけの同一波形となる。これにより、正入力電圧を入力する正印加手段と負入力電圧を入力する負印加手段とを、極性が異なるだけの同一動作特性にすることができる。よって、正印加手段によって負荷に印加される正半波の波形と負印加手段によって負荷に印加される負半波の波形とを極性が異なるだけの同一波形とすることができる。従って、交流電源から供給される交流電圧の両波を均整のとれた波形で負荷へ印加することができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切換手段が切り換えられると、正調整手段は、その切り換えからの時間経過に伴って正生成手段により生成される正入力電圧の最大値を上昇させる。具体的には、正調整手段は、正印加手段へ入力される正入力電圧の最大値を、その切り換えが行われた時に、第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる第1閾値電圧よりも小さくし、切り換えから所定時間経過した時には、第1閾値電圧よりも大きい第1所定電圧にする。よって、切換手段が切り換えられた直後には、第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとの遮断を維持し、その後は、第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを半導通させ、切り換えから所定時間が経過すると、第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを完全に導通させることができる。同様に、負調整手段は、負印加手段へ入力される負入力電圧の最小値を、正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切り換えが行われた時に、第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる第2閾値電圧よりも大きくし、切り換えから所定時間経過した時には、第2閾値電圧よりも小さい第2所定電圧にする。よって、正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切換手段が切り換えられた直後には、第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとの遮断を維持し、その後は、第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを半導通させ、切り換えから所定時間が経過すると、第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを完全に導通させることができる。このように、第1および第2の電界効果トランジスタの遮断から完全導通までを、所定時間をかけて行うことができるので、負荷へ流れ込む電流を、切換手段の切り換えからの時間経過に伴って増加させることができる。従って、交流電圧の印加直後に定常電流の数倍の電流である突入電流が発生する負荷へ、交流電圧の印加を開始する場合でも、その突入電流を抑制して、本交流用電子スイッチ装置の破壊を防止することができるという効果がある。
【0020】
請求項6記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項4に従属する請求項5記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、第1の積分回路と第1のダイオードとを直列接続した正調整手段を、正生成手段である第1のツェナーダイオードに対して並列に接続する。これにより、正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切換手段が切り換えられた時には、第1の積分回路のコンデンサが未充電であることから、交流電源から供給される交流電流の殆どを第1の積分回路に流れ込ませることができる。よって、その切り換えが行われた時には、正調整手段は、第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにすることができる。一方、切換手段の切り換えから所定時間経過した時には、第1の積分回路のコンデンサの充電により、交流電源から供給される交流電流が第1の積分回路に流れ込むのを僅かとすることができる。よって、切り換えから所定時間経過した時には、正調整手段は、第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることができる。これにより、切換手段の切り換えからの時間経過に伴って正印加手段に入力される正入力電圧の最大値を上昇させることができる。同様に、第2の積分回路と第2のダイオードとを直列接続した負調整手段を、負生成手段である第2のツェナーダイオードに対して並列に接続する。これにより、切換手段の切り換えが行われた時には、負調整手段は、第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにすることができる一方で、切り換えから所定時間経過した時には、第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることができる。これにより、切換手段の切り換えからの時間経過に伴って負印加手段に入力される負入力電圧の最小値を降下させることができる。従って、請求項6記載の交流用電子スイッチ装置によれば、正入力電圧の最大値の上昇と負入力電圧の最小値の降下とを、ツェナーダイオードに積分回路およびダイオードを並列接続するという簡素な回路構成で実現することができるという効果がある。
【0021】
請求項7記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、電圧検出手段により検出された電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、禁止手段は、正入力電圧および負入力電圧が正印加手段および負印加手段へ伝送される状態に切換手段が切り換えられていても、その正入力電圧および負入力電圧の伝送を禁止する。よって、交流電源から供給される交流電圧の電圧値が規定の電圧値を超える場合、即ち、規格を超える高電圧である場合には、正印加手段および負印加手段の動作を禁止して、高電圧の負荷への印加を禁止することができる。従って、規格を越える高電圧により負荷が破壊されることを防止することができるという効果がある。
【0022】
請求項8記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項7記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、電圧検出手段により検出された電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、短絡手段は、正印加手段へ正入力電圧が伝送される経路および負印加手段へ負入力電圧が伝送される経路と、正入力電圧および負入力電圧の基準線とを短絡して、正印加手段および負印加手段の動作を禁止する。よって、交流電源から供給される交流電圧の電圧値が規定の電圧値を超える場合、即ち、規格を超える高電圧である場合には、正入力電圧および負入力電圧が伝送される経路を基準線と短絡するという簡易な構成で、規格を越える高電圧が負荷に印加され、負荷が破壊されることを防止することができるという効果がある。
【0023】
請求項9記載の交流用電子スイッチ装置によれば、請求項8記載の交流用電子スイッチ装置の奏する効果に加え、維持手段は、交流電源からの交流電圧が供給停止されるまで、経路と基準線との短絡を維持する。よって、交流電源が規格を超える高電圧を供給した場合には、その高電圧の供給が停止して負荷の破壊の恐れがなくなるまで、正印加手段および負印加手段の動作禁止を維持しておくことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態における交流用電子スイッチ装置の構成を示す回路図である。
【図2】(a)は、商用交流電圧波形と、図1の回路図に示すS1点における電圧波形と、を示した図であり、(b)は、図1の回路図に示すS1点における電圧波形と、図1の回路図に示すS2点における電圧波形と、を示した図である。
【図3】図1の回路図に示すL点とC点との間における電圧波形を示した図である。
【図4】図1の回路図に示すH点とL点との間における電圧波形を示した図である。
【図5】図1の回路図に示すS1点における制御電圧波形、およびPW MOSFETQ1,Q2がオフである場合の図1の回路図に示すS2点における制御電圧波形を示した図である。
【図6】Pチャネル型PW MOSFETQ2を、Nチャネル型PW MOSFETQ14を使用して構成した場合の回路図を示している。
【図7】トランジスタQ13の、ベース電圧、エミッタ電圧およびコレクタ電圧を図示したものである。
【図8】Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧を図示したものである。
【図9】第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置の構成を示す回路図である。
【図10】図9に示す多機能型交流用電子スイッチ装置のS2における制御電圧の変化を、±VS電圧の変化と共に示した図である。
【図11】図9に示す多機能型交流用電子スイッチ装置において、負荷に流れ込む突入電流を、S2における制御電圧の変化および多機能型交流用電子スイッチ装置に供給された商用交流電圧と共に示した図である。
【図12】図1に示す交流用電子スイッチ装置のS2における制御電圧の変化を示した図である。
【図13】図1に示す交流用電子スイッチ装置において、負荷に流れ込む突入電流を、S2における制御電圧の変化および交流用電子スイッチ装置に供給された商用交流電圧と共に示した図である。
【図14】図1に示す交流用電子スイッチ装置に突入電流抑制回路を接続した多機能型交流用電子スイッチ装置の回路図である。
【図15】図1に示す交流用電子スイッチ装置に定格外電圧入力保護回路と±VH電源生成回路とを接続した多機能型交流用電子スイッチ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1を参照して、パワーMOS電界効果トランジスタ(以下、「PW MOSFET」(Power Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と称す)を用いた交流用電子スイッチ装置1について説明する。図1は、交流用電子スイッチ装置1の構成を示す回路図である。
【0026】
なお、交流用電子スイッチ装置1は、商用電源(実効値100ボルト)にプラグP1が接続され、スイッチSW1が遮断状態となった場合には、商用電源から供給される実効値100ボルトの交流電圧(以下、「商用交流電圧」と称す)を使用して制御電圧を生成し、その生成した制御電圧を用いて、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通、遮断を切り換えることで、商用交流電圧を負荷LDへ印加するスイッチング装置である。
【0027】
交流用電子スイッチ装置1は、プラグP1と、ヒューズF1と、抵抗R1〜R3と、ダイオードD1〜D4と、ツェナーダイオードZD1,ZD2と、スイッチSW1と、Nチャネル型PW MOSFETQ1と、Pチャネル型PW MOSFETQ2と、コンセントOUT1と、から構成されている。
【0028】
プラグP1は、実効値100ボルトの商用電源に接続して、コンセントOUT1に接続された負荷LDへ商用交流電圧を供給すると共に、交流用電子スイッチ装置1の動作電圧を供給するものである。このプラグP1に設けられた金属製の一対の差込部材の一方、即ち、差込部材B1が、ヒューズF1の一端に接続されている。また、差込部材B2は、ツェナーダイオードZD1のアノード等に接続されている。
【0029】
ヒューズF1は、プラグP1から供給される商用交流電圧に伴う交流電流が、規定の電流値を超えて流れた場合に、その電流が、負荷LDや交流用電子スイッチ装置1へ流れ込むのを防止する公知の素子である。このヒューズF1の他端は、コンセントOUT1の一方の端子および抵抗R1の一端と接続されている。
【0030】
抵抗R1と、ダイオードD1,D2と、ツェナーダイオードZD1,ZD2とは、Nチャネル型PW MOSFETQ1およびPチャネル型PW MOSFETQ2の、即ち、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通、遮断を制御する制御電圧を生成する制御電圧生成回路を構成している。
【0031】
ダイオードD1およびツェナーダイオードZD1は、プラグP1が商用電源に接続された場合に、商用交流電圧の正の半波から、その商用交流電圧の正の半波と同位相であり、且つ、正の電圧である、正制御電圧を生成する回路を構成し、ダイオードD2およびツェナーダイオードZD2は、プラグP1が商用電源に接続された場合に、商用交流電圧の負の半波から、その商用交流電圧の負の半波と同位相であり、且つ、負の電圧である、負制御電圧を生成する回路を構成している。この正制御電圧および負制御電圧が交互に生成されることで、制御電圧生成回路では、最大値が正で最小値が負の連続した制御電圧を生成する。なお、以後、商用交流電圧において、正の半波を「正半波」と称し、負の半波を「負半波」と称する。また、制御電圧とは、正制御電圧と負制御電圧が合成された電圧を示す。
【0032】
抵抗R1の他端は、ダイオードD1のアノードおよびダイオードD2のカソードと接続されている。ダイオードD1のカソードは、ツェナーダイオードZD1のカソードと接続されており、ツェナーダイオードZD1のアノードは、差込部材B2と接続されている。
【0033】
また、ダイオードD2のアノードは、ツェナーダイオードZD2のアノードと接続されており、ツェナーダイオードZD2のカソードは、差込部材B2と接続されている。なお、制御電圧生成回路による生成される制御電圧の詳細については後述する。
【0034】
ダイオードD1のアノードおよびダイオードD2のカソードは、抵抗R2の一端に接続されており、抵抗R2の他端は、スイッチSW1の一端、抵抗R3の一端およびコンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲート端子に接続されている。なお、スイッチSW1の他端および抵抗R3の他端は、それぞれ、差込部材B2と接続されている。
【0035】
スイッチSW1は、制御電圧生成回路で生成された制御電圧を、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲート端子に伝送するか否かを切り換える押しボタン式のスイッチである。抵抗R2および抵抗R3は、スイッチSW1が遮断状態である場合には、ダイオードD1およびツェナーダイオードZD1に印加される電圧を、即ち、正制御電圧を分圧すると共に、ダイオードD2およびツェナーダイオードZD2に印加される電圧を、即ち、負制御電圧を分圧する分圧回路を構成する。よって、スイッチSW1が遮断状態である場合には、抵抗R3に発生した電圧が、即ち、制御電圧が、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲート端子に印加される。従って、スイッチSW1が遮断状態である場合には、制御電圧に応じて、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通状態、遮断状態を切り換えることができる。
【0036】
一方、スイッチSW1が導通状態である場合には、抵抗R3に電圧が発生せず、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲート端子に制御電圧が入力されない。よって、スイッチSW1が導通状態である場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2を遮断状態に維持することができる。
【0037】
ダイオードD3,D4と、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2とは、制御電圧に応じて、導通状態、遮断状態を切り換える制御回路を構成している。スイッチSW1が遮断状態である場合に、ダイオードD3およびNチャネル型PW MOSFETQ1は、入力される正制御電圧に応じて、商用交流電圧の正半波を負荷LDへ印加する回路を構成し、ダイオードD4およびPチャネル型PW MOSFETQ2は、入力される負制御電圧に応じて、商用交流電圧の負半波を負荷LDへ印加する回路を構成している。
【0038】
ダイオードD3のアノードおよびダイオードD4のカソードは、コンセントOUT1の他端と接続され、ダイオードD3のカソードは、Nチャネル型PW MOSFETQ1のドレインと接続されている。また、ダイオードD4のアノードは、Pチャネル型PW MOSFETQ2のドレインと接続されている。そして、PW MOSFETQ1,Q2の各ソースは、差込部材B2と接続されている。なお、ダイオードD3,D4は、逆耐圧用保護素子としても機能している。
【0039】
次に、図1に加え、図2〜図4を参照して、プラグP1が商用電源に接続され、スイッチSW1が遮断状態である場合における交流用電子スイッチ装置1の動作について説明する。図2(a)は、商用交流電圧波形と、図1の回路図に示すS1点における電圧波形(S1点における制御電圧)と、を示した図であり、図2(b)は、図1の回路図に示すS1点における電圧波形(S1点における制御電圧)と、図1の回路図に示すS2点における電圧波形(S2点における制御電圧)と、を示した図である。
【0040】
また、図3は、図1の回路図に示すL点とC点との間における電圧波形を示した図であり、図4は、図1の回路図に示すH点とL点との間における電圧波形、即ち、負荷LDに印加される電圧波形を示した図である。なお、図2〜図4においては、縦軸を電圧とし、横軸を時間としている。
【0041】
プラグ1が商用電源に接続されると、図1に示す差込部材B1−B2の間には、商用交流電圧が印加され、その商用交流電圧波形は、図2(a)に示す波形となる。印加された商用交流電圧が正半波である場合には(t0時〜t1時までの場合には)、差込部材B1からB2へ交流電流が流れ込む。よって、この場合には、差込部材B1からの交流電流は、抵抗R1→ダイオードD1→ツェナーダイオードZD1→差込部材B2の経路を流れ、ダイオードD2→ツェナーダイオードZD2の経路へは流れない(図1参照)。ここで、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧は、約11.4ボルトである。従って、印加された商用交流電圧が正半波である場合のS1点における制御電圧は、図2(a)に示すように、この約11.4ボルトにダイオードD1の順方向電圧(約0.6ボルト)を加えた約12.0ボルトを最大値とする略矩形状の電圧、即ち、正制御電圧となる。
【0042】
また、印加された商用交流電圧が負半波である場合には(t1時〜t2時までの場合には)、差込部材B2からB1へ交流電流が流れ込む。よって、この場合には、差込部材B2からの交流電流は、ツェナーダイオードZD2→ダイオードD2→抵抗R1→ヒューズF1→差込部材B1の経路を流れ、ツェナーダイオードZD1→ダイオードD1の経路へは流れない(図1参照)。ここで、ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧は、ツェナーダイオードZD1と同様に、約11.4ボルトである。従って、印加された商用交流電圧が負半波である場合のS1点における制御電圧は、図2(a)に示すように、この約11.4ボルトにダイオードD2の順方向電圧(約0.6ボルト)を加えた約−12.0ボルトを最小値とする略矩形状の電圧、即ち、負入力電圧となる。
【0043】
よって、S1点における制御電圧は、約12.0ボルトを最大値とし、約−12.0ボルトを最小値とする信号となる。
【0044】
次に、S2点における制御電圧は、S1における制御電圧を、図1に示す抵抗R2と抵抗R3とから構成される分圧回路で分圧した電圧となるので、S1における制御電圧の振幅を小さくした信号となる。よって、図2(b)に示すように、S2点における制御電圧は、約10.0ボルトを最大値とし、約−10.0ボルトを最小値とする電圧となる。
【0045】
次に、図2に示すS2における制御電圧が、図1に示すコンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2のゲートに入力されると、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2は、その制御電圧の変化に伴い、導通状態、遮断状態を交互に行う。具体的には、図2に示すt0´時〜t1時までの間においては、Nチャネル型PW MOSFETQ1が導通状態となる一方で、Pチャネル型PW MOSFETQ2が遮断状態となり、図2に示すt1´時〜t2時までの間においては、Nチャネル型PW MOSFETQ1が遮断状態となる一方で、Pチャネル型PW MOSFETQ2が導通状態となる。
【0046】
ここで、t0時〜t2時までの間における、図1の回路図に示すL点とC点との間に印加される電圧の波形は、図3に示す波形となる。図3に示すように、t0時〜t1時までの間は、t0´時までを除き、図1に示すNチャネル型PW MOSFETQ1が導通状態となるので、差込部材B1からの交流電流は、ヒューズF1→負荷LD→ダイオードD3→PW MOSFETQ1→差込部材B2の経路を流れ、ダイオードD4→PW MOSFETQ2→差込部材B2の経路を流れない(図1参照)。よって、t0時〜t1時までの間は、t0´時までを除き、ダイオードD3の順方向電圧(約0.6ボルト)とPW MOSFETQ1のオン電圧(ドレイン−ソース間電圧)とを加算した電圧が図1の回路図のL点とC点との間における電圧となる。
【0047】
また、t1時〜t2時までの間は、t1時〜t1´時までを除き、図1に示すNチャネル型PW MOSFETQ2が導通状態となるので、差込部材B2からの交流電流は、PW MOSFETQ2→ダイオードD4→負荷LD→ヒューズF1→差込部材B1の経路を流れ、PW MOSFETQ1→ダイオードD3→負荷LDの経路を流れない(図1参照)。よって、t1時〜t2時までの間は、t1時〜t1´時までを除き、ダイオードD4の順方向電圧(約0.6ボルト)とPW MOSFETQ2のオン電圧(ドレイン−ソース間電圧)とを加算した電圧をマイナスにした電圧が図1の回路図のL点とC点との間における電圧となる。
【0048】
なお、図1に示すNチャネル型PW MOSFETQ1が導通を開始するのは、図2(b)に示すように、S2における正制御電圧が、Nチャネル型PW MOSFETQ1のゲート閾値電圧、即ち、約4.0ボルトを超えるt0´時後となるので、図3に示すように、t0´時までは、PW MOSFETQ1が遮断状態となる。よって、t0´時までは、図1の回路図に示すL点とC点との間における電圧は、商用交流電圧が示す電圧値(具体的には、数ボルト以上約50ボルト以下の電圧)となる。同様に、図1に示すPチャネル型PW MOSFETQ2が導通を開始するのは、図2(b)に示すように、S2における負制御電圧が、Pチャネル型PW MOSFETQ2のゲート閾値電圧、即ち、約−4.0ボルトを下回るt1´後となるので、図3に示すように、t1時〜t1´時までは、PW MOSFETQ2が遮断状態となる。よって、t1時〜t1´時までは、図1の回路図に示すL点とC点との間における電圧は、商用交流電圧が示す電圧値(具体的には、−数ボルト以上約−50ボルト以下の電圧)となる。
【0049】
なお、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2においては、遮断状態から導通状態となる場合に、即ち、PW MOSFETQ1においてはt0´時までの立ち上がり期間に、PW MOSFETQ2においてはt1時〜t1´時までの立ち上がりの期間に、ドレイン−ソース間に商用交流電圧が印加されるが、導通状態から遮断状態となる期間には(立ち下りの期間には)、商用交流電圧が印加されない。これは、立ち下りの期間においては、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の入力容量に蓄えられた電荷が放電しきれない現象が発生することにより、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の状態が瞬時に遮断状態になるのではなく、所定の期間、導通状態を維持してしまう。よって、その期間、商用交流電圧が負荷LDに印加され続けるからである。
【0050】
次に、t0時〜t2時までの、図1の回路図に示すH点とL点との間における電圧波形、即ち、負荷LDに印加される電圧波形は、図4に示す波形となる。t0時〜t1時までの間は、t0´時までを除き、差込部材B1からの交流電流は、前述の通り、ヒューズF1→負荷LD→ダイオードD3→PW MOSFETQ1→差込部材B2の経路を流れるので(図1参照)、商用交流電圧の正半波が、負荷LD、ダイオードD3およびPW MOSFETQ1に印加される。しかし、ダイオードD3およびPW MOSFETQ1に印加される電圧は、僅か約1.0ボルトに過ぎない(図3参照)。よって、t0時〜t1時までの間は、t0´時までを除き、商用交流電圧の正半波の殆どが負荷LDに印加されて、負荷LDに印加される電圧は、最大値約140ボルトの正半波の電圧となり、商用交流電圧の正半波と略同じ電圧となる。
【0051】
また、t1時〜t2時までの間は、t1時〜t1´時までを除き、差込部材B2からの交流電流は、前述の通り、PW MOSFETQ2→ダイオードD4→負荷LD→ヒューズF1→差込部材B1の経路を流れるので、商用交流電圧の負半波は、負荷LD、ダイオードD4およびPW MOSFETQ2に印加される。ここでも、PW MOSFETQ2→ダイオードD4に印加される電圧は、僅か約−1.0ボルトに過ぎない(図3参照)。よって、t1時〜t2時までの間は、t1時〜t1´時までを除き、商用交流電圧の負半波の殆どが負荷LDに印加されて、負荷LDに印加される電圧は、最小値約−140ボルトの負半波の電圧となり、商用交流電圧の負半波と略同じ電圧となる。
【0052】
よって、プラグP1が商用電源に接続され、スイッチSW1が遮断状態である場合には、交流用電子スイッチ装置1は、商用交流電圧とほぼ同一の交流電圧を負荷LDに印加することができる。
【0053】
次に、図1に加え、図5を参照して、プラグP1が商用電源に接続され、スイッチSW1が導通状態である場合における交流用電子スイッチ装置1の動作について説明する。図5は、図1の回路図に示すS1点における制御電圧波形、およびPW MOSFETQ1,Q2がオフである場合の図1の回路図に示すS2点における制御電圧波形を示した図であり、図2(b)と対応する図である。なお、図5においては、図2〜図4と同様、縦軸を電圧とし、横軸を時間としている。
【0054】
スイッチSW1が導通状態である場合には、図1に示すように、抵抗R2の他端と差込部材B2とが短絡された状態となり、抵抗R3に発生する電圧はなくなるので、図5に示すように、制御電圧生成回路によりS1における制御電圧が生成されても、S2における制御電圧は発生しない。よって、図1に示すコンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートに制御電圧が入力されず、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2は、遮断状態となる。従って、スイッチSW1が導通状態である場合には、商用交流電圧が負荷LDに印加されない。
【0055】
上述した通り、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1は、プラグP1が商用電源に接続され、スイッチSW1が遮断状態となった場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通、遮断を切り換えて、商用交流電圧を負荷LDへ印加する。ここで、交流用電子スイッチ装置1では、商用交流電圧を負荷LDへ印加する素子として、PW MOSFETQ1,Q2を用いている。そして、このPW MOSFETQ1,Q2を、商用交流電圧から生成された正制御電圧および負制御電圧の入力期間に応じて導通させることで、商用交流電圧を負荷LDへ印加している。よって、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1では、トライアックを用いた交流用電子スイッチ装置と比較して、交流電圧がゼロ点になる正確なタイミングでトリガ電圧を生成する回路が不要となる。従って、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1によれば、回路構成を簡素化することができる。
【0056】
また、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1は、商用交流電圧を負荷LDへ印加する素子として、コンプリメンタリのPW MOSFET、即ち、チャネル型が異なるだけの特性が等しいPW MOSFETを使用している。よって、Nチャネル型PW MOSFETQ1とダイオードD3との回路、即ち、商用交流電圧の正半波を負荷LDへ印加する回路ができれば、後は、極性を逆にするだけで、Pチャネル型PW MOSFETQ2とダイオードD4との回路、即ち、商用交流電圧の負半波を負荷LDへ印加する回路を容易に実現することができる。
【0057】
また、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1では、図2(b)に示すように、制御電圧の最大値と最小値とは、絶対値が等しいので、正制御電圧と負制御電圧は、極性が異なるだけの同一波形となる。これにより、商用交流電圧の正半波を負荷LDへ印加するNチャネル型PW MOSFETQ1およびダイオードD3から構成される回路と、商用交流電圧の負半波を負荷LDへ印加するPチャネル型PW MOSFETQ2およびダイオードD4から構成される回路とを、極性が異なるだけの同一動作特性にすることができる。よって、負荷LDへ印加される商用交流電圧の正半波の波形と、負荷LDへ印加される商用交流電圧の負半波の波形とを、極性が異なる同一波形とすることができる。従って、商用交流電圧の両波を均整のとれた波形で負荷LDへ印加することができる。
【0058】
また、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1では、制御電圧の最大値(最小値)は、商用交流電圧の最大値(最小値)の1割程度の値となっている。つまり、商用交流電圧を大信号とすれば、制御電圧は、小信号となる。よって、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1によれば、小信号レベルのアナログ信号を取り扱う技術を用いて、即ち、商用交流電圧のような大信号を扱う技術と比較して容易な技術を用いて、商用交流電圧の負荷LDへの印加、非印加を行う回路を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1では、制御電圧生成回路をツェナーダイオードを用いて構成している。よって、簡素な回路構成で、制御電圧を生成することができる。
【0060】
更に、本実施形態の交流用電子スイッチ装置1によれば、本装置を構成するために用いられる全ての素子は、抵抗R1〜R3、ダイオードD1〜D4、ツェナーダイオードZD1,ZD2、スイッチSW1およびコンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の僅か12点に留まるので、回路構成をシンプルにすることができる。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、図1に示す交流用電子スイッチ装置1に用いられたPチャネル型PW MOSFETQ2と等価な動作を行う回路を、Nチャネル型PW MOSFETQ14を使用して構成した場合について説明する。ここで、Pチャネル型PW MOSFETQ2は、Nチャネル型PW MOSFETQ14と比較して高価である上、高耐圧品が非常に少ない。よって、交流用電子スイッチ装置1を低価格に抑えた上で、高電圧に対応する製品とする場合には、Pチャネル型PW MOSFETQ2と等価な動作を行う回路を(以下、「Q2等価回路」と称す)、Nチャネル型PW MOSFETQ14を使用して構成することは有用となる。
【0062】
図6は、Q2等価回路を、Nチャネル型PW MOSFETQ14を使用して構成した場合の回路図を示している。図6に示すように、Q2等価回路は、シフト回路K1と、抵抗R11と、抵抗R15〜R18と、ダイオードD12と、pnp型トランジスタQ13と、Nチャネル型PW MOSFETQ14と、から構成されている。なお、図6に記載のG,D,Sの記号は、それぞれ、図1に示すPチャネル型PW MOSFETQ2のゲート、ドレイン、ソースに対応している。
【0063】
シフト回路K1は、トランジスタQ13の導通、遮断を制御する動作信号を生成する回路である。シフト回路K1のIN端子は、抵抗R11の他端および抵抗R15の一端と接続され、抵抗R11の一端は、図1に示す抵抗R3の一端と接続されており、シフト回路K1のCNT端子は、抵抗R16の他端、ダイオードD12のアノードおよびトランジスタQ13のベースと接続されている。また、シフト回路K1のV端子は、−Bボルトの直流電源と接続されている。なお、シフト回路K1のV端子は図示しない抵抗等を介して、シフト回路K1のCNT端子と接続されている。
【0064】
シフト回路K1は、図1に示すスイッチSW1が遮断状態である場合に、図1に示す抵抗R3に発生した制御電圧がIN端子へ入力されると、時間0〜t1の間は(図2(b)参照)、CNT端子を開放状態にする一方で、t1時〜t2時の間は(図2(b)参照)、CNT端子とV端子とを導通状態にして、+Bボルトの直流電源から−Bボルトの直流電源へ電流を流す。これにより、シフト回路K1は、トランジスタQ13のベースに印加される動作信号を生成する。なお、+Bボルトの直流電源および−Bボルトの直流電源は、プラグP1から供給される商用交流電圧を整流して生成されており、本実施形態では、±Bボルトを約±20.0ボルトに設定している。
【0065】
抵抗R16,R17,R18と、トランジスタQ13を逆電圧から保護するダイオードD12と、トランジスタQ13とは、Nチャネル型PW MOSFETQ14の導通、遮断を制御する制御電圧を生成する回路である。抵抗R16の一端は、+Bボルトの直流電源および抵抗R17の一端と接続されている。
【0066】
抵抗R17の他端は、ダイオードD12のカソードおよびトランジスタQ13のエミッタと接続されている。また、トランジスタQ13のコレクタは抵抗R18の一端およびNチャネル型PW MOSFETQ14のゲートと接続されており、その抵抗R18の他端は、Nチャネル型PW MOSFETQ14のソースと接続されている。よって、抵抗R18に発生する電圧は、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧となる。なお、本実施形態では、抵抗R18に発生する電圧は、Nチャネル型PW MOSFETQ1のゲート入力される正制御電圧と同じ電圧、即ち、約10.0ボルトに設定されている。
【0067】
Nチャネル型PW MOSFETQ14のドレインは、図1に示す差込部材B2および抵抗R15の他端と接続されている。また、抵抗R15の一端は、抵抗R11を介して、図1に示す抵抗R3の一端と接続されている。
【0068】
ここで、図7を参照して、図1に示すスイッチSW1が遮断状態である場合の、t0時〜t2時における動作信号(トランジスタQ13のベース電圧)、トランジスタQ13のエミッタ電圧およびコレクタ電圧について説明する。また、図8を参照して、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧について説明する。
【0069】
図7は、トランジスタQ13の、ベース電圧、エミッタ電圧およびコレクタ電圧を図示したものであり、図8は、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧を図示したものである。なお、図7および図8では、縦軸を電圧、横軸を時間としている。
【0070】
前述の通り、シフト回路K1は、図1に示す抵抗R3に発生した制御電圧がIN端子に入力されると(図2(b)参照)、t0時〜t1時の間、CNT端子を開放状態とする。よって、図7に示すように、t0時〜t1時の間は、トランジスタQ13のベース電圧が、+Bボルトとなる。このとき、抵抗R16の両端に電位差が発生しないので、トランジスタQ13のベースとエミッタとの間にも電位差が発生しない。従って、t0時〜t1時の間は、トランジスタQ13は遮断状態となる。このとき、図7に示すように、トランジスタQ13のエミッタ電圧は+Bボルトになる。また、トランジスタQ13のコレクタ電流は流れることがなく、抵抗R18に発生する電圧降下はゼロボルトとなる。この時のトランジスタQ13のコレクタはフローティング状態となり、トランジスタQ13のコレクタ電圧は端子Dの電位に沿う電圧となる。
【0071】
一方、シフト回路K1は、前述の通り、t1時〜t2時の間、CNT端子とV端子とを導通状態にして、+Bボルトの直流電源から抵抗R16を介して−Bボルトの直流電源へ電流を流す。この時、抵抗R16には電圧降下によって、約10.0ボルトの電圧が発生する。よって、図7に示すように、t1時〜t2時の間は、トランジスタQ13のベース電圧が、+Bボルトよりも約10.0ボルト低い電圧となる。このとき、トランジスタQ13のベースとエミッタとの間にも電位差が発生する。従って、t1時〜t2時の間は、トランジスタQ13は導通状態となる。このとき、図7に示すように、トランジスタQ13のエミッタ電圧の波形は、約10.0ボルトを最小値とする矩形波状の波形となる一方、トランジスタQ13のコレクタ電圧の波形(抵抗R18に印加される電圧の波形)は、約10.0ボルトを最大値とする矩形波状の波形となる。なお、トランジスタQ13のコレクタ電圧の波形がt1時直後と、t2時直前において、マイナス電圧となっているが、これは、次の理由による。即ち、抵抗R18に印加される電圧が、PW MOSFETQ14のゲート−ソース間におけるスレッショルド電圧に到達するまでは(t1時直後は)、PW MOSFETQ14は、遮断状態を保つ。このとき、トランジスタQ13のコレクタ電圧は、商用交流電圧の負の半波の影響を受けてしまい、マイナス電圧方向に変化するためである。なお、t2時直前においても、上述した理由と同様の理由により、トランジスタQ13のコレクタ電圧がマイナス電圧方向に変化する。
【0072】
次に、図8を参照して、t0時〜t2時の間における、抵抗R18に印加される電圧波形、即ち、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧について説明する。図8は、t0時〜t2時の間における、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧を示した図である。なお、図8においては、PW MOSFETQ14のソース電位を基準電圧とした場合を図示している。
【0073】
前述の通り、t0時〜t1時の間、抵抗R18に印加される電圧波形は、ゼロボルトとなる一方で、t1時〜t2時の間、抵抗R18に印加される電圧波形は、約10.0ボルトを最大値とする波形となる。
【0074】
よって、図8に示すように、Nチャネル型PW MOSFETQ14のゲートに入力される制御電圧は、t0時〜t1時の間、ゼロボルトの信号となる一方、t1時〜t2時の間、約10.0ボルトを最大値とする信号となる。従って、Nチャネル型PW MOSFETQ14は、t0時〜t1時の間、遮断状態となる一方、t1時〜t2時の間、導通状態となる。
【0075】
上述した通り、図1に示す抵抗R3に正制御電圧が入力された場合には(t0時〜t1時の間には)、Nチャネル型PW MOSFETQ14が遮断状態となる一方で、抵抗R3に負制御電圧が入力された場合には(t1時〜t2時の間には)、Nチャネル型PW MOSFETQ14が導通状態となる。この動作はまさしく、図1に示すPチャネル型PW MOSFETQ2と同一の動作を行っていることになる(図3参照)。
【0076】
よって、本実施形態におけるQ2等価回路によれば、図1に示すPチャネル型PW MOSFETQ2と比較して低価である上、高耐圧品が非常に多いNチャネル型PW MOSFETQ14を使用して、Pチャネル型PW MOSFETQ2と全く同一の動作を実現することができる。従って、交流用電子スイッチ装置1を低価格に抑えた上で、高電圧に対応する製品にすることができる。
【0077】
次に、図9〜図11を参照して、第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100について説明する。多機能型交流用電子スイッチ装置100は、図1で示した交流用電子スイッチ装置1と等価な装置、即ち、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通、遮断を切り換えて、商用交流電圧を負荷LDへ印加する交流用電子スイッチ装置10に対し、突入電流抑制回路Z1と、定格外電圧入力保護回路Z2と、を接続した装置である。
【0078】
なお、交流用電子スイッチ装置10は、突入電流抑制回路Z1が接続されたことにより設けられたヒューズF2が新たに接続されたことと、スイッチSW1が突入電流抑制回路Z1にスイッチSW21として接続された以外は、図1に示す交流用電子スイッチ装置1と同一の構成である。また、交流用電子スイッチ装置10は、図1に示す交流用電子スイッチ装置1と比較して、スイッチSW21の導通、遮断に対応する状態が反転している以外は、同一の動作である。よって、交流用電子スイッチ装置1の詳細な説明を省略する。
【0079】
なお、交流用電子スイッチ装置10は、スイッチSW21が導通状態である場合に、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通状態、遮断状態の制御電圧による制御が可能な状態となり、スイッチSW21が遮断状態である場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の制御電圧による制御ができず、遮断状態を維持する状態となる。ここで、交流用電子スイッチ装置10では、図1に示す交流用電子スイッチ装置1に対して、スイッチSW21の導通、遮断に対応する状態を反転させたが、これに限られるものではない。即ち、設定切換回路Zcの内部回路構成を変更することによって、スイッチSW21の導通、遮断に対応する状態を反転させず、交流用電子スイッチ装置10と、図1に示す交流用電子スイッチ装置1とのスイッチの切り換えに対応する状態を、同一としても良い。
【0080】
図9は、多機能型交流用電子スイッチ装置100の構成を示す回路図である。図9においては、まず、突入電流抑制回路Z1について説明する。突入電流抑制回路Z1は、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の制御電圧による制御が可能な状態で(スイッチSW21が導通状態で)、プラグP1を商用電源に接続した場合や、プラグP1を商用電源に接続した後に、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の制御電圧による制御が可能な状態にした場合に(スイッチSW21を導通状態にした場合に)、交流用電子スイッチ装置10や負荷LDに流れ込む突入電流を抑制する回路である。
【0081】
突入電流抑制回路Z1は、±VH電源生成回路と、設定切換回路Zcと、±VS積分電圧生成回路と、±AND制御回路と、から構成されている。
【0082】
±VH電源生成回路は、±VS積分電圧生成回路に使用されると共に、後述する定格外電圧入力保護回路Z2に用いられる直流電圧の±VH電圧を生成する回路である。±VH電源生成回路は、+VH電源生成回路と−VH電源生成回路とから構成されている。+VH電源生成回路は、直流電圧である+VH電圧を生成する回路であり、ダイオードD21と電解コンデンサC21とから構成されている。ダイオードD21のアノードは、ヒューズF1,F2を介して、差込部材B1と接続され、ダイオードD21のカソードは、電解コンデンサC21のプラス側と接続されている。また、電解コンデンサC21のマイナス側は、差込部材B2と接続されている。よって、+VH電源生成回路は、商用交流電圧の正半波をダイオードD21で整流し、電解コンデンサC21で平滑して、+VH電圧を生成することができる。
【0083】
また、−VH電源生成回路は、直流電圧である−VH電圧を生成する回路であり、ダイオードD22と電解コンデンサC22とから構成されている。ダイオードD22のカソードは、ヒューズF1,F2を介して、差込部材B1と接続され、ダイオードD22のアノードは、電解コンデンサC22のマイナス側と接続されている。また、電解コンデンサC22のプラス側は、差込部材B2と接続されている。よって、−VH電源生成回路は、商用交流電圧の負半波をダイオードD22で整流し、電解コンデンサC22で平滑して、−VH電圧を生成することができる。
【0084】
設定切換回路Zcは、スイッチSW21の導通状態、遮断状態に対応してコンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへの制御電圧の入力、非入力を切り換えると共に、±VS積分電圧生成回路の正常な動作を制御する回路である。設定切換回路ZcのIN端子は、押しボタン式のスイッチSW21の一端と接続されており、設定切換回路ZcのB端子は、スイッチSW21の他端と接続されている。また、設定切換回路ZcのA端子は、抵抗R24の他端と接続されており、設定切換回路ZcのG端子は、差込部材B2に接続されている。
【0085】
設定切換回路Zcは、スイッチSW21が遮断状態であり、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧が供給されている場合には、A端子とB端子とを導通状態にすることで、ツェナーダイオードZD1,ZD2および±VS積分電圧生成回路に流れ込む電流を引き込み、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートに入力される制御電圧を、ダイオードD24,D25の順方向電圧(約0.6ボルト)に、即ち、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2のゲート閾値電圧(約4.0ボルト、図2(b)参照)よりも低い電圧にする。よって、設定切換回路Zcは、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧が供給されている場合に、スイッチSW21が遮断状態となると、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2を遮断状態にすることができる。
【0086】
一方、設定切換回路Zcは、スイッチSW21が導通状態であり、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧が供給されている場合には、A端子とB端子とを遮断状態にすることで、ツェナーダイオードZD1,ZD2および±VS積分電圧生成回路へ、抵抗R1から流れ出した電流を流れ込ませ、急峻な立ち上がりを抑制した制御電圧を発生させる。つまり、設定切換回路Zcは、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧が供給され、スイッチSW21が導通状態である場合には、立ち上がりを抑制した制御電圧を、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートに入力させて、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の制御電圧による制御が可能な状態にすることができる。
【0087】
±VS積分電圧生成回路は、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートに入力される制御電圧の急峻な立ち上がりを抑制するために使用される積分電圧を、即ち、±VS電圧を生成する回路である。±VS積分電圧生成回路は、+VS積分電圧生成回路と、−VS積分電圧生成回路と、から構成されている。なお、詳細は後述するが、制御電圧の急峻な立ち上がりを抑制することで、負荷LDに流れ込む突入電流を抑制することができる。
【0088】
+VS積分電圧生成回路は、抵抗R24,R25と、電解コンデンサC23と、ツェナーダイオードZD21と、から構成されている。抵抗R24の一端は、電解コンデンサC21のプラス側、即ち、+VH電源生成回路により生成された+VH電圧と接続されており、抵抗R24の他端は、ツェナーダイオードZD21のカソード、抵抗R25の一端および電解コンデンサC23のプラス側と接続されている。電解コンデンサC23のマイナス側、抵抗R25の他端およびツェナーダイオードZD21のアノードは、差込部材B2と接続されている。よって、+VS積分電圧生成回路は、プラグP1から商用交流電圧が供給され、+VH電源生成回路により+VH電圧が生成された場合に、スイッチSW21が導通状態であれば(設定切換回路ZcのA端子とB端子とが遮断状態であれば)、抵抗R24を通じて、電解コンデンサC23の充電を開始して、時間の経過に伴い上昇する積分電圧、即ち、+VS電圧を生成する。この+VS電圧は、ツェナーダイオードZD21のツェナー電圧まで上昇する。なお、この+VS電圧の上昇率は、電解コンデンサC23の容量と、抵抗R24の抵抗値とから求まる時定数で決定されている。
【0089】
一方、+VH電源生成回路により+VH電圧が生成されていても、スイッチSW21が遮断状態であれば(設定切換回路ZcのA端子とB端子とが導通状態であれば)、電解コンデンサC23の充電が行われず、+VS積分電圧生成回路の生成する電圧は、設定切換回路ZcのA端子とG端子との間に印加される電圧、即ち、略ゼロボルトとなる。
【0090】
−VS積分電圧生成回路は、抵抗R26,R27と、電解コンデンサC24と、ツェナーダイオードZD22と、から構成されている。抵抗R27の他端は、電解コンデンサC22のマイナス側、即ち、−VH電源生成回路により生成された−VH電圧と接続されており、抵抗R27の一端は、電解コンデンサC24のマイナス側、抵抗R26の他端およびツェナーダイオードZD22のアノードと接続されている。電解コンデンサC24のプラス側、抵抗R26の一端およびツェナーダイオードZD22のカソードは、差込部材B2と接続されている。よって、−VS積分電圧生成回路は、プラグP1から商用交流電圧が供給され、−VH電源生成回路により−VH電圧が生成された場合に、スイッチSW21が導通状態であれば(設定切換回路ZcのA端子とB端子とが遮断状態であれば)、抵抗R27を通じて、電解コンデンサC24の充電を開始して、時間の経過に伴い下降する積分電圧、即ち、−VS電圧を生成する。この−VS電圧は、ツェナーダイオードZD22のツェナー電圧まで下降する。なお、この−VS電圧の下降率は、電解コンデンサC24の容量と、抵抗R27の抵抗値とから求まる時定数で決定されている。
【0091】
一方、−VH電源生成回路により−VH電圧が生成されていても、スイッチSW21が遮断状態であれば(設定切換回路ZcのA端子とB端子とが導通状態であれば)、電解コンデンサC24の充電が行われず、−VS積分電圧生成回路の生成する電圧は、設定切換回路ZcのB端子とG端子との間に印加される電圧、即ち、略ゼロボルトとなる。
【0092】
なお、電解コンデンサC23,C24に蓄えられた電荷は、プラグP1が商用電源に接続されている場合には、スイッチSW21が遮断状態となったときに、設定切換回路ZcのA端子とB端子との導通により放電され、プラグP1が商用電源に接続されていない場合には、スイッチSW21の状態に関わらず、抵抗R25,R26を介して放電される。よって、スイッチSW21を遮断状態にするか、或いは、プラグP1と商用電源との接続を切断して、交流用電子スイッチ装置10による負荷LDへの商用交流電圧の印加を中止すれば、その後に、交流用電子スイッチ装置10による負荷LDへの商用交流電圧の印加を行う場合に、電解コンデンサC23,C24に電荷がない状態で充電を開始することができる。従って、制御電圧の急峻な立ち上がりを確実に抑制することができる。
【0093】
±AND制御回路は、+AND制御回路と、−AND制御回路と、から構成されている。+AND制御回路は、S1における正制御電圧を+VS電圧の電圧値に制限する回路であり、−AND制御回路は、S1における負制御電圧を−VS電圧の電圧値に制御する回路である。+AND制御回路は、ダイオードD24を用いている。ダイオードD24のアノードは、抵抗R2の一端と接続されており、ダイオードD24のカソードは、電解コンデンサC23のプラス側、即ち、+VS積分電圧生成回路により生成される+VS電圧と接続されている。よって、+AND制御回路は、スイッチSW21が導通状態であり、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧の正半波が供給されている場合には、S1における正制御電圧を、ダイオードD24の順方向電圧に+VS電圧を加えた電圧に制御することができる。
【0094】
−AND制御回路は、ダイオードD25を用いている。ダイオードD25のカソードは、抵抗R2の一端と接続されており、ダイオードD25のアノードは、電解コンデンサC24のマイナス側、即ち、−VS積分電圧生成回路により生成される−VS電圧と接続されている。よって、−AND制御回路は、スイッチSW21が導通状態であり、交流用電子スイッチ装置10に商用交流電圧の負半波が供給されている場合には、S1における負制御電圧を、−VS電圧からダイオードD25の順方向電圧を引いた電圧に制御することができる。
【0095】
次に、突入電流抑制回路Z1が接続された交流用電子スイッチ装置10の動作の詳細について、図10および図11を参照して説明する。なお、図10および図11については、突入電流抑制回路Z1が接続されていない交流用電子スイッチ装置1の動作を示す図12および図13と比較しながら説明する。
【0096】
図10は、交流用電子スイッチ装置10による負荷LDへの商用交流電圧の印加を行い、その後、交流用電子スイッチ装置10による負荷LDへの商用交流電圧の印加を中止した場合のS2における制御電圧の変化を、±VS電圧の変化と共に示した図である。また、図11は、図10の場合において、負荷LDに流れ込む突入電流を、S2における制御電圧の変化および交流用電子スイッチ装置10に供給された商用交流電圧と共に示した図である。
【0097】
一方、図12は、突入電流抑制回路Z1が接続されていない交流用電子スイッチ装置1で、即ち、図1に示す場合の交流用電子スイッチ装置1で、負荷LDへの商用交流電圧の印加を行い、その後、負荷LDへの商用交流電圧の印加を中止した場合のS2における制御電圧の変化を示した図である。この図12は、図10に対応している。また、図13は、図12の場合において、負荷LDに流れ込む突入電流を、S2における制御電圧の変化および交流用電子スイッチ装置1に供給された商用交流電圧と共に示した図である。この図13は、図11に対応している。
【0098】
なお、図11および図13においては、コンセントOUT1に接続した負荷LDには、突入電流が発生する電球を用いている。電球では、一般的に、商用交流電圧の印加開始時に、定常電流の数倍(例えば、約3倍)の電流、即ち、突入電流が発生する。
【0099】
図10に示すように、プラグP1が商用電源に接続されると共に、スイッチSW21が導通状態となると、未充電状態の電解コンデンサC23,C24(図9参照)へ、抵抗R1(図9参照)から流れ出した電流の殆どが流れ込む。
【0100】
そして、抵抗R24から流れ込んだ電流によって電解コンデンサC23(図9参照)への充電が開始された後は、電解コンデンサC23の充電量が時定数に従って増加するので、電解コンデンサC23に印加される電圧(+VS電圧)が序々に上昇すると伴に、抵抗R1から電解コンデンサC23に流れ込む電流は、少しずつ減少する。
【0101】
また、ツェナーダイオードZD1に印加される最大電圧は、+VS電圧の上昇に連動して序々に上昇し、やがて、予め定められた所定電圧(PW MOSFETQ1をオンすることができる電圧)に増加する。そして、更にその最大電圧の上昇が続き、その最大電圧がツェナー定格電圧に達した時、ツェナーダイオードZD1に、略ゼロから所定電流値まで増加したツェナー電流が流れ込む。これにより、ツェナーダイオードZD1に印加される電圧は、ツェナー定格電圧で電圧ロックされる。よって、S1の制御電圧を生成することができるようになる。言い換えると、ツェナーダイオードZD1に印加される電圧は、時定数に伴う+VS電圧の上昇に従って増加する。
【0102】
従って、S2における正制御電圧は、時定数に伴う+VS電圧の上昇に従って増加する。ここで、S2における正制御電圧の最終的な電圧は、制御電圧生成回路で生成される正制御電圧(S1における正制御電圧)から抵抗R2による電圧降下を引いた電圧となるが、抵抗R2による電圧降下は約2.0ボルト程度の小電圧であるので、S2における正制御電圧は約10.0ボルトになっている。
【0103】
同様に、抵抗R27から流れ出た電流によって電解コンデンサC24(図9参照)への充電が開始された後は、電解コンデンサC24の充電量が時定数に従って増加するので、電解コンデンサC24に印加される電圧(−VS電圧)が序々に下降すると伴に、電解コンデンサC24から抵抗R1に流れ出る電流は、少しずつ減少する。
【0104】
また、ツェナーダイオードZD2に印加される最大電圧は、−VS電圧の下降に連動して序々に絶対値が増加し、やがて、予め定められた所定電圧(PW MOSFETQ2をオンすることができる電圧)に増加する。
【0105】
そして、更にその絶対値の最大電圧の上昇が続き、その最大電圧がツェナー定格電圧に達した時、ツェナーダイオードZD2に、略ゼロから所定電流値まで増加したツェナー電流が流れ込む。これにより、ツェナーダイオードZD2に印加される電圧は、ツェナー定格電圧で電圧ロックされる。よって、S1の制御電圧を生成することができるようになる。言い換えると、ツェナーダイオードZD2に印加される電圧は、時定数に伴う−VS電圧の下降に従って(絶対値が)増加する。
【0106】
従って、S2における負制御電圧は、時定数に伴う−VS電圧の下降に従って下降する。ここで、S2における負制御電圧の最終的な電圧は、制御電圧生成回路で生成される負制御電圧(S1における負制御電圧)から抵抗R2による電圧降下を引いた電圧となるが、抵抗R2による電圧降下は約2.0ボルト程度の小電圧であるので、S2における負制御電圧は約−10.0ボルトになっている。
【0107】
図10に示すように、スイッチSW21を導通状態にした時(t0時)〜ta時までは、正制御電圧および負制御電圧のいずれも、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通を開始するゲート閾値電圧(約4.0ボルト、図2(b)参照)である±VGS−th電圧に到達していないので、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2は、遮断状態を維持している。よって、t0時〜ta時においては、プラグP1を商用電源に接続すると共に、スイッチSW21を導通状態にしても、負荷LDへ交流電流は流れ込まず、図11に示すように、負荷LDへの突入電流はゼロとなっている。
【0108】
次に、スイッチSW21を導通状態にしてからta時を過ぎると、図10に示すように、正制御電圧および負制御電圧のいずれも、±VGS−th電圧を超えるので、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2は、半導通状態となる。よって、負荷LDへ交流電流が流れ込む。ここで、突入電流抑制回路Z1は、制御電圧の急峻な立ち上がりを抑制することで、図10に示すように、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の半導通状態を作り出している。よって、図11に示すように、負荷LDへの突入電流の最大値を、tb時以降に示す定常電流の最大値程度に抑制することができる。なお、この制御電圧の急峻な立ち上がりの抑制は、図10および図11に示すように、負荷LDへ流れ込む電流が定常電流に安定するtb時付近まで継続している。
【0109】
一方で、突入電流抑制回路Z1が接続されていない場合の交流用電子スイッチ装置1においては、S2における制御電圧は、図12に示すように、t0時からtb時を経過して、スイッチSW1が導通状態となるtd時まで(負荷LDへの商用交流電圧の印加を中止するtd時まで)、約±10ボルトで常時一定である。よって、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2は、t0時に、半導通状態を超え、瞬時に導通状態となるので、負荷LDへの突入電流を抑制することができない。従って、交流用電子スイッチ装置1でのt0時における負荷LDへの突入電流の最大値は、図13に示すように、tb時以降の定常電流と比較して、約3倍の値となっている。なお、この負荷LDへの突入電流の流れ込みは、負荷LDへ流れ込む電流が定常電流に安定するtb時まで継続している。
【0110】
上述した通り、突入電流抑制回路Z1は、正制御電圧(負制御電圧)を、時間経過と共に上昇(降下)させることで、負荷LDへの突入電流が発生する期間中(負荷LDへの電流が定常電流となるまでの期間中)、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の遮断状態と半導通状態とを意図的に作り出すことができる。よって、突入電流抑制回路Z1は、負荷LDへの突入電流の最大値を、定常電流の最大値程度に抑制することができる。従って、突入電流抑制回路Z1によれば、交流用電子スイッチ装置10が負荷LDへの突入電流により破壊されることを防止することができる。
【0111】
また、突入電流抑制回路Z1では、正制御電圧を生成するツェナーダイオードZD1に、電解コンデンサC23および抵抗R24から構成される積分回路を並列接続することで、正制御電圧の時間経過に伴う上昇を実現している。同様に、負制御電圧を生成するツェナーダイオードZD2に、電解コンデンサC24および抵抗R27から構成される積分回路を並列接続することで、負制御電圧の時間経過に伴う降下を実現している。よって、突入電流抑制回路Z1によれば、ツェナーダイオードZD1,ZD2のそれぞれに、積分回路を並列接続するという簡素な回路構成で、正制御電圧(負制御電圧)の時間経過に伴う上昇(降下)を実現することができる。
【0112】
なお、突入電流抑制回路Z1は、tb時以降、図10に示すように、S2における制御電圧が約±10.0ボルトとなるtc時まで、S2における制御電圧の上昇および降下を±VS電圧に制限する。そして、図10に示すように、tc時以降は、±VS電圧は、ツェナーダイオードZD21,ZD22による電圧制限(約±15.0ボルト)がかかるまで上昇(降下)を続けるものの、S2における制御電圧は、ツェナーダイオードZD1,ZD2およびダイオードD1,D2による電圧制限により、図10に示すように、約10.0ボルトに安定する。
【0113】
そして、スイッチSW21が遮断状態となると(td時以降)、突入電流抑制回路Z1は、電解コンデンサC23,C24(図9参照)の放電を、設定切換回路Zcを用いて行う。よって、図10に示すように、S2における制御電圧は、ダイオードD24,D25の順方向電圧、即ち、±VGS−th電圧未満に低下する。従って、td時以降は、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2が遮断状態となり、負荷LDへの商用交流電圧の印加が中止される。
【0114】
次に、図9に示す定格外電圧入力保護回路Z2について説明する。定格外電圧入力保護回路Z2は、本実施形態における定格電圧である実効値100ボルトの商用電源ではなく、定格外高電圧電源(例えば、実効値200ボルトの交流電源)に、プラグP1を誤って接続した場合に、定格外高電圧から負荷LDを保護する回路である。
【0115】
定格外電圧入力保護回路Z2は、定格外電圧検出回路Ztと、コントロール電圧生成回路と、制御電圧消去回路と、ラッチ回路Zrと、から構成されている。なお、定格外電圧入力保護回路Z2は、スイッチSW21の導通状態、遮断状態の影響を受けない回路構成である。よって、定格外電圧入力保護回路Z2は、スイッチSW21の状態に関係なく動作する。
【0116】
定格外電圧検出回路Ztは、+VH電源生成回路で生成される+VH電圧をIN端子で検出し、+VH電圧が、予め設定しておいた検出電圧よりも大きくなった場合に(定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続され、例えば、+VH電圧が約180ボルトよりも大きくなった場合に)、pnp型トランジスタQ31を導通状態にする制御電圧(+VH電圧よりも約0.6ボルト以上低い直流電圧)をOUT端子から出力する回路である。定格外電圧検出回路ZtのIN端子は、電解コンデンサC21のプラス端子、即ち、+VH電源生成回路で生成される+VH電圧に接続され、定格外電圧検出回路ZtのOUT端子は、トランジスタQ31のベースと接続されている。また、定格外電圧検出回路ZtのG端子は、差込部材B2に接続されている。
【0117】
なお、定格外電圧検出回路Ztは、+VH電圧が、予め設定しておいた検出電圧と同程度以下となった場合には(商用電源にプラグP1が接続され、例えば、+VH電圧が約180ボルト以下となった場合には)、トランジスタQ31を導通状態にするVBEオン電圧(約−0.6ボルト)よりも十分小さい微小直流電圧(例えば、+VH電圧、或いは、+VH電圧よりも約0.3ボルト低い直流電圧)を出力し、トランジスタQ31を遮断状態にする回路としても機能する。
【0118】
コントロール電圧生成回路は、定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続され、トランジスタQ31が導通状態となった場合に、npn型トランジスタQ33を導通状態にするコントロール電圧(約0.6ボルトの直流電圧)を、トランジスタQ33のベースに印加する回路である。なお、コントロール電圧生成回路は、商用電源にプラグP1が接続された場合には、npn型トランジスタQ33を遮断状態にする負の電圧(ツェナーダイオードZD33に発生する電圧にダイオードD32の順方向を加算した電圧)を、トランジスタQ33のベースに印加する回路としても機能する。なお、トランジスタQ33は、ベース−エミッタ間の逆耐電圧が、例えば、約10.0ボルト〜約20.0ボルトと、通常のトランジスタの逆耐電圧よりも高い、「ミュートトランジスタ」を使用している。
【0119】
コントロール電圧生成回路は、トランジスタQ31と、抵抗R38,R39と、ダイオードD31,D32と、ツェナーダイオードZD32,ZD33と、から構成されている。トランジスタQ31のベースは、定格外電圧検出回路ZtのOUT端子に接続され、トランジスタQ31のエミッタは、定格外電圧検出回路ZtのIN端子に、即ち、+VH電源生成回路で生成される+VH電圧に接続され、トランジスタQ31のコレクタは、抵抗R38の一端に接続されている。
【0120】
抵抗R38の他端は、ダイオードD31のアノードと接続されており、ダイオードD31のカソードは、ツェナーダイオードZD32のカソードと接続されている。ツェナーダイオードZD32のアノードは、差込部材B2およびツェナーダイオードZD33のカソードと接続されており、ツェナーダイオードZD33のアノードは、ダイオードD32のアノードと接続されている。
【0121】
ダイオードD32のカソードは、ダイオードD31のアノードおよび抵抗R39の一端と接続されており、抵抗R39の他端は、電解コンデンサC22のマイナス側、即ち、−VH電源生成回路で生成される−VH電圧と接続されている。なお、コントロール電圧生成回路の動作については後述する。
【0122】
制御電圧消去回路は、定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続された場合に、トランジスタQ33を導通させて、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧が入力される(伝送される)ことを防止する回路である。
【0123】
制御電圧消去回路は、抵抗R40,R41およびトランジスタQ33で構成されている。抵抗R40の一端は、抵抗R38の他端、ダイオードD31のアノードおよびダイオードD32のカソードと接続されており、抵抗R40の他端は、抵抗R41の一端およびトランジスタQ33のベースと接続されている。抵抗R41の他端は、差込部材B2に接続されている。
【0124】
また、トランジスタQ33のコレクタは、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートに接続され、トランジスタQ33のエミッタは、差込部材B2に接続されている。
【0125】
次に、コントロール電圧生成回路および制御電圧消去回路の動作について説明する。プラグP1が定格外高電圧電源に接続された場合には、前述の通り、定格外電圧検出回路ZtのOUT端子から適切なVBEオン電圧が出力されるので、トランジスタQ31は導通状態となる。よって、トランジスタQ31のコレクタ電流が、抵抗R38→ダイオードD31→ツェナーダイオードZD32→差込部材B2の経路で流れる(トランジスタQ31のコレクタ電流の一部は、抵抗R39→−VH電圧の経路へ流れるが、ダイオードD31→ツェナーダイオードZD2に流れる電流を妨げるものではない)。すると、ツェナーダイオードZD32にツェナー電圧(例えば、12.0ボルト)が発生し、抵抗R40には、このツェナーダイオードZD32のツェナー電圧にダイオードD31の順方向電圧(約0.6ボルト)を加えた電圧、約12.6ボルトが印加される。このとき、トランジスタQ33のエミッタ電圧(トランジスタQ33の基準電圧)から見ると、npn型トランジスタQ33のベースには、抵抗R40を通じてベース電流が流れ込み、抵抗R41には約0.6ボルトが印加される。これにより、トランジスタQ33は導通状態となり、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートと、差込部材B2に繋がる正制御電圧および負制御電圧の基準線とが短絡状態となって、S2における制御電圧は略ゼロボルトとなる。よって、プラグP1が定格外高電圧電源に接続された場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへS2における制御電圧が伝送される状態にスイッチSW1が切り換えられていたとしても、その制御電圧の伝送を強制的に禁止することができる。これにより、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2を遮断状態にすることができる。従って、プラグP1が定格外高電圧電源に接続された場合に、交流用電子スイッチ装置10および突入電流抑制回路Z1へ高電圧が印加されるが、負荷LDへは高電圧が印加されることがないので、負荷LDが破壊されることを防止することができる。
【0126】
一方、プラグP1が適正電圧の商用電源(100ボルトの商用電源)に接続された場合には、定格外電圧検出回路ZtのOUT端子からは、トランジスタQ31のVBE電圧が微小直流電圧となる電圧が出力されるので、トランジスタQ31は遮断状態となり、トランジスタQ31のコレクタ電流は発生しない。このとき、商用交流電圧が負半波となると、差込部材B2からの電流が、ツェナーダイオードZD33→ダイオードD32→抵抗R39→ダイオードD22の経路で流れる。すると、ツェナーダイオードZD33にツェナー電圧(約12.0ボルト)が発生し、抵抗R40には、このツェナーダイオードZD33のツェナー電圧にダイオードD32の順方向電圧(約0.6ボルト)を加えた電圧(約12.6ボルト)が印加される。このとき、トランジスタQ33のエミッタ電圧(トランジスタQ33の基準電圧)から見ると、npn型トランジスタQ33のベースには、抵抗R40に印加された約12.6ボルトと同程度の電圧がマイナス方向に印加されている。これにより、トランジスタQ33は完全な遮断状態(ミュートオフ状態)となるので、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートと、差込部材B2とが開放状態となり、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧が入力され得る状態となる(伝送され得る状態となる)。よって、プラグP1が適正電圧の商用電源に接続された場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧を正しく入力する(伝送する)ことができる。従って、プラグP1が商用電源に接続された場合には、商用交流電圧を負荷LDへ印加することができる。
【0127】
ラッチ回路Zrは、定格外高電圧電源にプラグP1が接続され、トランジスタQ31が導通状態となることで、ツェナーダイオードZD32でツェナー電圧が発生した場合に、トランジスタQ31を導通させ続けるVBEオン電圧(+VH電圧よりも約0.6ボルト以上低い直流電圧)をOUT端子から出力し続ける回路である。このラッチ回路ZrのIN端子は、ツェナーダイオードZD32のカソードに接続され、ラッチ回路ZrのG端子は、差込部材B2に接続されている。また、ラッチ回路ZrのOUT端子は、トランジスタQ31のベースと接続されている。
【0128】
なお、このラッチ回路Zrは、定格外高電圧電源にプラグP1が接続され、ツェナーダイオードZD32で発生するツェナー電圧がIN端子に一旦入力されると、その後は、トランジスタQ31を導通させるVBEオン電圧を出力し続ける構成である。よって、定格外高電圧電源へのプラグP1の接続後、定格外高電圧電源の高電圧が時間経過と共に降下して、+VH電源生成回路で生成される+VH電圧が、予め設定しておいた検出電圧と同程度以下の電圧となり、結果、定格外電圧検出回路ZtのOUT端子から微小直流電圧が出力されたとしても、やはり、ラッチ回路Zrは、トランジスタQ31のベースへVBEオン電圧を出力し続け、トランジスタQ31を導通させ続ける。これにより、トランジスタQ33も導通し続けることになり、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧が入力される(伝送される)ことを禁止し続ける。ここで、ラッチ回路Zrの動作を解除するためには、ツェナーダイオードZD32のツェナー電圧を略ゼロボルトにしなければならないが、そのためには、定格外高電圧電源とプラグP1との接続を切断しなければならない。
【0129】
よって、ラッチ回路Zrを用いることで、定格外電圧入力保護回路Z2は、定格外高電圧電源にプラグP1が一旦接続された場合には、定格外高電圧電源とプラグP1との接続が切断されるまで、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧が入力される(伝送される)ことを禁止し続けることができる。これにより、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2を遮断状態に保持することができる。従って、定格外電圧入力保護回路Z2によれば、定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続された場合には、その定格外高電圧が一時的に適正な電圧(例えば、100ボルト)になることがあっても、その接続が切断されるまで、負荷LDへ高電圧が印加されることを防止し続けることができる。
【0130】
上述した通り、定格外電圧入力保護回路Z2は、定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続された場合には、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートと差込部材B2に繋がる正制御電圧および負制御電圧の基準線とを短絡する。よって、定格外電圧入力保護回路Z2によれば、S2における制御電圧の伝送経路を差込部材B2と短絡するという簡易な構成で、負荷LDへ高電圧が印加され、破壊されることを防止することができる。
【0131】
以上、本実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0132】
第1実施形態の交流用電子スイッチ装置1および第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100においては、制御電圧生成回路で生成する制御電圧を、ツェナーダイオードZD1,ZD2を用いて矩形波状に成形したが、これに限られるものではなく、ツェナーダイオードZD1,ZD2を抵抗に代えても良い。この構成の場合には、制御電圧は、商用交流電圧と同位相であり、商用交流電圧よりも振幅が小さいサイン波状の波形となる。この波形を用いても、PW MOSFETQ1,Q2のオン領域は狭くなるものの、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の導通状態と遮断状態を切り換えて、商用交流電圧を負荷へ供給することが可能である。ここで、一般的に、ツェナーダイオードZD1,ZD2よりも、抵抗のほうが安価である。よって、この構成によれば、交流用電子スイッチ装置1および多機能型交流用電子スイッチ装置100を更に安価にすることができる。
【0133】
また、第1実施形態の交流用電子スイッチ装置1および第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100においては、スイッチSW1およびスイッチSW21を押しボタン式としたが、これに限られるものではなく、スイッチSW1およびスイッチSW21を、シーソースイッチやスライドスイッチ、或いはリレー等を用いて構成しても良い。スイッチSW1およびスイッチSW21に印加される電圧は、商用交流電圧よりも十分低電圧であるので(例えば、スイッチSW1であれば、±10ボルト程度であるので)、導通と遮断との切り換えができるスイッチであれば、低電圧用に製造された各種のスイッチを用いることができる。よって、スイッチSW1やスイッチSW21を安価なスイッチとすることで、交流用電子スイッチ装置1および多機能型交流用電子スイッチ装置100を更に安価にすることができる。更に、スイッチSW1やスイッチSW21には、機械式のスイッチだけではなく、電子デバイスによるスイッチ、例えば、トランジスタや電界効果トランジスタ等を用いても良い。即ち、第1実施形態の交流用電子スイッチ装置1および第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100においては、各種の幅広いスイッチを用いることができる。また、この機能を応用すれば、タクトスイッチによる電源オン、オフ制御や、外部からの電源オンオフ制御、タイマーによる電源オンオフ制御などの応用ができる。
【0134】
また、第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100においては、定格外電圧入力保護回路Z2にラッチ回路Zrを設けたが、これに限られるものではない。即ち、定格外電圧入力保護回路Z2からラッチ回路Zrを取り外して使用しても良い。この構成の場合には、定格外高電圧電源の高電圧が時間経過と共に降下して、+VH電源生成回路で生成される+VH電圧が、予め設定しておいた検出電圧と同程度以下の電圧となった場合には、トランジスタQ33を遮断させ、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の各ゲートへ、S2における制御電圧が入力される(伝送される)状態へ戻すことができる。よって、この構成の場合には、交流用電子スイッチ装置10、負荷LDおよび突入電流抑制回路Z1へ高電圧が印加されなくなった場合に、再び、交流電圧を負荷LDへ印加できる状態へ、逸早く戻すことができる。また、この構成の場合には、ラッチ回路Zrが不要になり、多機能型交流用電子スイッチ装置100の回路構成を更に、簡素化できると共に、安価にすることができる。
【0135】
また、第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100においては、突入電流抑制回路Z1と定格外電圧入力保護回路Z2との両方を、交流用電子スイッチ装置10に接続したが、これに限られるものではない。即ち、突入電流抑制回路Z1か定格外電圧入力保護回路Z2かのいずれか一方を用いても良い。
【0136】
ここで、突入電流抑制回路Z1を用いた場合を、図14に示す。図14は、図1に示す交流用電子スイッチ装置10に突入電流抑制回路Z1を接続した多機能型交流用電子スイッチ装置110の回路図である。この多機能型交流用電子スイッチ装置110は、図9に示す多機能型交流用電子スイッチ装置100から、定格外電圧入力保護回路Z2を取り外したものである。この多機能型交流用電子スイッチ装置110に接続された突入電流抑制回路Z1の動作は、第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100に接続された突入電流抑制回路Z1の動作と同じであるので、詳細な説明を省略する。この多機能型交流用電子スイッチ装置110によれば、定格外電圧入力保護回路Z2が不要になるので、回路構成を更に、簡素化できると共に、安価にすることができる。
【0137】
次に、定格外電圧入力保護回路Z2を用いた場合を、図15に示す。図15は、図1に示す交流用電子スイッチ装置1に定格外電圧入力保護回路Z2と±VH電源生成回路とを接続した多機能型交流用電子スイッチ装置120の回路図である。この多機能型交流用電子スイッチ装置120に接続された定格外電圧入力保護回路Z2の動作は、第2実施形態の多機能型交流用電子スイッチ装置100に接続された定格外電圧入力保護回路Z2の動作と、後述する状態に注意する以外は同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0138】
この多機能型交流用電子スイッチ装置120を使用する場合には、次の状態に注意する必要がある。即ち、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2の制御電圧による制御が可能な状態で(スイッチSW1が遮断状態で)、定格外高電圧電源にプラグP1が誤って接続されると、その定格外高電圧電源から供給された高電圧が、微少時間(具体的には、高電圧の1〜2周期程度の期間)、負荷LDに印加されてしまう状態が発生する。
【0139】
これは、定格外電圧検出回路Ztが検出する+VH電圧は、ダイオードD21および電解コンデンサC21に供給された交流電圧を整流および平滑することにより生成されているので、電解コンデンサC21に印加される電圧が定常の電圧に達するまでに、供給された電圧の1〜2周期程度の期間が必要だからである。これにより、供給された電圧の1〜2周期程度は、定格外電圧検出回路Ztが高電圧を検出できず、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2へ制御電圧が入力される。従って、高電圧の1〜2周期は、その高電圧が負荷LDへ印加されてしまう状態となる。
【0140】
ただし、1〜2周期程度の高電圧に対する耐電圧を負荷LDが持っていれば、多機能型交流用電子スイッチ装置120を十分使用することができる。よって、上述の耐圧を持つ負荷LDを使用するという条件が必要となるものの、多機能型交流用電子スイッチ装置120によれば、突入電流抑制回路Z1の大部分が不要になるので、回路構成を更に、簡素化できると共に、安価にすることができる。
【0141】
なお、高電圧が1〜2周期、負荷LDへ印加されてしまう状態は、図9に示す多機能型交流用電子スイッチ装置100では発生しない。これは、次の理由による。即ち、電解コンデンサC21に印加される電圧が定常の電圧に達するまでに、高電圧の1〜2周期程度の期間が必要なのは、多機能型交流用電子スイッチ装置120と同じであるが、多機能型交流用電子スイッチ装置100では、突入電流抑制回路Z1により、少なくとも、高電圧の3〜4周期程度、コンプリメンタリPW MOSFETQ1,Q2を意図的に遮断状態にしているので、その期間、高電圧が負荷LDへ印加されることを防止できるからである(図10,11参照)。そして、高電圧の1〜2周期経過後は、定格外電圧入力保護回路Z2の定格外電圧検出回路Ztが高電圧を検出して、S2における制御電圧の伝送経路と差込部材B2とを、定格外電圧入力保護回路Z2によって短絡できるからである。よって、1〜2周期程度の高電圧に対する耐電圧を負荷LDが持っていなければ、多機能型交流用電子スイッチ装置100を使用すれば良い。
【符号の説明】
【0142】
1,10,100 交流用電子スイッチ装置
C23 電解コンデンサ(正調整手段の一部、第1の積分回路の一部)
C24 電解コンデンサ(負調整手段の一部、第2の積分回路の一部)
D1 ダイオード(正生成手段の一部)
D2 ダイオード(負生成手段の一部)
D3 ダイオード(正印加手段の一部)
D4 ダイオード(負印加手段の一部)
D24 ダイオード(第1のダイオード)
D25 ダイオード(第2のダイオード)
K1 シフト回路(反転生成手段)
Q1 PW MOSFET(正印加手段の一部)
Q2 PW MOSFET(負印加手段の一部)
R25 抵抗(正調整手段の一部、第1の積分回路の一部)
R26 抵抗(負調整手段の一部、第2の積分回路の一部)
SW1,SW21 スイッチ(切換手段)
Z1 突入電流抑制回路
Z2 定格外電圧入力保護回路(禁止手段、短絡手段)
ZD1 ツェナーダイオード(正生成手段の一部、第1のツェナーダイオード)
ZD2 ツェナーダイオード(負生成手段の一部、第2のツェナーダイオード)
Zt 定格外電圧検出回路(電圧検出手段)
Zr ラッチ回路(維持手段)







【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電圧の負荷への印加と非印加とを切り換える交流用電子スイッチ装置であって、
前記交流電源から交流電圧が供給されると、その供給された交流電圧の正の半波である正半波を抽出し、その抽出した正半波から、その正半波と同位相の正の電圧である正入力電圧を生成する正生成手段と、
前記交流電源から交流電圧が供給されると、その供給された交流電圧の負の半波である負半波を抽出し、その抽出した負半波から、その負半波と同位相の負の電圧である負入力電圧を生成する負生成手段と、
前記正生成手段および負生成手段により生成された前記正入力電圧および負入力電圧の伝送と非伝送とを切り換える切換手段と、
その切換手段の切り換えにより前記正入力電圧が伝送されて入力端子に入力された場合に、その正入力電圧の入力期間に応じて、前記交流電源から供給される交流電圧の正半波を前記負荷へ印加する閉回路をドレインとソースとを導通させることで形成する第1の電界効果トランジスタを用いた正印加手段と、
前記切換手段の切り換えにより前記負入力電圧が伝送されて入力端子に入力された場合に、その負入力電圧の入力期間に応じて、前記交流電源から供給される交流電圧の負半波を前記負荷へ印加する閉回路をドレインとソースとを導通させることで形成する第2の電界効果トランジスタを用いた負印加手段とを備えていることを特徴とする交流用電子スイッチ装置。
【請求項2】
前記正印加手段に用いられる第1の電界効果トランジスタは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、
前記正印加手段は、前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記正入力電圧を印加する構成であり、
前記負印加手段の有する第2の電界効果トランジスタは、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、
前記負印加手段は、前記Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記負入力電圧を印加する構成であることを特徴とする請求項1記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項3】
前記正印加手段および負印加手段に用いられる第1および第2の電界効果トランジスタは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタであり、
前記正印加手段は、前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに前記入力端子に入力された前記正入力電圧を印加する構成であり、
前記負印加手段は、
前記入力端子に入力された負入力電圧の波形を同一に保った上で、その負入力電圧をゼロボルトを基準とした正の電圧へ反転させて前記正入力電圧を生成する反転生成手段を備え、
その反転生成手段により生成された前記正入力電圧を前記Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタのゲートに印加する構成であることを特徴とする請求項1記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項4】
前記正生成手段により生成される正入力電圧の最大値と前記負生成手段により生成される負入力電圧の最小値との絶対値は、等しい値であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項5】
前記切換手段は、
前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切り換えられた時に、前記第1の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる正の電圧である第1閾値電圧よりも前記正入力電圧の最大値が小さくなり、前記切り換えから所定時間経過した時には、前記正入力電圧の最大値が前記第1閾値電圧よりも大きい前記第1所定電圧となるように、前記切り換えからの時間経過に伴って前記正印加手段の入力端子に入力される正入力電圧の最大値を上昇させる正調整手段と、
前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に切り換えた時に、前記第2の電界効果トランジスタのドレインとソースとを導通させる負の電圧である第2閾値電圧よりも前記負入力電圧の最小値が大きくなり、前記切り換えから所定時間経過した時には、前記負入力電圧の最小値が前記第2閾値電圧よりも小さい前記第2所定電圧となるように、前記切り換えからの時間経過に伴って前記負印加手段の入力端子に入力される負入力電圧の最小値を降下させる負調整手段とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項6】
前記正生成手段は、第1のツェナーダイオードを備え、
前記負生成手段は、前記第1のツェナーダイオードとは極性が逆の第2のツェナーダイオードを備え、
前記正調整手段は、抵抗およびコンデンサから構成される第1の積分回路と、その第1の積分回路に電流が流れ込む方向を順方向とする第1のダイオードとを有し、前記第1の積分回路と第1のダイオードとを直列接続して前記第1のツェナーダイオードに対して並列に接続することで、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に前記切換手段が切り換えられた時に、前記交流電源から供給され第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにする一方、前記切換手段の切り換えから所定時間経過した時に、前記第1のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることで、前記切り換えからの時間経過に伴って前記正印加手段に入力される正入力電圧の最大値を上昇させるものであり、
前記負調整手段は、抵抗およびコンデンサから構成される第2の積分回路と、その第2の積分回路から電流が流れ出す方向を順方向とする第2のダイオードとを有し、前記第2の積分回路と第2のダイオードとを直列接続して前記第2のツェナーダイオードに対して並列に接続することで、前記正印加手段および負印加手段へ前記正入力電圧および負入力電圧を伝送する状態に前記切換手段が切り換えられた時に、前記交流電源から供給され第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を略ゼロにする一方、前記切換手段の切り換えから所定時間経過した時に、前記第2のツェナーダイオードに流れ込む電流を予め定められた所定量以上にすることで、前記切り換えからの時間経過に伴って前記負印加手段に入力される負入力電圧の最小値を降下させるものであることを特徴とする請求項4に従属する請求項5記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項7】
前記交流電源から供給される交流電圧の電圧値を検出する電圧検出手段と、
その電圧検出手段により検出された前記電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、前記正入力電圧および負入力電圧が前記正印加手段および負印加手段へ伝送される状態に前記切換手段が切り換えられていても、その正入力電圧および負入力電圧が前記正印加手段および負印加手段へ伝送されることを禁止する禁止手段とを備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項8】
前記禁止手段は、前記電圧検出手段により検出された前記電圧値が規定の電圧値を超えた場合には、前記正入力電圧が前記正印加手段へ伝送される経路および前記負入力電圧が前記負印加手段へ伝送される経路と、前記正入力電圧および負入力電圧の基準線とを短絡する短絡手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の交流用電子スイッチ装置。
【請求項9】
前記短絡手段は、前記交流電源からの交流電圧が供給停止されるまで、前記経路と前記基準線との短絡を維持する維持手段を備えていることを特徴とする請求項8記載の交流用電子スイッチ装置。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−225020(P2010−225020A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73378(P2009−73378)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】