説明

交通信号制御システム、交通信号制御機及び表示機

【課題】歩行者灯器の灯色の点灯時間が変動した場合であっても、歩行者灯器の灯色の残点灯時間の目安を正確に表示することができる交通信号制御システム、交通信号制御機及び表示機を提供する。
【解決手段】信号制御部11は、交通状況に応じて歩行者灯器20の点灯時間T1(例えば、青色灯)を決定する。点灯時間取得部14は、点灯時間T1を取得し、トリガ出力部16へ出力する。トリガ出力部16は、記憶部13から基準時間T2を取得し、点灯時間T1と基準時間T2との差分T1−T2を算出し、T1>T2である場合、灯器監視部15から開始通知信号を取得した時点から(T1−T2)時間経過後に表示機30に対して開始トリガ信号を出力する。また、トリガ出力部16は、灯器監視部15から消灯通知信号を取得した時点で表示機30に対して終了トリガ信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者灯器の灯色の残点灯時間を知らせる表示機、該表示機を制御する交通信号制御機、前記表示機及び交通信号制御機を備える交通信号制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交差点又は横断歩道などには、歩行者灯器の灯色の残点灯時間を知らせる表示機が歩行者灯器に併設され、歩行者による無理な横断の抑制、あるいは速やかな横断を促すことにより、歩行者の安全性を向上させている。
【0003】
このような表示機には、メモリ表示方式及び秒数表示方式の2方式が採用されている。メモリ表示方式は、通常8個又は10個のメモリ表示を有し、メモリ表示の数を時間経過とともに1つずつ減らすことで、歩行者に対して、現在表示中の歩行者灯器の灯色が、どの程度継続するかについての目安を示すものである。
【0004】
初期状態では、表示機のメモリ表示はすべて消えているが、外部(例えば、交通信号制御機)から開始トリガ信号を受け付けた場合、すべてのメモリを点灯し、所定の周期に従って点灯しているメモリの数を減じていく。所定の周期は、表示機が保持する所定の基準時間をメモリ数で除算した時間である。また、交通信号制御機から終了トリガ信号を受け付けた場合、メモリ表示がどのような状態であるかにかかわらず、すべてのメモリが消される。さらに、交通信号制御機から終了トリガ信号を受け付けない限り、最後のメモリは消されない。
【0005】
前述の基準時間は、予め表示機に記憶されている場合だけでなく、表示機の動作の都度更新される場合もある。例えば、表示機が前回動作した際に、開始トリガ信号を受け付けた時から終了トリガ信号を受け付けた時までの時間を随時更新することで学習機能を備える歩行者信号灯器用時間表示灯の表示方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、秒数表示方式は、歩行者灯器の灯色の残り時間を秒数で表示する。通常、10秒経過する都度に、10秒単位で表示する秒数を減らす。秒数表示方式は、メモリ表示方式と同様に、保持する所定の基準時間に基づいて、所定の周期が算出され、開始トリガ信号を受け付けた場合、最大の秒数を表示し、以降10秒経過の都度、表示する秒数を10秒ずつ減じていく。動作原理はメモリ表示方式と同じであるから、交通信号制御機から終了トリガ信号を受け付けた場合、表示する秒数にかかわらず、表示が消えてしまう場合があり、また、交通信号制御機から終了トリガ信号を受け付けない限り、10秒という表示が10秒以上続く場合もある。
【特許文献1】特許第3106402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び従来の例にあっては、交通信号制御機は、表示機に対して開始トリガ信号又は終了トリガ信号を送出する場合、残り時間の表示対象である歩行者灯器の灯色が点灯した際に開始トリガ信号を表示機へ送出し、歩行者灯器の灯色が消灯した際に、終了トリガ信号を送出するものであった。このため、対象となる歩行者灯器の灯色の点灯時間が、時間帯又は交通状況等に応じて変動した場合、メモリ表示方式では、不自然な表示をする場合があった。すなわち、基準時間よりも実際の灯色の点灯時間が短い場合、メモリ数が2つ以上の状態でメモリがすべて消えてしまうときがあり、あるいは、基準時間よりも実際の灯色の点灯時間が長い場合、最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くときがある。
【0008】
また、同様に、対象となる歩行者灯器の灯色の点灯時間が、時間帯又は交通状況等に応じて変動した場合、秒数表示方式では、実際の残り秒数と合わない場合があった。すなわち、基準時間よりも実際の灯色の点灯時間が短い場合、残り10秒と表示してから10秒未満で灯色が切り替わるときがあり、あるいは、基準時間よりも実際の灯色の点灯時間が長い場合、残り10秒と表示してから10秒よりも長時間灯色が切り替わらないときがある。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の点灯予定時間が変動した場合であっても、前記灯色の残点灯期間の目安を正確に表示することができる交通信号制御システム、該交通信号制御システムを構成する交通信号制御機及び表示機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る交通信号制御システムは、歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、前記表示機は、予め記憶した基準表示期間に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段とを備え、前記交通信号制御機は、前記基準表示期間と前記灯色の点灯予定期間との差を取得する取得手段と、該取得手段で取得された差に基づいて、前記開始の指示を行う時点を決定する開始決定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る交通信号制御システムは、第1発明において、前記表示機は、前回の更新表示の開始時点から終了時点までの表示期間に基づいて、前記基準表示期間を更新する基準表示期間更新手段を備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る交通信号制御システムは、歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、前記交通信号制御機は、前記灯色の点灯予定期間を前記表示機へ出力する出力手段を備え、前記表示機は、前記点灯予定期間を取得する取得手段と、該取得手段で取得された点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る交通信号制御システムは、歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、前記交通信号制御機は、前記灯色の点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、該周期決定手段で決定された更新周期を前記表示機へ出力する出力手段とを備え、前記表示機は、前記更新周期を取得する取得手段と、該取得手段で取得された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る交通信号制御機は、歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機へ該更新表示の開始及び終了を指示する交通信号制御機において、所定の基準表示期間と前記灯色の点灯予定期間との差を取得する取得手段と、該取得手段で取得された差に基づいて、前記開始の指示を行う時点を決定する開始決定手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第6発明に係る交通信号制御機は、歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機へ該更新表示の開始及び終了を指示する交通信号制御機において、前記灯色の点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、該周期決定手段で決定された更新周期及び前記灯色の点灯予定期間のうち少なくとも1つを前記表示機へ出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
第7発明に係る表示機は、歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機において、前記灯色の点灯予定期間を取得する取得手段と、該取得手段で取得された点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
第8発明に係る表示機は、歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機において、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を取得する取得手段と、該取得手段で取得された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
第1発明及び第5発明にあっては、交通信号制御機は、表示機が歩行者灯器の灯色の残点灯期間の目安の更新表示(例えば、メモリ表示、秒数表示など)を開始してから終了するまでの時間として予め定められている基準表示期間T2を記憶してある。交通信号制御機は、交通状況に応じて歩行者灯器の灯色の点灯予定期間T1を随時変動するように制御し、歩行者灯器のある灯色(例えば、青色灯、赤色灯など)の点灯を開始した後、T1経過したときに歩行者灯器の灯色を消灯する。交通信号制御機は、点灯予定期間T1と記憶した基準表示期間T2との差T1−T2を取得する。交通信号制御機は、取得した差T1−T2に応じて、表示機に更新表示を開始させるための開始の指示を行う時点を決定する。例えば、T1>T2である場合、交通信号制御機は、歩行者灯器が点灯を開始した後T1−T2経過したときに開始信号を表示機へ出力する。
【0019】
表示機は、歩行者灯器の灯色が点灯を開始した後T1−T2経過したとき開始信号を取得して灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始し、その後T2経過したときに交通信号制御機から終了信号を取得して更新表示を終了する。すなわち、表示機が開始信号を取得してから終了信号を取得するまでの期間が所定の基準表示期間T2に等しくなるように調整される。これにより、歩行者灯器の点灯予定期間が変動した場合であっても、所定の基準表示期間T2に基づいて更新表示のための更新周期を決定し、決定された更新周期で残点灯期間の目安の更新表示することで、最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態又は残り10秒と表示してから10秒よりも長時間灯色が切り替わらない事態を防止することができ、歩行者灯器の灯色の残点灯期間の目安を正確に表示することができる。
【0020】
第2発明にあっては、表示機は、前回の更新表示の開始時点から終了時点までの表示期間に基づいて、基準表示期間T2を更新する。これにより、例えば、歩行者灯器の灯色の前回の実施の点灯期間を基準表示期間T2とすることができ、基準表示期間T2を直近の点灯時間に合わせることで歩行者灯器の灯色の残点灯期間の目安を過去の状況に応じて変えることができる。
【0021】
第3発明、第6発明及び第7発明にあっては、交通信号制御機は、交通状況に応じて歩行者灯器の灯色の点灯予定期間T1を随時変動するように制御し、歩行者灯器の灯色(例えば、青色灯、赤色灯など)の点灯を開始した後、T1経過したときに歩行者灯器の灯色を消灯する。交通信号制御機は、点灯予定期間T1を表示機へ出力し、表示機は、点灯予定期間T1を取得し、取得した点灯予定期間T1及び所定の更新回数に基づいて更新表示の更新周期を決定する。例えば、表示機が8個のメモリ表示で残点灯期間の目安を表示するメモリ表示方式である場合、更新回数は8回であり、更新周期(メモリの表示を変更する時間)は、T1/8で決定される。なお、秒数表示方式も同様である。これにより、歩行者灯器の点灯予定期間T1が変動した場合であっても、表示機のメモリ数が2つ以上の状態でメモリがすべて消えてしまう事態又は残り10秒と表示してから10秒未満で灯色が切り替わってしまう事態、及び最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態又は残り10秒と表示してから10秒よりも長時間灯色が切り替わらない事態を防止することができ、歩行者灯器の灯色の残点灯期間の目安を正確に表示することができる。
【0022】
第4発明、第6発明及び第8発明にあっては、交通信号制御機は、交通状況に応じて歩行者灯器の灯色の点灯予定期間T1を随時変動するように制御し、歩行者灯器の灯色(例えば、青色灯、赤色灯など)の点灯を開始した後、T1経過したときに歩行者灯器の灯色を消灯する。交通信号制御機は、点灯予定期間T1及び所定の更新回数に基づいて更新表示の更新周期を決定する。例えば、表示機が8個のメモリ表示で残点灯期間の目安を表示するメモリ表示方式である場合、更新回数は8回であり、更新周期(メモリの表示を変更する時間)は、T1/8で決定される。なお、秒数表示方式も同様である。交通信号制御機は、決定した更新周期を表示機へ出力する。表示機は、更新周期を取得し、取得した更新周期に基づいて残点灯期間の目安を更新表示する。これにより、歩行者灯器の灯色の点灯予定期間T1が変動した場合であっても、表示機のメモリ数が2つ以上の状態でメモリがすべて消えてしまう事態又は残り10秒と表示してから10秒未満で灯色が切り替わってしまう事態、及び最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態又は残り10秒と表示してから10秒よりも長時間灯色が切り替わらない事態を防止することができ、歩行者灯器の灯色の残点灯期間の目安を正確に表示することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にあっては、歩行者灯器の灯色について、残点灯期間の目安を正確に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る交通信号制御システムの構成を示す模式図である。本発明の交通信号制御システムは、交通信号制御機10、歩行者灯器20、表示機30などを備えている。なお、歩行者灯器20は、例えば、赤色灯及び青色灯の表示灯を備え、交差点の四隅に設置された信号灯器(車両灯器)に併設され道路を挟んで横断歩道の両側に設置されている。また、表示機30は、歩行者灯器20の青色灯及び/又は赤色灯の残点灯時間(期間)の目安を複数の表示ステップ(例えば、メモリ表示又は秒数表示)で表示する。本実施の形態では、メモリ表示方式について説明するが、秒数表示など他の表示方式でも本発明を適用することができる。なお、表示機30において目安として表示する歩行者青色灯の残点灯時間(期間)は、歩行者青色点灯時間と歩行者青色点滅時間の合計時間とすることもできるし、歩行者青色点灯時間のみとすることもできる。
【0025】
交通信号制御機10は、信号制御部11、灯器駆動部12、記憶部13、点灯時間取得部14、灯器監視部15、トリガ出力部16などを備え、表示機30は、表示制御部31、メモリ消去周期決定部32、記憶部33、表示部34などを備えている。
【0026】
信号制御部11は、交通状況に応じて車両灯器(不図示)、歩行者灯器20の各信号灯色(灯色)の点灯予定期間である点灯時間(例えば、青色灯の点灯時間T1)を決定し、決定した点灯時間T1に基づいて、車両灯器、歩行者灯器20の点灯又は消灯を制御するための信号灯器出力指令を灯器駆動部12へ出力する。なお、以下の説明では、歩行者灯器20の信号灯色が青色灯の場合について説明する。
【0027】
灯器駆動部12は、半導体リレー(不図示)を備え、信号制御部11から入力された信号灯器出力指令に基づいて、歩行者灯器20の赤色灯、青色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
【0028】
灯器監視部15は、表示機30が表示対象とする歩行者灯器20の信号灯色が点灯開始したか又は消灯したか否かを監視し、点灯開始した時点で開始通知信号をトリガ出力部16へ出力するとともに、消灯した時点で消灯通知信号をトリガ出力部16へ出力する。
【0029】
点灯時間取得部14は、信号制御部11で決定された点灯時間T1を取得し、取得した点灯時間T1をトリガ出力部16へ出力する。
【0030】
記憶部13は、予め基準時間(基準表示期間)T2を記憶している。基準時間T2は、残点灯時間の目安の表示を行う表示時間であり、表示機30の記憶部33にも記憶されてあり、後述するようにメモリ表示を更新する場合の周期を算出(決定)するために用いられる。
【0031】
トリガ出力部16は、記憶部13から基準時間T2を取得し、点灯時間T1と基準時間T2との差分T1−T2を算出する。トリガ出力部16は、T1>T2である場合、灯器監視部15から開始通知信号を取得した時点から(T1−T2)時間経過後に表示機30に対して開始トリガ信号を出力する。また、トリガ出力部16は、灯器監視部15から消灯通知信号を取得した時点で表示機30に対して終了トリガ信号を出力する。
【0032】
表示機30におけるメモリ消去周期決定部32は、記憶部33に記憶された基準時間T2を取得して、メモリ表示を更新する(例えば、メモリ表示を1つずつ減らす)場合の周期を算出する。例えば、メモリ表示が8段階である場合、周期は、T2/8で算出される。
【0033】
表示制御部31は、トリガ出力部16が出力する開始トリガ信号及び終了トリガ信号を取得し、開始トリガ信号を取得した場合、表示部34のすべてのメモリを点灯表示させるとともに、メモリ消去周期決定部32で算出された周期に基づいて、点灯開始時点からメモリ表示の数を減じていく。また、表示制御部31は、終了トリガ信号を取得した場合、メモリ表示を消灯させる。
【0034】
次に本発明の交通信号制御システムの動作について説明する。歩行者灯器20の灯色の点灯時間が変動した場合、従来の例にあっては、例えば、表示機が歩行者赤色灯の残点灯時間を表示している場合、信号待ちしている歩行者は、表示機のメモリ表示が1つずつ消えていく様子を眺めて、最後の1つのメモリが消えるタイミングを予測している可能性がある。この場合、最後の1つのメモリが他のメモリよりも長く表示されると、歩行者は苛立ちを覚えて、信号無視をして横断を強行する可能性が高くなるという問題がある。
【0035】
図2は従来の表示機の表示例を示すタイムチャートである。図2において、横軸は時間経過を示し、縦軸はメモリ表示の状態を示す。また、点灯時間T1が変動し、基準時間T2よりも点灯時間T1が長くなった場合を示す。表示機は、開始トリガ信号を取得した時点で、すべてのメモリ表示を点灯させ、所定の周期が経過する都度、メモリの表示数を段階的に減じていく。開始トリガ信号を取得してから基準時間T2を経過した場合であっても、点灯時間T1が基準時間T2より長いため、表示機は終了トリガ信号を取得しておらず、最後の1つのメモリは、点灯時間T1が経過して終了トリガ信号を取得するまで表示され続ける。結果として図中模様の部分で示される時間だけ、最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くことになる。
【0036】
図3は本発明の表示機30の表示例を示すタイムチャートである。図3においても横軸は時間経過を示し、縦軸はメモリ表示の状態を示す。また、点灯時間T1が変動し、基準時間T2よりも点灯時間T1が長くなった場合を示す。交通信号制御機10は、歩行者灯器20が点灯した後、差分T1−T2だけ遅らせて開始トリガ信号を表示機30へ出力する。表示機30は、開始トリガ信号を取得した時点で、すべてのメモリ表示を点灯させ、所定の周期が経過する都度、メモリの表示数を段階的に減じていく。開始トリガ信号を取得した時点から基準時間T2が経過するタイミングが、点灯時間T1の経過時点に調整されているため、開始トリガ信号を取得した時点から基準時間T2が経過した時点で終了トリガ信号を取得することができ、最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態を防止することができ、歩行者灯器20の灯色の残点灯時間の目安を正確にすることができる。
【0037】
また、実施の形態1では、表示機30は、交通信号制御機10から開始トリガ信号及び終了トリガ信号を取得する構成であるため、従来の表示機に何らの変更を加えることなく、歩行者灯器20の灯色の残点灯時間の目安を正確にすることができるというメリットがある。
【0038】
実施の形態2
図4は実施の形態2の交通信号制御システムの構成を示す模式図である。実施の形態1との相違点は、交通信号制御機10は、点灯時間送信部17を備えるとともに、表示機30は、点灯時間受信部35を備える点である。
【0039】
点灯時間取得部14は、信号制御部11で決定された点灯時間T1を取得し、取得した点灯時間T1を点灯時間送信部17へ出力する。
【0040】
トリガ出力部16は、灯器監視部15から開始通知信号を取得した時点で表示機30に対して開始トリガ信号を出力する。また、トリガ出力部16は、灯器監視部15から消灯通知信号を取得した時点で表示機30に対して終了トリガ信号を出力する。
【0041】
点灯時間受信部35は、点灯時間送信部17が送信した点灯時間T1を受信し、受信した点灯時間T1をメモリ消去周期決定部32へ出力する。
【0042】
メモリ消去周期決定部32は、点灯時間T1を取得して、メモリ表示を更新する(例えば、メモリ表示を1つずつ減らす)場合の周期を算出する。例えば、メモリ表示が8段階である場合、周期は、T1/8で算出される。
【0043】
表示制御部31は、トリガ出力部16が出力する開始トリガ信号及び終了トリガ信号を取得し、開始トリガ信号を取得した場合、表示部34のすべてのメモリを点灯表示させるとともに、メモリ消去周期決定部32で算出された周期に基づいて、点灯開始時点からメモリ表示の数を減じていく。また、表示制御部31は、終了トリガ信号を取得した場合、メモリ表示を消灯させる。なお、実施の形態1と同様の箇所は同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図5は実施の形態2の表示機30の表示例を示すタイムチャートである。図5において、横軸は時間経過を示し、縦軸はメモリ表示の状態を示す。表示機30は、開始トリガ信号を取得した時点で、すべてのメモリ表示を点灯させ、所定の周期が経過する都度、メモリの表示数を段階的に減じていく。開始トリガ信号を取得した時点から終了トリガ信号を取得するまでの時間である点灯時間T1に基づいて、周期が算出されているため、歩行者灯器20の点灯時間が変動した場合であっても、表示機30のメモリ数が2つ以上の状態でメモリがすべて消えてしまう事態、及び最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態を防止することができ、歩行者灯器20の灯色の残点灯時間の目安を正確にすることができる。
【0045】
実施の形態3
実施の形態2では、メモリ消去周期決定部32を表示機30に備える構成であったが、これに限定されるものではなく、交通信号制御機10に備える構成であってもよい。
【0046】
図6は実施の形態3の交通信号制御システムの構成を示す模式図である。実施の形態2との相違点は、交通信号制御機10は、メモリ消去周期決定部18を備え、表示機30は、メモリ消去周期取得部36を備える点である。
【0047】
点灯時間取得部14は、信号制御部11で決定された点灯時間T1を取得し、取得した点灯時間T1をメモリ消去周期決定部18へ出力する。
【0048】
メモリ消去周期決定部18は、点灯時間T1を取得して、メモリ表示を更新する(例えば、メモリ表示を1つずつ減らす)場合の周期を算出し、算出した周期をメモリ消去周期取得部36へ出力する。例えば、メモリ表示が8段階である場合、周期は、T1/8で算出される。
【0049】
メモリ消去周期取得部36は、周期を取得し、取得した周期を表示制御部31へ出力する。
【0050】
表示制御部31は、トリガ出力部16が出力する開始トリガ信号及び終了トリガ信号を取得し、開始トリガ信号を取得した場合、表示部34のすべてのメモリを点灯表示させるとともに、メモリ消去周期取得部36から取得した周期に基づいて、点灯開始時点からメモリ表示の数を減じていく。また、表示制御部31は、終了トリガ信号を取得した場合、メモリ表示を消灯させる。なお、実施の形態2と同様の箇所は説明を省略する。
【0051】
実施の形態4
上述の実施に形態1〜3では、歩行者灯器と表示機とは分離した構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、歩行者灯器と表示機とを一体形で構成することができ、歩行者灯器と表示機とは分離形又は一体形を問わない。
【0052】
図7は歩行者灯器と一体化された表示機の例を示す説明図である。図7(a)は分離表示方式を示し、図7(b)は一体表示方式を示す。図中、左から右に向かって時間の経過を示し、左側の3つは赤信号が表示されている場合、右側の4つは青信号が表示されている場合を示す。図7(a)の分離表示方式では、例えば、現在表示している信号灯色(例えば歩行者赤信号)の残点灯期間の目安を、表示していない信号灯色(例えば歩行者青信号)を表示する部分に表示する。また、図7(b)の一体表示方式では、現在表示している信号灯色(例えば歩行者赤信号)の残点灯期間の目安を、現在表示している信号灯色(例えば歩行者赤信号)の図柄の横に表示する。
【0053】
以上説明したように、本発明にあっては、歩行者灯器の点灯時間が変動した場合であっても、表示機のメモリ数が2つ以上の状態でメモリがすべて消えてしまう事態又は残り10秒と表示してから10秒未満で信号灯色が切り替わってしまう事態、及び最後の1つのメモリが他のメモリの表示時間よりも長時間表示されたままの状態が続くという事態又は残り10秒と表示してから10秒よりも長時間信号灯色が切り替わらない事態を防止することができ、歩行者灯器の灯色の残点灯時間の目安を正確にすることができる。
【0054】
なお、本発明は、実施例に限定されるものではない。メモリ表示方式の他に秒数表示方式であっても、本発明を適用することができる。
【0055】
上述の実施の形態では、表示機は、歩行者灯器の青色灯の残点灯時間の目安を表示するものでもよく、また、赤色灯の残点灯時間の目安を表示するものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る交通信号制御システムの構成を示す模式図である。
【図2】従来の表示機の表示例を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の表示機の表示例を示すタイムチャートである。
【図4】実施の形態2の交通信号制御システムの構成を示す模式図である。
【図5】実施の形態2の表示機の表示例を示すタイムチャートである。
【図6】実施の形態3の交通信号制御システムの構成を示す模式図である。
【図7】歩行者灯器と一体化された表示機の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
10 交通信号制御機
11 信号制御部
12 灯器駆動部
13 記憶部
14 点灯時間取得部
15 灯器監視部
16 トリガ出力部
17 点灯時間送信部
18 メモリ消去周期決定部
20 歩行者灯器
30 表示機
31 表示制御部
32 メモリ消去周期決定部
33 記憶部
34 表示部
35 点灯時間受信部
36 メモリ消去周期取得部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、
前記表示機は、
予め記憶した基準表示期間に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、
該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段と
を備え、
前記交通信号制御機は、
前記基準表示期間と前記灯色の点灯予定期間との差を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された差に基づいて、前記開始の指示を行う時点を決定する開始決定手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項2】
前記表示機は、
前回の更新表示の開始時点から終了時点までの表示期間に基づいて、前記基準表示期間を更新する基準表示期間更新手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、
前記交通信号制御機は、
前記灯色の点灯予定期間を前記表示機へ出力する出力手段を備え、
前記表示機は、
前記点灯予定期間を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、
該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項4】
歩行者灯器の各灯色を点灯及び消灯させる交通信号制御機と、前記歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色について、前記交通信号制御機からの開始及び終了の指示に基づいて、前記灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機とを備える交通信号制御システムであって、
前記交通信号制御機は、
前記灯色の点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、
該周期決定手段で決定された更新周期を前記表示機へ出力する出力手段と
を備え、
前記表示機は、
前記更新周期を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項5】
歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機へ該更新表示の開始及び終了を指示する交通信号制御機において、
所定の基準表示期間と前記灯色の点灯予定期間との差を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された差に基づいて、前記開始の指示を行う時点を決定する開始決定手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項6】
歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機へ該更新表示の開始及び終了を指示する交通信号制御機において、
前記灯色の点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、
該周期決定手段で決定された更新周期及び前記灯色の点灯予定期間のうち少なくとも1つを前記表示機へ出力する出力手段と
を備えることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項7】
歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機において、
前記灯色の点灯予定期間を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された点灯予定期間及び所定の更新回数に基づいて、前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を決定する周期決定手段と、
該周期決定手段で決定された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段と
を備えることを特徴とする表示機。
【請求項8】
歩行者灯器の灯色のうち少なくとも1つの灯色の残点灯期間の目安の更新表示を開始及び終了する表示機において、
前記残点灯期間の目安を更新表示するための更新周期を取得する取得手段と、
該取得手段で取得された更新周期で前記残点灯期間の目安を更新表示する更新手段と
を備えることを特徴とする表示機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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